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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆オリックス~今年はディフェンス重視の守りの野球!投手陣再建が課題

 今年もパ・リーグソフトバンクが中心になるが、リーグ3連覇を狙う西武、積極的な補強でストーブリーグを盛り上げた楽天とロッテが追う形になる。やや苦戦が予想されるのが日本ハムオリックスで、4強2弱の様相を呈してきた。

 順位予想するうえで、最下位予想を日本ハムオリックスで迷ったが、野手のレギュラーが多い日本ハムを上にさせてもらった。

 短期決戦では投手力の優劣がモノを言うが、長いペナントレースを勝ち抜くには打線の安定が必要で、いくら現役メジャーリーガーのジョーンズが入団したとはいえ、レギュラーが吉田正尚と福田周平だけでは厳しい。投手陣も山岡泰輔と山本由伸のWエースはいるものの、ブルペン陣の駒不足は解消されておらず質量ともに不足している。

 西村徳文監督も、昨年のような積極的な走塁を今年も進めつつ、早くも守備重視の野球を明言するなど、今シーズンはディフェンス重視の戦いかたになる。ドラフトでは即戦力から育成へ、チームも若手にシフトしている最中で、3~4年後に優勝を狙える若手選手の発掘と育成を進めるシーズンになりそうだ。

 

●ドラフトは即戦力から育成、若手にシフトしているが投打に精彩を欠いた

 15年から5年連続Bクラスで、昨シーズンは投打に精彩を欠いた。投手陣はともにタイトルホルダーの山岡と山本の活躍で、投手力の高いイメージがあるが、チーム防御率が4点台に後退している。先発の榊原翼(浦和学院高~16年育②)と田嶋大樹(JR東日本~17年①)はケガで途中離脱し、ブルペン陣は海田智行(日本生命~11年④)以外は総崩れで、クローザーの増井浩俊東芝~09年日⑤)は中継ぎに降格、急造のディクソンも安定感に欠けた。

 チーム打率はリーグ最下位で、16年から年々後退し得点力不足が解消されていない。規定打席に達したのが、一昨年は吉田正とロメロ、安達了一(東芝~11年①)の3名、昨シーズンは吉田正と福田のみと、実質的なレギュラーは吉田正しかおらず、ここ2年レギュラーが確立できていない。盗塁数はリーグ2位まで伸び、打線の弱さを走塁でカバーする戦い方はできたが、一方で失策はワースト2位の73と課題は多い。 

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 6位 59勝82敗2分 .242  102本 122個  544点  4.05  637点

 18年 4位 75勝66敗2分 .244  108本   97個  538点  3.69  565点

 17年 4位 45勝96敗2分 .251  127本   33個  539点  3.83  598点  

 16年 6位 64勝78敗1分 .253    84本 104個  499点  4.18  635点

 15年 5位 76勝65敗2分 .249    94本   88個  519点  3.59  548点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 昨年に続き平均年齢26.6歳の若いチームで、ここ5年のドラフトで投打に主力が誕生しており、将来の足掛かりはできた。

 18年~中川圭太(内野手東洋大⑦)

 17年~福田周平(内野手~NTT東日本③)

 16年~山岡泰輔(投手・東京ガス①)山本由伸(投手~都城高④)

 15年~吉田正尚(外野手~青学大①)近藤大亮(投手~パナソニック②)

    大城滉二(内野手~立大③)

 14年~西野貴弘(内野手JR東日本⑦)

 このほかにも、投手では田嶋に澤田圭佑(立大~16年⑧)、ケガで現在は育成契約だが黒木優太(立正大~16年②)、野手では小田裕也(日本生命~14年⑧)も及第点の成績を上げている。

 一つ気になったことがある。前監督の福良GMが、野手は今後育成中心に高校・大学生主体に切り替えるコメントがあった。確かにオリックスは社会人野手の指名が伝統的に多いチームだが、何事にもバランスが必要だ。

 右投げ左打ちの俊足巧打の同じタイプの選手を、ドラフト指名して揃えたのはフロントの責任であり、指名された選手が悪い訳ではない。それを結果同じような選手が社会人出身野手には多いので、高校・大学生に切り替えるという方針は如何かと思う。安達や西野、小田の社会人出身選手ならではの、「フォア・ザ・チーム」に徹することのできる選手は絶対に必要だと思う。

 

