●今年も主力が離脱するも、圧倒的な選手層で優勝間近
つい最近まではロッテと優勝争いしていたが、シーズン終盤に地力の差が出て、一気に19連勝でマジックを点灯させた。
ソフトバンクの強みは何といっても選手層の厚さだ。毎年、主力の離脱が相次ぎ、今年も投手なら甲斐野央(東洋大~18年①)や高橋純平(県岐阜商高~15年①)、野手では今宮健太(明豊高~09年①)やデスパイネを欠き、投打にベストメンバーとは言えず、打線の組み合わせは90を超える猫の目打線だが、選手層の厚さで乗り切ってきた。
その打線の軸は柳田悠岐(広島経大~10年②)で、昨年38試合出場に留まったが、今年はフルに出場を果たし得点力が上がった。同じく中村晃(帝京高~07年高③)も今年は復活を果たし、ともにチームを牽引している。ただ、他に規定打席に達しているのは、ベテランの松田宣浩(亜大~05年大社希)と今年ブレイクした栗原陵矢(春江工高~14年②)のみで多くない。
規定打席には達していないが甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)が正捕手、グラシアルが4番を務め、今宮の穴は川瀬晃(大分商~15年⑥)が埋め、レギュラー不在の二塁手は周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)がはまった。周東は序盤までは代走、守備要員だったのが、打撃力も上昇し一番打者に定着。シーズン後半の快進撃は周東が支えたと言っても過言ではない。
ここにスーパーサブたちが加わる。勝負強い明石健志(山梨学院大高~03年④)、左キラーの川島慶三(九州国際大~05年大社日③)、内外野守れる牧原大成(城北高~10年育⑤)、代打の切り札の長谷川勇也(専大~06年大社⑤)、釜元豪(西陵高~11年育①)や真砂勇介(西城陽高~12年④)も限られた出番のなかで仕事をした。
投手陣は盤石だが、規定投球回数をクリアしている選手はいない。ただ、東浜巨(亜大~12年①)と石川柊太(創価大~13年育①)がともに復活の8勝を挙げ、エース千賀滉大(蒲郡高~10年育④)も勝ち星で並んでいる。ベテランの和田毅(早大~02年自)も7勝、ショートスターターだが笠谷俊介(大分商高~14年④)は防御率2.60と立派な成績を残している。
リリーフ陣も森唯斗(三菱自動車倉敷~13年②)がセーブ王を争い、モイネロはリーグ断トツの36ホールドを上げ、この2人が出ればまず勝利は間違いない。リーグ最多登板の高橋礼(専大~17年②)がロングリリーフを務め、左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)も43試合登板と鉄腕ぶりを発揮している。ここに若手の松本裕樹(盛岡大高~14年①)や泉圭輔(金沢星稜大~18年⑥)、ベテランの岩嵜翔(市船橋高~07年高①)が加わり、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)や板東湧悟(JR東日本~18年④)の若手も勝ちパターンで起用された。
まさにチーム内の競争力が、選手層の厚さに直結している。ただ、一方で野手陣の世代交代が進んでおらず、常勝チームを維持するにはポスト松田、柳田の育成が課題になってくる。
【10/20現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 105試合 61勝39敗5分①
防御率…3.06①(3.63①)打率….249③(.251②)
本塁打…115①(183①)盗塁83①(113③)
得点462②(582④)失点356①(564①)得失点差106(18)
ここ5年は高橋純を3球団、田中正義(創価大~16年①)を5球団競合のなか引き当てたがが残念ながら主戦にはなっていない。甲斐野も1年目にフル回転したものの、今年はケガで治療に専念している。ただ、高橋礼や杉山、板東、泉の18年組、今年は津森宥紀(東北福祉大~19年③)の即戦投手が期待通り戦力になっている。
