ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年パ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 関西ダービーに沸いた日本シリーズが終わり、いよいよストーブリーグが本格化してきた。既に山本由伸(オリックス)がポスティングでのMLB移籍が確定的で、松井裕樹楽天)もMLBを目指しFA宣言した。さらに山崎福也(オリックス)と平井克典(西武)もFA権行使を表明して交渉に入っていく。

 また、巨人が積極的にトレードを進め、ウォーカーと高橋礼・泉圭輔(ソフトバンク)のトレードを成立させ、金銭トレードで近藤大亮(オリックス)も獲得した。

 一方で、143名を数えた戦力外選手の獲得調査も動き出し、15日には合同トライアウトが開催される。

 選手の現況は11/4時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約選手。太線は育成契約を打診されている選手、下線は引退選手です。

 

オリックスバファローズ(55名+7名)

 今季は若手の戦力外通告が目立った。3年目の中川拓や育成ながら1年目の西濱、ファームで好成績を上げた吉田と中川颯もチームを去る。去就未定の竹安と渡邊、佐野如以外は現役続行を希望しており、小野と平野大には再度育成契約を打診している。

 来季に向け早くも頭が痛いのが、山本由伸(16年/④)と山崎福也(14年/①)の移籍話で、今季は2人合わせて27勝を挙げており、若手が育っているとはいえ穴を埋めるのは容易ではなく、ましてや山本の代わりになる投手は少ない。

 外国人選手はセデーニョの残留が決まり、未定のワゲスパックとゴンザレス以外の3選手の退団が決まった。移籍すれば山本も山崎も人的補償がないため、外国人選手を今季並みと仮定すると、シーズン前に3~4名ほど支配下枠には余裕がある。

【投手】

 山本と山崎福の移籍に備え中途半端な補強ではなく、確実に戦力と計算できる選手が欲しく、ペルドモ(ロッテ)オスナ(ソフトバンクの獲得調査をするのは理解できる。また、山崎福が移籍すると、ルーキーの東松を入れても左投手が5名しかいなくなり、実績組では嘉弥真新也(ソフトバンク田中健二郎(DeNA)、将来性では笠原祥太郎(DeNA)も面白いが、FA選手や有力外国人選手の獲得になるだろう。

【野手】

 捕手はルーキーの堀が加入しても6名と少なく、頓宮裕真(18年/②)は実質的には一塁手なので数的に必要だ。こちらもトレードが現実的だが、将来性で九鬼隆平(ソフトバンク梅林優貴(日本ハムの獲得を検討しても良い。

 内野はレギュラー不在の二塁手山田遥楓(日本ハム松本友(ヤクルト)、外野はFA移籍の可能性もある西川龍馬(広島)を狙っている話もあるが、同じタイプでは西川遥輝楽天ペイトン(西武)も可能性を秘めた選手でもう1年見てみたい。

 投 手…竹安大和(15年/神③)小野泰己(16年/神②)吉田 凌(15年/⑤)

      ※辻垣高良(19年/育②)※中川 颯(20年/④)※西濱勇星(22年/育①)  

 捕 手…中川拓真(20年/⑤)※釣 寿生(20年/育④)

 内野手…石岡諒太(15年/中⑥)平野大和(19年/育④)※園部佳太(21年/育②)

 外野手…渡邊大樹(15年/ヤ⑥)佐野如一(20年/育⑤)

 外国人…コットン(投手)ニックス(投手)シュウィンデル(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 横山聖哉(上田西高・内野手)#34  ⑤高島泰都(王子・投手)#48  

 ②河内康介(聖カタリナ高・投手)#14 ⑥古田島成龍日本通運・投手)#49

 ③東松快征(享栄高・投手)#20       ⑦権田琉成(TDK・投手)#60 

 ④堀 柊那(報徳学園高・捕手)#62

千葉ロッテマリーンズ(60名+5名)

 決して選手層が厚くないなか、2位でシーズンを終えた今オフは思い切った決断をした。開幕投手に指名されていた石川歩に育成契約を打診し、FA移籍の福田も契約切れの今年戦力外。また、若手の有望株と思われていた佐藤奨や河村、西川も戦力外通告をし、土肥と古谷は支配下に戻ることなく2年連続の戦力外になり、全員が現役続行を希望している。また、貴重なサブとしてチームを支えた三木と江村が引退を決めた。

 外国人選手の去就は未定だが、本塁打王のポランコに最多ホールドのペルドモをはじめ、外国人選手が活躍しただけに残留が基本線になるが、マネーゲームになると太刀打ちできないだけに今後の交渉がポイントになる。現状、65名で支配下は多くないが、昨年の澤田圭佑(16年/オ⑧)が活躍したように育成契約を増やすことも想定できる。

【投手】

 CSをブルペンデーで臨まなくならなかったように課題は先発陣の強化になる。ただ、残念ながら先発候補は少ないなか高橋純平(ソフトバンクは投手育成に長けた吉井監督のもとで見てみたい投手だ。一方でリリーフは多彩で、吉田凌(オリックス古川侑利(ソフトバンクはチームにフィットする気がする。また、中川颯(オリックスやチームに不足している左腕の池谷蒼大(DeNA)は育成で獲得しても面白い。

【野手】

 野手は1位で度会隆輝(DeNA)を指名したように外野手の補強が急務になる。上林誠知(ソフトバンクは実績もあり、和田恋(楽天はファームで最多打点のタイトルを獲得しており課題のポイントゲッターになれる。また、内野手は27歳~30歳が不足しており、北條史也阪神松本友(ヤクルト)山田遥楓(日本ハムは年齢構成の空白を埋め、得点力不足のチームで、中島宏之(巨人)などひと振りにかけるベテランの力も必要だと思う。

 投 手…石川 歩(13年/①)河村説人(20年/④)佐藤奨真(20年/育④)

       土居豪人(18年/⑧)※土肥星也(16年/④)※古谷拓郎(18年/⑥)

 捕 手…江村直也(10年/⑤)※谷川唯人(20年/育①)

 内野手三木 亮(13年/③)※速水奨大(21年/育②)

 外野手…福田秀平(06年/ソ①)菅野剛士(17年/④)西川僚祐(20年/⑤)

 外国人…※フェリス(投手)※アポステル(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①上田希由翔(明大・内野手)#23    ④早坂 響(幕張総合高・投手)#58

 ②大谷輝龍(日本海L・投手)#31    ⑤寺地隆成(明徳義塾高・捕手)#65

 ③木村優人(霞ヶ浦高・投手)#53  

福岡ソフトバンクホークス(60名+7名)

 80億円の大型補強で臨んだシーズンだったが、3年連続のV逸になり嵐のオフが待っていた。かつてのリリーフエースの森、今季のCSにも出場していた嘉弥真に上林、ファームで好投していた古川は1年で退団。ドラ1の高橋純と佐藤も戦力外で、佐藤は僅か4年で戦力外になり、期待の若手の増田と宝の山のような名前が並ぶ。

 外国人選手はモイネロとスチュアート、ヘルナンデスの残留以外は未定で、80億円補強のオスナとガンケルも退団が濃厚で、9名の大所帯だった外国人選手のうち6名が去る可能性がある。80億円補強もそれはそれで夢があるが、4軍制を敷くならもっと育成からの支配下が増えても良い。

 また、今回ウォーカー(巨人)と高橋礼(17年/②)と泉圭輔(18年/⑤)のトレードが成立したが、右打者が欲しい気持ちは理解するが、ウォーカーは来季33歳で、高橋礼と泉の2人を放出する必要があったのか疑問で、チーム編成がどんどん短絡的傾向、短期的な視点になっているのが気になる。

【投手】

 実績のある森と嘉弥真、トレードで高橋礼と泉を放出するのだから、先発陣が不足していると思うが、敢えて投手の補強は必要はないだろう。強いて言えばオスナが退団した際は、ペルドモ(ロッテ)エスコバー(DeNA)の獲得を検討して良いと思う。

【野手】

 シーズン途中でデスパイネを呼び戻し、ウォーカーをトレードで獲得するくらいなのだから右の長距離砲、出来れば5番を打てる選手が欲しい。去就が未定のノイジー阪神デビッドソン(広島)は守備位置的にもリリースされたら獲得を検討して良いと思う。また、和田恋正随優弥(ともに楽天はファームで2桁本塁打を放っており、チームの補強ポイントに合う。

 投 手…椎野 新(17年/④)森 唯斗(13年/②)高橋純平(15年/①)

       嘉弥真新也(11年/⑤)古川侑利(13年/楽④)※中道佑哉(20年/育②)

       ※奥村政稔(18年/⑦)※岡本直也(18年/育②)※重田倫明(18年/育③) 

 捕 手…九鬼隆平(16年/③)※居谷匠真(20年/育⑥)

 内野手…増田 珠(17年/③)

 外野手…佐藤直樹(19年/①)上林誠知(13年/④)※舟越秀虎(19年/育⑤)

      ※中村宜聖(18年/育④)※早真之介(20年/育④)

 外国人…※ヘラルディーノ(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)#47 ⑤澤柳亮太郎(ロキテクノ富山・投手)#34 

 ②岩井俊介(名城大・投手)#28   ⑥大山 凌(東日本国際大・投手)#53

 ③廣瀬隆太(慶大・内野手)#51   ⑦藤田悠太郎(福岡大大濠高・捕手)#65

 ④村田賢一(明大・投手)#30

東北楽天ゴールデンイーグルス(57名+8名)

 今年のドラフトで最多8名を指名した反面、戦力外通告は14名と多い。最大の課題は2年連続最多セーブ松井裕樹(13年/①)の去就で、MLB移籍の可能性が高い。

 戦力外には炭谷や西川といったビッグネームも並び、横尾と高田萌、ウレーニャも現役続行を希望し、引地と福森はトライアウト参加を表明している。また、ここ数年登板過多が懸念されていた西口、育成から支配下登録された小峯が再度育成契約になる。

 さらに銀次(05年/③)の戦力外のニュースが流れたが、以降は何も動向がないまま戦力外通告期間を終えた。数少ない地元出身の生え抜き選手で、誤報なのかもしれないがこのようなニュースが出るのは残念だった。また、右打者不足で悩んでいたチーム状況のなか、トレードで獲得した横尾と和田、現役ドラフトの正随が戦力外になり、オコエ瑠偉(巨人)を放出し、正随を獲得したものの1年で戦力外では編成を疑う…。

【投手】

 今年のドラフトは高校生主体の指名になり、高齢化する先発陣に松井裕が抜けた後のリリーフなど課題は多いが、先発は現有戦力のもうひと踏ん張り頑張ってもらってリリーフを強化したい。ソフトバンクは宝の山で森唯斗嘉弥真新也、出戻りで古川侑利の復帰などはファンも喜ぶと思う。他に吉田凌(オリックス小林慶祐(阪神、先発ではピーターズ(ヤクルト)はケガさえ治れば十分に計算できる左の先発候補だ。

【野手】

 課題は捕手と外野手でバランスが悪すぎる。捕手は支配下が5名と少なく、ドラフトでも指名がなかった。年齢構成では中川拓真(オリックス)が一番だが、九鬼隆平(ソフトバンク)も候補になる、外野は右打者がともに2年目の吉野創士(21年/①)と前田銀治(21年/③)しかおらず、渡邊大樹(オリックス西川僚祐(ロッテ)など将来性のある選手もいるが、改めて炭谷と和田、正随の戦力外が理解できない。

 投 手…塩見貴洋(10年/①)高田萌生(16年/巨⑤)石橋良太(15年/⑤)

       西口直人(16年/⑩)小峯新陸(19年/育②)※佐藤智輝(18年/⑤)

     ※引地秀一郎(18年/③)※福森耀真(19年/⑤)

 捕 手…炭谷銀仁朗(05年/西①)

 内野手…横尾俊健(15年/日⑥)

 外野手…西川遥輝(10年/日②)和田 恋(13年/巨②)正随優弥(18年/広⑥)

 外国人…※ウレーニャ(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)#16  ⑥中島大輔(青学大・外野手)#54 

 ②坂井陽翔(滝川二高・投手)#17   ⑦大内誠弥(日本ウェルネス宮城・投手)#61

 ③日當直喜(東海大菅生高・投手)#26 ⑧青野拓海(氷見高・内野手)#67

 ④ワォターズ璃海ジュミル(日本ウェルネス沖縄高・内野手)#60

 ⑤松田啄磨(大産大・投手)#53

埼玉西武ライオンズ(54名+7名)

 Bクラスになった今オフは、育成含め戦力外が19名と大ナタを振るった。手術で今後リハビリが必要な森脇と佐々木は育成型契約になる予定だが、公文と斎藤誠、出井が引退を決めた。それ以外の選手はいずれも去就未定だが、昨年は在籍年数が短い若手選手をほぼ育成契約にしたが、今年は打って変わって4年目の井上と川野、3年目の赤上にブランドン、仲三河、2年目の中山を戦力外にしたのは衝撃的だった。

