ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆日本ハム~新球場元年!上位は即戦力で優勝を狙う

●開幕から最下位独走…新庄監督が目指す守り勝つ野球とは?

 昨年も開幕から最下位で、何とか最後の最後で3年連続の5位に滑り込んだものの、今季も開幕戦3連敗から一度も順位を上げることもなく、最下位が定位置で早々とペナントレースから脱落。8月末に12球団最速で優勝の可能性がなくなり、5割以下も確定した。

 昨年はシーズン途中に中田翔(巨人)、シーズンオフに西川遥輝楽天)と大田泰示(DeNA)、秋吉亮(ソフトバンク)の主力を放出し、ドラフトも高校生中心の育成ドラフトで戦力ダウンは必至。シーズン前は新庄監督のパフォーマンスで注目を集めたが、蓋を開けてみれば大方の予想通り上位を狙える戦力ではなかった。

 昨シーズンとは状況が逆転し、チーム防御率はリーグ3位から最下位になり、失点数もリーグワースト。貧打に喘いだ攻撃のほうは、本塁打数も盗塁数も改善し、長打力も機動力も付いたが、奇襲ばかりが目立つ攻撃では、なかなか得点に結びつかず得点数も最下位。ちなみに、失策数もリーグワーストで、打てない守れないでは最下位も当然の結果と言える。

 新庄監督は就任当初より守り重視の野球を打ち出していたが、残念ながらイメージには程遠く、正直どういう野球を目指しているか掴めない。 

【9/2現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

  勝敗 120合47勝70敗3分⑥

  防御率…3.44⑥(3.32③)打率….231⑤(.231⑥)

  本塁打…85②(78⑥)盗塁77③(77④)

  得点…372(454⑥)失点…445⑥(515④)

 

 

●育成路線に翳りが漂うなか、即戦力か?育成か?その判断に注目が集まる

 今年のドラフトは、今後のチーム戦略の分岐点になると思う。新庄監督は当然ながら即戦力を希望しているが、日本ハムの基本方針は育成主体。ただ、4年連続のBクラスが確定し、13年以来の最下位も現実的ななか、新球場元年で今季のような低迷を続けるわけにはいかない。

 育成重視で中・長期的にチームを立て直すか、即戦力中心に短期にチームを立て直すかのどちらかを選択する形になる。元々、フロント主導チームだけに、今季のドラフトでどういう判断をするか注目したい。

 ただ、たった1年のドラフトでチームが劇的に変わることは無い。実際、育成主体と言いながら、ここ数年のドラフトの成果は出ていない。過信ともいえる育成路線の見直しは絶対に必要だと思う。

 直近の高卒の主力と呼べるのは堀瑞樹(広島新庄高~16年①)くらいで、ようやく清宮幸太郎早実~17年①)や野村佑希(花咲徳栄高~18年②)が主力級に成長してきたが、本当に来季優勝を狙うのであれば、FA参戦やトレード、新外国人選手の補強が近道になる。

 来季は広い札幌ドームから狭い新球場に変わる。これまでは広い本拠地ということで、投手はある程度大胆に攻められたし、攻撃陣はスラッガーより足の速い選手が重宝されたが、来季からは抜本的に戦い方を見直す必要に迫られる。

 そのために投手力強化は基本で、今年は残念ながら高校生投手で1位重複するような選手が見当たらず、上位は即戦力投手で固めて良い。一方で野手は、即戦力獲得の必要性はなく、むしろFA権を取得した近藤健介(横浜高~11年④)の慰留に全力を注ぐべきだ。また、年齢バランスで捕手と外野手に高校生が必要になる。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年⑤…なし

 18年③…なし

 19年⑤…なし

 20年⑤…伊藤大海(苫小牧駒大/①・投手)

 21年⑤…北山亘基(京産大/⑧・投手)上川畑大悟(NTT東日本/⑨・内野手

  ↓↓

日本ハムの補強ポイント】 

 投 手…即戦力投手(先発・リリーフともに)将来のエース候補の高校生

 捕 手…年齢バランスで高校生

 内野手…必要なし

 外野手…高校生は将来のスラッガー候補 

 

☆投手~即戦力投手(先発・リリーフともに)将来のエース候補の高校生

 先発はエースの上沢直之専大松戸高~11年⑥)を中心に、伊藤と加藤貴之(新日鉄住金~15年②)の三本柱は安定しているが、次に続くのが上原健太(明大~15年②)や新外国人のポンセで残念ながら上積みはなかった。クローザーだった杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)を先発に転向させ、若手では根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)も出てきているが先発の層は厚いと言えない。

