ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆ロッテ~若手が主力に成長し、黄金時代到来を予感させる

●高い得点能力とリーグ屈指のリリーフ陣で、逆転のロッテは今年も健在

 51年振りのマジック点灯を目前に足踏みをして2位に転落したが、47年振りの勝率1位のリーグ優勝を目指している。昨年は9月に主力選手のコロナ感染で失速しただけに、今年こそは悲願の優勝を果たしたい。

 今年のオリンピックでは、12球団で唯一チームから選出がなく、投打に飛び抜けた選手はいない。前半は打線が奮起、後半は投手陣が復調を見せ、チーム一丸で向かってくる戦いかたが、昨年に続き優勝を狙える位置につけている。チーム防御率も打率も決して良くはないが、リーグ1位の得点数をたたき出している。

 まず投手陣から見ると、リーグで唯一規定投球回数をクリアした選手がいない。小島和哉(早大~18年③)と二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)、岩下大輝(星稜高~14年③)、美馬学東京ガス~10年楽②)がローテーションの中心だが、エース候補は多いものの、エースと呼ばれる選手が不在だ。

 一方でリリーフ陣は盤石で、クローザーの益田直也関西国際大~11年④)が最多登板と最多セーブで大車輪の働きを見せている。佐々木千隼(桜美林大~16年①)がセットアッパーにハマり、トレードで獲得した国吉佑樹秀岳館高~09年横育①)から繋ぐ形が出来ている。ここに唐川侑己(成田高~07年①)が復帰し、ハーマンに小野郁(西日本短大高~14年楽②)、田中靖洋(加賀高~05年西④)が控えるリリーフ陣はリーグ屈指の陣容だ。

 野手陣は不動のリードオフマン荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が最多安打、レアードがリーグ打点2位、マーティンと並んで本塁打は3位で、2人でチームの約半分の本塁打を占めている。両外国人が長打を放ち、荻野がケガなくここまで来ているのが大きい。

 このほかチームリーダーの中村奨吾(早大~14年①)と藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)、安田尚典(履正社高~17年①)が規定打席をクリアしている。また、代走専門だが和田康士朗(BC富山~17年育①)は盗塁王争いをしている。

 昨年もそうだったが、今年も期中のトレードが秀逸だ。前半の投壊状況を見て、打力に課題はあるが強肩捕手の加藤匠馬(青学大~14年中⑤)を獲得し、リリーフ陣の強化で国吉、先発左腕の補強で元中日のロメロ、右の代打要員で小窪哲也青学大~07年広③)を獲得しており、地味だが的確な補強になって結果に繋がっている。

【10/1現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 122試合 58勝47敗17分②

 防御率…3.73⑤(3.81②)打率….244④(.235⑥)

 本塁打…109③(90④)盗塁101①(87③)

 得点…524①(461⑤)失点…487⑤(479②)

 

●25歳以下の若手に主力がズラリ!目指すは常勝チームで今年は左腕がポイント

 昨年は相思相愛だった早川を入札するも抽選で外し、先発左腕不足の状況から鈴木昭汰(法大~20年①)を獲得した。鈴木は現在リリーフに回っているが、12試合に先発している。入れ替わるように、開幕は中継ぎだった河村説人(星槎道都大~20年④)が先発に回り3勝を上げている。野手では、小川龍成(国学院大~20年③)が出番は少ないが一軍に帯同しており、即戦力を期待されたルーキーがまずまず結果を出している。

 ここ5年のドラフトでは、16年は佐々木千と種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、17年は安田と藤岡、菅野剛士(日立製作所~17年④)が戦力になっている。18年は当たり年で、投手では小島と東妻勇輔(日体大~18年②)、中村稔弥(亜大~17年⑤)に土居豪人(松山聖陵高~18年⑦)、野手では藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)と山口航輝(明桜高~18年④)を獲得している。19年は佐々木朗希(大船渡高~19年①)と佐藤都志也(東洋大~19年②)、高部瑛斗(国士館大~19年③)に、横山陸人(専大松戸高~19年④)も今年一軍デビューを果たしている。

 今季ファームでは、2位に10ゲーム差で優勝し、25歳以下の選手を羅列しても、投手では小島、岩下、東妻、小野、中村稔、種市、土居、佐々木朗、横山にルーキーの鈴木と河村が加わる。野手は佐藤、小川、安田、高部、和田、藤原、山口がおり、井口監督が目指す常勝チームの礎が出来つつある。

