●チーム防御率、打率ともリーグ最下位で大苦戦のシーズン
今年の開幕は上々で、4月は首位に1ゲーム差だったが、5月の16連敗が低迷の始まりだった。昨年、2位躍進のきっかけになった交流戦も11位で終え、最下位が定位置なまま、9/7にはCSへの進出が消滅した。翌日には小川淳司監督と、次期監督候補だった宮本慎也ヘッドコーチが、成績を理由に辞意を表明した。
今年のヤクルトはとにかく投手陣が悪すぎた…昨年も悪かったが、今年のチーム防御率4.64は、セ・リーグのみならず12球団断トツの最下位、交流戦では唯一の5点台(5.08)と、投手陣が機能していない。
昨年チーム打率1位の打線も、今年はチーム打率.242で、なんとこちらも12球団最下位だ。反面、チーム本塁打はリーグ2位の150本で、既に昨年の数字を超えている。
要は投手陣が悪すぎるため、結果大量点を狙うしかない一発頼みの大味な打線になってしまい、投打でこの成績では、上位に食い込むのは無理な話だ。
【9/7現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…4.64⑥(4.13④)打率….242⑥(.266①)
本塁打…150②(135④)盗塁56⑤(68④)
得点583②(658②)失点653⑥(665⑥)得失点差▲70(▲7)
●ベテラン頼みの12球団で最も高齢化しているチーム
ヤクルトは12球団で、最も選手の平均年齢が高い28.4歳で、投手も野手の両方とも一番高い。平均年齢が28歳を超えているのは、あとは阪神だけで、一番若い日本ハムとは、投手では2歳、野手では3歳も高い。
私が伝説期と区分している35歳以上の選手が14名おり最多、10名を超えているはヤクルトのみだ。投手では石川雅規、近藤一樹がおり、今年はソフトバンクから五十嵐亮太と寺原隼人を迎え、さらに平均年齢を押し上げた。野手でも、青木宣親、大引啓次、バレンティン、雄平、坂口智隆とズラリと主力が並ぶ。
ベテランが良く頑張っていると言ってしまえばそれだけだが、チームの成績を見る限りプラスとは言えない。既にかつてのエース館山昌平と4番の畠山和洋が現役引退を表明し、大引啓次は引退を拒否して退団が決まった。これから暫くはベテランの引退セレモニーが続き、なかなか上位に定着している姿が想像できない。
【ヤクルトの5年後の主力選手】
投 手…小川泰弘・高梨裕稔・大下佑馬・原 樹理・風張 蓮・中尾 輝
清水 昇・寺島成輝・高橋奎二・梅野雄吾
捕 手…中村悠平・西田明央
内野手…西浦直亨・山田哲人・奥村展征・廣岡大志・太田賢吾・村上宗隆
外野手…塩見泰隆・山崎晃大朗・中山翔太
投手陣の先発は小川、高梨、原、高橋がいるが駒が不足している。抑えはもっと悲惨で、梅野がチーム最多の63試合に登板しているが、昨年54試合に登板した中尾は12試合、同じく53試合の風張も14試合と登板数が激減。この2人の復活がカギだが、それでも量的に不足している。
野手陣で上記選手で規定打席に達しているのは、山田哲と中村、村上の3人で、太田が300打席を超えレギュラーに近づいた。5年後も31歳の山田哲を中心に、今年ブレイクした村上が4番に座り、外国人でクリーンアップを形成できていれば、破壊力のある中軸を形成できる。ただ、前後を打つ青木のようなリードオフマンタイプや、長打力もあるポスト雄平の育成が必要だ。
平均年齢の高さと今年の成績、若手の主力候補の少なさなど、2~3年のドラフトでどうにもなるレベルではない。強いチームを目指すなら長期的な戦略が必要だが、緊急の課題は高齢化する主力選手の後釜を見つける現有戦力の底上げだ。
●上位は即戦力投手、走れる遊撃手と将来性のある捕手
