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どのチームが「人」を育て強くなるのか

この選手を獲れ!セ・リーグ編

 今年はセ・リーグストーブリーグが賑やかだ。FAや自由契約選手の獲得はすでにセ・リーグが7名を数えるが、パ・リーグではまだ能見1名だけだ。

 セ・リーグは補強、パ・リーグは現有戦力に自信があるのか底上げ、もしくは残留交渉を優先しているからだろうか?

 ※( )は契約保留者+新入団選手、下記指名は自由契約選手(下線は育成契約)

 

巨人(53名+7名)

 昨年、苦汁を味わったFA選手の獲得だったが、今年はともにDeNAから梶谷隆幸と井納翔一の獲得に成功した。たが、最大の懸案事項は絶対的なエース菅野智之の去就で、ハッキリ言えば菅野の代わりはいない。菅野が残れば問題はないが、MLBへ移籍すれば井納も含め全体でカバーしていくしかない。

 現状は60名だが、梶谷はBランクの選手で、原監督が嫌がる人的補償が発生しプラスマイナスはゼロ。菅野が残留し井納を獲得しても62名で余裕があるが、鍬原や直江、山下など有望な若手に、実績のある高木の故障が癒えれば、直ぐにでも支配下登録されるであろう枠を残さなくてはならない。外国人選手は既に6名を数え、菅野の残留交渉とFAでの獲得のあとは、外国人野手の補強で終わる可能性が高い。

 外国人選手の補強は打者が優先で、長打力のあるボーア(阪神)にアベレージヒッターのアルモンテ(中日)は実績もあり、ある程度計算できるのが強みだ。補強ポイントは投手優先(特に先発)だが、先発で実績のある選手は少なく村田透(日本ハム)くらいしか思い浮かばない。そうなるとやはり井納の獲得は正解と言えるが、同一リーグの戦力を剃って独走しても、結果「井の中の蛙」になりやしないだろうか? 

・投手~岩隈久志/堀田賢慎/原拓也/藤岡貴裕/直江大輔/高木京介

    宮國諒丞/田原誠次/ディプラン

・野手~吉川大幾/モタ/村上海斗/パーラ/加藤脩平/山下航汰 

 

阪神(55名+8名)

 今年はFA戦線には目もくれず、外国人選手の補強を中心に戦力強化を図っている。ロッテからチェン・ウェインを獲得し、今年も韓国から両打のスラッガーロハスJrを日米韓の争奪戦を制した。また、韓国の20勝右腕のアルカンタラも大筋合意したと伝えられ、韓国リーグとのパイプの強さが際立つ。

 また、内野守備に定評のある山本泰寛(巨人)、リリーフ投手の加治屋蓮(ソフトバンク)を獲得し、鈴木翔太(中日)は育成契約で加入した。クローザーのスアレスも合意して、支配下は69名になり補強もトレード以外は終了だろう。

 アルカンタラの入団が決まれば、昨年に続き外国人8名体制になり、ここは賛否の分かれるところ。故障で育成契約になった島本と才木も戻れば戦力になり、育成からの支配下枠もある程度空けてかなくてはならならず、ストーブリーグを賑わしたにも関わらず、やや搔き集めの印象を受ける。

・投手~能見篤史/藤川球児/呂彦青/高野圭佑/才木浩人/福永春吾

    島本浩也/スアレス/ガルシア/横山雄哉

・野手~岡崎太一/上本博紀/ボーア/福留孝介/伊藤隼太 

 

中日(58名+6名)

 今オフ最大の課題だった大野雄大の残留が決まり、中日としてはこれ以上のない朗報になり、福留孝介阪神)の復帰が決まった。現在64名で外国人選手は4名と、1~2名加えても余裕がある。垣越と竹内は育成契約になるが、ともに20歳前後の若い投手で支配下を焦る必要はなく、上位を狙うためにも補強を進めたい。

 中日の課題はやはり打撃陣で、長打力不足と大島と京田に頼りきりの機動力強化に努めたい。長打力ならボーア(阪神)やブラッシュ(楽天)、ロドリゲス(オリックス)は広い名古屋ドームも苦にしない長打力があるし、燿飛(楽天育成)は遠くにとばすだけならパワーはけた違いで可能性を感じる。

 他にはビシエドが故障の治療で来シーズン冒頭に間に合わない可能性もあり、長打力はないが守備も巧く勝負強いロペス(DeNA)は、日本人扱いになりチームにフィットすると思う。また、山下斐紹(楽天)を育成での獲得したが、正捕手が定まらないチームのなかで、直ぐにでも支配下登録の可能性がある。

 最後に今年のオフに耳を疑うようなことが2つあった。1つは契約交渉の席上で福谷浩司がチームの方針やビジョンを球団に訊いたところ、球団代表が答えられなかったこと。そして高校生ルーキーの石川昴弥が年俸を減額されたことで、理由が「即戦力としての評価だったため」と聞いて、前段の方針の無さに結びつく。中日を強くするには申し訳ないが、まずは戦力補強よりも、フロントの強化が優先事項だと思った。

・投手~吉見一起/阿知羅拓馬/ゴンサレス/垣越建伸/竹内龍臣

    小熊凌祐/伊藤準規/ロメロ/鈴木翔太

・野手~石川 駿/アルモンテ/シエラ

 

