ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年ドラフト予想☆広島~得失点差はマイナスも、勝てる試合をものにして2位へ躍進

 16~18年のリーグ3連覇から一転、4年連続のBクラスのなか、コーチ経験もない新井貴浩監督を新監督に迎えチームの刷新を図った。

 開幕から4連敗スタートと新監督の船出は厳しかったが、その後一気に5連勝で貯金生活に入ると、苦手な交流戦を9勝9敗の五分で乗り切り、7月中旬には10連勝で首位に浮上するも、8~9月で2度の6連敗が響き、ペナントには届かなかった。ただ、5年振りのAクラス、最終戦でDeNAが破れ2位が確定し、ルーキー監督が4年連続Bクラスのチームを2位まで躍進させたのは見事しか言えず、CSでの下克上を狙う。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 74勝65敗4分②

 防御率…3.20④(3.54⑤)打率….246④(.257①)

 本塁打…96④(91④)盗塁78②(26⑥)

 得点…493⑤(552②)失点…508⑤(544④) 

昨年は得失点差はプラスで借金8の5位、今季はマイナスながら貯金9の2位

 投打の成績を見て分かるように、チーム防御率も打率も4位、失策数も多い。得点数はリーグ5位、失点数はリーグで2番目に多く、得失点差はマイナスと、よくこの成績で2位に食い込んだと思う。

 まず改善したのが投手力で、失点数は多いものも防御率は改善。今季は床田寛樹(中部学院大~16年③)と九里亜蓮(亜大~13年②)が規定投球回数をクリアし、11勝を上げた床田がエースの働きを見せ、大瀬良大地(九共大~13年①)と森下暢仁(明大~19年①)が先発ローテーションを守った。ただ、今季も先発の顔ぶれが変わることはなく、5~6番手が決まらずリリーフ陣への負担が増した。

 最多ホールドを獲得した島内が、リーグ最多の62試合登板。栗林と矢崎拓也(慶大~16年①)も50試合以上に登板し、大道温貴(八戸学院大~20年③)とターリーもフル回転した。

 ただ、2年で101試合に登板した栗林は、登板過多からかWBC代表を外れた後も調子が上がらず、前半不振でクローザーから外れ、矢崎が代役を務めた。また、栗林と同様に2年で105試合登板の森浦、昨年ルーキーながら50試合登板した松本竜也(ホンダ鈴鹿~21年⑤)はともに13試合登板に留まり、早くも来季が心配だ。

 攻撃陣は西川龍馬(王子~15年③)が、3割を打ちリーグ2位の打率で終え、秋山翔吾(八戸大~10年③)と坂倉将吾の(日大三高~16年④)、菊地涼介(中京学院大~11年②)が規定打席を達成し、野間峻祥(中部学院大~14年①)もシーズン通してレギュラーで結果を残した。また、新外国人のデビッドソンが19本塁打を放ち、復調した堂林翔太中京大中京高~09年②)に打席数は少ないが末包昇大(大阪ガス~21年⑥)がともに2桁本塁打を放った。

 一方、マクブルームと小園が成績を落とし、1試合だけだが上本崇司(明大~12年③)が4番で先発するなど、思わず心配になることもあった。攻撃陣全体を見ると打率が下がり、出塁率もリーグ5位と低い。盗塁数が昨年の26から一気にリーグ2位の78まで回復し、機動力が戻った印象を受けるが、盗塁死がリーグワーストの50を数え、最も盗塁の多い阪神が成功79に対し失敗29だから、残念ながら効率的な攻撃とは言えず、併殺打はリーグワーストの115を数え攻撃が粗い。

●「育成主体」から「即戦力主体」へ路線変更…果たして今季は?

 リーグ3連覇中は過信とも思える育成中心のドラフトだったが、思うような結果を残せなかった。そんななか19年の森下の単独指名に自信を持ったのか、20年からは大卒・社会人の即戦力中心のドラフトに切り替えた。

 ただ、21~22年の即戦力組の低迷が予想外で、投手は指名7名中実に6名が大学生と社会人だが、森翔平(三菱重工エスト~21年②)の通算5勝が最高で、ほぼ戦力になれていない。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年①…小園海斗(報徳学園高/①・内野手)島内颯太郎(九共大/②・投手)

 19年④…森下暢仁(明大/①・投手)

 20年⑤…栗林良史(トヨタ自動車/①・投手)森浦大輔(天理大/②・投手)

 21年④…なし

 22年⑤…なし

  ↓↓

【広島の補強ポイント】 

 投 手…投手全般(将来のエース候補、即戦力先発&リリーフ)

 捕 手…坂倉に次ぐ二番手捕手

 内野手…左打ち高校生と右打ち大学生スラッガー

 外野手…高校生

 補強ポイントの最優先はやはり投手で、阪神の岡田監督がドラフト指名選手の事前公表に異を唱えるなか、早くも常廣羽也斗(青学大の1位指名を公表した。常廣は競合必至で、今季は大学生投手が豊富ななか上位指名は即戦力投手になるだろう。

 投手は全般補強が必要で、広島は年齢と左右のバランスを考慮した指名を続けてきたが、現状バランスは良くない。21歳と23歳の若い年代に空白があり、19歳~23歳には僅か4名おらず、ヤクルトと並んで最小だ。先発の枚数は少なく、リリーフも負担増でどちらも補強が必要で、且つ将来の主戦で高校生投手も必要だ。

 野手は主力が30歳を超え、若手の台頭が臨まれるが、坂倉と小園以外目ぼしい候補が見当たらず、末包も来季は3年目だが社会人出身で29歳になる。内野手なら右打者が不足し、内外野通してスラッガータイプが少ない。捕手は若手が多く、26歳~30歳が不在で、昨年同様に課題の多い難しいドラフトになる。

☆投手~投手全般(将来のエース候補、即戦力先発&リリーフ)

 先発は床田と九里、森下、大瀬良が中心で、上位指名選手が主戦になっているのは見事だが、若手の底上げが進んでいない。ファームを見てもでも遠藤淳志(霞ケ浦高~17年⑤)や玉村昇悟(丹生高~19年⑥)など一軍に定着して欲しい選手に、ベテランの野村祐輔(明大~11年①)が主戦では心許ない。そんななかファームで勝ち頭の黒原拓未(関学大~21年①)の3年目のブレイクに期待したい。

 リリーフは、島内がセットアッパーを務め、栗林の不振を埋めた矢崎の前半の奮闘は本当に大きく、中崎翔太日南学園高~10年⑥)の復調も大きい。ただ、数は十分と言えず、大道やターリーなど登板が集中している。昨年、フル回転した森浦や松本、ケムナ誠(日本文理大~17年③)、塹江敦哉(高松北高~14年③)など勤続疲労から登板数が減少した投手が多いのが気がかりだ。

 1位指名を公表した常廣は、先発もリリーフもでき広島の1位指名も頷ける。常廣を外した場合は、西舘勇飛(中大)の指名が有力で、西舘は常時クイックで150キロを投げる右の本格派で、高い安定感で先発ローテーションを期待できる。

 さらに下村海翔(青学大草加勝(亜大)西舘昂汰(専大岩井俊介(名城大)と安定感のある三先発右腕を上位でリストアップしており、広島が今年のドラフトで即戦力先発を狙っているのが分かり、岩井は常廣と同じくリリーフの適性もある。

 一方で昨年は将来性重視で斎藤優汰(苫小牧中央高~22年①)を指名し、高校生では前田悠伍(大阪桐蔭高)木村優人(霞ケ浦高)が1位候補に挙がるが、常廣を外してもそのまま大学生投手の指名が有力だろう。

 2位以降で高校生を指名するのであれば、本格派右腕の日當直喜(東海大菅生高)に左腕の杉原望来(京都国際高)が候補になる、下位候補では藤原大翔(飯塚高)高橋快秀(多度津高)天野京介(愛産大工高)、中山勝暁(高田高)の名前が挙がり、昨年に続き本格派右腕が重点のようだ。

 大学生も同様で、上田大河(大商大)中岡大河(富士大)村田賢一蒔田稔(ともに明大)といった安定感に長けた選手や、真野凛風(同大)谷脇弘起(立命大)など伸びしろのある素質型も含め右腕の評価が高い。

 左腕では、制球力に長けた高太一(大商大)に多彩な変化球を駆使する石原勇輝(明大)、ハマったときの投球は手が付けられない滝田一希(星槎道都大)がリストアップされている。

 昨年、3名を指名した社会人選手は、昨年の不振を引きずっているとは思えないが、あまり興味がないようで、加藤竜馬(東邦ガスの関心が高い。

☆捕手~坂倉に次ぐ二番手捕手

 昨年、三塁が主だった坂倉を今季は捕手で起用し続け、暫くは25歳の坂倉が中心になる。ただ、坂倉以外に今季一軍でマスクを被ったのは曾澤翼(水戸短大付高~06年③)と磯村嘉孝中京大中京高~10年⑤)の両ベテランのみで、若手の突き上げが不足している。ファームで主戦の石原貴規(天理大~19年⑤)や持丸泰輝(旭川大高~10年育①)が2~3番手に喰い込みたい。

 捕手は支配下人数も十分で、優先順位は高くない。進藤勇也(上武大)堀柊那(報徳学園高)の名前も挙がるが、坂倉を正捕手で起用し続けるのであれば敢えて上位枠をい使用する理由はなく、下位で有馬諒(関大)を指名できれば御の字で、26歳~30歳が不在でトレードのほうが現実的と言える。

内野手~左打ち高校生と右打ち大学生スラッガー

 今季、レギュラーと呼べたのは二塁の菊地だけで、一塁はマクブルームと堂林、三塁がデビッドソンと田中広輔JR東日本~13年③)、遊撃は矢野雅哉(亜大~20年⑥)と小園で、守備では上本が全ポジションを守り、攻撃ではベテランの松山竜平九州国際大~07年④)が支えた。

 ただ、堂林が33歳、菊地と上本が34歳、田中も35歳で若手の台頭が必要で、上本や松山が4番を任せられるようでは頭が痛い。小園が今ひとつ主力になり切れず、羽月隆太郎(神村学園高~18年⑦)も韮澤雄也(花咲徳栄高~19年④)も、主力を脅かすことは出来なかった。

 チームに必要なのはスラッガーで、大学生では上田希由翔(明大)廣瀬隆太(慶大)、高校生では森田大翔(履正社高)と地元の真鍋慧(広陵高)が上位候補に挙がっている。このなかでは上田は中距離の巧打者タイプだが、廣瀬に森田、真鍋が4番候補の長距離砲で、年齢構成では廣瀬と真鍋がフィットする。

 また、小園への発奮材料ではないが、遊撃守備に定評のある相羽寛太(ヤマハに俊足が売りの武田登生(日本新薬の評価が高く、甲子園でも活躍した山田脩也(仙台育英高)等、遊撃手がリストアップされている。

☆外野手~高校生

 外野手は今季に限って言えば補強の必要はない。秋山と西川、野間がレギュラーで、西川と野間はいまが一番脂ののっている年齢だ。ここに驚異の長打率5割の末包に、ファームで2桁本塁打中村健人トヨタ自動車~21年③)や今季一軍デビューの田村俊介(愛工大名電高~21年④)が控え、年齢構成は良くないが優先度合いは高くない。

