ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

2019甲子園~ドラフト候補は不作?凶作?

 令和初の甲子園大会は、履正社(大阪)が、好投手・奥川擁する星稜(石川)を下して初優勝を遂げた。春の選抜初戦で、奥川に完全に抑えられた履正社が、見事に攻略した見応えのある決勝戦だった。

 一方で、今年のドラフト候補で見ると、各スカウトからは「不作」を通り越して「凶作」とまで言われた。元ヤクルトの名スカウトの片岡宏雄氏も、自分が現役スカウトなら、今年は早々と甲子園を退散すると厳しいものだった。

 今年の甲子園に限らず、片岡氏は「体力もあり、技術もあり、まとまりのある選手が多いが、プロとして伸びしろや可能性を感じさせる素材としては物足りない」と述べている。

 昨夏のような甲子園組が上位指名を占める豊作ではないが、楽しみな選手はおり、今夏甲子園のドラフト候補選手の今後の動向に注目していきたい。

 

●ドラフト1位指名は間違いなし、星稜・奥川

 今夏の甲子園の最大の注目選手は、大会ナンバー1投手の奥川恭伸(星稜)で決まりだ。前評判以上の完成度の高い投球を見せ、初戦の旭川大戦(北北海道)の頭脳的な投球、3回戦の智弁和歌山奪三振ショーなど、評価は断トツの特Aで、競合も予想され間違いなく1位で消えるだろう。

 同じ1位指名候補では、鈴木寛人(霞ケ浦の評価が高い。初戦の履正社戦では打ち込まれたが、186センチの長身から角度のあるストレートが魅力の素材型で、外れ1位の可能性なら十分にある。

 このほか、前佑囲斗(津田学園も上位で間違いなく消える選手だ。前も履正社打線に打ち込まれたが、下半身に力強さを感じるパワーピッチャーで、指にかかったときのストレートは素晴らしく、大化けする可能性を秘めている。

 上位指名は上記3名が候補になる。下位指名で抑えておきたい選手では、林優樹(近江)飯塚脩人(習志野池田優佑(智弁和歌山の3人を挙げたい。

 林は技巧派の左腕で、速球派が多いなかキレとテンポで勝負するピッチングスタイルは、先発、ワンポイントどこでも可能性を感じる。飯塚は春の大会よりフォームに無駄がなくなり、ストレートで押す投球は中継ぎ・抑えに適性がありそうだ。池田は今夏の大会で一番成長した投手で、ストレートも140キロ後半を計測、制球力も上がった。

 このほかに清水大成(履正社も速球派と技巧派の中間で、左腕不足のチームなら抑えておきたい投手だ。西舘勇陽(花巻東は、最後まで本調子ではなったがポテンシャルは高く、育成主眼のチームからの指名は十分にある。

 下位または育成では、能登嵩都(旭川大)は星稜戦での好投がインパクトを残し、昨夏の沼田(巨人)のように育成なら十分可能性がある。他には谷真之介(関東一)赤塚健利(中京学院大中京は、粗削りだが将来性を感じさせる選手だ。

 

●野手は井上と黒川のスラッガーに注目

 野手は残念ながら1~2位指名は厳しい。上位指名の可能性があるのが井上広大(履正社・外野手)黒川史陽(智弁和歌山内野手の2人か。

 井上は187センチの数字以上に大きさを感じる選手で、決勝戦で奥川を捉えた3ランは相手の失投を見逃さず、センターに打ち返した姿勢に成長を感じた。右の長距離砲はどの球団でも不足しており、状況によっては上位指名の可能性が十分にある。

 黒川は甲子園では残念ながら結果が出なかったが、長打力のあるセカンドはプロでも稀少で、何より何が何でも勝つんだという闘争心とキャプテンシーが技術以上に魅力を感じる。

 下位指名では捕手と遊撃手に候補が多い。捕手の一推しは、藤田健斗(中京学院大中京で、強肩にフットワークの俊敏性、ブロッキングに加え4番で主将と、捕手に必要な要素を兼ね備えている。東妻純平(智弁和歌山も強肩に加え打撃も良く、タイプの違う投手陣をリードする技術もあり指名は間違いない。

 他には山瀬慎之介(星稜)有馬諒(近江)は、ともに打力に課題が残るが、捕手らしい捕手だ。山瀬はとにかく世代ナンバーワンの強肩で、チャンスの場面でよく打った。有馬は捕手としての総合力の高さが魅力だ。持丸泰輝旭川大)は、紹介した捕手のなかでは、唯一の左打で打撃センスが良く、近藤(日本ハム)や銀次(楽天)のようにコンバートも面白い。

 遊撃では前評判の高い武岡龍世(八戸学院光星韮澤雄也(花咲徳栄がまずまずの結果を残した。武岡は打撃に迷いを感じ、守備以外での成長を感じえなかったが、打撃技術の向上はプロに入ってからでも遅くなく、守備力と走力で見せるセンスは本物だ。韮澤は得意の打撃で実力の片りんを見せ、ともに高校選抜に選ばれており、世界大会での活躍に期待したい。

