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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆ソフトバンク~リーグ連覇に暗雲…投手は将来のエース候補、野手は世代交代が課題

●投打が噛み合わず、パ・リーグ連覇に暗雲…常勝チームに何が起こったか

 昨年パ・リーグを制し、4年連続日本一のチームが、正直ここまで苦戦するとは思わなかった。今シーズンもケガ人続出で、万全なオーダーで臨めてはいないが、その度に新戦力が台頭し、選手層の厚さをこれまでかと言うほど見せられたが、今年は終盤になっても波に乗れない状態が続き、優勝はおろかAクラスさえ危ぶまれる状況になっている。

 前半はエースの千賀滉大(蒲郡高~10年④)が故障で離脱し、6試合で防御率2点台、3勝を上げた新外国人のレイは、コロナ禍を理由に退団してしまった。リリーフ陣も、これまで一度も離脱のなかったクローザーの森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)が故障で離脱し、代役を期待されたモイネロもオリンピックでチームを離れると、復帰後もケガで調整中と、盤石を誇ったリリーフ陣が今年は日替わりでの起用になっている。

 野手陣ではリードオフマンの周東佑京(東農大北海道~17年育②)が、不調続きのうえ故障で今シーズンは絶望、グラシアルも復帰時期に目途が立っていない。また、ここ数年の課題であった世代交代も進んでいるとは言えない。

 ただ、チーム成績は悪くない。チーム防御率はリーグ1位、失策数も最小の40個で失点は最も少なく、ディフェンス面は強固だ。今年は打てないと良く言われるが、チーム打率、本塁打、盗塁はすべてリーグ3位で、得点数2位は打線が弱いわけでもない。それでもチームの成績は4位で低迷し、とにかく投打が噛み合っていない。

 個人成績では、投手では石川柊太(創価大~13年育①)が規定投球回数をクリアしている。セーブポイントは森の8セーブ(15試合)が最高で、守護神の離脱が想像以上に厳しかったのが数字からも分かる。

 野手は柳田悠岐(広島経大~10年②)が3割をキープ、栗原陵矢(春江工高~14年②)と中村晃(帝京高~07年③)、甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)が規定打席をクリアしているが、中村の打率.247は本来の数字ではなく、前半戦好調だった甲斐も、打率2割台前半まで急降下している。

【9/15現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 113試合 46勝49敗18分④

 防御率…3.27①(2.92①)打率….248③(.249③)

 本塁打…99③(126①)盗塁67③(99①)

 得点…449②(531②)失点…390①(389①)

 

●補強ポイントは先発投手と将来のエース候補!遅れている野手の世代交代への対応

 昨年は指名した全員が高校生で、1位~4位まで野手指名と、野手強化の方針を貫いたドラフトになり、チームの方針である育成を徹底する姿勢を窺えた。しかし、どうにもならないのクジ運で、田中正義(創価大~16年①)を獲得したのを最後に、現在7連敗中で、思うようには進んでいない。

 ただ、ソフトバンクはクジで外れても、一番欲しい選手を1位入札している。「選手層が厚いから」と言われるかもしれないが、最初から選手層が厚かったわけではなく、これまでの蓄積の上にあることを、他球団が学ばないのが不思議でしょうがない。

 ここ5年では、投手では高橋礼(専大~17年②)に甲斐野央(東洋大~18年①)、津森宥紀(東北福祉大~19年③)が主力になっている。加えて18年入団組の活躍がめざましく、板東湧悟(JR東日本~18年④)や泉圭輔(金沢星稜大~18年⑥)が主力になりつつあり、期待の杉山一樹(三菱重工広島)も控える。

 野手では周東が主力で、今年は三森大貴(青森山田高~16年②)が、周東に代わり二塁のレギュラーを掴んだ。また、期待の大砲候補リチャード(沖縄尚学高~17年育③)が一軍デビューを飾り、松田宣浩(亜大~05年希)に代わり、スタメンの機会が増えている。

