ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年戦力展望☆ヤクルト~打線の主力が揃えば上位を狙える布陣で、課題は今季も投手陣

 チーム初のリーグ3連覇を狙い、優勝候補に挙げらていたシーズン。開幕からいきなり5連勝し、うち4試合は完封勝利の絶好のスタートを切った。

 ただ、レギュラーの塩見泰隆(ENEOS~17年④)と山崎晃大朗(日大~15年⑤)が開幕に間に合わず、一昨年、史上最年少3冠王を獲得した村上宗隆(九州学院高~17年①)も不振で、頼みの打線が機能せず、課題の投手陣も防御率、失点数ともに昨年より後退した。結果、3~4月こそ借金2で終えたが、5月に6勝17敗の借金11で早々とペナントレースから脱落し、勝率で中日を上回るも最多敗でシーズンを終えた。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点 防御率 失点 

 23年 5位 57勝83敗  3分 .239  123本   62個  534点  3.66  567点

 22年 1位 80勝59敗  4分 .250  174本   69個  619点  3.52  566点

 21年 1位 73勝52敗18分 .254  142本   70個  625点  3.48  531点

 20年 6位 41勝69敗10分    .242     114本  74個  468点  4.61  589点

 19年 6位 59勝82敗  2分 .244  167本   62個  656点  4.78  739点

 打線が相手投手陣を圧倒しリーグ連覇を果たしたが、昨季はその打線が機能せず、課題の投手陣を援護できなかった。4番の村上以外の打順は流動的で、得点数こそリーグ2位だったものの、チーム打率に得点圏打率がリーグ5位と、村上や山田哲人履正社高~10年①)など、ポイントゲッターの不振がチームの成績に反映してしまった。

 それでも、オスナやサンタナの両外国人がシーズンを完走し、捕手と外野を守った内山壮真(星稜高~20年③)や二遊間で好守を見せた武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)、得意の足でアピールした並木秀尊(独協大~20年⑤)の台頭は好材料だった。

 投手は昨季も頼みは小川泰弘(創価大~12年②)とサイスニードになり、WBCメンバーの高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)は4勝止まり、即戦力ルーキーの吉村貢司郎(東芝~22年①)も2勝と期待に応えることができなかった。リリーフもクローザーのマクガフが抜けた後は田口麗斗(広島新庄高~13年③)が埋めたが、その田口の穴を埋めることができず、チーム防御率と失点数はリーグワーストで改善が進まなかった。 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 22年~なし

 21年~なし

 20年~木澤尚文(投手~慶大①)

 19年~大西広樹(投手~大商大④)長岡秀樹(内野手八千代松陰高⑤)

 18年~清水 昇(投手~国学院大①) 

 ヤクルトのドラフトは成功と課題が両極端だ。成功は高校生野手の育成が上手く、村上と山田、長岡以外に、捕手の中村悠平福井商高~08年③)や代打の切り札の川端慎吾(市和歌山商高~05年③)など、日本代表メンバークラスを多数擁している。

 中村は在籍16年目で34歳、山田も在籍14年で32歳と高卒選手が主力に成長すると長年レギュラーを務めることができ、スケール感があり、戦力を維持することができる。昨季は内山に武岡、濱田太貴(明豊高~18年④)が揃ってキャリアハイの成績を上げており、今季は新旧交代が進むかもしれない。

 一方で課題は投手陣で、特に先発投手がこの間育っていない。14年~23年の10年間で投手のドラフト1位は9名(唯一の野手指名は17年の村上)を数えるが、主戦はリリーバーの清水と木澤のみで、吉村に山下輝(法大~21年①)、ケガで低迷しているが奥川恭伸(星稜高~19年①)の奮起に期待したい。

 また、投打に年齢バランスが悪く、投手は25~27歳に15名(35名中)が集中し、19~22歳は12球団最小の僅か2名しかいない。野手は外野手が酷く、19~23歳はゼロでこれも12球団でヤクルトだけ、しかも24歳と25歳、31歳と32歳と4つの近い年代に集中し、これでは上手く世代交代が進まない。

 主力は軒並み30歳オーバーで、ともに投打の球界最年長選手の44歳の石川雅規青学大~01年自)と42歳の青木宣親早大~03年④)が在籍している。この年齢まで主力で活躍できることは称賛に値するが、若手の伸び悩みの裏返しでもある。

●投手陣~リーグ最多の失点数解消に向け、若手・ベテランの関係なく底上げが必要

  一昨年リーグ連覇を支えたリリーフ陣は、防御率は3.02から3.21と悪化し、マクガフに代わるクローザー候補のケラは一軍未登板で7月に退団、田口が33セーブを上げるもセットアッパーが不足し、清水も56試合登板も8敗と精彩を欠き、リリーフの負け数はリーグ最多の30を数えた。 

 先発は小川とサイスニードが先発ローテーションを守ったが、高橋に吉村、新加入のピーターズが期待を裏切り、ベテランの高梨裕稔(山梨学院大~13年④)と原樹里(東洋大~15年①)が未勝利に終わるなどローテーションの編成に苦労した。

 そんななか、リリーフから先発へ配置転換した小澤怜史(日大三島高~15年ソ②)が6勝を挙げ、星知弥(明大~16年②)と山本大貴三菱自動車岡崎~17年ロ③)はキャリアハイの成績を上げるなど明るい材料もあった。 

【23年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア ※は新加入選手

 ・先発…☆小川泰弘(144回)サイスニード(135回)高橋奎二(101回2/3)

     小澤怜史(101回1/3)ピーターズ(100回2/3)      

 ・救援…清水 昇(56試合)木澤尚文(56試合)田口麗斗(50試合)

       石山泰稚(50試合)星 知弥(47試合)大西広樹(46試合)

       山本大貴(42試合)

【今年度の予想】

 ・先発…石川雅規 吉村貢司郎 小川泰弘 小澤怜史 高橋奎二 サイスニード

    (※西舘昂汰 山下 輝 原 樹里 奥川恭伸 山野太一 ※松本健吾

     ロドリゲス 高梨裕稔 阪口晧亮 ※ヤフーレ)

 ・中継…石山泰稚 清水 昇 木澤尚文 星 知弥 大西広樹 ※嘉弥真新也

      (※石原勇輝 山本大貴 尾仲祐哉 ※宮川 哲 丸山翔太 今野龍太)

 ・抑え…田口麗斗(※エスパーダ)

 課題の先発陣は昨年10勝の小川、加入3年目のサイスニードを中心に、高橋は初の2桁勝利を狙うシーズンになる。残り3枠は新戦力を含め候補者が多く、2年目の吉村に3年目の山下のドラフト1位コンビに、昨年プロ初勝利を上げた山野、昨季途中加入のロドリゲス、実績はないが多彩な変化球と潜在能力を評価されたヤフーレにも期待がかかる。23年目の大ベテランの石川は残り15勝に迫った200勝を目指し、原と高梨も復活を期すシーズンになる。

 さらに小澤や昨季DeNAから加入した阪口晧亮(北海高~17年D③)、ルーキーの松本健吾(トヨタ自動車~23年②)は先発・リリーフともにこなせ、チーム状況に応じての起用になる。一方でキャンプで奥川が離脱し、ルーキーの西舘昂汰(専大~23年①)も二軍スタートになりデビューは遅れそうだ、

 リリーフは、今季もクローザーは田口が有力で、最速150キロの直球に変化球も多彩なエスパーダが台頭するようになれば層は厚くなる。清水と木澤の安定感が増せば、経験豊富な石山泰稚ヤマハ~12年①)や今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)に加え、西武から宮川哲(東芝~19年西①)も加入し、昨年キャリアハイの大西と星も控える。

 また、に昨季田口が抜けた課題の左のワンポイントでは、ソフトバンクから嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年ソ⑤)が加入し、山本やルーキーの石原勇輝(明大~23年③)との併用でバリエーションが広がり、期待の持てる布陣が揃っている。

●野手陣~強力打線は健在で、レギュラーの壁は高いが若手の成長に期待したい

 塩見と山崎、山田が規定打席に届かず、特に山田は年々成績が落ちているのが気がかりだ。ただ、これだけ主力が不振でも出塁率本塁打数はリーグ2位で犠打は1位、盗塁数も3位と、結果、得点数はリーグ2位で強力打線であることは間違いない。

 特に、オスナとサンタナがシーズンを完走し、レギュラー奪取には届かなかったが、内山は得意の打力を活かし6本塁打、武岡は二遊間の守備で好プレーを見せ、並木は俊足を活かしてリーグ3位の15盗塁など若手が自分のセールスポイントを伸ばした。

 守備は村上のリーグ最多失策はあるものの、盗塁阻止率はリーグナンバーワンで、山田と長岡、武岡を加えた二遊間の守りは固く、中堅には俊足で守備範囲の広い塩見がおり、センターラインがしっかりしている。 

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…中村悠平(106/376)内山壮真(94/269)

 内野手…☆村上宗隆(140/597)☆オスナ(134/543)☆長岡秀樹(135/488)

       山田哲人(105/422)武岡龍世(84/178)川端慎吾(80/105)

       宮本 丈(65/123)

 外野手…☆サンタナ(136/516)濱田太貴(103/276)青木宣親(96/264)

       塩見泰隆(51/209)並木秀尊(82/174)山崎晃太朗(64/153)

       丸山和郁(67/106)        

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)濱田太貴⑧      1)塩見泰隆⑧      

  2)青木宣親⑦      2)青木宣親⑦        

  3)山田哲人④      3)山田哲人④  

  4)村上宗隆⑤      4)村上宗隆⑤      

  5)オスナ③       5)サンタナ

  6)中村悠平②      6)オスナ③     

  7)内山壮真⑨      7)中村悠平②  

  8)長岡秀樹⑥      8)長岡秀樹⑥

  9)小川泰弘①      9)小川泰弘①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…中村悠平 内山壮真 古賀優大(西田明央 松本直樹

 内野手山田哲人 川端慎吾 長岡秀樹 宮本 丈 オスナ 村上宗隆 武岡龍世

      (赤羽由紘 ※北村拓己 太田賢吾 北村恵吾 ※増田 珠 ※伊藤琉偉)

 外野手…並木秀尊 ※西川遥輝 塩見泰隆 青木宣親 サンタナ 濱田太貴

    (丸山和郁 山崎晃大朗 澤井 廉)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)塩見泰隆⑧      捕 手)中村悠平(内山壮真) 

  2)濱田太貴⑦      一塁手)オスナ(宮本 丈)

  3)山田哲人④      二塁手山田哲人(武岡龍世)