 同じ遊撃手では、石井巧(作新学院は右打ちで、堅実な守備に打撃でもアピールしたが、1位指名以外は進学が不文律の作新では大学進学になりそうだ。西川晋太郎(智弁和歌山は走攻守にバランスが取れた選手で、特に守備力が高い。同じ守備力では渋谷嘉人(関東一)の評価も高く、一芸に秀でた西川や渋谷の指名も面白い。

 この他に杉田翔太郎(敦賀気比内野手は、サイクルヒットで注目を浴びた好打者で、最終打席でサイクルを決める技術の高さと集中力が評価できる。走攻守三拍子揃った齋藤來音(静岡・外野手)天井一輝(広島商・外野手)も巧打者タイプで、下位~育成なら指名の可能性が十分にある。

 スラッガーでは習志野戦で左右に打ち分けた2本塁打を放った丸山蓮(鶴岡東・外野手)と、山梨のデスパイネこと野村健太(山梨学院・外野手)が注目だが、スラッガータイプは育成での大成が難しく、大学・社会人で磨きをかけ3~4年後に期待したい。

 

【甲子園出場選手の評価まとめ】

 1位指名候補~奥川恭伸(星稜・投手)鈴木寛人(霞ケ浦・投手)

 上位指名候補~前佑囲斗(津田学園・捕手)武岡龍世(八戸学院光星内野手

 (2~3位) 黒川史陽(智弁和歌山内野手)井上広大(履正社・外野手)

 中位指名候補~飯塚脩斗(習志野・投手)林 優樹(近江・投手)

 (4~5位) 池田陽佑(智弁和歌山・投手)藤田健斗(中京学院大中京・捕手)

        山瀬慎之介(星稜・捕手)有馬 諒(近江・捕手)

        東妻純平(智弁和歌山・捕手)韮澤雄也(花咲徳栄内野手

 下位指名候補~清水大成(履正社・投手)西舘勇陽(花巻東・投手)

 (6位~)  持丸泰輝(旭川大・捕手)杉田翔太郎(敦賀気比内野手

        石井 巧(作新学院内野手)西川晋太郎(智弁和歌山内野手

        丸山 蓮(鶴岡東・外野手)齋藤來音(静岡・外野手)

 育成指名候補~能登嵩都(旭川大・投手)谷真之介(関東一・投手)

        赤塚健利(中京学院大中京・投手)渋谷嘉人(関東一・内野手

        天井一輝(広島商・外野手)野村健太(山梨学院・外野手)

 

 最後に、今夏の甲子園を制した履正社だが、初戦で鈴木(霞ケ浦)、次に前(津田学園)、準々決勝で谷(関東一)、準決勝で中森(明石商・2年)、そして奥川と大会を代表する好投手を打ち崩しての優勝は本当に見事だった。

 大阪代表は直近10年で実に4度目の全国制覇(大阪桐蔭が3回)だ。まさに大阪を制するものは全国を制するレベルの高さで、かつてのPL学園黄金期ではないが、打倒大阪で各地区の巻き返しに期待したい。

 

 

 

19年トレードと補強選手をチェック!

 シーズンが始まり、成立したトレードは6件。最近は以前のような大型トレードも少なくなり、良い意味での驚きを期待している分、物足りなさもあるが、それぞれ振り返ってみたい。

●DeNA熊原健人(投手)⇔ 楽天・濱矢広大(投手)×

 楽天は則本昴の復帰が夏場になることから、先発要員の補強で熊原を獲得。DeNAも計算できる左腕の中継ぎが砂田とエスコバーしかいない状況のなか、中継ぎに厚みを持たせるため濱矢を獲得した。

 両球団の意図が明確な良いトレードだったが、残念ながら互いに結果は出ていない。特に熊原(柴田高→仙台大)は地元・仙台への凱旋トレードになったが、ここでも期待に応えることができていない。

 

●巨人・吉川光夫(投手)宇佐見真吾(捕手)⇔日ハム・鍵谷陽平/藤岡貴裕(投手)△

 先発、中継ぎに厚みを持たせたい巨人が、左右の中継ぎの鍵谷と藤岡を獲得した。上沢のケガで、ただでさえ薄い先発陣がさらに薄くなった日本ハムは、かつてのMVP吉川を呼び戻し、飽和状態の巨人の捕手陣から宇佐見を獲得した。

 西武からFAした炭谷の加入で、巨人はレギュラーの小林に打撃の良い大城の成長、さらに阿部の再コンバートもあり、捕手の2番手候補だった宇佐見は、一気に5~6番手まで後退した。宇佐見は打撃が良いので、捕手が不足している西武やオリックス、ヤクルトあたりが獲得すると思っていたが、左打ちの捕手に狙いを定めた日本ハムが良い補強ができたと思う。

 藤岡は入団当初は大学生ナンバー1左腕で、誰もがロッテのエース誕生を期待した。同期入団の鈴木や益田が主力になるなか、結果を残すことができず、昨年日本ハムへトレード後、わずか1年で巨人へ移籍した。年齢もまだ30歳、老け込む年齢ではないので、新天地での覚醒に期待したい。

 

●中日・松井雅人(捕手)松井佑介/モヤ(外野手)

