ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト候補選手~厳選50名

 各チームから戦力補強のニュースが賑わいを見せ、いよいよキャンプも間近になってきた。そこで今年注目のドラフト選手を紹介したいと思う。

 今年は高校生が豊作で、投打に逸材が多く高校生主体のドラフトになる可能性が高い。大学生は伸びしろのある選手がどこまで即戦力に成長するか楽しみで、社会人は今年も投手に即戦力が多い。

 

●注目の上位候補12名は投手中心

 高校生投手に上位候補の逸材が多く、現段階で世代ナンバーワンと言われているのが①小園健太(市和歌山高・投手)だ。最速152キロのストレートに加え、変化球の精度が高く、ゲームメーク能力の高さは高校生離れしている。昨秋の県大会と近畿大会ではタレント集団の智弁和歌山高を下し実力の高さを証明している。随時ストレートの速さが維持できれば一気に今年のドラフトの主役になれる。

 中学時代に軟式で150キロを計測し注目されていた②森木大智(高知高・投手)も上位候補。高校に進学したあとは故障で苦しんだが、ストレートの速さは健在で、今夏の甲子園までにどこまで伸びるか楽しみだ。

 小園と森木に続く好素材と評価が高いのが③風間球打(明桜高・投手)で、長いリーチを活かしたスケール感の大きいピッチングは、ポテンシャルの高さが注目されている素材型で、この1年で大化けする可能性が高い。

 昨年は中日1位の高橋宏斗の陰に隠れていたが、④畔柳亨丞(中京大中京高・投手)も着実に力をつけた。安定した下半身から最速151キロのストレートに、変化球の精度も高く完投能力に長けている。総合力だけ見れば高橋以上とも言われており、2年連続でドラフト1位投手が誕生することも夢ではない。

 大阪桐蔭高のWエースの⑤松浦慶斗と⑥関戸康介にも注目だ。松浦は185センチの長身から、最速150キロのストレートとスライダーが武器のサウスポー。関戸は進学時は小さな故障が多く粗削りな面もあるが、昨夏の公式戦で154キロを投げ、素材の高さを印象づけた。ともに一冬を超えて、どこまでスケールアップしているか楽しみだ。

 投手と野手の両方で注目を集めているのが⑦阪口楽(岐阜一高・投手/内野手で、投手でも143キロを投げる本格派だが、野手としての評価が高い。広角に打ち分ける抜群の打撃センスに加え、昨夏の県大会では、中日5位の加藤翼から完璧な本塁打を放った。二刀流へのこだわりはなく、「打つほうが好き」と述べており野手として期待が高まる。 

 大学生投手にも楽しみな素材が多く、注目は⑧佐藤隼輔(筑波大・投手)で、現段階では大学ナンバーワンサウスポーと言える。キレのある145キロのストレートをコンスタントに投げ、大学2年生時より日本代表に名を連ね頭角を表してきた。

 同じ先発では、⑨徳山壮磨(早大・投手)も総合力が高い。大阪桐蔭高で甲子園制覇した際も、高校生離れした完成度の高い投球を見せていたが、大学でさらに「大人の投球」が身についた。⑩木蓮東北福祉大・投手)大学野球界を代表する本格派右腕で、故障の癒えた昨秋にストレートが150キロを超え、スライダーとフォークも質が高く、こちらはリリーフへの適性が高い。

 社会人投手では、⑪広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ・投手)の評価が断トツで、即戦力として間違いない実力者。都市対抗では昨年覇者のJFE東日本相手に1失点完投勝利を納め、見事に大舞台でも結果を残した。制球力にも長け、球速表示よりも速く見える150キロ右腕は、日増しに注目が高くなっている。

 広畑と同様に即戦力としての評価が高いのが、⑫森翔平(三菱重工エスト・投手)で、最速149キロのサウスポーだ。抜群の制球力に豊富な変化球を交え、ゲームメークに長けている先発型だが、プロではリリーフも面白い。

 

高校生~今年は北海道、神奈川、静岡、岐阜、愛知、和歌山のライバル争いに注目

 今年は高校生が豊富と言われ、特に投手に逸材が多い。そのなかで⑬達孝太(天理高・投手)は、大化けが期待される大型右腕。身長193センチの長身からの角度のあるストレートは、まさにダルビッシュを彷彿させるスケール感の大きさがある。