  4)村上宗隆⑤      三塁手)村上宗隆

  5)サンタナ⑨      遊撃手)長岡秀樹

  6)オスナ③       左翼手)濱田太貴(西川遥輝

  7)中村悠平②      中堅手)塩見泰隆(並木秀尊)

  8)長岡秀樹⑥      右翼手サンタナ青木宣親

  9)小川泰弘①

 ヤクルトで今季注目なのは左翼争いで、昨季左翼で最多出場の青木、一昨年のレギュラーの山崎、昨季キャリアハイの103試合に出場し、長打力が魅力の濱田、そして新加入の西川遥輝智弁和歌山高~10年日②)など実績のある候補がひしめいている。

 さらに、昨季のイースタン本塁打王の澤井廉(中京大~22年③)は今季の新人王候補に挙がり、内山とソフトバンクから加入の増田珠(横浜高~17年ソ③)はともにパンチ力のある打撃がセールスポイントで、走攻守揃った太田賢吾(川越工高~14年日⑧)も今季は外野にチャレンジする。並木と丸山和郁(明大~21年②)は西川に引けをとらない俊足が武器で、激しい左翼手争いにより、強力打線がさらに厚みを増しそうだ。

 内野は一塁・オスナ、二塁・山田、三塁・村上、遊撃・長岡のレギュラーに、プラス代打の切り札の川端も確定で内野の枠は少なく、控えの選手は数少ないチャンスを活かしていきたい。昨年、堅守を武器にキャリアハイの試合出場した武岡、内野ならどこでも守れる北村拓己(亜大~17年巨④)、新加入の伊藤琉偉(BC新潟~23年⑤)は走攻守揃った遊撃手で山田や長岡を脅かす存在になりたい。

 また、チームを支えるリザーブでも、内外野の守備固めと代走のスペシャリスト宮本丈(奈良学園大~17年⑥)、内野のユーティリティー三ツ俣大樹(修徳高~10年オ②)はチームに貴重な右打ちの内野手で、プロ初安打が満塁本塁打の北村恵吾(中大~22年⑤)はオスナに挑む。

 捕手は中村が中心になるが、今季は着実で成長している内山の出番が増えそうだ。その内山に負けたくないのが古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)で、課題の打撃を上げ中村を脅かし、内山を外野に追い出すくらいの活躍をしたい。

●的確な補強で課題の解消は進んだ。今季も打ち勝つ野球で、上位を狙いたい

 今季のオフの補強は秀逸で、田口に代わる左のワンポイントで嘉弥真、昨季の外野のレギュラー離脱で西川を獲得しともに課題を埋めた。一方で内野は武岡の成長もあり、元山飛優(西武)を放出し、手薄な投手陣の補強で宮川を獲得した。その内野手も山田以外の右打者不足で、昨年の三ツ俣に続き、巨人から北村拓とソフトバンクの増田、ルーキー伊藤を補強し課題を解消する的確な補強と言える。

 現在、支配下は66名でこのままのシーズンインが濃厚で、課題と言えば外国人投手の活躍(状況)次第ではさらなる補強やトレードの可能性はある。一方で、育成から支配下の枠は少なく、先発では沼田翔平(旭川実高~18年巨育③)、リリーフでは近藤弘樹(岡山商大~17年楽①)が再昇格を目指し、野手では捕手の橋本星哉(中央学院大~22年育①)と外野手の岩田幸宏(BC信濃~21年育①)が昨年ファームで好成績を挙げており、念願の支配下を勝ち取りたい。

24年戦力展望☆西武~今季も投手陣は万全で、若手野手の奮起があれば優勝も狙える

 在籍6年間で2度のリーグ優勝、5度のAクラスを達成した辻発彦監督が勇退し、満を持して新監督に松井稼頭央を迎えたシーズン。ただ期待とは裏腹に、一度もAクラスに浮上せず、優勝争いに絡むことなく5位でシーズンを終えた。

 低迷の要因は打撃の不振に尽きる。FAで森友哉オリックス)が移籍し、攻守の要の源田壮亮トヨタ自動車~16年③)がWBCで骨折し、チームに合流したのが5月下旬、一昨年、本塁打王打点王山川穂高ソフトバンク)は自身の不祥事で17試合の出場に留まり、最後までベストメンバーで臨むことが出来なかった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 23年 5位 65勝77敗  1分 .233    90本   80個  435点  2.93  465点

 22年 3位 72勝68敗  1分 .229  118本   60個  464点  2.75  448点

    21年 6位 55勝70敗18分 .239  112本   84個  521点  3.94  589点

 20年 3位 58勝58敗  4分 .238  107本   85個  479点  4.28  543点

 19年 1位 80勝62敗  1分 .265  174本 134個  756点  4.35  695点

 課題の打線は、チーム打率こそリーグ5位で最下位を免れたが、本塁打と得点数、出塁率長打率得点圏打率もリーグ最下位で終わった。松井監督が掲げたスローガン「走魂」のもと、チーム盗塁数はリーグ2位まで改善したが、成功率が高くなく、犠打成功率も最下位と理想には程遠い数字が並ぶ。

 出塁が少なく、犠打の失敗も目立ち、盗塁も積極的だが失敗が多く、一発の怖さもなく、貴重なランナーを返すポイントゲッターも不足の状況で、これでは得点数が上がる由もない。攻撃陣の強化が最優先で、文字通り打線になるように走塁や小技の精度を上げていかなくては課題は解決しない。

 一方で投手陣は昨季も盤石で、高橋光成前橋育英高~14年①)と今井達也(作新学院高~16年①)、先発に転向した平良海馬(八重山商工高~17年④)が10勝を上げ、先発陣は防御率こそオリックスに及ばず2位だったものの、10完投とクオリティスタートはリーグ1位でゲームメークに長けた投手が揃っている。

【過去5年のドラフトの主戦力】

 22年~青山美夏人(投手~亜大/④)

 21年~隅田知一郎(投手~西日本工大/①)佐藤隼輔(投手~筑波大/②)

    20年~水上由伸(投手~四国学院大/育⑤)

 19年~宮川 哲(投手~東芝①)

 18年~松本 航(投手~日体大①)森脇亮介(投手~セガサミー⑥)

 昨年は森、今季も山川が移籍し、もはや恒例とも言えるFAによる選手の移籍だが、それを見事に補っているのがドラフトの成功だ。直近5年では投手が中心になっているが、捕手の古賀悠斗(中大~21年③)に内野手の佐藤龍世(冨士大~18年⑦)、外野手の蛭間拓哉(早大~22年①)は今季レギュラー定着が期待される。

 また、捕手の柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)、内野手では渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)に昨年源田に変わり遊撃の開幕スタメンを掴んだ山村崇嘉(東海大相模高~20年③)、外野手でも長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)に岸潤一郎(四国IL徳島~19年⑧)、若林楽人(駒大~20年④)などレギュラー候補が控えており、そのスカウトセンスには目を見張る。

 今季も即戦力左腕の武内夏暉(国士館大~23年①)を3球団競合のなか獲得し、21年から会心のドラフトが続いている。また、20年は育成が大当たりで、リーグ初の育成から新人王に輝いた水上をはじめ、レギュラーが期待される長谷川、さらに豆田泰志(浦和実高~20年育④)は、昨年のシーズン途中に支配下登録されると16試合に登板して防御率0.59の好成績を上げた。

 また、西武は年齢バランスが秀逸で、19歳~31歳までで、投手は22歳、野手は29歳以外で年齢の空白がなく、年齢の偏りにより一気に戦力が落ちるリスクが少なく、FAで選手が流出しても安定した戦力を維持できている。ドラフト巧者ではなく、ドラフトを知り尽くしいる稀有なチームと言える。

●投手陣~先発陣は今年も万全だが、リリーフは再編は必要でクローザー育成が急務

  先発は高橋光がリーグ防御率2位、平良も4位の好成績を上げ、今井は規定投球回数に10イニング不足も、全員が防御率2点台の安定した投球を見せた。さらに昨年1勝(10敗)の隅田も昨季は9勝を上げ、10勝カルテットの誕生も夢ではない。

 リリーフは先発以上に安定感を見せ、防御率はリーグ2位の2.79と先発を上回った。平井と佐藤隼、森脇を軸に、ルーキーの青山や新加入のティノコが防御率2点台を維持し、支配下登録された豆田などの新戦力がリリーフ陣を底上げした。

 一方でクローザーは不安要素で、増田が19セーブながら防御率5点台を安定感を欠き、後半はNPBに復帰したクリスキーが務めた。また、防御率は良いものの与四球数はリーグ最悪の数字で、無駄な四球を減らせばさらに失点も減るはずだ。

【23年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア 

 ・先発…☆高橋光成(155回)☆平良海馬(150回)今井達也(133回)

       隅田知一郎(131回)松本 航(116回2/3)與座海人(83回)

 ・救援…平井克典(54試合)佐藤隼輔(47試合)増田達至(40試合)

       青山美夏人(39試合)ティノコ(38試合)森脇亮介(31試合) 

【今年度の予想】※は新加入選手

 ・先発…高橋光成 與座海人 隅田知一郎 松本 航 今井達也 平良海馬 

      (※上田大河 渡邊勇太朗 ※武内夏暉 羽田慎之介 ボー ※中村祐太)

 ・中継…※ヤン 佐藤隼輔 平井克典 青山美夏人 ※甲斐野央 豆田泰志

      (増田達至 ※糸川亮太 本田圭佑 ※宮澤太成 大曲 錬 水上由伸)

 ・抑え…田村伊知郎(※アブレイユ)  

 先発は高橋光と今井、平良、隅田は確定と言え全員が昨年以上の成績が期待できる。5~6番手は順当なら松本航(日体大~18年①)と與座海人(岐阜経大~17年⑤)になり、下手投げの軟投派の與座は先発ローテーションの大きなアクセントになる。さらに、制球力の良い大学ナンバーワン左腕のルーキー武内、今季先発に転向するボー、復活を期す渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)も先発の座を狙う。

 また、青山と現役ドラフトで加入した中村祐太(関東一高~13年広⑤)、ルーキー上田大河(大商大~23年②)は先発・リリーフともに適性があり、チーム状況に応じて起用を見極める。楽しみなのが最速150キロの長身左腕の羽田慎之介(八王子高~21年④)で、一軍での登板はないが本格ブレイクが期待される大器だ。

 リリーフは大きな再編が迫られる。森脇と佐々木健(NTT東日本~20年②)がケガで今季は育成契約になり不在で、クローザーの固定も急務になる。

 クローザー候補は、田村伊知郎(立大~16年⑥)に山川の人的補償で加入した甲斐野央(東洋大~18年①)が有力だが、増田もこのまま終わる訳にはいかない。さらに高速シンカーが武器の新加入のアブレイユも加えたクローザー争いはし烈だ。

