ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

千葉ロッテ~走るチームから打つチームへ変貌!若手に成長の兆し

●最終戦までCSを争い、着実にチーム力は上がってきている

 一昨年は断トツの最下位で、首位から39ゲーム差、新たに井口監督を迎えた昨年は、夏場から大失速し5位(28.5ゲーム差)で終えた。今年は最終戦まで、楽天とCS進出争いを展開したが、最終戦で負け4位(9.5ゲーム差)で終了した。

 3年連続Bクラスだが、着実にチームが成長しているのは見て取れる。ただ、過去10年でAクラス3回(すべて3位)、最後にリーグ優勝したのは2005年、連覇どころかAクラスが3年続いたことが一度もなく、パ・リーグ最古参の球団としては寂しい限りだ。

 昨年はグリーンライトで機動力を活かして走り回ったが、今年は本拠地にホームランラグーンを設置し、一転して長打力を活かしたチームに変貌した。本塁打は倍増し、得点力はリーグ2位まで上がり、チーム防御率も改善したが、チーム打率の低さと激減した盗塁数で数字以上の強さを感じなかった。

【9/25現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…3.90④(4.04⑤)打率….249⑤(.247④)

 本塁打…158③(78⑥)盗塁75④(124②)

 得点…642②(534⑤)失点611④(628⑤)得失点差+31(▲94)

 

●期待の若手が多く、5年後は投手王国の可能性も大!優勝を狙える布陣

 ロッテの平均年齢27.6歳は、パ・リーグでは最も高く、12球団でも3番目に高い。野手陣は28歳を超えており、特に外野陣は荻野貴司角中勝也清田育宏の主力がすべて30歳以上で、若い内野陣とは対照的に世代交代が遅れている。

 野手陣では、荻野が初の規定打席に達しただけではなく、リーグ3位の.315は、パ・リーグの右打者では一番だ。さらにチームリーダーの鈴木大地が、キャリアハイの.288でチームを牽引した。他には井上晴哉、レアード、中村奨吾の5人が規定打席に達したている。

 ただ、昨年規定打席に達した角中と藤岡裕大、田村龍弘は、いずれもケガで離脱し、井上は何度も4番を外れ打率と打点が、中村奨も打率がリーグ最下位、盗塁(39→12)も激減し、レギュラー陣が結果を残すことができなかった。そのチャンスを若手が活かすこともできず、主力が離脱したときの選手層の薄さが露呈したシーズンになった。

 ロッテのエースは誰だろう?と聞かれたとき、考えてしまうほど軸になる投手がいない。2桁勝利の投手は一人もおらず、石川歩と種市篤暉の8勝を筆頭に、二木康太に涌井秀章、ボルシンガーも100イニングを超え、なんだかんだ先発の役割を果たしたが、大事な試合を任せられる軸を欠いた。

 中継ぎ・抑えは、益田直也の60試合を最高に、酒井知史と東條大樹が50試合を超え、左腕の松永昴大にチェン、田中靖洋もキャリアハイの40試合以上登板し、リーグ屈指の救援陣を形成できた。

 さらにルーキーの小島和哉が先発で3勝、東妻勇輔も10ホールドを上げ、岩下大輝(5勝)と佐々木千隼(2勝)もケガが回復、若手の投手陣に手応えを感じ得るシーズンになった。

【ロッテの5年後の主力選手】

 投 手…唐川侑己益田直也・南 昌輝・東條大樹・西野勇士・有吉優樹

     酒居知史・佐々木千隼・二木康太・土肥星也・岩下大輝・東妻勇輔

     小島和哉・種市篤暉

 捕 手…吉田裕太・柿沼友哉・田村龍弘

 内野手井上晴哉鈴木大地・三木 亮・中村奨吾・藤岡裕大・平沢大河

     安田尚憲

 外野手…岡 大海・加藤翔平・藤原恭大

 

 5年後はかなり期待が持てる布陣だ。先発で二木に岩下、佐々木、種市等がエースを争い、中継ぎもできる西野や有吉もいる。中継ぎ・抑えでも益田に東條、酒居、唐川がおり、経験を重ねた強固な布陣になりそうだ。

 野手でも鈴木を中心に、田村と中村奨、藤岡が全盛期を迎え、平沢と安田、藤原のドライチトリオが成長すると、怖いチームになる。

 ロッテはファームでは、楽天に次ぎ2位で、投手では一軍を経験した中村稔弥に、古谷拓郎のルーキーが6勝を上げた。野手では安田が本塁打と打点の二冠王で、着実に成長しており、選手が少しずつだが揃ってきており、黄金期も決して夢ではない。

  

●絶対的エース獲得に、捕手の育成、高齢化する外野手と課題は多い

 年齢バランスは内野手以外は良くない。ただ、以前のロッテのドラフトは、即戦力投手偏重型だったが、近年は野手の1位指名が多く、統一ドラフト以降6名と半数を超える。また、高校生選手の獲得も増えてきており、年齢バランスの悪さがマイナスなっていない。

 投手は20歳と27歳がゼロで22歳と25歳は一人しかいない。また、左投手は7名(外国人を除く)しかおらず、量的にも不足している。捕手はレギュラーの田村が最年少で、19歳~24歳が不在だ。外野手は昨年、藤原が入団したが、20歳~25歳がゼロで、空白の年代が多い。

【ロッテの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補と左腕投手の拡充

 捕 手…田村の次世代を担う高校生捕手

 内野手…右打ちの長距離砲

 外野手…高齢化する主力に代わる即戦力

 

 今年は高校BIG4の指名が有力視されている。絶対的なエースがいないので、将来のエース候補で奥川恭伸(星稜高・投手)西純矢(創志学園高・投手)、不足している左腕で及川雅貴(横浜高・投手)は、早い段階でデビューする可能性がある。当然、果敢に佐々木朗希(大船渡高・投手)指名もありだ。

 また、単独指名で左腕の即戦力・河野竜生(JFE西日本・投手)や、評価が高い立野和明(東海理化・投手)は、ともに高卒3年目の21歳で若く、エース候補として単独指名もあり得るかもしれない。

 1位指名が投手になるなら、2位では野手を狙いたい。一番の候補は、佐藤都志也(東洋大・捕手)だ。佐藤は走攻守に優れた強肩強打の捕手で、ロッテにはいない左打ちの捕手に加え、一塁や外野も守れ、もしかしたら1位指名もあるかもしれない。

 この他にはリードオフマンタイプの宇草孔基(法大・外野手)柳町達(慶大・外野手)、将来の4番井上広大(履正社高・外野手)が候補で、佐藤と宇草は補強ポイントに合致する。

 3~4位では、高校生なら投手または捕手、即戦力なら左腕投手または外野手が候補になる。高校生投手なら前佑囲斗(津田学園高・投手)浅田将太(有明高・投手)は、高校BIG4にひけをとらないし、小林珠維(東海大札幌高・投手)は野手でも可能性がある。技巧派左腕の林優樹(近江高・投手)も、不足する左腕の強化にはピッタリだ。高校生捕手は今年豊富で、東妻の実弟東妻純平(智弁和歌山高・捕手)山瀬慎之介(星稜高・捕手)は、この順位でしか獲れない選手だ。

 即戦力なら、左腕の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)や、田健一郎(JFE東日本・投手)は、投手陣に厚みを持たせる。大学生でも望月大希(創価大・投手)伊勢大夢(明大・投手)は、この順位でも獲得のチャンスがある。

 即戦力の外野手では、加藤雅樹(早大・外野手)山田知輝(東洋大・外野手)は、ともに左打のスラッガー。俊足のリードオフマン高部瑛斗(国士館大・外野手)など、大学生外野手は年齢バランスから、必ず一人は獲得しておきたい。