 最速147キロの⑭田中楓基(旭川実高・投手)も右の本格派で、昨秋のセンバツをかけた試合で、敗れはしたものの北海高との手に汗握る投手戦は見事だった。その田中と投げ合った⑮木村大成(北海高・投手)はサウスポーで、キレのあるスライダーを武器に全道大会で30回2/3無失点の圧巻の投球を見せ、今春のセンバツでお披露目になる。

 中学時代より森木のライバルだった⑯伊藤樹(仙台育英高・投手)も、最速147キロのストレートにマウンドさばきに定評があり、⑰高須大雅(静岡高・投手)は、190センチの長身からキレのあるボールを投げ込むともにの右の本格派だ。

 左腕投手にも逸材が多い。⑱石田隼都(東海大相模高・投手)は昨夏の甲子園交流試合で大阪桐蔭高相手に好投を見せ、好不調の波が少なくスライダーが持ち味。⑲金井慎之介(横浜高・投手)もスライダーを武器に最速148キロの角度のあるストレートを投げ、打者としても非凡なセンスがある。

 ⑳沢山優介(掛川西高・投手)も140キロ中盤のキレのあるストレートとテンポの良い投球が身上で、抜群のフォームバランスが評価されている。今年、好投手が多いチームで1年からエースを任せられている㉑田村俊介(愛工大名電高・投手)も最速145キロの左腕で打撃にも定評がある。

 捕手では、㉒高木翔斗(県岐阜商高・捕手)が頭一つ抜けている。大柄だが動きが良く、広角に打ち分ける打撃も魅力だ。小園と中学時代からバッテリーを組む㉓松川虎生(市和歌山高・捕手)も遠投100メートル、二塁送球タイム1秒8の強肩で、高校通算30本塁打の長打力も注目されている。内野手では日本ハム・清宮の弟である㉔清宮福太郎(早実高・内野手は右のスラッガーで、粗削りだがツボに入ったときの飛距離はケタ違いで、早くもヤクルトがリストアップしている。

 今年は投手と並んで外野手に上位候補が多く、その一番手と言えるのが㉕池田陵真(大阪桐蔭高・外野手)で、1位候補にも入ってくる。走攻守三拍子揃った中堅手で、旧チームでは1番、新チームでは4番を務め、上背はないがパンチ力もある。名門校でキャプテンで任される抜群のリーダーシップもプロでは利点になる。

 今年は外野手に魅力的なスラッガーが多く、㉖前川右京(智弁学園高・外野手)は、1年夏から4番を務め、選球眼に優れ飛ばす力は同世代でも群を抜いている。㉗徳丸天晴(智弁和歌山高・外野手)も上位候補で、一昨年は楽天2位の黒川史陽、昨年は日本ハム4位の細川凌平がいたタレント集団のなかで、1年時より4番を務めた実力は折り紙つきで、昨秋からは三塁にもチャレンジしている。

 外野手はまだまだ逸材が多く、㉘吉野創士(昌平高・外野手)も上位候補だ。関東を代表するスラッガーで、シュアな打撃で右方向にも長打を打て、50メートル6秒1の俊足に遠投110メートルと身体能力が高い。

 このほかにも㉙中田達也(星稜高・外野手)は、懐の深いフォームから対応力の高い打撃技術に長けている。小学校まではゴルフ選手で、野球は中学から始めたポテンシャルの高さは一冬超え大化けする可能性がある。㉚福本綺羅(明石商高・外野手)は、旧チームでは4番を務め、オリックス3位の来田涼斗のあとを受け、新チームでは1番打者を務めている。

●大学生~法大と慶大に注目!今年はサウスポーと捕手に逸材多し

 投手で上位候補に名を連ねるのは、㉛鈴木勇斗(創価大・投手)で3年秋に最速152キロを計測して一躍脚光を集めたサウスポーだ。昨秋の東京新大学リーグでは4勝を挙げ、MVPのタイトルを獲得。まだまだ伸びしろもあり今秋のドラフトの目玉になる可能性もある。同じ左腕の㉜隅田知一郎(西日本工大・投手)も、鈴木同様に昨秋150キロを超え、更なる成長が注目されている。

