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どのチームが「人」を育て強くなるのか

春のキャンプ~期待の若手(セ・リーグ編)

 既にプロ野球キャンプも10日過ぎましたが、先回に続き一軍キャンプスタートの各チームの若手有望(24歳以下に限定 ※ルーキー除く)選手を紹介します。

 

●投手のブレイク候補はWBC最年少投手、打者は巨人に逸材揃う

 最初にセ・リーグの投打のブレイク候補ですが、投手の一番手はWBC代表に最年少で選出の高橋宏斗(中京大中京高~20年①)で、2年目の昨年19試合で6勝、116回を投げ防御率2.47は、若きエース誕生に期待がかかる。ちなみに100イニング以上を投げ、奪三振率が10を超えているのは、高橋とロッテの佐々木朗しかおらず(オリックスの山本由伸でも9.56)、WBCの大舞台を経てシーズンを席捲してくれることを期待したい。

 次は阪神西純矢(創志学園高~19年①)岡留英貴(亜大~21年⑤)の2人を挙げたい。3年目の西純は昨年13試合に先発し6勝(3敗)をマーク、77回で防御率2.68の好成績を上げた。層の厚い阪神投手陣の状況もあり登板機会が限られたが、今シーズンは1年ローテーションを守りたい。また、西純の楽しみは打撃の良さで、ここまで打席も期待できる選手はツインズの前田健太以来ではないかと思う。

 岡留は昨年ファームで、リリーフでチーム2番目の36試合に登板し、防御率1点台の好成績にも係わらず一軍での登板がなかった。最速150キロを超えるアンダースローは、チームにもいないタイプで早く一軍で見てみたい。

 野手は忖度なしに、巨人の秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)増田陸(明秀日立高~18年②)、育成の鈴木大和(北海学園大~21年育①)を挙げたい。秋広は身長2メートルを超える大型選手で、昨年から松井秀喜の背番号55を受け継いでいる。その期待通り、規格外の長打力が魅力の選手で、打撃も器用なため率も稼げるが、やはりフルスイングで長打を狙って欲しい。現状、守備がネックだが、下位打線で三振を恐れず長打力を磨けば、ヤクルトの村上と本塁打を争えるくらいのポテンシャルを秘めている。

 増田陸も守備に課題があるが、丸の右翼コンバートで空いた中堅手候補で、天性とも言える打撃力は申し分なく、足も武器で使えるので(ただ、昨年2盗塁は物足りないが…)、守備と走塁を磨いてレギュラー獲りのチャンスを活かしたい。

 鈴木は野手の育成選手ではただ一人一軍キャンプスタートで、支配下に一番近い選手と言える。武器は超が俊足と脚力を活かした広い守備範囲で、打撃には課題があるが、ソフトバンクの周東やロッテの和田のように一芸で十分に食べていける。キャンプ終了後に3桁の背番号が卒業できるか注目したい。

 

◇ヤクルト

 期待値ナンバーワンは山下輝(法大~21年①)で、昨年はケガの影響もありスタートで出遅れたが、2試合に先発しプロ初勝利を挙げた。チームは先発ローテーションが定まらないなか、高橋や石川に続く先発左腕として今季は期待がかかる。

 市川悠太(明徳義塾高~18年③)も昨年、先発のマウンドを踏み、一昨年ローテーション投手で活躍したが、足踏み状態の金久保優斗(東海大望洋高~17年⑤)とともに、先発候補に名乗りを挙げたい。2年目で抜擢されたのが竹山日向(享栄高~21年⑤)で、昨年は体力づくりがメインのなか、一軍スタートは期待値の高さが窺える。

 打者では、昨年の日本シリーズ第2戦で劇的な同点3ランを放った内山壮真(星綾高~20年③)は、昨年36試合で先発マスクを被っており、壁は高いが中村と正捕手を争う。ルーキーで優勝を決めるサヨナラ安打を放った丸山和郁(明大~21年②)は、昨年71試合出場もスタメンは僅かに7試合と、今季は左翼のレギュラーを青木や山崎と争う形になる。同じ外野手で並木秀尊(独協大~20年⑤)にも注目で、昨年ファームで盗塁王(24盗塁)に輝いており、今季は得意の脚で一軍に定着したい。