 5位以降の下位は、上位で獲得できなかった箇所を埋めたい。高校生は、投手なら上位指名も十分にあり得る鈴木寛人(霞ヶ浦高・投手)、地元の横山陸人(専大松戸高・投手)や左腕の玉村昇吾(丹生高・投手)

 野手では、捕手の石塚綜一郎(黒沢尻工高・捕手)紅林弘太郎(駿河総合高・内野手菊田紘和(常総学院高・外野手)は、いずれもスラッガーで、素質豊かな高校生を抑えておきたい。

 大学生・社会人では、、北山比呂(日体大・投手)小孫竜二(創価大・投手)は、下位で指名できるチャンスがある。野手では、安本竜二(法大・内野手は長打力もある三塁手で、不足している右打ちの内野手金子莉久(白鷗大・外野手)は、俊足の左打で、脚の速さだけならドラフト候補のなかでも1~2を争い、いずれもロッテには不足している選手だ。菅田大介(奈良学園大・外野手)は、大学で二刀流をこなすほど身体能力が高く、元は投手だった岡に似た選手で、負けて劣らずのポテンシャルを秘めている。 

 

【ロッテのドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…西  純矢(創志学園高・投手)…一級品のスライダーのエース候補

 2位…佐藤都志也(東洋大・捕手)…強肩強打の打てる捕手で大学選抜の主力

 3位…前 佑囲斗(津田学園高・投手)…BIG4にも負けないパワーピッチャー

 4位…東妻 純平(智弁和歌山高・捕手)…強肩で打撃が魅力の打てる捕手

 5位…紅林弘太郎(駿河総合高・内野手)…将来の主軸を担える大型遊撃手

 6位…本田健一郎(JFE東日本・投手)…小柄だがどの役割もこなせる即戦力

 7位…金子 莉久(白鷗大・外野手)…巧打の大学屈指のスピードスター

 

 ロッテは統一ドラフトになってから、1~2位で一人の高校生投手を獲得できていない。指名も12年の藤浪晋太郎阪神)のみで、将来のエース候補として、上位で高校生投手を抑えておきたい。一方で、近年は積極的に野手を上位指名する秀逸なドラフトを展開しており、今年もロッテのドラフトから目が離せない。

 

 

阪神~即戦力か?育成か?両方が課題の難しいドラフト

●リーグナンバーワンの防御率も、長打力不足など、打撃陣の課題が多い

 最後に優勝したのが2015年で、それ以降Aクラスが7回、Bクラスが5回で、今年は2年連続の最下位は免れたが、Bクラスはほぼ確定的だ。また、例年通りと言えばそれまでだが、今年も新外国人のソラーテの造反~解雇や、チームの功労者の鳥谷敬への引退勧告など、フロントのドタバタ劇も相変わらずだった。

 今年は投手陣が奮闘し、チーム防御率3.58はリーグ1位。一方でチーム打率.251は、リーグ4位で、昨年と変わらない。盗塁数はリーグ1位の94だが、本塁打は相変わらずで、89本はリーグ5位…長打力不足は解消されなかった。。

 矢野監督は、センターラインを強化し、打ち勝つ野球ではなく、守り勝つ野球を目指した。チームの戦力分析からは間違いではなかったが、得点力に乏しい打線と、防御率の高さの割には失点が多く、結果には繋がらなかった。

【9/21現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…3.58①(4.03②)打率….251④(.253⑥)

 本塁打…89⑤(85⑥)盗塁94①(77②)

 得点…510⑥(577⑤)失点561③(628②)得失点差▲51(▲51)

 

●主力にベテランが多く、世代交代が喫緊の課題

 阪神の平均年齢28.1歳は、ヤクルトに次いで2番目に高く、28歳を超えているのはこの2チームだけだ。35歳以上の大ベテラン勢に主力が多く、今年はエースのメッセンジャーが引退し、鳥谷もチームを去るようだが、それでも投手では岩田稔藤川球児能見篤史、野手では糸井嘉男福留孝介がおり、世代交代は喫緊の課題だ。

 投手陣では、オリックスからFAで加入した西勇輝規定投球回数をクリアし、勝ち星は8勝に留まったが、クオリティスタート18試合は一番で、今年は西の加入が大きかった。青柳晃洋も8勝を上げ、勝ち星には恵まれていないが、高橋遥人も100イニング以上を投げており、先発の役割を果たしている。

 中継ぎ・抑えではジョンソンと岩崎優が安定した成績を残し、ベテランの藤川が、安定感を欠いたドリスに代わりクローザーを務めた。

 一方で飛躍を期待された、昨年7勝の小野泰己は0勝、6勝の才木浩人も2勝で期待を裏切り、かつてのエース藤浪晋太郎は1試合登板で復活できなかった。

 打撃陣では、なんといってもルーキーの近本光司の活躍が光る。打率こそ.274で高くはないが、154安打を放ち、セ・リーグの新人安打記録を塗り替えた。また、34盗塁はヤクルトの山田哲を抑えて現在リーグトップで、チームの盗塁数の1/3は近本だ。

 この他に糸井は3割を超え、糸原健斗と大山悠輔、梅野隆太郎が規定打席に達している。マルテとルーキー木浪聖也、最年長41歳の福留も年間通じて結果を残した。

 ただ、本塁打は大山の13本がチーム最高で、12本のマルテと2人しか10本を超えていない。盗塁も近本の次は梅野の14盗塁で、近本以外はほぼマークが必要なく、数字だけ見ると打線に怖さを感じない。今年、近本が入団していなければ、どんな結果になったのだろうと思わず考えてしまう。

  【阪神の5年後の主力選手】

 投 手…西 勇輝・秋山拓巳・岩貞祐太・岩崎 優・青柳晃洋・島本浩也  

     藤浪晋太郎・小野泰己・高橋遥人・才木浩人

 捕 手…梅野隆太郎・原口文仁

 内野手…糸原健斗・北條史也・大山悠輔・木浪聖也・植田 海

 外野手…中谷将大・高山 俊・近本光司

 

 5年後は正直かなり不安だ…投手は西を中心に青柳や秋山、岩貞と結果を残した先発陣がいる。ファームでも馬場皐輔や望月惇志が頑張っているが、ともに先発タイプで中継ぎ・抑えは岩崎と島本しかいない。

 野手も事実上、捕手は梅野だけ、長打を期待できるのも大山のみ。ファームでも板山祐太郎と江越大賀、陽川尚将が8本塁打を放っているが、陽川以外はホームランバッターではなく、当面は外国人選手とFA選手獲得で乗り切るしかなさそうだ。

  

●歪な野手陣の年齢バランス…投打に戦力が不足している

 年齢バランスは投手は問題ないが、野手が酷い…投手は、24歳~26歳に11名と固まっているが、各年齢に選手がおり問題ない。

 野手は、捕手では19歳~24歳までゼロ、内外野の19歳~22歳には、今年のドラフト2位の小幡竜平の1人しかいない。ちなみにこの世代にはヤクルトの村上やロッテの平沢に安田、日本ハムの清宮や平沼、楽天の渡邊佳の伸び盛りの若手がおり、さすがに1人では話にならない。

 その反面、25歳になんと7名、26歳には外野手だけで3名もおり、なぜこんな歪な年齢構成になる指名を続けたのか理解に苦しむ。一つの年齢に集中すると身体的な衰えが同時に複数くることになり、世代交代の入れ替え幅が大きくなり、戦力の維持が難しくなる。阪神の野手陣はまさにそれで、修正するにはしばらく時間がかかる。

阪神の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補(左腕だとベスト)と即戦力投手(先発・抑え)

