ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

現役ドラフト候補選手を予想する~パ・リーグ編

 今年のオフは例年になくトレードが活発で、すでにFA宣言した3選手(伏見寅威、森友哉、嶺井博希)が移籍を決めている。そんななか、12月9日に初の現役ドラフトが非公開で開催される。

 現役ドラフトの主旨は、「現チームで出場機会に恵まれていない選手の移籍を促進させる」もので、各球団が対象選手のうちから2名以上をリストアップする。そのリストを基に全球団が指名することで、全球団で必ず選手の出入りが発生するシステムになっている。

【対象外選手】

 ・FA権保有者、または権利行使経験者

 ・複数年契約の選手

 ・年俸5,000万円以上の選手(※但し、年俸5,000万~1億円未満の選手は1名可能)

 ・育成契約選手

 ・外国人枠の選手

 ・昨季の日本シリーズ終了後にトレードで移籍した選手

 ・今季の日本シリーズ終了後に育成から支配下登録になった選手

 主旨と内容は理解したが、やはり「実際どうなるか」は、見てみないと分からないのが本音である。対象外選手全員が自動的にリストアップものではないので、各球団が現状の戦力や年齢バランスを見極めてのリストアップになる。そこで、各球団より5名ずつ予想してみた。(※年齢は今年の開幕前のもの)

 

オリックス

投手…K-鈴木(日立製作所~17年②)漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)

     張 奕(日本経大~16年育①)  

野手…大城滉二(立大~15年③)大下誠一郎(白鷗大~19年育⑥) 

 強力投手陣のなか、山崎颯や宇田川など若手のリリーバーが豊富な状況からK-鈴木漆原を予想した。特に漆原は今季ファームで41試合に登板しながら、一軍登板はゼロで、19年にはファームでセーブ王を獲得している。また、張奕は基本は先発だが、一軍ではリリーフで22回を投げ防御率2点台と安定した成績を残している。セ・リーグ阪神以外、リリーフに不安があるチームが多く、どこも欲しがる選手だと思う。

 野手では、ともに右打ちの内野手大城大下を予想した。大城は内野をどこでも守れるユーティリティプレーヤーだが、同じタイプで山足や西野がいる。ケガの回復が気がかりだが、実績もありどの球団にもフィットする。元気印の大下は今季は僅かに5試合で2安打と、存在感を示すことができなかった。右打ちで長打力が魅力だが、やはりあのキャラクターは秀逸で、ロッテや中日に大下のような選手がいると面白いと思う。

 

ソフトバンク

投手…大竹耕太郎(早大~17年育④)田中正義(創価大~16年①)

   椎野 新(国士館大~17年④)笠谷俊介(大分商高~14年④)   

野手…九鬼隆平(秀岳館高~16年③)

 投手中心の予想になり、環境を変えることで飛躍が期待できる選手になった。笠谷は先発もリリーフもできる左腕だが、2年続けて16試合登板と今ひとつ殻を破り切れていない。まだ25歳と若く、左腕不足のオリックスやロッテ、ヤクルト。オフに思うように補強が進まなかった巨人は欲しいで選手だと思う。

 大竹も一軍では僅か2試合登板だが、ファームではチーム2番目の78回を投げており、どこも先発左腕は欲しい。16年に5球団競合の田中は未だ未勝利、椎野も豊富なリリーフ陣のなか、ここ2年は出番が減少しており、他球団でチャンスを掴みたい。

 野手は正捕手で甲斐がいるなか、さらに嶺井がFAで加入し、海野や渡邊陸、谷川原と控えの層も厚いことから九鬼を予想した。ヤクルトやDeNA、巨人、中日など捕手の人数が不足しているチームは多く、移籍したほうが可能性は拡がる。

 

【西武】

投手…浜屋将太(三菱日立PS~19年②)田村伊知郎(立大~16年⑥)

     松岡洸希(BC埼玉~19年③)

野手…山野辺翔(三菱自動車岡崎~18年③)高木 渉(真颯館高~17年育①)

 田村は昨年は22試合に登板し、プロ初勝利も挙げたが、今季は3試合の登板に留まり、ファームが主戦場になってしまった。ただ、ファームではチーム2番目の29試合に登板しており、信頼の高さを証明している。その田村の登板数を上回ったのが、22歳の松岡だったが、防御率が5点台と一軍には届かなかった。浜屋は、隅田と佐藤隼の両左腕がドラフトで加入したこともあり、今季一軍から声が掛からなかった。 