●投手陣~先発陣に光明が見えるも、ブルペン陣の底上げが課題

  昨年は山岡が13勝を上げ最高勝率のタイトルを獲得し、山本も一時離脱したものの最優秀防御率を獲得しWエースが確立した。前半戦は榊原と田嶋がともに3勝、K-鈴木(日立製作所~17年②)もローテーションを守り4勝を上げ先発陣に光明が見えた。一方でブルペン陣は厳しく、海田が唯一防御率1点台で孤軍奮闘するも、あとは3点台と厳しく、数年前まで盤石をほこったリリーフ陣は見る影もなかった。 

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…山岡泰輔 東明大貴 榊原 翼 アルバース 山本由伸 松葉貴大

 ・後半戦…田嶋大樹 山岡泰輔 K-鈴木 山本由伸 竹安大知 荒西祐大

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆山岡泰輔(170回)☆山本由伸(143回)K-鈴木(102回1/3)

     榊原 翼(79回1/3)アルバース(63回1/3)竹安大知(54回)

 ・救援…海田智行(55試合)近藤大亮(52試合)比嘉幹貴 (45試合)

     山田修義(40試合)山崎福也(36試合) 吉田一将(33試合)

 開幕投手には山岡が指名され、山本との二枚看板は強力で、この2人がいることで大型連敗する心配がない。その次に続くのが田嶋と榊原で、田嶋は入団前から故障が懸念されているが、故障さえなければ二桁勝利は確実で、さらに層が厚くなる。山岡25歳、田嶋24歳、山本と榊原が22歳で末恐ろしい先発陣だ。

 5番手以降はアルバース、K-鈴木が有力だがともに出遅れているのが気がかりだ。後半戦に中継ぎから先発にまわった竹安大知(熊本ゴールデンラークス~15年神③)や、プレミア12での好投した張奕(日本経済大~16年育①)を加えた争いになる。

 ブルペン陣はクローザーを誰にするかが課題だ。順当にいけば増井だが、以前ほどの安定感が見られず、元々先発のディクソンも急増の感が否めずシーズン通しては未知数だ。そうなるとセットアッパー候補の新外国人ヒギンスを後ろで使うプランも浮上し、西村監督の判断に注目したい。

 中継ぎは海田と近藤を軸に、現有戦力の上積みに期待したい。澤田やベテランの金田和之(大阪学院大~12年神⑤)が復調すれば層は厚くなる。若手ではルーキーの村西良太(近大~19年③)は変則右腕で、ブルペン陣のバリエーションが増える。昨年、育成選手ながら、ファームで最多セーブを上げた漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)も支配下登録になり手薄な中継ぎ陣に食い込みたい。

 比嘉幹貴日立製作所~09年②)が投手最高齢の38歳、増井とディクソンも36歳になり、海田も33歳でブルペン陣の主力選手の高齢化も課題の一つだ。このチャンスを掴む若手の出現に期待したい。

【今年度の予想】

 ・先発…山岡泰輔 山本由伸 田嶋大樹 榊原 翼 アルバース

     K-鈴木 竹安大知 荒西祐大 張 奕 

 ・中継…海田智行 近藤大亮 比嘉幹貴 山田修義 山崎福也

       吉田一将 澤田圭佑 金田和之 神戸文也 村西良太

 ・抑え…増井浩俊 ディクソン ヒギンズ  

 

●野手陣~ジョーンズの加入で、リーグ最下位の打線は生まれ変わるか

 まさに吉田正がチームの大黒柱で、打率.322で29本塁打、92打点とチームを支え、33盗塁の福田も気を吐いた。しかし前評判の高かったメネセスはドーピング違反で退団、開幕スタメンのT-岡田(履正社高~05年高①)も腰痛で離脱、ロメロも出ればケガで離脱の繰り返しで、後半戦はルーキーの中川が中軸を担ったが、長打を望むのは酷で迫力に欠けた。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…若月健矢(138/348)頓宮裕真(28/93)松井雅人(24/42)

 内野手…☆福田周平(135/583)中川圭太(111/396)大城滉二(91/345)

     モヤ(64/255)小島脩平(103/206)西野貴弘(56/188)

     安達了一.(56/179)マレーロ(43/133)メネセス(29/118)

 外野手…☆吉田正尚(143/610)ロメロ(81/331)西浦颯大(77/239)

