ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆阪神~盤石な投手陣を誇り、今年は打線強化で野手の上位指名が濃厚!

●シーズン前に謎の監督退任表明…開幕の連敗が響くも4年連続のAクラスキープ

 すべては開幕戦の大逆転負けだったと言っても過言ではなかった。開幕投手に指名されていた青柳晃洋(帝京大~15年⑤)が新型コロナで先発を回避。それでもヤクルトととの開幕戦は8点を獲り勝利目前のところ、最大7点差をひっくり返され、その後、セ・リーグワースト記録の開幕9連敗を喫してしまった。

 その後は自慢の投手陣を中心に、何とか借金3の3位で終えた。勝負ごとに“たら、れば”は禁物だが、あの開幕戦が何とかなれば、もう少しペナントレースも変わっていたかも知れない。ただ、何だかんだ4年連続Aクラスを維持しており、チーム力は着実に上がっている。

 投高打低のチームの状況は変わらず、チーム防御率は12球団ナンバーワンの布陣になり、4月後半から21試合連続で3失点以下を記録するなど安定感は抜群だった。一方で失策の数も相変わらずで、86個は今季もリーグ最多で課題が解消されていない。打線も同様で、チーム打率と得点数は5位と投手陣とは裏腹に打線は後退した。

 結果、リーグ1位の移動力を活かし、機動力と犠打で1点をもぎ取り、鉄壁の投手陣で守り勝つ野球が定着した。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 68勝71敗4分③

 防御率…2.67①(3.30②)打率….243⑤(.247④)

 本塁打…84⑤(121⑤)盗塁110①(114①)

 得点…489⑤(541⑤)失点…428①(508②)

 

●貧打解消で打線強化を進めるなか、主力投手のFAを見据えながらのドラフト

 過去5年の成果を見て分かるように、ここ数年の阪神のドラフトは成功と言える。一昨年は競合のなか佐藤輝を引き当てた幸運もあるが、伊藤と中野を獲得し、16年は大山悠輔(白鷗大~16年①)に糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)、15年は青柳、13年は岩貞祐太(横浜商大~13年①)に岩崎優(国士館大~13年⑥)の両投手に梅野隆太郎(福岡大~13年④)を獲得している。

 現在、離脱はしているが、高橋遥人(亜大~17年②)も復帰すれば間違いなくローテーション投手で、西純矢(創志学園高~19年①)に森木大智(高知高~21年①)など将来性豊かなエース候補もおり、ほぼ毎年のように主力選手が誕生している。

 ただ課題もあり、高校生出身の選手の主力が少ない。投手なら藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①、野手なら現DeNAの大和(樟南高~05年④)まで遡り、ことスラッガーとなると、なんと現日本ハム監督の新庄剛志以来おらず、なかなか優勝に届かないのは、高校生が育たたないのが要因の一つかも知れない。

 阪神の年齢バランスは悪くなく、多少の左右のバランスの悪さはあるが極端に偏ってはいないので、良い意味で欲しい選手をシンプルに指名できるドラフトになる。

 ただ、心配な点もあり、FA資格を取得した西勇輝菰野高~08年オ③)や岩崎に移籍の可能性があり、藤浪もMLB挑戦が濃厚になっている。昨季スアレスが退団し、クローザーが決まらないなか、最後は岩崎に落ち着いたが、岩崎が移籍することになると厳しく、即戦力で投手陣の補強は必須になる。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年②…なし

 18年⑥…近本光司(大阪ガス/①・外野手)

 19年③…なし

 20年③…佐藤輝明(近大/①・内野手)伊藤将司(JR東日本/②・投手)

     中野拓夢(三菱自動車岡崎/⑥・内野手

 21年②…なし

  ↓↓

阪神の補強ポイント】 

 投 手…即戦力クローザー、FA移籍に対応する先発候補

 捕 手…必要なし

 内野手…即戦力の二塁手(右打ちならベスト)高校生

 外野手…大学生左打ち

 

☆投手~即即戦力クローザー、FA移籍に対応する先発候補

 先発は、今季投手三冠に輝いた青柳を中心に西勇が9勝を上げ、完投能力の高い伊藤に安定感抜群のガンケルとゲームメークできる選手が揃い、西純も登板間隔を開けながら6勝を上げ着実に成長している。また、今シーズンは1勝と不振だったが、実績十分の秋山拓巳(西条高~09年④)も控え層は厚い。

