ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年現役ドラフト選手を予想する~セ・リーグ編

 今年の現役ドラフトは、昨年から1つ変更になり、各球団は指名対象となる選手を2人以上リストアップするが、その際、年俸が5,000万円以上~1億円未満の選手をリストアップした球団は、5,000万円未満の選手を1名追加し、3人以上の選手をリストアップするルールに変更された。

 これにより年俸5,000万円以下の選手が、必ず2名対象となることで、「現チームで出場機会に恵まれていない選手の移籍を促進させる」制度の主旨を保つことができ、現役ドラフトによろ移籍の活性化が進むことが期待できる。

 なお、12月2日現在で外国人選手、育成選手、複数年契約選手、FA権保有選手、FA権行使経験あり、21年シーズン以降にトレードで獲得した選手、22年シーズン後に育成から支配下登録された選手は指名対象外になる。

 

阪神

投手…馬場皐輔(仙台大~17年①)秋山拓巳(西条高~09年④)   

野手…長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)熊谷敬宥(立大~17年③)

     豊田 寛(日立製作所~21年⑥)

 85年以来の日本一に輝いた今季、投打ともに主力が固定され、ファームで好成績を残すも出番が限られた選手が多く控えている。

 層の厚い投手陣からは、秋山馬場を予想した。通算49勝の秋山は、ここ2年は1勝止まりも、今季ファームで8勝を挙げており、32歳の年齢からラストチャンスにかけたい。馬場は今季19試合登板で、防御率2点台(ファームでは1点台)と好成績を残すも、こちらも一軍定着とはならなかったが、他球団からは垂涎の的だ。

 野手では、26歳で2年目に豊田は即戦力を期待されながら一軍でヒットはなく、同じ右打ちの外野手で若手が台頭してきており、来季も出番が増えることは予想し難い。内外野守れるユーティリティの熊谷は、今季はは僅かに9打席のチャンスしかなく、第三の捕手の長坂も来季30歳を迎え、ともに需要は高いだけにもう一花咲かせたい。

【広島】

投手…高橋昂也(花咲徳栄高~16年②)塹江敦哉(高松北高~14年③)

     中村祐太(関東一高~13年⑤)  

野手…中村奨成(広陵高~17年①)大盛 穂(静岡産大~18年育①) 

 今年のドラフトで即戦力投手の獲得に成功しており、投手陣に余裕が生まれた。中村祐は、今季はリリーフで防御率1点台と結果を出しているが、元々は先発でロングリリーフなど起用法が幅広い。リリーフ左腕の塹江は、登板過多の影響か今季は8試合登板で出番が激減。高橋はトミージョン手術で、2シーズン一軍から遠ざかっており、同じ年齢で左腕が4人と渋滞気味だけに候補となる可能性が高い。

 野手の最右翼は中村奨で、2球団が競合したドラフト1位は過去の話で、在籍6年で88試合出場…ファームでもマスクを被ったのが僅かに5試合と捕手としても岐路に立っている。何より専番号が22から96に変わったことが、期待値の低さを物語っており、チーム以上に本人が環境変化を望んでいるかも知れない。巨人と楽天は捕手の支配下人数が5名と少なく、外野手も補強ポイントで移籍の条件は揃っているが…。

【DeNA】

投手…京山将弥(近江高~16年④)

野手…益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)神里和毅(日本生命~17年②)

     楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)梶原昂希(神奈川大~21年⑥)

 投手陣はエースの今永昇太など、主力が抜けるため野手、それも外野手中心の予想にした。理由は今年のドラフトで1位の度会隆輝以外に、外野手3名が加わり、それも全員が左打ちとなると、必然的に左打者が候補になり、神里楠本梶原を挙げた。

 梶原はさすがに来季が3年目で早いと思うが、神里と楠本は可能性が高い。神里はファームではOPSが7割を超え、楠本は今季は打率1割台で苦戦したが、2年連続で90試合以上に出場しており、西川が移籍した広島、度会を外した中日にロッテ、レギュラー不在の西武など外野手不足のチームは多く、他球団から見れば垂涎の的だ。

 投手の候補は京山で、今季は課題の制球力が克服できずに、一軍登板が無かった。通算で61試合登板で12勝の実績があり、まだ25歳と若くチャンスはまだまだある。捕手の益子も23歳と若く、楽天や巨人など捕手の絶対数の少ないチームはお薦めだ。

【巨人】

投手…今村信貴(太成学院高~11年②)

野手…湯浅 大(健大高崎高~17年⑧)増田大輝(四国IL徳島~15年育①)

   若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)北村拓己(亜大~17年④)    