 実際、外野手での候補は田中大聖(太成学院大)くらいで、その田中も投手としての評価が高く実質ゼロと言える。ただ、山陰の浅野(巨人)の愛称の高野颯太(三刀屋高)は右の長距離砲で、状況次第では地元枠で獲得を検討しても面白い。

●早くも常廣指名を公表!ただ、今年のドラフトで抱える課題は解消できず

 12球団でいち早く常廣羽也斗(青学大)を1位指名を公表したが、昨年とは違い今年は豊作と言われており、他球団へのけん制にはならないだろう。現状、常廣には3~4球団が予想され、外した場合は西舘勇飛(中大)に下村海翔(青学大)、1位入札が無ければ前田悠伍(大阪桐蔭高)が次候補になる。

 サプライズがあるとすれば、廣瀬隆太(慶大)や上田希由翔(明大)の内野手を1位指名し、2位以下で投手を並べるドラフトも面白い。今季は豊富な大学生投手と高校生投手をどの順位で獲得するかがポイントになる。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~常廣羽也斗(青学大・投手)     西舘勇飛(中大・投手)

 2位~岩井俊介(名城大・投手)      廣瀬隆太(慶大・内野手

 3位~森田大翔(履正社高・内野手)    杉原望来(京都国際高・投手)

 4位~藤原大翔(飯塚高・投手)      谷脇弘起(立命大・投手)

 5位~滝田一希(星槎道都大・投手)    山田脩也(仙台育英高・内野手) 

 6位~相羽寛太(ヤマハ内野手)     石原勇輝(明大・投手) 

 おススメの選手は、地元出身の石原勇輝(明大・投手)で、大学では村田賢一や蒔田稔に隠れた存在だったが、カーブが武器の緩急自在の左腕で、先発・リリーフともに適性があり。マルチな役割を持つ投手が必要なチームだけに補強ポイントにもp合う。

23年ドラフト予想☆楽天~前半の不振が響き2年連続のBクラス…来季に繋がる若手の成長が収穫

 一昨年、昨年と2年連続で後半に失速し、特に昨年は歴史的な大失速でBクラスに沈んだ。今季は前半から苦戦し、4~6月は3度の5連敗もあり最下位に低迷…。主力の高齢化が懸念されるなか、誰もが今シーズンは終わりかと思った。

 ただ今年は一味違い、若手選手の積極登用と台頭に加え、主力が徐々に復調してくると、課題の夏場の7月を15勝7敗で乗り切り、最大13あった借金を完済した。最終戦までCS出場のチャンスを残したが、ロッテとの大一番に敗れ、2年連続の4位に終わり、石井監督の退任も発表された。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 70勝71敗2分④

 防御率…3.52⑥(3.47⑥)打率….244③(.243③)

 本塁打…104②(101③)盗塁102①(97②)

 得点…513②(533②)失点…556⑥(522④)

●若手ぼ台頭と主力の復調で、後半戦は快進撃もCSには一歩届かず

 チーム成績を見て分かるように完全な打高投低のチームになっており、防御率は2年連続、失点数も昨年より後退しリーグワーストになった。一方で、打線は出塁率がリーグで最も高く、四球数、犠打数、盗塁数もリーグ最多で、粘り強く出塁して手堅く、時には機動力でランナーを進め得点数を増やす理想的な形が出来つつある。

 昨年は投手力強化でオール大学生・社会人で5名の即戦力投手を獲得し、先発では荘司が5勝を上げ、渡辺翔は51試合に登板しチーム最多の25ホールドを上げ新人王候補にも挙がる活躍を見せたが、残念ながら投手陣の底上げにはまだ不十分だった。

 先発では則本昂大三重中京大~12年②)が唯一規定投球回数をクリアし8勝を上げ、岸孝之東北学院大~06年西希)と田中将大駒大苫小牧高~06年①)、ルーキーの荘司が100イニングを超え、早川とともに先発ローテーションを支えた。

 ただ、今季もリリーフ陣への負担が大きく、鈴木翔が最多の61試合に登板。松井裕樹桐光学園高~13年①)と安楽智大済美高~14年①)、内星龍(履正社高~20年⑥)にルーキー渡辺翔が50試合を超え、宋家豪と酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)などリリーフ陣がフル回転した。昨年61試合登板の西口直人(甲賀健康医療専門学校~16年⑩)は右肘の手術でシーズンを終え、育成契約を打診され来季に不安もよぎる。

 野手は浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)と辰巳、小深田が規定打席をクリアし、浅村は最多本塁打、小深田が最多盗塁のタイトルを獲得した。ただ、前半は浅村の調子が上がらず、もう一人の主砲・島内宏明(明大~11年⑥)も不調で2軍落ちした。MLBで通算130本塁打フランコ、中日から移籍の実績十分の阿部寿樹(ホンダ~15年中⑤)の新戦力も結果を残すことができなかった。

 そんななかチームを救ったのが、村林一輝(大塚高~15年⑦)と小郷裕哉(立正大~18年⑦)で、村林が1番、小郷が3番に座った夏場からチームが浮上。ようやくパ・リーグに慣れた阿部も復調、島内も復帰し役者が揃った打線が夏場から機能した。

 ここ数年、主力の顔ぶれが変わらないなか、登板を重ねるたびに頼もしさを増したルーキーの荘司と渡辺翔、内の活躍は来季に向け心強い。野手では守備・走塁要員だった村林や小郷が打撃でも結果を出しキャリアハイの成績を上げ、小深田と辰巳を中心にした若手への世代交代を印象づけたシーズンになった。

●即戦力で獲得した選手が主力に成長するも主力の高齢化で「補強」も「育成」も急務

 過去5年のドラフトの成果が見え始めており、辰巳や小深田、太田がチームの中心に成長し、今季一軍デビューの内に小郷もブレイクした。ルーキーも当たり年で荘司や渡辺翔、伊藤茉央(東農大オホーツク~22年④)もリリーフで結果を出している。

 この間、岸に浅村、鈴木大地東洋大~11年ロ③)などFAでチーム作りを進め、即戦力志向が目立つなか優勝争いを出来る戦力は揃っている。ただ、リーグ優勝から10年が経過し、これまでの路線ではリーグ優勝に届かないのも現実で、不得手ではあるが、そろそろ高校生選手を中心にした育成に本腰を入れても良いと思う。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年⑥…辰巳涼介(立命大/①・外野手)太田 光(大商大/②・捕手)

       鈴木翔天(富士大/⑧・投手)

 19年③…小深田大翔(大阪ガス/①・内野手

 20年④…早川隆久(早大/①・投手)

 21年③…なし

 22年④…荘司康誠(立大/①・投手)渡辺翔太(九産大/③・投手)

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楽天の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補の高校生、即戦力の先発投手

 捕 手…高校生

 内野手…高校生・大学生スラッガー(左打ちならベスト)

 外野手…年齢構成で大学生または大卒社会人

 これまでの即戦力志向且つ偏重ドラフトの結果、年齢構成が悪く、投手と捕手、外野手に空白の年代が多い。

 一方で主力の高齢化に備えて、即戦力の選手もカバーしなくてはならない。35歳以上の選手を挙げると、投手では岸と田中将、野手では炭谷銀仁朗龍谷大平安高~05年西①)に銀次(盛岡中央高~05年③)、鈴木大に岡島豪郎(白鷗大~11年④)とズラリと主力が並ぶ。

 さらに最多セーブの松井裕のFA移籍の可能性もあり、投手は先発・リリーフともに早急な対応が求められ、野手も今以上に若手の成長が臨まれる。主力の高齢化を放置していたわけではないが、結果として世代交代が進まず、短期的な補強をせざるを得ないドラフトに陥っており「補強」と「育成」の両立の難しさに直面している。

☆投手~将来のエース候補の高校生、即戦力の先発投手

 一昨年は岸に田中将、則本、涌井秀章(現中日)を擁し黄金のローテーションとも呼ばれたが、1年経つと高齢化が危惧される状況となっている。今後は早川と荘司が中心になるだろうが、次に続く選手が見当たらない。ファームでは松井友飛(金沢学院大~21年⑤)がエース格で奮闘しているが、次に続くのがベテランの塩見貴洋(八戸大~10年①)とバニュエロスで、ともに戦力外になり不安しかない。

 リリーフ陣は松井裕の移籍の可能性も含め強化が必要だが、昨年獲得した即戦力投手のうち荘司以外はリリーフ起用で、投手陣全体を見渡してもリリーフタイプが多く、今年は先発候補に絞って良い。

 1位候補に挙がっているのが、最速158キロの左腕の細野晴希(東洋大で、変化球も多彩でスタミナも十分。制球力に課題はあるが、それも伸びしろと言える。このほか、常廣羽也斗(青学大前田悠伍(大阪桐蔭高)も1位候補に挙がるが、さすがに1位入札で消える選手で、最後まで熟考することになるだろう。

 入札1位指名を外した際は、パワーピッチャー東松快征(享栄高)や安定感抜群の武内夏暉(国学院大)の両左腕に、ストレートと変化球のバランスが良い完成度の高い下村海翔(青学大を候補に挙げている。

 さらに上位候補では、多彩な変化球を駆使する木村優人(霞ケ浦高)西舘昂汰(専大松本凌人(名城大)はサイドハンドから153キロを投げる変則投手で、楽天にいないタイプの投手だけに指名しても面白い。

 このほか高校生では、いずれも本格派右腕の日當直喜(東海大菅生高)武内涼太(星稜高)天野京介(愛産大工高)に、地元の大内誠弥(日本ウェルネス宮城高)は190センチの長身選手。左腕では甲子園でも活躍した仁田陽翔(仙台育英高)、U-18代表の武田陸玖(山形中央高)が候補で、武内と武田は打者としても評価が高い。

 大学生では、安定感抜群の村田賢一(明大)石沢大和(東農大オホーツク)の評価が高く、真野凛風(同大)滝田一希(星槎道都大)荒木隆之介三浦克也(ともに東京国際大)は大学で急成長した選手で伸びしろにが期待できる。

 社会人では奪三振率の高い速球派の稲葉虎生(シティライト岡山)と、サイドハンドから豊富な変化球でゴロを打たせる技巧派の粂直輝(東芝が候補に挙がっている。

☆捕手~高校生

 今季は大田を正捕手に据え、ベテランの炭谷と打力が魅力の安田悠馬(愛知大~21年②)でシーズンを乗り切った。27歳の大田はこれからが全盛期を迎え、現状補強を急ぐことはないが、炭谷も来季は37歳、安田は打力を活かすならコンバートもアリで、充実しているうちに育成を進めたい。

 特に、19歳~22歳が不在なだけに高校生を指名したい。一番手は走攻守三拍子揃った堀柊那(報徳学園高)で、将来の正捕手候補の一番手になれる。ただ、堀は上位で消える可能性が高く、下位指名なら強肩でインサイドワークが良い鈴木叶(常葉菊川高)や、打力も兼ね備える萩原義輝(流通経大)を獲得したい。

内野手~高校生・大学生スラッガー(左打ちならベスト)

 レギュラーが決まっているポジションはなく、一塁は鈴木大と阿部、二塁は浅村と小深田、三塁はフランコと小深田、伊藤裕季也(立正大~18年D②)、遊撃は前半は山崎剛(国学院大~17年③)、後半は村林が起用された。

