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どのチームが「人」を育て強くなるのか

19年ドラフト1位候補12人

 社会人野球の都市対抗に続いて、夏の甲子園大会も終わり、あとは大学の秋季リーグ戦を残すのみになった。これから高校生と大学生はプロ志望届を提出し、運命の10/17を迎える。そこで、今回はドラフト1位候補12名を予測したいと思う。

 今年の傾向は、一言でいえば投手に上位指名候補が多く、野手が不足気味だ。投手では高校BIG4に加え、高卒→社会人3年目に逸材が多く、過去あまり記憶にないが、大学生捕手が豊作の年と言える。

 

●1位重複の間違いなしの、佐々木・奥川・森下のS級投手

 1位入札が間違いないのは、令和の怪物・佐々木朗希(大船渡)と、甲子園準優勝投手の奥川恭伸(星稜)、即戦力候補ナンバーワンの森下暢仁(大分商→明大)の3名で、どの球団も最後まで頭を悩ますことになるだろう。

 佐々木のポテンシャルの高さは異次元で、主戦力になるには2~3年は擁すると思うが、大谷翔平エンゼルス)クラスの投手になる将来性を秘めている。既に日本ハムが1位指名を公言しており、育成重視のソフトバンク、地元の楽天、有望な若手投手が育ってきているロッテも加え3~5球団の入札が予想される。

 現時点では佐々木より完成度の高い奥川は、シーズン後半あたりから先発ローテーションに入る可能性が十分にあり、準地元の中日からの指名が固い。巨人は佐々木と奥川のどちらかの指名で間違いないが、知名度のある選手を好むので、甲子園で全国区になった奥川指名が濃厚と予想した。奥川へは2~4球団の指名がありそうだ。

 森下は即戦力で、高校時代(大分商)も上位候補の選手が、本当に力をつけて成長してくれた。投手の即戦力が欲しいヤクルトと西武、この間大学生投手1位指名が成功しているDeNAも加えると、3~4球団の指名が予想される。

 今年は育成よりも、即戦力志向の強い広島は、奥川と森下のどちらかで迷いそうだ。阪神もこの3選手のいずれかの指名で間違いないだろう。

 単独指名がありそうなのがオリックスで、不足している左腕で即戦力の河野竜生(鳴門→JFE西日本)や、強肩捕手の海野隆司(関西→東海大の指名が有効だ。

 現状でいえば佐々木はパ・リーグ、奥川と森下はセ・リーグになりそうで、結局、スケールの大きい選手は、今年もパ・リーグに行きそうな予感がする。

 

●外れ1位とは呼ばせない、精鋭揃いの投手陣

 仮に12球団すべてが、佐々木と奥川、森下に行った場合、次に重複が予想されるのも投手だ。先述した河野と高校BIG4の西純矢(創志学園及川雅貴(横浜)、森下に負けず劣らずの即戦力・津森宥紀(和歌山東東北福祉大が挙げられる。

 河野はどこのチームも欲しがる先発左腕で、最速151キロが注目されるが制球力と投球術に長けており、開幕から先発ローテーションが期待できる。

 西は闘志むき出しのピッチングスタイルに加え、一級品のスライダーが武器の将来のエース候補だ。及川はムラのある投球が欠点だが、それを補うには余りあるほどツボに入ったときの投球が素晴らしい。スタミナもあり左腕はどのチームでも欲しいので重複も予想される。

 抑えが不足しているチームは、右サイドハンドのリリーバー津森が有力で、大学でも抑え専門で鍛えたメンタルの強さに、スタミナもあり間違いなく即戦力になれる。

 このほかに高卒3年目の社会人が注目だ。先述した河野のほかに、190cmのパワーピッチャー太田龍れいめいJR東日本は、角度と威力のあるストレートで若獅子賞も獲得した逸材だ。

 立野和明(中部大一→東海理化も、ストレートが素晴らしい。都市対抗の決勝戦で登板(トヨタ自動車の補強選手)したのを見たが、低めに伸びのあるストレートを投げ込み、どの打球も差し込まれ詰まっていて、独りもまともに捕らえることができなかった。

 同じ社会人の宮川哲(東海大山形→上武大→東芝は、150キロを超えるストレートに安定感抜群のピッチングは、まさしく即戦力で、1位指名で消える選手だ。

 野手では高校日本代表の4番・石川昴弥(東邦)が1位候補になる。石川は今春のセンバツの優勝投手だが、夏の大会は野手に専念した。高校通算54本塁打に加え守備も巧く、投手兼任で肩とスローイングも申し分ない将来の4番候補だ。

 

●どんでん返しのサプライズ1位指名もある有力選手

 ドラフトは1位指名が重複した場合は、「くじ」による抽選なので、外れたチームの状況により補強ポイントも変わるので、必ずしも上位候補12名にはならない。

 先述した選手以外にも、投手では今夏急成長した左腕・宮城大弥(興南は、高校BIG4に並ぶ高い評価を得ている。また、甲子園で高いポテンシャルを見せた鈴木寛人(霞ヶ浦や奥川と並び総合力の高い井上広輝(日大三、大学生ながら伸びしろ十分の杉山晃基(盛岡大付創価大)など魅力のある投手はまだまだいる。

 野手では、俊足巧打のスピードスター森敬斗(桐蔭学園内野手、甲子園で評価を高めたスラッガー井上広大(履正社・外野手)、海野が守備なら打撃と俊足が魅力の強打の捕手・佐藤都志也(聖光学院東洋大、社会人ナンバーワンのヒットメーカー小深田大翔(大阪ガス内野手も候補になる。

 今年の甲子園大会は、不作を通り越して凶作とも言われたが、それはあくまで甲子園のみの話であって、今年は1位候補が12人揃い、十分に豊作と言えそうだ。

 

【1位候補選手12名】 ※氏名の横は獲得を検討または表明している球団

 ■投手

  佐々木朗希(大船渡)…全球団

  奥川 恭伸(星 稜)…全球団

  西  純矢(創志学)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・ヤクルト・広島

  及川 雅貴(横 浜)…全球団

  森下 暢仁(明 大)…全球団

  津森 宥紀(東福大)…楽天・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA・巨人

             ヤクルト・西武・広島

  河野 竜生(JFE西)…全球団

  太田  龍(JR東日)…ロッテ・オリックス

  立野 和明(東海理)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・巨人・ヤクルト・西武

  宮川  哲(東 芝)…ヤクルト・広島

 ■野手

  石川 昴弥(東 邦)…中日

  海野 隆司(東海大)…楽天阪神・ロッテ・中日・オリックス・D℮NA

             日本ハム・巨人・ソフトバンク・ヤクルト