●投打に大きな欠点なく、逆転優勝を狙う!ルーキー佐藤輝の復調に期待
開幕から首位を走っていたが、ヤクルトの猛追により現在2位。投手力が良く、打撃も悪くないイメージがあるが、チーム防御率も打率も3、4位と中位で、得失点差も僅かに“6”と、よくこの順位で健闘していると思う。
盗塁数は断トツの1位と、広い甲子園で本塁打が出にくいことから、機動力を活かす野球は理に適っている。ただ、この間の課題だった失策数は、今年もリーグワーストで80を数え、ここが解消できれば本当にやりたい野球が出来ると思う。
まずは打線から見ると、今年の前半戦を支えたのは、やはりルーキーの佐藤輝明(近大~20年①)だろう。現在、55打席連続安打なしの記録を更新中だが、本塁打数23本は見事と言うしかない。当然、相手チームのマークが厳しくなるなか、臆することなく乗り越えていって欲しい。また、サンズとマルテの活躍も嬉しい誤算だった。打率こそ低いもののチャンスに強いサンズ、長打力のあるマルテがシーズン通して調子をキープできている。
近本光司(大阪ガス~18年①)が打率3位、その近本を抑えて現在盗塁王のルーキー中野拓夢(三菱自動車岡崎~20年⑥)が遊撃のレギュラーを獲得し、2人で47盗塁を稼いでいる。このほか糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)と大山悠輔(白鷗大~16年①)、梅野隆太郎(福岡大~13年④)の8選手が規定打席をクリアし、レギュラーが確立しているのも現在の順位を維持できている要因だろう。
投手陣では、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)と西勇輝(菰野高~08年オ③)が規定投球回数をクリアし、青柳は防御率2位で10勝とまさにエース級の活躍を見せている。このほか秋山拓巳(西条高~09年④)も10勝を上げ、ルーキーの伊藤将司(JR東日本~20年②)とガンケルがローテーションを守っている。
リリーフ陣は、スアレスが現在最多セーブ、岩崎優(国士館大~13年⑥)と岩貞祐太(横浜商大~13年①)の勝ちパターンに、馬場皐輔(仙台大~17年①)と2年目の及川雅貴(横浜高~19年③)が加わり、リーグ屈指のリリーフ陣が形成できている。
【9/30現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 123試合 65勝51敗7分②
防御率…3.58③(3.35②)打率….248④(.246⑤)
本塁打…109④(110④)盗塁104①(80①)
得点…479④(494④)失点…473③(460②)
●毎年、主力をドラフトで獲得しているが、ほぼ大学生と社会人で育成に課題…
昨年は佐藤輝を4球団競合のなか獲得したのち、19年とは一転して即戦力ドラフトになった。2位で7勝の伊藤、6位で中野を獲得し、5位の村上頌樹(東洋大~20年⑤)は、ファームで防御率、最多勝、勝率の投手3冠を獲得しており、大成功のドラフトになるかもしれない。
ここ5年のドラフトでは、16年は大山と糸原、17年は馬場と高橋遥人(亜大~17年①)、内野のユーティリティ熊谷敬宥(立大~17年③)を獲得している。18年は新人王の近本と木浪聖也(ホンダ~18年③)、19年では及川が主力になっており、この間安定してAクラスを維持できているのも、ドラフトが上手くいっている証だと言える。
ただ、高校生が育っていないのが心配だ。投手は及川と西純矢(創志学園高~19年①)、野手ではひいき目で小幡竜平(延岡学園高~18年②)しか思い当たらない。現在の主力選手を見ても、生え抜きでは秋山しかいない。即戦力がそのまま戦力になっていることは悪くないが、やはり高校生が育成で伸びてこないことには、本当のチーム力の底上げにはならず、この辺のジレンマを解消したいところだ。