 かつては右打者不足に泣いたチームだが、近い将来左打者不足になる可能性もある。鈴木大と銀次、茂木栄五郎(早大~15年③)等かつての主力の出番が減り、振り返ると若手では黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)しかいない。また、長打を打てる選手が少なく、今季はスラッガーに特化した指名で良いと思う。

 ただ、細野と並んで1位候補だった佐々木麟太郎(花巻東)が、アメリカ留学を決めリストから外れることになった。そうなると佐々木と同じタイプで、小笠原蒼(京都翔英高)佐倉侠史朗(九州国際大高)が候補になり、小笠原はパワー、佐倉は技術も兼ね備えるスラッガーで、佐々木がいなくなったことで順位に影響するかもしれない。

 また、右の長距離砲の廣瀬隆太(慶大)も候補に挙がり、レギュラー不在の三塁候補になる。このほか遊撃守備に定評がある山田脩也(仙台育英高)伊藤瑠偉(BC新潟)もリストアップされている。

☆外野手~年齢構成で大学生または大卒社会人

 外野は辰巳がレギュラーを獲得し、小郷も成長を見せた。今季は島内の不振が想定外だったが、岡島が安定感のあるプレーで強力打線を支え、守備要員として田中和基(立大~16年③)の献身も大きかった。

 ファームでも和田恋(高知高~13年巨②)が16本塁打、正髄優弥(亜大~18年広⑥)も7本塁打を放ち、今季は出番が激減したが武藤敦貴(都城東高~19年④)も控え補強の必要はないが、年齢構成が悪く、24歳~27歳が不在で出来れば大卒社会人が欲しい。

 ただ、現役ドラフトやトレードで埋めることもでき、リストアップされている選手は少なく、西川遥輝智弁和歌山高~10年日②)の放出もあり、俊足の福島圭音(白鷗大)や投手と二刀流の田中大聖(太成学院大)が候補として挙がる。

●佐々木のアメリカ留学で、競合覚悟で細野、常廣、武内の即戦力大学生投手を熟考

 楽天のドラフトも基本はその年に一番良い(欲しい)選手に行くのが基本で、今年は大学生投手を中心に豊作ドラフトと言われ競合必至で指名してくるだろう。本来であれば細野晴希(東洋大)か佐々木麟太郎(花巻東高)の選択になると思ったが、佐々木のアメリカ留学で状況が大きく変わった。

 そうなると細野一本のような気がするが、安定感抜群の武内夏暉(国学院大)やクローザーも務められる常廣羽也斗(青学大)も当然候補になり、サプライズではないが前田悠伍(大阪桐蔭高)や東松快征(享栄高)の高校生1指名の可能性もある。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~細野晴希(東洋大・投手)       東松快征(享栄高・投手)

 2位~木村優人(霞ヶ浦高・投手)      松本凌人(名城大・投手)

 3位~小笠原蒼(京都翔英高・内野手)    萩原義輝(流通経済大・捕手)

 4位~鈴木 叶(常葉菊川高・捕手)     村田賢一(明大・投手)

 5位~稲葉虎生(シティライト岡山・投手)  福島圭音(白鷗大・外野手) 

 6位~仁田陽翔(仙台育英高・投手)     粂 直輝(東芝・投手)   

 おススメの選手は、東北に初の真紅の優勝旗をもたらせた最速150キロ左腕の仁田陽翔(仙台育英高)で、チームでは主にリリーフを務め、今夏の甲子園では調子が今ひとつだったが課題の制球力を克服できれば松井の後継も夢ではない。

23年ドラフト予想☆DeNA~優勝候補も得点力不足で3位…投打に課題が山積したドラフトになる

 投打に戦力が充実し、開幕前にMLBでサイヤング賞を獲得したバウアーの加入も決まり、優勝候補に挙げられたシーズン。開幕からまさかの4連敗を喫するも、その後は強力打線を擁し16勝3敗の驚異的な成績で4月を首位で終え、25年振りの優勝に期待が膨らんだ。ただ5月に6連敗で順位を落とすと、以降は3位が定位置になり、迎えた最終戦で勝てば2位の試合に負け、昨年から貯金は3つ増やすも順位は1つ下げた。

 個人的には今季がチームのピークだと思っていたので、来季4年目の指揮を執る三浦監督だが、チームは投打に課題が多い。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 74勝66敗3分③

 防御率…3.16③(3.48③)打率….247②(.251②)

 本塁打…105③(117③)盗塁33⑥(49⑤)

 得点…520④(497④)失点…496②(534③)

投手陣は改善を見せるも、大味な打線は変わらず…投打に若手の突き上げが不足

 打線は宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)が首位打者を獲得し、牧が最多安打打点王を獲得。このほか佐野恵太(明大~16年⑨)に桑原将志福知山成美高~11年④)、関根大気(東邦高~13年⑤)は10年目にして初の規定打席に達した。特に、前半の快進撃を支えた関根の役割は大きかった。

 ただ、思いのほか得点力が上がらず、要因は幾つかあり、1~2番が決まらず、リードオフマンタイプではない佐野が一番を務るなど苦労した。外国人選手も不振で、ソトは年々本塁打数が下がり、今季は最小の14本、オースティンは僅か22試合の出場に留まり、新加入のアンバギーは1安打でシーズンを終えた。また、遊撃定着を期待された京田陽太(日大~16年中②)も打撃不振は変わらずレギュラー獲得に至らなかった。

 チームの打撃成績を見ても、打率と本塁打はともにリーグ2位ながら昨年から数字を落とし、盗塁数はリーグ最下位。意外にも低いのが出塁率で、リーグ4位と意外に課題は多く、一発頼みの大味な打線になっている。

 今年は最終戦で巨人に0-1で負け、昨年のCSファーストステージ第3戦でも、追加点をなかなか獲れず、チャンスで併殺打3つで敗れた経験が活かされず、昨年からの課題が結局は今年も解消されていないことが表れた格好になった。

 反面、投手陣は防御率も失点数も改善し、リーグで2番目の少ない失策と相成り守り勝つ野球が出来る。エースの今永昇太(駒大~15年①)に東克樹(立命大~17年①)が規定投球回数をクリアし、東は16勝で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得した。バウアーはケガで戦列を離れるも、防御率2.76で2桁勝利を上げ、石田健大(法大~14年②)とともに先発ローテーションを守った。

 リリーフは新外国人のウェンデルケンが大活躍し、チーム最多の61試合登板で、伊勢大夢(明大~19年③)と並んで33ホールドを上げた。エスコバーと上茶谷大河(東洋大~18年①)も40試合以上を投げ、セットアッパーはハマったが、苦労したのはクローザーで、山崎康晃(亜大~14年①)は防御率4点台で7敗を喫しクローザーをはく奪され、後半からは森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)が務めた。

 ただ、野手同様に投手も若手の突き上げがなく、伊勢を除いた25歳以下で勝ち星を上げた選手は、入江の1勝のみで投打で若手が伸び悩んでいる。

●最悪、今年のローテーション投手が3名抜ける事態に…野手は主力の高齢化も課題

 直近5年のドラフトは、大貫と伊勢、牧がずば抜けた成績を残しており、成功のイメージが強いが、先述したように若手が伸び悩んでいる。

 特に、ここ最近2年は酷く支配下で11名獲得するも、一軍出場はわずかに3名で、投手では三浦銀二(法大~21年④)の7試合登板が最多で未勝利。打者は林琢真(駒大~22年③)の65試合が最多と、2年続けて高校生を1位を指名しているなか、即戦力を期待された徳山壮磨(早大~21年②)と吉野光樹(トヨタ自動車~22年②)の両投手が一軍未登板は誤算だった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年④…大貫晋一(新日鉄住金鹿島/③・投手)

 19年②…伊勢大夢(明大/③・投手)

 20年④…入江大生(明大/①・投手)牧 秀悟(中大/②・内野手

 21年⑥…なし

 22年②…なし

  ↓↓

【DeNAの補強ポイント】 

 投 手…即戦力(特に先発)将来のエース候補

 捕 手…必要なし

 内野手…大学生、社会人の即戦力、高校生ならスラッガー

 外野手…高校生・大学生は必須

 今年のドラフトは例年にない大変なドラフトになる。投手では今永のMLB移籍が濃厚で、バウアーの去就も不透明だ。さらに石田にもFA移籍の可能性もあり、今季ローテーションを支えた投手3名が、来シーズンにはいない可能性がある。

 さらに若手の伸び悩みに加え、主力が軒並み30歳を超えており、世代交代を進めたいが25歳以下で、来季ブレイクを期待できる選手が見当たらない。期待の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)は今季僅かに9試合、小園健太(市和歌山高~21年①)も、まだ焦る時ではないが、一軍未登板でファームでも苦戦している。

 今年は、FAに備えた即戦力投手の獲得とリリーフ陣の強化を優先に、伸び悩んでいる野手の補強、19歳~23歳が不在の外野手の獲得など、一度のドラフトでは解決できない課題が山積している。

☆投手~即戦力(特に先発)将来のエース候補

 先発投手は最悪、今永に石田、バウアーが抜けると、東と大貫が中心になり、濱口遥大(神奈川大~16年①)や平良拳太郎(北山高13年巨⑤)が控えるが、濵口以外はケガで離脱した期間が長く盤石とは言えない。

 リリーフはベテランの三嶋一輝(法大~12年②)も復帰し、石川達也(法大~20年育①)がキャリアハイの成績を上げて層は厚くなったが、やはりクローザーの確立が必要で、山崎康が復調すれば問題ないが、経験を擁する役割だけに森原やウェンデルケンとの競争になり、先発よりは優先度合いは高くない。

 1位候補で挙がっているのが、細野晴希(東洋大常廣羽也斗(青学大で、2人とも競合必至だが、個人的には常廣を推したい。常廣は大学日本代表ではクローザーを務める一方、今年の大学選手権決勝では先発して完封するなど、大舞台での実績も申し分なく、チーム状況に応じて先発・クローザーも任せられる。

 このほか、先発候補では地元の古謝樹(桐蔭横浜大西舘昂汰(専大などが上位候補に挙がり、安定感抜群の村田賢一(明大)奪三振能力の高い左腕の尾崎完太(法大)も評価が高い。

 また、常廣と同じく153キロサイドハンドの松本凌人(名城大)や抜群の制球力が武器の高太一(大商大)も先発・リリーフともに適性があり、富士隼人(平成国際大)は155キロのストレートで押す剛腕リリーバー。さらに、津田淳哉(大経大)伊藤岳斗(龍谷大)、社会人では高卒4年目の広沢優(JFE東日本)に経験豊富な皆川喬涼(東京ガスも候補に挙がる。

 本来であれば、前田悠伍(大阪桐蔭高)坂井陽翔(滝川二高)の高校生投手も1位指名したいところだが、来季の状況を考えると今年は大学生投手で良いと思う。

 そうなると高校生投手は下位指名になり、リストアップしている木村優人(霞ヶ浦高)日當直喜(東海大菅生高)早坂響(幕張総合高)杉原望来(京都国際高)は3位以内で消える可能性が高く、杉山遥希(横浜高)福田幸之介(履正社高)を確実に獲得したい。

