ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年~現役ドラフトの振り返り

 12/8に2度目の現役ドラフトが開催された。今年は2~3選手の移籍があるのかと思ったが、昨年同様1名(計12名)の移籍になった。

セ・リーグ

 阪 神  …漆原 大晟(オリックス・投手/新潟医療福祉大~18年育①)

 広 島  …内間 拓馬(楽 天・投手/亜大~20年④)

 DeNA …佐々木千隼(ロッテ・投手/桜美林大~16年①)

 巨 人  …馬場 皐輔(阪 神・投手/仙台大~17年①)

 ヤクルト …北村 拓己(巨 人・内野手/亜大~17年④)

 中 日  …梅野 雄吾(ヤクルト・投手/九産大九州高~16年③)

パ・リーグ

 オリックス…鈴木 博志(中 日・投手/ヤマハ~17年①)

 ロッテ  …愛 斗  (西 武・外野手/花咲徳栄高~15年④)

 ソフトバンク  …長谷川威展(日本ハム・投手/金沢学院大~21年⑥)

 楽 天    …櫻井 周斗(DeNA・投手/日大三高~15年⑤)

 西 武    …中村 祐太(広 島・投手/関東一高~13年⑤)

 日本ハム …水谷  瞬(ソフトバンク・外野手/石見智翠館高~18年⑤)

 

 昨年は投手と野手が半分の6選手に分かれたが、今年は投手が9名と多く、特にリリーバーの移籍が多かった。野手は3名のみで、2年連続で捕手の指名はなかった。

 昨年、ドラフト1位指名選手の移籍はオコエ瑠偉楽天→巨人)のみだったが、今年は馬場(阪神→巨人)と鈴木(中日→オリックス)、佐々木千(ロッテ→DeNA)の3選手になり、育成出身は漆原(オリックス阪神)のみで、オリックスは2年連続で育成入団の選手の移籍になった。

 最年長は29歳の佐々木千で、最年少は水谷(ソフトバンク日本ハム)の22歳で、在籍4年の移籍になった。その在籍年数では中村祐(広島→西武)の10年が最長で、長谷川(日本ハムソフトバンク)は僅か2年での移籍になった。

 指名された選手全員が移籍経験はなく、偶然かも知れないが西武は2年連続で在籍年数の最も長いベテラン選手を獲得し、逆に日本ハムは2年続けて最年少選手の指名になり、現役ドラフトへの球団の思惑みたいのを感じた。また、阪神と広島、DeNA、ソフトバンクは投手、ロッテは野手の指名が2年連続になり、ソフトバンクは昨年に続き日本ハムからの獲得になった。

 顔ぶれを見ると大方の予想通りの名前が大半だったが、そのなかで驚いたのは梅野(ヤクルト→中日)と愛斗(西武→ロッテ)がリストアップされたことで、特に愛斗は準レギュラーで活躍していただけにまさかの放出になった。

 

阪神(△)OUT/馬場皐輔→IN/漆原大晟(オリックス

 盤石な投手陣のなか、出番の限られていた馬場がチームを去るが、同じリリーフ投手の漆原の獲得で戦力的には±ゼロになった。漆原は19年にファームで最多セーブを獲得するも、一軍では勝ちパターンに加わることが出来なく、今季は20年の支配下登録後、最も少ない16試合登板になった。ただ、漆原の潜在能力を評価しての獲得だと思うので、投打に若手が主力に成長するなかでブレイクも期待できる。

◆広島(△)OUT/中村祐太→IN/内間拓馬(楽天

 西川龍馬がFAで移籍を決め、野手の補強になるかと思ったが、広島の選択はこちらも課題のリリーフ強化だった。内間は力強いストレートが武器で期待値は高いが、制球力に課題があり、リーグワーストの防御率楽天で今季の一軍登板はなく、戦力になるには時間がかかると思う。不足している右打ちの内野手で北村(巨人→ヤクルト)のほうが年齢的にも補強ポイントに合致している分、勿体ない印象が強い。

◆DeNA(○)OUT/櫻井周斗→IN/佐々木千隼(ロッテ)

 プロ未勝利の櫻井を放出し、一昨年54試合登板の佐々木を獲得できたのだから傍目から見せば成功と言えるが、今永昇太と石田健大の移籍の可能性が高く、エスコバーも退団し主力の左投手が3名も抜けるなか、左の櫻井移籍は正直疑問が残った。ただ、それ以上に即戦力の投手が必要で、今季は僅かに2試合ながら実績のある佐々木の加入は大きい。先発もこなせるが基本はリリーフになりそうで良い補強になったと思う。

◆巨人(◎)OUT/北村拓己→IN/馬場皐輔(阪神

 今年は見事な現役ドラフトで、余剰戦力をリストアップし、不足部分を補う理想的な形になった。リーグナンバーワンの攻撃陣は内野のレギュラーがほぼ確定し、中田翔すら移籍を決断するチーム状況のなか、今オフの最大の補強ポイントのリリーフ強化で馬場の獲得は大成功と言える。馬場は今季ファームで防御率1点台の好成績を上げながら、一軍は19試合登板と出番にも飢えており、勝ちパターンを築ける補強になった。

