ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆ロッテ~狙いは先発左腕だが、得点力不足解消のため即戦力野手も必要

●得失点差マイナスながら、守りを中心にしたそつない野球で優勝争いを続ける

 今年、一番健闘しているチームはどこかと聞けば、ロッテと答えるプロ野球ファンが多いのではないかと思う。

 シーズン前に、先発ローテ当確だった西野勇士(新湊高~08年育⑤)が肘の手術でシーズン絶望、FA加入の福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年ソ高①)も骨折で離脱した。セットアッパーのジャクソンは退団、主砲のレアードも故障で帰国、エース格の働きをしていた種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)も、肘の手術で今シーズンの復帰は絶望になった。

 さらに唯一の3割打者だった荻野貴司トヨタ自動車~09年①)は足のケガ、正捕手の田村龍弘光星学院高~12年③)も骨折で一時期チームを離れ、21ホールドのハーマンも故障で離脱、そして新型コロナの集団感染で主力選手の大量離脱…とまさに満身創痍の状況のなか2位をキープし、優勝争いに留まっている。

 特筆するのは得失点差で、マイナスながら2位を維持しているのは驚きだ。特に、チーム打率はリーグ最下位で得点力が不足し、野手で特筆した成績を挙げている選手がいない。井上晴哉日本生命~13年⑤)の打率.254がチーム最高で、中村奨吾(早大~14年①)、マーティン、若き4番の安田尚憲(履正社高~18年①)が規定打席に達しているだけだ。そのなかでマーティンがリーグ5位、井上が6位の打点を挙げており、少ないチャンスを活かして接戦をものにしてきた。

 接戦に強いチームの原動力になったのが投手陣で、FA加入した美馬学東京ガス~10年楽②)はチームトップの9勝、石川歩(東京ガス~13年①)とWエースを形成し、二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)と岩下大輝(星稜高~14年③)、2年目の小島和哉(早大~18年③)がローテーションを守っている。

 リリーフ陣はリーグ屈指の布陣で、7回に唐川侑己(成田高~07年高①)、8回に復活を遂げた澤村拓一(中大~10年巨①)、9回のクローザー益田直也関西国際大~11年④)はリーグトップの29セーブを挙げ、勝利の方程式が確立した。さらにハーマンや小野郁(西日本短大高~14年楽②)、東條大樹(JR東日本~15年④)が盤石のリリーフ陣を支えている。

 井口監督は1年目に走る野球、2年目は長打を活かした野球、そして3年目にリーグ最少の失策数が示すように、そつのない堅守のチームに成長させた。また、昨年のストーブリーグに続き、シーズン前に鳥谷敬早大~03年神自)、トレードで澤村を獲得し、元中日のチェン・ウェインの入団など、話題にも事欠かなった。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 55勝44敗2分②

 防御率…3.90②(3.90④)打率….237⑥(.249⑤)

 本塁打…80④(158③)盗塁77③(75④)

 得点402⑤(642②)失点414②(611④)得失点差▲12(31)

 

 ロッテはここ数年、高評価のドラフトを展開しており、クジ運の強さもあるが、平沢大河(仙台育英高~15年①)、佐々木千隼(桜美林大~16年①)、安田、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)、佐々木朗希(大船渡高~19年①)と、いずれも抽選で獲得している。また、この5年の間に高校生野手を3名も1位で指名する姿勢は、常勝チームを作るための球団方針の確かさを象徴している。

 残念ながらまだ主力になりきれていないドラ1組だが、ドラフトの成果は出ている。投手では先発で種市に小島、中村稔弥(亜大~18年⑤)、リリーフで東條に有吉優樹(九州三菱自動車~16年⑤)、東妻勇輔(日体大~18年②)が結果を出している。

 野手では藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)が遊撃のレギュラー、菅野剛士(日立製作所~17年④)が今年一軍に定着し、ルーキーの佐藤都志也(東洋大~19年②)も打てる捕手として経験を積んでいる。 

