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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆ロッテ~若手の成長は著しい反面、投打に課題が多く難しいドラフトになる

●2年連続2位で優勝候補も、投打のかみ合わせが悪く下位に低迷…

 2年連続の2位になり、優勝候補の一角だったシーズン。優勝の条件として挙げられていたのは、佐々木朗希(大船渡高~19年①)の本格稼働に、レアードとマーティンが昨年同様にアーチをかけ、荻野貴司トヨタ自動車~09年①)と中村奨吾(早大~14年①)の主力プラス若手の台頭だった。

 結果、佐々木朗は完全試合も達成し、チームの主力に成長するも、攻撃陣は不安が的中し、レアードとマーティンは打率1割台の大不振で、マーティンは途中帰国。荻野は序盤戦不在で、中村奨も本来の調子には程遠かった。

 主力が不振に陥ると選手層の薄さが露呈し、前半戦は投手陣が好調も点が獲れず、夏場は打線が打つと投手陣が踏ん張れないなど、投打のかみ合わせが悪かった。チーム打率はシーズン通して上がらず、両外国人に頼り切りだった本塁打が減少すると、機動力だけでは限界があった。

 また、規定打席到達は高部と中村奨の2人だけで、昨年に続き規定投球回数をクリアしている投手はゼロだ。これまでのロッテは「束」になって戦ってきたが、昨年の東京五輪で唯一代表選手の選出がなかった事実からも、上位を狙うにはやはり「個」の成績と飛び抜けた選手が必要だと思う。

 ただ、マグレで2年続けて2位になれる訳でもなく、着実に地力はついてきている。 特に若手に成長株が多く、25歳以下で、投手で佐々木朗と種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、捕手で佐藤都と松川、内野手に安田と山口航輝(明桜高~18年④)、外野は高部と和田康士朗(BC富山~17年育①)、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)が控え、今季の高部のように2~3人覚醒すれば、来季のリーグ優勝も夢ではない。 

【9/17現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 131試合 64勝66敗1分⑤

 防御率…3.22④(3.67⑤)打率….230⑤(.239④)

 本塁打…85⑤(126③)盗塁123①(107①)

 得点…452③(584①)失点…472④(570⑤) 

 

●上位指名選手が着実に成長するも、年齢バランスが悪く難しいドラフトになる

 過去5年のドラフトは上位指名の選手が多く成長する一方、投打に課題は多い。左投手不足は解消されておらず、20歳~23歳に一人もおらず、高卒3年目の社会人や大学生投手が必要になる。また、若手投手を見るとリリーフタイプが多く、佐々木朗に続く先発候補も必要になる。

 野手では二遊間の強化がポイントになる。特に遊撃手は藤岡が不振のなか、茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)や小川龍成(国学院大~20年③)もレギュラー候補のままで、獲得には至っていない。二塁も中村奨に頼りっきりで、万が一中村奨が長期離脱したり、FA移籍などになれば一気にチーム力が落ちてしまう。

 また、安田の指名以降、高校生内野手を指名していないため、19歳から22歳まで不在で年齢バランスが取れていない。年齢バランスの悪さは捕手も同様で、佐藤都のあとは松川しかおらず、ここでも大学生が必要になる。

 投手なら将来のエース候補にプラス左腕が必要、野手は年齢バランスで大学生捕手と高校生内野手、二遊間がプラス即戦力も必要で、1回のドラフトで解消できない課題が多く、短期的な戦力補強と中長期的な育成を見据えた難しいドラフトになる。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年⑥…安田尚憲(履正社高/①・内野手)藤岡裕大(トヨタ自動車/②・内野手

 18年⑤…小島和哉(早大/③・投手)

 19年④…佐々木朗希(大船渡高/①・投手)佐藤都志也(東洋大/②・捕手)

       高部瑛斗(国士館大/③・外野手)

 20年②…なし

 21年②…松川虎生(市和歌山高/①・捕手)

  ↓↓

【ロッテの補強ポイント】 

 投 手…ポスト益田のリリーフ候補、大学生左腕

 捕 手…大学生捕手

 内野手…即戦力の二遊間候補、高校生は必須

 外野手…必要ないが、欲を言えば高校生の左打ち 

 

☆投手~ポスト益田のリリーフ候補、大学生左腕

 先発は佐々木朗がリーグを代表する投手に成長し、ベテランの石川歩(東京ガス~13年①)と美馬学東京ガス~10年楽②)、勝ち星には恵まれていないが小島がローテーションを守っている。

