昨年もそうだったが、今季もトレードが少ない。昨年のオフに初の現役選手ドラフトがあり、また育成選手の人数が増え、シーズン途中に有望な若手を支配下登録して補強することも要因として挙げられる。
実際に現役ドラフトでは、阪神の大竹耕太郎と中日の細川成也が主力選手として活躍し、広島の戸根千明(広島)は左の中継ぎ、ロッテの大下誠一郎はムードメーカーとして、チームに欠かせない存在になっている。育成からの支配下登録では、開幕スタメンを手にしたオリックスの茶野篤政は新人王の有力候補だ。
こう見ると急いでトレードの必要はないかもしれないが、開幕前の日本ハムの西村天裕とロッテの福田光輝のトレードは、西村は移籍後21試合無得点の好投でリリーフの層を厚くし、福田光はレギュラー不在の内野陣でユーティリティプレーヤーとして活躍しており、ともに良いトレードになった。また、中継ぎ投手強化で巨人とオリックスのトレードも理想的で、巨人は中継ぎ強化で鈴木康平を、オリックスは不足していた右打ちの内野手で廣岡大志を獲得した。
※今シーズンの主力選手の〇は規定投球回数、打席数を達成している選手で、〇内の
数字は6/16時点での順位です。☆の数はお薦め度数です。
◆ヤクルト(5位)防御率3.71⑤(3.52④)打率,231⑥(.250③)
開幕こそ5割をキープしていたが、5月の11連敗に続き、得意の交流戦でチーム状態は上がらず、首位から15ゲーム差の最下位でリーグ3連覇の夢が消えそうな気配になっている。投打に数字が良くなく、先発投手の防御率が3.89は12球団ワーストで、救援陣は奮闘しているだけに先発の早急な底上げが必要だ。打線も本塁打こそ2位ながらチーム打率はリーグ最下位、得点数も4位と一発頼みの打線になっている。
【今シーズンの主力選手】
◆先発…小川泰弘⑩ サイスニード ピーターズ 吉村貢司郎 高橋奎二 小澤怜史
◆リリーフ…田口麗斗 清水 昇 石山泰稚 木澤尚文 星 知弥 大西広樹
◆打者…サンタナ⑯ オスナ⑲ 山田哲人㉗ 村上宗隆㉘ 長岡秀樹㉚
青木宣親 中村悠平 内山壮真 濱田太貴 川端慎吾 並木秀尊 武岡龍世
先発投手では、東晃平(オリックス)や本前郁也(ロッテ)はともにファームで防御率1位ながら出場機会がなく、秋山拓巳や二保旭(阪神)も強力投手陣のなか出番がなく、塩見貴洋(楽天)に野村祐輔(広島)の両ベテランも今季一軍未登板で獲得を検討しても良いと思う。個人的には高橋礼(ソフトバンク)がお薦めで、大竹(阪神)の活躍を見るとセ・リーグ向きな気がする。
リリーフは、馬場皐輔(阪神)に尾形崇斗(ソフトバンク)、田村伊知郎(西武)は層の厚いリリーフ陣のなか出番が限られている。日本ハムもリリーフの層は厚く、井口和朋に福田俊など、投手が多く野手が少ないだけに成立する可能性は高い。
野手は内野よりも外野の層を厚くしたい。同一リーグになるがDeNAの外野の層は厚く、経験も豊富な大田泰示に神里和毅は控えでは勿体なく、菅野剛士(ロッテ)に田中和基(楽天)、板山祐太郎(阪神))も一軍の出番が少なく出場機会を求めている。
現状、支配下は67名で支配下枠には余裕があり、トレード要員としては、厳しい投手陣ではあるが、敢えて原樹里や高梨裕稔、リリーフの梅野雄吾など経験豊富な選手を放出し、若手の有望株を獲得するトレードもアリだと思う。野手ではベテランの西浦直亨にユーティリティの松本友は他球団からのニーズも高い。
☆☆☆梅野雄吾 ⇔ 高橋 礼(ソフトバンク)~先発投手陣の底上げ
☆☆☆西浦直亨 ⇔ 田村伊知郎(西武)~リリーフ陣の補強
☆☆ 高梨裕稔 ⇔ 田中和基(楽天)~塩見に代わるリードオフマン候補
◆DeNA(2位)防御率3.48④(3,48③)打率,260①(,251②)