 セットアッパーは今季も平井と佐藤隼を中心に、水上に豆田、本田圭佑東北学院大~15年⑥)が控える。新戦力では新外国人のヤンは奪三振率の高い左腕で、オールドルーキーの糸川亮太(ENEOS~23年⑦)は投球術に長け、大学に在籍しながら独立リーグでプレーした宮澤太成(四国IL徳島~23年⑤)もリリーフの適性が高い。

●野手陣~レギュラー確約は源田と外崎のみ!このチャンスを掴む若手の出現に期待

 18~19年の連覇の際に、相手投手陣を震え上がらせた山賊打線は見る影も無く、4年で貧打線と化してしまった。昨年、規定打席をクリアしたのは外崎とマキノンだけで、このチャンスを活かす若手も期待外れだった。

 特に外野手は、20年に秋山翔吾(広島)がMLBへ移籍したのち、規定打席をクリアしたのは20年のスパンジェンバーグと22年のオグレディの外国人選手だけで4年間もレギュラー不在が続いている。

 守備はセンターラインの強化が進み、古賀は盗塁阻止率リーグ1位を記録するまでに成長し、外崎と源田の二遊間はリーグ屈指の守備力を誇る。失策数も少なく、防御率も高い守りのチームになったなかで、攻撃陣の奮起が上位進出の最大要件になる。

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…古賀悠斗(100/282)柘植世那(59/127)

 内野手…☆外崎修汰(136/571)☆マキノン(127/514)源田壮亮(100/435)

     中村剛也(88/322)佐藤龍世(91/257)渡部健人(57/209)

     児玉亮涼(56/132)平沼翔太(67/110)

 外野手…愛斗(73/267)鈴木将平(72/267)ペイトン(57/225)

       蛭間拓哉(56/223)長谷川信哉(59/198)岸潤一郎(61/197)

       栗山 巧(77/191)西川愛也(41/109)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)ペイトン⑦      1)源田壮亮⑥  

  2)マキノン⑤      2)外崎修汰④       

  3)外崎修汰④      3)蛭間拓哉⑨  

  4)山川穂高③      4)マキノン③     

  5)栗山 巧DH       5)中村剛也DH      

  6)柘植世那②      6)佐藤龍世⑤   

  7)山村崇嘉⑥         7)鈴木将平⑦    

  8)愛斗⑨        8)古賀悠斗②

  9)金子侑司⑧      9)長谷川信哉⑧ 

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…古賀悠斗 ※炭谷銀仁朗 柘植世那(古市 尊)

 内野手…外崎修汰 源田壮亮 渡部健人 佐藤龍世 平沼翔太 山村崇嘉

       ※アギラー 中村剛也 

     (児玉亮涼 山野辺翔 ※元山飛優 陽川尚将 滝澤夏央 ※村田怜音)

 外野手…栗山 巧 蛭間拓哉 西川愛也 ※コルデロ 長谷川信哉

      (金子侑司 若林楽人 鈴木将平 岸潤一郎 高木 渉)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)源田壮亮⑥      捕 手)古賀悠斗(炭谷銀仁朗) 

  2)外崎修汰④      一塁手)アギラー(渡部健人)

  3)蛭間拓哉⑨      二塁手)外崎修汰

  4)アギラー③      三塁手)佐藤龍世(平沼翔太)

  5)コルデロDH       遊撃手)源田壮亮

  6)佐藤龍世⑤      左翼手)長谷川信哉

  7)長谷川信哉⑦     中堅手)西川愛也

  8)古賀悠斗②      右翼手)蛭間拓哉(山村崇嘉)

  9)西川愛也⑧       D H) コルデロ(中村剛也

  捕手は3年目の古賀と5年目の柘植の争いになるが、そこに今季はベテランの炭谷銀仁朗(平安高~05年①)が復帰したのが大きく、炭谷が2~3番手でベンチで控えているのは若い捕手には心強くこれ以上のない手本になる。

 内野は一塁と三塁の争いに注目で、一塁は新外国人のアギラーと渡部が候補で、アギラーはバットコントロールが良く広角に本塁打を打て、MLB通算114本の強打者で、昨年6本塁打の渡部は打力で上回ることが必須になる。三塁は佐藤龍が有力で、昨季キャリアハイの成績を上げ、後半は中軸を担っており、今季から背負う背番号10が期待の大きさを表している。

 このほか、平沼翔太(敦賀気比高~15年日④)は内野の全ポジションを守れ、児玉亮涼(大阪ガス~22年⑥)と今季ヤクルトから加入した元山飛優(東北福祉大~20年ヤ④)は守備力に定評がある。一方、陽川尚将(東農大~13年神③)とルーキー村田怜音(皇學館大~23年⑥)は打力でレギュラー争いに加わりたい。

 最もし烈なのが外野手で、2年目の蛭間に今季から外野手に専念する長谷川、打力に勝る山村、守備力の西川に俊足の若林、走攻守に秀でた鈴木将平(静岡高~16年④)、勝負強い打撃の岸がレギュラーを争う。さらにMLB通算27本塁打の新外国人のコルデロ、キャンプで高卒2年目の古川雄大佐伯鶴城高~22年②)もアピールしており、ベテランの金子侑司(立命大~12年③)も背水の陣で臨むシーズンになる。

 指名打者はともに41歳の中村剛也大阪桐蔭高~01年②)と栗山巧(育英高~01年④)の併用になるが、コルデロは守備に不安があり、指名打者起用も有力で、若手が成長し中村と栗山が代打に回るようななれば怖い打線になる。

 打線は中軸がカギで、両外国人の活躍なくしては、いくら源田と外崎がチャンスメークしても打線として機能せず、走塁や犠打といった小技の成功率も課題になる。

先ずはAクラス復帰だが、若手野手が一気に覚醒すれば、高い投手力で優勝も狙える

 今季は十分に戦える戦力は揃っているが課題も多い。山川の人的補償で43歳の和田毅ソフトバンク)を狙ったように若い選手が多く、主力が故障離脱するようなことになると厳しく、リリーフ陣も勝利の方程式を確立するには時間を要する。 

 支配下は62名と余裕があり、ケガさえ治れば森脇と佐々木は直ぐにでも復帰するだろう。ただ、育成でも投手は斎藤大将(明大~17年①)に粟津凱人(東日本国際大~18年④)など支配下候補は多いが、野手は候補が少なく、両外国人が結果を出せなければトレードなどの対応を急ぐ必要がある。

 今季も課題は打線の奮起になり、盤石な投手力を背景にソツのない攻めで1点をもぎ取り、守り勝つ野球でAクラス入りを狙いたい。優勝を狙うには戦力が十分とは言えないが、競争のなかからの新戦力の台頭でAクラスを確保しながら、終盤まで優勝争いに絡めば十分にチャンスはある。

24年戦力展望☆中日~盤石な投手陣は健在!今季も得点力アップがチーム浮沈のカギを握る

 開幕直前にロドリゲスが亡命…開幕直後にはエースの大野雄大(佛教大~10年①)が左肘の手術でシーズン絶望と開幕早々チームに暗雲が立ち込めた。その負の連鎖は留まることなく、主軸を期待された新外国人アキーノは僅か20試合出場で本塁打1本、新外国人の保険も兼ねて復帰したアルモンテもかつての打棒は見る影もなかった。

 3~4月を借金7の最下位でスタートすると、その後月間の勝ち越しは一度もないまま球団初の2年連続最下位に沈んだ。得点力不足のなか緩慢な走塁や、試合外でも「令和の米騒動」などファンのストレスがたまる後味の悪いシーズンになった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗     打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 23年 6位 56勝82敗 5分 .234    71本   36個  390点  3.08  498点

 22年 6位 66勝75敗 2分 .247    62本   66個  414点  3.28  495点

 21年 5位 55勝71敗17分   .237    69本   60個  405点  3.22  478点 

 20年 3位 60勝55敗 5分 .252    70本   33個  489点  3.84  489点

 19年 5位 68勝73敗 2分 .263    90本   63個  563点  3.72  544点

 不振の要因は明らかで、得点力不足の一点に尽きる。チーム打率と出塁率本塁打数に得点数、奪四球数はリーグワーストで、盗塁数も半減するなど頭の痛い数字が並ぶ。

 打線に怖さがないから相手投手は無駄な四球を与えることなく、出塁率は12球団で唯一の2割台に沈んだ。貴重なランナーを還すにも、得点圏打率もリーグワーストでチャンスに弱く、得点数は12球団で唯一の300点台と、得点数が400点を割ったのはセ・リーグ50年振りの屈辱だった。

 立浪監督が目指した「投手を中心にセンターライン強化で守りの野球」はチーム状況からは的確な方針だったが、阿部寿樹(楽天)と京田陽太(DeNA)を放出し、若手と新戦力で臨んだ二遊間では荷が重く、失策数は昨年より増加してしまった。

 投手陣は先発・リリーフともに防御率リーグ2位で失点数も少なかったが、小笠原慎之介東海大相模高~15年①)に柳裕也(明大~16年①)、高橋宏、トレードで加入した涌井秀章(横浜高~04年西①)の先発4本柱で借金24も誤算だった。

【過去5年のドラフトの主戦力】

    22年~村松開人(内野手~明大②)福永裕基(内野手日本新薬⑦)

 21年~なし

    20年~高橋宏斗(投手~中京大中京高①)

 19年~岡林勇希(外野手~菰野高⑤)

 18年~なし 

 直近10年でも、Aクラスは20年の1回だけと低迷期が長くなっているが、要因の一つはドラフトの不振だ。WBCメンバーにも選出された高橋宏や2年連続ベストナインの岡林の活躍は光るものの、ここ5年はドラフトでチームの底上げが進んでいない。

 特に課題の野手は、18年~22年の5年間で17名の野手を獲得しているが、レギュラーを獲得したのは岡林だけで、昨季ようやく石川昂弥(東邦高~19年①)が規定打席をクリアし、ブライト健太(上武大~21年①)にも覚醒の気配があるが、過去10年を遡ってみてもレギュラーは岡林と木下拓哉トヨタ自動車~15年③)では寂しい。

 一方で投手は高橋宏に柳、小笠原など1位指名の選手が主力として活躍し、仲地礼亜(沖縄大~22年①)もシーズン後半にローテーションに定着して2勝を上げた。リリーフでも、育成の松山晋也八戸学院大~22年育①)が頭角を表し層が厚くなった。