               ⇔オリックス松葉貴大(投手)武田健吾外野手)△

 伏見のケガで、戦力になる捕手が若月と山崎勝しかいなくなったオリックスが、巨人と同じく捕手に余力のある中日から松井雅を獲得した。投手陣が不足している中日も松葉を獲得し、ここは納得できる。ただ、同じ右打ち外野手の松井佑と武田はやや理解に苦しむ。

 オリックスの外野陣は、吉田正しかレギュラーはいないが、実績のある後藤や小田、若手の佐野や西浦、ルーキーの中川も外野を守れ、25歳の武田を放出し、32歳の松井佑を獲得する必要が見当たらない。中日もレギュラーの大島と平田以外は伸び悩み、将来性を期待した武田の獲得は長期的に見れば理解できるが、打線が課題の現状を見れば即効性はない。

 メネセスの退団で、外国人選手の枠が空いたなかでモヤの獲得は良かった。中日の外国人選手のレベルは高く、ファームで好成績を残してもモヤの出番は限られ、ここは良いトレードになった。

 

●広島・下水流昴(外野手)⇔楽天・三好 匠(内野手)〇

 31歳のベテラン下水流と26歳の三好のトレードはチーム状況をよく表したトレードになった。

 まず三好だが、浅村の加入で内野のレギュラーが埋まり、出番がますます減少した。また、同じ右打ちでも守備に長けた村林や西巻、同じ長距離砲の内田もいる。反面、広島は右打ちの内野手でレギュラーは菊池涼しかおらず、三好にとっては大きなチャンスになった。

 下水流は、守備が巧くしぶとい打撃が売りの選手で、獲得は楽天外野陣の不振の他ならない。レギュラーは島内しかおらず、期待のオコエは今年も不振、ルーキー辰巳も打力が今一つ、昨年新人王の田中和もケガで出遅れ、主砲ブラッシュは守備に不安がある。そのなかで下水流の獲得は、良いトレードだったが、一方で楽天の危機感も垣間見れた。

阪神・石崎 剛(投手)⇔ロッテ・高野圭佑(投手)×

 中継ぎ投手の補強という両球団の思惑だったが、同じ右投げの速球派の中継ぎで、正直意味が分からなかった。また、石崎はスリークォーターで、ロッテには同じタイプの益田もおり、現在はともにファーム…意味があったのだろうか…

 

●巨人・和田 恋(外野手)⇔楽天・古川侑利(投手)〇

 年齢はともに24歳、下水流の獲得同様、楽天は外野の補強で和田を、先発投手陣が不足している巨人は通算5勝の古川を獲得した。

 特に和田は、昨年ファームで本塁打王を獲得した有望株だった。ただ、今年はFAで丸が加入し、レギュラーの可能性が遠のいたが、楽天移籍後、和田はスタメンに名を連ねて活躍しており、本人にとっても良いトレードになった。

 一方で古川は、ポテンシャルも高く、まずまず結果も残しているが、有田工(佐賀)からドラフト4位で注目度が高くないなかで成長してきた。巨人という注目度の高いチームで、パフォーマンスを発揮できるかが不安要素になる。

 

【移籍・支配下登録選手】

●西武~齋藤誠人(捕手)~…捕手が不足のなか育成から支配下

ソフトバンク~川原弘之/スチュワートJR(投手)周東佑京/コラス(外野手)

 川原はドラフト2位で入団ののち、ケガで長期間低迷し育成になったが、支配下を勝ち取り、今年は18試合に登板し、ようやくスタートラインに立った。スチュワートはMLBドラフト一巡目指名の選手で、色々な意味で今後に注目したい選手だ。

 周東は超がつく俊足で、脚だけで食っていけでる選手でシーズン直前に支配下になった。コラスも6月に支配下になり、デスパイネ離脱後、一軍に昇格している。

オリックス~張奕/本田仁海/神戸文也(投手)

 3名とも育成からの支配下登録だが、変わり種は張で、野手から投手へ転向し、プロ初勝利も上げた。ここ最近のオリックスの投手育成には目を見張るものがある。

●ロッテ~マーティン(外野手)

 現役メジャーリーガーの入団で、途中加入の難しい条件のなか、結果も残している。俊足で長打力もあり、選球眼も悪くない。

楽天~寺岡寛治/由規(投手)フェルナンド(外野手)

 3名とも育成から支配下登録だが、経緯が違う。由規はヤクルトを退団後、トライアウトからの再起に期待したい。寺岡は育成から支配下になり中継ぎでプロ初登板を果たした。フェルナンドは支配下~育成からの返り咲きで、自慢の長打力で外野陣の一角に食い込みたい。

●広島~モンティージャ(投手)サンタナ内野手

 ドラフトだけではなく、外国人選手まで育成の軸足を置いた広島は、両外国人を育成から支配下登録した。

 モンティージャは150キロを超える左腕で、今後に期待が持てる。サンタナは内野ならどこでも守れる器用さが売りで、バティスタの残念な登録抹消のあと一軍デビューを果たした。

●巨人~デラロサ/堀岡隼人(投手)加藤脩平/山下航汰(外野手)

 デラロサ以外は。育成から支配下を勝ち取った。MLBでも実績のあるデラロサは、投手陣が薄いなか入団したが、残念ながら救世主には成りえなかった。どうもここ最近の巨人の途中入団の外国人選手は中途半端な感が否めない。

