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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆ヤクルト~村上がチームを牽引しリーグ連覇!来季も投手力強化が課題

三冠王・村上を中心に打線が打ちまくり、セ・リーグ独走でチーム2度目の連覇

 史上最年少で三冠王を獲得した村上が、まさにチームを牽引したシーズンだった。本塁打は日本人最多を更新する56本、打率、打点を合わせた三冠のほかに、四球数は断トツの118で、故意四球(申告敬遠も25も12球団で最多。出塁率は何と.458、長打率も7割超えとまさに圧倒的な活躍で連覇の原動力になった。

 チームは7月早々に、プロ野球史上最速でマジックを点灯させ、独走のイメージが強いが、序盤は打線が低調で4月に後半にようやく首位に立った。村上も4月までは6本塁打と打線は湿りがちだった。

 しかし交流戦に突入すると打線が上向きになり、交流戦は全チームに勝ち越しする完全優勝を遂げると、リーグ戦でもその勢いは止まらず、6月を19勝4敗の驚異的なペースで独走態勢を固めた。一時期、新型コロナ陽性で選手が離脱すると、夏場にDeNAが驚異的ペースで追い上げたが、9月の直接対決で3連勝し、チーム2度目の連覇を独走で果たした。

 今年はとにかく打ちまくり、チーム打率こそ高くないが、村上を中心に山田哲人履正社高~10年①)とオスナが20本を超え、塩見とサンタナも2桁本塁打を放つと、本塁打174本、総得点619点、長打率.417は12球団ナンバーワン、四球数と出塁率はリーグ1位で、圧倒的な攻撃力で連覇を勝ち取った。

 一方で投手陣は序盤こそ良かったものの、計算できる先発投手がなかなか決まらず、昨年よりも成績を落とし、高津監督の巧みなベンチワークで乗り切った。高津監督の大胆かつ緻密な試合運びは、CSでも発揮され、下克上を狙った阪神は一矢も報いることが出来なかった。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 80勝59敗4分①

 防御率…3.52④(3.48③)打率….250③(.254③)

 本塁打…174①(142②)盗塁69②(70②)

 得点…619①(625①)失点…566⑤(531③)

 

●主力に高校生が多く、選手の長所を活かした育成と起用方法が光る

 ここ5年のドラフトでは、村上を獲れたことだけでも大成功と言える。ただ、村上も最初から打てたわけではなく、レギュラーに定着した2年目は、打率は最下位、三振数はセ・リーグ記録を超えた。ちょうどチームが低迷している時期で、結果も求めず育成できる状況のなか、我慢強く使い続けた結果が実った。

 村上のほかにもチームの育成と起用方法が光る。先発で結果の出なかった清水をリリーフに転向させ、リーグを代表するセットアッパーに育て、毎年のように期待されながら結果を残せなかった塩見を一番に固定してレギュラーに定着させた。驚きは前年まで通算1安打だった長岡を守備の良さで遊撃に抜擢すると、長岡はシーズンを駆け抜け規定打席をクリアした。

 前年まで実績ゼロの長岡の抜擢は、当然期待に応えた長岡が素晴らしいが、多くの若手にチャンスがあることを示す機会になり、間違いなく若手のモチベーションになり、チームの底上げに繋がると思う。

 また、主力に高校生が多い。捕手の中村悠平福井商高~08年③)、村上、山田、長岡が高卒で、投手でも奥川恭伸(星陵高~19年①)に高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)、リリーフの梅野雄吾(九産大九州高~16年③)がおり、やはり高卒の主力が多いチームはスケール感を感じる。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年⑥…村上宗隆(九州学院高/①・内野手)塩見泰隆(JX-ENEOS/④・外野手)

 18年②…清水 昇(国学院大/①・投手)

 19年⑥…大西広樹(大商大/④・投手)長岡秀樹(八千代松陰高/⑤・内野手

 20年⑥…木澤尚文(慶大/①・投手)

 21年①…丸山和郁(明大/①・外野手)

  ↓↓

【ヤクルトの補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補、大学生左腕

 捕 手…即戦力大学生

 内野手…ポスト山田の右打ち

 外野手…ポスト青木の即戦力、高校生は必須

 