 今年はチーム状況からしても、昨年のようなオール高校生にはならないと思うが、投手と内・外野で高校生を獲得し、即戦力で投手やポスト柳田を担えるような大学生・社会人を獲得したい。

ソフトバンクの補強ポイント】 

 投 手…即戦力・将来の先発投手

 捕 手…必要なし

 内野手…有望な高校生 ※特に左打ち

 外野手…ポスト柳田候補、リードオフマンを任せられる高校生 

 

☆投手~即戦力・将来の先発投手

 現在のローテーションは石川を中心に、復帰した千賀にベテランの和田毅早大~02年自)、東浜巨(亜大~12年①)、マルティネスで形成され、前半戦は武田翔太宮崎日大高~11年①)が好投を見せた。

 ただ来年は、和田が41歳を迎え、東浜と石川も30代、千賀と武田は29歳だが、千賀はメジャー移籍の可能性もあり、先発陣は世代交代含め、底上げが必要になる。伸び悩んでいる松本裕樹(盛岡大付高~14年①)や高橋純平(県岐阜商高~15年①)、田中のドラ1トリオの一人でも先発陣に食い込んでほいしいところだ。

 リリーフ陣は、今年は上手く機能していないが選手層は厚い。森が復調すれば、チーム最多登板の津森、ベテランの岩嵜翔市船橋高~07年①)、左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)、サブマリンの高橋礼と豊富なタレントに加え、板東と泉の今年の経験は、間違いなく来シーズンに繋がる。甲斐野も復帰し、古谷優人(江陵高~16年②)など活きの良い若手左腕も出てきており、補強は先発投手になる。

 今年の1位指名候補は、豊富な高校生右腕では、森木大智(高知高)風間球打(明桜高)畔柳亨丞(中京大中京高)の評価が高く、いずれも将来性抜群のエース候補。大学生では佐藤隼輔(筑波大)三浦銀二(法大)が1位候補で、佐藤は貴重な先発左腕だ。個人的には高校生なら風間、大学生なら三浦がホークスにはマッチする選手だと思う。森木と風間、佐藤は重複が予想されるが、小細工なしに最優先で欲しい選手を指名するだろう。

 このほかの上位候補では、達孝太(天理高)松浦慶斗(大阪桐蔭高)は入札1位で指名されても不思議ではない選手で、即戦力では隅田知一郎(西日本工大と鈴木勇斗(創価大)の両左腕、社会人ナンバーワンの呼び声高い廣畑敦也(三菱自動車倉敷)を上位指名候補でリストアップしている。

 下位指名候補では、高校生では今夏の甲子園でも好投を見せた秋山正雲(二松学舎大高)、その秋山と甲子園で投げ合った大嶋柊(西日本短大高)進学校に通う149キロ右腕の井崎燦志郎(福岡高)、最速140キロ後半のストレートが武器の大川慈英(常総学院高)の評価が高いが、大嶋は進学を表明している。

 大学生では150キロ右腕の権田琉成(明星大)をマークし、地元の独立リーグの選手にも注目している。石森大誠(火の国サラマンダーズ)は最速155キロ、奪三振率の高いリリーフ左腕で、独立リーグ初の1位指名も期待される逸材だ。チームメイトの宮沢怜士(火の国サラマンダーズ)も、小柄ながら150キロのストレートを投げ、ともに念願のプロ入りを狙う。

☆捕手~必要なし

 不動のレギュラーの甲斐は、29歳と暫くは問題なく、甲斐という高い壁で出番は少ないが、海野隆司(東海大~19年②)に九鬼隆平(秀岳館高~16年③)も控えており、補強の必要はない。

 強いて言えば、捕手登録の栗原と谷川原健太(豊橋中央高~15年③)は野手出場がほとんどで、人数が6名を少ないと思うが、25歳以下の若い選手が多く、補強するならトレードが現実的で、今年は指名があっても下位や育成になる。