     小田裕也(82/203)後藤駿太(91/194)宗 佑磨(54/177)

     佐野皓大(68/130)T-岡田(20/56) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)福田周平④      1)福田周平④      

  2)西浦颯大⑧      2)大城滉二⑥       

  3)メネセス DH         3)中川圭太⑨    

  4)吉田正尚⑦      4)吉田正尚⑦      

  5)頓宮裕真⑤      5)モヤ③      

  6)小田裕也⑨      6)ロメロ DH      

  7)T-岡田③      7)宗 佑磨⑧      

  8)若月健矢②      8)安達了一⑥

  9)安達了一⑥      9)若月健矢②  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)福田周平④      捕 手)若月健矢(頓宮裕真) 

  2)中川圭太⑤      一塁手)T-岡田(モヤ)

  3)吉田正尚⑦      二塁手)福田周平

  4)ジョーンズ⑧     三塁手)中川圭太(小島脩平)

  5)モヤ DH        遊撃手)安達了一(大城滉二)

  6)T-岡田③      左翼手吉田正尚(小田裕也)

  7)宗 佑磨⑨      中堅手)ジョーンズ(後藤駿太

  8)安達了一⑥      右翼手)宗 佑磨(西浦颯大)

  9)若月健矢②      D H)モヤ(ロドリゲス)

 今年はジョーンズの加入がチームにどんな影響をもたらすか楽しみだ。メジャー経験14年のスター選手で、通算1939安打、282本塁打の強打に加え、センターで4度のゴールデングラブを獲得した走攻守に優れたスーパースターだ。当然、4番を期待されており、吉田正との中軸に期待が集まる。

 捕手は若月健矢(花咲徳栄高~13年③)が、ほぼ正捕手を手中にしているが打撃力が課題。昨年、開幕戦で5番を任された頓宮裕真(亜大~18年②)は文字通り打てる捕手で、若月もうかうかしてられない。

 内野は二塁の福田と三塁の中川は決まりで、一塁はT-岡田とモヤの併用になる。最も熾烈な争いになるのが遊撃手で、安達が中心だが実績のある大城に、若手の大田椋(天理高~18年①)や宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)も定位置を狙っており、新旧の定位置争いが楽しみだ。

 外野は右翼争いが注目だ。打力なら宗佑磨(横浜隼人高~14年②)で、まだ粗削りだがポテンシャルは一級品で3割も狙える。守備力なら強肩の西浦颯大(明徳義塾高~17年⑥)で、あの強肩は大きな武器になる。宗も西浦もそこそこ走れるが、脚力なら佐野皓大(大分高~14年③)が一番で、佐野は打撃力が課題になる。走攻守に優れた小田もおり、誰が開幕スタメンを掴み取るか楽しみだ。

 打順は福田の一番は決まりで、課題の出塁率を今年は上げたい。二番は中川が有力だが、一昨年のように1番・宗、2番・福田も面白い。中軸は吉田正~ジョーンズ~モヤまたはロドリゲス(ケガでやや出遅れ)の並びで長打を期待できる。誰もが復活を望んでいるT-岡田が、下位にはまると気の抜けない打線になる。

 ベンチには打てる捕手の頓宮に、ディフェンス重視なら松井雅人(上武大~09年⑦)が控え、内野ならどこでも守れる大城、外野の小田は勝負強い打撃に加え小技も使える。確実性が課題だが、当たればホームランの杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)も面白い存在だ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…若月健矢 松井雅人 頓宮裕真(伏見寅威)

 内野手…T-岡田 モヤ 福田周平 中川圭太 大城滉二 

     安達了一 小島脩平(西野貴弘 山足達也 ロドリゲス 宜保 翔)

 外野手…吉田正尚 ジョーンズ 西浦颯大 宗 佑磨 後藤駿太 小田裕也

    (佐野皓大 杉本裕太郎)  

 今年注目の若手では、投手ではやはり張奕だろう。元々は外野手として17年に入団したのち、18年途中に投手に転向。転向わずか1年で、昨シーズン後半には2勝を上げ、プレミア12では台湾代表でも2勝と、大化けする可能性を秘めている。

 野手では2年目の宜保翔を上げたい。ルーキーながら昨年はファームで遊撃のレギュラーを務め、安達がケガで離脱したあと8試合に出場し6安打を放った。高校時代は投手の逸材で、実力でレギュラーを掴みたい。