 昨年に続き、今年も法大に好投手が揃っている。㉝山下輝(法大・投手)は、木更津中央高時代より注目された大型左腕で、高校時に志望届を出していたら1位で消えていただろう大器だ。入学早々に左肘を痛め手術も経験し、3年春に初登板し150キロを計測し復活を果たした。

 チームメートの㉞三浦銀二(法大・投手)も高校卒業時の上位候補で、志望届を出さずに大学へ進んだ。最速150キロのストレートを武器に、先発と抑えを務めた器用なタイプで、どちらにも適性がある。㉟森田晃介(慶大・投手)にも注目で、150キロを計測する右の本格派だが、コーナーにカットボールツーシームを投げ分け、打たせて取る投球も出来る。

 大学生野手では㊱古賀悠斗(中大・捕手)と㊲正木智也(慶大・外野手)が上位候補だ。古賀は福岡大大濠高で法大の三浦とバッテリーを組み、三浦同様に志望届を出さずに進学し、大きく成長を遂げた。強肩と正確なスローイングに磨きがかかり、大学1年秋から正捕手を務め試合経験も豊富だ。パンチ力はあるが好不調の波のある打力が改善できれば、育成が難しいポジションだけに注目が高い。正木はプロが待望する右のスラッガーで、東京6大学で通算6本塁打、打率も3割を超え確実性もある4番候補で、長打力は今年のアマ球界のなかでトップクラスの評価だ。

 今年は大学生捕手に上位候補が多く、古賀と同様に高い評価を集めるのが㊳岩本久重(早大・捕手)で、2年秋より正捕手を務め、昨秋は楽天1位の早川隆久をリードしリーグ優勝に貢献した。打てる捕手を目指し3年春からは4番を務める攻守の要。㊴福井章吾(慶大・捕手)は投手から全幅の信頼を受け、視野が広く的確な指示でチームをまとめる司令塔として評価されている。

 このほかの野手では㊵野口智哉(慶大・内野手は、走攻守三拍子揃った遊撃手で、通算打率.321のヒットメーカー。㊶丸山和郁(明大・外野手)も広角に打つ巧打者で、50メートル5秒8の俊足で走塁技術も高い。㊷福元悠真(大商大・外野手)は、高校時より注目されていた右のスラッガーで、豪快なスイングから規格外の飛距離が魅力。最終学年でさらに成長が期待できる。

●社会人~投手に即戦力多いが、野手は低調気味…指名漏れ大卒2年目の成長に期待

 即戦力が期待される社会人投手の上位候補では、昨年の都市対抗を制し、若獅子賞に輝いた㊸朝山広憲(ホンダ・投手)は、シュートを習得したことで投球の幅が広がり安定感を増した。高校~大学と故障に苦しんだが社会人1年目で主戦に成長した。昨年、まさかの指名漏れだった152キロ右腕の㊹森井紘斗(セガサミー・投手)は、先発・クローザーともに適性があり、更なる経験を積んでプロ入りを目指す。

 一昨年、指名漏れを味わった㊺稲毛田渉(NTT東日本・投手)も着実に成長を遂げている。最速153キロの本格派右腕で、今年はエースとして主戦の座を掴み念願のプロ入りを果たしたい。㊻八木玲於(ホンダ鈴鹿・投手)も右の本格派で、最速154キロのストレートで、強気に打者に向かっていく投球スタイルはリリーフへの適性が高い。

 即戦力左腕では、金農フィーバーで沸いた甲子園100回大会(2018年)で、ナンバーワン左腕と言われた㊼山田龍聖(JR東日本・投手)も長身から角度のあるボールを投げ込み着実に成長を遂げている。㊽高橋佑樹(東京ガス・投手)は試合勘に長け、投球術に優れた技巧派で、入社1年目からエース級の働きを見せた。

 ここ数年、指名人数が少ない社会人野手には是非奮闘してもいらいたい。㊾中川智裕(セガサミー内野手は勝負強い打撃がセールスポイントの大型遊撃手で、アグレッシブな守備も魅力。㊿菅田大介(JR東日本・外野手)は、大学時代は投手との二刀流で注目を集めたが、社会人では野手に専念。名門チームで4番を任せられ、パンチ力のある打撃に磨きをかけ、大学時の指名漏れの悔しさを晴らしたい。