 外国人選手も自由契約が決まり、現状残留の可能性あるのはエンスとボー、マキノンだが今後の動向に注目だ。また、平井克典(16年/⑤)が残留が基本線だがFA宣言をし、山川穂高(13年/②)は未だFA移籍の可能性はある。ただ、現状61名と数的にはかなり余裕があり、今季は他球団の戦力外選手補強も多くなるかもしれない。

【投手】

 投手層が厚く、年齢構成も悪くないが頭数が少なく、今年のドラフトも攻撃力が課題のなか投手6名を指名している。今季はシーズン途中にクリスキーを獲得したように、リリーフ強化が課題になる。クローザー経験者では森唯斗ソフトバンクしかいないが、小林慶祐(阪神田中健二郎(DeNA)鍵谷陽平(巨人)と実績のある選手は多く、若手でも吉田凌(オリックスなど楽しみな選手が多い。

【野手】

 課題の野手の補強ポイントは捕手とレギュラー不在の外野手になる。捕手は若手が頑張っているが、ベテランの存在は貴重で炭谷銀仁朗楽天の復帰などはファンは感涙ものだろう。外野手のお薦めは西川遥輝楽天で、西川が加入すれば一番打者不在の課題も解消できる。このほか外野手は若手が多く、28歳~32歳が不在で高山俊阪神上林誠知(ソフトバンクは年齢構成的にもベストで、4年前にFAで獲得を目指した福田秀平(ロッテ)も、是非もう一花咲かせて欲しい。

 投 手…公文克彦(12年/巨④)佐々木健(20年/②)森脇亮介(18年/⑥)

       井上広輝(19年/⑥)張奕(16年/オ育①)赤上優人(20年/育①)

      ※粟津凱士(18年/④)※斎藤大将(17年/①)※伊藤 翔(17年/③)

      ※上間永遠(19年/⑦)※出井敏博(19年/育①)

 捕 手…中熊大智(18年/育③)斎藤誠(17年/育②)※牧野翔矢(18年/⑤)

 内野手…ブランドン(20年/⑥)中山誠吾(21年/⑥)川野涼多(19年/④)

 外野手…仲三河優太(20年/⑦)※宮本ジョセフ拳(20年/育③)

 外国人…ティノコ(投手)クリスキー(投手)※ヘレラ(投手)ペイトン(外野手)

      ※コドラド(外野手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①武内夏暉(国学院大・投手)#21 ⑤宮沢太成(四国IL徳島・投手)#54  

 ②上田大河(大商大・投手)#23  ⑥村田怜音(皇學館大・内野手)#50

 ③杉山遥希(横浜高・投手)#47  ⑦糸川亮太(ENEOS・投手)#56

 ④成田晴風弘前工高・投手)#41

北海道日本ハムファイターズ(58名+5名)

 今季の戦力外を見て、育成の日本ハムの凋落を感じた。梅林へは育成契約を打診しているが、立野も戦力外になり、実に17年ドラフトで指名した7選手のうち、4年で5名が戦力外になった。この年は高校生指名は1人で、あとは大学生・社会人の即戦力候補で、この結果からこの間のチーム低迷も頷ける。また、1年目の宮内は、キャンプで大ケガをして手術が決まった途端に育成契約では、選手もやり切れないだろう。

 話を戻し、今年は谷内と木村が引退を決め、梅林と宮内のほか松岡も育成契約が打診された。その他の選手は全員が現役続行を希望し、井口と姫野はトライアウト参加を決めた。8名の大所帯だった外国人選手は半分の4名が退団するなか、育成で孫易茘が入団しており、トレードを中心にした補強が続きそうだ。

【投手】

 最大は上沢直之(11年/⑥)と加藤貴之(15年/②)の去就で、左右のエースがFAで抜けると一気に厳しくなる。ケガの状態次第だがピーターズ(ヤクルト)や、不完全燃焼に終わったガンケル(ソフトバンク)を狙っても良く、道内出身者の河村説人(ロッテ)はケガの治療を見越して育成契約でもチャンスをあげて欲しい。リリーフではすでに鍵谷陽平(巨人)を調査しているが、それなら古川侑利(ソフトバンク)の復帰も検討して良く、張奕(西武)はチーム内に同郷が多くフィットしそうな気がする。

【野手】

 内外野に課題が多く、内野は二遊間強化プラス24歳以上が皆無の右打者で、なぜ山田を放出したのか理解できない。外野手は反面、左打者が不足している。

 内野候補ではユーティリティの山本泰寛(阪神は、谷内が抜けた後の補強ポイントに合う。外野は上林誠知(ソフトバンク高山俊阪神、ベテランの福田秀平(ロッテ)が候補で、走攻守に長けた上林や福田は新庄監督が好みそうなタイプだと思う。

 投 手…井口和朋(15年/③)立野和明(19/②)宮内春輝(22年/⑥)

       松岡洸希(19年/③)※姫野優也(15年/⑧)

 捕 手…梅林優貴(19年/⑥)

 内野手谷内亮太(12年/ヤ⑥)山田遥楓(14年/西⑤)

 外野手…木村文紀(06年/西①)

 外国人…マーベル(投手)ガント(投手)メネズ(投手)アルカンタラ(内野手

       ハンソン(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】
 ①細野晴希(東洋大・投手)#29      ④明瀬諒介(鹿児島城西高・内野手)#36

 ②進藤勇也(上武大・捕手)#31      ⑤星野ひので(前橋工高・外野手)#49

 ③宮崎一樹(山梨学院大・外野手)#32

23年セ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 10/2に始まった戦力外通告は、育成選手も含む138名(うち引退は12名)を数え、外国人選手も16名(退団4名含む)が自由契約になった。戦力外通告日本シリーズ終了後翌日(阪神オリックスは5日後)までで、明日で期間も終了する。一方で11/6からFA宣言も始まり、いよいよストーブリーグが始まる。

 今年のドラフトでは、本指名72名、育成を含めて122名が指名されており、指名人数を上回る選手が戦力外になっている。ただ、昨年新しいユニフォームを着れたのは僅かに11名(うち育成4名)で狭き門だが、各球団の補強ポイント選手を挙げたい。

 選手の現況は11/4時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約選手。太線は育成契約を打診されている選手、下線は引退選手です。

 

阪神タイガース(61名+6名)

 投打で主力が固定され、ファームで最多セーブの小林や16年新人王の高山が戦力外になり、望月以外は全員が現役続行を希望している。小林はファームで守護神を務め経験も十分で、左の変則リリーバーの渡邊は2度目の戦力外になったが、一昨年は32試合で10ホールドを上げており、実績のあるリリーフはどの球団も欲しがるはずだ。

 野手もレギュラー陣が確立され、高山と北條、山本は今季一軍の出場がなかった。高山はファームで9本塁打と長打力を発揮しており、今年はドラフトで外野手が不足気味だっただけに、外野手補強が進まなかったチームからの需要はありそうだ。また、北條は貴重な右打ちの内野手で需要が高いと思う。

 外国人選手はミエセスの残留が決まり、来季も5~6名で臨むとすれば支配下枠に余裕はない。FAにも参戦しない予定で、補強はトレードが有力になりそうだ。

【投手】

 ドラフトでタイプの違う即戦力右腕を獲得しており、年齢も左右のバランスも悪くなく投手陣の補強は必要ない。強いて言えば、左のワンポイントでベテランの嘉弥真新也(ソフトバンクはさらに投手陣の層を厚くする。若手の成田翔(ヤクルト)池谷蒼大(DeNA)も投手育成に長けているチームでどう化けるか見てみたい。

【野手】

 野手は、ドラフトで将来性のある遊撃手で山田と百崎を獲得したが、内野手は20歳~26歳の右打ちが不足し、外野手は左打ちが少ない。内野なら24歳の増田珠(ソフトバンク、走攻守揃った上林誠知(ソフトバンクは左の巧打者で補強ポイントに合う。また、佐藤直樹ソフトバンクはドラフト時に阪神も高く評価していた選手で、25歳と若く、高い守備範囲と俊足はチームにフィットすると思う。また、個人的には代打専任で銀次(楽天中島宏之(巨人)はチームに貢献しそうな気がする。

 投 手…二保 旭(08年/ソ育②)小林慶祐(16年/オ⑤)渡邊雄大(17年/ソ育⑥)

       ※望月惇志(15年/④)

 捕 手…なし

 内野手…山本泰寛(15年/巨⑤)北條史也(12年/②)

 外野手…高山 俊(15年/①)板山祐太郎(15年/⑥)

 外国人…Bケラー

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①下村海翔(青学大・投手)#22    ④百崎蒼生(東海大熊本高・内野手)#56

 ②椎葉 剛(四国IL徳島・投手)#26 ⑤石黒佑弥(JR西日本・投手)#34

 ③山田脩也(仙台育英高・内野手)#52 ⑥津田淳哉(大経大・投手)#63 

広島東洋カープ(63名+5名)

 投手中心の戦力外通告になるなか、3連覇を支えた一岡が引退を決め、岡田と藤井が育成契約を打診されている。ただ、トミージョン手術で4年間一軍登板がない岡田は、育成契約を保留している。野手は三好が引退を決め、ファームの主戦だった木下は一度も支配下登録されずに戦力外通告を受け、全員が現役続行を希望している。

 今年は大学生投手中心に会心のドラフトで課題の投手力強化が進み、唯一の懸念材料は西川龍馬(15年/⑤)のFA移籍の判断だけで、外国人選手5名の去就は今後検討していく。現状、支配下は68名と多く、補強は限られ現有戦力の底上げが基本になる。

【投手】

 ドラフトで意中の常廣を獲得し、2位の高と5位の赤塚はリリーフにも適性があり、3位の滝田は1年目からでも大化けが期待できる。また、万が一にでも前田健太(ツインズ)が復帰するようになれば補強の必要はない。

 先発が揃っただけに、補強するならリリーフで、嘉弥真新也(ソフトバンク田中健二朗(DeNA)久保拓真(ヤクルト)は経験豊富な左腕。森唯斗ソフトバンク小林慶祐(阪神、ケガの回復次第だが鍵谷陽平(巨人)が加わると心強い。

【野手】

 野手は結構深刻で、内野なら22歳~30歳の右打ちが不在で、ともにユーティリティプレーヤーの増田珠(ソフトバンク山田遥楓(日本ハムは年齢的にもレギュラーを狙え、北條史也阪神も補強ポイントに合う。

 外野は西川の去就で大きく変わり、ここにきて秋山翔吾(10年/西③)も右ひざの手術で間に合わないとなるとかなり厳しい。実績十分の西川遥輝楽天福田秀平(ロッテ)上林誠知(ソフトバンク高山俊阪神も老け込む年ではなく、状況次第では獲得を検討しても良い。

 投 手…岡田明丈(15年/①)薮田和樹(14年/②)一岡竜司(11年/巨③)

       藤井黎来(17年/育②)※中村来生(21年/育③)※行木 俊(20年/⑤)

 捕 手…なし

 内野手三好 匠(11年/楽③)

 外野手…※木下元秀(19年/育②)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】
 ①常広羽也斗(青学大・投手)#17   ④仲田侑仁(沖縄尚学高・内野手)#58

 ②高 太一(大商大・投手)#23    ⑤赤塚健利(中京学院大・投手)#35

 ③滝田一樹(星槎道都大・投手)#30  

★横浜D℮NAベイスターズ(59名+6名)

 引退は藤田のみで、田中健が現役続行を希望し、他の選手は未定のなか平田がドバイ新リーグでドラフト指名され、大橋はメキシカンリーグ移籍が濃厚になっている。

 今年のオフは大変そうで、今永昇太(15年/①)がMLB移籍、石田健大(14年/②)と戸柱恭孝(15年/④)にもFA移籍の可能性がある。また、バウアーやウェンデルケンも他球団から熱視線が注がれ去就は未定だ。このほかの外国人選手も、年々成績が落ちているソト、ケガで22試合出場に留まったオースティンなど、最悪7選手全員が退団する可能性もあり、オフの編成が難しいことが予想される。

【投手】

 今回のドラフトは大方の予想を覆し、野手指名が中心で投手は松本凌と石田のみでは不安のほうが大きい。特に先発は最悪3名のローテーション投手がいなくなることもあり、先発の候補は多くないが佐藤奨真(ロッテ)立野和明(日本ハム、育成のアンダースロー中川颯(オリックスはともに25歳で伸びしろに期待できる。また、マーベル(日本ハムは先発・リリーフ両方ともこなせる。

 リリーフはエスコバーが退団になり、左腕の嘉弥真新也(ソフトバンク成田翔(ヤクルト)は補強ポイントに合い、左投手ではないが経験豊富な小林慶祐(阪神、若手では堀岡隼人小沼健太(ともに巨人)は出番が増えれば大化けの可能性がある。

【野手】

 野手は社会人ナンバーワンの度会を獲得でき、補強を急ぐ状況ではない。度会は高校時代は二塁手で今後内外野で適性を見極めていく。強いて言えば、内野のユーティリティが必要で山田遥楓(日本ハム増田珠(ソフトバンクの明るい性格はチームに合う気がする。また、戸柱が移籍すると捕手が若手中心になり、ベテランの炭谷銀二朗(楽天は投打に大きな戦力になる。

