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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年戦力分析☆DeNA~故障者がなければ優勝候補!若手の成長がチーム浮沈のカギを握る

 昨年スタートは良く、序盤は巨人と首位争いを繰り広げた。ただ、勝負ところの直接対決でいずれも連敗し、9月の直接対決で先発パットンの奇策も実らずペナント争いから後退した。結果、巨人とは12勝12敗の五分で首位攻防の連敗が明暗を分けた。それならばせめてAクラス維持したかったが、その前に立ちはだかったのが中日で、ナゴヤドーム11連敗…すっかりカモにされて4位でシーズンを終えた。

 チーム成績は悪くなく、チーム打率と本塁打はリーグ1位で、佐野恵太は首位打者梶谷隆幸(開星高~06年高③)は2位、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)は8位と打撃10傑に3人ランクインしている。投手陣の防御率もリーグ3位で、得失点もプラス42点と、数字だけを見ればBクラスは不思議でならない。

 大きな要因は2つで、毎年悩まされている主力の故障離脱と、賛否両論あったラミレス監督の采配か…。特に打線は打力優先の選手起用で、犠打や盗塁を活かした細かい野球ができず、盗塁31は中日と並んで断トツの低さだ。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 20年 4位 56勝58敗6分 .266  135本   31個  516点  3.76  474点

 19年 2位 71勝69敗3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

 17年 3位 73勝65敗5分 .252  134本   39個  597点  3.81  598点  

 16年 3位 69勝71敗3分 .249  140本   67個  572点  3.76  588点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 19年~伊勢大夢(投手~明大③)

 18年~上茶谷大河(投手~東洋大①)大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~東 克樹(投手~立命館大①)神里和毅(外野手~日本生命②)

 16年~濱口遥大(投手・神奈川大①)佐野恵太(内野手~明大⑨)

 15年~今永昇太(投手~駒大①)柴田竜拓(内野手国学院大③)

    戸柱恭孝(捕手~NTT西日本④)

  過去5年のドラフトは大当たりと言える。今永と佐野はタイトルホルダー、東は新人王を獲得している。投手ではエースの今永に濱口、上茶谷、東、大貫とローテーション投手が5人おり、ルーキーの伊勢は中継ぎで33試合に登板し、防御率1.80の好成績を残した。野手でも佐野が主軸に成長し、神里はリードオフマン、柴田は守備の名手でここまで主力がいながらなかなかリーグ制覇に届かないのが不思議だ。

●投手陣~層の厚いリリーフ陣に対し、故障者が多い先発が不安…若手の台頭に期待

  昨年もケガ人に泣かされたシーズンになった。東は2月に手術しシーズン絶望、8月には今永が離脱し、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)も登録抹消、クローザーの山崎康晃(亜大~14年①)も不振に陥り抑えをはく奪された。濱口は好不調の波が大きく、上茶谷も2勝で終わったのは誤算で、スタートはリリーフだった井納翔一(NTT東日本~12年③)を先発に据えるなど、思惑通りの起用にならなかった。

 ただ、明るい話題がなかったわけでもなく、大貫が10勝を上げ後半はエース級の働きをし、山崎に代わり三嶋一輝(法大~12年②)がクローザーを務め18セーブを上げた。石田健大(法大~14年②)とエスコバー防御率2点台をキープし、パットンに山崎、平田真吾(ホンダ熊本~13年②)に国吉佑樹秀岳館高~09年育①)と40試合以上に登板した投手が7名おり、救援防御率3.54は阪神に続きリーグ2位の成績だ。

 さらに砂田毅樹(明桜高~13年育①)に三上朋也(JX-ENEOS~13年④)が、ともに防御率2点台と復調の兆しを見せ、ファームでは阪口皓亮(北海高~17年③)が防御率2位、宮城滝太(滋賀学園高~18年育①)も3位と先発候補の若手も育ってきている。

【20年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…大貫晋一(113回2/3)井納翔一(89回)平良拳太郎(83回1/3)

       濱口遥大(78回1/3)上茶谷大河(59回)今永昇太(53回)

