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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆西武~さらなる投手力強化か、強力打線復活で野手強化か、目指す方向性は?

●4年連続リーグ最下位の防御率が1位へ大改善!今年は投高打低のチームに変貌

 昨年、42年振りの最下位に沈み、開幕前は下馬評も決して高くなった。ただ、打高投低だったチームは、投手陣が安定感を増し、4年連続リーグ最下位の防御率…昨年チーム防御率3点台のチームが1点以上の大改善を見せ、チームが生まれ変わったようだった。

 7月末から首位に立つと、その勢いで夏場も乗り切り優勝も見えてきたが、勝負所の9月に7連敗を喫し優勝争いから脱落した。結果、3位でシーズンを終えたものの、辻監督の退任が決まった。

 勝敗には関係ないと思うが、「今季、優勝すると松井稼頭央ヘッドコーチの監督就任が遅れる」という記事や、チームメイトの妻によるSNS騒動など、何となく優勝争いに水を差すことが多すぎたように思える。

 話は逸れたが、チーム防御率に反比例するように、チーム打率はリーグ最下位まで落ち、得点も5位と1年で投高打低のチームになってしまった。ただ、本塁打はリーグ1位(うち3割強は山川)も、反面盗塁数はリーグ最下位と、とにかく両極端…。結果、今季は一発長打で得点し、厚いリリーフ陣で守り切る試合運びになった。

 ファンからすれば、「投打が巧くかみ合ってくれれば…」という思いは別にして、相手チームから恐れられた超攻撃野球から、今季のように投手を中心にした守りのチームになるか、松井新監督の手腕が今から楽しみだ。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 72勝68敗3分③

 防御率…2.75①(3.94⑥)打率….229⑥(.239④)

 本塁打…118①(112④)盗塁60⑥(84③)

 得点…464⑤(521⑤)失点…448①(589⑥)

 

●恒例となったFA移籍が今年もあるか…ドラフト巧者の指名に今年も注目

 昨年は満点ドラフトで、私も最高の指名だったと思う。ただ、4球団競合の隅田知一郎(西日本工大~21年①)は、勝ち星に恵まれない不運もあったが、1勝10敗とほろ苦いルーキーイヤーになった。佐藤隼輔(筑波大~21年②)も3勝は上げたものの、防御率4点台と、どちらもこれからの選手で現段階どうこう言うつもりはないが、満点ドラフトの結果としては今一つだった。

 西武の心配な点は、FAでの選手の流失で、今季は正捕手の森友哉大阪桐蔭高~13年①)、内外野守れるユーティリティプレーヤーの外崎修汰(富士大~14年③)の動向に注目が集まる。来季以降も山川穂高(富士大~13年②)の源田壮亮トヨタ自動車~16年③)と続く…。

 当然、移籍するかどうかは分からないが、FA制度導入以降、多くの主力選手が移籍し、その都度ドラフトで獲得した選手を育て上位をキープしてきたチームだけに、短期的視点での補強と、将来を見据えた指名に今年も期待したい。

 西武は年齢バランスや、投手、野手とも左右のバランスが良く、今季は年齢で捕手と外野手で高校生は必要だが、良い意味でシンプルに補強ポイント(短期的)と将来性(長期的)に絞って臨める。

 ただ、気がかりなのは、16年の源田を最後に野手のレギュラーが生まれていないことと、余り関係ないかもしれないが、開幕早々に育成選手が特殊詐欺への関与の疑いでチームを退団するなど、この間刑事事件になるようなトラブルが散発しており、選手個々はもとよりチーム全体でコンプライアンス意識を高める必要がある。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年②…平良海馬(八重山商工高/④・投手)

 18年①…松本 航(日体大/①・投手)森脇亮介(セガサミー/⑥・投手)

 19年①…宮川 哲(東芝/①・投手)

 20年③…なし

 21年⑥…なし

  ↓↓

【西武の補強ポイント】 

 投 手…先発候補の高校生&大学生

 捕 手…年齢バランスで高校生

 内野手…即戦力 ※一塁を除く

 外野手…即戦力のリードオフマン、高校生(右打ちならベスト) 

 

☆投手~先発候補の高校生&大学生

 辻監督が絶賛していたように、高橋光成前橋育英高~14年①)が12勝を上げ、防御率は山本(オリックス)に次いで2位と正真正銘のエースに成長した。さらに新外国人のエンス、故障で育成契約も経験した苦労人の與座海人(岐阜経大~17年⑤)が10勝を上げ、ともに防御率2点台と抜群の安定感を誇った。