 リリーフも数的には豊富だが、勝ちパターンが決まらない。チームの最多セーブはルーキーの北山で抑えが決まらず、北山は現在中継ぎに回っている。ただ、堀や玉井大翔(新日鉄かずさマジック~16年⑧)がセットアッパー的な役割で安定した数字を残し、石川直也(山形中央高~14年④)が故障から復活。吉田輝星(金足農高~18年①)もリリーフへの適性を見せており、来季に向け優先事項は先発投手の強化になる。

 年齢バランスでは、20歳~22歳に吉田輝を含め3名しかおらず、大学生または高卒3年目の社会人を指名できればベストになる。また、今年は地元北海道に有望な高校生投手が揃っており、ここは確実に抑えておきたい。

 1位候補には二刀流左腕の矢澤宏太(日体大を推したい。言わずもがな今年のドラフト候補の目玉で重複の可能性が高いが、大谷翔平エンゼルス)の二刀流を成功させた実績があるのは強みになると思う。話題性とスター性も兼ね備えており、新球場元年を迎えるにあたり、是非とも獲得したい選手だ。

 このほか、矢澤にも劣らない評価を得ている150キロ左腕の曽谷龍平(白鷗大)、伸びしろ十分の荘司康誠(立大)、安定感抜群の高卒3年目の河野佳(大阪ガスを上位で確実に獲得したいところだ。

 1位で希望通りに即戦力投手を獲得できれば、2位以下で高校生を狙える。甲子園でも活躍した山田陽翔(近江高)に、地元の有望選手の斎藤優汰(苫小牧中央高)門別啓人(東海大札幌高)はともに最速150キロの将来のエース候補で、他球団も上位でリストアップしており、2位以下での獲得は難しい。

 このほか高校生では、今夏の予選で門別に投げ勝った坂本拓己(知内高)奪三振率の高い左腕。今春のセンバツで好投したパワーピッチャーの辻田旭輝(クラーク国際高)は、斎藤や門別を逃した場合は、下位で獲得しておきたい選手だ。今夏の甲子園は不振に終わったが、森下瑠大(京都国際高)は野手としても評価が高い。

 大学生では、ともに最速150キロを超える水口創太(京大)田中千晴(国学院大)は伸びしろ十分の長身右腕、故障から回復した秋山凌祐(立命大)をリストアップしている。ただ、水口や田中はどちらかというと育成型で、即戦力として制球力に長けている関根智輝(ENEOS)への評価が高く、関根は先発・中継ぎともに対応でき、個人的にチームにフィットしそうな気がする。

☆捕手~年齢バランスで高校生

 正捕手不在の状況は変わらず、今季は宇佐見真吾(城西大~15年巨④)が最もマスクを被り、清水優心(九州国際大高~14年②)と石川亮(帝京高~13年⑧)が続く。郡拓也(帝京高~16年⑦)や古川裕大(上武大~20年③)は、捕手以外でも出場しており、来シーズンの編成含め、正捕手確立は投手陣強化とともに急務だ。宇佐見や石川亮、清水は年齢的にも全盛期を迎えており、そろそろ正捕手争いにピリオドを打ってほしい。

 捕手は7名おり、数的には問題ないが年齢バランスが悪く、最も若いのが22歳の田宮裕涼(成田高~18年⑥)なので、今季は高校生捕手に逸材が多く、補強するなら高校生になる。

 優先順位はさほど高くないので、下位指名になる可能性が高い。野田海斗(九州国際大高)や地元の唐川侑大(東海大札幌高)は投手も兼任する強肩で、唐川は4番を打ち打撃も悪くない。甲子園でも活躍した山浅龍之介(聖光学院高)は、元々守備力には定評があったが、打撃でも5番を打つまで成長しており、狙い目の選手だと思う。

内野手~必要なし

 内野は年齢、右打ちと左打ちのバランスも良く、正直補強の必要はないと思う。二塁のレギュラーが不在だが、一塁に清宮、三塁には野村、遊撃にルーキーの上川畑が定着しつつある。

 二遊間を守れる石井一成(早大~16年②)や守備のスペシャリスト谷内亮太(国学院大~12年ヤ⑥)など適材適所でタレントが揃っており、渡邊諒(東海大甲府高~13年①)もまだ27歳で老け込む年齢ではない。