 昨季のドラフトでは、度会隆輝(DeNA)を指名するも抽選で外し、2位で走攻守揃った津田啓史(三菱重工イースト~23年②)、3位で堅守の遊撃手と評判の辻本倫太郎(仙台大~23年③)を獲得した。これで2年連続で即戦力内野手を複数名指名し、センターライン強化の本気度は十分に伝わっており、4年目の龍空(近江高~20年③)、2年目の村松に福永、田中幹也(亜大~22年⑥)を加えた若手の台頭に期待したい。 

 ただ、度会指名のあと、ロッテと競合で獲得した草加勝(亜大~23年①)が、右肘の手術で今シーズン中の復帰が絶望になり、そのロッテに地元出身の巧打者・上田希由翔(明大)を指名されるなど、明暗が分かれそうな雰囲気も漂う。

●投手陣~先発・リリーフともにリーグ2位の防御率で、層の厚い投手陣は今年も健在

  大野雄とロドリゲスが抜けても投手陣は盤石で、先発は小笠原と柳、高橋宏、涌井の4本柱が支え、打線の援護があれば勝ち負けの数が逆になっても不思議ではなかった。

 先発以上に強固だったのがリリーフ陣で、クローザーのマルティネスは開幕から36試合連続自責点ゼロ、防御率0.39の32セーブはまさに無双状態だった。藤嶋健人(東邦高~16年⑤)は28試合連続無失点の安定感で、マルティネス離脱後はクローザーも務め、清水達也(花咲徳栄高~17年④)はチーム最多ホールドを記録した。

 また、先発からリリーフへ転向した勝野昌慶(三菱重工名古屋~18年③)に日本ハムから加入した斎藤綱記(北照高~14年オ⑤)、育成から支配下になった松山など新戦力も台頭し、リリーフの防御率阪神にも引けをとらない3.02の好成績を記録した。

【23年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小笠原慎之介(160回2/3)☆柳 裕也(158回1/3)☆高橋宏斗(146回)

     涌井秀章(111回)

 ・救援…藤嶋健人(56試合)勝野昌慶(50試合)清水達也(50試合)

       マルティネス(48試合)祖父江大輔(45試合)松山晋也(36試合)

       田島慎二(32試合)斎藤綱記(31試合)福 敬登(29試合)

【今シーズンの予想】※は新加入

 ・先発…小笠原慎之介 柳 裕也 梅津晃大 高橋宏斗 涌井秀章 大野雄大 

      (根尾 昂 福谷浩司 仲地礼亜 松葉貴大 上田洸太朗 メヒア)

 ・中継…祖父江大輔 勝野昌慶 清水達也 藤嶋健人 斎藤綱記 松山晋也

      (田島慎二 福 敬登 ※梅野雄吾 砂田毅樹 福島章太 フェリス)       

 ・抑え…マルティネス

 先発は今季も小笠原と柳、高橋宏、涌井を軸に、復活を期す大野が加わる。残り1枠には梅津晃大(東洋大~18年②)が有力だが、トミージョン手術後で登板間隔を空ける必要があり、実績のある福谷浩司(慶大~12年①)や松葉貴大(大体大~12年オ①)との併用になる。また、昨季シーズン途中に加入し3勝を上げたメヒア、2年目の仲地や勝負の6年目を迎える根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)など若手にも注目したい。

 先発以上に期待値が高いのがリリーフ陣で、マルティネスがクローザーを務め、20代後半の勝野に藤嶋、斎藤の脂の乗り切っている選手に、清水と松山の若手がブルペンの中心になる。さらにベテランの祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)や福敬登(JR九州~15年④)が加わえたリリーフ陣は今季も盤石の布陣だ。

 また、昨季は不本意な成績に終わった砂田毅樹(明桜高~13年D育①)や森博人(日体大~20年②)、ヤクルトの2連覇を支え、現役ドラフトで加入した梅野雄吾(九産大九州高~16年ヤ③)は復活を期すシーズンになる。育成でも岡田俊哉智弁和歌山高~09年①)と岩嵜翔市立船橋高~07年ソ①)ぼベテランも控えている。

 新戦力では草加の離脱は残念だったが、土生翔太(BC茨城~23年⑤)は150キロのストレートをフォークを武器に先発・リリーフともにこなせ、加藤竜馬(東邦ガス~23年⑥)は最速154キロのパワーピッチャー。2年目のフェリスはMLBでは4年連続で40試合に登板したタフなリリーバーで、昨季ファームで好投した福島章太(倉敷工高~20年④)は一軍定着を目指すシーズンなり楽しみな選手が多い。

●野手陣~1試合平均2.72点の貧打線の改善が浮上のカギで移籍組に期待

 打線は思わず目を覆うデータが多いが、救世主になったのが現役ドラフトで加入した細川成也(明秀日立高~16年D⑤)で、本塁打24本、打点78の活躍を見せ、細川が加入していなければさらに悲惨な結果になっていた。岡林と2000本安打を達成した大島洋平日本生命~09年⑤)の1~2番コンビは脅威で、石川も自己最多の13本塁打を放ちブレイクの足掛かりを掴んだシーズンになった。

 打線の不振をビシエドなどの外国人選手の責任に寄せることは簡単だが、本来チームの顔となるはずの高橋周平(東海大甲府高~11年①)の不振、遊撃のレギュラーを期待された龍空は打撃が課題で、ブライトや鵜飼航丞(駒大~21年③)にもチャンスが転がっている状況にも拘わらず、レギュラーを獲得できないもどかしさのほうがが強い。  

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…木下拓哉(89/315)宇佐見真吾(69/226

 内野手…☆石川昂弥(121/464)龍空(114/304)村松開人(98/304)

       福永裕基(97/325)ビシエド(91/347)高橋周平(86/172)

     カリステ(47/172)

 外野手…☆岡林勇(143/633)☆細川成也(140/576)大島洋平(130/494)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)岡林勇希⑧      1)林勇希⑧    

  2)大島洋平⑦        2)島洋平⑦       

  3)高橋周平⑤              3)細川成也⑨

  4)アキーノ⑨      4)石川昂弥⑤      

  5)ビシエド③      5)ビシエド    

  6)木下拓哉②      6)福永裕基④       

  7)福永裕基④      7)木下拓哉    

  8)龍空⑥        8)龍空⑥

  9)小笠原慎之介①    9)小笠原慎之介  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…木下拓哉 宇佐見真吾 石橋康太(加藤匠馬)

 内野手…高橋周平 村松開人 ※中田 翔 石川昂弥 龍空 ビシエド 福永裕基 

       カリステ(田中幹也 ※中島宏之 ※津田啓史 ※辻本倫太郎 石垣雅海) 

 外野手…岡林勇希 大島洋平 ※上林誠知 加藤翔平 細川成也

    (鵜飼航丞 ブライト健太 川越誠司 ※ディカーソン)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)岡林勇希⑧      捕 手)木下拓哉(宇佐見真吾)

  2)大島洋平⑦      一塁手)中田 翔(ビシエド

  3)細川成也⑨      二塁手村松開人(福永裕基)

  4)中田 翔③      三塁手)石川昂弥(高橋周平)

  5)石川昂弥⑤      遊撃手)カリステ(龍空)

  6)木下拓哉②      左翼手大島洋平(ディカーソン)

  7)カリステ⑥      中堅手)岡林勇

  8)村松開人④      右翼手)細川成也(上林誠知)

  9)柳 裕也①               

 立浪監督の3年目は積極的な補強が目立った。もどかしい若手への刺激か、巨人を自由契約になった中田翔大阪桐蔭高~07年日①)と中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)、ソフトバンクからは上林誠知(仙台育英高~13年ソ④)、阪神から内野のユーティリティーの山本泰寛(慶大~15年巨⑤)のベテランを獲得した。

 ポジション別では、捕手はケガからの復帰を目指す正捕手の木下と、勝負強い打撃の宇佐見真吾(城西大~15年巨④)が中心になるが、ともに30歳を超えており、石橋康太(関東一高~18年④)等若手の台頭に期待したい。

 内野のレギュラーはすべて未定と言え、一塁は中田が有力だが、ビシエドも簡単にはレギュラーを譲る訳にはいかず、三塁は石川と高橋周の新旧の競争になる。し烈なのは立浪監督が重視している二遊間で、二塁は村松と福永に、打撃が好調であれば山本も候補になる。最もし烈なのが遊撃で、龍空や2年目の田中、ルーキーの辻本はいずれも守備力がセールスポイントで、津田は強肩と俊足に加え打撃が良く、シーズン後半に出番を増やしたカリステも2年目の覚醒が期待でき、ハイレベルな争いに期待したい。

 レギュラー未定の内野とは異なり、外野は左翼の大島、中堅の岡林、右翼の細川とレギュラーが決まっており、この3選手を上回る打力が期待される。身体能力の高いブライトに上林、長打力のある鵜飼、MLB通算40本塁打のディカーソンがどこまで脅かすことが出来るかが期待だ。

 打線は岡林と大島の1~2番は決まりで、クリーンアップが課題になる。ポイントとなるのは新加入の中田で、中田が1年通して4番に座れば細川と石川への負担も軽減され、下位で勝負強い木下にもう一枚加われば相手投手の嫌がる打線になる。また、代打で勝負強い中島や、三好大倫(JFE西日本~20年⑥)など足のスペシャリストも揃っており、厚みを増したのは間違いない。

●2年連続最下位脱出のためには、スピードを上げ思い切った更なる補強も必要

 今季のオフは他球団を戦力外になった選手を積極的に獲得し、支配下登録は65名とまだ余裕がある。課題はやはり攻撃陣の強化で、豊富な投手陣とのトレードや外国人選手の補強など、もたもたせずにスピードを上げて対応することが必要だ。

 育成選手を見てみると、昨季ファームで3割を打った福元悠真(大商大~21年⑥)や、阪神からは板山祐太郎(亜大~15年神⑥)も獲得し、支配下復活の可能性は高い。 

 投手はさらに豊富で、垣越建伸(山梨学院高~18年⑤)と松木平優太(精華高~20年育③)が昨季ファームでも好投した先発候補、リリーフではベテランの岡田に岩嵜、近藤廉(札幌学院大~20年育①)も支配下復活を狙っている。 

 今季は豊富な投手陣を中心に、中田や中島、上林の加入が刺激になると良いが、それよりもノーヒットでも1点をもぎ取るそつのない攻めに、その1点を守り切る野球で一つでも上の順位を目指していきたい。