【ロッテの補強ポイント】 

 投 手…先発とリリーフ左腕

 捕 手…正捕手候補 年齢的に高校生がベスト

 内野手…次世代のレギュラー候補(二遊間)

 外野手…将来の主軸候補

 

☆投手~先発とリリーフ左腕

 現在の先発ローテーションは、石川歩(東京ガス~13年①)に美馬、小島、岩下、二木、ロメロ、河村、佐々木朗が間隔を空けて回している。エースが不在だが、量的には問題なく、石川の後継でシーズンを任せられるエースの誕生が待ち遠しい。

 とにかく先発陣は若い。二木が26歳、岩下と小島が25歳、河村が24歳、23歳の鈴木に20歳の佐々木朗に、翌年は故障明けの23歳の種市が加わる。さらに石川と美馬、こちらもリハビリ明けの西野勇士(新湊高~08年育⑤)が控え、末恐ろしい先発陣になる。やはり期待は佐々木朗で、名実ともに大エースに成長して欲しい。

 リリーフ陣は益田と唐川、国吉が円熟期を迎え、27歳の佐々木千に、25歳の小野と東妻がポスト益田の座を争うことで、着実に投手王国への準備が整っている。

 ただ、今あげた選手のなかで左腕は小島と鈴木しかいない。鈴木はリリーフでの適性もあるが、個人的には先発が向いていると思う。どちらにしろ、左腕は不足しており、今年は大学生左腕が豊富のなか、先発・リリーフともに獲得したい。

 補強ポイントの左腕では佐藤隼輔(筑波大)と地元出身の山下輝(法大)の評価が高く、高校生では松浦慶斗(大阪桐蔭高)も1位入札候補の一人だ。佐藤は重複が予想されるが、山下や松浦は単独で獲得できる可能性が高い。また重複覚悟で、将来のエース候補として小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)の入札も十分ある。

 このほか上位候補では、即戦力左腕では隅田知一郎(西日本工大鈴木勇斗(創価大)がおり、鈴木はリリーフへの適性もある。高校生左腕では完成度の高い木村大成(北海高)と、素質は1位クラスの羽田慎之介(八王子高)をリストアップしている。

 右腕では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)三浦銀二(法大)は先発の層を厚くし、畔柳享丞(中京大中京高)と合わせて、いずれも2位以内で消える選手だ。

 下位指名候補では、この間評価が上がっている市川祐(関東一高は打者としての評価も高く、地元の深沢鳳介(専大松戸高)は今夏の甲子園センバツ準優勝の明豊高を完封し実力を証明した。九州ナンバーワンの呼び声高い黒木優九州文化学園高)にも注目している。

 即戦力では徳山壮磨(早大はゲームメークに長け、岡留英貴(亜大)は変則フォームからキレのある速球がを投げ込むリリーフ候補。長身の飯田琉斗(横浜商大山崎凪(中央学院大古田島成龍中央学院大はともに直球に力のあるパワーピッチャーで、山崎はメンタルが強くリリーフ向き。西垣雅矢(早大はスリークオーター右腕で伸びしろのある大学生、社会人では好不調の波はあるが、好調時には手のつけられない横山楓(セガサミーをリストアップしている。

☆捕手~正捕手候補 年齢的に高校生がベスト

 正捕手は不在で、攻守に精彩を欠いている田村龍弘光星学院高~12年③)の復調が一番だ。加藤と柿沼友哉(日大~15年育②)は余りにも打撃に課題がありすぎで、打撃の良い佐藤は逆に野手で育てたほうが良いと思う。年齢バランスも悪く、12年の田村指名以来、高校生捕手の支配下指名はなく、19歳~22歳で一人も選手がいないのはロッテだけだ。

 一番の候補は古賀悠斗(中大)で、二塁送球1秒8の強肩で、パンチ力のある打撃も魅力だ。高校生では、地元の村山亮介(幕張総合高)も古賀にも負けない強肩で、高校通算38本塁打を放っている。味谷大誠(花咲徳栄高)も二塁最速1秒8を切る強肩、東出直也(小松大谷高)は終始プロ志望一本で絞っている気持ちの強さがプロ向きと言える。

