ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆ロッテ~積極的な補強と楽しみな若手が揃い期待が膨らむシーズン

 セ・リーグのダークホースが中日ならば、パ・リーグはまさしくロッテだろう。特に今年のオフはロッテがストーブリーグの話題を席捲した。FAで楽天から美馬学東京ガス~10年楽②)、ソフトバンクから福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年ソ高①)を獲得し、キャンプが始まると令和の怪物・佐々木朗希(大船渡高~19年①)の一挙手一投足に注目が集まった。そして阪神自由契約になり、去就が注目されていた鳥谷敬早大~03年神自)が入団し、話題だけではなく戦力補強が進んだ。

 順位を予想するにあたり、現時点では楽天のほうが上だと思うが「2位」予想したのは、優勝するには新加入選手の活躍、ブレイクする若手、そしてキャリアハイを残す選手が必要だが、ロッテはこの条件を達成できると予想した。成績も17年から投打ともに徐々に上がってきており、昨年も4位ながら、借金は1まで減ってきた。勢いにのれば一気に優勝まで駆けあがる地力がついてきた。

 投手陣では、エース不在の先発陣に美馬が加入し、枚数不足のリリーフ陣に元広島のジャクソン、楽天のハーマン、昨季ファームのセーブ王の小野郁(西日本短大付高~14年楽②)が加わり厚みを増した。エースの座を狙う若手では、22歳の種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、24歳の岩下大輝(星稜高~14年③)、25歳の二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)とイキの良いエース候補がそれぞれ頭角を表してきている。

 野手ではチームリーダーの鈴木大地東洋大~11年③)が楽天へ移籍したが、ファームの二冠王・安田尚憲(履正社高~17年①)が控え、大ベテラン鳥谷は、チームの精神的支柱としての役割も担え、不安より楽しみの方が大きい。さらに福田秀が加入し、昨年途中加入のマーティンもおり、各ポジションでレギュラー争いが激しくなった。

 不安なのは練習試合からオープン戦と不振が続き、「勝ちグセ」が付いていないことか…。周囲の期待値が高い分、自信をつけてシーズンに臨みたいところだ。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 4位 69勝70敗4分 .249  158本   75個  642点  3.90    611点

 18年 5位 59勝81敗3分 .247    78本 124個  534点  4.04  628点

 17年 6位 54勝87敗2分 .233    95本   78個  479点  4.22  647点  

 16年 3位 72勝68敗3分 .256    80本   77個  583点  3.66  582点

 15年 3位 73勝69敗1分 .257    85本   71個  561点  3.69  563点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢は27.4歳は、やや高いくらいでバランスはそれ程悪くはない。ここ数年は、野手の積極的な1位指名に高校生選手の上位指名に、圧倒的なクジ運の良さも相成って秀逸なドラフトを展開しているが、主戦力は中村奨のみでそろそろ結果を示したい。

 18年~なし

 17年~藤岡裕大(内野手トヨタ自動車②)

 16年~なし

 15年~なし

 14年~中村奨吾(内野手早大①)

 この他には、ルーキーの東妻勇輔(日体大~18年②)は抑えで、小島和哉(早大~18年③)は先発で及第点の成績を上げた。美馬の人的補償楽天へ移籍した酒居知史(大阪ガス~16年②)、故障からの復帰を狙う有吉優樹(九州三菱自動車~16年⑤)の即戦力投手も健闘している。野手では平沢大河(仙台育英高~15年①)が着実に試合数を重ね、昨年はレギュラー獲りが期待されたものの攻守に課題が多い。 

 

●投手陣~エース不在で若手の成長に期待!リリーフ陣も整備され上位進出を狙う

 昨年は規定投球回数をクリアした投手がいなく、エース不在の状況が続いている。開幕投手の石川歩(東京ガス~13年①)は不振で、一時期中継ぎに降格。後半は先発に復帰したものの物足りない成績に終わった。三本柱の涌井秀章(横浜高~04年西①)は、わずか3勝で楽天へ移籍、一昨年最高勝率のボルシンガーも4勝で退団してしまった。

 この先発陣崩壊のピンチを救ったのが若手投手で、種市は8勝、二木が7勝、岩下も5勝を上げ、種市と岩下は防御率も3点台にまとめた。この3人の共通点はともに高卒投手で、スケール感の大きさを感じる。

 リリーフ陣は、益田直也関西国際大~11年④)がクローザーで60試合登板で27セーブを上げ、右のスペシャリスト東條大樹(JR東日本~15年④)は自己最多の58試合、左キラー松永昂大大阪ガス~12年①)が48試合に登板した。このほかに東妻などのイキのいい若手も出てきた反面、枚数不足は否めず、接戦が多い状況のなかで終盤に逆転される試合が目立ち、リリーフ陣の整備が大きな課題になった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…石川 歩 ボルシンガー 有吉優樹 涌井秀章 ブランドン 小島和哉