 また、中央では無名ながら140キロ後半のストレートが武器の伊地知晴(旭川志嶺高)西村昂浩(白樺学園高)埋橋周平(伊那北高)は4番も務める大黒柱で、強豪ひしめく兵庫で夏の予選で28回連続無失点を記録した横山楓真(明石商高なども候補に挙がっている。 

☆捕手~必要なし

 ここ数年は、戸柱恭孝(MTT西日本~15年④))と伊藤光明徳義塾高~07年オ③)等が隔年で活躍していたが、今季一番マスクを被ったのは6年目25歳の山本祐大(BC滋賀~17年⑨)で、打つほうでも一番高打率でOPSも高く、来季は山本中心に考えて良い。

 ここにファームで経験を積んでいる松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年①)が控え、23歳の益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)に22歳の上甲凌大(四国IL愛媛~22年育①)等若手がレギュラー争いをすることでレベルアップが期待でき、今年は必要ない。

内野手~大学生、社会人の即戦力、高校生ならスラッガー

 レギュラーは一塁にソト、二塁に牧、三塁には宮崎がおり、唯一レギュラー不在の遊撃は京田とベテランの大和(樟南高~05年神④)が務めている。本来であれば森が京田とレギュラーを争う形を期待されたが、森の伸び悩みは頭が痛いところだろう。

 結果、ヤクルトから西浦直亨(法大~13年ヤ②)をトレードで獲得し、トライアウトで獲得した西巻賢二(仙台育英高~17年楽⑥)を支配下登録し、その西巻がファームの主力では心許ない。

 課題は牧以外のレギュラー陣の高齢化で、ソトと宮崎、大和が35歳を超えるなか、最も脂の乗り切った20歳後半の選手がいない。FAやトレードが一番だが、内野は即戦力と将来の中軸候補が必要で、投手との兼ね合いもあるが、どちらを優先するかで局面は大きく変わる。

 将来の中軸候補で佐々木麟太郎(花巻東高)を1位候補に挙げており、これはこれで良いと思う。生え抜きで4番を務められる選手は早々現れず、好打者の多いチームだけに佐々木自身も見習うことは多い。

 佐々木を1位指名しないのであれば、真鍋慧(広陵高)小笠原蒼(京都翔英高)も候補に挙がり、遊撃候補で横山聖哉(上田西高)田上優弥(日大藤沢高)もパンチ力のある打撃で魅力的な選手だ。

 即戦力で行くのであれば上田希由翔(明大)廣瀬隆太(慶大)が上位候補で、巧打者の上田と長距離砲の廣瀬は一塁と三塁が本職で、宮崎の後継候補にもピッタリだ。また、1~2番候補で遊撃の石上泰輝(東洋大中川拓紀(ホンダ鈴鹿も補強ポイントに合う。

☆外野手~高校生・大学生は必須

 外野は佐野と桑原、関場がおり、それこそ脂の乗り切った選手たちなので短期的に見れば補強の必要はない。控えにもベテランの大田泰示東海大相模高~08年巨①)に巧打の楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)、俊足の神里和毅(日本生命~17年②)がおり、細川成也(中日)を放出できるほど層は厚い。

 ただ、年齢構成が悪く、外野手の最年少は24歳の梶原昂希(神奈川大~21年⑥)で、下位指名でも良いので指名が必要だ。課題は年齢構成だけなので、高校生ならともに強豪校で1年生からレギュラーを獲得した西綾太(履正社高)萩宗久(横浜高)、大学生であれば、中島大輔(青学大福島圭音(白鷗大)はチームに不足している機動力アップにも貢献できる。

投手力強化が優先課題のなか、上位で有望な野手を獲得したい

 今季は既に5名の投手を戦力外にしており、投手中心の指名になりそうだ。常廣羽也斗(青学大)と細野晴希(東洋大)はSランクの投手で競合必至だが、以前のような競合を避けての単独指名ではなく、投手力強化で果敢に挑んで欲しい。

 一方、大学生投手が今年は豊富で、敢えて佐々木麟太郎(花巻東高)や上田希由翔(明大)を1位指名し、2位以下で投手指名を集中しても良いと思う。ただ、不思議なのは、社会人ナンバーワン野手の度会隆輝(ENEOS)には興味がないようで、地元出身且つ補強ポイントに合う外野手なのだが…。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~常廣羽也斗(青学大・投手)     佐々木麟太郎(花巻東高・内野手

 2位~真鍋 慧(広陵高・内野手)     高 太一(大商大・投手)

 3位~尾崎完太(法大・投手)       広沢 優(JFE東日本・投手)

 4位~小笠原蒼(京都翔英高・内野手)   村田賢一(明大・投手)

 5位~皆川喬涼(東京ガス・投手)     福田幸之介(履正社高・投手)  

 6位~伊地知晴(旭川志嶺高・投手)    埋橋周平(伊那北高・投手)

 おススメの選手は、上記のシミュレーションには入れなかったが、六大学で通算安打と打点で最多をほこるヒットメーカーの上田希由翔(明大)で、内野レギュラーの高齢化が懸念され、左打者も少ないなかチームの補強ポイントに合う。

23年ドラフト予想☆ロッテ~下位予想も一時期は首位で大健闘!常勝チーム構築に向け若手の成長が課題

 吉井理人新監督を迎えた今シーズンは、選手層の薄さに加え、開幕前から主力にケガ人が続出し前評判は高くなかった。ただ、開幕3連敗スタートながら、接戦をものにするスタイルで4月を首位で終えると、6月中旬まで首位の座をキープした。

 しかし7月末にエースの佐々木朗が離脱すると状況が暗転。今年も勝負所の夏場で失速し、最終盤の9月に主力が発熱で次々と離脱し7連敗(それまでは4連敗が最長)を喫し、最大13あった貯金が無くなり、CS出場も危うくなってしまった。一方で数字的には投打に成績は芳しくなく、ここまで良くやっているというのも正直なところだ。

【10/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 140試合 68勝67敗5分③

 防御率…3.45⑤(3.39④)打率….238④(.231⑤)

 本塁打…98⑤(97③)盗塁70⑤(132①)

 得点…480④(501①)失点…512⑤(536⑤) 

25年プロジェクト(常勝チームの構築)に向け、期待の若手の成長が課題

 昨年の週刊ベースボールの記録集計号のチーム見出しで「主力の不振でBクラスも投打で若手が台頭し、世代交代が進むシーズンに」と総括されているが、今季はその若手が今ひとつ殻を破れなかった。

 特に野手は、安田尚憲(履正社高~17年①)と山口は、ともに規定打席到達も打率は2割前半で本塁打数も昨年より下回っている。藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)は今年もレギュラーを掴めず、佐藤都も打率、本塁打ともに昨年の成績から下降した。

 逆に投手は、佐々木朗は今季もシーズンを完走できなかったが、投げれば圧倒的なパフォーマンスを見せた。右肘の手術から復帰の種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)は2桁勝利を上げ、小島も昨年の3勝から9勝(6敗)と勝ち星を積み上げた。また、リリーフの横山陸人(専大松戸高~19年④)が勝ちパターンの一角を担うまでに成長した。

 そんななかチーム編成は功を奏し、FA移籍濃厚だった田村龍弘光星学院高~12年③)が残留。巨人を戦力外になったポランコは本塁打王争いをする活躍を見せ、メルセデスも先発ローテーションを守った。新外国人のペルドモは最多ホールド、トレードで獲得した西村天裕(NTT東日本~17年日②)はキャリアハイの成績を上げ、打撃強化でシーズン途中に加入した石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)も勝利に貢献した。

 一方で、主力がケガで十分に揃うことがなく、開幕投手に指名されていた石川歩(東京ガス~13年①)、さらに二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)も一軍未登板に終わった。野手は、荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が前半不在、昨年盗塁王の高部もケガで一軍出場が無かった。

 数字を見ると、打線は打率と長打率は高くないが、四死球数が多く出塁率オリックスと遜色ない。盗塁数は高部の不在で半減するも、犠打が多く併殺打はリーグ最少ながら、完封負けはリーグ最多の17を数え得点能力に課題がある。

 一方で投手陣は前半の好調が一転し、リーグ5位まで下降した。打線に課題があるように思えるが、来季に向け最大の課題は投手陣の整備と言える。加えて今年は失策数がリーグ5位とが多く、特に夏場から急増し痛いところで無駄な失点に結びついている。

 ロッテは全員が「束」になって戦うのがチームカラーだが、優勝を狙うにはやはり「個」の力が必要で、来季に向け、一人でも多く若手の覚醒が必要になる。

●高校生か、即戦力大学生か、25年に向け何が必要なのかを考えるドラフト

 ここ5年のドラフトは結果が今一つ出ておらず、小島以外は発展途上の選手が多い。ここ数年は高校生野手を積極的に指名し、スケール感のあるチームづくりを目指していただけに、ファンならずとも見ていて歯がゆさを感じる。

 ただ、期待の高卒選手がなかなか一人立ちできない状況に我慢できなかったのか、直近は鈴木昭汰(法大~20年①)や菊地吏玖(専大~22年①)の大学生投手を1位指名したが、お世辞にも1位クラスの活躍とは言えず、ただ単純にスケール感だけが乏しくなってしまった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年⑤…小島和哉(早大/③・投手)山口航輝(明桜高/④・外野手)

 19年④…佐々木朗希(大船渡高/①・投手)佐藤都志也(東洋大/②・捕手)

       高部瑛斗(国士館大/③・外野手)

 20年②…なし

 21年②…なし

 22年⑤…友杉篤輝(天理大/②・内野手

  ↓↓

【ロッテの補強ポイント】 

 投 手…大学生左腕(先発・リリーフ)ポスト益田のクローザー候補

 捕 手…大学生捕手

 内野手…ポスト中村奨の大学生、高校生スラッガー

 外野手…年齢構成で高校生 

 優先順位は投手陣の強化で、年齢構成は悪くなく、左右のバランスで大学生の左投手が欲しい。また、先発なら美馬学東京ガス~10年楽②)と石川歩、リリーフでは益田直也関西国際大~11年④)に澤村拓一(中大~10年巨①)が35歳を超え、世代交代を急ぐ必要がある。

 野手は19歳~22歳が少ないが、勝又琉偉(富士宮東高~22年育③)が今季ファームで最多の打席数をこなすなど、年齢構成に縛られることはない。高校生であれば将来の中軸候補、即戦力なら打撃優先で強化していきたい。

 個人的には今回のドラフトは、来シーズン期待の若手が成長することを前提に、短期的な結果を求めて安易な即戦力志向に走るのではなく、育成を重点に進めるべきだと思う。一方で選手層の薄さは否めず、本気で優勝を狙うのあれば、FAやトレード、現役ドラフトなど積極的に仕掛け欲しい。

☆投手~大学生左腕(先発・リリーフ)ポスト益田のクローザー候補

 先発はエースに成長した佐々木朗を中心に、奪三振のタイトル争いを演じた種市に技巧派左腕の小島と柱が出来つつある。ここにベテランの西野勇士(新湊高~08年育⑤)や美馬に加え、メルセデスやカスティーヨも機能した。

