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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆ヤクルト~若手とベテランが融合して優勝争い!さらなる強化策は即戦力か、育成か?

●予想外(失礼…)の健闘で最下位からの下克上!阪神とのデッドヒートの行方は

 今シーズン、ファンは別にして優勝争いを予想した専門家が何人いただろう。前半から阪神が独走するなか離されることなく、終盤の連勝で首位に躍り出た。若手とベテラン、新外国人選手が融合し、前年最下位からの優勝を目指す。

 昨年はチーム防御率も打率もリーグ最下位で、打てない守れないチームだったが、今年はともにリーグ2位まで成績が上昇した。特に、ここ数年投壊状況が続いていた投手陣の改善には驚きである。

 その投手陣だが、規定投球回数をクリアしている投手はいない。先発は小川泰弘(創価大~12年②)と田口麗斗(広島新庄高~13年巨③)、奥川恭伸(星稜高~19年①)、石川雅規青学大~01年自)、スアレスを軸にやり繰りしているなか、エースの小川と次期エース候補の奥川がともに8勝を上げているのが大きい。

 先発陣以上に頑張っているのがリリーフ陣だ。クローザーのマクガフが24セーブ、清水昇(国学院大~18年①)は60試合に登板し、リーグ最多の40ホールドを上げている。今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)は、リリーフだけで7勝負けなしの22ホールド、抑えから中継ぎに回った石山泰稚ヤマハ~12年①)、左腕の坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年⑤)が勝ちパターンを担っている。昨年、清水のリリーフ転向がハマり、楽天を戦力外になって獲得した今野の活躍などを見ると、二軍監督からチームを見てきた高津監督の手腕には感心するしかない。

 打線は村上宗隆(九州学院高~17年①)が、巨人の岡本と本塁打王打点王を争い、毎年期待されていた塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)が、ようやく期待に応えリードオフマンに定着した。主力の山田哲人履正社高~10年①)と中村悠平福井商高~08年③)が復調し、ここに新外国人のオスナとサンタナが加わった。ベテランの青木宣親早大~03年④)が規定打席をクリアし、代打の切り札で川端慎吾(市和歌山商高~05年③)など、若手とベテラン、新外国人が噛み合った勝負強い打線が形成できている。 

【10/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 123試合 63勝44敗16分①

 防御率…3.44②(4.61⑥)打率….257②(.242⑥)

 本塁打…126(114③)盗塁67②(74③)

 得点…556①(468⑤)失点…451②(589⑥)

 

●若き主砲・村上が傑出しているが、全体的には物足りないドラフト

 昨年は早川(楽天)と鈴木(ロッテ)2回連続で1位抽選を外し、課題の投手力強化で木澤尚文(慶大~20年①)を獲得した。2位以降も大学生を中心に指名したが、一軍で戦力になったのは内野手の元山飛優(東北福祉大~20年④)だけでは、寂しいドラフトになっている。

 ここ5年のドラフトでは、16年は梅野雄吾(九産大九州高~16年③)、17年は村上と塩見、18年が清水と坂本、19年は奥川と大西広樹(大商大~19年④)と、村上の存在が傑出しているが、全体的にやや物足りない。投手では金久保優斗(東海大市原望洋高~17年⑤)、野手では古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)が出てきているが、決して成功とは言えない。

 ただ、ファームでは、杉山晃希(創価大~19年③)がイースタン2位の7セーブ、野手では太田賢吾(川越工高~14年日⑧)は首位打者、3位に武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)、4位長岡秀樹(八千代松陰高~19年⑤)と25歳以下の選手が結果を残し、来シーズンの活躍が今から楽しみだ。

【ヤクルトの補強ポイント】 

 投 手…先発候補(将来性と即戦力)

 捕 手…年齢バランスで大学生

 内野手…高校生・大学生の右打ち

 外野手…高校生のリードオフマン候補

 

☆投手~先発候補(将来性と即戦力)

 先発陣は小川に奥川、田口、石川が中心で、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)に高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)がおり、前半は金久保が好投したが、不足感は否めない。石川は41歳、小川と高梨も30代になり、将来性を見据え先発投手の層を厚くしたい。特に25歳以下の先発タイプは、奥川のほかに金久保と木澤、寺島成輝(履正社高~16年①)くらいしかおらず、即戦力も含めて補強が必要だ。

 一方でリリーフ陣は当面心配はない。清水はクローザー候補の一番手で、実績のある梅野に今野、坂本が経験を積み、故障で戦列を離れたが、前半戦好投した近藤弘樹(岡山商大~17年楽①)が戻れば、盤石なリリーフ陣を形成できる。強いて言えば、リリーフ左腕が坂本しかおらず、今年豊富な大学生左腕から補強したい。

 1位入札候補では小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)達孝太(天理高)の将来性十分のエース候補に、即戦力では隅田知一郎(西日本工大廣畑敦也(三菱自動車倉敷)をリストアップしている。昨年の指名状況から即戦力左腕の隅田が欲しいところだが、個人的には一昨年、即戦力が欲しいなか奥川を指名した姿勢から、今年も小園や風間の高校生に行って欲しい。

 上位候補では、1位で高校生を獲得できたなら即戦力投手で層を厚くしたい。大学生では佐藤隼輔(筑波大)鈴木勇斗(創価大)黒原拓未(関学大の今年豊富な大学生左腕、三浦銀二(法大)木蓮東北福祉大が候補になる。さすがに佐藤は1位以外では厳しいが、鈴木と黒原はともに球威があり、三浦はタフな先発候補。速球派の最速149キロの椋木はリリーフへの適性が高い。