 ・後半戦…岩下大輝 涌井秀章 小島和哉 二木康太 種市篤暉 ボルシンガー

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…二木康太(128回2/3)石川 歩(118回2/3)種市篤暉(116回2/3)

       ボルシンガー(103回)岩下大輝(96回1/3)西野勇士(70回)

 ・救援…益田直也(60試合)東條大樹(58試合)酒居知史(54試合)

       松永昂大(46試合)田中靖洋(44試合)チェン(44試合)

 開幕投手にはFA加入の美馬に決まり、当然一年間中心となってほしい投手だが、絶対的なエースではない。エースの座への返り咲きを目指す石川もいるが、期待値が高いのはやはり若手のエース争いだろう。驚異の奪三振率をほこる種市、キレのあるストレートが武器の二木、パワーピッチャーの岩下に、多彩な変化球を操る左腕の小島など楽しみな選手が多い。

 このほかにも実績のある西野勇士(新湊高~08年育⑤)、先発再挑戦の唐川侑己(成田高~07年高①)、ファームで結果を残している土肥星也(大阪ガス~16年④)など、先発の層は厚くなってきている。また、故障からの完全復帰を目指す佐々木千隼(桜美林大~16年①)や有吉はリリーフもこなせる。

 昨年は8回を任せられるセットアッパーに苦労したが、それもハーマンとジャクソンの加入で解消され、クローザーの益田へ繋げていける。また、将来のクローザー候補で東妻や小野も控えている。チーム内の競争なくして強いチームは形成できず、ロッテはその下地が出来上がったと言える。

 中継ぎには東條と松永を中心に、ベテランの田中靖洋(加賀高~05年西高④)や大谷智久トヨタ自動車~09年②)に、昨年阪神から加入した石崎剛(新日鉄住金鹿島~14年神②)も面白い存在だ。2年目の中村稔弥(亜大~18年⑤)はチェンと並んでロングリリーフを務める。

 最後はやはり佐々木朗だろう。着実に成長を遂げており、いつ一軍デビューするか分からないが、将来の日本を代表するエース誕生への期待を抱かずいられない。種市、二木、岩下、佐々木朗の高卒選手が、先発ローテーションを組むようになれば、スケールの大きい投手陣に大化けする可能性がある。

【今年度の予想】

 ・先発…美馬 学 二木康太 種市篤暉 石川 歩 西野勇士 小島和哉

       岩下大輝 唐川侑己 佐々木千隼 土肥星也 有吉優樹 

 ・中継…ジャクソン 東條大樹 松永昂大 田中靖洋 東妻勇輔 中村稔弥  

       チェン 永野将司 小野 郁 石崎 剛 大谷智久 南 昌輝

 ・抑え…益田直也 ハーマン

 

●野手陣~一昨年は機動力、昨年は長打力!し烈なレギュラー争いで打線は上向き

 一昨年はグリーンライトを合言葉に走り回り、昨年は本拠地にホームランラグーンが設置され、本塁打数は78本から158本に倍増し、リーグ2位の得点力を上げるチームになった。

 大きかったのはレアードの加入で、後半戦は失速したものの32本塁打を放ち、前半戦絶不調だった井上晴哉日本生命~13年⑤)も24本で4番の面目を保った。他にも中村奨が17本、鈴木が15本、途中加入のマーティンが14本、荻野貴司トヨタ自動車~09年①)と清田育宏(NTT東日本~09年④)が10本と2桁本塁打を放った。

 昨年は何といっても、荻野と鈴木の1~2番コンビがチームを牽引した。ともに開幕スタメンは逃したが、これまで毎年のようにケガで離脱していた荻野が初の規定打席クリアし、打率.315はリーグ3位、二塁打三塁打はリーグ1位で、34歳にしてようやく本領を発揮した。鈴木も内野の全ポジションを務め、2番にピッタリとはまった。

 一方で期待の選手は結果を残せず、レギュラー不在の遊撃は、2年目の藤岡は故障で離脱を繰り返し、平沢もその穴を埋めることができなかった。レアードと並び本塁打を期待されたバルガスも日本野球に対応できず1本塁打でチームを去った。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…田村龍弘(100/321)

 内野手…☆鈴木大地(140/614)☆中村奨吾(143/586)☆レアード(139/553)

       ☆井上晴哉(129/509)藤岡裕大(81/278)三木 亮(89/145)

     平沢大河(51/108) バルガス(35/102)

 外野手…☆荻野貴司(125/569)角中勝也(108/435)清田育宏(117/377) 

     マーティン(52/228) 岡 大海(95/182)  加藤翔平(60/120)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)藤原恭大⑧      1)荻野貴司⑧      

  2)加藤翔平⑨      2)鈴木大地③       

  3)中村奨吾④         3)角中勝也⑦    

  4)井上晴哉③      4)レアード⑤      

  5)角中勝也⑦      5)清田育宏⑨      

  6)レアード⑤      6)中村奨吾④     

  7)バルガスDH          7)井上晴哉DH   

  8)田村龍弘②      8)田村龍弘

  9)藤岡裕大⑥      9)藤岡裕大⑥  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)荻野貴司⑧      捕 手)田村龍弘(柿沼友哉) 