12球団ナンバーワンの打率を誇る強力打線は、本塁打と四球数もリーグ3位で長打率も出塁率も高く、何よりも三振の数が12球団最小は特筆できる。一方で併殺打はリーグワーストで盗塁数も最小と、積極的な攻撃スタイルが数字に顕われている。好調な打撃陣が目立つため、投手力が課題と言われているが、チーム防御率はさほど悪くなく、特に救援陣は3.34のリーグ3位で先発陣の奮起が待たれる。
【今シーズンの主力選手】
◆先発…東 克樹⑥ 今永昇太 石田健大 ガゼルマン バウアー 平良拳太郎
◆リリーフ…山﨑康晃 伊勢大夢 三嶋一輝 ウェンデルケン 入江大生 上茶谷大河
◆打者…宮崎敏郎① 関根大気② 桑原将志⑥ 牧 秀悟⑫ 佐野恵太㉒
京田陽太 ソト 神里和毅 楠本泰史 柴田竜拓 林 琢真 戸柱恭孝
補強の優先ポイントはリリーフ陣の強化になる。先発は大貫晋一と濱口遥大が戦列に復帰し計算できる布陣に戻ってきている。一方でリリーフ陣は山崎とエスコバーが本調子と言えず、昨年活躍した田中健二朗や平田真吾の不在は痛い。
候補としては、浜屋将太に公文克彦(西武)、堀瑞樹に福田俊(日本ハム)、同一リーグになるが渡邊雄大(阪神)は、田中不在のリリーフ左腕の穴を埋めることができる。また、馬場皐輔(阪神)に井口和朋(日本ハム)、吉田凌(オリックス)は出番が少なく、国吉佑樹(ロッテ)の古巣復帰などはインパクトも十分にあると思う。
トレード要員は多く、現役ドラフトで中日へ移籍した細川成也の活躍を見ての通り、野手の層が厚い。内野なら田中俊太に知野直人、外野では蝦名達夫はなかなか出番が回ってこない。ベテラン組でも柴田に神里、大田泰示は控えでは惜しい選手で、楠本も他球団ならレギュラーを十分に獲得できる打力を持っている。
また、心配なのがエスコバーで、ここ数年の勤続疲労も要因の一つだとは思うが、それ以上にSNSトラブルでの精神的ダメージが大きい。チームの功労者だけに簡単にトレードとはならないが、環境を変えることも本人のためになるような気がする。支配下選手は67名で、豊富な野手陣を軸に投手陣強化のトレードの可能性は高い。
☆☆ 知野直人 ⇔ 浜屋将太(西武)~先発もこなせるリリーフ左腕の補強
☆ 蝦名達夫 ⇔ 吉田 凌(オリックス)~若手有望株同士のトレード
☆ 楠本泰史 ⇔ 堀 瑞樹(日本ハム)~セットアッパー候補の獲得
◆阪 神(1位)防御率2.69①(昨年2,67①)打率,242④(昨年,243⑤)
今季は自慢の投手陣に、現役ドラフトで獲得した大竹に3年目の村上の新戦力も加わり、5月は月間19勝を上げ首位を独走している。先発陣の防御率も素晴らしいが、リリーフ陣は2.14と12球団ナンバーワンの布陣を擁する。攻撃陣もチーム打率こそ4位だが、リーグナンバーワンの四球数と盗塁数が得点数1位に繋がっている。逆に失点数はリーグ最少と、投打が噛み合いこのまま独走の可能性も十分にある。
◆先発…村上頌樹② 西 勇輝⑨ 大竹耕太郎 才木浩人 伊藤将司 青柳晃洋
◆リリーフ…岩崎 優 湯浅京己 加治屋蓮 岩貞祐太
◆打者…中野拓夢⑦ 近本光司⑧ 大山悠輔⑪ 木浪聖也⑭ ノイジー㉕ 佐藤輝明㉖
梅野隆太郎 島田海吏 渡邊 諒 糸原健斗
現状、投打にメンバーが固定されており、特に投手は少数精鋭で臨んでいる。投手はエースの青柳が不振で二軍調整中、西勇も本調子ではないなか、若手と新戦力が台頭しており厳しい夏場に向け余裕すら感じる布陣になっている。攻撃陣は守備に不安のあった中野の二塁コンバートが当たり、代わりに遊撃に入った木浪も結果を残している。投打に主力がしっかりと結果を残しており、トレードを急ぐ必要は現段階ではない。
考えられるのは、優勝を狙うにあたり必要なピースを埋めることで、先発またはリリーフ、課題の守備強化のスペシャリストなのかギリギリまで判断できる。もう一つはメンバーが固定されているなか、準レギュラーを交換要員に将来有望な若手の補強に切り替えるものアリだと思う。