 捕 手…梅野の控えになる即戦力または高校生捕手

 内野手…右打ちの長距離打者と二遊間のバックアップ

 外野手…俊足巧打のリードオフマン(右打ちだとベスト)

 

 投打に戦力が不足しているが、今年は投手の1位指名が濃厚で、即戦力なら森下暢仁(明大・投手)、将来のエース候補で奥川恭伸(星稜高・投手)及川雅貴(横浜高・投手)が候補になる。個人的には、昨年に続き野手で、石川昴弥(東邦高・内野手の単独1位や、外れ1位で、今夏の甲子園を沸かせた井上広大(履正社高・外野手)等の将来の4番候補指名は、スケールの大きい指名になると思う。

 1位指名は高校生指名になる可能性が高いので、2位で即戦力投手を抑えておきたい。右腕なら太田龍JR東日本・投手)や地元・大阪出身の吉田大喜(日体大・投手)、クローザーで津森宥紀(東北福祉大・投手)が候補になる。また、左腕は20歳~23がゼロで、浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)坂本裕哉(立命大・投手)など、大学生または社会人選手で空白をなくしたい。

 3~4位では、即戦力野手を補強し、少しでも貧打線を解消したい。近本の成功もあり、社会人野手に行きたいところだが、年齢バランスから大学生に狙いを定めたい。スラッガータイプでは加藤雅樹(早大・外野手)勝俣翔貴(国際武道大・内野手は強打の三塁手柳町達(慶大・外野手)高部瑛斗(国士館大・外野手)は俊足巧打のリードオフマン。梅野の控えで、今年豊富な大学生捕手で郡司裕也(慶大・捕手)佐藤都志也(法大・捕手)は外野も守れるスラッガーで、将来性のあるタレントが揃っている。

 5位以降の下位では、上位で獲得できなかった箇所を埋めたい。育成主眼の高校生では、左腕の井上温生(前橋商・投手)玉村昇吾(丹生高・投手)、レギュラー候補で藤田健斗(中京学院大中京高・捕手)上野響平(京都国際高・内野手木下元秀(敦賀気比高・外野手)は下位でも指名のチャンスがある。

 即戦力投手では、北山比呂(日体大・投手)村西良太(近大・投手)、地元の大西広樹(大商大・投手)、左腕で高橋佑樹(慶大・投手)は伸びしろもある大学生。社会人では小又圭甫(NTT東日本・投手)嘉陽宗一郎(トヨタ自動車・投手)は経験豊富な即戦力右腕だ。

 野手では安本竜二(法大・内野手は長打力もある三塁手篠原涼(筑波大・内野手は、走攻守はもちろんのことリーダーシップに長けた選手。外野手では、菅田大介(奈良学園大・外野手)は、大学で二刀流をこなすほど身体能力の高さが魅力、佐藤直樹JR西日本・外野手)は、右打ちで足も速く、地元出身で21歳と若く評価が急上昇している。 

 

阪神のドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…及川 雅貴(横浜高・投手)…最速150キロの高校生ナンバーワン左腕

 2位…太田  龍(JR東日本・投手)…長身から投げ下ろすパワーピッチャー

 3位…郡司 裕也(慶大・捕手)…日本代表で主軸の強肩強打の即戦力捕手

 4位…加藤 雅樹(早大・外野手)…安定感抜群の勝負強い打撃が売り

 5位…北山 比呂(日体大・投手)…大学で化けた最速154キロは発展途上中

 6位…安本 竜二(法大・外野手)…抜群の長打力を誇るスラッガー

 7位…佐藤 直樹(JR西日本・外野手)…足も速く広い守備範囲、長打も魅力

 

 元々、ドラフトが上手くないチームに加え、お家騒動がお家芸で、育成に疑問符がつくチームだけに、ドラフトを通じて明確なコンセプトを打ち出せるかが課題になると思う。残念ながら、いつも悪い意味で驚かされるドラフトで、今年はどんなサプライズがあるか楽しみ、いや不安だ。

 

 

北海道日本ハム~将来のエース候補で佐々木の指名を公言

●高いチーム打率に防御率も改善…激減した本塁打と盗塁で得点力不足

 3年に一度は優勝を狙うチーム方針のなか、2016年の優勝から3年目。今年は優勝の可能性が消え、それどころか2013年以来の最下位の危険もある。

 8月の初めは、首位ホークスと0.5ゲーム差の首位争いをしていたが、最もチームの地力が試される8月にまさかの5勝20敗で、8月終わりには最下位オリックスに迫るほど、歴史的大失速だった。 

 ただ、チームの成績は決して悪くない。チーム打率.253は西武に次いでリーグ2位で、昨年と大きく変わらない。チーム防御率3.84は、リーグ3位だ。

 失速の要因は多々あるが、今年は本塁打数と盗塁数の両方が激減した。本塁打数はリーグ最下位の91本、走るイメージがあるが、盗塁数48はリーグ5位で、なんと昨年から50個も減っており、セ・リーグ下位で低迷している中日と状況が似ている。

【9/17現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…3.84③(3.77②)打率….253②(.251③)

 本塁打…91⑥(140③)盗塁48⑤(98③)

 得点543⑤(589③)失点565③(586④)得失点差▲22(+3)

 

●育成主体のチームだけに、5年後も主力がズラリ

 日本ハムの平均年齢25.9歳は、断トツの若さで、投手・野手とも一番若い。北海道移転後、育成をメインにチーム作りを進め、主力が抜けても必ずカバーする若手を輩出してきたが、残念ながら今年は機能しなかった。

 投手陣は昨年ともに2桁勝利の上沢直之が5勝、マルティネスは結局復帰できなかった。上沢は打球が直撃し骨折でシーズン離脱…ただでさえ薄い先発陣は有原航平以外、総崩れの状況になった。

 当然、そのしわ寄せは中継ぎ陣の負担になり、61試合の玉井大翔を筆頭に、公文克彦、石川直也、宮西尚生、秋吉亮、堀瑞樹の6人が50試合以上に登板している。

 打撃陣では、近藤健介を筆頭に、大田泰示西川遥輝が打撃10傑に入り、渡辺諒と中田翔規定打席に達した。今年は田中賢介のあと、レギュラー不在だった二塁手に渡辺がはまったが、レアードの抜けた三塁と遊撃のレギュラーが固定できなかった。

 レアードが抜けた長打力不足の不安は的中。いくら広い札幌ドームが本拠地とはいえ、中田の23本を最多に、10本以上が大田(19本)と渡辺(11本)しかいないのは大きな課題だ。

 盗塁も西川が19個、中島卓也が11個で、マークするのはこの2人だけでは、相手バッテリーにプレッシャーをかけられるはずもない。ソツのない攻撃がウリのチームが、機動力まで失ってしまえば上位進出は難しい。

  【日本ハムの5年後の主力選手】

 投 手…秋吉 亮・浦野慎司・有原航平・玉井大翔・杉浦稔大・加藤貴之  

     公文克彦・西村天裕・上沢直之・井口和朋・石川直也・堀 瑞樹

     吉田輝星

 捕 手…宇佐見真吾・清水優心

 内野手…中田 翔・杉谷拳士中島卓也・横尾俊健・石井一成・渡辺 諒

     平沼翔太・清宮幸太郎

 外野手…大田泰示西川遥輝谷口雄也・近藤健介

 

 5年後もレギュラークラスの選手が多く残っている。一塁に中田、二塁に渡辺、外野は左翼・近藤、中堅・西川、右翼・大田と万全だ。さらに清水や平沼のレギュラー候補が控え、何より清宮の成長が大きな楽しみだ。