【戦力外選手】

 投 手…平田真吾(13年/②)田中健二郎(07年/①)笠原祥太郎(16年/中④)

       池谷蒼大(20年/⑤)宮國諒丞(10年/巨②)※加藤 大(20年/育②)

 捕 手…※東出直也(21年/育②)

 内野手藤田一也(04年/④)田中俊太(17年/巨⑤)

 外野手…※大橋武尊(21年/育③)

 外国人…エスコバー(投手)※コルデロ(投手)アンバギー(外野手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①度会隆輝(ENEOS・外野手)#25 ④石上泰輝(東洋大内野手)#38

 ②松本凌人(名城大・投手)#28    ⑤石田裕太郎(中大・投手)#46

 ③武田陸玖(山形中央高・外野手)#34 ⑥井上絢斗(四国IL徳島・外野手)#53 

読売ジャイアンツ(58名+5名)

 昨年は12名の選手を支配下から育成契約にしたが、今年はゼロで移籍1年目の松田が引退を決め、昨シーズン中にトレード加入の小沼は自由契約になった。育成の阿部が現役続行を希望しトライアウト受験を表明しているが、残りの選手は未定だ。ファームで好投していた鍬原や堀岡の戦力外には驚いたが、ベテランの中島や鍵谷、高木などチームに貢献したベテランが戦力外になり若手への世代交代を印象づけた形になった。

 一方、外国人選手の去就は未定だが、先発のグリフィンとメンデス、リリーフのビーディとバルドナード以外は成績的に厳しい。現状、ドラフト選手を加えても63名と支配下には余裕があり、今オフはFA参戦もありそうで、忙しいオフになりそうだ。

【投手】

 ドラフトでは先発候補を獲得し、西舘はリリーフに回るプランもある。ただ、投手力強化は優先課題だけに、先発・リリーフともに強化したい。先発ではと佐藤奨真(ロッテ)が面白く、同じ軟投派の大竹耕太郎(阪神)が移籍して活躍したように、セ・リーグにフィットするかもしれない。また、立野和明(日本ハムも候補に挙げたい。

 リリーフでは資金力が豊富なだけに、森唯斗ソフトバンク獲得の障害はなく、層が厚く出番が限られた小林慶祐(阪神吉田凌(オリックスも狙い目だと思う。

【野手】

 今回のドラフトで、課題の捕手の指名がなく、支配下人数も5名と少なく補強が必要だ。出戻りになるが炭谷銀二朗(楽天は若手投手の成長を促すには最適な選手。若手では九鬼隆平(ソフトバンク梅林優貴(日本ハムの獲得を検討しても良い。

 また、レギュラー不在と言われている外野手は候補が多く、実績十分の西川遥輝楽天上林誠知(ソフトバンク、長打力が魅力の正随優弥(楽天、スピード重視なら佐藤直樹ソフトバンクなど魅力ある選手が並ぶ。

 投 手…鍵谷陽平(12年/日③)鍬原拓也(17年/①)高木京介(11年/④)

       田中豊樹(15年/日⑤)三上朋也(13年/D④)小沼健太(20年/ロ育②)

       堀岡隼人(16年/育⑦)※高田竜星(21年/育②)※奈良木陸(20年/育⑨) 

       ※太田 龍(19年/②)※阿部剣友(20年/育⑧)※山本一輝(19年/⑥)

       ※谷岡竜平(16年/③)

 捕 手…なし

 内野手中島宏之(00年/西④)松田宣浩(05年/ソ希)香月一也(14年/ロ⑤)

 外野手…※保科広一(19年/育⑪)

 外国人…※デラクルーズ(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①西舘勇飛(中大・投手)#17     ④泉口友汰(NTT西日本・内野手)#23

 ②森田駿哉(ホンダ鈴鹿・投手)#21  ⑤又木鉄平(日本生命・投手)#46

 ③佐々木俊輔(日立製作所・外野手)#30

東京ヤクルトスワローズ(58名+5名)

 12球団ワーストのチーム防御率の結果から、育成選手含めて大量8投手が戦力外になった。嘉手刈は育成契約を打診され、大下が引退を決めたが、他の投手の去就は不明だ。野手はベテランの荒木が引退を決め、外野手の戦力外通告は無かった。

 外国人選手では既にケラとエスピナルが自由契約になり、オスナ以外は1年契約のなか、サンタナには既に残留要請を行っている。外国人選手を6名で想定しても支配下に余裕はあり、昨年は最多の3選手を戦力外から獲得しており、再生工場と呼ばれるチームだけに今年も眠っている宝を見出したい。

【投手】

 ドラフトで即戦力投手3名を上位で獲得しているが、クローザーの田口麗斗(13年/巨③)にFA移籍の可能性もありさらに補強が必要だ。既に嘉弥真新也(ソフトバンクの獲得調査を行っており、実現すれば貴重なリリーバーが加入することになる。

 投手は全般的に強化が必要だが、先発は枚数は豊富なだけにリリーフ強化に舵を取って良い。小沼健太(巨人)小林慶祐(阪神はともにファームでタイトルを獲得したこともあり、高橋純平(ソフトバンクは制球難で結果を残せなかったが、先発・リリーフともにこなせる選手で、再生工場のヤクルトで見てみたい選手の一人だ。

【野手】

 実は野手も結構ピンチで、特に外野手不足は深刻だ。個人的にはドラフトで1位競合した高山俊阪神やFAで争奪戦を演じた福田秀平(ロッテ)が面白いかなと思っていたが、西川遥輝楽天の獲得調査を行っている。また、楽天からは和田恋正随優弥の長打力のある若手では三河優太(西武)は年齢構成の空白も埋める。

 また昨年、三ツ俣大樹(10年/オ②)を獲得したように右の内野手が不足しており、ユーティリティの山田遥楓(日本ハムや、長打力ならブランドン(西武)も面白い。

【戦力外選手】

 投 手…吉田大喜(19年/②)杉山晃希(19年/③)市川悠太(18年/③)

      成田 翔 (15年/ロ③)久保拓真(18年/⑦)大下佑馬(17年/②)

      嘉手刈浩太(20年/⑥)※鈴木裕太(17年/⑥)      

 捕 手…※松井 聖(19年/育③)

 内野手奥村展征(13年/巨④)荒木貴裕(09年/③)松本 友(18年/育②)

 外野手…なし

 外国人…ケラ(投手)エスピナル(投手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①西舘昂汰(専大・投手)#11     ④鈴木 叶(常葉菊川高・捕手)#40

 ②松本健吾(トヨタ自動車・投手)#28 ⑤伊藤琉偉(BC新潟・内野手)#00

 ③石原勇輝(明大・投手)#35     

中日ドラゴンズ(55名+6名)

 球団初の2年連続最下位に沈み、投手では谷元、野手は大野奨に堂上、福田が引退を決め、岡野は現役続行希望で伊藤はトライアウト参加を表明している。

 また、岡田に近藤、森山の左投手3名に、野手ではともに2年目の星野と福元が育成契約を打診されている。森山はケガをしたとは言え、1年目で昨年のドラフト3位。福元はファームで打率3割、OPSは7割を超えており、星野も有望株の選手で何故育成契約なのか疑問で、今年のドラフト同様、チーム編成の意図が見えない。

 外国人選手ではすでにアキーノとアルモンテが退団になったが、国内FA資格を獲得したビシエドが来季日本人選手扱いになる。外国人選手の補強があと1~2名あったとしても、現状は61名と支配下には余裕があり野手中心に補強を進めたい。

【投手】

 投手は来季のFA移籍の可能性や主力の高齢化など、課題を挙げればキリがないが、今回のドラフトで十分に賄えられており、強いて言えば、先発左腕が不足しており、出戻りだが笠原祥太郎(DeNA)佐藤奨真(ロッテ)が候補になる。また、地元出身の高橋純平(ソフトバンクは、再起に目掛け獲得を検討してもらいたい選手だ。

【野手】

 野手はこの3年間、ドラフトで重点的に獲得しており、実績のある選手に絞って良いと思う。実績なら西川遥輝楽天、走攻守三拍子揃った上林誠知(ソフトバンク福田秀平(ロッテ)、勝負強いベテランの中島宏之(巨人)銀次(楽天、復活を目指す高山俊阪神や全力プレーのペイトン(西武)など候補は多い。

 一軍での実績は不足しているが、菅野剛士(ロッテ)松本友(ヤクルト)はファームでタイトル経験もあり、和田恋正随優弥(ともに楽天香月一也(巨人)は長打力が魅力で、とにかく可能性のある選手を育成でも良いので多めに獲得したい。

 投 手…谷元圭介(08年/日⑦)岡田俊哉(09年/①)岡野祐一郎(19年/③)

       森山暁生(22年/③)近藤 廉(20年/育①)※松田亘哲(19年/育①)

 捕 手…大野奨太(08年/日①)

 内野手…溝脇隼人(12年/⑤)福田永将(06年/③)星野真生(21年/⑤)

       堂上直倫(06年/①)

 外野手…福元悠真(21年/⑥)伊藤康祐(17年/⑤)

 外国人…ロドリゲス(投手)アキーノ(内野手アルモンテ(外野手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①草加 勝(亜大・投手)#14     ④福田幸之介(履正社高・投手)#36

 ②津田啓史(三菱重工イースト・内野手)#9  ⑤土生翔太(BC茨城・投手)#49

 ③辻本倫太郎(仙台大・内野手)#51  ⑥加藤竜馬(東邦ガス・投手)#48  

2023年ドラフト寸評~大成功は西武と広島、オリックス。史上最多の7回抽選の豊作ドラフト

 今年は「豊作」と呼ばれたドラフトだったが、それを証明するかのように、1位競合による抽選が過去最多の7回を数えた。例え抽選で外しても、1位候補の選手が多く、各球団が積極的に欲しい選手を指名した。「豊作」と言われた今年が、本当に「豊作」になるか、今後の活躍に期待は膨らむ一方だ。

 支配下選手の指名は、昨年より3名増の72名。内訳は高校生24名(▲1名)、大学生28名(+1名)、社会人・独立リーグ20名(+3名)で、2年連続で大学生が高校生を上回った。育成は▲7名減の50名で、指名総数は122名(▲3名)になった。最多指名は楽天の8名(反面、育成はゼロ)で、最少は日本ハムとヤクルト、巨人、広島、ロッテの5名で、ロッテは5年連続で最少の指名になった

【23年ドラフトの概要】

 1)過去最多の1位指名7回の抽選

    ①度会隆輝/ENEOS・外野手(中日、DeNA、ロッテ)

    ②西舘勇飛/中大・投手(日本ハム巨人

    ③武内夏暉/国学院大・投手(ヤクルト、西武ソフトバンク

    ④常廣羽也斗/青学大・投手(楽天広島

    ⑤草加 勝/亜大・投手(中日、ロッテ)

    ⑥前田悠伍/大阪桐蔭高・投手(日本ハム楽天ソフトバンク

    ⑦細野晴希/東洋大・投手(日本ハム、ロッテ)

 2)独立リーグから史上最多の23名が指名され、ロッテ2位の大谷輝龍(日本海

   富山・投手)と阪神2位の椎葉剛(四国IL徳島・投手)は、又吉克樹(中日→

   ソフトバンク)以来、過去最上位で指名

 3)明大が同一チーム史上最高を更新する14年連続の指名。ちなみに来年も宗山塁

  (内野手)がすでに1位候補と言われ記録更新が続きそうだ。また、徳島インディ

   ゴソックスも11年連続の指名を受けている

全般的に上位チームの評価が高く、下位チームは今ひとつのドラフト

 今年のドラフトを振り返り、大成功は西武と広島、オリックス会心のドラフトになったと思う。一方で大失敗と呼べるチームも無く、各球団とも自軍の戦略に沿ったドラフトが出来た。

 1位指名は順当だったが、意外だったのが今ドラフトの主役と評された細野晴希(東洋大)が、外れ外れ1位指名でも呼ばれなかったことで、指名順位で言えば11番目になり、直前で即戦力というよりは素質型と評価されたのだろう。

 また、昨年のドラフト終了時には、豊作の大学生投手プラス、佐々木麟太郎(花巻東高)に真鍋慧(広陵高)、佐倉侠史朗(九州国際大高)の高校生スラッガーが注目の的だったが、佐々木は米国留学を決め、真鍋は指名漏れ、佐倉は育成指名と寂しい結果になった。事前に4位以下なら進学と表明した真鍋と、育成でもプロへと言っていた佐倉も明暗が別れた。

 個人予想では、指名予想の100名中67名が指名を受け、昨年より▲8名で難しかったです。 

【12球団ドラフトの評価】

 ◎…西武、広島、オリックス

 〇…ソフトバンク阪神

 △…ヤクルト、DeNA、ロッテ

 ✕…中日、日本ハム、巨人

 ✕✕…楽天

 

✕中日(55点)

 1位で度会を指名し、今年も野手中心の指名になることが予想されたなか、1位を投手にして、2~3位で即戦力の遊撃手2名を指名した。競争させる意図だとは思うが、こうなると昨年の内野手4名を指名したのは何だったのか思う。また、長打力不足のチームのなか、俊足巧打の似たような選手ばかり集めてもチーム強化には繋がらない。