内野手~有望な高校生 ※特に左打ち

 内野は世代交代が喫緊の課題だ。松田と川島慶三九州国際大~05年日③)が38歳、明石健志山梨学院大高~03年④)は36歳、中村も32歳といよいよ本格的に進めないとまずい。

 今年は二塁に三森が定着し、来年以降、周東とのし烈なレギュラー争いに注目だ。三塁には栗原が入ることもあり、最近はリチャードが頭角を現してきた。ファームでは増田珠(横浜高~17年③)をはじめ、内野には若手の有望選手が揃っているが、さらに層を厚くして競争を促したい。

 今年の状況から、二塁と三塁の目途が立ちそうなので遊撃手を強化したい。粟飯原龍之介(東京学館高)は走攻守揃いパンチ力もある左打ちで、是非とも獲得したい選手。清水武蔵(国士館高)は、栗原と同じく捕手と外野手も守れる右のスラッガー大内信之介(JPアセット証券)は、二遊間守れる俊足巧打の選手で、それぞれが遊撃手の強化になる。また高校生野手で、広角に打ち分けるスラッガー阪口楽(岐阜一高)渡邊大和(高野山高)の評価が高く、阪口は上位で間違いなく消える選手で、3年連続野手1位指名の可能性もある、

☆外野手~ポスト柳田候補、リードオフマンを任せられる高校生 

 外野は内野ほど焦ることはない。柳田が33歳を迎えるが、栗原や牧原大成(城北高~10年育⑤)、誰もが復活を期待する上林誠知(仙台育英高~13年④)も控える。ファームでも柳町達(慶大~19年⑤)や阪神から移籍した中谷将大(福岡工大城東高~10円ン③)が好成績を上げており、じっくり素質型の選手を育成したい。

 ポスト柳田候補はそうそういないが、吉野創士(昌平高)は天性とも言えるリストワークで広角に長打が打て、俊足で守備も巧い。今春のセンバツで注目を集めた前田銀治(三島南高)は、恵まれた体格からの強打と俊足の外野手。梶原昂希(神奈川大)は、プレースタイルが柳田を彷彿させる選手で、身体能力が高く走攻守三拍子揃った素質型の大学生だ。このほかには正木智也(慶大)は、ソフトバンクが欲しがる右打ちのスラッガーで、間違いなく上位で消える選手。また、奥村元基(京都精華高)は右打ちの好打者でパンチ力もある。

 

●今年のドラフトは豊富な高校生右腕か、即戦力先発左腕か、重複覚悟で臨む

 今年も1位指名は、即戦力より育成主体で高校生指名になると思う。一番の候補は風間球打(明桜高)で、ソフトバンクが育成を得意とするパワーピッチャー。森木大智(高知高)畔柳亨丞(中京大中京高)の右の本格派を、千賀の後継として獲得したい。即戦力では、不足する先発左腕で佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大、本科派右腕で三浦銀二(法大)廣畑敦也(三菱自動車倉敷)指名の可能性も高く、隅田や三浦は地元出身で、場合によっては1位入札の可能性もある。

【指名シミュレーション】 

1位~風間 球打(明桜高・投手)

 …最速153キロの右腕で、変化球の精度も高く、奪三振率が高い本格派

2位~梶原 昂希(神奈川大・外野手)

 …高い身体能力から、広角に強い打球を飛ばせるスラッガーで足も速い

3位~粟飯原龍之介(東京学館高・内野手

 …1番打者ながら、高校通算33本塁打のパンチ力もある注目の大型遊撃手

4位~秋山 正雲二松学舎大高・投手)

 …内角を大胆につく投球で、甲子園初戦で完封勝利。リリーフの適性も高い

5位~石森 大誠(火の国サラマンダーズ・投手)

 …最速155キロを超える速球派の左腕。リリーフ陣の救世主になれる逸材

6位~井崎燦志郎(福岡高・投手)

 …進学校で計算されたトレーニングを駆使し、着実に直球の威力と球速アップ

7位~前田 銀治(三島南高・外野手

 …がっちりとした体格からスイングスピードの早いスラッガーで、足も速い