●チーム防御率も打率も悪くないが、成績は低迷…
個人的に今年は優勝予想していたので、まさかAクラスまで危うくなるとは思っていなかった。
攻撃陣は打率.272で29本塁打、79打点の筒香嘉智(横浜高~09年①)がメジャー移籍した穴が不安視されたが、ラミレス監督の抜擢に佐野恵太(明大~16年⑨)が見事に応え、打率.335で現在首位打者、15本塁打で63打点と見事に穴を埋めた。
佐野に負けじとベテランも結果を出し、梶谷隆幸(開星高~06年高③)が打率2位で16本塁打、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)が4位で打率3割を超えている。2年連続本塁打王のソトは19本塁打と期待値よりは物足りないものの、リーグ2位の本塁打数を放ち、攻撃陣は強化されている。
投手陣はエースの今永昇太(駒大~15年①)が、9試合登板5勝で離脱し今季絶望、序盤活躍した平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)も離脱、上茶谷大河(東洋大~18年①)も出遅れた。ただ、大貫晋一(新日鉄住金鹿島~18年③)が8勝、濱口遥大(神奈川大~16年①)とベテランの井納翔一(NTT東日本~12年③)も6勝を上げ、今永の穴を埋めている。
日本代表のクローザー山崎康晃(亜大~14年①)も6セーブと精彩を欠いているが、三嶋一輝(法大~12年②)が代わりを務め、リリーフ陣は昨年に続きエスコバーとパットン、石田健大(法大~14年②)がフル回転しており、リーグ3位の防御率は数字が示す通り改善している。
こうなるとラミレス監督の謎采配がクローズアップされてしまうが、数字だけを見ればそれもあながち間違いではないと思ってしまう。
【10/11現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 98試合 45勝48敗5分④
防御率…3.84③(3.93⑤)打率….268①(.246⑤)
本塁打…112②(163③)盗塁23⑤(40⑥)
得点423③(596③)失点393④(611⑤)得失点差30(▲15)
ここ5年のドラフトは、隔年で一本釣りが多く、15年の今永、17年の東克樹(立命館大~17年①)、19年森敬斗(桐蔭学園高~19年①)と競合を避ける傾向があるが、これが当たっている。また、外れ1位ながら16年の濱口、18年の上茶谷とドラフト1位の大学生投手が着実に戦力になっている。
このほか投手では大貫、野手では捕手の戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)に守備力に定評のある柴田竜拓(国学院大~15年③)、俊足の外野手・神里和毅(日本生命~17年②)が戦力になり、主砲の佐野は9位指名だ。
即戦力選手がそれなりに戦力になってはいるが、主力としての物足りなさを感じるのも事実だ。高校生の育成は既知として進まず、合格点は投手では砂田毅樹(明桜高~13年育①)、野手では桑原将志(福知山成美高~11年④)と乙坂智(横浜高~11年⑤)くらいで、主力となると筒香まで遡らなくてはならず、今ひとつチームに強さを感じないのはこういうところかもしれない。
ここまで高校生選手が育たないのなら、できないことを無理をしないで、即戦力中心の指名のほうが良いのではないかと思ってしまう。
【DeNAの補強ポイント】
投 手…将来のエース候補、山崎に代わるクローザー候補、左の中継ぎ
捕 手…打てる即戦力捕手
内野手…一塁を除く全ポジション(年齢的に高校生、大学生、社会人)
外野手…高校生スラッガー(右打ちがベスト)足のスペシャリスト
●山崎に梶谷、ソト、ロペスと去就が不明な主力が多く、今年は即戦力路線か?
