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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年戦力分析☆ヤクルト~ベテランを脅かす若手の活躍が待ち遠しい

 いよいよ球春到来でキャンプがスタートし、シーズン開始が待ち遠しい。まだ、順位予想する時季ではありませんが、各チームの戦力分析をしながら、今年の予想もしていきたいと思います。

 先ずは2年連続最下位のヤクルトからです。昨年、多くの解説者が最下位予想をしていたが、7/12には貯金4で首位に立ち、大番狂わせを予感させたのもつかの間…8月から大失速した。8月からの月別借金は10→7→12→2と11月まで一度も貯金できず、最後は5位の広島に12ゲーム差をつけられ、予想通り断トツの最下位でシーズンを終えた。

 昨年、チームの底上げを目的に、高津監督を二軍から一軍へ昇格させたが、やはり戦力不足はどうすりこともできず、今オフは積極的な補強を進めた。何よりエースの小川泰弘(創価大~12年②)とクローザーの石山泰稚ヤマハ~12年①)、打線の主軸、山田哲人履正社高~10年①)が揃って残留したのは大きい。

 

●昨年もリーグワーストの防御率で投壊に歯止めがかからず…断トツ最下位

 ここ5年で最下位が3度と、まさに暗黒期に陥っている。最大の要因は投手陣の不振で、5年連続で防御率は4点台…昨年もリーグワーストと、投壊に歯止めが効いていない。救援陣は石山と梅野、マクガフにリリーフの適性を見せた清水が加わり勝ちパターンを担える駒が揃った。ただ、先発の敗戦数がリーグワーストの50試合と、先発が試合を作ることができなかった。

 自慢の攻撃陣も不発で、バレンティンの移籍で本塁打数が減少し、頼みの山田もシーズン通して不振で途中離脱した。そのなかで若き主砲の村上とベテランの青木宣親早大~03年④)が奮闘するも、一昨年リーグ2位の得点力は5位まで落ち込み、下降気味だったチーム打率は最下位に沈んだ。機動力と失策数は改善の兆しが見えたものの、主力が2人抜けた打線は破壊力不足で、改めて投打に課題が浮き彫りになったシーズンになった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 20年 6位 41勝69敗10分  .242     114本   74個  468点  4.61  589点

 19年 6位 59勝82敗 2分 .244  167本   62個  656点  4.78  739点

 18年 2位 75勝66敗 2分 .266  135本   68個  658点  4.13  665点

 17年 6位 45勝96敗 2分 .234    95本   50個  473点  4.21  653点  

 16年 5位 64勝78敗 1分 .256  113本   82個  594点  4.73  694点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 19年~なし

 18年~清水 昇(投手~国学院大①)

 17年~村上宗隆(内野手九州学院高①)

 16年~梅野雄吾(投手・九産大九州高③)

 15年~なし

 ドラフトでも低迷が続いている。過去5年で34名指名しているうち、チーム状況から大学生12名、社会人7名の即戦力を指名しているが、戦力になっているのは清水と山崎晃太朗(日大・内野手~15年⑤)くらいで、即戦力が期待通りの働きを見せていない。

 課題の投手陣も21名と大量指名しているが、主戦がリリーフの梅野と清水のみでは、残念ながらここ最近の低迷も頷ける。  

●投手陣~先発は小川・石川頼みから若手の出現に期待、ブルペン陣には光明も

  昨年は小川が10勝を挙げたものの、開幕投手石川雅規青学大~01年自)は2勝止まり、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)も3勝と勝ち星が伸びなかった。ルーキーの吉田大喜(日体大~19年②)も14試合に先発したが2勝に終わり、小川以外総崩れの状況で、このチャンスを掴む若手投手も出てこなかった。外国人はスアレスが4勝を挙げたものの、新入団のイノーアとクックが未勝利で終わったのは大誤算だった。

 一方でブルペン陣には僅かながら光明が見えた。石山が復活の20セーブを挙げ、清水はリーグ最多の30ホールド、23ホールドのマクガフと並んで勝ちパターンができ、寺島成輝(履正社高~16年①)も中継ぎで結果を出し足がかりを掴んだ。ただ、負け試合ともなると防御率も一気に悪くなり、44試合に登板した長谷川宙輝(聖徳学園高~16年ソ育②)、36試合登板の星知弥(明大から16年②)はそろって防御率5点台では、底上げが進んだとはいえず厳しい。