 社会人では山田龍聖(JR東日本森翔平(三菱重工エスト)の両左腕をリストアップしているが、山田と森もともにこの間評価が上がっている。山田はまだ21歳で伸びしろがあり、森は安定感抜群のローテーション候補。

 高校生では、松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)の両左腕、畔柳享丞(中京大中京高)の評価が高く、特に木村は消えると言われるスライダーが高評価で、世代ナンバーワン左腕にと言われており、1位指名で消える可能性もある。

 下位指名候補では、高校生投手が多く190センチの大型左腕の羽田慎之介(八王子高)、安定感のある花田侑樹(広島新庄高)寺嶋大希(愛工大名電高)、キレのある直球が武器の黒木優九州文化学園高)、速球派の竹山日向(享栄高)は151キロ右腕。即戦力では強気な長身右腕の飯田琉斗(横浜商大、投球術に長けた米倉貫太(ホンダ)、八木彬(三菱重工エスト)は奪三振率の高いリリーバー候補。

☆捕手~年齢バランスで大学生

 捕手は必要なく、中村がシーズン通して健在であれば問題ない。年齢も31歳でこれから円熟味を増していく。中村は来年で14年目になり、やはり高校生が主力になると戦力的には安定する。中村のあとにも控えているのも古賀や内山壮真(星稜高~20年③)の有望な高卒選手で、強いて言えば年齢バランスで大学生を抑えておきたい。

 捕手は古賀悠斗(中大)の評価が高いが、上位で消える選手で獲得の可能性は低く、岩本久重(早大)は守備型の選手で打撃も勝負強い。じっくり育てるのなら高木翔斗(県岐阜商高)で、古賀と内山の良きライバルになる。松川虎生(市和歌山高)は打者としての評価が急上昇中で、村上のようにコンバートしても面白い。

内野手~高校生・大学生の右打ち

 今シーズンは一塁にオスナ、二塁に山田、三塁に村上がおり、若き21歳のスラッガー村上は、これから10年はチームの柱だけではなく、プロ野球を代表する打者になる。唯一、遊撃にレギュラーがおらず西浦直亨(法大~13年②)とルーキーの元山が務めている。打力なら西浦、守備力なら元山で、年齢的に元山がレギュラー候補に近いと言える。

 補強ポイントは山田が30歳になり、ポスト山田の育成が必要になり、右打者が少ないので高校生・大学生ともに獲得が必要だ。また、控え選手が弱く、二遊間を守れる内野のユーティリティプレーヤーが欲しい。

 ポスト山田と右打者の補強では、三塁手有薗直輝(千葉学芸高)は、高校通算70本塁打を記録している右の大砲候補。川口真宙(高梁日新高)は強肩強打の遊撃手、即戦力では池田来翔(国士館大)は、力強い打撃でパンチ力もあり、現在は二塁だが昨年までは三塁を守っており内野の層を厚くする。

 このほか、水野達稀(JR四国)をリストアップしており、水野は小兵ながら走攻守揃った巧打者で意外に長打力もある。二遊間を守れることも魅力で、チームの補強ポイントに合う選手だと思う。

 ☆外野手~高校生のリードオフマン候補

 外野は左翼に青木、中堅に塩見がレギュラーだが、さすがに青木も元気とは言え来年40歳、塩見も遅咲きの選手で29歳になり、世代交代の準備が必要だ。外野は内野とは逆に左打ちが少なく、長距離タイプが多い。今年は、ポスト青木ではないが、リードオフマン候補を抑えておきたい。

 ただ、今年はリードオフマンタイプが少ない。リストアップしている阪口楽(岐阜一高)田村俊介(愛工大名電高)はいずれも左のスラッガー吉野創士(昌平高)も将来的はクリーンアップ候補だ。大学生でも正木智也(慶大)ブライト健太(上武大)は長距離打者で、走攻守揃った梶原昂希(神奈川大)も柳田タイプで中軸候補になる。

 そこで俊足巧打の丸山和郁(明大)藤井健平(NTT西日本)を狙ってみても良いと思う。一方で、左打ちの阪口や田村、梶原はチームの補強ポイントに合うし、ブライトは足が速く、攻撃的な1番打者になれる。

 

●今年は即戦力投手で選手層を厚くするか、奥川に続く次世代エース獲得かに注目

 安定した戦力確保のためには、投手が1位指名になるだろう。短期的に見れば廣畑敦也(三菱自動車倉敷)隅田知一郎(西日本工大が最適で、廣畑は最初の1位指名なら単独で獲得できる可能性もある。一方で奥川の続くエース候補で、高校生もあり小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)が候補になる。個人的には高校生指名にいってもらいたい。

【指名シミュレーション】 

1位~廣畑 敦也(三菱自動車倉敷・投手)

 …150キロの直球を武器に、ゲームメークに長けた即戦力でローテ候補

2位~椋木  蓮(東北福祉大・投手)

 …最速149キロの速球とキレのある変化球に制球力も高いクローザー候補

3位~森  翔平三菱重工エス・投手)

 …カウントも稼げ、勝負球にもなる精度の高い変化球で完成度の高い左腕

4位~水野 達稀(JR四国・内野手

 …身長170センチの小兵ながら、走攻守三拍子揃った巧打者でパンチ力もある

5位~寺嶋 大希愛工大名電高・投手)

 …レベルの高い投手陣のなかエースナンバーを獲得。安定感のある投球が光る

6位~岩本 久重(早大・捕手)

 …強肩から安定感のある二塁送球で2年秋から正捕手。打撃もチャンスに強い

7位~川口 真宙(高梁日新高・内野手

 …強肩強打の遊撃手で、ミート力も高い中距離打者。伸びしろのある隠し玉