 高卒1年目ながらファームで3割を打ち、首位打者の山下の支配下登録は良かった。FAだけではなく、育成から這い上がってくる選手が活躍できれば、巨人の見方も変わってくる。

●DeNA~ソリス/中川虎大(投手)

 楽天から獲得した濱矢が結果を残せず、同じ左腕のソリスを獲得したが4試合登板に留まっている。ファームで結果を残した中川は育成から支配下になり、プロ初先発も経験し、今後に期待がかかる。

阪神~片山雄哉(捕手)ソラーテ(内野手) 

 片山は育成から支配下になり、唯一の左打捕手でチャンスはありそうだ。途中入団のソラーテは、いきなりサヨナラ本塁打を放つなど、派手なデビューを飾ったが、さすがは話題先行のチームで、訳の分からないセクシーを連発するも、ザルな守備に加え、バットも一気に湿りファームに落ちた。

 

 最後に、まったく動きのなかったのが、セ・リーグ断トツ最下位のヤクルトである。支配下選手は66名で、まだ余裕があるなか補強は一切なしである。12球団断トツの平均年齢の高さでベテランが多いため、交換トレードの成立は難しい。それならば育成からの昇格や他球団からの金銭トレード、新外国人の補強など方法はあったと思うが…勝つために最大限の努力をしないフロント、何も求めない現場に寂しさを感じた。

 

 

 

18年ドラフト選手の現在地(下)

●及第点ドラフトだった阪神オリックス

 阪神は1~3位まで左打ちの巧打者タイプを揃え、オリックスは金子と西が抜けたあとの投手の指名が今ひとつで及第点とした。

 阪神はここ数年、外野手指名が最も多いが、藤原(ロッテ)に始まり、辰巳(楽天)を外し、徹頭徹尾で近本光司大阪ガス・外野手)を指名した。その近本が大当たりで、ルーキーで唯一の規定打席を達成しており、打率.284にリーグ3位の盗塁数21も素晴らしく新人王の最右翼だ。

 3位の木浪聖也(ホンダ・内野手)も、内野をどこでも守れるユーティリティプレーヤーで、途中加入した外国人選手にポジションを追われたが、打力を磨けばレギュラーを奪い返すことも可能だろう。

 2位の小幡竜平延岡学園内野手)はファームで規定打席に達しており期待値の高さが伺える。投手の即戦力の齋藤友貴哉(ホンダ・投手)はファームで8Sを上げているが、分厚いリリーフ陣のなか一軍では1試合登板に留まっている。

 ※その他 5位~川原 陸(創成館・投手)湯浅克己(BC富山・投手)

 

 オリックスで一番の驚きは、7位の中川圭太東洋大内野手)の活躍だ。指名当初は走攻守に見張るものがなく、指名の意図が理解できなかったが、プロ入り後は広角に打ち返すスタイルがはまり、規定打席達成とシーズン3割も期待できる。

 2位の頓宮裕真(亜大・内野手)は開幕スタメンで、長打力が光ったが内野守備に苦しみ捕手へ再転向した。3位の荒西裕大(ホンダ熊本・投手)は初勝利を上げ、6位の左澤優JX-ENEOS・投手)も一軍登板を果たしたが、即戦力としては物足りない。

 5位の宜保翔(未来沖縄・内野手)はファームで規定打席に達し、育成1位の漆原大晟(新潟医療福祉大・投手)は支配下契約にはならなかったが、ファームで16Sを上げ若手が着実に育っている。

 ※その他 1位~大田 椋(天理・内野手)4位~富山凌雅(トヨタ自動車・投手)

 

●不合格ドラフトの楽天とD℮NA

 楽天DeNAは、補強なのか育成重視なのか意図がハッキリせず、評価が厳しかった。いずれも2位以降の指名順位が高く、DeNAは上位は大学・社会人、下位で高校生と独立リーグのいつものパターンに落ち着いた。

 楽天は新人を次々に抜擢し、1位の辰巳涼介立命館大・外野手)は打率.243に盗塁数9は物足りない感もあるが、走攻守に期待を抱かせる。辰巳以上のインパクトを残しているのが、6位の渡辺佳明(明大・内野手)でチャンスに滅法強く、外野もこなせる万能選手で辰巳以上に欠かせない戦力になっている。2位の太田光(大商大・捕手)、7位の小郷裕哉(立正大・内野手)も一軍で貴重な経験を積んでいる。

 投手では4位の弓削隼人(スバル・投手)が、開幕ローテを掴んだがケガで離脱。オールスター後に復帰するといきなり2勝を上げ、後半戦のキーマンになりそうだ。

 ※その他 3位~引地秀一郎(倉敷商・投手)5位~佐藤智輝(山形中央・投手)

      8位~鈴木翔天(富士大・投手)

 

 DeNAは小園(広島)のあとに、1位で上茶谷大河東洋大・投手)を指名し、結果として優勝争いの原動力になっている。すべて先発で6勝を上げ、ハイレベルな新人王争いのなか投手の最有力候補だ。3位の大貫晋一新日鉄住金鹿島・投手)も4勝を上げ、即戦力の期待に応えている。