24年戦力展望☆日本ハム~充実の投手陣と若いクリーンアップで今季は台風の目に

 一昨年は新庄剛志監督の就任、昨年は新球場「エスコンフィールド」が開場し、2年続けて話題には事欠かなかったが、「優勝しか目指さない」と豪語して臨んだシーズンは、新球場の盛り上がりに成績は伴わず、2年連続の最下位に沈んだ。

 昨シーズンも開幕早々の5連敗が響き、3~4月は借金7の最下位スタート。その後の5月を勝ち越すと一時期Aクラスを狙える順位まで浮上したが、7月に悪夢の13連敗を喫しペナントレースから脱落。夏場に盛り返したものの、終盤9~10月に借金8で失速すると、5位西武に5ゲーム差をつけられシーズンを終えた。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 23年 6位 60勝82敗  1分 .231  100本   75個  464点  3.08  496点 

 22年 6位 59勝81敗  3分 .234  100本   95個  483点  3.48  534点

 21年 5位 55勝68敗20分    .231    78本   77個  454点  3.32  515点

 20年 5位 53勝62敗  5分 .249    89本   80個  493点  4.02  528点

 19年 5位 65勝73敗  5分 .251    93本   48個  560点  3.76  590点

 最下位ながら光明が見えたのが投手陣で、先発陣の整備が進み、懸案だったリリーフ陣も田中正義(創価大~16年ソ①)や池田隆英(創価大~16年楽②)の台頭で層が厚くなった。結果、チーム防御率と失点数がリーグ3位と改善し、特に与四球はリーグ最小と無駄な失点を防ぐことができた。

 打線は万波を筆頭に野村と清宮幸太郎早実高~17年①)、新加入のマルティネスが2桁本塁打を放ち、得点圏打率も3位と一発もあるチャンスに強い打線に成長した。ただ、今季もオーダーは141通りと当初目標としていたレギュラーを固定できず、チーム打率は最下位、得意とする機動力も盗塁数が減少し、得点数は5位と低迷した。

 得点以上に投手陣の足を引っ張ったのが守備で、失策数はリーグワースト。天然芝の新球場になった難しさもあるが、失策は昨年もリーグワーストで守備力の向上は優先課題になる。また、盗塁阻止率も2年連続ワーストで、改善した投手陣の足を引っ張る形になってしまった。 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 22年~なし

 21年~上川畑大悟(内野手~NTT東日本⑧)

    20年~伊藤大海(投手~苫小牧駒大①)

 19年~河野竜生(投手~JFE西日本①)

 18年~野村佑希(内野手花咲徳栄高②)万波中正(外野手~横浜高④)

 18年の3位を最後に、5年連続のBクラスの要因の一つにドラフトの低迷にある。今季もFAの山崎福也(明大~14年オ①)やMLB108本のレイエスを競合の末に獲得するなど補強は上手く進んでいるが、肝心のチームの底上げが進んでいない。

 得意としていた高校生の育成が進まないなか、近年目立つのが即戦力志向への傾倒で、18~22年の5年間は高校生14名、大学生12名、社会人・独立リーグ9名となっており、特に社会人指名が増えている。

 即戦力の指名が悪い訳ではないが、一昨年は二刀流が期待された矢澤宏太(日体大~22年①)やMLBから加藤豪将(メッツ~22年③)を指名したが、期待通りの活躍にはならず、特に矢澤は中途半端な起用になり、話題先行の感が否めない。

 酷かったのが即戦力主体のドラフトになった19年で、指名した7名中(うち高校生は1名)在籍しているのは、河野と鈴木健矢(ENEOS~19年④)、梅林優貴(広島文化学園大~19年⑥)のみで、梅林は今季は育成指名で、僅か4年で半数がチームを去っており停滞する理由も頷ける。

 また、昨季も地元の道内選手を華麗にスルーし、野手指名が中心になったなか、遊撃の守備力の高い辻本倫太郎(仙台大~中日③)は獲得のチャンスがあっただけに首を傾げた。阪神の門別啓人(東海大札幌高~22年神②)や広島の斎藤優汰(苫小牧中央高~22年広①)は、今季のブレイク候補に名前が挙がっており、もう少し意識しても良いと思うが…。

●投手陣~与四球数減で防御率はリーグ3位まで改善!今季も充実の先発陣

  先発は昨季も上沢直之専大松戸高~11年⑥)に加藤貴之(新日鉄住金かずさマジック~15年②)、伊藤の3本柱が健在で、伊藤の序盤の不振が無ければもう少し戦い方も変わってきた。ここに安定感の増した上原健太(明大~15年①)が加わり、リリーフから鈴木と北山亘基(京産大~21年⑧)を抜擢し先発陣の整備が進んだ。

 リリーフ陣では、近藤健介の人的補償で入団した田中正の加入が大きく、ソフトバンクで伸び悩んでいた田中正のクローザー起用は、まさに双方WinWinの移籍になった。後半戦になると、池田と河野がセットアッパーに定着し、経験のある玉井大翔(新日鉄住金かずさマジック~16年⑧)や宮西尚生関学大~07年③)を巧くやり繰りし、福田俊(星槎道都大~18年⑦)は29試合無失点と底上げが進んだ。 

【23年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆上沢直之(170回)☆加藤貴之(163回1/3)☆伊藤大海(153回1/3)

       上原健太(101回1/3)北山亘基(66回)鈴木健矢(65回)

 ・救援…池田隆英(51試合)河野竜生(50試合)玉井大翔(50試合)

       田中正義(47試合)ロドリゲス(37試合)宮西尚生(31試合)

【今年度の予想】

 ・先発…加藤貴之 伊藤大海 ※山崎福也 上原健太 ※バーヘイゲン 根本悠楓

    (金村尚真 ※細野晴希 ※マーフィー ※黒木優太  鈴木健矢 北山亘基)

 ・中継…玉井大翔 河野竜生 福田 俊 ロドリゲス 山本拓実

    (杉浦稔大 宮西尚生 堀 瑞樹 ※ザバラ 石川直也 北浦竜次)

 ・抑え…田中正義 池田隆

 今季の先発は山崎福の加入はあったが、上沢がメジャーに移籍し、ややマイナス要素のほうが強い。山崎福は昨季2桁の11勝を挙げたが、23試合で130回、防御率は3.25で、上沢は勝ち星こそ9勝も、24試合で170回、防御率2.96で、数字だけを見れば上沢の穴を山崎福ひとりで埋めるのは容易ではない。

 先発は開幕投手に指名された伊藤に加藤貴、山崎福の新3本柱を中心に上原とNPB13勝のバーヘイゲンまでは順当と言える。残り1枠を北山に鈴木、第2回アジアチャンピオンシップで好投した根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)、昨季は故障で離脱したものの4試合に先発し、防御率1点台の金村尚真(冨士大~22年②)、オリックスから加入の黒木優太(立正大~16年②)が争う形になり先発陣は充実している。また、達孝太(天理高年①)も今季のブレイク候補で、プロ初勝利が見られるかも知れない。

 リリーフは昨季活躍した田中正と池田、河野に期待がかかる。昨季のように8~9回が安定すれば、宮西に玉井、杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)、7年目のロドリゲスなど経験豊富な選手に加え、福田俊に山本拓実(市西宮高~17年⑥)など伸び盛りの若手が加わる。

 さらに新加入の161キロ右腕のザバラはクローザー候補で、復活を期す堀瑞樹(広島新庄高~16年①)に石川直也(山形中央高~14年④)、育成契約だが巨人から復帰したベテランの鍵谷陽平(中大~12年③)も控える。また、北山と鈴木、黒木はリリーフ経験もあり、今季の投手陣はさらなる活躍が期待できる。

●野手陣~今季はレギュラーを固定できるか?守備力アップで守り勝つ野球を目指す

 昨年は万波が本塁打王にあと1本と迫る25本塁打を放ち、強肩を活かした右翼守備は他球団の脅威になった。これまで故障の多かった野村は一年間完走し、五十幡亮汰(中大~20年②)や細川凌平(智弁和歌山高~20年④)等が自己最多の出場試合数で若手の台頭も目立った。

 一方で一昨年首位打者の松本は成績を落とし、期待の清宮や上川畑、今川優馬(JFE東日本~20年⑥)が伸び悩み、即戦力ルーキーの矢澤や加藤豪もレギュラーポジションを脅かすことが出来なかった。打線以上に改善が必要なのが守備で、以前のスキのない鉄壁な守備は見る影もなく、新庄監督が理想とする、機動力や犠打を駆使し、しぶとく1点をもぎ取り、守り勝つ野球には程遠い状況になっている。

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆マルティネス(119/444)伏見寅威(89/251)郡司裕也(55/187)

 内野手…☆野村佑希(125/473)上川畑大悟(108/346)清宮幸太郎(99/416)

     奈良間大己(65/196)加藤豪将(62/222)細川凌平(60/112)

     アルカンタラ(41/125)石井一成(36/100)

 外野手…万波中正(141/582)☆松本 剛(134/561)江越大賀(100/176)

     五十幡亮汰(70/206)矢澤宏太(37/107) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)松本 剛⑦      1)松本 剛⑦      

  2)上川畑大悟⑥     2)五十幡亮汰⑧      

  3)石井一成④           3)清宮幸太郎    

  4)野村佑希⑤      4)万波中正⑨     

  5)清宮幸太郎③     5)マルティネスDH     

  6)マルティネスDH     6)野村佑希③     

  7)万波中正⑨      7)上川畑大悟④ 

  8)宇佐見真吾②     8)奈良間大己⑥ 

  9)五十幡亮汰⑧     9)伏見寅威②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…マルティネス 伏見寅威 郡司裕也 田宮裕涼(古川裕大 ※進藤勇也)

 内野手加藤豪将 上川畑大悟 野村佑希 清宮幸太郎 細川凌平 奈良間大己

      (中島卓也 石井一成 福田光輝 有薗直輝 水野達稀)

 外野手…※スティーブンソン 松本 剛 江越大賀 五十幡亮汰 万波中正

       ※レイエス(浅間大基 矢澤宏太 ※宮崎一樹 ※水谷 瞬 今川優馬)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)松本 剛⑦      捕 手)伏見寅威(田宮裕涼) 

  2)スティーブンソン⑧  一塁手)野村佑希(マルティネス)

  3)清宮幸太郎⑤     二塁手加藤豪将(細川凌平)

  4)万波中正⑨         三塁手清宮幸太郎

  5)野村佑希③         遊撃手)上川畑大悟(奈良間大己)

  6)レイエスDH        左翼手)松本 剛(江越大賀)

  7)加藤豪将④         中堅手)スティ-ブンソン(五十幡亮汰)