 投手は主力が高齢化するなか、1位の草加はゲームメークに長け、スタミナも豊富で完投能力が高く、先発ローテーションを期待できる。ただ、土生と加藤は素材型のリリーバーで、2年連続最下位のチームにしては投打に中途半端なドラフトになった。

 ①草加 勝(亜大・投手)       ④福田幸之介(履正社高・投手)

 ②津田啓史(三菱重工エスト・内野手)⑤土生翔太(BC茨城・投手)

 ③辻本倫太郎(仙台大・内野手)    ⑥加藤竜馬(東邦ガス・投手)※育成4名

日本ハム(55点)

 指名選手は悪くない。1位の細野は時間はかかるかもしれないが、リーグを代表する投手になれ、強肩の進藤とともに将来日本代表も狙える。3位の宮崎は俊足で新庄監督好みの外野手で、4位の明瀬と5位の星野は将来の中軸を担えるスラッガーだ。

 ただ、来季は上沢と加藤に移籍の可能性があり、即戦力投手と課題の二遊間補強が急務だったが、いずれも十分な補強とは言えなかった。投手は現有戦力で賄えると判断したのだろうが、捕手に余裕があるので2位で即戦力投手を獲得しても良かった。また、2年連続で道内選手の指名がなく、残念を通り越し、球団の姿勢に疑問すら感じる。

 ①細野晴希(東洋大・投手)   ④明瀬諒介(鹿児島城西高・内野手

 ②進藤勇也(上武大・捕手)   ⑤星野ひので(前橋工高・外野手)※育成3名

 ③宮崎一樹(山梨学院大・外野手)

△ヤクルト(65点)

 課題は明白で投手力強化。特に先発陣の補強が急務のなか、1位で武内を指名し、抽選で外したあとは、長身でクレバーな投球が身上の右腕・西舘を単独指名した。2位の松本も直球と変化球の質が高く、どちらかは先発ローテーションに食い込みたい。3位指名の石原は制球力の高い左腕で、補強ポイントを押さえた指名になった。

 捕手の支配下選手が少ないなか4位で鈴木を指名し、5位の伊藤は堅守と俊足の遊撃手で不足の箇所を埋めた。ただ、年齢構成に偏りのある外野手や将来のエース候補の高校生、ポスト村上の中軸候補の指名がなく、5位指名で終えたのは勿体なかった。

 ①西舘昂汰(専大・投手)     ④鈴木 叶(常葉菊川高・捕手) 

 ②松本健吾(トヨタ自動車・投手) ⑤伊藤瑠偉(BC新潟・内野手)※育成2名

 ③石原勇輝(明大・投手)

◎西武(90点)

 即戦力左腕の武内の1位指名を公表し、最多3球団競合するなか見事に武内を射止めた。2位の上田も先発もリリーフもこなせる即戦力右腕で、左右の即戦力投手を1~2位で獲得できた時点で成功と言え、3位の杉山指名まで満点ドラフトだった。

 北大に在学しながら独立リーグでプレーした5位の宮沢は隠し玉、唯一の野手指名になった村田は未完のロマン砲で、西武が育成に長けているタイプと言える。投高打低のなか投手の人数が少ないため投手主体の指名になり、4位の成田指名で高校生も左右一人ずつ、7位で社会人の糸川を指名し年齢バランスの取れた会心のドラフトになった。

 ①武内夏暉(国学院大・投手)   ⑤宮沢大成(四国IL徳島・投手)

 ②上田大河(大商大・投手)    ⑥村田怜音(皇學館大・内野手

 ③杉山遥希(横浜高・投手)    ⑦糸川亮太(ENEOS・投手)※育成6名

 ④成田晴風弘前工高・投手)

✕巨人(55点)

 1位で西舘を抽選で獲得し、その後どんなドラフトになるか期待したが、2位以降は社会人のオンパレードで賛否を呼んだドラフトになった。私は“否”のほうで、3年連続のV逸、2年連続のBクラスで目先の結果が気になるのか、今季の船迫の成功に味をしめたのかは分からないが、中・長期的視点に欠けたドラフトになった。

 投手力強化で即戦力を獲得したい気持ちは理解するが、高校生が育成2名ではチーム力は上がらない。佐々木は走攻守揃った外野手だが、昨年1位の浅野、2位の萩尾の指名は何だったのか?堅守の遊撃手・泉口も門脇が台頭しているなか期待値が掴めない。

 ①西舘勇飛(中大・投手)     ④泉口友汰(NTT西日本・内野手

 ②森田駿哉(ホンダ鈴鹿・投手)  ⑤又木鉄平(日本生命・投手)※育成7名

 ③佐々木俊輔(日立製作所・外野手)

✕✕楽天(50点)

 1位指名を2度外すも、徹頭徹尾で投手を指名し、即戦力左腕の古謝を指名した。投手力が課題で指名が多くなることは問題なく、2位の坂井と3位の日當は良い指名だと思うが、昨年は大学生と社会人投手5名指名で高校生はゼロ、今年は一転して高校生投手3名と、年齢構成を気にしないのか楽天のドラフトはとにかく偏る。

 また、高校生選手の育成が決して得意ではないチームにおいて、4位以降の高校生は超がつく素材型。5位・松田の指名は良かったが、中島は俊足巧打の左打外野手で、外野に同じタイプの選手が多いなか意図が掴めない。また、育成ゼロも残念だった。

 ①古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)  ⑥中島大輔(青学大・外野手)

 ②坂井陽翔(滝川二高・投手)   ⑦大内誠弥(日本ウェルネス宮城高・投手)

 ③日當直喜(東海大菅生高・投手) ⑧青野拓海(氷見高・内野手

 ④ワォータース璃海ジュミル(日本ウェルネス沖縄高・内野手

 ⑤松田琢磨(大産大・投手)

△DeNA(65点)

 今永や石田健、バウアーの去就が微妙で、即戦力投手の1位指名が予想されたなか、度会の1位指名は驚いた。一方で外野手の若手選手(19歳~23歳)がゼロで、主力野手が硬直化しているなか度会の指名は両方の課題を埋め、さらに度会とはタイプの違う長距離打者の井上の指名は競争相手として申し分ない。また、堅守で俊足の石上も遊撃手のレギュラーが決まらず、機動力不足のチームの課題を埋めて良い指名になった。

 ただ、課題の投手指名が万全とは言えず、松本はリリーフ、武田は投手より野手のほうが評価が高く、結果、先発候補が石田のみでは不安が残る。

 ①度会隆輝(ENEOS・外野手) ④石上泰輝(東洋大内野手

 ②松本凌人(名城大・投手)    ⑤石田裕太郎(中大・投手)

 ③武田陸玖(山形中央高・投手)  ⑥井上絢登(四国IL徳島・外野手)

                                 ※育成5名

ソフトバンク(80点)

 この間、隠し玉や無名の選手指名でアッと言わせていたが、反面、過信とも思えるドラフトで成果も今一つ挙がらなかった。そんななか今季は、オリックス3連覇の現実に危機感を持ったのか、王道のドラフトで臨み、さすがと呼べる指名になった。

 1位でエース候補の前田、2位の岩井は奪三振率の高い先発候補で、下位指名ながら村田は制球力に長け、大山は総合力の高さで先発ローテーションを狙え、経験豊富な沢柳はチームの状況に合わせた起用法ができる。廣瀬は遊撃以外守れる右打ちのスラッガーで、先発投手の補強、主力野手の世代交代の課題を埋めた会心のドラフトになった。

 ①前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)  ⑤沢柳亮太郎(ロキテクノ富山・投手)

 ②岩井俊介(名城大・投手)    ⑥大山 凌(東日本国際大・投手)

 ③廣瀬隆太(慶大・内野手)    ⑦藤田悠太郎(福岡大大濠高・捕手)

 ④村田賢一(明大・投手)                    ※育成8名

◎広島(90点)

 12球団最速で1位指名選手を公表し、想いが叶い見事に常廣を獲得した。常廣と2位の左腕・高は先発・リリーフともに適性があり、5位の赤塚はリリーフタイプで、投手の層が薄く、登板過多になっていた投手陣に的確な補強になった。

 また、3位の滝田は素材型の左腕で、大化けする可能性があり、4位の仲田は一塁専任だが、将来の中軸候補で即戦力✕将来性を抑えた成功ドラフトになった。ただ、やや点数を低くしたのは、高校生投手の指名が育成選手1名のみでは寂しく、6位で高校生投手を指名しても良く、二遊間を守れる社会人野手も欲を言えば欲しかった。

 ①常廣羽也斗(青学大・投手)   ④仲田侑仁(沖縄尚学高・内野手

 ②高 太一(大商大・投手)    ⑤赤塚健利(中京学院大・投手)※育成3名

 ③滝田一希(星槎道都大・投手)

ロッテ(70点)

 即戦力野手の度会から即戦力投手、素材型投手を指名するも3回抽選を外し、最後に即戦力野手に戻り上田を指名した。これだけ1位を外せば失敗ドラフトになるなか、絶妙な育成指名も含め見事リカバリーした。評価したのは、投打に選手層が薄く即戦力選手が欲しいなか、長期目標に沿って育成に大きく舵を取ったことだ。

 上田はチャンスに強い中距離打者で出番は早そうで、2位の大谷は無名ながら、TV特番で古田敦也氏が絶賛していた速球派右腕で、ポスト益田を狙える。将来性十分の木村と早坂、寺地は捕手だが内野も守れる巧打者で、将来が楽しみなドラフトになった。

 ①上田希由翔(明大・内野手)   ④早坂 響(幕張総合高・投手)

 ②大谷輝龍(日本海L富山・投手) ⑤寺地隆成(明徳義塾高・捕手)※育成5名

 ③木村優人(霞ケ浦高・投手)

阪神(85点)

 ドラフト前から岡田監督らしい駆け引きで、下村の単独指名に成功した。結果、大学・社会人の右投手4名と高校生遊撃手2名と、一見すると偏りがあるように見えるが指名の内容が良い。下村は身体は大きくないが、制球力に長けた先発候補で、椎葉は最速159キロのクローザー候補。投球術に長けた石黒と緩急を使い分ける津田と、同じ150キロを超える右腕だが、それぞれタイプも適性も異なり起用法の幅が拡がった。

 野手も山田は堅守とキャプテンシーがあり、百崎はパンチ力のある将来のリードオフマン候補で、次期遊撃候補の競争を促す指名になり、ここ数年の巧者振りを発揮した。

 ①下村海翔(青学大・投手)    ④百崎蒼生(東海大熊本星翔高・内野手

 ②椎葉 剛(四国IL徳島・投手) ⑤石黒佑弥(JR西日本・投手)

 ③山田脩也(仙台育英高・内野手) ⑥津田淳哉(大経大・投手)※育成5名

オリックス(95点)

 個人的には今年1番のドラフトだったと思う。上位4名を将来性で高校生、下位で不足箇所を埋める社会人を指名し、3連覇を達成した余裕すら感じるドラフトで、1位の横山指名も頷ける。2~3位で左右の先発候補を指名し、4位の堀はよくこの順位で獲れたと思う正捕手候補で、3~4年後は上位4人が主力になっているかもしれない。

 即戦力投手は、高島はゲームメークに長けた先発候補で、山本や山崎福の移籍の可能性があるなか、5~6番手に入る力はある。古田島は先発・リリーフともにこなせ、権田はU-23の守護神で、各々が役割に沿って力を発揮できる満点ドラフトになった。

 ①横山聖哉(上田西高・内野手)  ⑤高島泰都(王子・投手)

 ②河内康介(聖カタリナ高・投手) ⑥古田島成龍日本通運・投手)

 ③東松快征(享栄高・投手)    ⑦権田琉

 ④堀 柊那(報徳学園高・捕手)

 

 最後に、個人的に注目している育成選手は、投手では広島3位の杉原望来(京都国際高・投手)も将来有望な左腕で、ソフトバンク6位の藤原大翔(飯塚高・投手)は高校から投手を始めた伸びしろがある。ロッテ2位の松石信八(藤蔭高・投手)は高校時はケガで満足なプレーができなかったが中学時代から注目されていた好投手。ロッテ1位の武内涼太(星稜高・投手)とオリックス1位の寿賀弘都(英明高・投手)打者としても評価が高い。

 野手では、ヤクルト3位の高野颯太(三刀屋高・内野手)とDeNA3位の小笠原蒼(京都翔英高・内野手)は将来の中軸候補で、ロッテ3位の高野光海(日本海L・外野手)は昨年の指名漏れから1年でプロに届いたスラッガー阪神2位の福島圭音(白鷗大・外野手)は超がつく俊足で脚だけで一軍を狙え、日本ハム2位の平田大樹(瀬田工高・外野手)は走攻守のバランスの取れた選手で、チーム好みの外野手だ。

2023年~ドラフト候補100名を予想してみました

 今年のドラフトは、1位候補だけで20名前後の名前が挙がる「豊作」と言われている。その中心となるが大学生投手で、佐々木朗希(ロッテ)や宮城大弥、紅林弘太郎(オリックス)に長岡秀樹(ヤクルト)と同世代で、黄金世代と呼ぶにふさわしい選手が揃っている。

 昨年は目玉級の選手が不在で、9球団が事前に1位指名選手を公表する異例の事態になったが今年は違う。仮に1位選手を外したとしても、1~2位で十分にリカバリーできる選手が揃っており、競合を避けることなく、各球団が欲しい選手を積極的に獲りに動くだろう。いま現在、1位指名を公表したのは広島と中日、西武、ソフトバンクの4球団だが、昨年のように他球団へのけん制にはならない。

 今年は豊作ドラフトを見越してのことだと思うが、ドラフトを前に戦力外通告を受けた選手が多く、ビッグネームの選手も多数含まれている。ドラフトは1位で獲りたい選手を獲得できれば成功と言えるが、今年はFAや戦力外選手の補強を見越して、他球団との駆け引きになりそうで、興味深いドラフトになりそうだ。

【今年の特徴】

 ①大学生に即戦力投手が多く、なかでも東都7人衆が1位候補に挙がる

   ※東洋大/細野、青学大/常広・下村、亜大/草加、中大/西舘国学院大/武内、   

    専大/西舘 ※太字は既に1位指名が公表された選手

 ②即戦力の野手が少なく、投手が豊富なだけに指名が繰り上がる可能性がある

 ③第1次戦力外選手が多く、有望選手が多いだけに例年より支配下指名は多め?