 2位の伊藤裕季也(立正大・内野手)は一軍デビューは遅れたが、ファームで11本塁打を放ち、一軍でも自慢の長打力を見せており、ケガで離脱した宮崎の穴をカバーする活躍が期待できる。

 ※その他 4位~勝又温史(日大鶴ケ丘・投手)5位~益子京右(青藍泰斗・捕手)

      6位~知野直人(BC新潟・内野手

 

●失敗ドラフトのヤクルトと巨人

 それぞれ1位指名を2回外したが、ヤクルトはドラフトでの補強ポイントをカバーできず、巨人はいきなり育成路線に転換したが、2位以下がすべて高校生指名と偏りがありすぎて評価は低かった。

 

 最下位独走中のヤクルトは、1位の清水昇国学院大・投手)が先発も含め9試合、5位の坂本光士郎新日鉄住金広畑・投手)は2試合、7位の久保拓眞(九共大・投手)は11試合登板も、いずれも勝ち星は遠く、即戦力候補が戦力になれていない。

 野手では2位の中山翔太(法大・外野手)が自慢の長打力で、高齢化しているレギュラー陣を脅かす存在になっているが、実力以上にキャラが際立っている。オープン戦で注目をあびた8位の吉田大成明治安田生命内野手)は、わずか8試合出場で、即戦力を期待された選手は中山以外は総崩れで、チームの成績にも反映している。

 ※その他 3位~市川悠太(明徳義塾・投手)4位~濱田太貴(明豊・外野手)

      6位~鈴木裕太(日本文理・投手)

 

 ヤクルト以上にルーキーの成績が乏しい巨人だが、現在は首位を走っている。高校生指名が主で、この時期で判断するものではないが、1位の高橋優貴八戸学院大・投手)の4勝だけでは寂しい。

 ファームでも体力作りが主なのは理解するが、出場機会も少ない。そのなかで光っているのが、育成1位の山下航汰健大高崎・外野手は、ファームで唯一の3割打者(.322)で、イースタン堂々の首位打者、高卒では初めて1年目で支配下登録を勝ち取った。

 ※その他 2位~増田 陸(明秀日立・外野手)3位~直江大輔(松商学園・投手)

      4位~横川 凱(大阪桐蔭・投手)5位~松井義弥(折尾愛真・外野手)

      6位~戸郷翔征(聖心ウルスラ・投手)

 

 全体的にみると、今シーズンが大学生選手の頑張りが目立っており、社会人は近本が孤軍奮闘している。高いレベルで期待値が大きかった高校生1位が残念ながらくすぶっている。ただ、ドラフトの結果が出るのは数年かかり、どういう評価に変わるか期待して見ていきたい。

 最後に今年の新人王レースはハイレベルで、セ・リーグでは上茶谷(DeNA)と近本(阪神)のほかに、投手では床田寛樹(広島)、野手では村上宗隆(ヤクルト)や若林晃弘(巨人)がいる。

 パ・リーグも中川(オリックス)や辰巳(楽天)、松本航(西武)に、高橋礼(ソフトバンク)や岩下大輝(ロッテ)の両投手も有資格者で本当にレベルが高く、今シーズンが終わった後のタイトル争いにも注目したい。

 

18年ドラフト指名選手の現在地(上)

 いよいよ100試合を超え、ペナントレースも佳境に入ってきた。ドラフトはチームとして成果が出るには、10年は掛かるので、現段階で成否を判断するものではないが、今年のルーキーたちの現在地を見てみよう。

 

●評価の高かった、中日、日本ハム、ロッテのドラフト

 昨年、ドラフト成功の評価をした3球団。中日と日本ハムは育成重視の未来型で、日本ハムは指名順位が秀逸だった。

 注目の高かった中日1位の根尾昂大阪桐蔭高・内野手)は、高卒なので当然といえば当然なのだが、ここまで苦労するとは思わなかった。もしかしたら87年1位の立浪のように、高卒レギュラーの期待も抱かせたが、ファームでも打率.182はリーグ最下位で、期待値からすると意外だった。2位の梅津晃大東洋大・投手)はファームで3勝を上げ、防御率も2.05で一軍登板が見られそうだ。

 一軍出場した3位の勝野昌慶三菱自動車名古屋・投手)は、チーム防御率が決して高くないチームで、3試合登板は即戦力としては物足りない。驚いたのは4位の石𣘺康太関東一高・捕手)で、難しいポジションで初安打・初打点は見事だった。

 ※その他 5位~垣越建伸(山梨学院高・投手)6位~滝野 要(大商大・外野手)

 

 日本ハム1位の吉田輝星(金足農・投手)は、2試合に先発し、プロ初勝利も上げ、先発陣が不足するチーム事情のなか、再度昇格が期待できる。3位の生田目翼日本通運・投手)も、一試合に先発したが結果を残すことができなかった。

 野手の一軍出場はないが、2位の野村佑希花咲徳栄高・内野手)はファームで規定打席(.216)に達している。その野村以上に期待できるのが、4位の万波中正(横浜高・外野手)で、ファームで10本塁打を放っており、スラッガーとしての覚醒を予感させる。

