ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆オリックス~投打の柱の存在で優勝も射程圏内。ドラフトの課題は将来性?弱点の補強?

●投の柱、山本と宮城、打の柱、吉田正と杉本の活躍で優勝も見えてきた

 2年連続最下位のチームが、今年は交流戦で優勝すると、その勢いを維持し首位争いを繰り広げている。その要因は何といっても、日本を代表する投打の柱で、エースの山本由伸(都城高~16年④)と打線の中心・吉田正尚青学大~15年①)だ。

 山本は、防御率は唯一の1点台(規定投球回数以上)で現在15勝、勝率こそ2位だが、奪三振と合わせ現在投手3冠。4完投も12球団トップで、今シーズンは沢村賞を獲得できる結果を残している。

 吉田正は2年連続の首位打者を射程圏内にし、OPSや得点圏打率もトップ、出塁率は2位、長打率は3位で、チャンスメークにポイントゲッターどちらもこなしており、まさに打線の中心的存在を担っている。

 今年はさらに投打に柱が加わり、上位躍進の要因になっている。投手では20歳の2年目、宮城大弥(興南高~19年①)が、防御率と勝利数が2位、勝率は山本を抑えて1位と、左右のWエースが確立している。

 野手では杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)が大ブレイク。昨年の序盤はファーム暮らしだったが、監督が西村徳文から中嶋聡に代わると一軍に定着。プロ通算5年で、打率,224、9本塁打(昨年は2本塁打)だった選手が、打率3割、28本塁打で現在本塁打王であり、中嶋監督の慧眼には改めて感服するしかない。

 このほか投手では田嶋大樹(JR東日本~17年①)が規定投球回数をクリアし、シーズン直前にMLBから復帰した平野佳寿京産大~05年希)が、21セーブの好成績を上げている。平野に繋ぐリリーフ陣では、ヒギンスに富山凌雅(トヨタ自動車~18年④)、比嘉幹貴日立製作所~09年②)が勝ちパターンを担っている。

 野手では宗佑磨(横浜隼人高~14年②)と紅林弘太郎(駿河総合高~19年②)が規定打席をクリアしている。特に紅林は打率最下位ながら、将来のレギュラー育成のために我慢強く起用しているスタンスは評価でき、吉田正不在時には3番に座るなど、結果も着実に付いてきている。

 ただ、得点能力には課題が残る。昨年よりは大きく改善はしているが、チーム打率も本塁打もリーグ1位ながら、得点数は3位とやや物足りない…。意外だったのは盗塁数で、西村監督時には機動力重視の野球で“走れ走れ”だったが、監督が代わると盗塁数が激減してしまった。また、犠打や四球数もリーグ最少、反面、併殺打はリーグ断トツで1位と、以前から言われていた大味な野球が得点数に繋がっていると思う。

【9/27現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 122試合 57勝49敗16分②

 防御率…3.51④(3.97③)打率….250①(.247④)

 本塁打…112①(90④)盗塁39⑥(95②)

 得点…467③(442⑥)失点…450④(502③)

 

●毎年、投打の主力を獲得!多い高校生指名も着実に戦力になっている

 昨年は阪神の佐藤を入札するも、3年連続でクジを外し、1位入札選手を獲得できなかった。佐藤を外すと、直ぐに育成型のドラフトへ切り替え、高校生4名、大学生1名、社会人1名と、決して良いドラフトとは言えなかったが、育成が主体で結果は数年後を見る必要がある。

 ここ5年のドラフトでは、16年には山本と山岡泰輔(東京ガス~16年①)のWエースを獲得、17年には田嶋とリードオフマンの福田周平(NTT東日本~17年③)、18年は富山に勝負強い中川圭太(東洋大~18年⑦)、19年は宮城と紅林など、毎年投打の主力を獲得できており、今年の躍進もこの間のドラフトの賜物だと思う。