  8)伏見寅威②      右翼手)万波中正

  9)上川畑大悟⑥      D H)レイエス(マルティネス) 

 捕手は伏見寅威(東海大~12年オ③)やマルティネスを中心に、郡司裕也(慶大~19年中④)に古川裕大(上武大~20年③)、田宮裕涼(成田高~18年⑥)などタレントが豊富で、特に昨季の後半戦で見せた亜田宮の強肩は盗塁阻止率の向上に繋がる。また、マルティネスと郡司は内野、古川は外野も守れ複数ポジションをこなせる選手が多い飲のも心強い。また、強肩強打のルーキー進藤勇也(上武大~23年②)も開幕スタメンのチャンスもあり、正捕手争いがし烈になっている。

 内野は一塁の野村と三塁の清宮が確定だが、清宮が自主トレでケガをし出遅れ開幕が微妙になっている。清宮が間に合わなければ、野村や福田光輝(法大~19年ロ⑤)が有力だが、郡司も三塁守備に挑戦しており、3年目の有薗直輝(千葉学芸高~21年②)の抜擢の可能性もあり、このチャンスを活かす選手の出現に期待したい。

 課題は今季も二遊間で、二塁は加藤豪に細川、石井一成(早大~16年②)、遊撃は上川畑に奈良間大己(立正大~22年⑤)、中島卓也(福岡工高~08年⑤)が候補だが、奈良間以外は全員が同じ左の巧打者タイプで、打撃か守備で飛び抜けた選手が欲しい。

 外野は左翼の松本と右翼の万波が決まりのなか、新外国人のスティーブンスも加入した中堅がし烈な争いになる。俊足のスティーブンスと五十幡はともにリードオフマン候補で、抜群の守備力を誇る江越大賀(慶大~14年神③)は打撃の確実性を上げたい。このほか、現役ドラフトで加入の水谷瞬(石見智翠館高~18年ソ⑤)は、紅白戦初戦で4番を任され、走攻守揃ったルーキー宮崎一樹(山梨学院大~23年③)も一軍キャンプスタートしており大抜擢があるかもしれない。

 今季は万波を4番に据え、清宮と野村を加えた若いクリーンアップにマルティネスやレイエスの長距離砲が6~7番に控える打線は強力だ。課題は1~2番で松本剛は決まりだが、俊足の五十幡にスティーブンソン、出塁率の高い上川畑が候補になる。

支配下に余裕があり、育成も投手陣が豊富!野手はトレードで補強も必要か

 今季もオフの話題性は十分で、山崎福とレイエスを大争奪戦の末に獲得し、今シーズンは育成も含めると外国人選手8名で臨む。ただ、充実している投手陣と比較して野手の補強はまだ必要で、豊富な捕手を軸に、昨季引退した谷内亮太のような終盤の守備固めを安心して任せられる選手や、空白の25~30歳の右打ちの内野手を補強したい。

 現状、支配下は65名と人数には余裕がある。育成を見てみると、投手は鍵谷のほかに、昨季ファームで好成績を残した柿木蓮大阪桐蔭高~18年⑤)に斎藤伸治(東京情報大~20年育②)、台湾球界期待の星の孫易磊も控え豊富だが、野手の候補が乏しくトレードを検討しても良いと思う。

 2年連続最下位ながら、着実に若手が成長し、今季の大型補強で台風の目になるのは間違いない。一気に優勝までとは行かないまでも、Aクラスは狙える戦力が揃い期待の持てる布陣になった。

23年~現役ドラフトの振り返り

 12/8に2度目の現役ドラフトが開催された。今年は2~3選手の移籍があるのかと思ったが、昨年同様1名(計12名)の移籍になった。

セ・リーグ

 阪 神  …漆原 大晟(オリックス・投手/新潟医療福祉大~18年育①)

 広 島  …内間 拓馬(楽 天・投手/亜大~20年④)

 DeNA …佐々木千隼(ロッテ・投手/桜美林大~16年①)

 巨 人  …馬場 皐輔(阪 神・投手/仙台大~17年①)

 ヤクルト …北村 拓己(巨 人・内野手/亜大~17年④)

 中 日  …梅野 雄吾(ヤクルト・投手/九産大九州高~16年③)

パ・リーグ

 オリックス…鈴木 博志(中 日・投手/ヤマハ~17年①)

 ロッテ  …愛 斗  (西 武・外野手/花咲徳栄高~15年④)

 ソフトバンク  …長谷川威展(日本ハム・投手/金沢学院大~21年⑥)

 楽 天    …櫻井 周斗(DeNA・投手/日大三高~15年⑤)

 西 武    …中村 祐太(広 島・投手/関東一高~13年⑤)

 日本ハム …水谷  瞬(ソフトバンク・外野手/石見智翠館高~18年⑤)

 

 昨年は投手と野手が半分の6選手に分かれたが、今年は投手が9名と多く、特にリリーバーの移籍が多かった。野手は3名のみで、2年連続で捕手の指名はなかった。

 昨年、ドラフト1位指名選手の移籍はオコエ瑠偉楽天→巨人)のみだったが、今年は馬場(阪神→巨人)と鈴木(中日→オリックス)、佐々木千(ロッテ→DeNA)の3選手になり、育成出身は漆原(オリックス阪神)のみで、オリックスは2年連続で育成入団の選手の移籍になった。

 最年長は29歳の佐々木千で、最年少は水谷(ソフトバンク日本ハム)の22歳で、在籍4年の移籍になった。その在籍年数では中村祐(広島→西武)の10年が最長で、長谷川(日本ハムソフトバンク)は僅か2年での移籍になった。

 指名された選手全員が移籍経験はなく、偶然かも知れないが西武は2年連続で在籍年数の最も長いベテラン選手を獲得し、逆に日本ハムは2年続けて最年少選手の指名になり、現役ドラフトへの球団の思惑みたいのを感じた。また、阪神と広島、DeNA、ソフトバンクは投手、ロッテは野手の指名が2年連続になり、ソフトバンクは昨年に続き日本ハムからの獲得になった。

 顔ぶれを見ると大方の予想通りの名前が大半だったが、そのなかで驚いたのは梅野(ヤクルト→中日)と愛斗(西武→ロッテ)がリストアップされたことで、特に愛斗は準レギュラーで活躍していただけにまさかの放出になった。

 

阪神(△)OUT/馬場皐輔→IN/漆原大晟(オリックス

 盤石な投手陣のなか、出番の限られていた馬場がチームを去るが、同じリリーフ投手の漆原の獲得で戦力的には±ゼロになった。漆原は19年にファームで最多セーブを獲得するも、一軍では勝ちパターンに加わることが出来なく、今季は20年の支配下登録後、最も少ない16試合登板になった。ただ、漆原の潜在能力を評価しての獲得だと思うので、投打に若手が主力に成長するなかでブレイクも期待できる。

◆広島(△)OUT/中村祐太→IN/内間拓馬(楽天

 西川龍馬がFAで移籍を決め、野手の補強になるかと思ったが、広島の選択はこちらも課題のリリーフ強化だった。内間は力強いストレートが武器で期待値は高いが、制球力に課題があり、リーグワーストの防御率楽天で今季の一軍登板はなく、戦力になるには時間がかかると思う。不足している右打ちの内野手で北村(巨人→ヤクルト)のほうが年齢的にも補強ポイントに合致している分、勿体ない印象が強い。

◆DeNA(○)OUT/櫻井周斗→IN/佐々木千隼(ロッテ)

 プロ未勝利の櫻井を放出し、一昨年54試合登板の佐々木を獲得できたのだから傍目から見せば成功と言えるが、今永昇太と石田健大の移籍の可能性が高く、エスコバーも退団し主力の左投手が3名も抜けるなか、左の櫻井移籍は正直疑問が残った。ただ、それ以上に即戦力の投手が必要で、今季は僅かに2試合ながら実績のある佐々木の加入は大きい。先発もこなせるが基本はリリーフになりそうで良い補強になったと思う。

◆巨人(◎)OUT/北村拓己→IN/馬場皐輔(阪神

 今年は見事な現役ドラフトで、余剰戦力をリストアップし、不足部分を補う理想的な形になった。リーグナンバーワンの攻撃陣は内野のレギュラーがほぼ確定し、中田翔すら移籍を決断するチーム状況のなか、今オフの最大の補強ポイントのリリーフ強化で馬場の獲得は大成功と言える。馬場は今季ファームで防御率1点台の好成績を上げながら、一軍は19試合登板と出番にも飢えており、勝ちパターンを築ける補強になった。

◆ヤクルト(△)OUT/梅野雄吾→IN/北村拓己(巨人)

 事前の予想で名前は挙がっていたが、通算216試合に登板し、まだ24歳との梅野の放出には正直驚いた。今季は僅かに5試合の登板だったが、これからに期待を持てる選手だけに、投手力が課題のなか野手指名が果たして的確だったのか疑問が残った。一方、ヤクルトの内野はオスナに山田哲人、村上宗隆、長岡秀樹とレギュラーが固定されており、北村は内野はどこでも守れるが、結局は控えの層が厚くなった印象しかない。

◆中日(△)OUT/鈴木博志→IN/梅野雄吾(ヤクルト)

 先発かリリーフか起用法が定まらなった鈴木を放出するも、実績のある梅野の獲得は大きかった。中日の投手陣も層は厚いが、リリーフは高齢化が懸念材料で、24歳の梅野の加入は将来性も担保できる補強になった。ただ、今オフは中田翔中島宏之、上林誠知など野手の獲得が多く、巨人ではないが投手ではなく野手を放出し、梅野獲得だと大成功と言えただけにやや残念だった。

オリックス(△)OUT/漆原大晟→IN/鈴木博志(中日)

 リリーフの層が厚く出番の限られていた漆原を放出したが、同じリリーバーの鈴木を獲得でき、阪神と同じく±ゼロの結果と言える。ルーキーイヤーに大活躍した鈴木は、それ以降不振が続き、先発転向など起用法が定まらなかった。オリックスでも先発の可能性はあるが、ストレートの質を取り戻すことができればリリーフのほうが良く、投手育成に長けたチームだけに復活を期すには鈴木にとってはこの移籍をプラスにしたい。

◇ロッテ(◎)OUT/佐々木千隼→IN/愛斗(西武)

 今年のドラフトで度会隆輝(DeNA)を1位指名の方針から、外野手の補強が優先事項のなか、愛斗を獲得できたのは大成功と言える。西武ではレギュラー定着は叶わなかったが、今季は73試合に出場し強肩を活かした外野守備にも定評があり、文字通り補強になった。一方、佐々木千は、今季は移籍の西村天裕等の台頭もあり僅か2試合登板に留まったが、、多くの主力投手が多く抜けるDeNAからの期待値は高い。