【ロッテの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 捕 手…高校生捕手

 内野手…将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 外野手…即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 

●投手王国も夢ではない即戦力投手の獲得か、課題の得点力不足を解消したい

☆投手~将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 投手陣は主力が30代に差し掛かり、美馬が34歳、石川と澤村、松永昴大(大阪ガス~12年①)が32歳、益田と唐川が31歳、東條と西野も30歳になる。こう見ると心配になってくるが、世代交代が上手く進んでいる。

 先発では二木が25歳、岩下と小島、中村稔が24歳、種市が22歳と若手が主力に成長している。ファームで結果を残している20歳の古谷拓郎(習志野高~18年⑥)に、160キロ超えの佐々木朗もおり、今後に楽しみな布陣が並ぶ。リリーフ陣も小野と東妻はともに24歳で、どちらがポスト益田になるか興味は尽きず、投手王国も夢ではない布陣が固まりつつある。

 投手は幾らでもいたほうが良いのは、チーム作りの鉄則だ。ロッテに必要なのは小島しかいない先発左腕、ポスト益田のクローザー候補と、手薄な中継ぎ左腕だ。年齢バランスは決して良くはないが、25歳以下に絞れば大学生と高校生、社会人なら高卒3~4年目がベストだ。

 すでに公言しているが、1位指名は早川隆久(早大で決まった。即戦力の先発左腕で大学生、そして地元千葉出身と、すべて補強ポイントに合致している。早川を外した場合は、中森俊介(明石商高等の将来のエース候補、即戦力の先発投手で大道温貴(八戸学院大や高卒3年目の小野大夏(ホンダ)、クローザー候補で伊藤優輔(三菱日立PS)伊藤大海(苫小牧駒大)が上位候補に挙がっている。

 この間の流れから、高校生投手も1~2名は抑えておきたい。下慎之介(健大高崎高)根本悠楓(苫小牧中央高)高田琢登(静岡商高)は先発左腕候補。他にも2メートルの大型右腕の秋広優人(二松学舎大高)にパワーピッチャーの内田了介(埼玉栄高)、総合力の高い川瀬堅斗(大分商高小辻鷹仁(瀬田工高)豆田泰志(浦和実高)の評価が高い。

 中継ぎ左腕では佐藤宏樹(慶大)伊藤将司(JR東日本は先発もこなせ、岡田和馬(JR西日本も候補になる。また、左腕ではないが山本晃希(日本製鉄かずさマジック)白石翔希(東農大)を以前より高く評価しており、指名の可能性が高い。

 

☆捕手~高校生捕手

 捕手は26歳の田村がレギュラーで、27歳の柿沼友哉(日大~15年育②)が2番手捕手を務め、ルーキー佐藤の加入でようやく駒が揃った。ただ、年齢バランスが非常に悪く、今年佐藤が入団するまでは田村が最年少という構成で、今年は高校生捕手の獲得が必須になる。

 大学生・社会人に比べ、今年の高校生捕手はまずまずの選手が揃っており、内山壮真(星稜高)を筆頭に二俣翔一(磐田東高)、地元の古谷将也(成田高)和田泰征(習志野高)と逸材が並ぶ。

 

内野手~将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 内野手は一塁に井上、二塁に中村奨、三塁に安田、遊撃に藤岡とレギュラーは固まっているが、いずれも打撃面では物足りない。ただ、レギュラーと控えの差が大きく、平沢の伸び悩みもあり層は薄い。年齢バランスは悪くなく、有望な高校生と即戦力で二遊間を任せられる選手が候補になる。

 高校生では井上朋也(花咲徳栄高)岡本大翔(米子東高)は右打ちのスラッガー、高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)は将来の主軸候補。逸材が揃う遊撃手では土田龍空(近江高)は守備力が高く、度会隆輝(横浜高)入江大樹(仙台育英高)の打撃力の高い選手をリストアップしている。