☆投手~将来のエース候補、山崎に代わるクローザー候補、左の中継ぎ
先発はエース今永が27歳、大貫が26歳、平良に濱口、東が25歳、上茶谷が24歳とこれから全盛期を迎える選手が揃っているが、いかんせん故障が多く、全員が揃えば屈指の先発陣を形成となるが、なかなか難しそうだ。一方で、22歳以下の若手は伸び悩んでおり、今シーズンは京山将弥(近江高~16年④)の3試合登板の1勝が最高で、先発陣の底上げが遅れている。
リリーフ陣はクローザー候補の獲得が急務になる。山崎のメジャー移籍の可能性もあるが、それ以前に今までどれだけ山崎に依拠していたのか、今シーズンは痛いほど味わった。
結果、エスコバーがリーグ最多の48試合、パットンが45試合、石田と山崎が39試合、三嶋が37試合、国吉佑樹(秀岳館高~09年育①)も36試合、平田真吾(ホンダ熊本~13年②)は31試合と30試合以上登板はリーグ最多の7名を数える。昨年も三嶋とエスコバーの登板数は70試合を超え、18年にフル回転した砂田や三上朋也(JX-ENEOS~13年④)は回復が遅れ、登板過多は選手層の薄さの表れとも言える。
年齢的なバランスは悪くなく、投手の優先順位は山崎に代わるクローザー候補、即戦力の先発投手、中継ぎ左腕、高校生投手と言ったところか。
クローザー候補であれば木澤尚文(慶大)と伊藤大海(苫小牧駒大)、伊藤優輔(三菱パワーシステムズ)は即戦力で、間違いなくリリーフ陣に厚みを与え、小郷賢人(東海大)や宇田川優希(仙台大)は2~3位で獲得できる可能性もある。
即戦力の先発ではやはり早川隆久(早大)に大道温貴(八戸学院大)、栗林良史(トヨタ自動車)が1位候補になる。このほかの上位候補では森博人(日体大)に大江克哉(NTT西日本)、小野大夏(ホンダ)、左腕では佐藤宏樹(慶大)や伊藤将司(JR東日本)をリストアップしている。
中継ぎ左腕では藤井聖(ENEOS)は先発・リリーフどちらでもOKで、補強ポイントに合っており、他には長谷部銀次(慶大)や今西拓弥(早大)、岡田和馬(JR西日本)などがおススメ候補だ。
高校生投手は補強の順位からすれば下位指名になりそうで、中位で根本悠楓(苫小牧中央高)や川瀬堅斗(大分商高)、下位では秋広優人(二松学舎大高)に常田唯斗(飯山高)、小牟田竜宝(青森山田高)を高く評価している。
☆捕手~打てる即戦力捕手
18年は嶺井博希(亜大~13年③)、昨年は伊藤光(07年~オ高③)、そして今年は戸柱が最も多くの試合でマスクを被っているが、いずれも規定打席には達していない。ここ3年はレギュラーが決まらないまま、3人が代わる代わる主戦を務めている。
2年連続で高校生捕手を獲得しているが、育成に時間がかかるポジションだけに、今年は即戦力捕手を獲得したい。打てる捕手が理想で、一番の候補は古川裕大(上武大)で、遊撃手転向もあったほど打撃面での評価が高い。今年は昨年と違い即戦力捕手が少なく、そのなかでも萩原哲(創価大)や辻本勇樹(NTT西日本)は、ともに打撃面の評価も高い。
☆内野手~一塁を除く全ポジション(年齢的に高校生、大学生、社会人)
内野手の補強は喫緊の課題になる。特に、二塁と遊撃のセンターラインのレギュラー不在はチームとして厳しい。一塁のロペスは既に37歳で退団が濃厚、内外野守れる本塁打王のソトも、今シーズンで契約満了を迎え去就が不明、三塁の宮崎も32歳で後継の育成が必要だ。
一塁には元々本職の佐野がいるが、二塁の柴田、遊撃の倉本寿彦(日本新薬~14年③)と大和(樟南高~05年神④)ともに打力に乏しく、二遊間は打てる即戦力、三塁は将来のレギュラー候補を抑えておきたい。
二遊間の即戦力なら牧秀悟(中大)は打って付けで、大学選抜の4番も務める右の大砲。このほかにシュアな打撃に、守備も巧い上川畑大悟(NTT東日本)や中野拓夢(三菱自動車岡崎)、パンチ力もある峯本匠(JFE東日本)、福永裕基(日本新薬)はチームで4番を務める二塁手だ。