 ファームを見ても一軍を突き上げる成績の選手もおらず、先発の規定投球回数をクリアした山田大樹は引退、リリーフで主戦だった風張蓮(東農大オホーツク~14年②)も戦力外通告のち、DeNAへ移籍し心配の種は尽きない。 

【20年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア ※は新加入選手

 ・先発…小川泰弘(119回)高梨裕稔(94回)石川雅規(76回1/3)

       吉田大喜(67回1/3)スアレス(67回1/3)高橋奎二(48回)

 ・救援…清水 昇(52試合)マクガフ (50試合)石山泰稚(44試合)

     長谷川宙輝(44試合)梅野雄吾(42試合) 星 知弥(36試合)

【今年度の予想】

 ・先発…小川泰弘 石川雅規 高梨裕稔 スアレス サイスニード※

     高橋奎二 原 樹里 寺島成輝 奥川恭伸 吉田大喜 歳内宏明

 ・中継…清水 昇 マクガフ 梅野雄吾 長谷川宙輝 星 知弥 今野龍太

     大西広樹 久保拓真 中尾 輝 宮台康平※ 山野太一※

 ・抑え…石山泰稚 木澤尚文※

 先発は実績のある小川と石川、高梨、スアレスは当確と言えるが、確実に計算できるのが小川くらいで、若手や新戦力の出現がないと今年も厳しい。新加入のサイスニードは150キロのストレートが武器のパワーピッチャーで、抑えにも向いているが、駒不足の先発が有力だろう。

 若手では2年目の吉田喜、先発に再挑戦する寺島、毎年ブレイクが期待されている高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)、故障からの復活を目指す原樹里(東洋大~15年①)など、期待の若手は揃っており今年こそは結果を残したい。こうなるとスーパールーキー奥川恭伸(星稜高~19年①)に期待したくもなるが、まだ体調面が完全ではなく焦らずに待つしかない。

 リリーフは石山がクローザーで、清水とマクガフ、梅野がセットアッパーの役割を務める。ここに長谷川や昨年防御率2点台の今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)、トライアウトで好投した宮台康平(東大~17年日⑦)が台頭してくると厚みを増す。

 ルーキーでは、木澤尚文(慶大~20年①)は150キロのストレートが武器のパワーピッチャーで、ポスト石山のクローザー候補になる。ただ、大学時代から肩肘に故障があり、無理な登板は禁物で、先発も含め慎重な起用法が求められる。左腕の山野太一(東北福祉大~20年②)は先発・リリーフどちらでもいけ、木澤とともに期待がかかる。 

●野手陣~三冠王を狙える村上!山田の復調と新外国人選手の活躍で重量打線復活へ

 物事に“たられば”は禁物だが、ヤクルトは投手陣がしっかりしていれば…と言われていたが、昨年はその自慢の打撃陣も低調で、チーム打率はリーグ最下位、得点も5位に沈んだ。

 村上は全試合で4番を務め、38歳の青木がリーグ3位の打率を残したものの、山田は打率.254、本塁打12本と最後まで調子が上がらなかった。新加入のエスコバーも、元々長距離砲ではなく本塁打数は激減、ベテランの坂口智隆(神戸国際大高~02年近①)や雄平(東北高~02年①)も衰えは否めず、投手陣同様に課題は多い。

【20年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…西田明央(69/215)中村悠平(29/92)古賀優大(27/46)

 内野手…☆村上宗隆(120/515)☆坂口智隆(114/458)☆エスコバー(104/402)

     ☆山田哲人(94/384)西浦直亨(101/310)宮本 丈(94/171)

     廣岡大志(87/142)荒木貴裕(63/84)

 外野手…☆青木宣親(107/425)山崎晃太朗(109/323)塩見泰隆(43/179)

     雄平(43/113)濱田太貴(33/105) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)坂口智隆③      1)坂口智隆⑦      

  2)山田哲人④      2)山田哲人④       

  3)青木宣親⑦      3)青木宣親⑨    

  4)村上宗隆⑤      4)村上宗隆③      

  5)塩見泰隆⑧      5)西浦直亨⑤      

  6)雄平⑨        6)山崎晃太朗⑧      

  7)エスコバー⑥     7)エスコバー⑥      

  8)嶋 基宏②      8)西田明央②

  9)石川雅規①      9)小川泰弘①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…中村悠平 西田明央 嶋 基宏(古賀優大)