☆投手~将来のエース候補、大学生左腕

 今季は期待の奥川が1試合のみの登板が誤算だった。奥川が不在の先発陣は小川泰弘(創価大~12年②)が規定投球回数をクリアし、サイスニード、高橋、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)、原樹里(東洋大~15年①)、大ベテラン石川雅規青学大~01年自)でローテーションを回したが2桁勝利はおらず、頭数はいるがエースと呼ばれる選手がいなかった。

 リリーフはクローザーのマクガフが38セーブで最多セーブを獲得し、セットアッパーの清水と石山泰稚ヤマハ~12年①)、左の田口麗斗(広島新庄高~14年巨③)は防御率1点台と盤石の投球を見せた。

 ここに今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)と梅野が勝ちパターンを担い、2年目の木澤がロングリリーフで加わった。木澤は55試合登板で70イニングを投げ、来季の起用法は分からないが、期待を持たせる結果になった。

 年齢バランスは悪くないが、19歳~22歳に左投手がおらず、主力が軒並み30歳を超えるなか、若手の底上げは手薄な先発陣強化とともに必要だ。

 既に上位候補で日本ハム矢澤宏太(日体大を、オリックス曽谷龍平(白鷗大)の指名を公表している。また、金村尚真(富士大)楽天からの指名が濃厚で競合が予想される。個人的には左腕が不足するなか、矢澤と曽谷指名が良いと思う。

 外れ1位指名では、伸びしろもある153キロの本格派右腕の荘司康誠(立大)や変化球を折り混ぜ安定感のある菊地吏玖(専大、同じく安定感抜群でゲームメークに長けた青山美夏人(亜大)が候補になる。

 将来のエース候補の高校生では、思い切って甲子園で投打で活躍した山田陽翔(近江高)や、今年150キロを超えた田中晴也(日本文理高)、細身ながら総合力の高い斎藤響介(盛岡中央高)の上位指名も面白い。山田はリリーフだけなら出番も早そうで、打者としてもトップクラスで、右打者が不足している状況から、野手での指名もアリだと思う。

 このほか、森下瑠大(京都国際高)坂本拓己(知内高)森山暁生(阿南光高)吉川悠斗(浦和麗明高)の左腕をリストアップしている。ともに他球団もマークしている逸材で、森下と坂本は140キロの真っ直ぐに制球力が高い。森山はキレのある真っ直ぐと緩急が武器、吉川はスリークオーターでいずれも補強ポイントに合う。

 右投手では、大学進学からプロ志望に変えた武元一輝(智弁和歌山高)は、長身からの角度のあるボールが武器で、打者としての評価も高い。変化球の扱いが上手な梶谷礼央(山梨学院高)も候補に挙がる。

 即戦力左腕では、緩急自在で完投能力の高い片山晧心(ホンダ)久保玲司(近大)は力感のないフォームで150キロを投げ込み、入江空(茨城日産)は制球力が課題だが、球速が150キロを超え評価を上げている。大畑蓮(西部ガスも真っ直ぐに力があるリリーバーで、豊富なリリーフ陣の層をさらに厚くする。 

☆捕手~即戦力大学生

 捕手は中村が健在であれば問題ないが、序盤に中村を欠いたチームが波に乗れなかったように補強が必要だ。中村不在時にマスクを被った古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)が精彩を欠き、20歳の内山壮真(星陵高~20年③)が頑張ったが不安は残る。また、嶋が引退し人数的にも不足しており指名は必須だ。

 評価が高いのは松尾汐恩(大阪桐蔭高)で、打力は申し分ないだけに、守備を鍛えれば、同じく高校から捕手に転向した内山の良きライバルになるだろう。また、強肩強打の山浅龍之介(聖光学院高)への評価も高い。

 ただ、状況的には中村と内山に続く第3の捕手が必要で、守備に定評のある野口泰司(名城大)や強肩の土井克也(神奈川大)は下位指名で獲得しても良いと思う。

内野手~ポスト山田の右打ち

 今シーズンも昨季同様、一塁にオスナ、二塁に山田、三塁の村上が規定打席をクリアし、唯一レギュラー不在の遊撃に長岡がハマった。ほぼこの4人でシーズンを乗り切り、控えも荒木貴裕(近大~09年③)に奥村展征日大山形高~13年巨④)、宮本丈(奈良学園大~17年⑥)とまさに少数精鋭で乗り切ったシーズンになった。

 村上が22歳、長岡も21歳と若く、山田も30歳で世代交代を急ぐ必要はない。ただ、ポスト山田に向けた準備は必要で、年齢バランスも悪くなく、右打者が少ない状況から将来性豊かな高校生を獲得したい。