 ただレギュラー以外は、なかなか「候補」から抜け切れておらず、ハイレベルな競争がなければ、レギュラーと控えの差が益々広がり、戦力の底上げにはならない。

 投手陣は有原と上沢のWエースに、先発で堀や吉田輝と左右のエース候補が控える。中継ぎ・抑えは、既に実績を残しており、リーグ屈指のリリーフ陣を維持できそうだ。

  

●年齢バランスは問題ないが、長打力よりも機動力が不足…

 さすが育成のチームだけあって、年齢バランスは問題ない。しいて言えば、投手では22歳が空白で、野手では右打ちの外野手が少ない。

 今年は長打力不足が露呈したが、清宮を筆頭に万波中正や野村佑希、今井順之介など若いスラッガー候補が並ぶ。反面、走れる選手が少なく、機動力不足が課題になる。

 投手は23歳と25歳に各4名、27歳に5名と固まっているが、それぞれの年代で左右のバランスが取れており問題ない。

 年齢バランスが良いので、今年もその年の一番良い選手を1位指名し、補強が必要な箇所に即戦力を宛がい、育成で高校生選手を、投手・野手合わせ2~3名獲得するドラフトが可能だ。

日本ハムの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補と先発と中継ぎの左腕投手

 捕 手…社会人の即戦力捕手

 内野手…三塁のレギュラー候補と二遊間のバックアップ

 外野手…右打ちまたは俊足外野手

 

 日本ハムの1位指名は、その年のナンバーワン選手を指名する方針で、他チームがどうだろと1位指名がブレることはない。今年は早々と佐々木朗希(大船渡高・投手)指名を公言している。

 佐々木の素質は異次元で、メジャーのトップクラスの投手になる可能性を秘めている。ただ、まだ素質型で育成には相当な覚悟と責任、そして時間が生じる。ノウハウの不足しているチームは見送る方向だが、日本ハムダルビッシュ有大谷翔平を育てた実績があり問題ない。

 2~3位指名では、即戦力左腕または今年豊富な遊撃手を指名したい。今年は左腕投手の候補が少なく、1位の指名動向次第で、宮城大弥(興南高・投手)は2位で獲得できるチャンスがあるし、即戦力の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)坂本裕哉(立命大・投手)は、1つ順位を上げてでも獲得したい投手だ。

 遊撃手候補では、スピードスターの森敬斗(桐蔭学園内野手武岡龍世(八戸学院光星高・内野手は走攻守にバランスが優れ、韮澤雄也(花咲徳栄内野手は打力が魅力で上位で消える選手だ。

 また、小深田大翔(大阪ガス内野手は三塁と遊撃の守備に定評があり、勝俣翔貴(国際武道大・内野手も強打の三塁手で補強ポイントに合っている。

 4~5位では、素質ある高校生で落合秀市(和歌山東高・投手)鈴木寛人(霞ヶ浦高)、地元の小林珠維(東海大札幌・投手)に、不足する左腕で林優樹(近江高・投手)が候補になる。甲子園で評価をあげた桃谷惟吹(履正社高・外野手)は、右打ちの強打者だ。

 また、投手の空き年齢を埋めるのに、今年豊富な大学生投手指名もありだ。横山楓吉村貢司郎国学院大コンビに、伊勢大夢(明大・投手)、左腕の橋本侑樹(大商大・投手)は、この順位でも獲得のチャンスがある。

 野手に絞るなら俊足巧打の外野手で木下元秀(敦賀気比高・外野手)、大学生で高部瑛斗(国士館大・外野手)菅田大介(奈良学園大・外野手)リードオフマン候補。内野のバックアップで、遊撃の守備力に定評のある諸見里匠(日本通運内野手や、俊足の稲垣誠也(日本通運内野手は、現状にもってこいの即戦力だ。

 6位以降は育成主眼で高校生選手や、地元選手を抑えておきたい。高校生では井上温生(前橋商高・投手)は貴重な左腕で、右投げの酒井海央(京都国際高・投手)遠藤慎也(京都翔英高・投手)は他球団もマークしている隠れた逸材だ。

 地元枠では小林以外に、今夏の甲子園で星稜に善戦した旭川大高のバッテリー、能登崇都(投手)持丸泰輝(捕手)北照高出身の小畑尋規(トヨタ自動車・捕手)は強肩で守備力に定評がある。

日本ハムのドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…佐々木朗希(大船渡高・投手)…最速163キロの怪物は日本のエース候補

 2位…浜屋 将太(三菱日立PS・投手)…スライダーを武器に先発もこなせる

 3位…韮澤 雄也(花咲徳栄高・内野手)…打率を残せる巧打者で守備も一級品

 4位…林  優樹(近江高・投手)…体は細いが抜群の制球力を誇る技巧派左腕

 5位…稲垣 誠也(日本通運内野手…小柄だが広角に打てるパンチ力と俊足

 6位…井上 温生前橋商高・投手)…守備も巧い総合力の高いサウスポー

 7位…小畑 尋規トヨタ自動車・捕手)…名門チームの正捕手で強肩

 

 日本ハムは、若手の台頭が上手くハマり、主力選手が移籍しても高い戦力を維持できた。ただ、今年はレギュラーを脅かす選手の輩出がなく、即戦力主体で行くか、育成主体で行くのか、ドラフト巧者の日本ハムの戦略が楽しみだ。

 

 

中日~地元の有力選手が豊作!確実に上位で獲得したい

●リーグNO1のチーム打率、12球団最小の本塁打数で得点力が不足

 2011年を最後に成績が下降し、今年もBクラス確定で7年連続となった。2002年から12年までは、11年連続のAクラス(うち優勝4回)のかつての強豪チームの記憶が薄れるほど、低迷期間が長くなっている。

 今年は4月が好調で、一時期は首位に0.5ゲーム差まで迫ったものの、その後急落。そこからは最近の定位置5位のまま、阪神と熾烈な4位争いを展開している。

 余り打つイメージがないが、チーム打率.265はリーグ1位で、昨年と変わらない。12球団でチーム打率1位の西武が.266だから、本当は強力打線と呼ばれるはずだが、貧打線なのは12球団最少の本塁打数と、同じく少ない盗塁数で得点力が不足している。

 では投手陣はどうかというと、チーム防御率3.79はリーグ4位で、昨年は4.36で最下位だったので大きく改善している。打率も良く、投手陣も良くなっているなか、昨年と成績が変わらないのは、新監督の経験不足なのか、勝ちきれないゲームが多い。   

【9/14現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…3.79④(4.36⑥)打率….265①(.265②)

 本塁打…82⑥(97⑤)盗塁61④(61⑤)

 得点511⑤(598④)失点512①(654⑤)得失点差▲1(▲56)

 

●投手は期待値十分も、野手はレギュラーと控えの差が歴然

 中日の平均年齢は27.3歳で、落合監督時代に社会人選手を獲りまくっていた印象があるが、意外に高くない。むしろ投手陣は26.7歳と若い方だ。

 投手陣は昨年0勝の大野雄大が9勝を上げ復調し、柳裕也が10勝を上げエース格に成長した。この2人以外、先発ローテーションが十分に組めないなか、ロドリゲスの61試合を筆頭に、福敬登、谷元圭介、藤嶋健人、マルティネスの中継ぎ陣が奮起した。鈴木博志が離脱後、心配されたクローザーも岡田俊哉がチームのピンチを救った。

 打撃陣では、ビシエド大島洋平、高橋周平、阿部寿樹の4名が打撃10傑に入っていてリーグ最多を誇り、京田陽太を加えた5名が規定打席に達している。本塁打が少ない話をしたが、ビシエド福田永将の17本が最多で、10本を超えているのは、あとは堂上直倫しかおらず、この3人でチーム本塁打の数半分を占める。