 内野手…村上宗隆 山田哲人 オスナ 西浦直亨 内川聖一※ 宮本 丈  

     廣岡大志(川端慎吾 元山飛優※ 荒木貴裕 太田賢吾)

 外野手…サンタナ 塩見泰隆 青木宣親 山崎晃大朗 坂口智隆 濱田太貴

    (並木秀尊※ 中山翔太 雄平)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)塩見泰隆⑧      捕 手)中村悠平(西田明央) 

  2)山田哲人④      一塁手)村上宗隆(内川聖一

  3)青木宣親⑨      二塁手山田哲人(宮本 丈)

  4)村上宗隆③      三塁手)オスナ(廣岡大志)

  5)サンタナ⑦      遊撃手)西浦直亨(元山飛優※)

  6)オスナ⑤       左翼手サンタナ坂口智隆

  7)西浦直亨⑥      中堅手)塩見泰隆(山崎晃大朗)

  8)中村悠平②      右翼手青木宣親(濱田太貴)

  9)小川泰弘①

 

 捕手は中村悠平福井商高~08年③)の復調がポイントになり、西田明央(北照高~10年③)とレギュラーを争う形になる。中村が完全復活すれば問題ないが、西田も正捕手としては物足りない部分があり、経験豊富な嶋基宏国学院大~06年大社③)や若手の古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)にもチャンスはある。

 内野は遊撃手以外は決まりで、新外国人オスナの加入で村上が一塁に専念でき、山田が復調すれば二塁を心配する必要はない。課題は遊撃で一番の候補は西浦直亨(法大~13年②)だが、ヤクルトファンが覚醒を期待して止まない廣岡大志(智弁学園高~15年②)、守備だけならレギュラー候補のルーキー元山飛優(東北福祉大~20年④)との争いになる。

 外野は左翼のサンタナと右翼の青木が決まりだが、サンタナは守備に不安があり、守備に目をつぶっても好いほど打撃で結果を残したい。注目は中堅争いで、山崎と塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)の争いになるが、ここに濱田太貴(明豊高~18年④)も加わる。昨年の数字だけを見れば塩見が有力だが、山崎は守備に定評があり、濱田はパンチ力も秘めておりレギュラー争いに注目したい。 

 打順では一番打者がポイントになる。昨年はベテラン坂口が務めたが、打率.246で4盗塁では怖さはない。現時点ではチームの盗塁王の塩見が適任だが、山崎と濱田も脚があり、一番中堅争いはシーズンの行方を左右すると思う。

 もう一つのポイントが外国人選手の活躍で、怪力のサンタナ本塁打を量産し、オスナが打率.280前後で10本塁打くらい打てれば打撃陣が機能し、代打で右の内川聖一(大分工高~00年横①)、左に坂口が控える打線は怖さを増す。また、近年注目されている足のスペシャリストでルーキーの並木秀尊(独協大~20年⑤)も控え、攻撃のバリエーションは多彩になる。

 問題は若手の突き上げで、青木と内川は39歳、坂口と雄平も37歳でベテラン頼みの布陣から脱却したい。西浦や廣岡、塩見の中堅がシーズン通して、レギュラーとして一人立ちしていかないと厳しい。長距離砲の中山翔太(法大~18年②)や、昨年一軍を経験した武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)もチャンスを活かしたいところだ。

 最後に期待の選手では、投手では大ベテランの石川を挙げたい。登板回数3000回まであと129回、200勝まであと27勝と大記録がかかっている。年齢的に簡単な記録ではないが、是非達成してもらいたい。大卒投手で3000回登板は過去2人しかおらず、通算でも27名…まさに小さな大投手にふさわしい。

 打者は村上で、一昨年は本塁打王に輝きながら打率はリーグ最下位で、粗さのある長距離砲と思っていたが、昨年打率も残し、まさに大打者の片鱗を見せた。いま、最も三冠王に近い打者で今年はどんなパフォーマンスを見せるか期待したい。

 今年も優勝を狙うには、戦力不足は否めず、3年連続の最下位が無いチームなので、まずはAクラスを目標に、次年度以降へ繋げるシーズンになる。