 リリーフは、クローザーの益田直也関西国際大~11年④)が安定感を欠き、現在は途中加入のオスナが代役を務めている。また、今季は東條大樹(JR東日本~15年④)が好投し、新外国人のゲレーロとともに勝ちパターンに加わった。また、小野郁(西日本短大高~14年楽②)や西野勇士(新湊高~08年育⑤)もブルペン陣を支えた。

 一方で、昨年活躍した佐々木千隼(桜美林大~16年①)が不振、唐川侑己(成田高~07年①)も前半戦不在、現在は小野とゲレーロが離脱しており、リリーフ陣のやり繰りには苦労している。

 心配なのは主力の高齢化で、美馬を筆頭に石川に益田、唐川や西野、東條も30歳を超える。先発なら二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)や岩下大輝(星綾高~14年③)、リリーフなら佐々木千や小野、東妻勇輔(日体大~18年②)の中堅がベテランを脅かす活躍を見せないと厳しくなる。

 投手の上位候補は、矢澤宏太(日体大曽谷龍平(白鷗大)の両左腕に、益田武尚(東京ガスの名前が挙がる。今年は即戦力と言われる左腕が少ないだけに、矢澤と曽谷の上位指名の可能性が高い。益田も完成度の高い先発だが、この辺りの年齢に選手が集中しており、上位で行くなら矢澤や曽谷、本格派右腕の才木海翔(大経大)のほうが良いと思う。

 また、将来のエース候補として、山田陽翔(近江高)斎藤優汰(苫小牧中央高)も上位指名の可能性もある。山田はリリーフなら直ぐにでも戦力になり、斎藤は今年ストレートが150キロを超える素材型で、佐々木朗の育成手腕からもチームにフィットすると思う。上位候補では、右の本格派の田中晴也(日本文理高)は投打に注目され、斎藤響介(盛岡中央高)は細身だが総合力が高い。

 大学生では、菊地吏玖(専大渡辺翔太(九産大はストレートは150キロを超える馬力のある投手だが、ともにウィニングショットとなる変化球も持ち合わせている。日本選手権MVPの河野佳(大阪ガスは高卒3年目の21歳と若く、社会人投手を上位で行くなら河野がベストの選択になる。

 このほかリストアップされている選手では、安西叶翔(常葉菊川高)は長身のスリークオーター右腕でチームにはいないタイプの選手で面白く、多彩な変化球を駆使する米田天翼(市和歌山高)はチームに先輩の松川がおり、バッテリーを組んでいるところを見てみたい。

 左腕の森下瑠大(京都外大西高に制球力に長け、大野稼頭央(大島高)はフィジカルに優れている。榊原七斗(報徳学園高)はキレのあるストレートが武器で、技巧派左腕の清水風雅(奈良朱雀商工高)武田桜雅(大商大堺高)も候補に挙がっている。

 大学生では神野竜速(神奈川大)羽田野温生(東洋大水口創太(京大)は素材型の選手で、いずれも粗削りながら直球に力があり伸びしろが期待できる。

 社会人では、片山晧心(ホンダ)はカーブを武器にゲームメークに長けた左腕で、先発・リリーフともに重宝しそうせ、大畑蓮(西部ガスは最速150キロのリリーフ向きで、ブルペン陣に厚みを持たせる。

☆捕手~大学生捕手

 驚きだったのは、史上3人目の高卒ルーキーで開幕マスクを被った松川で、難しいポジションながら、佐藤都との併用で一軍でシーズンを完走でき、来季以降の活躍にさらに期待がかかる、

 松川の活躍で、一見捕手は必要なさそうだが実は課題が潜在している。佐藤都は盗塁阻止率も高く松川との併用でも十分に行けるが、持ち前の打撃の良さを活かすなら本格的な野手転向の可能性もある。また、田村龍弘光星学院高~12年③)のFA移籍の可能性もあり、人数的な余裕はない。

 年齢バランスも悪い。松川の次に若いのは佐藤都で、19歳~24歳が不在。松川がいるので、今年豊富な高校生は必要はなく、今季は大学生捕手に絞って良いと思う。

 大学生捕手で評価が高いのが吉田賢吾(桐蔭横浜大で、二塁送球1秒9の強肩にリーグ戦で首位打者を獲得するなど、打てる捕手として活躍が期待できる。このほか、強肩の石伊雄太(近大)やパンチ力もある野口泰司(名城大)は下位獲得のチャンスもあるが、今年は大学生捕手の候補が少ないだけに、指名順位が上がる可能性もある。