◆ヤクルト(△)OUT/梅野雄吾→IN/北村拓己(巨人)

 事前の予想で名前は挙がっていたが、通算216試合に登板し、まだ24歳との梅野の放出には正直驚いた。今季は僅かに5試合の登板だったが、これからに期待を持てる選手だけに、投手力が課題のなか野手指名が果たして的確だったのか疑問が残った。一方、ヤクルトの内野はオスナに山田哲人、村上宗隆、長岡秀樹とレギュラーが固定されており、北村は内野はどこでも守れるが、結局は控えの層が厚くなった印象しかない。

◆中日(△)OUT/鈴木博志→IN/梅野雄吾(ヤクルト)

 先発かリリーフか起用法が定まらなった鈴木を放出するも、実績のある梅野の獲得は大きかった。中日の投手陣も層は厚いが、リリーフは高齢化が懸念材料で、24歳の梅野の加入は将来性も担保できる補強になった。ただ、今オフは中田翔中島宏之、上林誠知など野手の獲得が多く、巨人ではないが投手ではなく野手を放出し、梅野獲得だと大成功と言えただけにやや残念だった。

オリックス(△)OUT/漆原大晟→IN/鈴木博志(中日)

 リリーフの層が厚く出番の限られていた漆原を放出したが、同じリリーバーの鈴木を獲得でき、阪神と同じく±ゼロの結果と言える。ルーキーイヤーに大活躍した鈴木は、それ以降不振が続き、先発転向など起用法が定まらなかった。オリックスでも先発の可能性はあるが、ストレートの質を取り戻すことができればリリーフのほうが良く、投手育成に長けたチームだけに復活を期すには鈴木にとってはこの移籍をプラスにしたい。

◇ロッテ(◎)OUT/佐々木千隼→IN/愛斗(西武)

 今年のドラフトで度会隆輝(DeNA)を1位指名の方針から、外野手の補強が優先事項のなか、愛斗を獲得できたのは大成功と言える。西武ではレギュラー定着は叶わなかったが、今季は73試合に出場し強肩を活かした外野守備にも定評があり、文字通り補強になった。一方、佐々木千は、今季は移籍の西村天裕等の台頭もあり僅か2試合登板に留まったが、、多くの主力投手が多く抜けるDeNAからの期待値は高い。

ソフトバンク(○)OUT/水谷 瞬→IN/長谷川威展(日本ハム

 今年の現役ドラフト選手のなかで、唯一一軍出場がなかったのが水谷で、ファームで3番目に多い83試合に出場するも、外野は層が厚く、オフにはウォーカーの入団も決まり、外野の右打者は少ないが、チャンスは多くなく、本人にとっても良い判断になったと思う。一方で獲得したのは左の変則投手の長谷川で、嘉弥真新也が戦力外になり、モイネロの先発転向もあるなか、貴重な左のリリーバー獲得はプラスになった。

楽天(✕)OUT/内間拓馬→IN/櫻井周斗(DeNA)

 今季リーグ最下位の防御率のチームにおいて、クローザーの松井裕樹がMLB移籍など、補強ポイントはリリーフ投手で、経験豊富なリリーバーもいるなか、なぜ直近2年で一軍未登板の櫻井を獲得したのか正直疑問に思った。年齢も24歳と若く、松井移籍後で左腕強化を図りたい気持ちは分からない訳ではないが、それであれば、不足している右の外野手で水谷(日本ハム)獲得のほうが意図が伝わると思う。

◇西武(✕)OUT/愛斗→IN/中村祐太(広島)

 外野のレギュラーが不在で、山川穂高とマキノンの去就も決まらないなか、愛斗放出はファン以外も驚いた。ルーキーの蛭間拓哉や、来季外野手登録になる長谷川信哉の期待値の高さの裏返しだとは思うが、大胆な判断をしたと思う。一方で獲得した中村祐は、投球術で抑えるスタイルだけに、パワーピッチャーの多いパ・リーグでアクセントになるかもしれないが、投手陣の層の厚いチームでどういう起用になるか見えない。

日本ハム(△)OUT/長谷川威展→IN/水谷 瞬(ソフトバンク

 ポスト宮西尚生と期待されていた長谷川を放出し、一軍未出場の水谷を獲得する辺り“らしさ”が出たドラフトになった。日本ハムは「ファームで結果出してから一軍」ではなく、「先ずは一軍で起用し判断」する起用法で、万波中正や江越大賀といった同じタイプの選手も多く水谷にはプラスになると思う。ただ、同じ野手であれば、右の内野手も不足しており、北村(ヤクルト)のほうが来季の上積みが計算できたと思う。

 

 今年で2年目を迎えたが、指名人数はもっと増えて良いと思う。また、現在は実施時期がシーズンオフになっているが、シーズン中の開催の要望もあり、トレード期限ギリギリの日程やオールスター前後に試験的に開催してみても良いと思う。