 投手では既にトレードで投手3名を獲得しているなか、今村を候補に挙げた。昨年からリリーフに専念して55試合に登板したが、今季は24試合と出番が半減。ただファームでは防御率1.07と別格の数字を挙げており。先発もこなせるだけにチーム状況に応じた起用ができるのも強みだ。

 チーム打率リーグ1位の野手は有望な選手が多く、レギュラーが固定される内野手を候補に挙げた。捕手以外ならどこでも守れるユーティリティの若林、守備固めと代走が主の増田大はともに30歳で、このまま控えで終わるのは勿体ない。

 ファームで遊撃を務めた北村は、OPSが8割を超え内野の全ポジションをこなせ、同じく湯浅は門脇誠の台頭もあり今季は一軍出場がなかった。両打ちの若林を含め、全員が貴重な右打ちの内野手と、広島やDeNA、日本ハムに不足しており需要は高い。

【ヤクルト】

投手…高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)金久保優斗(東海大市原望洋高~17年⑤)

     長谷川宙輝(聖望学園高~16年ソ育②)  

野手…松本直樹西濃運輸~17年⑦)太田賢吾(川越工高~14年日⑧)

 有力候補で投手では長谷川、打者では太田を挙げた。長谷川は21年に血行障害の手術を受け、ようやく今季一軍登板(1試合)を果たした。今季ファームで38試合で防御率2点台と150キロの剛腕左腕に復活の兆しが見え始めている。

 太田はかつてファームで首位打者で獲得したこともあり、今季もファームでは打率3割、OPSは9割を超えており、ファームでやることは既にない。出場機会を増やすために外野も守れるユーティリティで、26歳と年齢も若く他チームで見てみたい。

 ベテランの高梨は今季未勝利で、今オフは背番号も大きくなり機会はさらに限られてくることが予想される。金久保も今季は1試合登板で、来季は7年目を迎え環境を変える時機なのかもしれない。強肩の松本直は30歳を超えたが、ファームの正捕手を卒業できず、今季の一軍出場は僅かに3試合と残されたチャンスも限られてきている。

【中日】

投手…橋本侑樹(大商大~19年②)福谷浩司(慶大~12年①)

     鈴木博志(ヤマハ~17年①)

野手…石垣雅海(酒田南高~16年③)三好大倫(JFE西日本~20年⑥)

 今オフは野手の補強に積極的で、中田翔(巨人)の獲得も合わせると、他球団から既に4名の選手が加入しており、伸び悩んでいる若手が候補になる可能性が高い。

 期待の石垣は7年目の今季も22試合の出場のみと結果を残せず、いつの間にか、内野すべてのポジションも守れるユーティリティ扱いだが、期待されているのは打力で、今一度長所を伸ばせるチームで再挑戦して良いと思う。三好は俊足が武器だが、中々チームでその俊足を活かす機会がなく機動力不足のチームは一芸で欲しい選手だと思う。

 投手は力のある選手が多く、来季33歳の福谷はギリギリの年齢だが、ベテランの力が必要なチームは多い。また、鈴木橋本は、先発、リリーフと起用法がハッキリせず迷走状態が続いている。鈴木は力勝負のパ・リーグ、橋本もスライダーという大きな武器(一芸)があるだけにともにリリーフとして再起を図るチームはあると思う。

 

 最後に、今回の候補者をベースに、各チームの指名選手を投手、野手1名ずつ予想してみた。2年目の今年、どういったドラマが待ち受けているか、そして第2の大竹(阪神)と細川(中日)が誕生するか、12月8日を期待して待ちたい。

          投 手        野 手

 中 日    鈴木博志→巨人     石垣雅海(内)→阪神

 日本ハム   生田目翼→中日     今川優馬(外)→ロッテ

 ヤクルト   長谷川宙輝→西武    太田賢吾(内)→オリックス

 西 武    浜屋将太→オリックス  高木 渉(外)→巨人

 巨 人    今村信貴→DeNA   北村拓己(内)→ソフトバンク

 楽 天    弓削隼人→広島     渡邊佳明(内)→中日

 DeNA   京山将弥→ソフトバンク 神里和毅(外)→広島

 ソフトバンク 笠谷俊介→ロッテ    リチャード(内)→西武

 広 島    中村祐太→ヤクルト   中村奨成(捕)→楽天

 ロッテ    本前郁也→日本ハム   平沢大河(内)→ヤクルト  

 阪 神    馬場皐輔→楽天     熊谷敬宥(内)→日本ハム

 オリックス  漆原大晟→阪神     山足達也(内)→DeNA