 ※その他 5位~柿木 蓮(大阪桐蔭高・投手)6位~田宮裕涼(成田高・捕手)

      7位~福田 俊(星槎道都大・投手)

 

 ロッテ1位の藤原恭大大阪桐蔭高・外野手)は、高卒で開幕スタメンを経験し、2安打を放ったが、以降は一軍出場はない。ただファームで打率.234、本塁打4本、盗塁14個で着実にレベルアップしている。7位の松田進(ホンダ・内野手)も初安打を記録している。

 即戦力を期待された大学生投手が頑張っている。2位の東妻勇輔日体大・投手)はリリーフでプロ初勝利を上げ、強力リリーフ陣に厚みました。デビュー戦に打ち込まれた、3位の小島和哉早大・投手)は勝利はないものの、先日は楽天打線を6回無失点に抑え成長を見せた。5位の中村稔弥(亜大・投手)も先発を果たし、ファームで防御率3位の好成績を上げており、左腕の先発不足のチームに大きな期待を抱かせる。

 ※その他 4位~山口航輝(明桜高・外野手)6位~古谷拓郎(習志野高・投手)

      8位~土居豪人(松山聖陵高・投手)

 

●合格点だった西武、ソフトバンク、広島

 合格点だった西武とソフトバンクは、即戦力志向というよりも、地力のあるチームに戦力の厚みを持たせ、広島は得意の育成型もやや指名に偏りがあった。

 投手陣が課題の西武は、松本航日体大・投手)を単独指名し、その松本航は開幕ローテは体調不良で逃したが、すでに5勝を上げ新人王も狙える。

 6位の森脇亮介セガサミー・投手)は、さすがの即戦力で中継ぎで20試合登板は十分合格点を与えられる。逆に3位の山野辺翔三菱自動車岡崎・内野手)は、二塁手のレギュラーも期待されていたが、ファームではまずまずも、一軍で結果を残すことができていない。

 7位の佐藤龍世(富士大・内野手)は、三塁の守備固めが多かったが、けが人が多い状況のなか、先発出場の機会も与えられており、このチャンスを掴み取りたいところだ。4位の粟津凱士(東日本国際大・投手)も、一試合一軍登板を果たした。

 ※その他 2位~渡辺勇太朗(浦和学院・投手)5位~牧野翔矢(遊学館・捕手)

 

 指名した投手5人全員が大学生・社会人だったソフトバンクは、1位の甲斐野央東洋大・投手)が、大学時代と同様に抑えの適性を見せ、44試合に登板し、けが人の多いブルペン陣をカバーする働きを見せている。6位の泉圭輔(金沢星稜大・投手)も、中継ぎで2勝を上げるなど、大学生投手は期待に応えている。

 一方で社会人投手は厳しく、7位の奥村政稔三菱日立パワーシステムズ・投手)の8試合登板だけでは期待に応えられていない。

 ※その他 2位~杉山一樹(三菱重工広島・投手)3位~野村大樹(早実内野手

      4位~板東湧悟(JR東日本・投)5位~水谷瞬(石見智翠館・外野手)

 

 昨シーズン、12球団で唯一ルーキーの一軍出場のなかった広島は、今年は1位の小園海斗報徳学園内野手)と2位の島内颯太郎(九共大・投手)が一軍出場を果たしている。

 1位の小園は、高校生野手で唯一活躍している。レギュラーの田中広の不振もあり、遊撃で先発出場を果たし、得意の守備に2本塁打を放つなど打撃でも成長著しい。島内も中継ぎで14試合に登板し、ファームでもリリーフを務めている。

 同じファームでは、3位の林晃汰智弁和歌山内野手)が5本塁打フレッシュオールスターの出場、6位の正随優弥(亜大・内野手)が規定打席に達している。

 ※その他 4位~中神拓郎(市岐阜商高・内野手)5位~田中法彦(菰野高・投手)

      7位~羽月隆太郎(神村学園高・内野手

 

 18年ドラフトの評価の高かったチームのなかでは、ロッテと西武がまずまずで、ソフトバンクが物足りない結果になっている。中日、日本ハム、広島は育成型指名でまだまだ評価はできない。

 

 

 

BIG4だけではない~甲子園101回大会のプロ注目の逸材

今年もニューヒーローが誕生するか

 いよいよすべての甲子園代表が決まった。今年はどんな熱戦が繰り広げられるか、今から楽しみだ。

 夏連覇を狙う大阪桐蔭が敗れ、春の優勝校・東邦(愛知)も地区予選で早々と姿を消した。高校BIG4の大船渡(岩手)の佐々木朗希、横浜(神奈川)の及川雅貴、創志学園(岡山)の西純矢が見られないのはやはり残念だが、今年も新たなヒーローの出現に期待したい。

 高校生の伸びしろにはいつも驚かされる。2年から3年、春から夏、県大会から甲子園、そして大会中に評価が一変する。

 昨年のヒーロー・金足農(秋田)の吉田輝星(日本ハム)もそんな選手の一人だった。出場した段階では好投手の一人に過ぎなく、ほぼ無名の存在だった。実際にベースボールマガジン社の『2018年ドラフト候補』に吉田の名前は無く、甲子園前の『野球小僧』でも評価は「B」だった。そのなかでの吉田の昨夏の活躍は語るまでもなく、一気に世代ナンバー1投手まで駆け上がった。

 吉田のほかにも、97回大会(2015年)の関東一(東京)のオコエ瑠偉楽天)や、翌年の甲子園を制した作新学院(栃木)の今井達也(西武)などは、大会が始まる前は下位指名または育成候補だったのが、大会後は堂々のドラフト1位である。

 今年も昨年の吉田のようなニューヒーロー誕生に期待したい!