交換要員は多く、投手では先発で秋山拓巳に二保旭、リリーフでは馬場皐輔に小林慶祐、渡邊雄大が控え、ファームで結果を残しているものの秋山以外は一軍での登板がない。野手でも捕手の片山雄哉、内野では北條史也に山本泰寛、かつてのレギュラー糸原健斗も候補になる。外野は高山俊に板山祐太郎、小野寺暖と本当にこれらの選手がファームにいることに選手層の厚さを感じる。個人的には馬場や北條、高山に板山など出番が限られている選手にチャンスを上げて欲しい。
☆☆ 高山 俊 ⇔ 公文克彦(西武)~経験のあるリリーフ左腕の獲得
☆ 馬場皐輔 ⇔ 柴田竜拓(DeNA)~二遊間の守備のスペシャリスト
☆ 小林慶祐 ⇔ 堀内謙伍(楽天)~年齢的に空白な捕手の補強
◆巨 人(3位)防御率3.80⑥(昨年3.69⑥)打率,257②(昨年,242⑥)
昨シーズン防御率、打率がリーグワーストを喫し、打撃陣こそ改善を見せているが投手陣は相変わらずで、防御率に四死球数、失点数がリーグワーストで改善が見られない。それでも強力打線を擁し、一時の不振を脱し交流戦で貯金生活に入り3位まで順位を上げた。打線は犠打や盗塁は少ないが、本塁打が断トツの76本で破壊力十分で、失策数はリーグ最少と投手陣が改善を見せればまだ諦める時期ではない。
◆先発…戸郷翔征④ グリフィン⑤ 横川 凱 山崎伊織
◆リリーフ…大勢 鍵谷陽平 高梨雄平 大江竜聖
◆打者…岡本和真⑤ 大城卓三⑳ 坂本勇人㉑ 丸 佳浩㉔
吉川尚輝 中田 翔 秋広優人 ブリンソン オコエ瑠偉 門脇 誠
中山礼都 梶谷隆幸 ウォーカー
課題は投手陣に尽きる。先発は離脱していた菅野智之とメンデスが戻ってきたが、計算できるのは戸郷とグリフィンだけで頭数が不足している。先発以上に深刻なのがリリーフ陣で、リリーフの防御率4点台は巨人だけで、クローザーの大勢に繋ぐ形が出来ていない。中川晧太の復帰はプラスだが、代わりに鍵谷が離脱しており、オリックスからトレードで鈴木康平を、DeNAからは戦力外になった三上朋也の獲得も納得できる。
トレード候補の前に先ずはトレード要員だが、ここは豊富な野手を放出することができる。坂本に中田、丸の主力がいずれも30代中盤に差し掛かり、世代交代に備え若手は放出できないが、中堅にも候補が多い。ともに30歳の若林晃弘に石川慎吾、重信慎之介、28歳の北村拓己や松原聖弥を欲しがるチームが多いと思う。
特にロッテに日本ハム、西武、同一リーグで難しいが中日は投手陣は豊富だが打線が課題で成立する可能性が高い。長打力不足のロッテなら石川に北村、若林や重信は日本ハムが好みそうな選手だし、一番打者が決まらない中日は松原がフィットしそうな気がする。西武はどの選手でもOKで、若手捕手が多いなか小林誠司や、ポイントゲッターが不足している状況から中島宏之の復帰もアリだと思う。支配下は66名とまだ余裕があり、廣岡⇔鈴木に続く第2弾、第3弾のトレードの可能性が高い。
☆☆☆石川慎吾 ⇔ 国吉佑樹(ロッテ)~リリーフ投手の補強
☆☆☆北村拓己 ⇔ 浜屋将太(西武)~先発もリリーフもこなせる投手の補強
☆☆ 松原聖弥 ⇔ 鈴木博志(中日)~ 〃
◆広 島(4位)防御率3.23③(3,54④)打率,243③(,257①)
昨年からの課題だと思うが、投手陣も打撃陣も数字だけ見れば決して悪くなく、むしろもっと上の順位にいても不思議ではない。喫緊の課題だった盗塁数も既に31と、昨年を上回り広島の十八番の機動力も復活しているが、出塁率が中日と並んで2割台と得点に結びついていない。投手陣も先発はリーグ3位の3.09、救援陣もリーグ4位の3.53で全体的に可もなく不可もないチームになっている。
◆先発…床田寛樹① 九里亜蓮③ 大瀬良大地 コルニエル 森下暢仁 アンダーソン
◆リリーフ…矢崎拓也 栗林良史 島内颯太郎 ターリー 松本竜也 戸根千明 ケムナ誠
◆打者…秋山翔吾④ 西川龍馬⑦ 菊地涼介⑮ 坂倉将吾⑱ マクブルーム㉙
デビッドソン 野間峻祥 上本崇司 田中広輔 矢野雅哉 堂林翔太