 ただ、若手の突き上げがなく、中森俊介(明石商高~20年②)や森遼大朗(都城商高~17年育②)がチャンスを与えられたが結果を出すことができず、石川歩や二木、小野郁(西日本短大付~14年楽②)等の不在を埋めることが出来なかった。

 リリーフは益田がリーグ2位のセーブ数を記録し、最多ホールドのペルドモを中心に、西村と坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)、成長株の横山がキャリアハイの成績を上げホールドポイントはリーグ最多を数える。さらに東妻勇輔(日体大~18年②)と岩下大輝(星稜高~14年③)も復帰し、終盤は澤田圭佑(立大~16年オ⑧)がリリーフ陣に加わった。この布陣に澤村や小野、東條大樹(JR東日本~14年④)が復帰すれば益々層は厚くなる。

 1位候補では細野晴希(東洋大前田悠伍(大阪桐蔭高)の両左腕が挙がる。細野は制球力が課題も最速156キロの豪速球投手で、先発左腕と年齢構成の2つの課題を埋めることが出来る。前田は将来のエース候補として、チームをもう一段スケールアップさせる。

 細野と前田を外しても、左のパワーピッチャー東松快征(享栄高)に、ともに150キロを超える本格派の下村海翔(青学大上田大河(大商大)岩井俊介(名城大)も上位候補で、岩井は抑えにも適性がありポスト益田のクローザー候補になれる。また、中岡大河(富士大)皆川喬涼(東京ガスの評価も高く、細野以外の大学生左腕では石沢大和(東農大オホーツク)もリストアップしている。

 高校生では木村優人(霞ヶ浦高)早坂響(幕張総合高)、左腕の杉原望来(京都国際高)が上位候補に挙がり、地元の早坂は是が非とも獲得したい。

 このほか中央では無名ながら、清水麻成(樹徳高)星野空(高崎商大高)宮國凌空(東邦高)中山勝暁(高田高)野川新(綾羽高)河内康介(聖カタリナ高)はいずれもストレートが140キロ後半の本格派右腕で、早坂と清水は高校から本格的に投手を始めた選手で伸びしろに期待できる。

 左腕では、U-18代表で野手としての評価も高い武田陸玖(山形中央高)や今夏の甲子園で注目を浴びた福田幸之介(履正社高)も候補に挙がる。

☆捕手~大学生捕手

 今季は田村と佐藤都が主戦で、種市専属で柿沼友哉(日大国際関係学部~15年育②)の3名でシーズンを回した。改めて田村の残留が大きく、来季はファームで経験を積んだ松川虎生(市和歌山高~21年①)出番も増えそうで、緊急を擁する状況ではない。

 ただ、年齢構成で20歳の松川の上が25歳の佐藤都で、大学生で空白を埋めたい。 指名は上位にはならないので、3位以降であれば強肩強打の萩原義輝(流通経大)や打撃面でも成長を見せている有馬諒(関大)も面白い。

内野手~ポスト中村奨の大学生、高校生スラッガー

 今季は一塁に山口、二塁の中村奨吾(早大~14年①)、三塁の安田がそれぞれ規定打席に達するも満足のいく成績ではなかった。そんななか、この間の課題だった遊撃は藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)が復調し、ルーキー友杉との併用で目途が立った。

 茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)は内野の全ポジションを守り、しぶとい打撃で今季は4番も経験するなどユーティリティプレーヤーの地位を確立し、2年目の池田来翔(国士館大~21年②)もポスト中村奨の一番手として一軍で十分に通用する力を見せた。また、ファームでは金田優太(浦和学院高~22年⑤)に育成の勝又がチーム1,2の試合数をこなし、数年後の主力になる可能性を秘めている。

 補強ポイントは年齢構成からも大学生で、茶谷や池田以外に中村奨を脅かす選手が欲しい。廣瀬隆太(慶大)はリーグ通算18本塁打の長打力が魅力で、本職ではない二塁も無難にこなし、辻本倫太郎(仙台大)は守備だけで飯を食っていける選手だ。

 高校生を獲得するならスラッガーに絞って良く、1位候補として佐々木麟太郎(花巻東高)の名前も挙がる。主戦になるには時間がかかるが、数年後に安田や山口、佐々木麟のクリーンアップ実現すればスケールの大きいチームになる。このほか、真鍋慧(広陵高)高野颯太(三刀屋高)も期待の長距離砲だ。

 ☆外野手~年齢構成で高校生  

 外野はケガ人が続出し、今季は起用に苦慮したが、藤原と高部がレギュラーを奪取し、打撃の調子を上げている和田康士朗(BC富山~17年育①)など期待感は大きい。ここに荻野貴や角中勝也(四国IL高知~06年⑦)、岡大海(明大~13年日③)に石川慎になど頼りになるベテランも控え層は厚い。

 戦力的には指名を急ぐ必要はないが、外野手2名が戦力外でチームを去るので指名するのであれば年齢構成で高校生で良い。先述した高野は外野も守れ、明瀬諒介(鹿児島城西高)は高校通算49本塁打スラッガー。広角に打てる平田大樹(瀬田工高)は俊足で下位や育成指名でも良いと思う。

投手力強化で上位・下位とも投手中心のドラフト。1位で野手指名のサプライズも

 3連覇のオリックスとの差は、今季で言えば投手力とチャンスに1本の出ない打線だが、野手は若手の覚醒に期待しつつ、投手力強化を図りたい。実際に支配下5選手が戦力外通告を受けたが、内訳は投手3名に外野手2名で、投手力強化が課題となる。

 この間指名した大学生1位指名投手がパっとしないが、細野晴希(東洋大)は格が違う。一方で敢えて前田悠伍(大阪桐蔭高)を1位指名し、2位以下で豊富な大学生投手を獲得するのもアリだ。野手なら競合覚悟で佐々木麟太郎(花巻東高)、他球団からの評価急上昇中の廣瀬隆太(慶大)の1位指名もあるかもしれない。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~細野晴希(東洋大・投手)     前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)

 2位~廣瀬隆太(慶大・内野手)     上田大河(大商大・投手)

 3位~杉原望来(京都国際高・投手)   早坂 響(幕張総合高・投手)

 4位~中岡大河(富士大・投手)     萩原義輝(流通経大・捕手)

 5位~中山勝暁(高田高・投手)     石沢大和(東農大オホーツク・投手)  

 6位~平田大樹(瀬田工高・外野手)   高野颯太(三刀屋高・内野手

 おススメの選手は、地元の早坂響(幕張総合高・投手)で、入学時は捕手だった選手が、投手歴1年で最速151キロのドラフト候補になった。肩も消耗しておらず、これから投手のノウハウを吸収すれば、数年後に大化けする可能性を秘めている。

23年ドラフト予想☆巨人~今季も投手陣が不振…大味な打線で2年連続Bクラス確定。バッテリー強化が最優先課題

 シーズン前から優勝を狙うには戦力を不安視する声が多かったが、不安は的中し、優勝した阪神には借金12で独走を許す要因となった。チームとしては05~06年以来2度目の2年連続のBクラスになり、同一監督となると初めてのことで、歴代最長を更新し、今季で17年目の指揮を執る原監督にとって不名誉な記録が残った。

 かつて逆指名やFAでチームを強化してきたが、最近は他球団の選手からのFA人気も今一つで、思うように意中の選手を獲得できていない。常に優勝を求められるチームは「大型補強」と「育成と発掘」の間で過渡期を迎えている。

【9/29現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 139試合 68勝69敗2分④

 防御率…3.47⑤(3.69⑥)打率….253①(.242⑥)

 本塁打…163①(163②)盗塁47④(64③)

 得点…517③(548③)失点…504⑤(589⑥)

一発頼みの大味な打線は今年も変わらず、投手は先発・リリーフともに層が薄い

 チーム成績を見ても典型的な打高投低のチームだが、得点数は阪神とヤクルトよりも低く、意外に得点能力は高くない。打率と本塁打数は1位で、長打率も12球団で唯一4割を超えているが、一発頼みの大味な打線は変わっておらず、出塁率はリーグ3位、盗塁数は4位と、チャンスに弱い云々の前に、この辺りに原因がありそうだ。

 投手陣は今年も厳しく、先発は戸郷が孤軍奮闘し12勝を上げ、山崎も9勝を上げ頭角を現してきたが、次に続くのが横川凱(大阪桐蔭高~18年④)や新外国人のグリフィンと計算できる投手が少ない。先発以上に厳しかったのはリリーフ陣で、クローザーの大勢がケガで離脱すると、代わりになる選手がおらず、チームの総セーブ数はリーグ最少の29と勝ちパターンを確立することが出来なかった。

 発掘と育成の方針を掲げながら、どういうチームにしたいか、編成からその方針が窺えない。昨年オフには、大量12人の選手を支配下から育成にし、そのなかにはリリーフエースの中川晧太(東海大~15年⑦)や、前年に53試合登板でフル回転した平内龍太(亜大~20年①)、FA加入の梶谷隆幸(開星高~06年横③)などケガで離脱した主力選手も含まれ、高木京介国学院大~11年④)に至っては、34歳のベテランながら3度目の育成契約である。

 結局、12名中9名がシーズン中に支配下登録されたが、新たに支配下登録されたのはDeNAを戦力外になった三上朋也(JX-ENEOS~13年D④)とルーキーの松井颯(明星大~22年育①)だけで、果たして意味があったのだろうか疑問だ。

 また、右打ちのベテラン野手で中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)がいるなか、長野久義(ホンダ~09年①)が広島から復帰し、さらにソフトバンクを戦力外になった松田宣浩(亜大~05年ソ希)まで獲得している。確かに彼らベテランから若手が学ぶことは多いが、コーチ的な役割も期待するなら、コーチに任せたほうが良く、実際に中島と松田は今季20打席にも満たず、松田は引退を決断した。

 外国人選手も不発で、6人の新外国人選手を獲得するも、戦力になったのはグリフィンとビーディ、途中加入のバルドナードの3投手くらいで、ブリンソンは凡ミス連発で悪目立ちし、残留したウォーカーは成績を落とし、放出したポランコが移籍したロッテで本塁打王を争っており明暗が別れてしまった。

投手陣強化が最優先だが、課題が多く難しいドラフトになる

 ただ、悪い話ばかりではなく、過去5年のドラフトで獲得した選手が着実に主力に成長しているのは評価できる。戸郷と大勢が投手陣の柱となり、先発では山崎に赤星優志(日大~21年③)、横川が結果を残し、リリーフでは平内が復帰し、ルーキーの田中千と船迫も多くの経験を積んだシーズンになった。

 野手では秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)がブレイクし、ルーキーの門脇は、長年坂本勇人光星学院高~06年①)の聖域だった遊撃のポジションを奪う活躍を見せており、波に乗れなかったチーム状況のなか、来季に向け光は間違いなく差している。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年③…戸郷翔征(聖心ウルスラ高/⑥・投手)

 19年①…なし

 20年①…山崎伊織(東海大/②・投手)

 21年③…大勢(関西国際大/①・投手)菊池大稀(桐蔭横浜大/育⑥・投手)

 22年④…田中千晴(国学院大/③・投手)門脇 誠(創価大/④・内野手

       船迫大雅(西濃運輸/⑤・投手)