 ここに7勝の松本航(日体大~18年①)に、故障で9試合登板ながら5勝を上げた今井達也(作新学院高~16年①)が加わり、2年目の隅田と佐藤も来季は期待でき、強固な先発陣が出来つつある。また、與座が27歳、松本が26歳、高橋光を25歳、今井24歳と主力が20歳代と若く末恐ろしい布陣だ。

 今季の躍進の大きな要因が、鉄壁と言われたリリーフ陣で、クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)が見事復活し31セーブを上げ、平良と水上由伸(四国学院大~20年育⑤)が35ホールドで最優秀中継ぎを獲得。本田圭佑東北学院大~15年⑥)も24ホールドと勝ちパターンが形成され、平良と水上、本田は防御率1点台とまさに鉄壁だった。

 上位でリストアップしているのは、矢澤宏太(日体大金村尚真(富士大)で、矢澤は西武に不足気味の先発左腕だが、野手としての評価も高く、外野手として獲得しても補強ポイントに合い、キャンプで適性を見極めても遅くはない。安定感抜群の金村は他球団もマークしている1位候補。

 将来のエース候補では、斎藤優汰(苫小牧中央高)と斎藤響介(盛岡中央高)の本格派右腕に、森下瑠大(京都国際高)森山暁生(阿南光高)の両左腕への評価も高い。

 斎藤優は長身から角度のある投球で、真っ直ぐが150キロを超え、斎藤響は細身ながキレのあるボールが魅力で、ともにフィールディングも巧く総合力が高い。森下と森山はともに昨夏の甲子園での好投が印象的だ。森下は今夏の甲子園では故障明けで不振だったが評価は落ちておらず、最速146キロの森山も伸びしろ十分でプロで体づくりをすればエース候補になれる。

 即戦力では、羽田野温生(東洋大神野竜速(神奈川大)をリストアップしている。ともに150キロの真っ直ぐが武器の速球派右腕で、西武が今季どういった選手を補強したいか分かる。特に羽田野は156キロを超える真っ直ぐを武器に、さらに伸びしろを期待される選手で、ポスト増田の候補になれるポテンシャルを秘めている。

 また、片山晧心(ホンダ)への評価も高く、片山はカーブで緩急をつけた投球が武器の先発左腕で、スタミナも豊富。隅田と佐藤がまだ計算できないだけに、先発左腕の補強では打ってつけの選手だと思う。

 このほか、地元の本格派左腕の吉川悠斗(浦和麗明高)や、高校から投手に転向した日高暖己(富島高)は隠し玉ではないが、下位で指名しても面白い。大学生では橋本達弥(慶大)宮海土(立大)はともに大学時代からリリーフ投手で、左腕の宮はフィットしそうな気がする。先発左腕なら加藤三範(ENEOS)もアリだ。

☆捕手~年齢バランスで高校生

 捕手は正捕手の森がいるが、ここにきてFA移籍の可能性が出てきた。移籍が無ければ、森を中心に柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)と古賀悠斗(中大~21年③)が控え、補強を急ぐ必要はなく、年齢バランスで高校生を獲得すれば良い。

 ただ、森が移籍するようだと状況は変わり、高校生ならポスト森の打てる捕手、即戦力なら柘植や古賀とレギュラー争いできる選手が欲しい。

 松尾汐恩(大阪桐蔭高)は補強ポイントにピッタリで、高校で捕手になっただけにまだ課題はあるが、機敏な動きに強肩、何よりも打撃が良い。さすがに松川(ロッテ)のように開幕スタメンになることはないが、2軍で経験を積めば正捕手候補になる。ほかには清水叶人(健大高崎高)も打撃が良く、片野優羽(市船橋高)も長打力がある。

 即戦力では、吉田賢吾(桐蔭横浜大土井克也(神奈川大)がリストアップされている。ともに強肩だが、吉田は打撃が良くリーグ戦でも首位打者を獲得し、土井は勝負強くパンチ力もあり、森の去就次第では順位が上がる可能性もある。

内野手~即戦力 ※一塁を除く

 内野は一塁に山川、二塁に外崎、そして遊撃に源田がおり、このレギュラー陣を超えていくのは容易ではない。ただ、全員が30歳代に突入し、外崎はFA移籍の可能性がある。遊撃以外守れる呉念庭第一工大~15年⑦)も30歳を迎え、レギュラーを脅かす若手の登場が待ち遠しい。