 盗塁は大島一人で30盗塁と半分を占め、17盗塁の京田と合わせると約8割にもなる。長打力と走れる選手が限られているので、結果打率以上の怖さを感じないのが課題と言える。

  【中日の5年後の主力選手】

 投 手…田島慎二又吉克樹岡田俊哉・福 敬登・佐藤 優・柳 裕也  

     笠原祥太郎・梅津晃大・鈴木博志・小笠原慎之介・藤嶋健人

 捕 手…木下拓哉・加藤匠馬

 内野手…阿部寿樹・高橋周平・京田陽太・根尾 昂

 外野手…遠藤一星

 

 中日の5年後は、若手の育成なくして躍進はない。年齢的に現在31歳の大野雄と平田良介の主力に、福田と堂上も残っていると思うが、投打に若手の成長がないと厳しい。

 投手では今年先発を務めた山本拓実や、清水達也にはクローザーの資質もある。大野雄と柳を軸に、笠原と小笠原の両左腕に梅津を加えると質量ともに申し分ない。抑えも鈴木博や藤嶋と、球に力のあるクローザー向きの投手が実績を残しており、大きな穴は見当たらない。

 野手陣はこのままいけば、長打力不足は解消されない。若手のなかでもスラッガー候補は石垣雅海しかおらず、根尾や伊藤康祐もポスト大島の1~2番タイプで、4番を任せられる選手の育成が必要だ。

  

●上位で将来のエース候補と4番候補を狙う。ポスト大島も喫緊の課題

 中日は野手の年齢バランスがとにかく悪い。特に捕手と外野手が酷く、捕手は石𣘺康太が今年入団したが、それまでは27歳の加藤が最年少で、28歳に3名も固まっている。外野手も今年、滝野要が入団したが、それまでは20~25歳までゼロだ。内野手は幾分悪くはないが、25歳に3名が固まっており、全体的に空き年齢が多い。

 一方で投手は、19~32歳まで空き年齢がなくバランスは悪くない。ただ、左腕投手が少なく、ロドリゲスを除いて7名は12球団で最小で、左腕投手に主力が多いだけに量的な不足は否めない。

【中日の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補と左腕投手の拡充

 捕 手…22歳~25歳の左打の捕手

 内野手…4番を務めるスラッガー一塁手または三塁手

 外野手…ポスト大島の走攻守揃った巧打者

 

 中日の1位候補は、ずばり2人で高校BIG4の奥川恭伸(星稜・投手)と、U-18の4番石川昴弥(東邦・内野手だ。奥川は言わずと知れた将来のエース候補で、甲子園とU-18の活躍で、安定感では佐々木朗希よりも評価が高く、早い段階でローテーション投手になれる。

 石川は中日が喉から手が出るほど欲しい将来の4番候補だ。三塁には高橋周と福田がいるが、3~4年後には根尾と一緒にチームの顔になれる選手だ。

 中日は明言はしていないが、既に奥川指名を公言しているので、奥川指名が基本路線だが、個人的には石川のほうが現在の補強ポイントに合致すると思う。

 2位指名は、奥川を指名できたならスラッガーまたはポスト大島を獲得したい。スラッガーなら井上広大(履正社・外野手)片山勢三(パナソニック内野手、打てる捕手の佐藤都志也(東洋大・捕手)は、石川にも負けず劣らずのスラッガーだ。ポスト大島なら宇草孔基(法大・外野手)が候補になる。たらればの話だが、1位・奥川、2位・井上指名に成功したらスケールの大きい指名になる。

 石川指名なら2位は先述した宇草または佐藤を指名し、打線に厚みを持たせるか、将来のエース候補で浅田将汰(有明高・投手)や、変則右腕のクローザー候補の津森宥紀(東北福祉大・投手)、不足している左腕で浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)は、上位でしか獲れない選手だ。

 3位指名は、投手なら準地元で将来性もある前佑囲斗(津田学園、即戦力で本田健一郎(JFE東日本)の指名も面白い。野手ではともにスラッガー勝俣翔貴(国際武道大・内野手加藤雅樹(早大・外野手)が候補になる。

 4~5位では、左腕または足のある選手を指名したい。左腕なら将来性のある米山魁斗(昌平高)玉村昇悟(丹生高)、先日ノーヒットノーラン達成した橋本侑樹(大商大)は即戦力だ。また同じ即戦力で横山楓(国学院大)杉尾剛史(宮崎産経大大西広樹(大商大・投手)の大学生右腕もリストアップしている。

 野手では高校時代からマークしている谷川刀麻(近大・外野手)、走攻守に優れた高部瑛斗(国士館大・外野手)は、正真正銘のリードオフマン候補だ。

 6位以降の下位選手では、空き年齢を埋めたいところだ。投手なら高卒3年目の社会人、25歳のベテラン即戦力。大学生または社会人捕手、右打ちの社会人内野手が埋まれば空きがなくなる。

 高卒3年目投手なら小木田敦也(TDK・投手)阿部陽登(日立製作所・投手)、ベテラン投手なら岡野祐一郎(東芝・投手)が当てはまる。

 捕手なら小藤翼(早大小林遼(JX-ENEOSはともに左打で重宝しそうだ。右打ちの社会人では、下位で獲るのは難しいが諸見里匠(日本通運内野手は、守備に定評があり即戦力になる。

 上位でスラッガーを獲得できなかった場合は、ともに静岡出身の紅林弘太郎(駿河総合高・内野手安本竜二(法大・内野手も、下位で抑えておきたい選手だ。

【中日のドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…奥川 恭伸(星稜高・投手)…最速154キロ×投球術で菅野も認めた逸材

 2位…井上 広大(履正社高・外野手)…粗削りだが広角に打てる長打力が魅力

 3位…片山 勢三(パナソニック内野手)…バットコントロールの良いスラッガー

 4位…横山  楓(国士館大・投手)…奪振率の高い本格派右腕で伸びしろもある

 5位…杉尾 剛史(宮崎産経大・投手)…上背はないが最速147キロの直球が魅力

 6位…谷川 刀麻(近大・外野手)…大学で野手専念。高校からマークする逸材

 7位…小藤  翼(早大・捕手)…強肩と守備力に、巧さもあるパワーヒッター

 

 ここ数年、野手では高校生指名が多く、22歳~24歳までは滝野しかおらず、大学生または社会人指名で補強する必要がある。

 また、今年は地元(東海地方)に有力選手が多い。奥川に石川、立野和明(東海理化)の上位候補に、高校生では前や山瀬慎之介(星稜高・捕手)、藤田健斗(中京大中京高・捕手)は甲子園でもお馴染みだ。

 大学生でも安本に篠原涼(筑波大・内野手)、中村健人(慶大・外野手)がおり、地元選手の獲得にも注目したい。

 

 

オリックス~吉田正以外の長距離砲を獲得できるか

●チーム防御率、打率ともリーグ最下位で大苦戦のシーズン

 最後に優勝したのが1996年…12球団で最も優勝から遠ざかっていたが、今年も9/11で優勝の可能性が完全に消え、23年間優勝がない。まだAクラスの可能性がないわけではないが、Bクラスで終えると5年連続、直近10年でAクラスは14年の1度のみと低迷期間に出口が見えない。

 今年は4/27に最下位になった後、交流戦で2位になったものの順位は上がらなかった。8月に吉田正尚とロメロの中軸が打ちまくり、復調の気配が見え一時期5位に上がったのもつかの間、ロメロがケガで離脱するとチームは一気に低迷し、9月に9連敗を喫するなど、CS進出の希望も風前の灯だ。

 チームのWエースだった西勇輝と金子千尋が抜けた不安が的中。昨年、3.69でリーグ1位だったチーム防御率が、今年は4.10(9/12現在)のリーグ5位まで落ち込んだ。 