 山野辺は出番を増やすために外野にもチャレンジし、内外野守れるユーティリティプレーヤーとしてますます磨きがかかった。俊足が武器なので、広島やDeNAのように機動力不足のチームにフィットすると思う。レギュラーが決まらない外野は選手が渋滞しており、今年のドラフト1位で蛭間が加入したことから、同じ左打ちの選手で高木を予想した。高木はファームでは不動のレギュラーで、他球団で十分にチャンスはある。

 

楽天

投手…弓削隼人(スバル~18年④) 

野手…横尾俊健(慶大~15年日⑥)オコエ瑠偉関東一高~15年①)

     和田 恋(高知高~13年巨②)小郷裕哉(立正大~18年⑦)

 野手はレギュラーが確立するなか候補者が多く、内野は横尾を予想した。中日から阿部、同じ三塁でフランコも加入し、課題の右打ち内野手の補強も進んだ。ファームで6本塁打と長打力は健在で、長打力不足の中日や阪神オリックスにハマると思う。

 外野は辰巳に島内、西川、岡島のレギュラー組に若手で武藤も育っており、中堅選手の出番が限られている。小郷はファームで最多の98試合に出場、和田もチーム最多の12本塁打を放ったが、ともに一軍では10試合前後の出場に留まった。既にファームは卒業で、他球団でチャンスを掴みたい。プレースタイルの迷走の続くオコエは、扱いが難しい選手だと思うが、環境を変えることで化ける可能性がある。

 投手では弓削を候補に挙げた。ここ2年、登板機会が減少しており今オフ背番号も大きくなった。数少ない長身技巧派左腕だけに、他球団で見てみたい選手の一人だ。

 

【ロッテ】

投手…東妻勇輔(日体大~18年②)成田 翔(秋田商高~15年③) 

     中村稔弥(亜大~18年⑤)

野手…柿沼友哉(日大国際関係学部~15年育②)菅野剛士(日立製作所~17年④)

 投手陣は実に24歳~26歳に14名もおり年齢バランスが悪い。東妻成田はともにファームで40試合以上に登板しているファームのリリーフエースだが、一軍では東妻は昨年の37試合登板から3試合に激減、成田は遂に一軍登板はなかった。中村稔も一軍ではなかなか結果を残せず、今季10試合登板も敗戦処理が中心だった。先発で好投した時期もあり、同じ左腕の成田とともに欲しがるチームは多いだろう。

 野手では、守備力とリードに定評のある柿沼を候補に挙げた。移籍濃厚だった田村が残留し、佐藤都や松川とのレギュラー争いから一歩後退した。現状、捕手の支配下が少ないチームが多く需要は高い。菅野も層の厚い外野でレギュラーに届かなった選手で、一塁にもチャレンジしている。今さらファームで実績を積む選手ではなく、左打者の少ないヤクルトや日本ハム、外野の層の薄い西武にフィットすると思う。

 

日本ハム

投手…生田目翼(日本通運~18年③)井口和朋(東農大オホーツク~15年③)

     福田 俊(星槎道都大~18年⑦)池田隆英(創価大~16年楽②) 

野手…清水優心(九州国際大高~14年②)

 勿体ないと思うのが福田池田で、福田は貴重なリリーフ左腕としてファームではチーム最多の24試合に登板し防御率は2点台、一軍でも13試合に登板し防御率は0点台で、何故出番が少ないのが不思議だ。昨年、先発で3勝(10敗)を上げた池田はゲームメークにも長けており、ともに派手さがないのが監督好みではないかも知れない。

 井口は昨年43試合登板から23試合に半減し、防御率も5点台と精彩を欠いた。ただ、気持ちで投げる選手だけに、役割を与えれば力を発揮すると思う。生田目は起用方法が定まらないまま4年が過ぎ、環境を変えるには良い頃合いだ。

 野手では数的にも豊富な捕手から清水を候補にした。FAで伏見が加入し、打撃の良い宇佐見や古川が控えるなか出番が少なくなる可能性が高い。年齢も26歳と若く、ヤクルトやDeNAは年齢的にフィットするし、森が移籍した西武も面白いと思う。