一方で野手は深刻で、ここ3年ホークスは1位で野手を指名し、17年は清宮幸太郎(日本ハム)と安田尚憲(ロッテ)、18年は根尾昂(中日)と辰巳涼介(楽天)、昨年は石川昴弥(中日)を指名するも外し、実質戦力になっているのは川瀬だけで、これだけを見てもホークスの危機感が窺える。
【ソフトバンクの補強ポイント】
投 手…将来のエース候補、年齢的に大学生投手
捕 手…甲斐の控えの即戦力捕手
内野手…二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補
外野手…将来の主軸候補
●盤石な投手陣の反して、野手の世代交代は喫緊の課題
☆投手~将来のエース候補、年齢的に大学生投手
盤石の投手陣は年齢バランスも取れており、大きな穴は見当たらない。39歳の和田の下は31歳の岩嵜と嘉弥真まで下がり、大きく戦力が落ちることは考えにくい。和田の年齢的な衰え、千賀がメジャー希望しており先発が二枚抜ける可能性はあるが、本来は先発の高橋礼や松本、高橋純が控え、武田翔太(宮崎日大高~11年①)や大竹耕太郎(早大~17年育④)が復活すれば問題はない。
補強ポイントは、昨年高校生投手を指名していないので、さすがに2年続けて外す訳にはいかない。19歳~22歳までで5名(うち1名はスチュアートJr)と少なく、高校生と大学生に絞った指名になる。
早川隆久(早大)は当然リストアップしているが、上位は高校生指名が良いと思う。一番の候補は山下舜平大(福岡大大濠高)で、もしかしたら単独指名の可能性ある。このほかには小林樹斗(智弁和歌山高)や川瀬堅斗(大分商高)、左腕の高田琢登(静岡商高)は確実に上位で獲得したい。
中位以降でも、秋広優人(二松学舎大高)は野手指名の可能性もあり、小辻鷹仁(瀬田工高)や蓼原慎仁(桐生一高)、平安山陽(松山聖陵高)への評価が高い。地元の若杉晟汰(明豊高)や八方悠介(鹿児島城西高)もリストアップしている。
大学生では先発陣を厚くするなら大道温貴(八戸学院大)や赤上優人(東北公益文化大)、左腕の森浦大輔(天理大)、リリーフ強化なら小郷賢人(東海大)が候補になる。森博人(日体大)や宇田川優希(仙台大)、左腕の鈴木昭汰(法大)はともに先発、リリーフともに適性があり、チーム状況でどのポジションを担うか楽しみだ。
社会人では大江克哉(NTT西日本)は先発、岡田和馬(JR西日本)はリリーフもできる即戦力左腕で投手陣をさらに厚くする。個人的には長身の変則サイドハンドの川瀬航作(日本製鉄広畑)などは、ホークスどどう化けるか見てみたい投手の一人だ。
☆捕手~甲斐の控えの即戦力捕手
捕手は28歳の甲斐がレギュラーだが、二番手捕手の高谷裕亮(白鴎大~06年大社③)も来年は40歳の大台に乗る。栗原は捕手登録だが、外野が主戦で、海野隆司(東海大~19年②)と九鬼隆平(秀岳館高~16年③)が候補だがともに経験が不足している。また、栗原を除けば捕手が5人しかおらず、年齢的には不要だが、第二または第三捕手の即戦力選手が必要だ。
今年は即戦力と呼ばれる捕手が少なく、上位なら古川裕大(上武大)、中位以降なら榮枝裕貴(立命大)や辻本勇樹(NTT西日本)は、ともに守備力に長けている。高校生捕手は年齢的にも優先順位は高くなく、下位また育成で植幸輔(高野山高)や長谷川勝紀(近江高)が候補になる。
☆内野手~二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補
内野手は年齢的には問題なく揃っているが、課題は世代交代の遅れだ。内野の最年長の内川聖一(大分工高~00年横①)が39歳、松田宣と川島、明石が35歳を超え、遊撃の今宮も来年は30歳になる。