【阪神の補強ポイント】
投 手…左腕のl候補(高校生と大学生)
捕 手…将来の正捕手候補
内野手…将来の主軸候補 右打ちならベスト
外野手…全年代OK 左打ちならベスト
☆投手~左腕のl候補(高校生と大学生)
先発ローテーションは、実績十分の西勇と青柳、秋山に、ルーキーの伊藤とガンケルに、故障から復活した高橋が加わっている。ここに復活を待ち望む藤浪晋太郎(大阪桐蔭高~12年①)が控えているが、若手の先発候補が不足している。25歳以下で見ると西純と村上しかおらず、左投手の先発候補は見当たらない。
今年は投高打低と言われ、有望な高校生投手や豊富な大学生の先発左腕を確実に獲得したいところだ。
リリーフ陣は岩崎と岩貞はともに30歳を迎え世代交代の準備を進めたい。20歳の及川はこれからの投手で、先発、リリーフの適性をこれから判断することになるが、馬場やファームで好投している浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)も、どちらかというとセットアッパータイプで、即戦力を含めリリーフ陣も厚くしたい。
1位入札候補では、高校生投手なら小園健太(市和歌山高)と森木大智(高知高)、大学生左腕では佐藤隼輔(筑波大)と隅田知一郎(西日本工大)が候補になる。即戦力の左腕が欲しいところだが、投手陣をもう一段スケールアップするなら、個人的には小園や森木に行って欲しい。
このほかの上位候補で、高校生では畔柳享丞(中京大中京高)と達孝太(天理高)、左腕の松浦慶斗(大阪桐蔭高)、木村大成(北海高)をリストアップしており、190センチの長身左腕の羽田慎之介(八王子高)も、故障で今夏は公式戦で投げていないがポテンシャルでは引けをとらない。
大学生では山下輝(法大)と黒原拓未(関学大)、鈴木勇斗(創価大)や桐敷拓馬(新潟医療福祉大)と先発左腕が多く、スケール感では山下が一歩リードしているが、いずれもゲームメークに長けた先発候補、右腕では北山亘基(京産大)の評価も高く、北山も夏から秋にかけ評価を上げており、状況によっては1位指名もある逸材
社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)と山田龍聖(JR東日本)をリストアップしている。評価上昇中の山田は21歳と若く、チームにフィットしそうな気がする。
下位指名では黒田将矢(八戸工大一高)と秦勝利(神村学園高)の評価が高く、甲子園でも価値した花田侑樹(広島新庄高)に、黒木優(九州文化学園大)や山本大揮(九州国際大高)の九州の逸材にも注目している。
即戦力ではともに直球に力のある翁田大勢(関西国際大)や飯田琉斗(横浜商大)はリリーフ陣に厚みを持たせ、横山楓(セガサミー)と吉村貢司郎(東芝)はともに経験豊富な先発候補で、吉村はリリーフもできる。
☆捕手~大学生または社会人
最大の不安は正捕手・梅野のFA取得で、強肩で堅守、チャンスに強い打撃の梅野が残るか移籍するかで状況は大きく変わる。今シーズン、梅野のほかにマスクを被ったのは坂本誠志郎(明大~15年②)と原口文仁(帝京高~09年⑥)しかおらず、梅野の去就がチームを大きく左右する。ファームでも正捕手が不在の状況で、高校生・大学生のどちらかは獲得したい。
大学生では、古賀悠斗(中大)と福永奨(国学院大)は、ともに二塁送球1秒8の強肩で、古賀は上位で消えると思うが、評価が上がっている福永は上手くいけば下位でも獲得できる可能性がある。
高校生では打撃の良い松川虎生(市和歌山高)に高木翔斗(県岐阜商高)、村山亮介(幕張総合高)への評価が高く、今夏の甲子園で評価を上げた中川勇斗(京都国際高)に東出直也(小松大谷高)など下位指名でも捕手は抑えておきたい。