  2)福田秀平⑦      一塁手)安田尚憲(岡 大海)

  3)中村奨吾④      二塁手)中村奨吾(三木 亮)

  4)井上晴哉DH          三塁手)レアード(西巻賢二)

  5)マーティン⑨        遊撃手)藤岡裕大(福田光輝)

  6)レアード⑤      左翼手)福田秀平(菅野剛士)

  7)安田尚憲③            中堅手荻野貴司(平沢大河)

  8)田村龍弘②       右翼手)マーティン(清田育宏

  9)藤岡裕大⑥       D H)井上晴哉角中勝也

  

 レギュラーは固まってきてはいるが、確固たるレギュラーは捕手~田村、二塁~中村奨、三塁~レアードで、あとは井口監督が言う通り競争になる。一塁は井上と安田、遊撃は藤岡にルーキー福田光輝(法大~19年⑤)が争い、ムードメーカーの三木亮(上武大~13年③)に、楽天から移籍した西巻賢二(仙台育英高~17年楽⑥)も控える。この激戦のなか、さらに阪神から鳥谷敬も加わり、どの選手もうかうかしていられない。

 外野は荻野、福田秀、マーティン、角中勝也(四国IL高知~06年大社⑦)を中心にして、身体能力の高い岡大海(明大~13年日③)にベテランの清田が控える。ここに2年目の成長著しい藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)や、ファームでは敵なしの菅野剛士(日立製作所~17年④)も加わり、虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。

 捕手も田村龍弘光星学院高~12年③)が不動のレギュラーだが、打てる捕手のルーキー佐藤都志也(東洋大~19年②)の加入は大きな刺激になるはずだ。

 1~2番の荻野と福田秀はともに俊足でパンチ力もあり、相手チームからは嫌な組み合わせになり、角中の2番という手も有り得る。3番不在が気がかりだが、ここは中村奨が信頼を取り返すしかなく、4番井上からマーティン、レアードに続く打線は破壊力がある。藤岡も昨年終盤に打率を上げ一皮むけた印象を受け、下位打線に甘んじる選手ではない。

 若手の一番の注目は安田の起用法で、昨年ファームで打点と本塁打のタイトルを獲得し確実に成長している。同じ状況で昨年いち早くブレイクした同い年のヤクルト・村上宗隆に追いつきたい。このほかに茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)は昨年ファームの遊撃のレギュラー、まだ育成だが和田康士朗(BC富山~17年育①)は、チーム一の俊足で楽しみな選手がまだいる。

 ここに大卒ルーキーの即戦力野手が加わる。佐藤は本職の捕手以外に一塁・外野も守れ、いきなり骨折で離脱したが高部瑛斗(国士館大~19年③)は、俊足巧打のリードオフマンタイプ。このなか頭一つ抜けたのは福田光で、元々守備力には定評があったが、打撃でも結果を出しており開幕スタメンも夢でなくなった。

 心配なのは鈴木の移籍で空いたチームリーダーの存在か…。天性とも言えるリーダーシップの鈴木は、どんな場面でもチームを鼓舞した存在で、ここを埋める選手はなかなか見つからない。最後に鳥谷の加入がどうチームの作用するかも注目だ。人柄や実力は申し分なく、リーダー鈴木の穴を埋めるにも適任だが、やはりここはプレーヤーとしての鳥谷の活躍を見たい。

 今年は脚力のある荻野、福田秀、中村奨、岡が走り回り、レアードや井上、安田が本塁打を競演するようになれば、西武に匹敵する打線になる可能性も秘めている。ベテランと若手の融合で、Aクラスだけではなく優勝も狙える布陣になった。 

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…田村龍弘 柿沼友哉 佐藤都志也(細川 亨)

 内野手井上晴哉 中村奨吾 レアード 藤岡裕大 安田尚憲

       福田光輝 西巻賢二(平沢大河 三木 亮 鳥谷 敬)

 外野手…福田秀平 荻野貴司 マーティン

       角中勝也 岡 大海 清田育宏(菅野剛士 藤原恭大) 

 

 注目の若手では、投手では楽天から入団した小野郁に注目している。高校時代からその剛腕は注目されており、いつブレイクするか楽しみにしていた選手の一人だ。一軍での実績はないが、ファームのセーブ王でリリーフの適性は抜群。奪三振率の高いパワーピッチャーで、ロッテに少ないタイプだけに一気にブレイクしたい。

 野手では、今年5年目を迎える平沢大河だ。一昨年きっかけを掴んだかと思えたが、昨年は大不振で、今年も右肘の故障で出遅れている。二軍で外野や三塁が主戦場になっているが、平沢は打ってナンボの選手。遊撃にこだわらず、セールスポイント打撃を最大限に活かすことを目標の進めることが良いと思う。