 昨年は長岡秀樹(八千代松陰高~19年⑤)が遊撃に定着したが、人一倍悔しいのが同期入団の武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)だろう。大きく水を開けられたが、同期の活躍は間違いなく励みになると思う。昨年、支配下登録された赤羽由紘(BC信濃~20年育②)は、内外野守れるユーティリティプレーヤーとして存在感を強めたい。

 

◇DeNA

 DeNAには投打でそろそろという選手が多く、投手では阪口晧亮(北海高~17年③)、野手では森敬斗(桐蔭学園高~19年①)が代表格だ。阪口は期待されてはや5年が経過し、ファームではエース的な存在だが、一軍ではわずかに1試合のみ。既にファームではやることはなく、決して先発陣が揃っている訳ではないので、今季こそブレイクに期待したい。

 森は今季4年目で、まだ焦ることはないとは思うが、大和からレギュラーを奪えずもたもたしているうちに中日から名手・京田が加入した。守備と強肩、走塁は問題ないだけに打撃でアピールしていきたい。

 このほか、昨年即戦力として期待された三浦銀二(法大~21年④)も、一軍はわずかに6試合で防御率も10点台と洗礼を浴びた。ファームではまずまずの成績を残しているだけに、とにかく与えられた役割で結果を残したい。宮城滝太(滋賀学園高~18年育①)石川達也(法大~20年育①)もファームでは20試合以上に登板。特に左腕の石川は、中日に移籍した砂田の後の左のリリーバーの座を狙う。また、将来のエース候補の小園健太(市和歌山高~21年①)も一軍スタートになっており、焦ることはないが2年目の飛躍に期待したい。

 野手では走攻守揃った知野直人(BC新潟~18年⑥)や、昨年野手に転向した育成の勝又温史(日大鶴ケ丘高~18年④)が一軍に抜擢されており、ともにファームで6本塁打の長打力も見せており、知野は一軍帯同、勝又は支配下再登録を勝ち取りたい。

 

阪神

 先述した西純や岡留とともに桐敷拓馬(新潟医療福祉大~21年③)も一軍スタートになっている。現状、阪神の先発左腕は伊藤将のみで、同じ左腕の桐敷にかかる期待は大きく、昨年も一軍の出場7試合で3試合は先発登板で期待値の高さが窺える。ファームでは74回(13試合)を投げて防御率は0点台と結果は残せており、今季プロ初勝利を挙げたい。

 野手では、5年目の小幡竜平(延岡学園高~18年②)と4年目の井上広大(履正社高~19年②)への期待値が高いが、そろそろ出てこないと、チャンスも貰えなくなる時期に差し掛かっている。小幡は守備はチーム随一だが、やはり打撃が課題。昨年は本職の遊撃ではなく二塁での出場がほとんどで、今季は中野の二塁コンバートもあり、再度レギュラーに挑戦したい。

 長距離砲と期待された井上も、今年のドラフトでは同学年選手が入団してくる。外野は佐藤輝が三塁に専念すれば、ポジションは2つ空くことになる。昨年のファームではリーグ最多の110試合に出場し、打席数も安打数も最多だが、打率は2割そこそこで本塁打は11本と確実性が課題で、このまま未完の大器で終わりたくない。

 このほかキャンプでの一軍スタートにはならなかったが、3年目の高寺望夢(上田西高~20年⑦)は昨季リーグ2位の打率に加え、出塁率長打率も井上を上回っており、先にブレイクする可能性も高い。

 

◇巨人

 今季は目立った補強もなく、正直、戦力の底上げが進んだとは言えないが、言い換えれば若手にチャンスが十分にある。特に投手陣は、昨季はチーム史上最多の8選手が初勝利を上げた反面、12球団ワーストの防御率のなか若手の台頭に期待したい。

 先発では赤星優志(日大~21年③)が、昨季13試合で先発しており、今季は1年間先発ローテーションを維持できれば、昨季の5勝を上回ることもできる。残念ながら一軍キャンプからは外れたが、堀田賢慎(青森山田高~19年①)も、手術明けの昨年2勝(8試合)を上げており、22歳と焦る歳でもなく、じっくり調整して欲しい。

