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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆中日~7年連続Bクラスも、今年はセ・リーグの台風の目

 7年連続のBクラスで低迷中の中日だが、今年は台風の目になりそうな気配がする。昨年も5位ながらチーム打率はリーグ1位、チーム防御率は3位ながら失点数はリーグ最少で、借金も15から5に減り、着実に地力がついてきている。投打がかみ合えば優勝も十分に射程圏内で、混戦のセ・リーグのなか「2位」予想とした。

 まず野手だが、一昨年もリーグ最多の7名が規定打席をクリアし、昨年も5名がクリアし、レギュラーが固まった。一時はトレード要員とも言われた期待の高橋周平(東海大甲府高~11年①)が一人立ちし、ようやくチームの顔に成長した。また、昨年は遅咲きながら30歳の阿部寿樹(ホンダ~15年⑤)がブレイクし、打撃以外でも阿部と京田の鉄壁の二遊間が形成できた。

 本塁打ビシエド、盗塁は大島洋平日本通運~09年⑤)に頼りっきりで、本塁打と盗塁が少なく得点力には乏しいが、控えには長打力のある選手も、足が武器の選手もそれなりいる。ここ2は秀逸なドラフトを見せており、若手の成長に期待したい。

 投手陣は大野雄大(佛教大~10年①)と柳裕也(明大~17年①)の左右のエースが揃い、小笠原慎之介東海大相模高~15年①)も復帰し、ドラフト1位投手が期待通りに戦力になってきている。リリーフ陣も万全で、投手陣の層が厚くなってきており、12球団で最も少なかった失策と合わせ、堅守のドラゴンズが復活してきた。

 不安はやはり故障で、投手で離脱者はまだいないが、野手はすでにアルモンテの復帰が夏場までと時間がかかり、ただでさえ野手は主力と控えの差が大きく、これ以上の離脱者が出ると一気に戦力が落ちてしまう。 

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 5位 68勝73敗2分 .263    90本   63個  563点  3.72  544点

 18年 5位 63勝78敗2分 .265    97本   61個  598点  4.36  654点

 17年 5位 59勝79敗5分 .247  111本   77個  487点  4.05  623点  

 16年 6位 58勝82敗3分 .245    89本   60個  500点  3.65  573点

 15年 5位 62勝77敗4分 .253    71本   88個  473点  3.19  504点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢は27.2歳で、12球団ではちょうど真ん中でバランスは取れている。ただ、主力に30歳以上の選手が多く、着実に迫ってきている世代交代に備えたいところだが、ここ5年での主力は京田と鈴木博のみと、結果はまだ出ていない。

 18年~なし

 17年~鈴木博志(投手~ヤマハ①)

 16年~京田陽太内野手~日大②)

 15年~なし

 14年~なし

 ただ、もう一歩で主戦力になる選手は多い。投手では梅津晃大(東洋大~18年②)がルーキーイヤーに後半だけで4勝を上げ、昨季ブレイクした柳や阿部は、真価が問われるシーズンになる。また、今季入団の石川昂弥(東邦高~19年①)は、将来4番を担うスラッガー候補。根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)はポスト大島の一番手として、ともに将来の日本球界を背負っていく逸材が揃っており楽しみは尽きない。

 

●投手陣~先発の4番手以降に期待の若手が揃う。リリーフ陣も整備され投手王国へ

 昨年は大野雄が最優秀防御率を獲得し、柳は11勝で初の2桁勝利、8勝のロメロが一年間ローテーションを守った。ただ、4番手以降がなかなか決まらず、開幕投手を務めた笠原祥太郎(新潟医療福祉大~16年④)は病気で離脱し、復帰後も調子は戻らず悔しいシーズンになった。ロメロの次が、ベテラン山井大介の(河合楽器~01年⑥)65イニングとは寂しい限りだが、後半戦には小笠原が復帰し3勝、ルーキーの梅津が4勝、19歳の山本拓実(市西宮高~17年⑥)も3勝を上げ、期待を抱かせる若武者が頭角を表してきた。

 リリーフ陣はロドリゲスが64試合に登板し、防御率1.64の脅威的な数字を残した。福敬登(JR九州~15年④)は故障が癒え、育成から支配下に復帰し52試合に登板。岡田俊哉智弁和歌山高~09年①)は、精彩を欠いた鈴木博に代わり、後半クローザーを務め13セーブを上げた。若手の藤嶋健人(東邦高~16年⑤)も血行障害を克服し後半戦から勝ちパターンの一角を担い、14ホールドでクローザー候補に名乗りを上げた。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…笠原祥太郎 山井大介 柳 裕也 大野雄大 吉見一起 ロメロ