20代中盤のレギュラー候補は、二塁の24歳の周東だけで、23歳の川瀬も今ひとつ控えの枠を出ない。ファームでは21歳の三森大貴(青森山田高~16年④)が結果を残しているもの、ポスト今宮、松田候補と言えば物足りなさを感じる。喫緊は二遊間を守れる即戦力と、三塁に限っては高校生のレギュラー候補を獲得したい。
二遊間の即戦力では、やはり牧秀悟(中大)が一番でポスト松田候補にもなる。矢野雅哉(亜大)は俊足で強肩、元山飛優(東北福祉大)は守備だけなら既にプロ級だ。社会人では峯本匠(JFE東日本)は巧打の二塁手、中野拓夢(三菱自動車岡崎)も俊足巧打で二遊間を守れる。05年の本多雄一以来、15年振りの社会人内野手の指名があるかもしれない。
ポスト松田宣の三塁手候補では、井上朋也(花咲徳栄高)はイチ押しで、技術力もある右のスラッガー。高校通算34本塁打の小深田大地(履正社高)のどちらかは獲得したいところだ。下位では岡本大翔(米子東高)や渡部健人(桐蔭横浜大)などの素質十分の大砲候補も面白い。
☆外野手~将来の主軸候補
外野は32歳の柳田に24歳の栗原がレギュラーを掴んだ。本来であれば上林誠知(仙台育英高~13年④)と佐藤直樹(JR西日本~19年①)がレギュラーを争ってほしいが、ともに定位置確保には至っていない。特に上林の不振は大きな誤算だったと思う。
一番は佐藤輝明(近大)で、これほどの逸材がホークスに入ると脅威だが、個人的には柳田を手本にどんな規格外の選手になるか、是非ホークスで見てみたい選手だ。超俊足の五十幡亮汰(中大)は打撃力が上がり、周東との1~2番コンビなどは考えただけでも嫌な並びになる。
将来の主軸候補では、来田涼斗(明石商高)もチームにフィットしそうで、トリプルスリーも現実味を帯びてくる。このほかに西川僚祐(東海大相模高)や元謙太(中京高)は右のスラッガー、鵜沼魁斗(東海大相模高)が右のリードオフマン候補だ。
●1位はトリプルスリーを狙える近大・佐藤か!オール野手でも今年は驚かない
今年も野手の1位指名が濃厚で、そうなると佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。一方で地元のエース候補の山下舜平大(福岡大大濠高)も競合の可能性があり、ここは小細工なしに競合必至でどちらかの指名になるのではないかと思う。外れた場合は、来田涼斗(明石商高)や井上朋也(花咲徳栄高)など、今年はオール野手指で徹底することも予想される。
【指名シミュレーション】
1位~山下舜平大(福岡大大濠高・投手)…自慢のストレートは153キロを超え、監督の方針で変化球はカーブだが、このカーブのキレも素晴らしい。伸びしろ十分のエース候補で、将来は160キロ超えも夢ではない。
2位~小深田大地(履正社高・内野手)…昨夏の甲子園で2年生ながら中軸を打ち全国制覇した。力強いスイングにミートも巧く高校通算34本塁打、逆方向へも打つこと井ができる技術も併せ持つ。
3位~矢野雅哉(亜大・内野手)…50メートル5秒9の俊足に強肩で、パワーこそ物足りないが、広角に打てる技術と小技も巧い。果敢に次の塁を狙う積極性も魅力。
4位~鈴木昭汰(法大・投手)…両サイドに投げ分ける制球力が武器の左腕。大学時代は主にリリーフを務めたが、先発もこなし評価が上昇している。
5位~秋広優人(二松学舎大高・投手)…身長2メートルの長身から投げ下ろすストレートは威力十分。打っては4番を務め、高校通算23本塁打で野手の評価も高い。
6位~蓼原慎仁(桐生一高・投手)…最速144キロのストレートとフォークが武器の右腕で、総合力が高く将来性が評価されている。
7位~植 幸輔(高野山高・捕手)…広角に打ち分ける左の巧打者で、捕手ながらチーム事情で投手も兼任した。
今年も地元に逸材が多く、投手なら若杉晟汰(明豊高)や八方悠介(鹿児島城西高)、準硬式の大曲錬(福岡大)。捕手では誉田貴之(福岡工大城東高)に坂本勇人(唐津商高)、外野手の牛島希(九州学院高)など原石が多く、一芸に秀でた選手の獲得にも注目したい。