●打線で怖いのは大島とビシエドだけ…リーグ最下位の貧打で再びBクラス
良い意味で期待を裏切ったのがヤクルトなら、本当に期待を裏切ってしまったのが中日だ。昨年は長いトンネルを抜けて、12年以来のAクラスになり、今年は優勝候補にも挙げられていたが、優勝争いに絡むことなく、Bクラスが確定的になっている。
昨年と同じで、今年もとにかく打てない。広いバンテリンドームだから、本塁打が少ないのは百歩譲って理解しても、今年はチーム打率もリーグ最下位で、貧打に益々磨きがかかっている。長打が出ないなら四球で粘るとか、機動力を使うなどの対策も考えられるが、盗塁はリーグ4位、四球はリーグ最下位で、要は打てないから相手投手にガンガン攻められており、チームの出塁率は12球団で唯一3割に届いていない。
今年も規定打席に達成しているのは、大島洋平(日本生命~09年⑤)と高橋周平(東海大甲府高~11年①)、ビシエドの3名で昨年と変わらない。言い換えれば絶対的なレギュラーはこの3名だけで、あとは捕手の木下拓哉(トヨタ自動車~15年③)と遊撃の京田陽太(日大~16年②)が主力を担っている。ただ、昨年3割の高橋周は今年は打率.250で低迷し、京田は守備は一級品だが打撃に課題があり、このチャンスを掴む若手がひとりも出てこないのはとにかく寂しい。
一方で投手陣は、チーム防御率リーグ1位で、失策数も巨人に次いで少ない。柳裕也(明大~16年①)は防御率1位を独走し、エースの大野雄大(佛教大~10年①)は3位、小笠原慎之介(東海大相模高~15年①)は5位と好成績を収めている。ただ、大野は6勝、小笠原は7勝と防御率とは裏腹に勝ち星は上がっていない。
リリーフ陣も盤石で、Rマルティネスがチーム最多の18セーブ、リーグ最多登板の又吉克樹(四国IL香川~13年②)に祖父江大輔(トヨタ自動車~13年⑤)、福敬登(JR九州~15年④)の勝利の方程式は今年も健在。藤嶋健人(東邦高~16年⑤)や谷元圭介(バイタルネット~08年日⑦)も加わり、質量ともにリリーフ陣の層は厚い。
【9/15現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 114試合 46勝54敗14分④
防御率…3.16①(3.84④)打率….242⑥(.252④)
本塁打…63⑥(70⑥)盗塁54④(33⑤)
得点…350⑥(429⑥)失点…373①(489④)
●着実に投手王国の道は出来ているが、若手野手の伸び悩みが課題
昨年も打撃陣強化が課題のなか、地元の高橋宏斗(中京大中京高~20年①)を単独1位指名し、投手4名、野手2名を指名し、うち高校生4名の将来性を重視したドラフトになった。これはこれで良いし、評価できるドラフトで、根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)や石川昂弥(東邦高~19年①)の台頭を見越したうえでの戦略だったと思うが、ここまで若手が伸び悩むのは想定外だったと思う。
ここ5年のドラフトでは、16年は柳に京田、藤嶋に笠原祥太郎(新潟医療福祉大~16年④)を指名し大当たりだったが、17年以降は梅津晃大(東洋大~18年②)や勝野昌慶(三菱重工名古屋~18年③)など、投手はそれなりに成績は残しているが、一軍半の選手が多い。野手に至っては京田以降、レギュラーはおろか一軍定着すらままならない状況になっている。
ファームではチーム打率は決して高くないが、有望な若手は揃っている。チーム最多本塁打の石垣雅海(酒田南高~16年③)や最多盗塁の岡林勇希(菰野高~19年⑤)、長打率が高く足も速い伊藤康祐(中京大中京高~17年⑤)は、是非一軍で経験を積ませて欲しいと思う。
今年は高校生投手が豊富で、エース候補を獲得したいところだが、やはり打撃強化が課題になる。特に上位候補の野手が限られているため、昨年とは逆に野手+即戦力中心のドラフトになると予想する。
個人的には走攻守3拍子揃った好打者より、西武の山川やオリックスの杉本のように、走力や守備に目をつぶってでも、広いバンテリンドームを苦にしない長距離砲を獲得して欲しい。
