ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

広島~投手王国の道を進む一方、攻撃陣の再編が課題

 暫く前に広島のドラフトを紹介した。広島はメジャー型のチームの運営を実現し、オーナーをトップに組織が一本化されている。

 ドラフトの基本方針も明確で、欠かせないのはオリジナルの年齢表だ。縦軸に年齢、横軸にポジションを配置した表で左右にも分類されており、不足しているポジションが一目で分かるようになっており、私も活用させてもらっている。

 

●1位指名は社会人投手から大学生投手へ

 直近10年のドラフトの指名人数は60名は3番目に少ない。高校生指名が48%で半分を占め、大学生は33%、かつての十八番だった社会人指名は17%で最も少なく、4年連続で指名がなく、正直バランスが良くない。

【過去10年のドラフト1位指名選手

 10年⑤ 福井 優也(早大・投手)現楽天    高②大②社③(投手⑥野手①)

 11年⑤ 野村 祐輔(明大・投手)     高①大③社⓪(投手②野手②)

 12年④ 高橋 大樹(龍谷大平安高・外野手)高③大①社①(投手⓪野手⑤)

 13年③ 大瀬良大地(九共大・投手)    高①大②社②(投手④野手①)

 14年③ 野間 峻祥(中部学院大・外野手) 高④大②社①(投手④野手③)

 15年④ 岡田 明丈(大商大・投手)    高②大①社④(投手④野手③)

 16年① 矢崎 拓也(慶大・投手)     高④大②社⓪(投手⑤野手①)

 17年① 中村 奨成(広陵高・捕手)    高④大②社⓪(投手④野手②)

 18年① 小園 海斗(報徳学園内野手)  高⑤大②社⓪(投手②野手⑤)

 19年④ 森下 暢仁(明大・投手)     高③大③社⓪(投手③野手③)

 

 09年~18年の直近10年のドラフトの成功率は16.7%で、全体で6位とさすが安定感である。投手では野村と大瀬良、岡田のほかに、今村猛清峰高~09年①)と中崎翔太日南学園高~10年⑥)が基準値をクリアし、九里亜蓮(亜大~13年②)も成功と言える。ケガで活躍した年は少ないが。薮田和樹(亜大~14年②)や、今年ブレイクした床田寛樹(中部学院大~16年③)と上位指名選手が確実に主力になっている。

 野手では野間のほかに、菊池涼介中京学院大~11年②)に田中広輔JR東日本~13年③)、西川龍馬(王子~15年⑤)が成功だが、最高の成功は鈴木誠也二松学舎大高~12年②)で、広島の基本方針の4番ピッチャーのアスリート型で、日本の4番打者までに成長した。

 

●丸の抜けた穴を埋めることができず、まさかのBクラス転落

 今年は5月に11連勝をして、今年も独走で4連覇かと思ったところ、交流戦で大きく負け越しすると、6月以降は勝ち越しすることができず、最後は阪神のまさかの連勝でBクラスでシーズンを終えた。

 とにかく巨人へ移籍した丸佳浩の穴が大きかった。タナキクマルの一角が崩れたことで、菊池は最低限の成績は残せたが、田中が.193の大不振に陥り上位打線が機能しなかった。

 丸の後釜の一番候補だった野間も規定打席に届かず、好調を維持していたバティスタもドーピング違反で出場停止になるなど、最後まで勢いを欠いた。それにしてもたった一人抜けただけで、ここまで悪くなるとは誰も想像だにしなかっただろう。

 そのなかでも何とか最後までCS争いができたのは投手陣の活躍で、大瀬良とジョンソンが11勝を上げ、九里と床田、野村でローテーションを維持することができた。抑えも中崎は不振だったが、フランスアが代役を務め、新加入のレグナルトや楽天から移籍した菊池保則が、50試合以上に登板し穴を埋めることができた。

 先回、リーグ優勝した16年から極端に育成志向に偏ってないかという懸念を述べたが、FA流失の可能性のあった丸の後継者育成が上手く進まなかった。今年、野間は不振だったが、昨年は規定打席に達しレギュラークラスだったので量的にはもう一枚必要で、内野守備に難がある西川を外野に使っても、内野が一枚薄くなるだけで解決にはならない。

 16~18年で即戦力野手の獲得も、昨年の正随優弥(亜大~18年⑥)のみで、ようやく外野も守れる捕手の坂倉将吾(日大三高~16年④)が出場機会を増やしたが、残念ながら期待に応えることはできなかった。

 今年は菊池がポスティングでメジャー移籍、来年は田中にFAの可能性があり、野手の後継者育成は喫緊の課題である。当然、小園が最有力候補だが、今年のファームでも結果を残した野手はいなく、実績のある安倍友裕(福岡工大城東高~08年高①)や堂林翔太中京大中京高~09年②)の復調、楽天から移籍してきた三好匠(九州国際大高~11年③)に否応なく期待がかかる。

 ところで、広島はFAは流失のみで人的補償の成功以外の恩恵がないが、TV中継を観ていてもマツダスタジアムは満杯で、ビジターでもスタンドは赤に染まり、熱狂的なファンを抱える人気球団。そんなに財政に逼迫しているような気がしないのだが…

 