 

【各チームの指名予測~指名順】※戦力外表記は支配下登録選手のみです

◆中日…61名(投手32名~野手29名)

 投手は谷元圭介、野手は福田永将含め3選手が引退し、2名が戦力外で指名人数に余裕がある。貧打解消のためここ2年は野手中心の指名になったが、結果は出ていないなか、投手も手薄になってきた。今季は投手中心か、野手補強継続かに注目したい。

日本ハム…64名(投手34名~野手30名)

 谷内亮太と木村文紀の引退に戦力外1名と、支配下人数は現状、最も多い。ただ、加藤貴之と上沢直之のFA移籍が濃厚で、先発投手の即戦力は多ければ多いほど良く、野手は守備強化が課題になる。今季も育成よりも即戦力選手中心の指名になるだろう。

◆ヤクルト…62名(投手33名~野手29名)

 荒木貴裕が引退を決め、投手5名が戦力外になった。課題は明白で12球団ワーストの防御率の投手陣で、特に先発の補強が優先になる。一方で捕手の人数不足、外野の年齢構成の偏り、村上宗隆含めた主力の後継者の獲得など投打に課題は多い。

◇西武…62名(投手26名~野手36名)

 戦力外は7名も、森脇亮介と佐々木健は育成契約で、枠を空けておく必要があり、課題の捕手は炭谷銀仁朗の獲得を検討している。投高打低のチームだが、投手の人数が少なく、野手は若手の奮起に期待し、今季は投手中心の指名になることが予想される。

◆巨人…60名(投手31名~野手29名)

 今季は容赦なくベテランを切り、松田宣浩が引退、中島宏之鍵谷陽平などの功労者も戦力外になるなど、チームは若返りを図ろうとしている。課題は投手で先発・リリーフともに即戦力が必要だ。捕手の補強も必要で今季はバッテリー強化が中心となる。

楽天…59名(投手29名~野手30名)

 既に8名が戦力外になり、主力の高齢化が進むなか過渡期を迎えようとしている。ただ、この間の即戦力中心のドラフトで年齢構成が歪になり、次世代を担う若手は少ない。松井裕樹のFA移籍も濃厚で、今季も即戦力中心の指名から抜け出せそうにない。

◆DeNA…61名(投手31名~野手30名)

 藤田一也が引退し、6名が戦力外になった。ただ、今永昇太と石田健大、戸柱恭孝にFA移籍の可能性があり、バウアーの去就も未定で、既に投手陣の不安が大きい。野手も主力の顔ぶれが変わらず後継獲得が急務で、外野手は今年補強しないとマズイ。

ソフトバンク…63名(投手31名~野手32名)

 3年連続V逸で、嘉弥真新也や上林誠知の主力を戦力外にした。昨年に引き続きFAに積極参戦する姿勢で、ドラフトは育成主体になりそうだが、先発不足や主力野手の高齢化の課題も抱えている。またこの間、成果が足りない育成選手の指名数にも注目だ。

◆広島…64名(投手31名~野手33名)

 ドラフトが戦力補強の基本で、毎年6~7名を指名している。現状、一岡竜司が引退し、戦力外も3名と少ない。今季も投手陣への負担が大きく、先発とリリーフともに即戦力で層を厚くしたい。野手はスラッガー不足でスケール感のある選手を獲得したい。

◇ロッテ…63名(投手34名~野手29名)

 今季の2位は大健闘と言えるが、大事なところで選手層の薄さが際立った。投手は先発やリリーフともに必要で、野手は期待の選手が足踏みが続いている。ただ、若手に有望株が多く、投手と野手の即戦力プラス有望な高校生を獲得し選手層を厚くしたい。

阪神…61名(投手30名~野手31名)

 盤石な投手陣と野手はレギュラー陣が固定され、中堅選手7名を戦力外にした。戦力が充実しており、投打に育成中心の指名になる。昨年同様、上位は即戦力で2位以降で高校生や伸びしろのある大学生の指名が予想され、上位は即戦力投手が欲しい。

オリックス…64名(投手30名~野手34名)

 現在、戦力外は3名と少ないが、山本由伸と山崎福也の移籍が濃厚で、従来は育成中心で臨めるが、今年は豊富な大学生投手中心に即戦力指名も必要で、野手よりも投手中心のドラフトになることが予想される。ドラフト巧者だけに育成指名も含め注目だ。

 

【指名順位予想】

 既に武内夏暉(国学院大)の競合が決定し、指名が公表されている常広羽也斗(青学大)や度会隆輝(ENEOS)もけん制にはならずに競合するだろう。さらに西舘勇飛(中大)は巨人からの指名が濃厚で、最速158キロ左腕の細野晴希(東洋大)や高校ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)の1位指名も十分に予想される。

 公表していないチームでは日本ハムとヤクルト、楽天、DeNAは、いずれも投手力不足で、また主力選手のFA移籍の可能性も高く即戦力投手指名が濃厚だ、阪神オリックスは将来性を見越して、高校生の1位指名に舵を取れる。ロッテは迷うところで、少ない即戦力野手を上位指名して、2位以降で投手強化の戦略も考えられる。

 また2回目以降も、1回目の予想を踏襲すれば、下村海翔(青学大)や西舘昂汰(専大)、古謝樹(桐蔭横浜大)など外れ1位指名で競合する可能性が高く、16年の田中正義’(創価大~ソフトバンク)や17年の清宮幸太郎早実高~日本ハム)の時のように、1位指名12名が決まるまでには時間がかかりそうだ。

1位入札候補(1回目予想)

 武内夏暉(国学院大・投手)…ヤクルト、西武ソフトバンク

 常広羽也斗(青学大・投手)…日本ハム広島

 西舘勇飛(中大・投手)…巨人、楽天

 度会隆輝(ENEOS・外野手)…中日、ロッテ

 細野晴希(東洋大・投手)…DeNA、阪神

 前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)…オリックス

1位候補(2回目以降)

 投手…坂井陽翔(滝川二高)下村海翔(青学大)西舘昂汰(専大

      古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)

 野手…横山聖哉(上田西高・内)上田希由翔(明大・内)

2位候補

 2位指名にも1位クラスの選手が多く、草加や岩井、上田は1位で呼ばれてもおかしくない。また、松本や高をが2位で獲得できれば大きなプラスになる。野手では進藤と廣瀬が即戦力で、滝田は大学生ながら伸びしろに期待できる選手で大化けの可能性も。

 投手…木村優人(霞ヶ浦高)東松快征(享栄高)滝田一希(星槎道都大)

      草加 勝(亜大)岩井俊介(名城大)松本凌人(名城大)上田大河(大商大)

      高 太一(大商大)

 野手…堀 柊那(報徳学園高・捕)進藤勇也(上武大・捕)真鍋 慧(広陵高・内)

      廣瀬隆太(慶大・内)

3位候補

 将来性を重視して高校生が多くなり、杉山や福田、杉原と有望な高校生左腕は指名順位が上がるかもしれない。野手でも森田に小笠原、明瀬と将来の中軸候補を予想してみた。二刀流の武田は投手よりも、岡林(中日)のように外野のほうが良いと思う。

 投手…早坂 響(幕張総合高)日當直喜(東海大菅生高)篠崎国忠(修徳高)

      杉山遥希(横浜高)福田幸之介(履正社高)杉原望来(京都国際高)

      尾崎完太(法大)冨士隼人(平成国際大)

 野手…森田大翔(履正社高・内)小笠原蒼(京都翔英高・内)

      明瀬諒介(鹿児島城西高・内)武田陸玖(山形中央高・外)

4位候補

 チームの自由度が出る4位は、大学生でも素質重視の伸びしろに期待できる選手を予想し、結果的に捕手が多くなった。また、天野や村田怜のようにこれまでプロ選手を輩出していないチームからの指名があるか注目で、村田賢と萩原、有馬は即戦力候補。

 投手…天野京介(愛産大工高)藤原大翔(飯塚高)村田賢一(明大)

    石原勇輝(明大)真野凛風(同大)谷脇弘起(立命大)

 野手…鈴木 叶(常葉菊川高・捕)萩原義輝(流通経大・捕)有馬 諒(関大・捕)

      佐倉侠史朗(九州国際大高・内)百崎蒼生(東海大熊本星翔高・内)

      村田怜音(皇學館大・内)

5位候補

 社会人投手の上位候補が今年は少なく、上位で思うように即戦力投手を獲得できなかったときに社会人選手が増えそうで、皆川に稲葉、広沢が候補になる。石沢と中岡、赤塚は無名ながら真っ直ぐに力があり、打撃の良い武内は将来的には中軸も任せられる。

 投手…細野龍之介(札幌新陽高)武内涼太(星稜高)中山勝暁(高田高)

      石沢大和(東農大オホーツク)中岡大河(冨士大)赤塚健利(中京学院大

      広沢 優(JFE東日本)皆川喬涼(東京ガス)稲葉虎大(シティライト岡山)

 野手…山田脩也(仙台育英高・内)仲田侑仁(沖縄尚学高・内)

      桃谷惟吹(立命大・外)

6位候補

 6位は一芸に秀でた選手が並び、椎葉は最速159キロで今回のドラフト候補のなかでも最も速い投手。辻本は遊撃守備に定評があり、守備だけで飯が食え、武田も守備プラス俊足で機動力も武器になる。東恩納は今夏の甲子園で一気に評価を上げた。

 投手…仁田陽翔(仙台育英高)清水麻成(樹徳高)高橋快秀(多度津高)

      松石信八(藤蔭高)東恩納蒼(沖縄尚学高)津田淳哉(大経大)

      川船龍星(日本通運)榛葉 剛(四国IL徳島)

 野手…久保田拓真(パナソニック・捕)辻本倫太郎(仙台大・内)

      武田登生(日本新薬・内)田中大聖(太成学院大・外)

下位候補

(高校生)

 下位候補ながら投手はいずれも球速が140キロ後半を投げ、河内は評価急上昇中で、川下や伊地知以外にも北海道に候補者が多い。野手は長打力が魅力の田上に高野、広角に打てる高見澤と寺地、走攻守揃った星野など将来性豊かな選手が揃っている。

 投手…川下将勲(函館大有斗高)伊地知晴(旭川志嶺高)ハッブス大起(東北高)

      大内誠弥(日本ウェルネス宮城高)宮國凌空(東邦高)

      河内康介(聖カタリナ高)

 野手…藤田柊太郎(福岡大大濠高・捕)寺地隆成(明徳義塾高・捕)

      田上優弥(日大藤沢高・内)高見澤郁魅(敦賀気比高・内)

      高野颯太(三刀屋高・内)星野ひので(前橋工高

(大学生)

 大学生は今年豊富で、6位以降になると少なくなったが、蒔田は安定感があり、この間の不振から秋に復活し、松田は細身ながら真っ直ぐに力がある。佐藤と東門は走攻守揃ったスラッガーで将来性重視、福島と宮崎はいずれも俊足で一芸で一軍を狙える。

 投手…蒔田 稔(明大)工藤泰成(東京国際大)松田琢磨(大産大

 野手…佐藤啓介(静岡大・内)福島圭音(白鷗大・外)宮崎一樹(山梨学院大・外)

      東門寿哉(日本文理大・外)

(社会人・独立L)

 社会人にもなると過去の指名漏れの悔しさもあり、古田島や松本、竹田は念願のプロ入りを果たしたい。安定感抜群の高島、高卒3年目の片山は今年が初のチャンス。野手では独立リーグの2人に注目で、井上は四国ILで2年連続2冠のスラッガーだ。

 投手…片山楽生(NTT東日本)古田島成龍日本通運)松本健吾(トヨタ自動車

      高島泰都(王子)竹田 祐(三菱重工エスト)石黒佑弥(JR西日本

 野手…津田啓史(三菱重工エスト・内)伊藤瑠偉(BC群馬・内)

      井上絢登(四国IL徳島・外)

 いよいよ明日、ドラフトが開催される。紹介した100名以外にも有望な選手はまだまだおり、今年もどんなドラマが待ち受け、どのチームが成功し、どの選手が何処のユニフォームに袖を通すか、年に一度のイベントを純粋に楽しみたい。

23年ドラフト予想☆オリックス~盤石な投手陣と攻撃野球で3連覇達成!育成主体のドラフトでさらにチーム強化を図る

 一昨年、昨年の逆転優勝で連覇を果たし、昨年は26年振りの日本一に輝いた。今季も優勝候補に挙げられていたが、主砲の吉田正尚レッドソックス)がMLBへ移籍、ソフトバンクの大型補強もあり、不安要素の多いシーズンだった。

 しかしゴールデンウィークに早くも首位に立つと、7月にソフトバンクが脱落、ロッテも夏場に失速し、終わってみれば7月9日から首位を譲ることなく、2位に15.5ゲーム差の独走で3連覇を果たした。CSも3年連続で突破し、阪神との関西ダービーで、75~77年(阪急時代)以来の2年連続日本一を狙う。 

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 86勝53敗4分①

 防御率…2.73①(2.84②)打率….250①(.246②)

 本塁打…109①(89⑥)盗塁52⑥(62⑤)

 得点…508③(490④)失点…428①(458②)

●鉄壁な投手陣を擁した攻撃野球で、今年も「負けないチーム」は健在!