☆内野手~将来の主軸候補 右打ちならベスト
今シーズンは、一塁マルテ、二塁に糸原、三塁に大山、遊撃はルーキー中野で、全員が規定打席をクリアしている。29歳の糸原に、大山が27歳、中野は25歳でまさに全盛期の選手で当面は心配ない。また、外国人選手との兼ね合いもあるが、佐藤輝の本職は三塁で、そうなると大山を一塁に回すことができ、2~3年は心配ない。
さらに守備の巧い山本泰博(慶大~15年巨⑤)や俊足の熊谷など、控えも充実しており、内野が万全なうちに素質ある高校生を獲得したい。また、19歳~25歳までに右打者がおらず、ここは年代に関係なく埋めておきたいところだ。
内野は高校生中心にリストアップしており、粟飯原龍之介(東京学館高)は俊足巧打の遊撃手で守備も巧く、今年はパワーも増して本塁打を増やした。阪口楽(岐阜一高)と田村俊介(愛工大名電高)は、ともに二刀流のスラッガーで外野も守れる。池田来翔(国士館大)は右打ちの中距離打者で補強ポイントに合致する。
☆外野手~全年代OK
外野は左翼にサンズ、中堅に近本、右翼に佐藤輝がレギュラーを務めている。先述したが佐藤輝は若いうちは内野で育てたほうがよく、ファームでは井上広大(履正社高~19年②)や小野寺暖(大商大~19年育②)が育ってきている。ただ、25歳以下の外野手が井上と小野寺しかおらず、これは余りにも人数が少なすぎる。リードオフマン、主軸候補関係なく補強が必要で、内野より補強の優先順位は高い。
主軸候補では、内野でも紹介した阪口や田村に加え、今夏の甲子園で2本塁打の前川右京(智弁学園高)を上位候補に上げている。前川は守備走塁に目を瞑ってでも、長打が魅力の強打者で、将来のクリーンアップ候補。地元の米山航平(市尼崎高)も長打力が売りで足も早い。
池田陵真(大阪桐蔭高)と福元悠真(大商大)は、パンチ力のある中距離打者タイプで、池田は勝負強い打撃が魅力で、福元は選球眼の良さも評価されている。リードオフマンタイプでは、丸山和郁(明大)は俊足を活かした小技が武器で、50メートル5秒8の俊足に加え強肩で守備範囲も広く、今の機動力野球にハマる選手だ。
●欲しいのは即戦力左腕だが、豊富な高校生投手から将来のエース候補を獲得したい
現段階で野手は充実しており、1位は投手になるだろう。短期的に見れば即戦力左腕が欲しいところで、3佐藤隼輔(筑波大)か隅田知一郎(西日本工大)の選択になるだろう。奇策ではないが、山田龍聖(JR東日本)のサプライズ指名も面白い。ただ、個人的には将来のエース候補の高校生を獲って欲しい。重複覚悟で小園健太(市和歌山高)や森木大智(高知高)指名は、阪神が長期的にチーム作りを考えている姿勢の顕われになり、例え外してもファンは納得してくれると思う。
【指名シミュレーション】
1位~隅田知一郎(西日本工大・投手)
…最速150キロの手元で伸びる真っすぐと多彩な変化球が武器で総合力が高い
2位~前川 右京(智弁学園高・外野手)
…今夏の甲子園で2発の本塁打を放った。バットにボールを乗せる力は天性
3位~黒原 拓未(関学大・投手)
…小柄だが、緩急を活かした投球で打者を打ち取るピッチングスタイルが身上
4位~花田 侑樹(広島新庄高・投手)
…制球力に優れ、ゲームメークに長けた右腕。打者としても評価が高い二刀流
5位~福永 奨(国学院大・捕手)
…二塁送球タイム1秒8の強肩で、ディフェンス能力が高い。打撃も成長中
6位~吉村貢司郎(東芝・投手)
…伸びのある直球が武器の本格派右腕。先発だが、大学時代はリリーフも経験
7位~秦 勝利(神村学園高・投手)
…常時140キロ代のストレートを、真向から投げ込むパワーピッチャー左腕