●投手王国の道を着々に進む一方、攻撃陣の再編は遅れ気味

1位~森下 暢仁(明大・投手)18

 佐々木(ロッテ)と奥川(ヤクルト)と並ぶ投手BIG3の森下の単独指名に成功しただけで、今ドラフトは十分に成功したと言える。即戦力という点で見れば、森下はナンバーワンで、155キロのストレートを軸に、カーブやチェンジアップの精度も高く、先発ローテーション候補として計算できる投手だ。

 年齢でも22歳の右腕は一人もおらず、ジョンソン(35歳)、野村(30歳)、大瀬良と九里(28歳)、岡田(26歳)、床田(24歳)と年齢バランスが取れており、レベルの高い先発陣に食い込みたいところだ。森下の下には21歳のアドゥワ誠(松山聖陵高~16年②)と高橋昴也(花咲徳栄高~16年⑤)、20歳の山口翔(熊本工高~17年②)と遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)が控えており、先発陣がさらに盤石になった。

2位~宇草 孔基(法大・外野手)38

 高校時代から日本代表入りし、50メートル5秒8は大学球界屈指の俊足だ。大学時代はパワーも見せつけたが、プロではやはり俊足を活かし、大学時代と同様に一番打者を目指したい。

 現時点で外野のレギュラーは鈴木のみで、来シーズンで言えば野間やバティスタ、ベテランの長野に新外国人のピレラがライバルになる。

 森下同様、年齢的にも22歳は空白の年代で、鈴木より下の年齢で現時点でレギュラー候補は見当たらない。俊足のリードオフマン候補も、育成から支配下登録になった大盛穂(静岡産大~18年育①)しかおらず、まず自慢の足からチャンスを掴みたい。

3位~鈴木 寛人(霞ケ浦高~投手)52

 186センチの高身長から投げおろす右の本格派右腕。最速150キロのストレートとスライダーが武器で、今夏の甲子園大会では初戦で履正社高に打ち込まれたが、広島の評価は揺るがず、一時は外れ1位指名にも挙がった逸材である。

 広島は08年からの統一ドラフトで、高校生投手を指名しなかったのは12年の一度だけで、常に空き年齢を作らないよう高校生投手の指名を続けている。ただ、高卒の先発投手に限っていえば、06年1位の前田健太(PL学園高)以降、主力選手が誕生していなく、同じ高校の先輩・遠藤と先発候補としてしのぎを削ってほしい。

4位~韮澤 雄也(花咲徳栄高・内野手)54

 バットコントロールに優れた巧打者で、今年のU-18でも木製バットへの適性力を見せ一塁手ベストナインに輝いた。本来は遊撃手で肩も強く、宇草とは逆に打力がアピールポイントの選手だ。

 同じ遊撃には田中がレギュラーでいて、小園が次の候補として控えている。しかも昨年は、高校生内野手だけで3名も指名しておりライバルは多い。足が武器にならない分、高い打撃力でレギュラーを狙いたい。

 ただ、韮澤は良い選手であるが、スイッチヒッターの上本崇司(明大~13年③)を除けば、広島の内野手は13名中7名が左打で、林晃汰(智弁和歌山高~18年③)以外は同じような巧打者タイプ。年齢バランスでも急ぐ必要はなく疑問は残る。

5位~石原 貴規(天理大・捕手)62

 正確なスローイングと守備に定評があり、4年春のリーグ戦で首位打者を獲得するなど打撃も着実に成長している。当初は地元の阪神がリストアップしていたが、広島が絶妙のタイミングで獲得した。

 期待の若手の中村奨や坂倉も、レギュラーの曾澤翼(水戸短大付高~07年高③)やベテランの石原慶幸東北福祉大~02年④)を脅かすまでにはならず、二人の起爆剤の意味もあり獲得したことが推察される。でなければ、ともに打撃に定評のある中村奨は三塁手、坂倉は外野手へのコンバートの可能性も帯びる指名になった。どちらにしろ背番号62に捕手としての期待が窺える。

6位~玉村 昇吾(丹生高・投手)65

 今夏の福井大会で、無名の公立校が強豪校を破り快進撃を続け、決勝で敦賀気比高に惜敗したが、その原動力になったのが玉村である。最速147キロのストレートにスライダーやチェンジアップを駆使し、奪った三振52個(42回1/3)は福井大会の新記録である。正直、5位くらいで消えると思っていたので、広島が6位で獲れたのは大きかった。

 プロではどのポジションを目指すか分からないが、広島の左腕は外国人選手を除くと先発タイプが多く、高い奪三振率からワンポイントや中継ぎなら出番が早いと思う。同じ6位でクローザーになった中崎のような活躍が期待できる投手だ。

育成指名

 育成1位の持丸泰輝(旭川大高・捕手)は、捕手指名は守備が及第点なのは当然だが、魅力はシュアな打撃とキャプテンシーで、打てる捕手としての期待が高い。

 2位の木下元秀(敦賀気比高・外野手)は、本指名も有力視された広角打法の巧打者で、セールスポイントの打撃力で支配下を勝ち取りたい。

 3位は畝章真(四国香川・投手)で、元広島の畝辰実の実子で、技巧派の横投げ右腕だが、いまだに縁故入団があるんだと思い、最後の最後で少し興ざめした。

 

 今年のドラフトは、即戦力ナンバーワン森下の獲得と、2位以降のバランスの良さで成功とした。ただ、盤石になりつつある投手陣とは裏腹に、昨年の丸、今年の菊池の移籍など野手の世代交代のスピードは想定以上に早く、優勝を目指すには攻撃陣の再編がカギを握る。