 ・後半戦…大野雄大 ロメロ 柳 裕也 山井大介 笠原祥太郎 山本拓実

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆大野雄大(177回2/3)☆柳 裕也(170回2/3)ロメロ(111回1/3)

       山井大介(65回)小笠原慎之介(38回2/3)梅津晃大(34回2/3)

 ・救援…ロドリゲス(64試合)岡田俊哉(53試合)福 敬登(52試合)

       祖父江大輔(44試合)マルティネス(43試合)谷元圭介(38試合)

 先発陣は、開幕投手には大野雄が指名され、柳とロメロまでは決まりだろう。昨年やり繰りに苦労したは4番手以降は、今年は候補が多い。ともに開幕投手の経験があり、完全復活にかける小笠原と笠原の両左腕に加え、ベテランの山井や吉見一起トヨタ自動車~05年大社希)も控える。

 若手に楽しみな選手も多い。昨年後半ローテーションを守った梅津と山本に、昨年2勝の清水達也(花咲徳栄高~17年④)も先発への適性を見せた。ルーキー左腕の橋本侑樹(大商大~19年②)や、経験豊富な岡野祐一郎(東芝~19年③)の即戦力が期待通りにオープン戦でも好投を見せており、先発の層が厚くなった。

 リリーフ陣も頼もしく、岡田と鈴木博のクローザー争いに藤嶋が加わった。岡田は安定感では一番で、藤嶋も被打率が少なく、現時点ではこの2人の争いになる。セットアッパーには、新外国人のゴンサレスがオープン戦でも安定した投球を見せており、マルティネスも24歳と若くまだまだ伸びる可能性がある。

 中継ぎ陣も質量ともに豊富で、福と祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)を中心に、左キラーの三ツ間卓也(BC武蔵~15年育③)が控える。また、昨年は不振だったが谷元圭介バイタルネット~08年日⑦)や田島慎二東海学園大~11年③)の中継ぎのスペシャリストが復調すれば、リーグ屈指の投手陣になる。

【今年度の予想】

 ・先発…大野雄大 柳 裕也 小笠原慎之介 梅津晃大 山本拓実 ロメロ

       岡野祐一郎 山井大介 笠原祥太郎 清水達也 橋本侑樹 

 ・中継…福 敬登 マルティネス 祖父江大輔 谷元圭介 ゴンサレス   

       又吉克樹 田島慎二 三ツ間卓也

 ・抑え…岡田俊哉 藤嶋健人 鈴木博志

 

●野手陣~レギュラー陣は万全!控えの層が薄く、主力の離脱を避けたい

 この2、3年でレギュラーが固まった。一塁~ビシエド、三塁~高橋、遊撃~京田、中堅~大島、右翼~平田良介大阪桐蔭高~05年高①)に加え、昨年は阿部が二塁のレギュラーを獲得した。素晴らしいのが守備で、阿部と京田の二遊間に、中堅~大島のセンターラインは強固で、ビシエドや平田も守備が巧く、リーグ屈指の堅守をほこる。

 大島を筆頭に、高橋と阿部が打撃10傑に名を連ねた。何といっても高橋の成長がチームのプラスになり、昨年は打率.293に59打点と中軸を任せられる選手になった。高橋の成長で、かつて中軸だった平田が1番を務め、出塁率の高い大島との1~2番コンビが形成できた。

 誤算だったのは一昨年3割を打ったアルモンテの離脱で、出場すれば結果を残すのだが故障続きで復帰は夏以降になりそうだ。ここ数年レギュラー不在の捕手も、加藤匠馬(青学大~14年⑤)が出場機会を増やしたが、レギュラー奪取までには至らなかった。また、若手の底上げが乏しく、レギュラー陣との差が縮まることがなかった。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…加藤匠馬(92/245)

 内野手…☆ビシエド(143/594)☆京田陽太(140/574)☆阿部寿樹(129/484)

       ☆高橋周平(117/471)福田永将(105/352)堂上直倫(98/217)

 外野手…☆大島洋平(143/623)平田良介(95/407)アルモンテ(49/174) 

     藤井淳志(61/154)遠藤一星(108/120)井領雅貴(55/103)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)平田良介⑨      1)平田良介⑨      