正直、あまりトレードでの補強ポイントがないのが実状だ。先発は揃っており、遠藤淳志や玉村昇悟が控え、リリーフも森浦大輔や塹江敦哉が復帰すれば層は厚くなり、中崎翔太も31歳で老け込む歳ではない。野手も同様で、韮澤雄也が出番を増やし、林晃汰も復帰。何よりも小園海斗が控えており急いで補強するポイントは見当たらない。
ただ、優勝を狙うには何らかのチームへの刺激が必要だ。昨年の秋山の電撃加入や、DeNAがバウアーを獲得したように、大型トレードを含め、上昇の機運を掴みたい。
ビッグネームで堀瑞樹に中島卓也(日本ハム)、茂木栄五郎(楽天)、T-岡田(オリックス)、大田泰示(DeNA)、中島宏之(巨人)は出番がなく、堀と大田は地元出身だ。支配下が68名でトレードが基本線だが、現実味は乏しいが筒香嘉智の加入や外国人では元ロッテのマーティン、元阪神のマルテなども候補にしては面白い。
トレード要員は豊富な捕手を軸に、石原貴規は他球団なら出場機会も増え、ベテランの磯村嘉孝、伸び悩んでいる中村奨成など、捕手の欲しいチームは多い。また、チームに似たようなタイプの多い宇草孔基も外野手が不足のチームからニーズは高い。投手ではベテランの野村祐輔はまだ一軍未登板で、先発もリリーフもこなせる中村祐太、ここ数年不本意なシーズン続いている薮田和樹は環境を変えてみるのも手だと思う。
☆☆ 磯村嘉孝 ⇔ 山野辺翔(西武)~右打ちの内野手のユーティリティ補強
☆☆ 野村祐輔 ⇔ 大田泰示(DeNA)~右打ちの外野手補強
☆ 中崎翔太 ⇔ 茂木栄五郎(楽天)~レギュラー不在の三塁手補強
◆中 日(5位)防御率2.79②(3,28②)打率,239⑤(,247④)
一昨年から指摘されていた貧打戦は今年も解消されず、開幕から低迷が続き、首位から15ゲーム差の最下位で、残念ながら上昇の目は薄く、4位の広島から8ゲーム差ありAクラス入りも難しい。課題の打線は本塁打がわずか27本と断トツのリーグ最下位で、一発が無いから相手投手は恐れることなく勝負し、四球数は最小で出塁率はリーグ最下位…。一方で投手陣は阪神と並んで先発も救援陣も2点台と、課題は明白だ。
◆先発…柳 裕也⑤ 小笠原慎之介⑦ 涌井秀章⑧ 高橋宏斗 福谷浩司
◆リリーフ…マルティネス 祖父江大輔 清水達也 勝野昌慶 田島慎二 福 敬登
藤嶋健人
◆打者…細川成也③ 福永裕基⑩ 岡林勇希⑬ 大島洋平⑰ 木下拓哉㉓
チーム構成の話になるが、外国人選手の不振は、どのチームも同様で致し方ないとしても、世代交代で阿部寿樹をトレードし、長打力のあるマルティネスも放出したのは理解し難く、一方でドラフトでは俊足巧打の選手ばかり獲得しており、現役ドラフトで獲得した細川やドラフト7位ながら即戦力の福永がなかったらどうなるだろうと思う。
石川をはじめ、鵜飼航丞に石垣雅海などスラッガー候補がいない訳でもないが、豊富な投手陣をベースに、他球団の長距離砲を狙ってみてはどうだろうか。既にペナントレースからは脱落しており、若手に狙いを定めるのも良い。また、ここに来て正捕手の木下拓哉が骨折で離脱し、捕手の補強も急務だ。リチャード(ソフトバンク)や知野直人に梶原昂希(DeNA)は若手の長距離砲で、捕手では郡拓也や宇佐見真吾(日本ハム)は打力もある。リチャードなんかはロマンがあって良いと思うが…。
トレード要員としては、投手では岡野祐一郎は、他球団なら5~6番目の先発を任せられるし、経験豊富な谷元圭介は38歳の年齢がネックだが、優勝を狙うチームには重要なピースになる。ともにドラフト1位だが、鈴木博志も先発、救援ともに出番が少なく、環境を変えることで覚醒する可能性は高い。育成計画が迷走気味の根尾昂も考えて良いと思う。個人的には根尾は野手が良いと思っており、他球団に預けても遅くない。
☆☆ 根尾 昂 ⇔ リチャード(ソフトバンク)~有望選手同士のトレード
☆☆ 岡野祐一郎⇔ 梶原昂希(DeNA)~長打力のある若手野手の獲得