 チーム打率.244は昨年と変わらないが、今年はリーグ最下位。本塁打数も昨年と同じ5位、一方で盗塁数109は、西武に次いで2位で昨年の数を超えているが、結果走れてもランナーを返すことができず得点力に結びついていない。

 走れる選手は多いが、頼りになるのは吉田正のみの打線は、得点力不足が相変わらずで、頼みの投手陣が崩れたことで優勝争いに食い込むことすらできなかった悔しいシーズンになった。 

【9/12現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…4.10⑤(3.69②)打率….244⑥(.244⑤)

 本塁打…94⑤(108⑤)盗塁109②(97④)

 得点495⑥(538④)失点582⑤(565①)得失点差▲87(▲27)

 

●野手の平均年齢が若い発展途上のチーム

 オリックスと言うと、イメージ的に社会人出身選手が多く、何となく地味な印象があるが、チームの平均年齢は26.6歳は、12球団で3番目に若いチームだ。投手は27.3歳で4番目に高いが、反面野手は25.9歳と2番目に若く、将来性のあるチームと言える。

 その若い野手陣の課題は、レギュラーが決まらないことだ。9/12現在で30名の選手が規定打席に達しているが、オリックス吉田正と福田周平の2人だけで、最多の西武8人はさておき、楽天が6人、ロッテと日本ハムが5人、ソフトバンクが4人なので極端に少ない。

 実は昨年も最小の3名(吉田正・ロメロ・安達了一)で、野手はレギュラーが確立できない状況が続いている。レギュラー不在は一軍だけでなく、ファームでも昨年規定打席に達したのは、12球団で唯一のゼロ…今年もウエスタンリーグ最少の2名で、これはこれで結構深刻な状況だと思う。

  【オリックスの5年後の主力選手】

 投 手…吉田一将・近藤大亮・山田修義・荒西祐大・山崎福也・K-鈴木・澤田圭佑  

     黒木優太・竹安大和・山岡泰輔・田嶋大樹・山本由伸・榊原 翼

 捕 手…伏見寅威・若月健矢・頓宮裕真

 内野手…西野真弘・福田周平・大城滉二・中川圭太・大田 椋

 外野手…小田裕也・後藤駿太吉田正尚・宗 佑磨・佐野晧大・西浦颯大

 

 オリックスの最大の光明は、山本と吉田正の投打の柱が確立したことだ。投手陣は山本と山岡がWエースに成長し、田嶋と榊原、K-鈴木を加えた投手陣は質量ともに豊富だ。特に5年後も山岡が29歳、田嶋が28歳、山本と榊原は26歳で全盛期を迎える。中継ぎに近藤と山田、今年不振だった澤田と黒木が復調すれば投手陣に大きな穴はない。

 野手陣は吉田正を軸に、周りに走れる選手が揃っている。福田は打率が上がれば厄介な打者になるし、宗の走攻守に優れた高いポテンシャルや、佐野の超がつく俊足は、観ていて惚れ惚れする。ただ、吉田正以外は全員が1~2番タイプで、ルーキー中川も頑張っているが、4番タイプではない。

 23年間優勝から遠ざかっている状況から、余程の若手の覚醒や外国人選手の大活躍でもない限り優勝は厳しい。5年後とは言わず、2~3年後に優勝を狙えるチーム作りを進めるドラフトにしてほしい。

 

●補強ポイントは明確で、左腕投手と長距離打者

 投手陣は年齢的バランスが実は酷い…特に25歳は元々多いところに、さらに阪神から移籍の竹安、ルーキー左澤優、育成から支配下になった神戸文也と張奕が加わり8名にもなった。これは明らかに偏りすぎで、逆に20歳と24歳は1名しかいない。左腕不足は深刻で、一番若い左腕が21歳のルーキー富山凌雅で質量的に不足している。

 野手もバランスが悪い。捕手は正捕手の若月(24歳)が最年少で、育成に時間がかかるポジションだけに、今年は捕手の指名は必然になる。

 野手は長打力のある選手が補強ポイントになる。ただでさえ長打を打てる選手が少ないなか、T-岡田が退団しそうで益々深刻だ。また、24~25歳は内外野ともにゼロで、ここは社会人選手で埋める必要がある。野手も23歳に5名、26歳に4名と、所々に見えるバランスの悪さが気になる。

オリックスの補強ポイント】

 投 手…左腕投手の量的確保とポスト増井のクローザー候補

 捕 手…若月のライバルになる正捕手候補

 内野手…長打力のある三塁手

 外野手…長打力(将来性)のある右打ち選手

 

 1位を左腕で行くならば、即戦力なら河野竜生(JFE東日本)は先発・抑えのどちらでも結果を残せる。将来性なら及川雅貴(横浜高)で、強固な先発陣を形成できる。

 野手では盗塁阻止率は高いが、打撃は非力な若月のライバルで海野隆司(東海大・捕手)を獲得できれば、今シーズン当初のプラン通りに頓宮を三塁手で使える。また、リストアップはしていないようだが、石川昴弥(東邦高・内野手は補強ポイントに合致する。

 2位指名は指名順位が早いので、単純だが左腕投手を獲得できたなら野手、野手1位指名なら左腕投手が無難と言えば無難だ。

 野手の長距離打者の上位候補は石川以外には、井上広大(履正社・外野手)片山勢三(パナソニック内野手原澤健人(スバル・内野手がいる。最近のプロでは稀少な右打ちの長距離打者で、ともに評価も上がってきており、順位を上げないと獲得できないかもしれない。

 左腕投手では将来性抜群の宮城大弥(興南高)、即戦力の坂本裕哉(立命大)浜屋将太(三菱日立パワーシステムズが候補になる。また、ポスト増井で西田光汰(JR東日本も良いと思う。

 3位指名は、1~2位指名の状況で当然変わるが、投手ならば、前佑囲斗(津田学園、打者としても評価の高い浅田将汰(有明高)小林珠維(東海大札幌・投手)がいる。野手では郡司裕也(慶大・捕手)スラッガー加藤雅樹(早大・外野手)が候補になる。

 4~5位では、素質豊かな高校生を指名したい。特に投手は、昨年1名も指名のなかったので、林勇希(菰野高)鈴木寛人(霞ヶ浦高)落合秀市(和歌山東高)岩本大地(石岡一高)と素質豊かな高校生選手のいずれかは獲得したい。

 野手では、正捕手候補で山瀬慎之介(星稜高)東妻純平(智弁和歌山高)スラッガー候補で韮澤雄也(花咲徳栄高・内野手、内外野どこでも守れる遠藤成(東海大相模高)など楽しみな選手が多い。

 6位以降の下位選手では、左腕投手に年齢バランスで補強したい大学生右腕、即戦力またはスラッガー候補をもう一枚獲得したい。

 左腕投手では、公立校の将来性豊かな玉村昇吾(丹生高)井上温生(前橋商高橋本侑樹(大商大)がおり、大学生右腕では浦本千広(九産大が候補になる。

 さらにスラッガー候補なら、伸びしろもある中村健人(慶大・外野手)安本竜二(法大・内野手木蓮太朗(浜松開城館高・内野手は下位でも獲得できそうだ。

オリックスのドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…海野 隆司(東海大・捕手)…攻守で総合力ナンバー1の即戦力捕手