 即戦力野手では牧秀悟(中大)は補強ポイントに合い、渡部健人(桐蔭横浜大は飛距離が魅力な面白い選手、平山快(JFE東日本)も二塁以外は守れるいずれも右打ちのスラッガーだ。他には守備力の高い元山飛優(東北福祉大に、俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎)は課題の二遊間の補強になる。

 

☆外野手~ 即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 外野は荻野に清田育宏(NTT東日本~09年④)、角中勝也(四国IL高知~06年年大社⑦)、福田秀がいずれもの30歳を超えたが、ここも投手同様に世代交代が上手く進んでいる。菅野が頭角を表し、20歳の藤原と21歳の和田康士朗(BC富山~17年育①)が一軍で経験を積んでいる。ファームでも巧打者の高部瑛斗(国士館大~19年③)とスラッガーの山口航輝(明桜高~18年④)がともに結果を残している。

 年齢バランスも悪くなく、来田涼斗(明石商高も高く評価しており悪くはないが、藤原や和田がおり優先順位は高くないと思う。一番はやはり右打ちのスラッガーで、課題の得点力不足を解消したい。一番のおススメは今川優馬(JFE東日本)で、俊足のスラッガーに加え、明るい性格のムードメーカーで、個人的には是非獲ってもらいたい選手だ。

 この他にも高校通算53本塁打西川僚祐(東海大相模高)や荻野を目標にしている俊足の並木秀尊(独協大はともに右打ち、五十幡亮汰(中大)は、機動力を活かすロッテのチームカラーに合っている選手だ。また、来田と同じくスラッガー山本大斗(開星高)もリストアップしている。

 

●1位は早川を公言!即戦力と育成を合わせた秀逸なドラフトに今年も期待

 今年の1位指名は早川隆久(早大を公言しており、4~6球団の指名が予想され、クジ運の強さが今年も発揮できるか注目したい。早川を外した場合は、そのまま即戦力投手で大道温貴(八戸学院大伊藤優輔(三菱日立PS)、将来性で中森俊介(明石商高のどちらにシフトするか注目だ。

【指名シミュレーション】 

 1位~伊藤優輔(三菱日立PS・投手)…中大時代もドラフト候補だったが、即戦力を目指すために社会人に進んだ。最速149キロのストレートに変化球も多い総合力の高い投手で、プロではリリーバーとしての適性が高く評価されている。

 2位~内山壮真(星稜高・捕手)…名門校で1年より遊撃のレギュラーを務め、高校通算34本塁打、昨夏は4番を務め甲子園準優勝を経験した。新チームで捕手へ転向し、打力とともに、フットワークの良さとリード面の評価が高い。

 3位~小野大夏(ホンダ・投手)…社会人2年目に最速150キロを超え、まだ伸びしろを感じさせる本格派右腕。苦手の変化球もフォークやカーブが武器になってきた。

 4位~土田龍空(近江高・内野手…1年時から遊撃のレギュラーを掴み、高校生離れした守備力は抜群。50メートル6秒の俊足に、ミートの巧い打撃でバランスが良い。

 5位~下慎之介(健大高崎高・投手)…遅れて出てくる左腕から、伸びのあるストレートと鋭いスライダーを武器に奪三振能力が高い。好不調の波が大きいのが課題。

 6位~山本晃希(日本製鉄かずさマジック・投手)…恵まれた体格から威力抜群のストレートにスライダーを武器に、社会人で打たせて取る投球も身につけた。

 7位~岡本大翔(米子東高・内野手…チームでは投手も務める強肩の遊撃手。190センチの体格から繰り出すパワーが魅力だが、遠くに飛ばす技術も持ち合わせている。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心になりそうで、総合力の高い常田唯斗(飯山高)嘉手苅浩太(日本航空石川高)片山楽生(白樺学園高)。野手では和田泰征(習志野高)山本大斗(開星高)が候補になる。白石翔希(東農大)もロッテが評価している右腕だ。