 強力投手陣は今年も健在で、エースの山本由伸(都城高~16年④)が3年連続の投手4冠(最高防御率最多勝、最高勝率、最多奪三振)を達成し、特に防御率はだだ一人の1点台(1.21)で、2位の高橋光(西武)とは1点も差をつけた。

 宮城も規定投球回数をクリアし、防御率3位で3年連続の2桁勝利を上げた。さらに山崎福也(明大~15年①)も初の2桁勝利の11勝を上げ、本調子ではなかったが田嶋大樹(JR東日本~17年①)も6勝と(4敗)貯金を作った。

 また、プロ初登板が開幕投手と華やかなデビューを飾った山下は、シーズン終盤に離脱するものの、防御率1.61で9勝(3敗)を上げ、さらに東晃平(神戸弘陵高~17年育②)も中盤から先発ローテーションに入ると6勝負けなしで、先発陣で貯金24、先発に限れば12球団ナンバーワンの防御率2.61と盤石だった。

 リリーフもクローザーの平野佳寿京産大~05年希望)はセーブ数こそ29セーブで3位だったが、防御率はオスナ(ソフトバンク)に次ぐ1点台。セットアッパーの山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑥)はリーグ4位の27ホールド、宇田川と阿部が24ホールドで、宇田川は防御率1点台で安定感を増し、後半は山岡泰輔(東京ガス~16年①)もリリーフに廻り、2年目の小木田も敗戦処理のロングリリーフから信頼を勝ち取り、最後は勝ちパターンに入った。

 1点差勝ちが12球団最多の28勝(13敗)、先制した試合は64勝14敗2分とと、12球団トップの勝率8割をほこり、強力投手陣を擁し、先行逃げ切り、接戦に強いの野球で3連覇の原動力になった。

 打線はFAで森友哉大阪桐蔭高~13年西①)が加入。開幕前に育成から支配下登録されたルーキー茶野が打ちまくり、セデーニョも育成から支配下登録されると9本塁打を放ち新戦力が台頭した。打撃が開花した5年目の頓宮が首位打者を獲得、森と紅林、中川圭が打撃10傑入りし、宗佑磨(横浜隼人高~14年②)も規定打席をクリアし、まさに全員で吉田正の穴を埋めた。 

 打線は打率と長打率がリーグ1位の反面、犠打と犠飛、四球数もリーグ最少で、併殺打は2番目の多いなど、一見、大味な野球のように見えるが、高い打率と長打率を背景に超攻撃的な野球を展開した。

●育成主体のドラフトでチーム強化が進むが、来季は主力投手の流出が懸念材料に…

 以前のオリックスのドラフトは、大学・社会人中心の即戦力志向だったが、05年~12年まで日本ハムでコーチ、二軍監督を務めた福良GMが19年に就任し、チーム強化のためには育成が不可欠と、日本ハムのドラフト(育成戦略)を真似、育成主体にシフトした。

 実際、直近5年は19年~20年、22年と高校生の指名が大学生・社会人を上回っており、宮城や紅林など結果も付いてきている。真似たオリックスが3連覇して、その日本ハムは2年連続最下位と、何とも皮肉な話になった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年④…頓宮裕真(亜大/②・捕手)中川圭太(東洋大/⑦・内野手

 19年⑥…宮城大弥(興南高/①・投手)紅林弘太郎(駿河総合高/②・内野手

 20年⑥…山下舜平太(福岡大大濠高/①・投手)阿部翔太(日本生命/⑥・投手)

       宇田川優希(仙台大/育③・投手)

 21年①…野口智哉(関大/②・内野手)小木田敦也(TDK/⑦・投手)

 22年①…茶野篤政(四国IL徳島/④・外野手)

  ↓↓

オリックスの補強ポイント】 

 投 手…先発・リリーフ左腕、即戦力のクローザー候補

 捕 手…人数不足で高校生または大学生

 内野手…高校生(左打ちならベスト)、即戦力二塁手

 外野手…将来の中軸候補

 リーグ4連覇を目指す来季は課題が多い。山本のMLB移籍が決定的で、山崎福もFA移籍の可能性があり、山崎福が移籍すると左投手が宮城と田嶋、山田修義(敦賀気比高~09年③)と曽谷龍平(白鷗大~22年①)の4名のみと厳しくなる。また、平野佳が来季は40歳のシーズンを迎え、山崎颯や宇田川がいるが後継の育成も大事だ。

 今季、最終戦でプロ初勝利を上げた曽谷や、一軍デビューした斎藤響介(盛岡中央高~22年③)など期待の若手もいるが、山下も東も実質来季が2年目のシーズンで、山本と山崎福の穴を埋めるのは容易ではない。

 野手は投手ほど切羽詰まった状況ではないが、捕手が6名しかおらず、頓宮は捕手登録ながらマスクを被ったのは1試合だけで人数的に確保が必要になる。投手中心のチームだけに来季に向けバッテリー強化が課題になる。

☆投手~先発・リリーフ左腕、即戦力のクローザー候補

 今季は山本と宮城、山崎福が先発ローテーションを守り、前半は今季一軍デビューの山下が山本と並び防御率1点台、後半は東が負けなしの投球で盤石の先発陣を支えた。さらにルーキーの曽谷と斎藤も150キロを超える真っ直ぐで押す投球で、成績以上にインパクトのあるパフォーマンスを見せた。

 リリーフは、山崎颯が最多の53試合に登板し、阿部と宇田川からクローザーの平野佳まで繋ぐ形ができ、後半からは山岡も加わりさらに安定感を増した。ベテランの比嘉幹貴日立製作所~09年②)と山田も安定感抜群で、小木田や本田仁海(星槎湘南高~17年④)もブルペンを支えた。

 ファームでは村西良太(近大~19年③)が、先発で防御率1点台、育成の入山海斗(東北福祉大~22年育③)は最多の44試合登板して13セーブを挙げており、支配下登録も目の前にきている。

 来季は山本と山崎福の去就が不透明ななか、今年の最上位候補は高校ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)で、名門校で1年秋からエースを務め、148キロに真っ直ぐに変化球も一級品で制球力も高い。U-18では3試合に先発し、日本を初の世界一に導くなど大舞台にも強く、左投手が不足するなか最も適したチームかもしれない。

 前田に次ぐ上位候補では、上田大河高太一(ともに大商大)の名前が挙がり、上田は最速154キロの真っ直ぐと多彩な変化球で、今秋のリーグ戦でノーヒットノーランも記録している。高は制球力に長けた左腕で、高校2年から投手へ転向し、大学で素質が開花した選手で伸びしろもある。

 高校生の上位候補は、東松快征(享栄高)は最速152キロの真っ直ぐで押すパワーピッチャー。クレバーな投球術の杉原望来(京都国際高)は細身ながらスタミナも十分で、前田と同じ左腕で補強ポイントに合う。

 いずれも甲子園未出場では無名だが、木村優人(霞ケ浦高)坂井陽翔(滝川二高)、191センチの長身右腕の篠崎国忠(修徳高)は他球団も高評価の上位候補で、全員が真っ直ぐが150キロを超える右の本格派。

 下位指名になると思うが天野京介(愛産大工高)奪三振率の高い東海のドクターKで、中山勝暁(高田高)高橋快秀(多度津高)松石信八(藤蔭高)も最速150キロを超え、高いポテンシャルを秘めた将来のエース候補だ。

 大学生では西舘勇飛(中大)草加勝(亜大)は安定感抜群の即戦力先発候補で、冨士隼人(平成国際大)はリリーフの適性が高く、高校時代は公式戦未登板で大学で急成長した社会人ではゲームメークに長けた川船龍星(日本通運が候補に挙がっている。

☆捕手~人数不足で高校生または大学生

 今季は若月健矢(花咲徳栄高~13年③)が最もマスクを被り、森と石川亮(帝京高~13年日⑧)の3人でシーズンを乗り切った。そんななかFA移籍も囁かれていた若月のシーズン中の残留表明は朗報になったが、支配下登録の人数が少なく、しかも森と若月、石川は同学年で、個人差はあるにせよ同時に衰える可能性があり課題は深い。

 ただ、今年もあまり捕手には興味がないようで、堀柊那(報徳学園高)しか候補に挙がっていない。ファームでは福永奨(国学院大~21年③)が103試合でマスクを被っており、若い捕手が多いチームだけに焦る必要はないと言うことだろう。

内野手~高校生(左打ちならベスト)、即戦力二塁手

 内野は一塁に頓宮、三塁は堅守の宗、遊撃に紅林がレギュラーに定着し、欲しかった右打ちの内野手で廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)をトレードで獲得した。ただ、今季も決まらなかったのが二塁手で、最多は54試合出場の宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)で、ゴンザレスと大城滉二(立大~15年③)、西野真弘(JR東日本~14年⑦)が務めたが、いずれも決定力に欠けた。

 また、19歳~22歳に左打者がおらず、年齢構成的には高校生の左打ちがベストになり、高校通算62本塁打真鍋慧(広陵高)と31本塁打佐倉侠史朗(九州国際大高)は将来の中軸候補。横山聖哉(上田西高)は強肩強打の大型遊撃手で走攻守にレベルが高い左の強打者だ。

 さらに高校ではエースで4番の明瀬諒介(鹿児島城西高)は通算49本塁打百崎蒼生(東海大熊本星翔高)は一番打者ながら39本塁打とパンチ力もある。大学生では村田怜音(皇學館大)も候補に挙がり、大柄な体から桁外れの飛距離を放つ長距離砲だ。

☆外野手~将来の中軸候補

 外野のレギュラーは中堅の中川圭だけだったが、杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)は本塁打16本と長打力は健在で、内野手の野口は外野で出番を増やした。前半戦大活躍した茶野、俊足の佐野晧大(大分高~14年③)に渡部遼人(慶大~21年④)とタレントが揃い、ファームでは池田陵真(大阪桐蔭高~21年⑤)が3割を超え、レギュラー候補が揃っている。さらに守備走塁でチームを献身的に支えるベテラン小田裕也(日本生命~14年⑨)の存在も忘れてならない。

 今年は候補も少ないこともあり、補強を急ぐ必要はないが、獲得するなら将来の中軸候補が良く、星野ひので(前橋工高は高校通算16本の右の長距離砲で走塁の技術も高い。平田大樹(瀬田工高)も21本塁打を放ち、機動力と強肩も兼ね備え走攻守三拍子揃っている。

●戦力が充実している今こそ、将来性重視のドラフトが長期スパンで活きてくる

 他球団が常廣羽也斗(青学大や西舘勇飛(中大)の即戦力投手を競合必至で指名予想されるなか、オリックスは高校生を中心にリストアップしている。今年は他球団の動向に反して、高校生中心の指名が予想され、山下のように素質ある高校生をじっくり育成できる余裕が今のオリックスにはある。

 そのなかで1位指名は各球団の間隙を縫って高校生ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)の指名が濃厚で、将来の中軸候補として真鍋慧(広陵高)や横山聖哉(上田西高)の1位指名も想定できる。 

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)   真鍋 慧(広陵高・内野手

 2位~上田大河(大商大・投手)     高 太一(大商大・投手)

 3位~冨士隼人(平成国際大・投手)   草加 勝(亜大・投手)

 4位~百崎蒼生(東海大熊本高・内野手) 天野京介(愛産大工高・投手)

 5位~松石信八(藤陰高・投手)     村田怜音(皇學館大・内野手) 

 6位~星野ひので(前橋工高・外野手)  高橋快秀(多度津高・投手) 

 おススメの選手は、森田駿哉(ホンダ鈴鹿で、高校時代から注目されていた左腕だが、大学から不振に陥り、社会人5年目でようやく結果が出た。27歳のオールドルーキーになるが阿部のようなサプライス指名があるかもしれない。