 補強するなら二遊間になり、即戦力で田中幹也(亜大)奈良間大己(立正大)、高校生では小池裕吏(東海大菅生高)がリストアップされているが、何となく似たタイプの選手がおり優先順位としては高くない。

 高校生を見渡しても、有薗直輝(千葉学芸高~21年②)や細川凌平(智弁和歌山高~20年④)の若手を上回る選手が見当たらず、無理に順位を割く必要はない。強いて言えば戸井零士(天理高)は強打の遊撃手で、課題だった守備力も向上し、数少ない補強ポイントに合致する。

 また、新庄監督は単身アメリカでMLBに挑戦した加藤豪将(メッツ)にも注視しているようだが、これはこれで悪くない気がする。

☆外野手~高校生は将来のスラッガー候補 

 外野手は内野手よりも楽しみな選手が多い。数少ない不動のレギュラーの近藤に、今年大ブレイクした松本剛(帝京高~11年②)は首位打者が射程圏内に入る活躍を見せている。

 パンチ力のある万波中正(横浜高~18年④)や攻守で全力プレーの今川優馬(JFE東日本~20年⑥)、故障で離脱したが巧打の淺間大基(横浜高~14年③)に、ケガで入団以降まともにプレーできていないが五十幡亮汰(中大~20年②)などが控え質量ともにお釣りがくる布陣だ。

 当然、浅野翔吾(高松商高蛭間拓哉(早大は1位候補だが、先述したように外野手は戦力的に十分で、最悪外国人選手でも賄える。年齢バランス的には浅野だが、右のスラッガーでは既に万波と今川がおり、ともに足も使え、敢えて競合覚悟で指名するかは疑問が残る。一方で新球場は左右非対象で右中間が狭く、左打者のスラッガーが欲しい。そうなると蛭間が理想的で、野手1位指名であれば蛭間のほうが良いと思う。

 補強ポイントのベストは、高校生の左打ちのスラッガーで、西村瑠伊斗(京都外大西高はまさにピタリとハマる。西村は投手でも評価が高く、二刀流としての育成も十分にある。

 大学生では澤井簾(中京大が左打ちのスラッガーで、長打力だけなら蛭間にもひけをとらず補強ポイントにハマる。このほか大学選手権でブレークした上崎彰吾(東日本国際大)や、経験豊富な三井健佑(大阪ガスも長打力が売りの左打ちで、補強ポイントに合致する。

 

●上位は計算できる即戦力投手。野手は左打ちのスラッガーは欲しい

 理想は投打で即戦力が欲しいところだが、2位の指名順位が早いとはいえさすがに両獲りは難しい。やはり1位は投手で行くべきで、競合覚悟で矢澤宏太(日体大・投手/外野手)曽谷龍平(白鷗大・投手)が候補になる。

 ただ、矢澤と曽谷もともに左腕だが、特別左投手に困っている訳ではなく、単独で荘司康誠(立大・投手)河野佳(大阪ガス・投手)を確実に1位で獲る戦略もありだ。

 野手では蛭間拓哉(早大・外野手)澤井簾(中京大・外野手)は補強ポイントに合う左打ちのスラッガー。また、今季は内野手候補が不足しており指名順位が上がることも予想され、田中幹也(亜大・内野手や澤井の単独指名などサプライズもあるかもしれない。

【指名シミュレーション】 

1位~矢澤宏太(日体大・投手/外野手)…小柄ながら身体能力の高い二刀流左腕

2位~荘司康誠(立大・投手)…188センチの長身から最速150キロの本格派右腕

3位~関根智輝(ENEOS・投手)…スライダーが武器で制球力に長けた即戦力

4位~田中千晴(国学院大・投手)…キレのあるフォークが武器の150キロ右腕

5位~中田歩夢(東奥義塾高内野手…広角に打ち合分ける中距離打者で高校23本

6位~唐川侑大(東海大札幌・捕手)…投手も兼任し、打っては4番の主力選手

 おススメの選手は、地元の本格派右腕の斎藤優汰(苫小牧中央高・投手)で、日本ハムの先発陣は、上沢や伊藤、加藤など技術力の高い投手が主力だが、そのなかで直球でグイグイ押す斎藤のような選手は魅力だと思う。

 本来であれば1位指名もあるが、チーム状況を考えると難しく、1位で希望通りの選手が獲得できれば、2位指名も十分にあると思う。…