遊撃には昨年のドラフト1位の森がおり、二塁手ほど即戦力を要してはいない。期待の伊藤裕季也(立正大~18年②)も控えており、三塁手同様に将来性のある高校生で良いと思う。三塁では井上朋也(花咲徳栄高)や小深田大地(履正社高)、山村崇嘉(東海大相模高)は遊撃にも挑戦しているスラッガー。遊撃では攻守にセンス抜群の度会隆輝(横浜高)や守備に定評のある土田龍空(近江高)、長打力が魅力の蔵田亮太郎(聖望学園高)が候補になる。
☆外野手~高校生スラッガー(右打ちがベスト)足のスペシャリスト
外野はFAで去就が微妙の梶谷と神里がおり、桑原の復活や、ファームで結果を残している細川成也(明秀日立高~16年③)が台頭すれば、内野よりは緊急性が低い。
課題は梶谷と神里に頼りっきりの機動力と、19~21歳の外野手が不在で、9名中6名が左打者という偏った構成で、高校生なら右打ちがベストだ。
足のスペシャリストでは、五十幡亮汰(中大)と並木秀尊(独協大)、逢澤峻介(トヨタ自動車)はともに超がつく俊足で、今川優馬’(JFE東日本)は加えて長打力もあり、並木と今川は右打ちで補強ポイントにも合う。このほか、1位競合必至の佐藤輝明(近大)も候補に挙がっており、ここは果敢に挑んで良いと思う。また、巧打者の鈴木聖歩(JR東日本東北)への評価も高い。
高校生スラッガーでは、来田涼斗(明石商高)は将来トリプルスリーを狙える上位候補で、元謙太(中京高)と渡邊翔太(昌平高)はスラッガー、地元の鵜沼魁斗(東海大相模高)は、パンチ力もある俊足のリードオフマンで、来田以外であれば下位でも獲得できるチャンスがある。
●投手では早川と伊藤、野手では佐藤…日本ハムが選ぶナンバーワン選手は?
今年は投手であれば早川隆久(早大)と栗林良史(トヨタ自動車)、クローザー候補で木澤尚文(慶大)が1位候補で、早川を獲得できれば左腕王国が出来る。野手では佐藤輝明(近大)は外野のレギュラーを担える逸材で、早川と栗林、佐藤は競合の可能性が高い。
そうなると敢えてウィークポイントに焦点を当てた補強で、他球団外れ1位指名見え見えの木澤や、補強ポイントに合う牧秀悟(中大)の単独指名なども、DeNAなら仕掛けてきても不思議ではない。
【指名シミュレーション】
1位~木澤尚文(慶大・投手)…最速155キロのストレートで押し込む速球と、140キロで小さく落ちるカットボールが武器の球が速い変化球投手。奪三振率は脅威の13.10とクローザー向きと言える。
2位~古川裕大(上武大・捕手)…1年時より公式戦に出場し、定評のあるインサイドワークに強肩も魅力だ。守備と同じくらい魅力なのが打撃力で、首位打者や最多本塁打、最多打点、最高出塁率など、打撃タイトルのほとんどを獲得している。
3位~小郷賢人(東海大・投手)…最速155キロのストレートに、低めに決まるスライダーとフォークが武器の即戦力リリーバー。大学では2年からクローザーを務める。
4位~蔵田亮太郎(聖望学園高・内野手)…走攻守でパフォーマンスの高い、長身の高い大型遊撃手で守備も遜色なく、スケール感の漂う逸材で森のライバルになる。
5位~伊藤将司(JR東日本・投手)…球の出どころの見づらい独特のフォームで、ストレートこそ140キロ半ばだが、変化球を駆使してゲームメークに長けている。
6位~福永裕基(日本新薬・内野手)…社会人でようやく素質の開花した大型の二塁手で、長打力が魅力でチームでは4番を任せれている。
7位~鈴木聖歩(JR東日本東北・外野手)…左の巧打者で、入社1年目からレギュラーを獲得している。チームでは主に三番を担っている。
このほかに下位または育成候補では、本格派左腕の長谷部銀次(慶大)や2メートルの大型サウスポーの今西拓弥(早大)、同じ早大で長打力が魅力の外野手・瀧澤虎太朗(早大)なども高く評価している。