23年ドラフト予想☆阪神~今季の優勝がもう一段チームのレベルを上げ、早くも連覇も夢ではないチームになりつつある

 19年から4年連続Aクラス入りを果たしたものの優勝には届かず、遂に05年優勝の際の岡田彰布監督の再登板が決まり、18年振りの優勝を目指してのシーズン。

 昨年の開幕9連敗の悪夢から、今季は開幕4連勝で首位スタートをきり、盤石な投手陣で大きな連敗は5連敗一度だけだった。圧巻は5月で、9連勝を含む19勝5敗で抜け出し、5月13日に首位に立つと、以降は一度も譲ることなく独走。8月に10連勝、9月も11連勝と終盤も圧倒し、2位に12ゲーム差をつけ「ARE(優勝)」を達成した。CSでも3連勝で盤石な戦い方で日本シリーズに駒を進めた。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 85勝53敗5分①

 防御率…2.66①(2.67①)打率….247③(.243⑤)

 本塁打…84⑤(84⑤)盗塁79①(110①)

 得点…555①(489⑤)失点…424①(428①)

●盤石な投手陣と出塁率の高い打線で、投打が噛み合い18年振りのリーグ制覇

 防御率や失点数で12球団ナンバーワンの投手陣は、今季は新戦力が丸々上積みになった。3年目の村上は昨季まで一軍通算2試合だったが、防御率1点台で最優秀防御率を獲得し10勝を上げた。

 現役ドラフトでソフトバンクから加入した大竹耕太郎(早大~17年ソ育④)も、昨年わずか2試合登板の選手が、12勝(2敗)でチームの勝ち頭になった。ソフトバンクではストレートの速さを求められ出番がなかったが、緩急を使った技巧派の投球が阪神では認められ、現役ドラフトの成功例にもなった。

 村上と大竹の新戦力で貯金14、伊藤も規定投球回数をクリアして10勝(5敗)、西勇輝菰野高~08年オ③)と才木浩人(須磨翔風高~16年③)がともに8勝(5敗)を上げ、エースの青柳晃洋(帝京大~15年⑤)は今季は苦しみならも8勝(6敗)を上げ、先発ローテーション投手すべて貯金できた。

 リリーフでは、WBC選出の湯浅京己(BC富山~18年⑥)が離脱するなか、岩崎優(国士館大~13年⑥)が、防御率1点台で35セーブを挙げ、初の個人タイトルを獲得。経験のある岩貞祐太(横浜商大~13年①)と加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)がセットアッパーを務めた。

 また、島本浩也(福知山成美高~10年育②)もケガから完全復帰し、2年目の桐敷拓馬(新潟医療福祉大~21年③)と3年目の石井大智(四国IL高知~20年⑧)が2桁のホールド数を上げ湯浅の穴を埋め、改めて層の厚さを見せつけた。

 野手陣は守備に不安のあった中野を二塁にコンバートがハマり、中野は最多安打のタイトルを獲得。大山悠輔(白鷗大~16年①)はチームトップの打率で、近本に佐藤輝、中野の代わりに遊撃に入った木浪、新外国人のノイジーの6名の規定打席クリアはリーグ最多で、一年間レギュラーを固定できた。

 チーム打率も本塁打も飛び抜けた数字ではないが、出塁率が12球団ナンバーワンで、四球は一番多い。粘り強く出塁し、犠打や盗塁を織り交ぜ1点を獲りに行く野球で得点数はリーグナンバーワンで、併殺打は最も少なく、犠飛は最も多い。各選手がいま何をすべきかを理解し、実践できる意識と技術の高さを感じる。一方、課題の失策数は、今季もリーグワーストで改善が急務だ。 

●今季で5年連続のAクラス!その成果はドラフトの成功と言っても過言ではない

 この間のドラフトが結果に結びつき、過去5年でFAで獲得したのは西勇だけで、あとはすべてドラフト指名した選手だ。1位の近本や佐藤輝、森下が活躍し、岩崎や青柳に中野、湯浅、石井など下位で指名した選手も主力に成長している。今オフもFA市場に参加しないでチームを強化する方針もこの結果を見れば頷ける。

 投手の最年長が34歳の西勇、野手は31歳の原口文仁(帝京高~09年⑥)と若いチームで、今季の優勝でさらに一段レベルアップしたチームになろうとしている。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】 

 18年⑥…近本光司(大阪ガス/①・外野手)木浪聖也(ホンダ/③・内野手

 19年③…なし

 20年③…佐藤輝明(近大/①・内野手)伊藤将司(JR東日本/②・投手)

     村上頌樹(東洋大/⑤・投手)中野拓夢(三菱自動車岡崎/⑥・内野手

 21年②…なし

 22年③…森下翔太(中大/①・外野手)

  ↓↓

阪神の補強ポイント】 

 投 手…即戦力クローザー、将来のエース候補

 捕 手…大学生または社会人

 内野手…大学生の右打ち

 外野手…大学生・社会人の左打ちスラッガー

 今季の主力を見渡して、高校生の輩出が少ないのが気がかりだったが、ファームには有望株が揃っている。内野の遠藤成(東海大相模高~19年④)に高寺望夢(上田西高~20年⑦)、外野は井上広大(履正社高~19年②)に前川右京(智弁学園高~21年④)、井坪陽生(関東一高~22年③)が好成績をあげている。

 投手では才木が主戦に成長し、及川雅貴(横浜高~19年③)も復帰。来季5年目の西純矢(創志学園高~19年①)も着実に成長曲線を描き、ルーキーの門別啓人(東海大札幌高~22年②)は今季一軍デビューを果たしている。

 年齢バランスは悪くなく、多少の左右のバランスの悪さはあるが極端に偏ってはいない。脂の乗り切った20歳後半~30歳に主力選手が集中し、ファームでは若手が着実に成長しており、本当に欲しい選手からドラフト指名することができる。短期的な結果に左右されず、育成主体にチームを強くするプロセスが出来つつある。

☆投手~即戦力クローザー、将来のエース候補

 先発は青柳と西勇、伊藤と大竹、若手の才木と村上と先発の層は厚く、西純や秋山拓巳(西条高~09年④)も控える。湯浅が復帰すれば、元は先発の桐敷も控え、富田蓮(三菱自動車岡崎~22年⑥)もファームで防御率1点台の好成績を収めている。今季の村上のように若い投手のブレイクが続けばスキのない先発陣になる。

 リリーフは岩崎と岩貞、加治屋がともに来季34歳を迎え、世代交代に向けた準備が必要だ。石井や及川、浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)が30試合以上の登板で経験を積み、湯浅が戻れば万全と言えるが、投手は幾らいても良く、さらなる投手王国確立を目指したい。

 1位候補では、常廣羽也斗(青学大西舘勇飛(中大)細野晴希(東洋大古謝樹(桐蔭横浜大の両左腕が挙がる。常廣は超がつく即戦力投手で、先発・リリーフともに適性が高く、安定感抜群の西舘と古謝は先発候補。細野は制球力が課題だが、投手王国の阪神ならさらに大化けするかもしれない、

 下村海翔(青学大武内夏暉(国学院大)も上位候補だが、さすがに2位以下で残っている選手ではなく、上田大河(大商大)岩井俊介(名城大)を狙いたい。上田は力のある真っ直ぐと多彩な変化球の本格派で、岩井は回転の効いた真っ直ぐで勝負する投球でリリーフもいける。

 このほか、安定感抜群の西舘昂汰(専大草加勝(亜大)、制球力に長けた左腕の高太一(大商大)は即戦力。将来性なら高校まで軟式の真野凛風(同大)奪三振率の高い谷脇弘起(立命大)工藤泰成(東京国際大)は真っ直ぐが150キロを超える。

 社会人ではゲームメーク能力に長けた川船龍星(日本通運高島泰都(王子)は先発候補、古屋敷匠真(セガサミーはリリーフもこなし、稲葉虎大(シティライト岡山)奪三振率の高いリリーバー。

 高校生では、前田悠伍(大阪桐蔭高)は、豊富な大学生を押しのけてでも1位指名のある逸材で、坂井陽翔(滝川二高)東松快征(享栄高)も前田と並ぶ1位候補だ。投手陣が充実しているなか、有望な高校生を順位を繰り上げて指名するのもアリで、木村優人(霞ケ浦高)日當直喜(東海大菅生高)、左腕の杉原望来(京都国際高)杉山遥希(横浜高)、伸びしろ十分の篠崎国忠(修徳高)早坂響(幕張中央高)もなど、3~4年待てる余裕がいまの阪神にはある。

☆捕手~大学生または社会人

 今シーズンも、梅野隆太郎(福岡大~13年④)と坂本誠志郎(明大~15年②)が中心で、梅野がケガで離脱後も戦力ダウンにはならなかったが、梅野が離脱後も坂本しかしない状況には危機感を感じる。

 岡田監督は高校生捕手を切望しているようで、堀柊那(報徳学園高)藤田柊太郎(福岡大大濠高)、打撃の良い寺地隆成(明徳義塾高)が候補に挙がる。ただ、個人的には中川勇斗(京都国際高~21年⑦)に藤田健斗(中京学院大中京高~19年⑤)も育ってきており、大学生か社会人で第2~第3候補を獲得して良いと思う。

 捕手全般の技術力の高い進藤勇也(上武大)にリードの定評のある有馬諒(関大)、打力も兼ね備える萩原義輝(流通経大)久保田拓真(パナソニックなど、投手力強化のためには捕手の育成も大事と多くの選手をリストアップしている。

内野手~大学生の右打ち

 今シーズンはレギュラーが固定され、一塁に大山、二塁は中野、三塁の佐藤輝、遊撃の木浪が規定打席をクリアし、中野は今季フル出場を果たした。控えでは遊撃の小幡竜平(延岡学園高~18年②)の34試合が最多で、熊谷敬宥(立大~17年③)と糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)、トレードで加入の渡邊諒(東海大甲府高~13年日①)のまさに少数精鋭で乗り切った。

 ケガさえなければ補強を急ぐ必要はなく、若手も育ってきており、ドラフトでは育成できるゆとりがある。ただ、年齢構成で20歳~26歳の右打ちが不在で、大学生または社会人で埋めたい。

 大学生では廣瀬隆太(慶大)上田希由翔(明大)が候補に挙がるが、一・三塁が本職で無理に上位枠を使う必要もない。下位で狙うのならパワーに定評のある村田怜音(皇學館大)や遊撃守備の定評のある辻本倫太郎(仙台大)は補強ポイントに合う。

 一方、戦力が充実しているうちに、高校生スラッガーの上位指名もアリで、注目の真鍋慧(広陵高)佐倉侠史朗(九州国際大高)が候補に挙がるなか、早くから明瀬諒介(鹿児島城西高)を高評価している。高校通算49本のスラッガーで、高校ではエースだったが、プロ入りに向けて野手に絞り、複数ポジションに挑戦している。

☆外野手~大学生・社会人の左打ちスラッガー

 外野は今季入団5年目までのヒット記録を更新した近本がおり、左翼はノイジー、右翼はルーキー森下が規定打席未達も94試合出場で、本塁打も10本に乗せた。控えでは島田海吏(上武大~17年④)と小野寺暖(大商大~19年育①)いるが、俊足巧打タイプの選手が多く、欲を言えば左打ちのスラッガーを獲得したい。

 度会隆輝(ENEOS)は高いミート力で広角に打ち分け、打線が課題のチームには大きな補強になり、投手と二刀流の田中大聖(太成学院大)も左打ちでパンチ力もある。また、右打ちの桃谷惟吹(立命大)も広角に打ち分ける巧打者で候補に挙がる。 

●豊富な大学生投手を獲得し、バッテリー強化でさらなる投手王国を目指す

 投高打低のチームのなか、どうしても野手に目が行くが、今年豊富な大学生を獲得し投手王国を万全にしたい。既に広島が1位指名公表の常廣羽也斗(青学大)は、先発・リリーフに適性がり、一年目からクローザーを任せることも夢ではない。

 常廣を外した場合、即戦力左腕の古謝樹(桐蔭横浜大は腕の出どころの見えないフォームからキレのある変化球を即戦力で、以前から阪神の評価は高く、岡田監督はバッテリー強化が今ドラフトの狙いの一つで、高校生なら堀柊那(報徳学園高)、大学生なら進藤勇也(上武大)の上位指名も予想される。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~常廣羽也斗(青学大・投手)    古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)

 2位~堀 柊那(報徳学園高・捕手)   上田大河(大商大・投手)

 3位~杉山遥希(横浜高・投手)     明瀬諒介(鹿児島城西高・内野手

 4位~村田怜音(皇學館大・内野手)   真野凛風(同大・投手)

 5位~稲葉虎大(シティライト岡山・投手)藤田柊太郎(福岡大大濠高・捕手) 

 6位~工藤泰成(東京国際大・投手)   高島泰都(王子・投手)  

 おススメの選手は、村田怜音(皇學館大)で、身長196センチ、体重110キロの大柄な体から放つ長打力が魅力のロマン砲で、三重学生リーグからは則本昂大楽天)以来、11年振りのプロ入りでここにもロマンがある。