 藤浪のMLB挑戦で投手陣を危惧する声もあるが、藤浪のここ5年の通算成績は12勝17敗で、申し訳ないが戦力への影響は少ない。ただ、西勇は在籍4年間で36勝(31敗)でここは厳しいと言える。

 リリーフはスアレスの退団でケラーを獲得したが、開幕早々打ち込まれ、抑えから外された。結局、セットアッパーの岩崎がクローザーを務め28セーブを上げ、岩崎に代わりセットアッパーを務めたのが、4年目の湯浅京己(BC富山/⑥・投手)で、通算3試合登板の選手が、59試合に登板し43ホールド、防御率1.09は圧巻の数字で、個人的に投手陣のMVPは湯浅だと思う。

 このほか岩貞と浜地真澄(福岡大大濠高~16年③)が50試合以上に登板し、中継ぎに転向したアルカンタラと勝ちパターンを担った。ケラーも中継ぎで、8ホールドを上げ、ともにソフトバンク自由契約になった加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)と渡邊雄大(BC新潟~17年育⑥)も30試合以上に登板し、この辺の投手起用が上手い。

 上位候補は他球団と同じで、矢澤宏太(日体大曽谷龍平(白鷗大)の両左腕に、金村尚真(富士大)才木海翔(大経大)がリストアップされ、社会人でも益田武尚(東京ガス吉村貢司郎(東芝河野佳(大阪ガスが上位候補になる。

 矢澤と曽谷は、先発左腕が伊藤しかいないなかで、補強ポイントに合致する。特に曽谷は最速150キロのスリークオーター左腕で、奪三振率が高い。このほか下位候補にはなるが、小柄ながら強気の投球で奪三振率の高い伊原陵人(大商大)や緩急で打者のタイミングをずらす片山晧心(ホンダ)も候補になる。

 西勇の移籍に備えた即戦力では、金村は安定感抜群、才木は真っ直ぐで押す馬力がある本格派。練習試合でヤクルト相手に好投した吉村に、社会人ナンバーワンの呼び声高い益田は移籍しら場合、穴を埋めることも出来る。高卒3年目の河野は、年齢バランスで欲しい選手だ。上位候補ではないが、吉野光樹(トヨタ自動車も150キロ超えの本格派右腕で完成度が高い

 課題のリリーフだが、即戦力は見当たらない。ただ、元々先発だった栗林(広島)が成功したように、益田や吉野は可能性が十分にある。また、青山美夏人(亜大)関根智輝(ENEOS)は安定感のある右腕でともにリリーフの適性も高く、大石晨慈(近大)はロングリリーフもできる左腕だ。

 将来性重視の高校生では、山田陽翔(近江高)斎藤響介(盛岡中央高)の本格派右腕と、森下瑠大(京都国際高)森山暁生(阿南光高)の両左腕が上位候補になる。山田は甲子園通算11勝で、阪神入団ともなると盛り上がるだろう。森下と森山も大舞台を経験しており、将来のエース候補として獲得したい。

 大学生では、水口創太(京大)仲地礼亜(沖縄大)西隼人(関学大は伸びしろがあり、投手育成に長けている阪神で見てみたい選手だ。水口は粗削りながら194センチの長身から最速152キロを投げ、仲地は制球力に長け安定感が評価されていたが、ここにきて球速が上がり評価は急上昇している。

 下位指名候補では、中央では無名だが吉川悠斗(浦和麗明高)川口咲斗(大産大高)は他球団もマークする隠し玉で、白濱快起(飯塚高)は打者としても評価が高い、

☆捕手~必要なし

 今シーズンも、梅野と坂本誠志郎(明大~15年②)が中心で、人数も年齢バランスも穴はない。正捕手の梅野も31歳とまだまだ老け込む年齢ではなく急ぐ必要はない。ただ、梅野が元気なうちに、正捕手候補を育成するなら高校生に焦点を当てたい。

 甲子園でも活躍した松尾汐恩(大阪桐蔭高)は強肩で打撃が良く、二軍でみっちり技術を習得すればスター選手になれる逸材。

 一方、大学生で野口泰司(名城大)石伊雄太(近大工学部)土井克也(神奈川大)等をリストアップしているが、育成ならまだしも本指名では必要ないと思う。 

内野手~即戦力の二塁手(右打ちならベスト)高校生

 今シーズンは、一塁の大山と遊撃の中野、三塁の糸原が規定打席をクリアし、二塁のレギュラーが不在。来シーズンは佐藤輝を三塁で起用する記事を見たが、個人的には大賛成で、補強は二遊間強化が中心になる。