【中日の補強ポイント】
投 手…高校生を中心にした素材型
捕 手…将来のレギュラー候補の高校生 ※左打ちならベスト
内野手…長打力のある即戦力社会人選手
外野手…即戦力スラッガー ※右打ちならベスト
☆投手~高校生を中心にした素材型
現在のローテーションは、左右のWエース大野と柳、小笠原を中心に、福谷浩司(慶大~12年①)に勝野、松葉貴大(大体大~12年オ①)で形成されている。左右それぞれ3枚ずつ、年齢も20代後半から30代前半ずつで、経験も体力も充実している選手が多い。故障で戦列を離れているが、梅津や笠原が復調すれば暫く心配する必要はない。
一方でリリーフ陣は高齢化が心配だ。谷元の36歳を筆頭に、祖父江が34歳、又吉が31歳と経験がモノを言う役割だけに、若手の台頭が必要だ。ただ、23歳の藤嶋が強力リリーフ陣の一角を担い、鈴木博志(ヤマハ~17年①)や佐藤優(東北福祉大~15年②)のリリーバーや、ファームではマルク(龍谷大~17年育②)が好投を見せており、投手陣には隙はない。
今年は、将来の投手王国を見据えた将来性豊かな高校生と、左のリリーバーを補強したたい。
将来のエース候補では、中日も森木大智(高知高)と小園健太(市和歌山高)、風間球打(明桜高)を高く評価し、併せて即戦力の佐藤隼輔(筑波大)が1位候補だ。近年、地元志向が強く、今年も畔柳享丞(中京大中京高)がいるが、投手1位指名なら重複覚悟で森木や小園、風間に行くだろう。
このほか上位候補で、高校生では達孝太(天理高)に松浦慶斗(大阪桐蔭高)、木村大成(北海高)、大学生では三浦銀二(法大)に、今年豊富な左腕で鈴木勇斗(創価大)に隅田知一郎(西日本工大)、黒原拓未(関西学院大)、社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)に山田龍聖(JR東日本)を漏れなくマークしており、着実に投手王国の準備を進めている。
下位指名候補では、高校生では細谷怜央(中央学院高)と床枝魁斗(修徳高)、篠原颯斗(池田高)は直球で押すパワーピッチャーで、井崎燦志郎(福岡高)と福島蓮(八戸西高)はフォークが武器の右の本格派。市川祐(関東一高)は精度の高い変化球が武器の技巧派で、甲子園でも活躍した阪上翔也(神戸国際大高)は打者としても評価が高い。また、地元枠で成長著しい竹山日向(享栄高)や甲子園でも好投した寺嶋大希(愛工大名電高)をリストアップしている。
左腕では代木大和(明徳義塾高)は粘り強くゲームを作れる投手、秦勝利(神村学園高)は148キロの本格派左腕、左のスリークオーター井上透摩(金沢龍谷高)は、リリーフで貴重な戦力になるだろう。
大学生では北山亘基(京産大)と扇田大勢(関西国際大)は直球に威力があり、飯田琉斗(横浜商大)は長身から投げ下ろす右の本格派。伊藤綾(中京大)と松井友飛(金沢学院大)はキレのある直球が武器で、徳山壮磨(早大)と左腕の桐敷拓馬(新潟医療福祉大)は、バランスに長け総合力が高く、北山、伊藤、松井、桐敷は今秋のリーグ戦で評価をさらに上げている。
☆捕手~将来のレギュラー候補の高校生 ※左打ちならベスト
昨年から木下がレギュラーを獲得したが、控えはAマルティネス以下、どうにも決め手を欠いており、木下が離脱でもしたら一気にチーム状況が厳しくなる。期待の若手で郡司裕也(慶大~19年④)や石橋康太(関東一高~18年④)がいるが、将来の正捕手候補を獲得したい。
一番の候補は地元の高木翔斗(県岐阜商高)で、強肩で高校通算30本塁打のスラッガーで正真正銘の打てる捕手になれる逸材。即戦力では古賀悠人(中大)が今年のドラフトのナンバーワン捕手で、二塁送球タイムは一番の1.8秒で、打力も申し分なく木下の即ライバルになれる可能性を秘めている。
下位指名では、村山亮介(幕張総合高)も右打ちの長距離砲で強肩、久保田拓真(関大)も勝負強い打撃がセールスポイントの打てる捕手で今年は補強が必要だ。
☆内野手~長打力のある即戦力社会人選手