 オリックスと言えば、社会人選手指名がお家芸だったが、ここ5年に限ると高校生を16名指名しており、日本ハムや中日、広島に次いでリーグで2番目に多い。先述したチームが今シーズン結果を残せていないなか、オリックスは山本に宮城、紅林の主力級を3名排出し、ルーキーの来田涼斗(明石商高~20年③)も一軍デビューを果たした。

 このほかにも投手では山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑤)や本田仁海(星槎国際湘南高~17年④)、野手でも大田諒(天理高~18年①)に宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)など期待の若手が揃っており、将来楽しみなチームになっている。

オリックスの補強ポイント】 

 投 手…即戦力のクローザー候補、大学生投手(年齢バランス)

 捕 手…大学生または社会人

 内野手…将来の中軸候補 左打ちならベスト

 外野手…大学生リードオフマン、将来の中軸候補 

 

☆投手~即戦力のクローザー候補、大学生投手(年齢バランス)

 現在のローテーションは、山本と宮城の両エースに、田嶋と山崎福也(明大~14年①)、ベテランの増井浩俊東芝~09年日⑤)で構成され、故障で今シーズンは絶望だが山岡が控える。

 山本と山岡、左腕で宮城と田嶋、山崎福の先発陣はリーグ随一で、山岡は26歳、田嶋は25歳、山本23歳、宮城は20歳と年齢も若く末恐ろしい布陣だ。ここに榊原翼(浦和学院高~16年育②)や山崎颯、本田が加われば、隙のない先発陣になる。

 一方でリリーフ陣には不安が多い。平野が合流するまではクローザーが不在で、勝ちパターンも定まってはいなかった。ようやく富山が7回、ヒギンスがセットアッパーを担い平野の繋ぐ形ができたが、勝利の方程式とは言い難い。

 また、先発陣とは相反してリリーフ陣は、比嘉が39歳、平野も37歳と軒並み高齢化が進んでいる。富山に続き、吉田凌(東海大相模高~15年⑤)や漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)が勝ちパターンに入ってこないと厳しい。

 まず即戦力のリリーバーであれば、高い奪三振能力の木蓮東北福祉大やストレートに力のある八木玲於(ホンダ鈴鹿、評価急上昇中の柴田大地(日本通運は弱点の補強になり、八木や柴田は中位で獲得したい。

 ただ、今年の上位候補は、高校生投手をリストアップしている。1位候補は小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)佐藤隼輔(筑波大)で、いずれも将来のエース候補、重複覚悟で指名する可能性が高い。

 一方で山岡や吉田正を単独指名で獲得したように、畔柳享丞(中京大中京高)達孝太(天理高)、総合力の高い隅田知一郎(西日本工大の1位入札指名も十分にあり得る。このほかには、松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)、即戦力で黒原拓未(関学大山田龍聖(JR東日本のサウスポー投手への評価が高い。

 中位以降では、ゲームメーク能力が高く打者としても評価の高い花田侑樹(広島新庄)、九州ナンバーワン投手の呼び声も高い黒木優九州文化学園大)、最速146キロで安定感の高い投球が特徴の山本大揮(九州国際大高)、1年から投手に転向した150キロ右腕の永島田輝斗(立花学園高)をリストアップしている。また、大学で急成長した長身右腕の松井友飛(金沢学院大は、伸びしろのある素材型で、今シーズン球速も150キロを超えた。

☆捕手~大学生または社会人

 今シーズンは伏見寅威(東海大~12年③)が最もマスクを被り、若月健矢(花咲徳栄高~13年③)と頓宮裕真(亜大~18年②)の併用になっている。若月も頓宮も若く、急いで補強の必要はないが、捕手の支配下選手が5名しかおらず、数的に補強に必要だ。昨年、高校生捕手を指名しており、年齢バランスで大学生または社会人を狙いたい。

 古賀悠斗(中大)福永奨(国学院大)は、ともに二塁送球1秒8の強肩で、獲得できれば打撃の良い頓宮を野手で起用できる。また、高校生で高木翔斗(県岐阜商高)も注目している。