 2位…坂本 裕哉(立命館大・投手)…ストレートと変化球が抜群の即戦力左腕

 3位…原澤 健人(スバル・内野手)…左右に打ち分けられる長距離砲の三塁手

 4位…岡林 勇希(菰野高・投手)…最速153キロで先輩・西を超える逸材

 5位…玉村 昇吾(丹生高・投手)…内角への制球力抜群の福井のドクターK

 6位…浦本 千広(九産大・投手)…ゲームメークに優れた隠し球右腕

 7位…青木蓮太朗(浜松開誠館内野手)…大化けの可能性を秘めた大型遊撃手

 

 昨年は遊撃手にこだわり、小園海斗を外したあとも、方針を曲げずに太田と宜保翔の2人の将来性豊かな選手を獲得し、2位でも頓宮を指名するなど、上位で野手2人を指名した会心のドラフトになった。今年も海野を予想したが、石川や井上といった高校生スラッガーの1位指名などもサプライズであるかもしれない。

 

 

ヤクルト~今年は上位で即戦力投手を狙う

●チーム防御率、打率ともリーグ最下位で大苦戦のシーズン

 今年の開幕は上々で、4月は首位に1ゲーム差だったが、5月の16連敗が低迷の始まりだった。昨年、2位躍進のきっかけになった交流戦も11位で終え、最下位が定位置なまま、9/7にはCSへの進出が消滅した。翌日には小川淳司監督と、次期監督候補だった宮本慎也ヘッドコーチが、成績を理由に辞意を表明した。

 今年のヤクルトはとにかく投手陣が悪すぎた…昨年も悪かったが、今年のチーム防御率4.64は、セ・リーグのみならず12球団断トツの最下位、交流戦では唯一の5点台(5.08)と、投手陣が機能していない。
 昨年チーム打率1位の打線も、今年はチーム打率.242で、なんとこちらも12球団最下位だ。反面、チーム本塁打はリーグ2位の150本で、既に昨年の数字を超えている。
 要は投手陣が悪すぎるため、結果大量点を狙うしかない一発頼みの大味な打線になってしまい、投打でこの成績では、上位に食い込むのは無理な話だ。 

【9/7現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…4.64⑥(4.13④)打率….242⑥(.266①)

 本塁打…150②(135④)盗塁56⑤(68④)

 得点583②(658②)失点653⑥(665⑥)得失点差▲70(▲7)

 

●ベテラン頼みの12球団で最も高齢化しているチーム

 ヤクルトは12球団で、最も選手の平均年齢が高い28.4歳で、投手も野手の両方とも一番高い。平均年齢が28歳を超えているのは、あとは阪神だけで、一番若い日本ハムとは、投手では2歳、野手では3歳も高い。

 私が伝説期と区分している35歳以上の選手が14名おり最多、10名を超えているはヤクルトのみだ。投手では石川雅規近藤一樹がおり、今年はソフトバンクから五十嵐亮太寺原隼人を迎え、さらに平均年齢を押し上げた。野手でも、青木宣親大引啓次バレンティン、雄平、坂口智隆とズラリと主力が並ぶ。

 ベテランが良く頑張っていると言ってしまえばそれだけだが、チームの成績を見る限りプラスとは言えない。既にかつてのエース館山昌平と4番の畠山和洋が現役引退を表明し、大引啓次は引退を拒否して退団が決まった。これから暫くはベテランの引退セレモニーが続き、なかなか上位に定着している姿が想像できない。

 【ヤクルトの5年後の主力選手】

 投 手…小川泰弘・高梨裕稔・大下佑馬・原 樹理・風張 蓮・中尾 輝

     清水 昇・寺島成輝・高橋奎二・梅野雄吾

 捕 手…中村悠平・西田明央

 内野手西浦直亨山田哲人奥村展征・廣岡大志・太田賢吾・村上宗隆

 外野手…塩見泰隆・山崎晃大朗・中山翔太

 

 投手陣の先発は小川、高梨、原、高橋がいるが駒が不足している。抑えはもっと悲惨で、梅野がチーム最多の63試合に登板しているが、昨年54試合に登板した中尾は12試合、同じく53試合の風張も14試合と登板数が激減。この2人の復活がカギだが、それでも量的に不足している。

 野手陣で上記選手で規定打席に達しているのは、山田哲と中村、村上の3人で、太田が300打席を超えレギュラーに近づいた。5年後も31歳の山田哲を中心に、今年ブレイクした村上が4番に座り、外国人でクリーンアップを形成できていれば、破壊力のある中軸を形成できる。ただ、前後を打つ青木のようなリードオフマンタイプや、長打力もあるポスト雄平の育成が必要だ。

  平均年齢の高さと今年の成績、若手の主力候補の少なさなど、2~3年のドラフトでどうにもなるレベルではない。強いチームを目指すなら長期的な戦略が必要だが、緊急の課題は高齢化する主力選手の後釜を見つける現有戦力の底上げだ。

 

●上位は即戦力投手、走れる遊撃手と将来性のある捕手

 投手の年齢配置は意外にも悪くなく、25歳に5名と偏っているが、19歳~32歳まで空き年齢はなくバランスは問題ない。

 野手は捕手と外野手の年齢構成は問題ないが、左打の外野手が山崎晃大朗の26歳が最年少では話にならない。内野手は22歳と24歳の各3名と集中しバランスが悪く、リーグ5位の盗塁数(半分は山田哲)が示す通り走れる選手が少なく、リードオフマンタイプの選手を獲得したいところだ。 

【ヤクルトの補強ポイント】

 投 手…即戦力の先発投手と抑え投手

 捕 手…ポスト中村の高校生捕手

 内野手リードオフマンを務められる即戦力野手(二塁または遊撃)

 外野手…左打の即戦力または高校生スラッガー

 

 優先順位は投手で、1位入札は森下暢仁(明大)が予想される。1位はとにかく、直ぐに先発ローテを任せられる即戦力に行くべきで、森下のほかに河野竜生(JFE東日本)や立野和明(東海理化のいずれかは確実にしたい。

 2位指名も指名順位が早いので即戦力投手を2枚獲得したい。先発候補なら安定感抜群の宮川哲(東芝、伸びしろなら太田龍JR東日本吉田太貴(日体大が候補だ。ポスト石山の抑えで、津森宥紀(東北福祉大西田光汰(JR東日本を獲得できれば上位指名は成功と言える。

 3位で即戦力野手で、ここはリードオフマンタイプを指名したい。大学生なら宇草孔基(法大・外野手)柳町達(慶大・外野手)、社会人なら小深田大翔(東京ガス内野手が当てはまり、上位で即戦力野手を抑えておきたいところだ。

 上位で即戦力を指名できたならば、4~5位は高校生指名で投手または捕手、スラッガー候補を獲得したい。

 投手なら前佑囲斗(津田学園高)小林珠維(東海大札幌高)岩本大地(石岡一高)など将来性のある選手が候補になる。

 高校生捕手の上位クラスは東妻純平(智弁和歌山高)だけのなので、守備力の山瀬慎之介(星稜高)、打力の藤田健斗(中京学院中京高)のいずれかは押さえておきたい。

 スラッガー候補では、井上広大(履正社高・外野手)や、今年豊富な遊撃手から紅林弘太郎(駿河総合高・内野手、内外野守れる遠藤成(東海大相模高・内野手がピタリとはまる。

 6位以降の下位選手では、即戦力なら年齢別で手薄な部分や一芸に秀でた選手、または高校生指名を続けるのも有りだ。

 投手の年齢別バランスは悪くない編成なので、大学生の右腕または高校生左腕、24歳の左腕を補強すれば穴はなくなる。大学生右腕なら同じ九産大浦本千広福森耀真、高校生左腕なら米山魁乙(昌平高)玉村昇吾(丹生高)、社会人左腕では若林優斗(王子)は変則左腕で一芸にも秀でており下位で獲得できるチャンスがある。