 ・救援…パットン(57試合)エスコバー(56試合)石田健大(50試合)

      三嶋一輝(48試合)平田真吾(43試合)国吉佑樹(42試合)

【今年度の予想】

 ・先発…今永昇太 大貫晋一 平良拳太郎 濱口遥大 上茶谷大河 ロメロ※

       坂本裕哉 京山将弥 阪口皓亮 ピープルズ 東 克樹 入江大生※ 

 ・中継…エスコバー 石田健大 平田真吾 国吉佑樹 伊勢大夢 砂田毅樹 

       三上朋也 武藤祐太 進藤拓也 風張 蓮 池谷蒼大※ 

 ・抑え…山崎康晃 三嶋一輝

 先発は数も揃っているが、故障なしの条件がここ数年つきまとう。今永と東は故障明け、平良も1年間ローテーションを守ったことはなく、ロメロは来日の目途が立っていない。結局は大貫と濱口、上茶谷が中心になり、ルーキーの入江大生(明大~20年①)や2年目の坂本裕哉(立命大~19年②)、阪口や京山(近江高~16年④)はこのチャンスを活かしたい。

 リリーフ陣は層が厚く、山崎と三嶋がクローザーを争い、どらかがセットアッパーに回る。さらにエスコバーと石田、国吉、平田が勝ちパターンを担い。ここに実績のある砂田や三上、2年目の伊勢も加われば盤石と言え、不安のある先発陣を補うに余りある布陣だ。

 主力の上茶谷が25歳、平良と東、濱口、砂田は26歳、大貫が27歳、今永と石田は28歳、山崎も29歳と若くして実績のある投手陣が揃い、主力の故障離脱がなければリーグを代表する投手陣になりつつある。

●野手陣~強力打線は健在で課題は機動力!助っ人不在のチャンスを若手が活かせるか

 とにかく打力は優れており、リーグナンバーワンの本塁打数はソトの25本を筆頭に、佐野とオースティンが20本、梶谷と宮崎、ロペスの6名が2桁本塁打を放っており長打力は申し分ない。半面、機動力の活用は少なく、チームの盗塁王は梶谷の19、その次は神里の7、乙坂の5で6名の選手しか盗塁を記録しておらず、これはチームの方針の結果と言えるだろう。

 昨年はポスト筒香が課題だったが、佐野が見事にハマった。4番佐野と聞いたときに驚いた人の方が多かったと思うが、首位打者まで獲得するとは思わなかった。ポテンシャルは高いものの、幾たび故障に悩まされた梶谷が完走できたのは大きく、宮崎とソトも期待に応える結果を残した。

 一方で、元々スロースターターの神里は最後まで調子が上がらず、乙坂智(横浜高~11年⑤)もレギュラーに届かず、課題の捕手と遊撃のレギュラー不在も解消されなかった。期待のオースティンは、85試合で20本塁打と抜群の長打力だったが、なんせケガが多く離脱を繰り返した。

【20年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…戸柱恭孝(96/276)嶺井博希(41/60)伊藤 光(30/63)

 内野手…☆ソト(114/480)☆宮崎敏郎(113/480)ロペス(81/305)

       柴田竜拓(110/276)大和(85/225)倉本寿彦(82/216)

       中井大介(69/105)

 外野手…☆梶谷隆幸(109/482)☆佐野恵太(106/451)オースティン(65/269)

       神里和毅(80/190)乙坂 智(85/115)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)梶谷隆幸⑧      1)梶谷隆幸⑧      

  2)乙坂 智⑨           2)ソト④       

  3)ソト④             3)オースティン⑨    

  4)佐野恵太⑦      4)佐野恵太⑦      

  5)ロペス③          5)宮崎敏郎⑤      

  6)宮崎敏郎      6)ロペス③      

  7)伊藤 光②      7)大和⑥      

  8)今永昇太①      8)大貫晋一①

  9)大和⑥        9)戸柱恭孝②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…戸柱恭孝 伊藤 光 嶺井博希