内野手~将来の中軸候補 左打ちならベスト

 今シーズンは三塁に宗、遊撃で紅林がレギュラー起用されており、一塁はT-岡田(履正社高~05年①)とモヤの併用、二塁は安達了一(東芝~11年①)が最も出場機会が多いが、現状レギュラーは不在だ。

 ただ、一塁は外国人選手と併用でき、二塁も本来であれば福田がおり、大田や宜保の若手が確実に成長している。勝負強い中川圭に大下誠一郎(白鷗大~19年育⑥)も控え、即戦力よりはむしろ将来の中軸打者を獲得したい。

 スラッガータイプであれば、田村俊介(愛工大名電気高)有薗直輝(千葉学芸高)の評価が高く、田村は高校通算32本塁打、左打ちで補強ポイントに合う。三塁手の有薗は高校通算70本塁打で足もあり、清水武蔵(国士館高)も長打力のある遊撃手で、捕手や外野も守れる。

 俊足巧打タイプだが、左打ちなら粟飯原龍之介(東京学館高)は50メートル5秒8の俊足で、ダイナミックな守備が魅力の大型遊撃手。パンチ力もあり高校通算33本塁打を記録している。野口智哉(関大)は関西屈指の安打製造機で、守備範囲も広く守備も堅実だ。紅林の守備に不安があるだけに、粟飯原や野口の加入は若手の競争の起爆剤になる。

☆外野手~大学生リードオフマン、将来の中軸候補 

 外野は左翼に吉田正とT-岡田、中堅に福田、右翼に杉本と打線だけを考えれば外せないメンバーが揃っているが、ともに守備に不安がある。福田は元々内野手で二塁が本職、吉田正も出来ればケガ防止で指名打者と併用したい。

 要は外野は俊足巧打タイプが多く、外野守備も巧いが、いずれも打撃に課題があり、守備・走塁要員の枠から抜け出すことができない。25歳以下の中軸候補は来田と元謙大(中京高~20年②)しかおらず、将来の中軸候補と、打てるリードオフマンタイプを獲得したい。年齢バランスでも高校生よりは、大学生を狙いたい。

 正木智也(慶大)ブライト健太(上武大)はともに右打ちのスラッガーで、正木は世代ナンバーワンスラッガーの呼び声が高い。昨年、佐藤を入札指名していることから正木の1位指名の可能性もある。ブライトは4年春にブレイクし、天性ともいえる長打力と高い身体能力で足も速い。

 このほか、福元悠真(大商大)は選球眼が良くパンチ力のある中距離打者、川村友斗(仙台大)も打力が注目され評価急上昇中。藤井健平(NTT西日本)は走攻守三拍子揃った巧打者で、強肩で総合力の高い即戦力。高校生では同じく三拍子揃い、広角に長打を打てる吉野創士(昌平高)をリストアップしている。

 

●戦力が充実し、今年は将来のエース、4番候補?課題はクローザーと中軸候補

 3年連続で野手を1位指名し、獲得できたのは18年の大田だけで、意表を突いて正木智也(慶大)の1位指名も十分にあり得る。順当に考えれば、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)の将来のエース候補の高校生や、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大が候補になる。

【指名シミュレーション】 

1位~達  孝太(天理高・投手)

 …粗削りながら193センチの長身から投げ下ろすストレートは超高校級

2位~有薗 直輝(千葉学芸高・内野手

 …1年生から4番を打ち、高校通算70本塁打スラッガー。強肩の三塁手

3位~古賀 悠斗(中大・捕手)

 …二塁送球1秒8の強肩で、大学ナンバーワン捕手。打力も良い打てる捕手

4位~黒木  優九州文化学園高・投手)

 …九州ナンバーワンとも言われ、秘めたポテンシャルは高く大化けの可能性

5位~野口 智哉(関大・内野手

 …関西屈指の安打製造機で、ミート力に優れた左打者。守備範囲の広い遊撃手

6位~柴田 大地(日本通運・投手)

 …8月に最速156キロをマークし、一躍ドラフト候補になったリリーバー

7位~山本 大揮(九州国際大高・投手

 …最速146キロの直球に変化球の精度も高く、安定感のある投球が魅力