 高校生では、ともに遊撃手の戸井零士(天理高)金田優斗(浦和学院高)の評価が高い。戸井はミート力が高く広角に打ち分けられるスラッガー、アスリートタイプの金田は守備力が高く、投手も兼任する強肩で打撃向上はプロ入り後でも遅くない。内田湘大(利根商高)も右の長距離砲で、投手としての評価も高いが、高校通算35本の実績から野手で見てみたい。

 ポスト山田の即戦力候補では、タイプの違う二塁手をリストアップしている。ヒットメーカーの山田健太(立大)はパンチ力もある上位候補。タイプは違うが田中幹也(亜大)は守備範囲が広く、俊足で二遊間も守れセンターライン強化にピッタリの選手。斎藤大輝(法大)は、広角に打てる巧打者。また、門脇誠(創価大)は3年秋には首位打者打点王の2冠に輝いた遊撃手で、攻撃的なチームにフィットすると思う。

 ☆外野手~ポスト青木の即戦力、高校生は必須

 レギュラーが確立し、若手も豊富な内野手と反して、規定打席をクリアしたのは塩見しかいない。山崎晃大朗(日大~15年⑤)と故障で離脱していたサンタナがいるが、塩見も山崎も30歳を迎え、来年41歳の青木宣親早大~03年④)も衰えを隠せず、世代交代を急ぐ必要がある。

 ルーキーの丸山や超がつく俊足の並木秀尊(独協大~20年⑤)など楽しみな選手もいるが、19歳~22歳の選手が不在で数的にも補強は必要だ。

 上位候補で蛭間拓哉(早大浅野翔吾(高松商高が1位候補だが、蛭間は西武が1位指名を公表、浅野も巨人と阪神の指名が濃厚で、重複覚悟の指名になる。タイプは違うが蛭間はポスト青木にピッタリだが、打線に余裕があるだけに将来性で浅野の指名がベストだと思う。逆方向にも長打が打てるスラッガー森下翔太(中大)も上位候補で、守備も含め評価上昇中でプロでも十分通用するレベルに成長している。

 浅野に次ぐ高校生では、高校通算54本の巧打者、西村瑠伊斗(京都外大西高は遠投120メートル、50メートル6秒の俊足でトリプルスリーも狙える逸材。井坪陽生(関東一高は俊足に加え、ミート力に長け逆方向に強い打球を打て、浅野を外した場合は是非とも獲得したい。機動力だけなら黒田義信(九州国際大高)はピカ一で、プロで体を作り打撃力が向上できればリードオフマン候補になる。

 

●即戦力で投手力強化か、不足の外野手で打線に厚みを持たせるか、注目の1位指名

 ヤクルトの1位予想は難しく、優先課題は投手力強化なので、競合覚悟で矢澤宏太(日体大金村尚真(富士大)の即戦力投手指名が有力だが、ポスト中村の捕手強化で松尾汐恩(大阪桐蔭高)、不足している外野手には、蛭間拓哉(早大浅野翔吾(高松商高森下翔太(中大)と逸材が並び、野手1位行くのであれば松尾と浅野が候補になると思う。

 また、ソフトバンクが1位指名を公表しているイヒネ・イツア(誉高)も候補の一人で、現有戦力が枯渇している状況ではないので、有望選手を競合覚悟で思い切って獲得に行ける強みがある。

【指名シミュレーション】 

1位~松尾汐恩(大阪桐蔭高・捕手)…高校から捕手に転向した打てる正捕手候補

2位~青山美夏人(亜大・投手)…派手さはないが安定感抜群の投球でゲームメーク

3位~斎藤響介(盛岡中央高・投手)…フィールディングにも優れ総合力が高い

4位~吉川悠斗(浦和麗明高・投手)…スリークオーター左腕で球速以上のキレ

5位~入江 空(茨城日産・投手)…今年球速がアップし150キロを超えた左腕

6位~黒田義信九州国際大高・外野手)…高い走塁技術の足が武器で、打撃も成長中

 おススメの選手は、投手もこなす二刀流捕手の愛澤祐亮(京大・捕手)で、インサイドワークに長けた強肩で、捕手として総合力が高い。また、投げてはサブマリンの異色選手で、投手と捕手の経験がリードにも活きている。上位で捕手を獲得できなかった場合は下位、育成で指名しても面白い。