  2)大島洋平⑧      2)大島洋平⑧       

  3)アルモンテ⑦        3)アルモンテ⑦    

  4)ビシエド③      4)ビシエド③      

  5)堂上直倫⑥      5)高橋周平⑤      

  6)高橋周平⑤      6)阿部寿樹④     

  7)福田永将④         7)京田陽太⑥      

  8)加藤匠馬②      8)木下拓哉

  9)笠原祥太郎①     9)大野雄大①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)大島洋平⑧      捕 手)郡司裕也(加藤匠馬) 

  2)平田良介⑨      一塁手ビシエド

  3)高橋周平⑤      二塁手)阿部寿樹(三ツ俣大樹)

  4)ビシエド③      三塁手)高橋周平(石川 駿)

  5)阿部寿樹④         遊撃手)京田陽太堂上直倫

  6)福田永将⑦         左翼手福田永将(根尾 昂)

  7)京田陽太⑥         中堅手大島洋平

  8)郡司裕也②       右翼手平田良介藤井淳志

  9)大野雄大①             

   

 中日が今年優勝争いするのに欠かせない条件は、主力野手の故障による離脱がないことである。それだけレギュラー陣には力はあるが、万が一のときに補える控え選手が乏しく、かなりキツイ状況になるのは間違いない。

 1、2番を大島と平田が務め、どちらが務めても面白い。中軸は3番~高橋、4番~ビシエド、5番~阿部と続き気が抜けない。そのなかでも今年は阿部に注目していて、チーム1、2を争うスイングスピードに長打力も付いてきており、昨年以上の結果を残しそうだ。京田は打撃に課題があり下位打線が有力だが、俊足を活かして上位を打つようになればさらに厚みを増す。

 レギュラーが決まっていないのが左翼と捕手だ。左翼には福田永将(横浜高~06年高③)が有力で、ビシエドと並んで昨年はチーム最多の17本塁打を放っており、脅かすほどのライバルも見当たらなく、アルモンテ復帰までは福田で問題ない。

 混戦模様なのが捕手で、順当にいけば加藤だが、まだ全幅の信頼を得るには攻守に課題が多い。打力のある木下拓哉トヨタ自動車~15年③)が対抗馬だが、ルーキーの郡司裕也(慶大~19年④)や成長著しい石𣘺康太(関東一高~18年④)の抜擢の可能性もあり、名捕手だった伊東勤ヘッドコーチの判断に注目している。

 控えとレギュラーの差が課題としたが、控えでレギュラークラスと呼べるのは、現時点では堂上直倫愛工大名電高~06年高①)しかいない。こうなると一人でも多くの若手の台頭に期待したところで、その筆頭はやはり根尾と石川昂だろう。根尾は昨年はファームでもプロの壁にぶつかったが、着実に成長しており、今年は一年間一軍に帯同してチャンスを掴みたい。石川昂も長打力が不足しているチームの待望の長距離砲で、早い段階での一軍起用があるかもしれない。

 根尾以外の若手では、昨年スタメンも経験した伊藤康祐(中京大中京高~17年⑤)は走攻守揃った逸材。長打力では右の石垣雅海(酒田南高~16年③)と左の渡辺勝(東海大~15年育⑥)がおり、武田健吾(自由ケ丘高~12年オ④)は守備力が魅力だ。昨年ファームの首位打者の石川駿(JX-ENEOS~14年④)や井領雅貴(JX-ENEOS~14年⑥)は、既に30歳を迎えラストチャンスではないが、昨年の阿部のようなブレイクを期待したい。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…郡司裕也 加藤匠馬 木下拓哉(石𣘺康太)

 内野手ビシエド 阿部寿樹 高橋周平 京田陽太 福田永将

       堂上直倫 石川 駿 三ツ俣大樹 根尾 昂(石川昂弥 溝脇隼人)

 外野手…大島洋平 平田良介

       藤井淳志 井領雅貴(アルモンテ 遠藤一星 武田健吾 岡林勇希) 

 

 今年注目の若手では、投手では山本拓実が一押しだ。昨年は7試合に先発して3勝3敗、防御率2.98の成績で、高卒2年目の19歳と聞けばさらに驚きだろう。クレバーな投球術に、身長167センチの小柄な体を有効に活かした押し込むような球持ちの良さは見ていて惚れぼれする。今年は一気に飛躍するシーズンになるだろう。

 野手では、根尾や石川昴と言いたいところだが、高卒ルーキーの岡林勇希(菰野高~19年⑤)に注目している。元は投手だが、プロでは野手で勝負をする。50メートル5秒8の俊足に強肩、高校通算21本塁打を放っており、首脳陣も驚く打撃センスは本物だ。少し早い気もするが、層の薄い中日の野手陣なら一軍デビューも遠くはない。