ソフトバンク(○)OUT/水谷 瞬→IN/長谷川威展(日本ハム

 今年の現役ドラフト選手のなかで、唯一一軍出場がなかったのが水谷で、ファームで3番目に多い83試合に出場するも、外野は層が厚く、オフにはウォーカーの入団も決まり、外野の右打者は少ないが、チャンスは多くなく、本人にとっても良い判断になったと思う。一方で獲得したのは左の変則投手の長谷川で、嘉弥真新也が戦力外になり、モイネロの先発転向もあるなか、貴重な左のリリーバー獲得はプラスになった。

楽天(✕)OUT/内間拓馬→IN/櫻井周斗(DeNA)

 今季リーグ最下位の防御率のチームにおいて、クローザーの松井裕樹がMLB移籍など、補強ポイントはリリーフ投手で、経験豊富なリリーバーもいるなか、なぜ直近2年で一軍未登板の櫻井を獲得したのか正直疑問に思った。年齢も24歳と若く、松井移籍後で左腕強化を図りたい気持ちは分からない訳ではないが、それであれば、不足している右の外野手で水谷(日本ハム)獲得のほうが意図が伝わると思う。

◇西武(✕)OUT/愛斗→IN/中村祐太(広島)

 外野のレギュラーが不在で、山川穂高とマキノンの去就も決まらないなか、愛斗放出はファン以外も驚いた。ルーキーの蛭間拓哉や、来季外野手登録になる長谷川信哉の期待値の高さの裏返しだとは思うが、大胆な判断をしたと思う。一方で獲得した中村祐は、投球術で抑えるスタイルだけに、パワーピッチャーの多いパ・リーグでアクセントになるかもしれないが、投手陣の層の厚いチームでどういう起用になるか見えない。

日本ハム(△)OUT/長谷川威展→IN/水谷 瞬(ソフトバンク

 ポスト宮西尚生と期待されていた長谷川を放出し、一軍未出場の水谷を獲得する辺り“らしさ”が出たドラフトになった。日本ハムは「ファームで結果出してから一軍」ではなく、「先ずは一軍で起用し判断」する起用法で、万波中正や江越大賀といった同じタイプの選手も多く水谷にはプラスになると思う。ただ、同じ野手であれば、右の内野手も不足しており、北村(ヤクルト)のほうが来季の上積みが計算できたと思う。

 

 今年で2年目を迎えたが、指名人数はもっと増えて良いと思う。また、現在は実施時期がシーズンオフになっているが、シーズン中の開催の要望もあり、トレード期限ギリギリの日程やオールスター前後に試験的に開催してみても良いと思う。

23年現役ドラフト選手を予想する~セ・リーグ編

 今年の現役ドラフトは、昨年から1つ変更になり、各球団は指名対象となる選手を2人以上リストアップするが、その際、年俸が5,000万円以上~1億円未満の選手をリストアップした球団は、5,000万円未満の選手を1名追加し、3人以上の選手をリストアップするルールに変更された。

 これにより年俸5,000万円以下の選手が、必ず2名対象となることで、「現チームで出場機会に恵まれていない選手の移籍を促進させる」制度の主旨を保つことができ、現役ドラフトによろ移籍の活性化が進むことが期待できる。

 なお、12月2日現在で外国人選手、育成選手、複数年契約選手、FA権保有選手、FA権行使経験あり、21年シーズン以降にトレードで獲得した選手、22年シーズン後に育成から支配下登録された選手は指名対象外になる。

 

阪神

投手…馬場皐輔(仙台大~17年①)秋山拓巳(西条高~09年④)   

野手…長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)熊谷敬宥(立大~17年③)

     豊田 寛(日立製作所~21年⑥)

 85年以来の日本一に輝いた今季、投打ともに主力が固定され、ファームで好成績を残すも出番が限られた選手が多く控えている。

 層の厚い投手陣からは、秋山馬場を予想した。通算49勝の秋山は、ここ2年は1勝止まりも、今季ファームで8勝を挙げており、32歳の年齢からラストチャンスにかけたい。馬場は今季19試合登板で、防御率2点台(ファームでは1点台)と好成績を残すも、こちらも一軍定着とはならなかったが、他球団からは垂涎の的だ。

 野手では、26歳で2年目に豊田は即戦力を期待されながら一軍でヒットはなく、同じ右打ちの外野手で若手が台頭してきており、来季も出番が増えることは予想し難い。内外野守れるユーティリティの熊谷は、今季はは僅かに9打席のチャンスしかなく、第三の捕手の長坂も来季30歳を迎え、ともに需要は高いだけにもう一花咲かせたい。

【広島】

投手…高橋昂也(花咲徳栄高~16年②)塹江敦哉(高松北高~14年③)

     中村祐太(関東一高~13年⑤)  

野手…中村奨成(広陵高~17年①)大盛 穂(静岡産大~18年育①) 

 今年のドラフトで即戦力投手の獲得に成功しており、投手陣に余裕が生まれた。中村祐は、今季はリリーフで防御率1点台と結果を出しているが、元々は先発でロングリリーフなど起用法が幅広い。リリーフ左腕の塹江は、登板過多の影響か今季は8試合登板で出番が激減。高橋はトミージョン手術で、2シーズン一軍から遠ざかっており、同じ年齢で左腕が4人と渋滞気味だけに候補となる可能性が高い。

 野手の最右翼は中村奨で、2球団が競合したドラフト1位は過去の話で、在籍6年で88試合出場…ファームでもマスクを被ったのが僅かに5試合と捕手としても岐路に立っている。何より専番号が22から96に変わったことが、期待値の低さを物語っており、チーム以上に本人が環境変化を望んでいるかも知れない。巨人と楽天は捕手の支配下人数が5名と少なく、外野手も補強ポイントで移籍の条件は揃っているが…。

【DeNA】

投手…京山将弥(近江高~16年④)

野手…益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)神里和毅(日本生命~17年②)

     楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)梶原昂希(神奈川大~21年⑥)

 投手陣はエースの今永昇太など、主力が抜けるため野手、それも外野手中心の予想にした。理由は今年のドラフトで1位の度会隆輝以外に、外野手3名が加わり、それも全員が左打ちとなると、必然的に左打者が候補になり、神里楠本梶原を挙げた。

 梶原はさすがに来季が3年目で早いと思うが、神里と楠本は可能性が高い。神里はファームではOPSが7割を超え、楠本は今季は打率1割台で苦戦したが、2年連続で90試合以上に出場しており、西川が移籍した広島、度会を外した中日にロッテ、レギュラー不在の西武など外野手不足のチームは多く、他球団から見れば垂涎の的だ。

 投手の候補は京山で、今季は課題の制球力が克服できずに、一軍登板が無かった。通算で61試合登板で12勝の実績があり、まだ25歳と若くチャンスはまだまだある。捕手の益子も23歳と若く、楽天や巨人など捕手の絶対数の少ないチームはお薦めだ。

【巨人】

投手…今村信貴(太成学院高~11年②)

野手…湯浅 大(健大高崎高~17年⑧)増田大輝(四国IL徳島~15年育①)

   若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)北村拓己(亜大~17年④)    

 投手では既にトレードで投手3名を獲得しているなか、今村を候補に挙げた。昨年からリリーフに専念して55試合に登板したが、今季は24試合と出番が半減。ただファームでは防御率1.07と別格の数字を挙げており。先発もこなせるだけにチーム状況に応じた起用ができるのも強みだ。

 チーム打率リーグ1位の野手は有望な選手が多く、レギュラーが固定される内野手を候補に挙げた。捕手以外ならどこでも守れるユーティリティの若林、守備固めと代走が主の増田大はともに30歳で、このまま控えで終わるのは勿体ない。

 ファームで遊撃を務めた北村は、OPSが8割を超え内野の全ポジションをこなせ、同じく湯浅は門脇誠の台頭もあり今季は一軍出場がなかった。両打ちの若林を含め、全員が貴重な右打ちの内野手と、広島やDeNA、日本ハムに不足しており需要は高い。

【ヤクルト】

投手…高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)金久保優斗(東海大市原望洋高~17年⑤)

     長谷川宙輝(聖望学園高~16年ソ育②)  

野手…松本直樹西濃運輸~17年⑦)太田賢吾(川越工高~14年日⑧)

 有力候補で投手では長谷川、打者では太田を挙げた。長谷川は21年に血行障害の手術を受け、ようやく今季一軍登板(1試合)を果たした。今季ファームで38試合で防御率2点台と150キロの剛腕左腕に復活の兆しが見え始めている。

 太田はかつてファームで首位打者で獲得したこともあり、今季もファームでは打率3割、OPSは9割を超えており、ファームでやることは既にない。出場機会を増やすために外野も守れるユーティリティで、26歳と年齢も若く他チームで見てみたい。

 ベテランの高梨は今季未勝利で、今オフは背番号も大きくなり機会はさらに限られてくることが予想される。金久保も今季は1試合登板で、来季は7年目を迎え環境を変える時機なのかもしれない。強肩の松本直は30歳を超えたが、ファームの正捕手を卒業できず、今季の一軍出場は僅かに3試合と残されたチャンスも限られてきている。

【中日】

投手…橋本侑樹(大商大~19年②)福谷浩司(慶大~12年①)

     鈴木博志(ヤマハ~17年①)

野手…石垣雅海(酒田南高~16年③)三好大倫(JFE西日本~20年⑥)

 今オフは野手の補強に積極的で、中田翔(巨人)の獲得も合わせると、他球団から既に4名の選手が加入しており、伸び悩んでいる若手が候補になる可能性が高い。

 期待の石垣は7年目の今季も22試合の出場のみと結果を残せず、いつの間にか、内野すべてのポジションも守れるユーティリティ扱いだが、期待されているのは打力で、今一度長所を伸ばせるチームで再挑戦して良いと思う。三好は俊足が武器だが、中々チームでその俊足を活かす機会がなく機動力不足のチームは一芸で欲しい選手だと思う。

 投手は力のある選手が多く、来季33歳の福谷はギリギリの年齢だが、ベテランの力が必要なチームは多い。また、鈴木橋本は、先発、リリーフと起用法がハッキリせず迷走状態が続いている。鈴木は力勝負のパ・リーグ、橋本もスライダーという大きな武器(一芸)があるだけにともにリリーフとして再起を図るチームはあると思う。

 