 

投手~完成度ナンバーワンの奥川恭伸

 投手ではただ一人高校BIG4で甲子園に出場する奥川恭伸星綾・石川)が注目だ。160キロの佐々木に注目が集まるが、私は総合力で言えば現時点では奥川ほうが上だと思う。最速153キロのストレートに、スライダー、フォーク、チェンジアップの変化球の制球力にも優れ、試合を作れる投手だ。

 その奥川に次ぐのが、前佑囲斗津田学園・三重)で、ひと冬を越して大きく成長した。148キロのストレートを軸に、力強いストレートで打者を打ち取るパワーピッチャーだ。

 昨夏、金足農にサヨナラで敗れた林優樹(近江・滋賀)も戻ってくる。ストレートは138キロと決して早くないが、チェンジアップとスライダーを交えた絶妙な投球術で打者を翻弄し、打ち取る投手だけに守備力も高く、今夏の滋賀大会は無失点だ。

 このほかにも、西舘勇陽(花巻東・岩手)は故障が癒えていれば、140キロ台のストレートとキレのある変化球は完成度が高い。春の準優勝校・習志野(千葉)の飯塚脩人も課題の制球力を克服し安定感が増した。激戦大阪を勝ち抜いた左腕・清水大成(履正社・大阪)の145キロの速球にも注目したい。

 

捕手~攻守で高いレベルの東妻純平

 捕手では、東妻純平(智弁和歌山の評価が高い。二塁送球タイムは1.8秒平均の強肩で、甲子園で本塁打も記録した強打の捕手だ。ロッテの18年ドラフト2位・東妻勇輔の弟で、兄以上の活躍が期待できる。

 東妻に次いで注目は、奥川の女房役の山瀬新之助星綾・石川)で、奥川とは小4のときからバッテリーを組んでいる強肩で、スローイングの安定感が素晴らしい。やや打撃に難はあるが、甲子園の通算打率4割で、大舞台に強いのも魅力だ。

 履正社(大阪)の野口海音は、東妻と同じく小柄だが、名門校で1年夏からベンチ入りした素質は高く、強肩に加え長打が打てるパンチ力もある。

 このほかにも、兼子将太朗(習志野・千葉)守備に定評があり、藤田健斗(中京大中京・岐阜)は強肩、有馬諒(近江・滋賀)は守備と肩の両方を兼ね備えている。安田陸(明徳義塾・高知)は打撃に定評がある。

 

内野手~坂本2世の呼び声が高い武岡龍世

 内野手の一番の注目は、黒川史陽(智弁和歌山で、高い打撃センスは群を抜いている。左右に打ち分ける技術に加え、選球眼が良く出塁率が高く、チャンスメークもできる好打者だ。

 黒川に次ぐ高い評価なのが、武岡龍世(八戸学院光星・青森)韮澤雄也(花咲徳栄・埼玉)、武岡は広角に打つバットコントロールと50メートル5秒台の俊足に加え、遊撃の守備にも定評があり走攻守にレベルが高い。

 韮澤は、足は早くないが、堅実な遊撃の守備と反対方向に強い打球を飛ばせる長打力が魅力の打てる野手だ。

 このほかには、石井巧(作新学院・栃木)は広角に打てる器用さがあり、藤村健太(智弁学園・奈良)はガッツのある攻撃的守備に加え打撃も安定感を増した。井林泰雅(高岡商・富山)は、昨夏に続き活躍が期待でき、松浦佑星(富島・宮崎)は三塁到達タイム11秒台の韋駄天で守備にも定評がある。

 

外野手~注目のスラッガー・山梨のデスパイネこと野村健太

 外野手は若干不足気味だが、野村健太(山梨学院)に注目したい。県大会はやや状態を落としていたが、ホームランが魅力のスラッガーで、今春のように甲子園で大暴れしてほしい。静岡の齋藤來音は走攻守に優れた選手で、一塁到達4秒、三塁まで11秒の俊足に加え長打力もある。このほかに井上広大(履正社・大阪)安藤碧(明石商・兵庫)も、打撃に定評のある選手だ。

 

 最後に、今年は昨年の大阪桐蔭のような絶対的な優勝候補がなく、春の優勝校の東邦(愛知)、昨秋の神宮大会を制した札幌大谷南北海道)もいなく混戦模様だ。また、昨夏の金農フィーバーの再来を期待させるように、私学全盛のなか公立校の出場が8校から14校に増え、広島商や米子東(鳥取)、高松商(香川)の古豪復活も嬉しい。