 その若手だが、一塁は外国人選手でも良いとして、呉の次に続くのが山田遥楓(佐賀工高~14年⑤)やルーキーの滝澤夏央(関根学園高~21年育②)で、滝澤はともかく山田は翌シーズン9年目で正念場を迎えている。

 レギュラー不在の三塁は、中村剛也大阪桐蔭高~01年②)が元気だが、さすがに来年40歳になり、ポスト中村で獲得した渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)も伸び悩んでいる状況から、今年は即戦力に絞って良いと思う。

 大学生野手に候補が多いなか、ともに遊撃手の田中幹也(亜大)奈良間大己(立正大)への評価が高い。田中は小柄ながら粘り強い打撃と守備で二塁も守れ、奈良間は走攻守にアグレッシブにプレーをするともにリードオフマン候補になる。

 このほか、友杉篤輝(天理大)も守備(遊撃)力ならトップクラスで足もあり、三塁も守れる。山田健太(立大)門脇誠(創価大)は打撃が良く、山田を獲得できれば外崎を三塁でも使えるようになる。

 社会人なら中山遥斗(三菱重工イースト)平良竜哉(NTT西日本)がおり、中山は広角に打てる巧打者。平良はフルスイングが身上のパワーヒッターで、レギュラー不在の三塁にハマる。 

☆外野手~即戦力のリードオフマン、高校生(右打ちならベスト) 

 外野で規定打席に達したのはオグレディだけで、秋山(広島)移籍以降、なかなかレギュラーが確立できない。

 楽しみな若手が多く、25歳の愛斗(花咲徳栄高~15年④)をはじめ、24歳の鈴木将平(静岡高~16年④)に若林楽人(駒大~20年④)、23歳の高木渉(真颯館高~17年育①)はファームで本塁打王を獲得し、20歳の長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)と候補は多く、来季はレギュラー獲得の期待がかかる。

 ただ、愛斗と高木以外はリードオフマンタイプで、欲を言えばスラッガー候補が欲しい。1位候補で、蛭間拓哉(早大浅野翔吾(高松商高の名前が当然挙がっているが、蛭間のほうが補強ポイントにマッチすると思う。走攻守三拍子揃ったスラッガーで、地元の浦和学院高出ということもあり、是が非とも獲得したい選手だと思う。

 高校生では、将来の中軸候補で、蛭間と同じ左のスラッガー西村瑠偉斗(京都外大西高も上位候補。このほか井坪陽生(関東一高はミート力に長けパンチ力もあり、向嶋大輔(福井工大福井高)は投手も兼任する強肩俊足で、下位でも良いので高校生は獲得したい。

 

●地元出身のスラッガー蛭間の1位指名があるか。競合必至で外野手を獲得したい

 1位指名は蛭間拓哉(早大浅野翔吾(高松商高の指名が濃厚で、矢澤宏太(日体大も投手と外野手のどちらの指名になるか分からないが、どちらにしろ外野手の1位指名になると思う。

 サプライズがあるとすれば、好投手の1本釣りで金村尚真(富士大)、森の去就を視野に松尾汐恩(大阪桐蔭高)や、他球団の評価も高い西村瑠偉斗(京都外大西高が思い浮かぶが、やはり競合覚悟で蛭間や浅野の指名になり、個人的には蛭間のほうがベストだと思う。

【指名シミュレーション】 

1位~蛭間拓哉(早大・外野手)…東京6大学で今春まで12本塁打スラッガー

2位~西村瑠偉斗(京都外大西高・外野手)…天性の打撃技術で高校通算54本

3位~森山暁生(阿南光高・投手)…最速146キロで伸びしろ十分の本格派左腕

4位~羽田野温生東洋大・投手)…最速156キロの素材型で、まだ進化の途中

5位~神野竜速(神奈川大・投手)…大学で増量して球速もアップ。直球の質が抜群

6位~土井克也(神奈川大・捕手)…屈指の強肩に、打撃も勝負強くパンチ力もある

 おススメの選手は、内藤鵬(日本航空石川高)で、ポスト中村にピッタリの長距離砲だ。180センチ100キロの堂々の体躯から、1年秋から4番に座り、通算52本塁打、守備は三塁…まさに中村を彷彿させるような選手で、若手の育成に定評のあるチームで、スケールの大きい選手になると思う。