 内野手…ソト 柴田竜拓 宮崎敏郎 大和 倉本寿彦 

       中井大介 田中俊太※ 牧 秀悟※(伊藤裕季也 森 敬斗)

 外野手…佐野恵太 神里和毅 オースティン 桑原将志 乙坂 智

    (宮本秀明 楠本泰史 細川成也 蝦名達夫)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)神里和毅⑧      捕 手)戸柱恭孝(伊藤 光) 

  2)ソト③        一塁手)ソト(中井大介

  3)オースティン⑨    二塁手)柴田竜拓(田中俊太)

  4)佐野恵太⑦         三塁手)宮崎敏郎

  5)宮崎敏郎⑤         遊撃手)大和(倉本寿彦)

  6)柴田竜拓④      左翼手)佐野恵太

  7)大和⑥           中堅手)神里和毅(桑原将志

  8)戸柱恭孝②      右翼手)オースティン(乙坂 智)

  9)今永昇太①        

 捕手は相変わらず決めてを欠き、19年シーズンは伊藤光明徳義塾高~07年高③)、昨年は戸柱が出番を増やした。ここに嶺井博希(亜大~13年③)が加わるパターンがここ数年続き、そろそろ誰かが正捕手を射止めてほしい。

 内野は一塁のソトと三塁の宮崎は決まりで、最も重要な二遊間がポイントになる。二塁は守備だけなら柴田だが、梶谷の人的補償で入団した田中俊太(日立製作所~17年巨⑤)がライバルになる。ただ、柴田も田中も左投手を苦にしており、キャンプで評価を上げているルーキーの牧秀悟(中大~20年②)の抜擢の可能性も高い。

 遊撃は二塁以上に決めてを欠き、今年も大和(樟南高~05年神高④)と倉本寿彦(日本新薬~14年③)の併用になりそうだ。ただ、柴田も牧も遊撃を守れ、この団子状態で誰が抜け出すか注目したい。

 若手では伊藤裕季也(立正大~18年②)が三塁、森敬斗(桐蔭学園高~19年①)が遊撃に控えるがいずれも決め手に欠け、内野のユーティリティプレーヤー中井大介宇治山田商高~07年巨高③)のベテランの力がまだまだ必要になるだろう。

 外野は左翼の佐野が決まりだが、外国人選手の来日が未定で、佐野が一塁に回ればすべてのポジションが空く形になり、個人的に楽しみにしている。俊足の神里は移籍した梶谷のあとのリードオフマン候補で、かつての切り込み隊長の桑原将志福知山成美高~11年④)の復活にも期待したい。

 レギュラー候補と言われ久しい乙坂、ファームで本塁打王を獲得した細川成也(明秀日立高~16年⑤)、打力が魅力の蝦名達夫(青森大~19年⑥)、チーム一のスピードを誇る宮本秀明(パナソニック~17年⑦)など楽しみな若手が控える。

 打順は梶谷の抜けた一番が課題で、神里が最有力。二番からは、ソト~オースティン~佐野とスラッガーが並び、宮崎が5番に座る打線は脅威だ。課題は下位打線で、守備と実績重視なら柴田と大和または倉本の並びになるが、田中俊~牧の攻撃型オーダーも見てみたい。

 ソトやオースティンの外国人選手の来日遅れを懸念する声もあるが、私は逆にこのチャンスを獲得するために若手の積極的起用と競争が力になると思う。今年こそはケガ人を最小限の抑えることができれば、十分に優勝を狙える力はある。

 注目の選手で、投手では今年も阪口を挙げたい。昨年はファームではエースで、一軍で3試合登板で2敗と壁に跳ね返されたが、きっかけを掴めば一気に勝ち星を稼ぐ可能性もあり、不安定な先発陣に開幕から食い込みたい。

 野手はルーキーの牧秀悟で、大学2年から3年連続のベストナイン、大学日本代表の4番も務め、長打力も打率も稼げる。守備も巧く二塁と遊撃を守れ、よく2位で獲得できたと思うスラッガーで、開幕スタメンに名を連ねることを期待したい。