 本来であれば二塁は糸原なのだが、守備の不安が拭えず、山本泰寛(慶大~15年巨⑤)や植田海(近江高~14年⑤)など守備力の高い選手が守っているが、打つほうは物足りない。今季はFAで外崎(西武)に浅村(楽天)、中村奨(ロッテ)等、二塁手が多く獲得できれば課題も解消されるが、計算はできないのでドラフトで埋めたい。

 また、年齢バランスは問題ないが、左右のバランスが悪く、右打者が19歳~26歳まで不在で、欲を言えば右打ちが欲しい。

 リストアップされている選手を見ると、さすがポイントを抑えている。山田健太(立大)は、大学を代表する大型二塁手で、6大学で通算75安打にパンチ力も備える。田中幹也(亜大)は小柄ながら守備力に定評があり、大学では遊撃手だが二塁も守れる。守備だけなら友杉篤輝(天理大)が大学ナンバーワンと言っても過言ではなく、友杉は俊足で機動力が使え、門脇誠(創価大)は打力が評価されている遊撃手だ。

 このほか将来性重視の高校生右打者では、大型遊撃手の戸井零士(天理高)の評価が高く、192センチの一塁手三上栞汰(浦和学院高)は長打力が武器で、ともに将来の中軸候補になれる。また、イヒネ・イツア(誉高)は、両親ともナイジェリア人で身体能力が高く、粗削りだが将来はとんでもない選手になれる可能性がある。

☆外野手~大学生左打ち

 外野は中堅の近本が不動で、佐藤輝が三塁と併用ながら規定打席をクリアした。外国人選手が結果を残せないなか、島田海吏(上武大~17年④)がキャリアハイの成績を残した。糸井が引退し、佐藤輝が三塁に転向(登録は内野手)することを想定すれば、出来るなら左打者が欲しい。

 ただ、明言はしていないが今年は浅野翔吾(高松商高の1位指名が決定的だ。近本に中野、佐藤輝と中軸に左打者が多く、大山以外に右打者がいない状況で浅野の1位指名は良いと思う。甲子園でも大活躍した選手で、一挙手一投足が注目される人気球団のプレッシャーの負けることもないだろう。

 浅野以外では他球団同様、蛭間拓哉(早大が1位候補だがさすがに1位入札で消える選手で、そうなるとバットコントロールが巧く長打力もある杉澤龍(東北福祉大が候補になる。

 高校生では、高校通算54本塁打西村瑠伊斗(京都外大西高、50メートル6秒フラットの田中多聞(呉港高)は三拍子揃った素材型で、俊足は武器になる。足だけなら久保修(大阪観光大)はさらに早く、さらなる機動力アップが期待できる。

 

●1位指名は浅野で決まり!打線強化で、今年は野手の上位指名が濃厚

 今年は明言はしていないものの、1位指名は浅野翔吾(高松商高に決まりそうだ。高校通算68本塁打に、俊足且つ強肩で、今夏の甲子園で一番目立った選手で、レギュラーどころかスター選手候補だ。

 浅野を1位で獲得できれば、何も問題はないが、外れ1位候補では、山田健太(立大)松尾汐恩(大阪桐蔭高)が候補になる。特に山田は阪神の補強ポイントに合うと思う。今年は野手で良いと思うが、投手で行くのなら将来性重視で、山田陽翔(近江高)才木海翔(大経大)河野佳(大阪ガス等地元に逸材が揃っている。

【指名シミュレーション】 

1位~山田健太(立大・内野手…東京6大学通算75安打で、長打力も兼ね備える

2位~山田陽翔(近江高・投手)…甲子園通算11勝で、野手としての評価も高い

3位~水口創太(近大・投手)…190センチの長身の本格派右腕で伸びしろに期待

4位~友杉篤輝(天理大・内野手…俊足巧打に遊撃守備は大学ナンバーワンの評価

5位~白濱快起(飯塚高・投手)…身長190センチの大型選手で、打者としても非凡

6位~西 隼人関学大・投手)…3年時から球速は伸び、今年は150キロを超えた

 おススメの選手は、澤井廉(中京大で、180センチ100キロの堂々の体から本塁打を量産する左打ちのスラッガー。大きい体の割に、内角の捌きが巧く、強い打球を飛ばすプルヒッターでスケール感がある、浅野と左右の大砲候補として獲得しても面白いと思う。