内野手~次世代のレギュラー候補(二遊間)

 今シーズンは一塁にレアード、二塁に中村奨、遊撃はエチェバリアが入ると、藤岡が三塁に回り、後半戦は安田の出番が減少している。課題はやはり遊撃で、なかなかレギュラーが決まらない。平沢大河(仙台育英高~15年①)の伸び悩みから始まり、藤岡、小川と獲得しているが、今ひとつ決め手に欠ける。

 中村奨と藤岡が20代後半で、まだまだ焦る時期ではないが、次世代に向けたの育成は必須で、19歳~21歳が不在ということもあり、高校内野手を獲得したい。またシーズン途中に小窪を獲得したように右打者が不足しており、ここも補強しておきたいところだ。

 二遊間の補強では、今年は有望な選手が少ない。そのなかでも粟飯原龍之介(東京学館高)は俊足巧打の大型遊撃手で、長打力もあり高校通算33本塁打を放っている。大学生では、池田来翔(国士館大)は右打ちの二塁手で、力強い打撃でパンチ力もあり、ポスト中村奨にはピッタリの選手。遊撃手では、峯村貴希(日大)への評価が高く、守備は問題ないだけに打撃で確実性を増せばレギュラー候補になれる。

 このほか、阪口楽(岐阜一高)も上位指名候補で、広角に長打を打て将来主軸を任せられる。また、有薗直輝(千葉学芸高)は右打ちの三塁手で、高校通算70本塁打を記録している右の大砲候補。右の長距離打者では、捕手の松川虎生(市和歌山高)は打撃面の評価が高くなっており、内野へのコンバートも面白い。福永裕基(日本新薬は、社会人屈指の右の長距離砲だ。粟飯原と有薗、池田、峯村は地元千葉出身で、1人は確実に獲得したいところだ。

 ☆外野手~将来の主軸候補 

 外野は左翼に荻野、右翼にマーティンがおり、中堅には藤原が定着してきた。荻野が36歳、角中勝也(四国IL高知~06年⑦)も34歳で世代交代が心配だが、藤原に山口、高部、和田が控えており、上手く進んでいる印象を受ける。ここは将来の主軸になる選手を獲得したい。

 将来の4番候補で、正木智也(慶大)は守備走塁に目を見張るものはないが、チャンスに強く、ハイレベルな環境で成長してきた長打力は特筆できる。高校生では、吉野創士(昌平高)池田陵真(大阪桐蔭高)の評価が高く、吉野は細身だが高校通算56本塁打、バットにボールを乗せるのが上手い長距離打者で、守備走塁もレベルが高い。池田も小柄だがチャンスに強くパンチ力のある中距離打者で、名門を引っ張ったキャプテンシーも魅力だ。走攻守三拍子揃った向山基生(NTT東日本)も、チームにフィットすると思う。

 

●今年は先発、リリーフともに不足している左腕の補強か、地元出身の逸材が揃う

 野手の1位指名候補が乏しいだけに、今年も1位は投手になるだろう。昨年の早川に続き、即戦力先発左腕なら、佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大に迷うところで、秋のリーグ戦次第では山下輝(法大)の1位指名もある。さらなる投手王国を目指して、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)指名も状況次第では考えられ、小園はチームにフィットする気がする。

【指名シミュレーション】 

1位~山下  輝(法大・投手)

 …最速150キロの成長著しい大型左腕で、先発・リリーフともに適性が高い

2位~松浦 慶斗(大阪桐蔭高・投手)

 …世代ナンバーワンの評価が高い左腕で、中学時代から大舞台を経験している

3位~池田 陵真大阪桐蔭・外野手)

 …名門でキャプテンを務める人間力も評価が高く、チャンスに強くパンチ力がある

4位~池田 来翔(国士館大・内野手

 …守備も巧い二塁手で、チームの主砲を務める。重宝される右打ちの強打の内野手

5位~村山 亮介(幕張総合高・捕手)

 …大きい体格から高校通算38本塁打の大型捕手で、打てる捕手として期待

6位~深沢 鳳介(専大松戸高・投手)

 …制球力が抜群のサイドハンドで、今夏の甲子園では完封勝ちも収めている

7位~岡留 英貴(亜大・投手

 …速球派のスリークオーターで、強気に打者を打ち取る。リリーフとして面白い