 最後に、今回の候補者をベースに、各チームの指名選手を投手、野手1名ずつ予想してみた。2年目の今年、どういったドラマが待ち受けているか、そして第2の大竹(阪神)と細川(中日)が誕生するか、12月8日を期待して待ちたい。

          投 手        野 手

 中 日    鈴木博志→巨人     石垣雅海(内)→阪神

 日本ハム   生田目翼→中日     今川優馬(外)→ロッテ

 ヤクルト   長谷川宙輝→西武    太田賢吾(内)→オリックス

 西 武    浜屋将太→オリックス  高木 渉(外)→巨人

 巨 人    今村信貴→DeNA   北村拓己(内)→ソフトバンク

 楽 天    弓削隼人→広島     渡邊佳明(内)→中日

 DeNA   京山将弥→ソフトバンク 神里和毅(外)→広島

 ソフトバンク 笠谷俊介→ロッテ    リチャード(内)→西武

 広 島    中村祐太→ヤクルト   中村奨成(捕)→楽天

 ロッテ    本前郁也→日本ハム   平沢大河(内)→ヤクルト  

 阪 神    馬場皐輔→楽天     熊谷敬宥(内)→日本ハム

 オリックス  漆原大晟→阪神     山足達也(内)→DeNA

23年現役ドラフト候補選手を予想する~パ・リーグ編

 今年のオフは戦力外になった選手がハイペースで移籍が決まる一方で、トライアウト参加選手の門は例年になく狭く、参加した59名中で新天地が決まったのは3選手のみで、NPBは吉田凌(オリックス→ロッテ育成)1名のみと明暗が分かれている。

 昨年から始まった現役ドラフトは、「現チームで出場機会に恵まれていない選手の移籍を促進させる」もので、各球団が対象選手のうちから2名以上をリストアップし、そのリストを基に全球団が指名することで、全球団で必ず選手の出入りが発生するシステムになっている。

【昨年の現役ドラフト指名】※( )は移籍前の球団

 ・オリックス…渡邊大樹(ヤクルト)1試合/打率.000/0本塁打 →戦力外(引退)

 ・ソフトバンク…古川侑利(日本ハム)9試合~0勝0敗0S→戦力外(育成契約)

 ・西武…陽川尚将(阪神)9試合/打率.167/1本塁打

 ・楽天…正随優弥(広島)1試合/打率.000/0本塁打 →戦力外

 ・ロッテ…大下誠一郎(オリックス)23試合/打率.227/1本塁打

 ・日本ハム…松岡洸希(西武)一軍出場なし →戦力外(育成契約)

 ・ヤクルト…成田 翔(ロッテ)3試合0勝0敗0S →戦力外

 ・DeNA…笠原祥太郎(中日)2試合0勝2敗0S →戦力外

 ・阪神…大竹耕太郎(ソフトバンク)21試合12勝2敗0S

 ・巨人…オコエ瑠偉楽天)41試合/打率.235/2本塁打

 ・広島…戸根千明(巨人)24試合1勝0敗0S 6HP

 ・中日…細川成也(DeNA)140試合/打率.253/24本塁打

 投手では大竹(阪神)、野手では細川(DeNA)の活躍が光り、戸根やオコエ、大下も昨季よりは出番が増え、1年目にしては成果は十分だったと思う。ただ一方で半分の6選手(うち2名は育成で再契約)は戦力外になり、厳しさも浮き彫りになった。

 ただ、成功事例にスポットを当てることが重要で、やりながら制度を是正していけば良い話で、今年もどんな現役ドラフトになるか、各球団の候補を予想してみました。

 

オリックス

投手…横山 楓(セガサミー~21年⑥)漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)

野手…山足達也(ホンダ鈴鹿~19年⑧)福田周平(NTT東日本~17年③)

     佐野晧大(大分高~14年③)

 候補として有力なのが投手の漆原横山で、エースの山本由伸と今季10勝の山崎福也がFAで抜けるが、若手も育ってきており強力投手陣が揺らぐことはないだろう。

 漆原は今季一軍で16試合登板も層の厚い投手陣の壁に阻まれ定着とはならなかったが、ファームでの実績が十分でリリーフはどこのチームも欲しい。このほか、今季2年目の横山は少し早い気もするが、社会人で即戦力の期待も一軍登板は今季の4試合のみと主戦がファームになっており、最速154キロ右腕も欲しいチームは多いはずだ。

 一方で、FAで西川龍馬(広島)が加入したことにより、外野の壁が一つ埋まり、ここにきて福田佐野の可能性も出てきた。福田は今季36試合出場と出番が激減し、打率も1割台と西川獲得の要因にもなった。佐野は俊足が武器だが今季は5盗塁とセールスポイントが活かされておらず、外野手の欲しいロッテや西武、広島は欲しい選手だ。

【ロッテ】

投手…佐々木千隼(桜美林大~16年①)二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)

     八木 彬(三菱重工エスト~21年⑤)本前郁也(北翔大~19年育①)

野手…平沢大河(仙台育英高~15年①)

 ドラフト1位の佐々木千平沢の名前も挙げたが、正直候補に迷った。そんななか有力なのが左腕の本前で、今季は僅か1試合の登板になったが、ファームでは104回を投げており、FAで山崎福也(オリックス)獲得に動いているチームなどは狙い目だ。

 佐々木千はこの2年結果が出ておらず、来季30歳という年齢を考えると、環境を変えることもアリと言える。平沢も今季は57試合出場で出番を増やし、インパクトのある打撃も見せたが打率1割台で期待に応えられていない。また、本職の遊撃での出場はファームでもなく、外野で勝負するなら以前よりも増して打撃強化が求められる。

 八木は今季2年目だが、ファームで好投するも今季は一軍で結果を残せず、27歳の年齢を考えると候補に挙がっても不思議ではない。かつての開幕投手二木はケガで今季は一軍登板がなく、復活を望む声は多いが新天地への移籍もありかも知れない。

ソフトバンク

投手…杉山一樹(三菱重工広島~18年②)笠谷俊介(大分商高~14年④)

野手…渡邊 陸(神村学園高~18年育①)リチャード(沖縄尚学高~17年育③)

     野村大樹(早実高~18年③)

 戦力外になった森唯斗をはじめ、嘉弥真新也に上林誠知、増田珠の移籍先が決まり、昨年移籍した大竹耕太郎の活躍にもあるように選手層は厚くまさに宝の山だ。

 右の長距離砲の獲得が今オフのメインで、ウォーカー(巨人)を獲得し、FAで山川穂高(西武)の加入も濃厚で、そうなると野村大リチャードの出番がなくなる。特にリチャードはファームで4年連続の本塁打王で二軍でやることは既になく、移籍したほうが本人にもプラスになると思う。打撃の良い渡邊もファームの正捕手では勿体なく、オリックス楽天、巨人、ヤクルトは捕手自体の数が不足しており人気は高い。

 投手ではポテンシャルの高さが評価されている杉山は、まさしく他球団で見てみたい選手。このなかでは最も実績のある笠谷は、先発もリリーフもでき、結果は残すも一軍に定着できず、左腕不足のオリックスやロッテ、西武は是が非とも欲しい選手だ。 

楽天

投手…高田孝一(法大~20年②)弓削隼人(スバル~18年④)

     瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)津留崎大成(慶大~19年③) 

野手…渡邊佳明(明大~18年⑥)

 良く言えば主力が固定され出番が限られ、悪く言えば主力をを脅かす若手が不足し選手層が薄く候補選定に迷った。高田津留崎はともに一軍では7試合登板に留まり、出場機会が増えるなら移籍も歓迎だろう。特に津留崎は一・二軍とも防御率1点台と投げれば結果を残しており、リリーフを強化したい広島や巨人、ヤクルトにハマると思う。

 先発の瀧中は、今季は8試合登板に留まり、来季は30歳のシーズンを迎え、先発投手の若手への転換を進むなか、出番が限られることが予想される。技巧派左腕の弓削も年々出番が減っており、先発もリリーフも出来るだけにもう一花咲かせたい。

 投手で4名挙げたが、野手で有力なのが渡邊で、一軍では便利屋扱いだが、ファームでは別格の打撃を見せ、チームに同じタイプの選手が多いだけに、環境を変え今一度レギュラーを目指したい。内外野守れ、広島やDeNAの補強ポイントにフィットする。

【西武】

投手…浜屋将太(三菱日立PS~19年②)大曲 錬(福岡大~20年⑤)

野手…山野辺翔(三菱自動車岡崎~18年③)高松 渡(滝川二高~17年中③)

     高木 渉(真颯館高~17年育①)

 西武で有力なのが浜屋山野辺で、浜屋はチームで不足している左腕だが、2年連続で一軍登板がなく、年齢も25歳と若く、現役ドラフトの主旨に合う選手だ。内外野守れるユーティリティの山野辺は守備は問題なく、課題の打撃さえ解消できれば機動力も使え起用法は広い。また、貴重な右打ちで広島とDeNA、ヤクルトは年齢構成の空白を埋め、二遊間強化が課題の日本ハムや中日などフィットするチームは多い。

 浜屋と山野辺に続くのが高木大曲で、ともにファームでは主力だが一軍では結果を残せていない。高木はファームでは本塁打6本と長打力は健在で、まだ24歳と伸びしろもあり、細川成也(中日)のように大化けする可能性もある。大曲も層の厚い投手陣に阻まれており、もっとチャンスを上げても良いと思う。今季、中日からトレードで加入した高松は期待の走力を活かせず、一芸を求めるチームからの需要はある。

日本ハム

投手…生田目翼(日本通運~18年③)石川直也(山形中央高~14年④)

野手…清水優心(九州国際大高~14年②)郡 拓也(帝京高~16年⑦)

     今川優馬(JFE東日本~20年⑥)

 上沢直之がポスティングでMLB移籍を目指すなか、加藤貴之が残留を決め、オリックスからFAの山崎福也を獲得する金星を挙げた。トレードで黒木優太も獲得し、人数的にも投手の可能性が高く、生田目石川を予想した。

 即戦力で入団した生田目は今季5年目も、一軍登板が通算でも15試合と期待に応えられていない。石川もクローザー候補として名前が挙がったが、今季は出番を減らし、ポジションを田中正義等に奪われてしまい、ともに環境を変えても良い頃だと思う。

 野手は捕手が豊富で、清水や内野も守れるの名前を挙げたが、捕手はトレード要員のほうがチームとしては活きてくると思う。今川は昨年は94試合で10本塁打と長打力の片りんを見せたが、今季は28試合で本塁打ゼロで出番のほとんどが代打で、今年は右打ちの外野手2名がドラフト指名されており候補になる可能性が高い。