内野手~即戦力の二遊間候補、高校生は必須

 今季のレギュラーは二塁の中村奨しかいないなか、安田に三塁レギュラーの目途が立った。一塁は佐藤都や山口、井上晴哉日本生命~13年⑤)も復帰し、急ぐ必要はない。最大の課題は遊撃手で、藤岡の復帰が待たれるが、その藤岡も通算打率.242では物足りなさ感は否めず、遊撃手のレギュラー争いになかなか目途が立たない。

 また、内野も年齢バランスが悪く、内野で一番若いのは23歳の池田来翔(国士館大~21年②)で、19歳~22歳はゼロ。これは12球団でロッテだけで、高卒野手の獲得は今回は必須だ。

 課題の二遊間の即戦力では、田中幹也(亜大)山田健太(立大)が上位候補で、田中は小柄ながら広い守備範囲を誇り、俊足巧打はロッテ好みの選手で、山田は長打力のある二塁手で高校時代のチームメイトの藤原への刺激にもなる。このほか奈良間大己(立正大)友杉篤輝(天理大)は、ともに走攻守に優れており、友杉はチームカラーに合っている。

 高校生では、金田優太(浦和学院高)は抜群の打撃センスを誇り、勝又琉偉(富士宮東高)イヒネ・イツア(誉高)は評価急上昇中、木蓮滋賀学園高)は長打力が魅力だ。守備は三塁ながら、高校通算52本の内藤鵬(日本航空石川高)も長打力不足のチームにおいて欲しい選手だ。 

 ☆外野手~必要ないが、欲を言えば高校生の左打ち  

 外野は高部がレギュラーに定着し、ポスト荻野の目途が立った。その荻野はチーム最年長の37歳で、さすがに高部だけでは不安だが、ここは期待の藤原や山口、和田が一人立ちして欲しい。また、ファームで西川僚祐(東海大相模高~20年⑤)も着実に成長し、年齢バランスも悪くなく、指名を急ぐ必要はない。

 ただ、今年の野手で1位候補が浅野翔吾(高松商高蛭間拓哉(早大の両外野手で、浅野はポスト荻野候補だが、内野も守れるのでコンバート前提の指名もアリだ。現状でいえば、蛭間のほうが戦力的にはピッタリで、荻野が元気なうちにレギュラー不在の右翼に蛭間がハマれば、課題を解消できる。

 このほかともに長打力に魅力のある三井健右(大阪ガス伊藤千浩(東北高)への評価が高く、即戦力の左打ち三井は、蛭間を外した際に指名したい選手だ。

 

●優先課題は二遊間のセンターライン強化か?左腕不足解消か?

 課題はやはり打撃強化で、長打力不足解消と遊撃手の補強になる。そうなると1位候補は長打力重視なら蛭間拓哉(早大浅野翔吾(高松商高で、短期的に見れば蛭間だが、どちらを1位入札しても問題はない。一方で今年は即戦力の内野手候補が少なく、田中幹也(亜大)は上位で消える可能性が高く、順位を上げての指名もあり得る。

 ただ個人的には、今年は投手補強で先発投手に厚みを持たせても良いと思う。特に、即戦力左腕が不足している状況のなか、矢澤宏太(日体大曽谷龍平(白鷗大)の両左腕、即戦力の益田武尚(東京ガスは競合覚悟で獲りに行っても良い。二刀流の矢澤の獲得は、ロッテの育成計画が新たなフェーズに進むと思う。

【指名シミュレーション】 

1位~曽谷龍平(白鷗大・投手)奪三振率の高い150キロスリークオーター左腕

2位~田中幹也(亜大・内野手…小柄ながら菊地涼(広島)を彷彿させる守備力

3位~斎藤優汰(苫小牧中央高・投手)…最速150キロを超える本格派右腕

4位~吉田賢吾(桐蔭横浜大・捕手)…二塁送球1秒9の強肩に加えリーグ首位打者

5位~安西叶翔(常葉菊川高・投手)…長身のスリークオーターで課題は制球力

6位~三井健右(大阪ガス・外野手)…長打力が持ち味の社会人ベストナイン受賞

 おススメの選手は、走攻守揃った社会人4年目の福永裕基(日本新薬内野手で、高い打撃技術と長打力で突き抜けて欲しい。是非プロで見てみたい選手で、さすがに年齢的にもラストチャンスだと思うので、中村奨以外のレギュラー不在のチームにプラスになると思う。