 菊地大稀(桐蔭横浜大~21年育⑥)は、ルーキーイヤーの昨年の防御率は5点台は及第点とは言えないが、一軍での16試合登板は大きな経験になったはずだ。リリーフ陣の不足は明らかな課題であり、今季は勝ちパターンを担えるような成長に期待したい。左腕では昨年4試合に先発した井上温大(前橋商高~19年④)、一軍未登板の山田龍聖(JR東日本~21年②)のデビューにも期待したい。

 野手では、湯浅大(健大高崎高~17年⑧)も期待の一人。昨年63試合と出番は増えているが、守備固めや代走がほとんどで、打力アップが課題になる。

 正直、この時期の一軍は意味がないと言ってしまえばそれまでだが、このほか育成の京本真(明豊高~21年育⑦)保科広一(遊学館高~20年育①)など、ここまで若手の名前が挙がる巨人キャンプは近年記憶がない。

 

◇広島

 巨人とは逆に、少し若手が少ない印象を受けるのが広島。そのなかで藤井黎来(大曲工高~17年育②)は期待の投手の一人。昨年の登板は14イニングと少ないが、奪三振はイニング数を上回る15個を奪っており、奪三振率の高さが強みだ。決して層が厚いとは言えないリリーフ陣に割って入る力は十分にある。

 また、復活という表現は適当ではないかもしれないが、一昨年2試合未勝利から17試合に先発した遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)も、先発の座を確保するキャンプになる。少なくとも昨年の4勝7敗の勝ち負けが逆転させるシーズンにしたい。

 一方、野手では今季支配下登録された二俣翔一(磐田東高~21年育①)や2年目の田村俊介(愛工大名電高~21年④)が抜擢されている。捕手の二俣は内野手に転向し、捕手に専念する坂倉が抜けた三塁のポジションを狙う。入団前は二刀流で話題の田村も野手一本に専念。秋山や西川、野間と外野のレギュラー陣は田村と同じ左打者が主力だが、持ち前の長打力でアピールをしたい。

 同じ左打ちの外野手で育成の木下元秀(敦賀気比高~19年育②)も期待の一人で、ファームで結果を残し、いつ支配下になると思っていたが二俣に先を越されてしまった。同じタイプの多いチーム状況のなか支配下が見送られている感じがあり、田村とは逆に打撃の確実性を上げてまずは支配下を勝ち取りたい。

 

◇中日

 昨年は高橋宏のほかに、昨年まで通算17試合登板の清水達也(花咲徳栄高~17年④)がチーム3番目の54試合に登板し、リリーバーとしての素質が開花した。同じく山本拓実(市西宮高~17年⑥)も、30試合(こちらも通算28試合)で5ホールドと、勝ちパターンを任せられるなど信頼度を高めた。

 先発では左腕の福島章太(倉敷工高~20年④)が、ファームで規定投球回をクリアし6勝を挙げ、先発候補として期待がかかる。同学年には高橋や一足先に初勝利を上げた同じ左腕の上田洸太朗(享栄高~20年育②)がおり、福島も負けていられない。

 今季の中日は野手に注目で、阿部と京田が抜けた二遊間と外野にチャンスがあるが、蓋を開けてみれば林勇希(菰野高~19年⑤)を除いた一軍スタートの若手は、土田龍空(近江高~20年③)鵜飼航丞(駒大~21年②)福元悠真(大商大~21年⑥)とやや物足りない。

 ただ土田は、昨年は京田を上回る59試合に先発し、打率は2割半ばだが、得点圏打率はチームトップの.333と勝負強さも兼ね備えている。チャンスメークのほかにポイントゲッターとしての役割も期待でき、今季は遊撃のレギュラーを確立したい。

 一昨年、大学生の外野手、右の長距離砲と同じタイプの選手が3人入団したなか、頭一つ抜けているのが鵜飼で、48試合に先発し4本塁打でさすがの長打力は見せた。確実性か課題だが、ファームで2割9分の高打率を残している。福元も1試合ながら一軍出場を果たし、初安打を放っており同期のライバル競争にも注目したい。