内野はドラフトよりも現有戦力の底上げが課題になる。高橋周と京田はともに27歳と、これから全盛期を迎える。23歳以下に石橋に根尾、石川、先日一軍デビューした土田龍空(近江高~20年③)も控え、期待の若手を徹底的に鍛え、起用していくほうが良い。強いて言えば、年齢バランスで、24歳~26歳が不在なので、即戦力の社会人野手の獲得を推したい。
中川智裕(セガサミー)は、逆方向にも長打が打て遊撃守備も堅実。走攻守揃った杉崎成輝(JR東日本)に、守備に定評のある和田佳大(トヨタ自動車)は、スラッガーではないが、いずれも戦力になると思う。
一方で、打力が課題なだけに将来性を見据えて高校生野手も当然リストアップしている。広角に打てるスラッガーの阪口楽(岐阜一高)、1年から4番を打つ高校通算70本塁打の有薗直輝(千葉学芸高)は上位で確実に消える選手。ともに遊撃手の粟飯原龍之介(東京学館高)と地元の星野真生(豊橋中央高)もパンチ力があり、指名の可能性が十分にある。大学生では、飛距離が魅力の中山誠吾(白鷗大)への評価が高く、中山あは遊撃の守備も巧い。
☆外野手~即戦力スラッガー ※右打ちならベスト
深刻なのが外野だ…。レギュラーの大島は36歳、平田良介(大阪桐蔭高~05年①)は33歳、福留孝介(日本生命~98年①)は44歳で、主力がいずれも高齢化している。トレード加入の加藤翔平(上武大~12年ロ④)は、リーグが変わっても残念ながらレギュラー候補の殻を破れていない。
ポスト大島がは大きなか課題だが、私は根尾を推している。京田がいる以上、遊撃のレギュラーポジションを奪うのはなかなか難しく、外野に専念して打撃を磨くのも手だと思う。また、2年目の岡林も控えており、この2人がポスト大島にハマることを期待したい。
外野はとにかく長打力にこだわった指名で良いと思う。一番の候補は正木智也(慶大)で、守備と走塁に課題はあるものの、大学ナンバーワンスラッガーで中軸を期待できる。その正木にひけをとらない長打力を秘めているのがブライト健太(上武大)で、今春から急成長してドラフト候補まで成長して選手で、まだまだ伸びしろがある。鵜飼航丞(駒大)も、100キロの恵まれた体からの飛距離は抜群で、大型選手の割に足も遅くない。
高校生でも今夏の甲子園で活躍した前川右京(智弁学園高)と田村俊介(愛工大名電高)はともに左のスラッガーで、地元の田村は是非とも欲しい選手だ。このほか、広角に長打が打てる吉野創士(昌平高)、スイングスピードの早い前田銀治(三島南高)をリストアップしている。即戦力では、向山基生(NTT東日本)は右の巧打者で走攻守3拍子揃っており、ポスト大島を考えれば指名の可能性が高い選手だ。
●今年は長打を打てる即戦力野手指名か?投手王国をさらに強化するか?
今年の1位指名は、即戦力野手でいってほしい。一番の候補は正木智也(慶大)で、阪神の佐藤やDeNAの牧の活躍を見れば、来年開幕メンバーに名前を連ねる可能性もある。一方で投手王国を目指して、森木大智(高知高)に小園健太(市和歌山高)、風間球打(明桜高)の高校生に、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)を重複覚悟で指名する可能性も高い。
【指名シミュレーション】
1位~正木 智也(慶大・外野手)
…飛距離が魅力の強打者で、勝負強い打撃で打点も多い。一塁と外野を守れる
2位~ブライト健太(上武大・外野手)
…高い身体能力から、フルスイングで驚異の飛距離で圧倒!50M5秒8の俊足
3位~高木 翔斗(県岐阜商高・捕手)
…高校通算30本塁打の打てる捕手。二塁送球タイム1.85秒の強肩の正捕手候補
4位~北山 亘基(京産大・投手)
…最速151キロ、スプリットが武器の右の本格派。先発・リリーフともに適性
5位~桐敷 拓馬(新潟医療福祉大・投手)
…豊富な変化球と最速149キロを武器に大崩れしない左腕、今春5勝を挙げた
6位~鵜飼 航丞(駒大・外野手)
…100キロの大柄な体格から本塁打を量産する長距離砲で、守備や走塁も無難
7位~代木 大和(明徳義塾高・投手)
…今夏の甲子園でも粘り強い投球で、打たせて取る能力に長けた技巧派左腕