 そのなかで優勝候補は、好投手・奥川を擁する星綾(石川)、タレント揃いの智弁和歌山履正社(大阪)、地力のある東海大相模(神奈川)が中心になる。

 このほかに春の準優勝校・習志野(千葉)、ベスト4の明石商(兵庫)、好投手を擁する津田学園(三重)や近江(滋賀)が対抗馬か…ただ何が起きるのか分からないのが甲子園で、今年も筋書きのないドラマに期待したい。

 

大船渡高・佐々木投手の登板回避は歴史的英断

 毎年、話題になる高校野球の球数問題。今年は甲子園大会が始まる前に、クローズアップされた。

 話題の渦中は、大船渡高の剛腕・佐々木朗希投手の岩手大会の決勝戦の登板回避だ。結果、大船渡高は花巻東高に大敗し甲子園を逃した…佐々木を甲子園で観たい気持ちは私も理解するが、今回の国保監督の判断を私は支持する。

 将来、日本のエースになり得る選手を預かった責任は想像し難いほどのプレッシャーのなか、佐々木の将来性を優先した選択に歴史的な英断だと思う。

 なぜなら毎年のように球数への警鐘を鳴らされるが、結果として何年経っても解決策は見いだせていないからだ。 明確な指標も基準もないのであれば、当事者が判断するしかない。その判断が正しいかどうかは、周囲がとやかく言うものではない。

 

甲子園の光と影…将来の希望を失った事実に目を背けてはいけない
 今年で101回目を迎え、昭和53年の第60回大会から、47都道府県すべてが出場するようになり、夏の一大イベントである甲子園大会。
 選手のケアを第一に、球数制限などを設けているアメリカでは、炎天下のなか高校生が、連投で投げ続ける姿は常軌を逸しており、日本でも素質のある好投手ほど、予選や連投のない一~二回戦当たりの早い段階で負けてほしいというのは、スカウトの本音かもしれない。
 確かに、第68回大会(昭和61年)で初優勝したときの天理(奈良)の本橋雅央や第71回大会(平成3年)の準優勝高・沖縄水産大野倫は、このときの故障が原因で投手生命を絶たれた。
 特に、沖縄水産の大野は、私が見ていても痛々しく、正直、高校の部活動でここまで選手に無理をさせる必要があるのかと率直に思った。あとで知ったことで、県大会のときから右腕を疲労骨折していたと聞いて、本当に残念だった。

 昨年、TV取材で「後悔していないし、監督を恨むことなどない」と話し、大野は九州共立大に進学し、外野手で入団(巨人5位)したが大きな活躍はできなかった…率直に投手として見たかった。
 一方で本橋もある記事で、「状況がどうであれ、甲子園大会の決勝戦で投げないという選手はいないと思います」とコメントしていたが、このときの故障が原因で、プロはおろか草野球すらできない状態になってしまい、一方で悔恨の思いは消えないと話していた。

 大野も本橋も、地区予選のときにすでに故障を抱え、甲子園では故障を圧して投げた。やはり佐々木の登板回避はベストな判断だと思う。

 

球数制限よりも、ケアするのは連投
 昨年は球数制限の他に、複数投手制等もが言われていたが、球数制限以上に実現は難しい。昨夏、公立校では金足農(秋田)と高岡商(富山)、高知商の3校が初戦突破したが、いずれも1人エースで、私立高校ならまだしも公立校でエース格の投手を2~3人も確保するのは奇跡に等しい。
 仮に球数制限でドクターストップをかけても、強制はできないだろう。本人が投げられると言えば止める術はない。社会人野球のように、代表と同地区から戦力補強選手を指名するのも、基本部活動の高校野球では無理だろう。
 球数制限で、大会本部や主審から降板を告げられるのも野暮だし、実際に球数は何球にするか、一試合なのか、累積なのか、連投ではなく、イニングで継投または交代した場合はどうなのか等々、勝負ごとに関わることで、思うほど単純ではない。
 私案だが、投手の診断やアフターケアを大会本部主導できないだろうか。個々の選手で筋肉なども違うので画一的な方法とは言えないが、その筋の専門家による診断やケアで、第三者の意見が抑制の役割を果たすと思う。

 また、球数以上にキツイのが連投である。各校の初戦のみ甲子園で行い、二回戦以降は連投にならないよう近隣の京セラドームやほっともっとフィールド等で行い、ベスト8の試合から甲子園に戻り、準決勝、決勝をそれぞれ1日空けて行うなど、日程面での調整もやろうとすれば可能だ。

 話を戻すが、今年の甲子園大会は8月6日で、岩手大会の準決勝~決勝を2日続けて行う必要があったのだろうか?球数と並行して地方大会の日程調整が必要だと思う。
 色々な方法があると思うが、球数制限の意図は分かるし、必要性も十分に理解するが、勝ち負けを超え、選手ファーストの歴史的大英断でもしない限り、この問題を解決することはできない。

 

 最後に、佐々木投手がプロ入りを表明してくれた。こんな嬉しいことはない。今秋、どのチームのユニフォームに袖を通すか楽しみだ。佐々木の快投は、甲子園終了後のU-18まで取っておこう。

 すっかり影に隠れたが、花巻東高には西舘勇陽というプロ注目の好投手がいる。今年こそ、大優勝旗を東北にもたらすことを期待している。