  ↓↓

【巨人の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補、即戦力先発左腕とリリーフ

 捕 手…高校生と即戦力捕手

 内野手…将来の中軸候補(高校生)と大卒社会人(リードオフマン

 外野手…大学生または社会人 

 今年のドラフトの最大テーマは投手陣の強化で、極論で言えば、指名選手全員が投手でも良いくらいだ。ただ、投手以外にも課題は多く、捕手は現状支配下選手は僅かに5名で、質量ともに不十分で即戦力と年齢バランスで高校生も必要だ。年齢構成で言えば、投手は高校生、内野手は大卒社会人、外野手は大学生が必要になる。

 話を戻して、内外野では出塁率が高く、足のあるリードオフマンが欲しい。数字を見て分かるように主力やファームでも長打力のある選手が多く、阪神の近本・中野のような1・2番がいれば、文字通りクリーンアップが活きてくる。

 また、投打にベテランが多く世代交代に迫られ、岡本和真(智弁学園高~14年①)のMLB移籍の可能性もあるなか、「急がば回れ」ではないが、優勝が至上命題のなか、長期的視点でどこまで我慢できるかが、今後のポイントになる。

☆投手~将来のエース候補、即戦力先発左腕とリリーフ

 最大の課題は投手力で、先発で計算できるのは戸郷と山崎しかおらず、赤星や横川の成長はプラスだが、中堅の高橋優貴(八戸学院大~18年①)やベテランの菅野智之東海大~12年①)も今ひとつ精彩に欠ける。

 リリーフも層が薄く、2年目の菊地が大きく成長したが、大勢や鍵谷陽平(中大~12年日③)が戦列を離れ、相変わらず中川や高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)頼みで、故障明けの中川などは、登板過多にならないか観ていて心配になってしまう。

 今年は上位で質量ともに豊富な大学生投手を獲得したい。1位候補では細野晴希(東洋大武内夏暉(国学院大)の両左腕に、常広羽也斗(青学大の名前が挙がる。ただ、細野はポテンシャルは一級品だが制球力に課題があり、安定感のある常広と武内のほうがチームにフィットする。

 このほか、即戦力の先発候補では、西舘昂汰(専大草加勝(亜大)村田賢一(明大)上田大河(大商大)は安定感抜群で、古謝樹(桐蔭横浜大尾崎完太(法大)の両左腕の評価も高い。特に古謝は、状況次第では1位指名もある逸材だ。

 リリーフでは、パワーピッチャーの富士隼人(平成国際大)や制球力に長けた左腕の高太一(大商大)も上位候補に名前が挙がり、素材型の真野凛風(同大)田中太聖(太成学院大)も面白い。社会人では最速154キロの稲葉虎大(シティライト岡山)奪三振能力が高く、皆川喬涼(東京ガス広沢優(JFE東日本)もリストアップしている。

 高校生投手では、前田悠伍(大阪桐蔭高)東松快征(享栄高)坂井陽翔(滝川二高)が上位候補に挙がるが、1~2位で消える選手で獲得は難しい。

 中位以降であれば、大型右腕於日當直喜(東海大菅生高)や篠崎国忠(修徳高)藤原大翔(飯塚高)に、早坂響(幕張総合高)は投手歴1年で150キロを超える素材型で、武内涼太(星稜高)天野京介(愛産大工高)も大化けの可能性が高い。左腕では武田陸玖(山形中央高)杉原望来(京都国際高)が上位候補で、杉山遥希(横浜高)は指名を明言しており、武内と武田は野手としての評価も高い。 

☆捕手~高校生と即戦力捕手

 捕手は投手同様、補強の優先度合いが高い。レギュラーの大城卓三(NTT西日本~17年③)は、打撃は申し分ないが、課題のリード面が相変わらず指摘され、逆にリードに定評のある小林誠司日本生命~13年①)は打てなさすぎる。岸田行倫(大阪ガス~17年②)も第3の捕手を卒業できないまま、6年目のシーズンが終わろうとしている。

 即戦力捕手では、世代トップの進藤勇也(上武大)は他球団も高評価している上位候補で、間違いなく1位で消える選手で、下位指名ならばともに打力もある有馬諒(関大)久保田拓真(パナソニックを狙いたい。

 支配下選手の最年少が22歳の山瀬慎之介(星稜高~19年⑤)で、育成でも支配下を狙える選手が見当たらなく、年齢バランスで高校生も必要だ。高校生ナンバーワン捕手の堀柊那(報徳学園高)に、鈴木叶(常葉菊川高)藤田柊太郎(福岡大大濠高)のいずれかを確実に獲得したい。

内野手~将来の中軸候補(高校生)と大卒社会人(リードオフマン

 内野は主砲の岡本が一塁と三塁の併用で、二塁の吉川尚輝(中京学院大~16年①)と門脇の遊撃は堅守の二遊間になった。また、坂本が三塁での出番を増やし、中田翔大阪桐蔭高~07年日①)や秋広の併用で、内野陣の大きな課題はない。

 中田と坂本が35歳を超えるが、岡本と吉川はまさに今が全盛期で、秋広と門脇、中山礼都(中京大中京高~20年③)の若手がレギュラー候補として結果も残している。ファームでも菊田拡和(常総学院高~19年③)が成長しており、内野は補強を急ぐ必要はない。将来の中軸候補として、真鍋慧(広陵高)佐倉侠史朗(九州国際大高)仲田侑仁(沖縄尚学高)が候補に挙がる。

☆外野手~大学生または社会人

 外野手は、昨年の浅野翔吾(高松商高~22年①)の獲得が本当に大きかった。年齢と左右の構成、将来のスター候補でありリードオフマン候補と一気に課題を解消した。

 今季は丸佳浩(千葉経大高~07年広③)が不振で、新外国人のブリンソンも安定感を欠くなか、ベテラン梶谷や長野、若手の秋広でやり繰りした。ただ、丸と梶谷が35歳を超え、長野も40歳になり、内野とは逆に世代交代が遅れている。浅野やファームで主力の岡田悠希(法大~21年⑤)や萩尾匡哉(慶大~22年②)に期待したい。

 上位候補として挙がるのが度会隆輝(ENEOS)で、広角に打てる中距離打者としてポスト丸にはピッタリだ、高卒3年目の左打ちと、年齢と左右のバランスを一気に埋めることができる。俊足巧打の福島圭音(白鷗大)宮崎一樹(山梨学院大も補強ポイントに合っている。

 最後に内外野通じて、大卒の社会人選手が欲しい。内外野ともに25~26歳が不在なのも理由だが、社会人出身選手は献身的なプレーでチームを支え、若手も含め中軸候補が多く、中川拓紀(ホンダ鈴鹿のような1~2番を打てる足のある選手が欲しい。

●即戦力投手を確実に獲得したい。今年はバッテリー強化のドラフト

 先述したが、今年は投手と捕手のバッテリー中心のドラフトになって良い。歴史的にも結果を求められるチームだけに、安定感のある常広羽也斗(青学大)か武内夏暉(国学院大)を確実に1位で獲得したい。先発とリリーフ、年齢と左右のバランスを意識したドラフトにしたい。

 一方で、今年は大学生を中心に即戦力投手が豊富で、2~3位でも1位クラスと遜色ない選手を獲得できる。進藤勇也(上武大)や度会隆輝(ENEOS)の野手の1位指名は決してサプライズではなく、補強ポイントをしっかり抑えた指名になる。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~常広羽也斗(青学大・投手)    武内夏暉(国学院大・投手)

 2位~高 太一(大商大・投手)     堀 柊那(報徳学園高・捕手)

 3位~有馬 諒(関大・捕手)      広澤 優(JFE東日本・投手)

 4位~杉山遥希(横浜高・投手)     武田陸玖(山形中央高・投手)

 5位~稲葉虎大(シティライト岡山・投手)田中大聖(太成学院大・投手/外野手)  

 6位~藤田柊太郎(福岡大大濠高・捕手) 久保田拓真(パナソニック・捕手)

 おススメの選手は、近畿学生2部の二刀流・田中大聖(大成学院大)で、投手では最速153キロを超えるストレートを武器にし、打ってはパワーとスピードを兼ね備えた左打ちで、ポスト丸にもピッタリで指名後に適性を見極めて良いと思う。

23年ドラフト予想☆西武~打線は低迷も、先発10勝カルテットの可能性もあり、来季に向け伸びしろは十分

 在任6年で5度のAクラス、2度のリーグ優勝を果たした辻発彦監督が勇退し、満を持してファン期待の松井稼頭央新監督を迎えたシーズンだったが、残念ながら2年振りのBクラスが濃厚になってきた。

 連覇した18~19年に「山賊打線」と称された強力打線は見る影を無くし、反面、昨年はチーム防御率1位、今季もオリックスに次ぐ2位と投手力中心のチームに変身した。今季は盗塁王を獲得した松井監督らしく「走魂」をスローガンに、アグレッシブに機動力を重視した野球を目指したが、その形になるにはまだ時間がかかりそうだ。

【9/19現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 128試合 59勝71敗1分⑤

 防御率…2.95②(2.75①)打率….235⑤(.229⑥)

 本塁打…82⑥(118①)盗塁70②(60⑥)

 得点…396⑥(464⑤)失点…434②(448①)

●かつての山賊打線が影を潜め、投手力中心のチームに変貌

 今季はスタートから主力を欠き、WBCで源田壮亮トヨタ自動車~16年③)が骨折で離脱し、山川穂高(冨士大~13年②)は調整不足で開幕に間に合わなかった。ただ、3~4月はまずまずのスターを切り、首位から1ゲーム差に付け、山川も復帰し「さぁこれから」というときに、その山川が5月にトラブルでチームを離脱。それがすべての要因だとは思えないが、結果チームの連敗が続き、僅か1ケ月で首位から8.5ゲームまで差が拡がった。

 今年の低迷の要因は打線に尽きる。チーム打率は日本ハムと最下位争いをし、出塁率長打率もリーグ最下位となると、当然のことながら得点数もリーグワーストで、未だに400点を超えていないのは西武と中日だけで、とにかく打てない。

 特に、昨年41本塁打本塁打王に輝いた山川の離脱はそのまま本塁打数に影響し、昨年リーグ1位の本塁打数が最下位に急落した。トラブルの中身が中身なだけに謹慎は当然の判断だとは思うが、山川の離脱は大きな誤算だった。

 ただ、責任を山川にだけに押し付けるのはフェアではない。課題だった外野のレギュラー不在も結局今年も決まらず、昨年オフにFAで正捕手の森友哉オリックスへ移籍したが、補強は十分とは言えなかった。

 森の移籍は早い段階で予測できたことで、打つほうは外国人選手で補強もできるが、捕手については補強に動く様子も無く、育成から強肩の古市尊(四国IL徳島~21年育①)を支配下にしたが経験不足は否めず、結果として4年目の柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)や古市と同じ2年目の古賀の若い捕手を起用せざるを得なかった。

 また、昨年オフにはSNSトラブルでムードメーカーの山田遥楓も日本ハムへトレードで放出した。傍から見ても西武はこの間選手のトラブルが多く、選手個々の行動が基本なのだが、チーム全体で要因を掘り下げ、再発防止に向けてコンプライアンスへの取り組みを高める必要がある。