DeNA(58名+6名)

 今年の最大の懸案事項だったソトの慰留に成功、オースティンの残留も決まり、ヤクルトを自由契約になったリリーフの風張蓮を獲得した。一方で、FA宣言していた井納翔一と梶谷隆幸の2人が揃って巨人への移籍が決まった。今オフでベテランが多くチームを去ることになり、投手の最高齢は31歳の平田真吾ほか2名、野手も33歳の大和と一気にチームの若返りが進んだ。

 まずは梶谷の人的補償がポイントになるだろう。井納が抜けた分の先発投手候補、梶谷の代わりの外野手、課題の二遊間のいずれかを強化したい。プロテクトから外れる選手を個人的に予想し、先発投手では桜井俊貴や古川侑利、外野手では石川慎吾に重信慎之介、二遊間強化の選手は見当たらなかったが、北村拓己や香月一也のスラッガーの獲得のチャンスがあり、個人的には桜井や石川がベストだと思う。

 現在64名で育成で外国人選手2名を獲得しているが、支配下の外国人選手が4名でもう1~2名は必要か。先ほどの人的補償と同じ条件であれば宮國椋丞(巨人)や村田透(日本ハム)、二遊間強化では若返りには逆行するが上本博紀阪神)や西田哲朗(ソフトバンク)のベテラン、永江恭平(西武)も遊撃守備に定評がある。細谷圭(ロッテ)は内外野守れる右打ちで補強ポイントに合うと思う。

・投手~赤間 謙/パットン/浜矢廣大/古村 徹/藤岡好明

・野手~ロペス/飛雄馬/石川雄洋/百瀬大騎

 

広島(59名+6名)

 正直、こんな補強で良いのかな?と思ってしまう。今シーズンは優勝争いに絡むこともなく終始Bクラス、自慢の育成力も影を潜め若手も育っておらず、来シーズンへは期待より不安が多いのが事実ではないだろうか。

 現在の補強は外国人のみで、投手でバードとネヴァラウスカス、野手でクロンを獲得し現状65名。外国人選手は6名で十分なので、あと1~2名は補強したいところだと思うが、現状動きがない。

 補強はやはり投手陣で、今オフはドラフトで5名、新外国人で2名補強しているが、実績のある投手も獲得したい。今年はリリーバーの自由契約選手が多く、松田遼馬(ソフトバンク)や近藤一樹(ヤクルト)、田原誠次(巨人)はまだ行く先が決まっていない。直球がMLBに評価された高野圭佑(阪神)、左腕の藤岡貴裕(巨人)にもチャンスがあると思う。

・投手~藤井皓哉/ジョンソン/戸田隆矢/平岡敬人/モンティージャ

・野手~石原慶幸/小窪哲也/ピレラ

 

ヤクルト(54名+6名)

 今年、FA選手を多く抱えていたが、チームの顔である山田哲人と、クローザーの石山泰稚が残留を決めたものの、エース小川泰弘の去就が未定だ。驚いたのは、そんななかで課題は投手陣にも係わらず、引退の五十嵐を含み8名に戦力外通告を行った。今年は不振だったがリリーフの近藤や風張はまだ出来ると思ったが…。

 投手陣はFAの井納獲得とはならなかったが、新外国人のサイスニード、左腕の宮台康平(日本ハム)は3球団との競争のなか獲得した。育成で近藤弘樹(楽天)と小澤怜史(ソフトバンク育成)の獲得が決まった。

 野手では、この間チームの若返りを進めているなか、内川聖一ソフトバンク)を他チームより終始先行して獲得できた。ただ、山田哲と村上以外は30歳を超えており、短期的に見ると内川の獲得は正解だと思うが、レギュラー不在の遊撃手含め若手の有望株を獲得したい。外国人選手はオスナとサンタナの長距離砲を獲得しており、現状64名であと2~3名は余裕がある。

 投手では計算のできるベテランで村田透(日本ハム)は先発、リリーフの内竜也(ロッテ)や高野圭佑(阪神)はチームにフィットすると思う。野手は外野手が不足しており、候補は少ないが神宮で復活したい伊藤隼太阪神)や田城飛翔(ソフトバンク育成)にはもう一花咲かせたいところだ。

・投手~近藤一樹/イノーア/クック/山田大樹/五十嵐亮太/中澤雅人/田川賢吾

    風張 蓮/平井 諒/山中浩史

・野手~井野 卓/エスコバー/藤井亮太/上田剛史/田代将太郎

 

 最後に、トライアウトで新庄剛志の獲得が話題になり、数多くの意見があった。私は獲得を見送った12球団の判断は正しいと思う。そりゃファンからすれば新庄をもう一度観てみたい気もするが、たった4打席で復帰できるほど甘い世界ではないと思う。

 パフォーマンスや経済効果を口にする人もいるが、それは選手として一軍で活躍することが前提で、パフォーマンスが先に来ることはない。それこそ1年間でも独立リーグでもプレーして、「1年間できるんだぞ」という証明が 欲しかった。ファームでも良いという言葉も聞くが、ファームは育成の場であり、若手のチャンスを摘むことになってしまう。48歳であれだけ体を作り、そして動け、夢を与えてくれた姿勢を賞賛したい。