 

23年ドラフト予想☆ソフトバンク~大型補強も3年連続のV逸…出直しの来季は「育成」と「補強」をどう進めるか

 昨年のオフはソフトバンクの独壇場だった。他球団と大争奪戦の末に日本ハムから近藤健介(横浜高~11年日④)と、DeNAから嶺井博希(亜大~13年D③)をFAで獲得し、阪神からガンケル、ロッテからオスナ、仕上げにMLBから有原航平(早大~14年日①)も入団を決め、新外国人と合わせ総額80億円の大型補強を行った。

 大補強を敢行し今季は優勝が至上命題で、2位に10ゲーム以上の差を広げるなど具体的な数字まで示されたが、首位オリックスから15.5ゲーム離され独走での3連覇を許し、ロッテとゲーム差なしの3位でシーズンが終わった。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 71勝69敗3分③

 防御率…3.27④(3.07③)打率….248②(.255①)

 本塁打…104②(108②)盗塁73④(86④)

 得点…536①(555①)失点…507④(471③)

●大型補強も3年連続のV逸で、世代交代が進まずかつての強さに陰りが見え始めた

 開幕は5連勝と絶好のスタートで、序盤はオリックスとロッテと三つ巴の首位争いを繰り広げ、貯金も最大15を数えた。ただ、7月に54年振りの12連敗を喫しペナントレースから脱落し、一時は借金生活に陥った。

 終盤に持ち直したものの、残り2戦で1勝すれば2位が確定するなか、1敗1分で3位に沈んだ。昨年もあと1勝(引き分けでも)で優勝のところ、西武とロッテに連敗し優勝を逃し、かつての勝負強さが影を潜めた。

 今シーズンの数字を見ると、すべてにおいて後退している。投手陣はリーグで唯一、規定投球回数を超えた投手がおらず、投球回は石川柊太(創価大~13年育①)の125回が最高で、勝利数は有原の10勝がチーム最多だった。ガンケルは僅か5試合登板で未勝利に終わり、エース千賀滉大(メッツ)が抜けた穴は大きかった。

 リリーフ陣はモイネロが左ひじの手術で、シーズン途中に離脱したが、松本裕樹(盛岡大付高~14年①)が後半セットアッパーに定着し、オスナは防御率0点台で圧巻のパフォーマンスを見せた。ただ、先発が早いイニングで崩れることが多く、オスナまで繋げることが出来ず、結果オスナはリーグ4位の26セーブに終わった。

 攻撃陣は近藤が本塁打と打点の2冠に輝き、打率も2位と三冠王に迫る活躍をした。柳田悠岐(広島経大~10年②)は本塁打は減ったものの、確実性のある打撃で打率3割をキープし、中村晃(帝京高~07年③)と今宮健太(明豊高~09年①)が規定打席に達した。ただ、主力の顔ぶれは相変わらずで、若手の突き上げに乏しく、外国人選手が戦力にならず、デスパイネを呼び戻す荒業も効果なしで、4人で本塁打はアストゥディーヨの1本のみと燦々たる結果に終わった。

 今シーズンのチーム編成を見ると「補強」に偏り、もう一つの両輪である「育成」が疎かになっている印象を受ける。実際、いくら4軍制を敷いても、今季育成から支配下になったのが木村光(佛教大~22年育③)だけでは夢も希望も感じない。

 確かに2000年代はソフトバンクの時代と言っても過言ではなく、常勝軍団と呼ぶにふさわしいチームだった。ただ、個人的には“常勝”という言葉に縛られ、豊富な資金力を背景に他球団から選手を補強する、短期的な成果を求め安易な手法に陥っているような気がしてならない。

過渡期を迎えたチームに必要なのは、今一度、土台からチーム作りを見直すこと

 ここ数年のソフトバンクのドラフトは、決して巧いとは言えないが、充実した育成環境をベースに、指名順位に関係なく選手を抜擢し、効果的にFAを活用してチームを強くしてきた。四軍制を実現したことで、益々他球団との差が開くのではと思っていたが、短期的な成果を追ってFAや外国人選手に頼る編成になったのは残念だった。

 若手の育成に精通している理由で、二軍監督から就任した藤本監督だったが、思うように成績を残すことができなかった。結果、これまでの主力選手と補強選手に頼る形になり、期待された若手の台頭は進まず、志半ばでチームを去ることになった。 

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年②…甲斐野央(東洋大/①・投手)

 19年②…津森宥紀(東北福祉大/③・投手)大関友久(仙台大/育②・投手)

 20年①…なし

 21年④…野村 勇(NTT西日本/④・内野手

 22年②…大津亮介(日本製鉄鹿島/②・投手)

  ↓↓

ソフトバンクの補強ポイント】 

 投 手…先発投手(高校生・大学生)

 捕 手…ポスト甲斐候補

 内野手…左打ちのスラッガーとポスト今宮候補

 外野手…強いて言えば高校生

 直近5年のドラフトはお世辞にも成果が出ているとは言えない。特に高校生は、支配下で12名(28名中)入団しているが、一軍出場が僅かに4名で、打者は野村大樹(早実高~18年③)の通算81試合が最多で、投手は田上奏大(履正社高~20年⑤)の2試合が最多と、他球団と比較しても輩出のスピードが遅い。

 ドラフトを前に、今現在12球団で唯一、支配下選手の戦力外通告がなく70名フルに選手がおり、どのポジションを重点にするか不透明だが、補強ポイントは投手で、特に不足している先発投手が中心になる。

 野手はポスト今宮や甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)が必要だが、今季一軍デビューの井上朋也(花咲徳栄高~20年①)や4年連続ファームの本塁打王リチャード(沖縄尚学高~17年育③)など楽しみな若手が多く、来季こそ主力に育てたい。

☆投手~先発投手(高校生・大学生)

 先発は開幕投手大関に、石川と有原、東浜巨(亜大~12年①)、和田毅早大~02年自)に加え、後半戦はスチュワートJrが先発ローテーションに定着したが、千賀のように大事な試合を任せられる選手がおらず、大型連敗の要因の一つにもなった。

 来季43歳の和田を筆頭に、主戦がいずれも30歳を超え、20歳代は大関とスチュアートJrのみで、今季リリーフに回った藤井晧哉(おかやま山陽高~14年広④)や板東湧梧(JR東日本~18年④)、ファームで好投した田上や木村光、ルーキーの松本晴(亜大~22年⑤)など若い力に期待したい。

 リリーフはオスナと松本裕、津森をが中心で、今季キャリアハイの田浦文丸(秀岳館高~17年⑤)に復調した又吉克樹(四国IL香川~13年中②)、甲斐野や大津も控え層は厚く、ここにモイネロが復帰すれば問題ない。ファームでも尾形崇斗(学法石川高~17年育①)が最多セーブを獲得し、53試合に登板した育成の中村亮太(東農大オホーツク~20年育⑧)もおり、優先は先発陣の強化になる。

 1位候補の常廣羽也斗(青学大西舘勇飛(中大)は競合覚悟の超即戦力で、常廣は大学で先発・リリーフで結果を残している。仮に外した場合も同じく完成度の高い下村海翔(青学大西舘昂汰(専大が次候補になり、最速158キロの剛速球左腕の細野晴希(東洋大や制球力の高い高太一(大商大)も上位候補に挙がる。

 さらに質の高い真っ直ぐが武器の滝田一希(星槎道都大)奪三振率の高い尾崎完太(法大))は先発左腕。上田大河(大商大)は多彩な変化球を駆使した投球術が光り、高卒4年目の広沢優(JFE東日本)も上位でリストアップしている。また、パワーピッチャーの富士隼斗(平成国際大)、緩急で打ち取る石原勇輝(明大)はリリーフの適性も高い。

 高校生では前田悠伍(大阪桐蔭高)も1位候補だが、前田も1位競合確実で、前田に代わる上位候補で日當直喜(東海大菅生高)篠崎国忠(修徳高)坂井陽翔(滝川二高)の長身右腕を抑えておきたい。

 このほか、木村優人(霞ケ浦高)や今夏の大阪大会決勝で大阪桐蔭高を完封した福田幸之介(履正社高)は他球団もマークしている逸材で、高校から投手を始めた早坂響(幕張総合高)藤原大翔(飯塚高)は伸びしろしかない。打者としても評価の高い武内涼太(星稜高)に最速151キロ左腕の仁田陽翔(仙台育英高)、中央では無名だがハッブス大起(東北高)清水麻成(樹徳高)など多彩な選手の名前が挙がる。

 地元九州からは、甲子園でも活躍した東恩納蒼(大阪桐蔭高)黒木陽琉(神村学園高)、身体能力の高い松石信八(藤蔭高)がリストアップされている。

☆捕手~ポスト甲斐候補

 FAで嶺井が加入したものの、甲斐が不動のレギュラーで、今季も139試合にマスクを被った。嶺井が二番手を務め、外野の出場がメインだった谷川原健太(豊橋中央高~15年③)が、今季は先発を含む20試合でマスクを被った。

 甲斐は来季32歳でいまが全盛期で、ファームでは打撃の良い渡邊陸(神村学園高~18年育①)と強肩の海野隆司(東海大~19年②)が若い2人が主戦で、補強を急ぐ必要はないが、経験を擁するポジションだけにポスト甲斐の準備を進めたい。

 強肩でディフェンス力の高い進藤勇也(上武大)や打撃の良い萩原義輝(流通経大)が候補だが、年齢的には高校生のほうが良く、走攻守に高いレベルの堀柊那(報徳学園高)を正捕手候補でじっくり育成したい。

内野手~左打ちのスラッガーとポスト今宮候補

 今季は一塁に中村、二塁に三森大貴(青森山田高~16年④)、三塁は栗原陵矢(春江工高~14年②)が外野からコンバートされ、骨折で離脱後は川瀬晃(大分商高~15年⑥)や野村勇が入り、遊撃は今宮とレギュラーは固まっている。

 さらに内外野守れる周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)に牧原大成(城北高~10年育⑤)が控え層は厚く、今宮と牧原大が30歳を超えるが、全般若い選手が多く、チーム待望の右の長距離砲の井上やリチャードのも控え世代交代が進行しつつある。

 ポスト今宮としては、昨年イヒネ・イツア(誉高~22年①)を獲得しており、現時点で急ぐ必要はないが、甲子園でも活躍した横山聖哉(上田西高)山田脩也(仙台育英高)中澤恒貴(八戸学院光星高)など、今季は高校生に有望な遊撃手が多く下位指名で獲得を検討しても良い。

 一方、柳田屋近藤に次ぐスラッガーも必要で、左打ちでは高校通算31本の佐倉侠史朗(九州国際大高)や広角に打ち分ける高見澤郁魅(敦賀気比高)、チーム待望の右のスラッガー仲田侑仁(沖縄尚学高)がリストアップされている。 

☆外野手~強いて言えば高校生 

 外野は柳田が来季36歳を迎えるが、今季のように近藤とDHで併用し、柳町達(慶大~19年⑤)や上林誠知(仙台育英高~13年④)、ルーキーの生海(東北福祉大~22年③)も控え、年齢構成も悪くなく補強を急ぐ必要はない。

 今年は外野手の候補が少なく、投手と二刀流の田中大聖(太成学院大)が候補に挙がっているが、それよりもファームで本塁打6本の川村友斗(仙台大~21年育②)や俊足の仲田慶介(福岡大~21年育⑭)を支配下にするほうが先決だと思う。

●上位候補は即戦力投手と将来のエース候補!外国人野手全滅でスラッガーも欲しい

 1位指名は常廣羽也斗(青学大)と西舘勇飛(中大)が有力だが、いずれも競合必至で、常廣は広島が既に指名を公表している。いくら大学生投手が豊作とは言え、やはりSランクの投手を獲得したい。2~3位でも即戦力投手に将来のエース候補を抑えておきたく、今年は上位から投手で固めても良いと思う。

 野手は急を要するポジションはなく、特に外野手は必要ない。ポスト甲斐や今宮で、高校生を中心に捕手と今年豊富な遊撃手や、ポスト柳田・近藤の左打ちのスラッガーなど、主力の世代交代に備えた補強をしたい。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~常廣羽也斗(青学大・投手)    西舘勇飛(中大・投手)

 2位~堀 柊那(報徳学園高・捕手)   日當直喜(東海大菅生高・投手)

 3位~冨士隼斗(平成国際大・投手)   佐倉侠史朗(九州国際大高・内野手

 4位~藤原大翔(飯塚高・投手)     石原勇輝(明大・投手)

 5位~仲田侑仁(沖縄尚学高・内野手)  田中大聖(太成学院大・投手/外野手) 

 6位~仁田陽翔(仙台育英高・投手)   松石信八(藤蔭高・投手)       

 おススメの選手は、高校ナンバーワン捕手の堀柊那(報徳学園高)で、強肩で一塁送球は2秒を切り、高校通算14本塁打で長打力もある。日本を代表するキャッチャーの甲斐から学ぶ点は多く、正捕手とは言わず、侍ジャパンの司令塔を目指して欲しい。