 さらに一芸に秀でた選手なら、長打力のある木蓮太朗(浜松開城館高・内野手、俊足の稲垣誠也(日本通運内野手はチームの補強ポイントに合っている。

 上位候補ではないが、経験豊富な岡野祐一郎(東芝・投手)もリストアップしており、現在のヤクルトの不足部分を補うにはフィットすると思う。

【ヤクルトのドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…森下 暢仁(明大・投手)…大学でさらに成長を遂げた即戦力右腕

 2位…西田 光汰(JR東日本・投手)…気迫を前面に押し出すリリーバー

 3位…柳町  達(慶大・外野手)…内外野守れ、打率を残せる巧打者

 4位…遠藤  成(東海大相模高・内野手)…高校通算45本のスラッガー

 5位…米山 魁乙(昌平高・投手)…140キロ直球と大きなカーブが武器

 6位…岡野祐一郎(東芝・投手)…社会人屈指の制球が武器の即戦力右腕

 7位…福森 耀真(九産大・投手)…伸びしろ十分の最速150キロ右腕

 

 現時点で次期監督が誰か分からないが、今年はまずは手薄な投手陣補強と、ベテランの主力組の後継者指名(育成)を優先順位に進めていく必要がある。

 

 

19年ドラフト1位候補12人

 社会人野球の都市対抗に続いて、夏の甲子園大会も終わり、あとは大学の秋季リーグ戦を残すのみになった。これから高校生と大学生はプロ志望届を提出し、運命の10/17を迎える。そこで、今回はドラフト1位候補12名を予測したいと思う。

 今年の傾向は、一言でいえば投手に上位指名候補が多く、野手が不足気味だ。投手では高校BIG4に加え、高卒→社会人3年目に逸材が多く、過去あまり記憶にないが、大学生捕手が豊作の年と言える。

 

●1位重複の間違いなしの、佐々木・奥川・森下のS級投手

 1位入札が間違いないのは、令和の怪物・佐々木朗希(大船渡)と、甲子園準優勝投手の奥川恭伸(星稜)、即戦力候補ナンバーワンの森下暢仁(大分商→明大)の3名で、どの球団も最後まで頭を悩ますことになるだろう。

 佐々木のポテンシャルの高さは異次元で、主戦力になるには2~3年は擁すると思うが、大谷翔平エンゼルス)クラスの投手になる将来性を秘めている。既に日本ハムが1位指名を公言しており、育成重視のソフトバンク、地元の楽天、有望な若手投手が育ってきているロッテも加え3~5球団の入札が予想される。

 現時点では佐々木より完成度の高い奥川は、シーズン後半あたりから先発ローテーションに入る可能性が十分にあり、準地元の中日からの指名が固い。巨人は佐々木と奥川のどちらかの指名で間違いないが、知名度のある選手を好むので、甲子園で全国区になった奥川指名が濃厚と予想した。奥川へは2~4球団の指名がありそうだ。

 森下は即戦力で、高校時代(大分商)も上位候補の選手が、本当に力をつけて成長してくれた。投手の即戦力が欲しいヤクルトと西武、この間大学生投手1位指名が成功しているDeNAも加えると、3~4球団の指名が予想される。

 今年は育成よりも、即戦力志向の強い広島は、奥川と森下のどちらかで迷いそうだ。阪神もこの3選手のいずれかの指名で間違いないだろう。

 単独指名がありそうなのがオリックスで、不足している左腕で即戦力の河野竜生(鳴門→JFE西日本)や、強肩捕手の海野隆司(関西→東海大の指名が有効だ。

 現状でいえば佐々木はパ・リーグ、奥川と森下はセ・リーグになりそうで、結局、スケールの大きい選手は、今年もパ・リーグに行きそうな予感がする。

 

●外れ1位とは呼ばせない、精鋭揃いの投手陣

 仮に12球団すべてが、佐々木と奥川、森下に行った場合、次に重複が予想されるのも投手だ。先述した河野と高校BIG4の西純矢(創志学園及川雅貴(横浜)、森下に負けず劣らずの即戦力・津森宥紀(和歌山東東北福祉大が挙げられる。

 河野はどこのチームも欲しがる先発左腕で、最速151キロが注目されるが制球力と投球術に長けており、開幕から先発ローテーションが期待できる。

 西は闘志むき出しのピッチングスタイルに加え、一級品のスライダーが武器の将来のエース候補だ。及川はムラのある投球が欠点だが、それを補うには余りあるほどツボに入ったときの投球が素晴らしい。スタミナもあり左腕はどのチームでも欲しいので重複も予想される。

 抑えが不足しているチームは、右サイドハンドのリリーバー津森が有力で、大学でも抑え専門で鍛えたメンタルの強さに、スタミナもあり間違いなく即戦力になれる。

 このほかに高卒3年目の社会人が注目だ。先述した河野のほかに、190cmのパワーピッチャー太田龍れいめいJR東日本は、角度と威力のあるストレートで若獅子賞も獲得した逸材だ。

 立野和明(中部大一→東海理化も、ストレートが素晴らしい。都市対抗の決勝戦で登板(トヨタ自動車の補強選手)したのを見たが、低めに伸びのあるストレートを投げ込み、どの打球も差し込まれ詰まっていて、独りもまともに捕らえることができなかった。

 同じ社会人の宮川哲(東海大山形→上武大→東芝は、150キロを超えるストレートに安定感抜群のピッチングは、まさしく即戦力で、1位指名で消える選手だ。

 野手では高校日本代表の4番・石川昴弥(東邦)が1位候補になる。石川は今春のセンバツの優勝投手だが、夏の大会は野手に専念した。高校通算54本塁打に加え守備も巧く、投手兼任で肩とスローイングも申し分ない将来の4番候補だ。

 

●どんでん返しのサプライズ1位指名もある有力選手

 ドラフトは1位指名が重複した場合は、「くじ」による抽選なので、外れたチームの状況により補強ポイントも変わるので、必ずしも上位候補12名にはならない。

 先述した選手以外にも、投手では今夏急成長した左腕・宮城大弥(興南は、高校BIG4に並ぶ高い評価を得ている。また、甲子園で高いポテンシャルを見せた鈴木寛人(霞ヶ浦や奥川と並び総合力の高い井上広輝(日大三、大学生ながら伸びしろ十分の杉山晃基(盛岡大付創価大)など魅力のある投手はまだまだいる。

 野手では、俊足巧打のスピードスター森敬斗(桐蔭学園内野手、甲子園で評価を高めたスラッガー井上広大(履正社・外野手)、海野が守備なら打撃と俊足が魅力の強打の捕手・佐藤都志也(聖光学院東洋大、社会人ナンバーワンのヒットメーカー小深田大翔(大阪ガス内野手も候補になる。

 今年の甲子園大会は、不作を通り越して凶作とも言われたが、それはあくまで甲子園のみの話であって、今年は1位候補が12人揃い、十分に豊作と言えそうだ。

 

【1位候補選手12名】 ※氏名の横は獲得を検討または表明している球団

 ■投手

  佐々木朗希(大船渡)…全球団

  奥川 恭伸(星 稜)…全球団

  西  純矢(創志学)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・ヤクルト・広島

  及川 雅貴(横 浜)…全球団

  森下 暢仁(明 大)…全球団

  津森 宥紀(東福大)…楽天・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA・巨人

             ヤクルト・西武・広島

  河野 竜生(JFE西)…全球団

  太田  龍(JR東日)…ロッテ・オリックス

  立野 和明(東海理)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・巨人・ヤクルト・西武

  宮川  哲(東 芝)…ヤクルト・広島

 ■野手

  石川 昴弥(東 邦)…中日

  海野 隆司(東海大)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・巨人・ソフトバンク・ヤクルト