投手の年齢配置は意外にも悪くなく、25歳に5名と偏っているが、19歳~32歳まで空き年齢はなくバランスは問題ない。
野手は捕手と外野手の年齢構成は問題ないが、左打の外野手が山崎晃大朗の26歳が最年少では話にならない。内野手は22歳と24歳の各3名と集中しバランスが悪く、リーグ5位の盗塁数(半分は山田哲)が示す通り走れる選手が少なく、リードオフマンタイプの選手を獲得したいところだ。
【ヤクルトの補強ポイント】
投 手…即戦力の先発投手と抑え投手
捕 手…ポスト中村の高校生捕手
内野手…リードオフマンを務められる即戦力野手(二塁または遊撃)
外野手…左打の即戦力または高校生スラッガー
優先順位は投手で、1位入札は森下暢仁(明大)が予想される。1位はとにかく、直ぐに先発ローテを任せられる即戦力に行くべきで、森下のほかに河野竜生(JFE東日本)や立野和明(東海理化)のいずれかは確実にしたい。
2位指名も指名順位が早いので即戦力投手を2枚獲得したい。先発候補なら安定感抜群の宮川哲(東芝)、伸びしろなら太田龍(JR東日本)や吉田太貴(日体大)が候補だ。ポスト石山の抑えで、津森宥紀(東北福祉大)や西田光汰(JR東日本)を獲得できれば上位指名は成功と言える。
3位で即戦力野手で、ここはリードオフマンタイプを指名したい。大学生なら宇草孔基(法大・外野手)や柳町達(慶大・外野手)、社会人なら小深田大翔(東京ガス・内野手)が当てはまり、上位で即戦力野手を抑えておきたいところだ。
上位で即戦力を指名できたならば、4~5位は高校生指名で投手または捕手、スラッガー候補を獲得したい。
投手なら前佑囲斗(津田学園高)や小林珠維(東海大札幌高)、岩本大地(石岡一高)など将来性のある選手が候補になる。
高校生捕手の上位クラスは東妻純平(智弁和歌山高)だけのなので、守備力の山瀬慎之介(星稜高)、打力の藤田健斗(中京学院中京高)のいずれかは押さえておきたい。
スラッガー候補では、井上広大(履正社高・外野手)や、今年豊富な遊撃手から紅林弘太郎(駿河総合高・内野手)、内外野守れる遠藤成(東海大相模高・内野手)がピタリとはまる。
6位以降の下位選手では、即戦力なら年齢別で手薄な部分や一芸に秀でた選手、または高校生指名を続けるのも有りだ。
投手の年齢別バランスは悪くない編成なので、大学生の右腕または高校生左腕、24歳の左腕を補強すれば穴はなくなる。大学生右腕なら同じ九産大の浦本千広と福森耀真、高校生左腕なら米山魁乙(昌平高)や玉村昇吾(丹生高)、社会人左腕では若林優斗(王子)は変則左腕で一芸にも秀でており下位で獲得できるチャンスがある。
さらに一芸に秀でた選手なら、長打力のある青木蓮太朗(浜松開城館高・内野手)、俊足の稲垣誠也(日本通運・内野手)はチームの補強ポイントに合っている。
上位候補ではないが、経験豊富な岡野祐一郎(東芝・投手)もリストアップしており、現在のヤクルトの不足部分を補うにはフィットすると思う。
【ヤクルトのドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…森下 暢仁(明大・投手)…大学でさらに成長を遂げた即戦力右腕
2位…西田 光汰(JR東日本・投手)…気迫を前面に押し出すリリーバー
3位…柳町 達(慶大・外野手)…内外野守れ、打率を残せる巧打者
4位…遠藤 成(東海大相模高・内野手)…高校通算45本のスラッガー
5位…米山 魁乙(昌平高・投手)…140キロ直球と大きなカーブが武器
6位…岡野祐一郎(東芝・投手)…社会人屈指の制球が武器の即戦力右腕
7位…福森 耀真(九産大・投手)…伸びしろ十分の最速150キロ右腕
現時点で次期監督が誰か分からないが、今年はまずは手薄な投手陣補強と、ベテランの主力組の後継者指名(育成)を優先順位に進めていく必要がある。