 結果、源田と外崎修汰(冨士大~14年③)、大ベテランの中村剛也大阪桐蔭高~01年②)と栗山巧(育英高~01年④)等かつての山賊メンバーに頼る状況は変わっていない。昨年、本塁打はリーグ1位も、チーム打率と盗塁数はリーグ最下位で、典型的な一発打線を改善したい松井監督の思いは分かるが、攻撃陣の底上げは進まなかった。

オフ恒例?のFA移籍も、ドラフトで主力選手を獲得し戦力をキープ

 西武のドラフトは悪くない。西武は12球団で最も多い20人の選手がFAで移籍し、直近5年間で18年に浅村栄斗(楽天)と炭谷銀仁朗(巨人→楽天)、19年に秋山翔吾(レッズ→広島)、そして昨年の森が移籍しても、チーム力を維持できているのはドラフトが上手く機能しているからだ。

 ただ、投手は高橋光成前橋育英高~14年①)や今井達也(作新学院高~16年①)を始め、松本や隅田など1位指名の選手が主戦に成長しているが、野手は源田を最後にレギュラーが生まれておらず、攻撃陣の低迷に直結している。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年①…松本 航(日体大/①・投手)森脇亮介(セガサミー/⑥・投手)

 19年①…宮川 哲(東芝/①・投手)

 20年③…水上由伸(四国学院大/育成⑤・投手)

 21年⑥…隅田知一郎(西日本工大/①・投手)佐藤隼輔(筑波大/②・投手)

       古賀悠斗(中大/③・捕手)

 22年③…蛭間拓哉(早大/①・外野手)青山美夏人(亜大/④・投手)

  ↓↓

【西武の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補(左右)、即戦力リリーフ

 捕 手…打てる即戦力捕手

 内野手…将来の中軸候補 

 外野手…将来の中軸候補、右打ちの大学生、出塁率の高いリードオフマン

 西武のドラフトで良いところは、年齢と投打ともに左右のバランスも取れており、空白の年代等を埋める必要がなく、今季も良い意味でシンプルに補強ポイント(短期的)と将来性(長期的)に絞って臨める。

 短期的な補強では、やはり野手の補強が重点になる。一年遅れだが森の代わりになる捕手や固定できない一番打者、山川移籍の可能性もあり長打力のある打者も必要だ。また、高橋光はMLB移籍、平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)もFA移籍の可能性を含んでおり、先発・リリーフともに即戦力の必要性も出てくる。

 高校生では、内外野ともに将来性のあるスラッガーを獲得して良い。投手は伸びしろのある大学生も含めて、ストレートの球速や決め球となる変化球など、ストロングポイントを持っている選手の獲得に期待したい。

☆投手~将来のエース候補(左右)、即戦力リリーフ

 貧打の攻撃陣とは対象に、投手陣は素晴らしく、エースの高橋光と今季から先発転向の平良海馬(八重山商工高~17年④)がともに規定投球回数をクリアし、今井も10勝に到達し、2年目の隅田も9勝を上げ、5位ながら2桁勝利カルテットが誕生しそうな気配だ。さらに今年は勝ち星が伸びていないが、松本と與座海人(岐阜経大~17年⑤)もローテーションを守っている。

 ファームでも宮川や浜屋将太(三菱日立PS~19年②)が好投しており、渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)や黒田将矢(八戸工大一高~21年⑤)、育成の菅井信也(山本学園高~21年育③)など楽しみな若手も控える。

 一方で昨年は鉄壁を誇っていたリリーフ陣は不安が残る。平良が先発へ転向したあと、平井や佐藤隼、ルーキーの青山が奮闘しているが、クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)が不振で戦列を離れ、期待されていた森脇や水上も十分に穴を埋められていない。

 今年は先発投手なら高校生、即戦力投手はリリーフ候補で良い。上位候補は大学生では武内夏暉(国学院大)草加勝(亜大)富士隼人(平成国際大)で、武内と草加は安定感抜群の先発タイプだが、冨士は最速155キロのパワーピッチャーでリリーフの適性があり補強ポイントに合う。

 このほか、真野凛風(同大)谷脇弘起(立命大)といった素質型の大学生への評価も高く、特に真野は天理高時代は軟式野球部に所属して、硬式に転向して4年でドラフト候補になるのだから伸びしろは十分だ。

 リリーフの即戦力で絞ると、石原勇輝(明大)は緩急で打者を打ち取る左腕、サイドから最速153キロの速球を投げ込む松本凌人(名城大)は平井を彷彿させる。社会人投手では、稲葉虎大(シティライト岡山)奪三振率が高く、粂直輝(東芝は打たせて取る技巧派でリリーフの適性もある。

 高校生では、世代ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)も上位候補に、身長190センチを超える大型右腕の日當直喜(東海大菅生高)や今夏の故障が懸念材料だが、高いポテンシャルが評価されている平野大地(専大松戸高)も候補に挙がっている。 

☆捕手~打てる即戦力捕手

 捕手は年齢バランスも悪くないが、支配下登録7名中で古賀と柘植、古市以外に一軍経験があるのは岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)だけで、数的にも少ない。また、打力に課題があるチームだけに打てる即戦力捕手は喉から手が出るほど欲しい。

 当然、上位候補で進藤勇也(上武大)の名前が挙げるが、進藤はどちらかと言うと守備型の選手で、打力優先なら萩原義輝(流通経大)久保田拓真(パナソニックは補強ポイントに合う。

 高校生は総合力に勝る堀柊那(報徳学園高)や打力のある寺地隆成(明徳義塾高)新妻恭介(浜松開誠館高)を下位で狙っても良いと思う。

内野手~将来の中軸候補

 内野は二塁の外崎修汰(富士大~14年③)と遊撃の源田が強固な二遊間を形成している。不動の正一塁手の山川が離脱した後は、新外国人のマキノンが好守備を見せ、渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)もようやく台頭の兆しが見せた。

 レギュラー不在だった三塁も、日本ハムから出戻りの佐藤龍世(富士大~18年⑦)がキャリアハイの成績を残し、後半はレギュラーとして出番を増やしている。ここに打棒衰え知らずの中村に、内野ならどこでも守れる呉念庭第一工大~15年⑦)に平沼翔太(敦賀気比高~15年日④)、ルーキーの児玉亮涼(大阪ガス~22年⑥)が控える。

 補強の優先順位としては高くはないが、主力が元気なうちに将来の中軸候補を育成したい。意中の選手は佐々木麟太郎(花巻東高)で、中村や山川の大型の選手育成で結果を残しているだけに、4番候補としてファンの期待も高まる。佐々木を仮に外しても、次も真鍋慧(広陵高)を狙いにいって良いと思う。

 また、同じ中軸候補で百崎蒼生(東海大熊本星翔高)への評価も高く、森田大翔(履正社高)や地元の小野勝利(花咲徳栄高)も魅力のあるスラッガーだ。

 大学生でも長打力が売りの廣瀬隆太(慶大)は本職が二塁で外崎の後継候補にピッタリな選手。無名ながら村田怜音(皇學館大)も、大化けが期待できるスラッガーで個人的には西武に入れば面白いと思う。

☆外野手~将来の中軸候補、右打ちの大学生、出塁率の高いリードオフマン 

 今年も外野はレギュラー不在で、最も出番が多いのが66試合の愛斗(花咲徳栄高~15年④)で、鈴木将平(静岡高~16年④)に長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)、岸潤一郎(四国IL徳島~19年⑧)、ルーキーの蛭間と新外国人のペイトンという布陣で、タレントは揃っているがレギュラーを勝ち取る選手が出てこない。

 外野の課題は多く、右打ちの選手が不足しており、欲を言えば大学生の右打ちが欲しい。勝負強い打撃の桃谷惟吹(立命大)や俊足の宮崎一樹(山梨学院大は補強ポイントに合う。また、次に欲しいのが出塁率の高い即戦力のリードオフマンで、中島大輔(青学大や長打力もある山内慧(JR東日本が候補になる。

 最後に将来の中軸候補だが、ここは昨年、古川雄大佐伯鶴城高~22年②)を獲得しており、佐々木や真鍋を外したときに必要になってくる。高野颯太(三刀屋高)や投手でも評価の高い武田陸玖(山形中央高)は下位で指名できる可能性が高い。

●将来の中軸候補で佐々木麟の育成に自信アリ!2年連続で野手1位指名が濃厚

 打力が課題のチームだけに、1位指名は2年続けて野手の指名が予想され、将来の主軸候補として佐々木倫太郎(花巻東高)が最有力候補になる。ただ、現段階で佐々木はプロ志望を表明しておらず、進学または抽選で外した場合は、即戦力捕手の進藤勇也(上武大)や真鍋慧(広陵高)が1位候補になる。

 ただ、一方で西武はオリックスと同じく投手が野手より7名も少なく、投手の指名を多くする必要もある。即戦力左腕の武内夏暉(国学院大)や、高校ナンバーワン投手の前田悠伍(大阪桐蔭高)にシフトすることもあり得る。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~佐々木麟太郎(花巻東高・内野手)   進藤勇也(上武大・捕手)

 2位~冨士隼人(平成国際大・投手)     真鍋 慧(広陵高・内野手

 3位~百崎蒼生(東海大熊本星翔高・内野手) 草加 勝(亜大・投手)

 4位~日當直喜(東海大菅生高・投手)    真野凛風(同大・投手)

 5位~谷脇弘起(立命大・投手)       平野大地(専大松戸高・投手)

 6位~久保田拓真(パナソニック・捕手)   桃谷惟吹(立命大・外野手)      

 おススメの選手は、今夏の甲子園でも活躍した百崎蒼生(東海大熊本星翔高)で、アグレッシブなプレースタイルはチームにフィットすると思う。同じ右打ちで外崎、守備では源田という手本がいるだけに、将来の遊撃手候補として獲得したい。

23年ドラフト予想☆ヤクルト~大型連敗が続きBクラス転落…来季に向け投打に課題が多い

 オリックスとともにリーグ3連覇を狙ったシーズンは明暗が別れ、まさか首位阪神から28.5ゲーム(9/10現在)も離されるとは誰も想像しなかっただろう。

 昨年は7月にプロ野球史上最速でマジックを点灯させ、村上宗隆(九州学院高~17年①)の日本人最多の56本塁打、そして史上最年少の三冠王と明るい話題で持ちきりだったが、今シーズンは優勝争いに係わることもなく、個人の活躍もない。むしろ最近ではリーグ最多の与死球数で悪目立ちし、ダーティーなイメージすらついてしまい、早くも来季に向けて課題は多い。

【9/10現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 127試合 50勝74敗3分⑤

 防御率…3.70⑥(3.52④)打率….240⑤(.250③)

 本塁打…105②(174①)盗塁58③(69②)

 得点…472④(619①)失点…508⑥(566⑤)

●チーム防御率も打率も低迷…負け始めたら止まらず3連覇の夢が潰える

 今季は開幕5連勝と絶好のスタートを切り、序盤の10試合を終えて7勝2敗1分で3連覇の機運すらあった。ただ、直後の4連敗からチームが低迷し、6連敗が1度、7連敗が2度(うち1度は引き分けを挟む)あり、最長は引き分けを挟んで12連敗で、負け始めたら止まらかった。

 チーム打率はリーグ5位ながらそれほど悪くない。犠打が一番多く、慎重な攻めが目立つが、出塁率長打率のリーグ3位で得点能力が低い訳ではない。要因はチーム防御率最下位の投手陣で、失点数が500を超えているのはヤクルトだけた。元々、軸になる先発投手が小川泰弘(創価大~12年②)とサイスニードしかおらず、今季は新外国人のピーターズがローテーションを守ってるいるが、先発の層の薄さは連覇の時から変わらない。

 今季の投手陣不振の最大の要因は、クローザーのマクガフのMLB移籍だが、ここまで悪くなるとは思わなかった。マクガフのあとは田口麗斗(広島新庄高~13年巨③)がクローザーを務め、田口は防御率1点台で30セーブを挙げており、田口まで繋げれば何とかなるが、その形ができていない。

 勤続疲労もあるのか、セットアッパーの清水は防御率3点台で7敗、大西と石山泰稚ヤマハ~12年①)も防御率4点台で、石山も6敗を喫している。2年連続50試合登板の今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)も、年々成績が落ちてきており、今季は25試合のみで、経験のあるリリーフ陣の不振が際立つ。

 打の要因は村上の不振と言え、昨年終盤、WBCでの不調が懸念されたが、その不安が的中してしまった。本塁打は昨年の約半分の26本、打率も.249では打点も上がらず、今季は無冠に終わりそうだ。また、昨年リーグナンバーワンの得点をたたき出した打線は、開幕に塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)や山崎晃大朗(日大~15年⑤)が間に合わず、ベストメンバーをなかなか組めなかった。

 不振のなか、目立った補強もなく、投手力強化でDeNAから阪口晧亮(北海高~17年③)を獲得したのは将来性もあり良かったが、交換要員が貴重な右打ち内野手西浦直亨(法大~13年②)であれば、もう少し違うトレードも出来たのではと思う。

●ここ10年の1位指名は即戦力投手に偏重…今季は投打の課題が浮き彫りに

 直近5年の1位指名はすべて投手で、過去10年でも、18年の村上を除いて全員が投手指名だ。しかもその9名のうち高校生は奥川恭伸(星稜高~19年①)と16年の寺島成輝(退団)のみで、大学生・社会人の即戦力投手への偏重が強い。

 ただ、今季先発ローテーション入りが確実視された吉村貢司郎(東芝~22年①)は2勝止まり、昨年8勝の原樹里(東洋大~15年①)、期待の山下輝(法大~21年①)と奥川も今季は一軍での登板がない。リリーフの清水と木澤の活躍で辛うじて面目を保っているが、思うような成果は出ていない。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年②…清水 昇(国学院大/①・投手)

 19年⑥…大西広樹(大商大/④・投手)長岡秀樹(八千代松陰高/⑤・内野手

 20年⑥…木澤尚文(慶大/①・投手)

 21年①…丸山和郁(明大/①・外野手)

 22年①…なし

  ↓↓

【ヤクルトの補強ポイント】 

 投 手…即戦力の先発とリリーフ、大学生左腕(年齢構成)

 捕 手…高校生または大学生(左打ちならベスト)

 内野手…将来のクリーンアップ候補、社会人の右打ち

 外野手…高校生は必須プラス大学生

 チームが上手くいっているときは、良いところが目立つが、悪くなると悪いほうに目が向いてしまう。今季で言えば先発投手が不足するなか、チャンスを掴んだのは小澤怜史(日大三島高~15年ソ②)くらいで、先発の底上げは進んでいない。

 打者も同様で、塩見や山崎が出場試合数を大きく減らし、山田哲人履正社高~10年①)も成績が上がらないなか、内山壮真(星稜高~20年③)や濱田太貴(明豊高~18年④)の活躍はあったが、レギュラーを獲得するまでには至っていない。

 今年のドラフトは課題が多く、投手陣の再編は最優先課題であり、捕手は支配下登録人数が5名しかおらず補強が必須で、外野手も19歳~22歳に育成選手を含めても選手がおらず年齢構成が悪い。18年の8名指名を最後に、ここ4年は5~6名の指名になっているが、豊作と言われる今年は指名人数が増えるかもしれない。

☆投手~即戦力の先発とリリーフ、大学生左腕(年齢構成)

 今季も規定投球回数を超えているのは小川のみで、大型連敗を止めるエースの不在が続いている。侍ジャパン選出の高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)は4勝、ベテランの石川雅規青学大~01年自)が2勝、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)は未勝利で、今季はローテーションを組むのも一苦労だった。

 リリーフは星が41試合、左腕の山本大貴三菱重工岡崎~17年ロ③)が39試合と、ともにキャリアハイの登板数になり、明るい兆しも見られた。ただ、クローザーの田口はFA移籍の可能性もあり、2年連続でクローザー移籍となると厳しい。

 年齢構成は、ルーキー吉村に移籍の阪口、現役ドラフトで成田翔(秋田商高~15年ロ③)も加入し、24歳~26歳に17名(38名中)も選手がおり、歪な構成になっている。ここを直ぐに是正することは難しく、空白の年齢を着実に埋めていきたい。

 今年は大学生から細野晴希(東洋大西舘勇飛(中大)上田大河(大商大)、高校生は東松快征(享栄高)前田悠伍(大阪桐蔭高)の両左腕を1位候補でリストアップしている。

 チーム状況からすると左腕の細野が補強ポイントにマッチするが、西舘勇と上田は安定感に長けており、現時点での総合力では細野より即戦力に近い。一方、長い目でチーム再編を目指すなら、大学生・社会人偏重を見直し、東松と前田の指名もアリだ。

 このほか、大学生の即戦力では常廣羽也斗下村海翔(ともに青学大西舘昂汰(専大、左腕の武内夏暉(国学院大)は1位候補にも引けをとらず、西舘昂も安定感に長けたイニングイーター。草加勝(亜大)は制球力に優れ、冨士隼人(平成国際大)尾崎完太(法大)奪三振率が高い。谷脇弘起(立命大)はストレートが150キロを超え、中川響(城西大)と小柄な左腕の古川風勝(創価大)もストレートの質の高さが評価されている。

 社会人では、ゲームメークに長けた竹田祐(三菱重工エスト)古田島成龍日本通運は制球力が改善され抑えの適性もある。川船龍星(日本通運は先発とリリーフのどちらでも結果を残し、昨年のU-23でクローザーを務めた権田琉成(TDK)はウィークポイントを埋める。

 高校生では、他球団もマークしている逸材の坂井陽翔(滝川二高)木村優人(霞ヶ浦高)は上位で消える可能性が高く、平野大地(専大松戸高)日當直喜(東海大菅生高)杉原望来(京都国際高)が上位候補に挙がる。

 素材型では、篠崎国忠(修徳高)清水麻成(樹徳高)は長身の大型右腕で、2年生から注目の細野龍之介(札幌新陽高)も最速145キロを超え、野川新(綾羽高)もポテンシャルが高さが評価されている。 

☆捕手~高校生または大学生(左打ちならベスト)

 正捕手に中村悠平福井商高~08年③)を据え、25歳の古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)と21歳の内山の出番も増え若手は育っているが、支配下5名は少ない。ただ、育成選手で松井聖(BC信濃~20年育③)と橋本星哉(中央学院大~22年育①)がおり、どちらかが支配下登録されるのでれば、指名は高校生で良い。

 堀柊那(報徳学園高)進藤勇也(上武大)をリストアップしているが、捕手の候補が多くなく上位で消える可能性が高い。鈴木叶(常葉菊川高)斎藤陽貴(昌平高)、U-18選出の寺地隆成(明徳義塾高)は左打ちで下位や育成でも指名したい。

内野手~将来のクリーンアップ候補、社会人の右打ち

 内野は今季も一塁にオスナ、二塁に山田、三塁に村上、遊撃に長岡とレギュラーが固定され、武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)と元山飛優(東北福祉大~20年④)がバックアップを務めている。

 村上が23歳、長岡と武岡も22歳と若く、これからさらに伸びる選手で、山田の不振が気になるが、まだ31歳で老け込む歳ではなく補強を急ぐ必要はない。ただ、シーズン前に三ツ俣大樹(修徳高~10年オ②)を獲得したように、右打ちの選手が欲しい。また、敢えて補強するなら、内野の長距離タイプが村上と北村恵吾(中大~22年⑤)しかおらず、将来のクリーンアップ候補を獲得したい。

 高校生では、佐々木麟太郎(花巻東高)を筆頭に、真鍋慧(広陵高)佐倉侠史朗(九州l国際大高)森田大翔(履正社高)百崎蒼生(東海大熊本星翔高)をリストアップしている。村上と佐々木が同じユニフォームを着るなど、想像するだけでワクワクするが、個人的には右打ちの森田が補強ポイントに一番フィットすると思う。

 右打ちの社会人(大卒2年目)と書いたのは年齢構成で、23歳の北村から31歳の山田まで空白だ。内野のユーティリティ黒川貴章(セガサミーはお薦めの選手だ。

☆外野手~高校生は必須プラス大学生

 外野手はとにかく課題が多い。支配下は8名は少なく、30歳の塩見と山崎、24歳の丸山和と並木秀尊(独協大~20年⑤)、23歳の濱田とルーキー澤井廉(中京大~22年③)が同い年で年齢構成が極めて悪い。

 今年は1位候補で度会隆輝(ENEOS)が挙がり、高校時代は巧打者だったが社会人に進み中距離打者に成長し、父が元ヤクルトの選手という縁故は関係なく補強ポイントに合う。

 高校生は候補が少なく、長打力では明瀬諒介(鹿児島城西高)西綾太(履正社高)走攻守三拍子揃っている。大学生では桃谷惟吹(立命大)は広角に打てる巧打者で、度会と同じ高卒3年目の大西蓮(JR東日本東北)は確実性も増した長距離ヒッターだ。

●課題が山積するなか、全体的に投手の指名を多めになる予想

 今年は大学生投手か、度会隆輝のどちらかになると思う。大学生ならチーム的には西舘勇飛や上田大河がマッチし、西舘勇も上田は先発、リリーフも適性があり、万が一田口が移籍した際の穴を埋めることもできる。

 また、今年は高校生外野手の候補が少ないため、投手力が課題のなか、高卒3年目の度会を1位指名するのは年齢構成的も良い。一方で高校生野手は将来のクリーンアップ候補を獲得したい。佐々木麟太郎は1位で消えると思うが、真鍋慧や佐倉侠史朗、森田大翔のいずれかは2~3位で獲得しておきたい。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~西舘勇飛(中大・投手)      度会隆輝(ENEOS・外野手)

 2位~武内夏暉(国学院大・投手)    西舘昂汰(専大・投手)

 3位~佐倉侠史朗(九州国際大高・内野手)森田大翔(履正社高・内野手

 4位~篠崎国忠(修徳高・投手)     谷脇弘起(立命大・投手)

 5位~川船龍星(日本通運・投手)    尾崎完太(法大・投手)

 6位~桃谷惟吹(立命大・外野手)    野川 新(綾羽高・投手)

 おススメは西舘昂汰(専大)で、ゾーンに投げ込める制球力と豊富なスタミナで長いイニングを投げられる。先輩の菊地吏玖(22年~ロッテ1位)よりも上との評価もあり、いきなり先発ローテーションに喰いこむことも決して夢ではない。