ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト1位候補12名を予想する

 楽しみにしている野球シーズンの到来はまだもう少し先ですが、今年のドラフトの注目選手やチームの動向が目立ってきた。そこで早速、今年のドラフト1位候補選手12名をリストアップしてみました。

 今年は昨年の佐々木朗希(大船渡高→ロッテ)や奥川恭伸(星稜高→ヤクルト)のような超目玉はいないものの、大学生に有力選手が揃っている。超目玉がいない分、逆に各チームがどういう戦略で臨んでくるのか、楽しみドラフトになる。

 まずは1位で重複が予想される選手だが、投手では高校、大学、社会人それぞれ候補がいる。即戦力の呼び声が高いのは、栗林良史(トヨタ自動車・投手)伊藤大海(苫小牧駒大・投手)の2人だ。

 栗林は最速153キロのストレートを武器に、社会人1年目の昨年、チームを都市対抗準優勝に導いた。高校時代は遊撃手で、名城大進学時に本格的に投手に転向し、大学卒業時にプロ志望届を出すも、内定していたトヨタ自動車の上位指名縛りがあったため指名漏れ。ただ、社会人でさらに力をつけ、地元の中日が高く評価している。

 栗林が先発なら、伊藤はクローザー候補で、獲得したチームは暫く抑えには困らないだろう。抜群のコントロールに加え、最速155キロのストレートを軸に、何よりもハートが強く正真正銘のクローザーだ。既に、地元の日本ハムが上位指名候補位に名前を挙げている。

 高校生では、やはり昨夏の甲子園ベスト4の中森俊介(明石商高・投手)の評価が高く、特にオリックスが熱心だ。現時点では間違いなく高校生ナンバーワン投手で、最速151キロのストレートに変化球の精度も高く、パワーも兼ね備えている。大舞台での経験値が多く、そこで培われたマウンド度胸も魅力の投手だ。

 その中森のチームメイトで、来田涼斗(明石商高・外野手)も1位候補。昨春のセンバツでは、1番打者として先頭打者とサヨナラホームランを放つ離れ業を演じたのは記憶に新しい。50メートル5秒9の俊足に、確実にパワーもついてきており、将来はトリプルスリーも狙える逸材で、巨人とロッテが高く評価している。

 中森と来田擁する明石商高(兵庫)は、中止になった今春のセンバツ出場が決まっていて、一冬超えてどれだけ成長したのかを観たかった。

 野手でもう一人、糸井2世の呼び声高いスラッガー佐藤輝明(近大・外野手)は数少ない即戦力野手で、既に阪神が1位指名を表明(本当にここ最近の阪神は大学生の外野手が好き…)している。抜群の身体能力をほこり、強肩に俊足。1年秋から4番を務め、昨秋まで通算11本塁打。打った瞬間に外野が追うのを諦める打撃は、逆方向にもスタンドインできるパワーを持っている。日ごと評価が高まり、全球団がリストアップしており重複は必須だ。 

 ここまで5選手紹介したが、次の外れ1位候補では、大学生投手に逸材揃っている。まずは山崎伊織(東海大・投手)で、最速153キロのストレートに、変化球も多彩で、特に分かっていても打てないキレのあるスライダーは、元ヤクルトの伊藤智仁級とも言われている。ムダがなく申し分のないピッチングフォームに、テンポの良い投球が持ち味で、1位入札の可能性も十分にある。ちなみに母校は明石商で、中森と来田、山崎が1位指名されたら同じ高校から3人の1位選手が誕生することになり凄い。

 左腕で評価が高いのが早川隆久(早大・投手)木更津総合高(千葉)時代より上位候補で、プロ志望届を出さずに大学に進学し、着実に成長した。最速151キロのストレートが武器だが、元ロッテの小宮山悟監督の指導のもと、間合いを取ったり、変化球でかわすなどクレバーな投球術が身につき、勝てる投手に成長した。左腕投手が少なく、でしかも地元のロッテなどは相性ピッタリだと思う。

 村上頌樹(東洋大・投手)は、高3春のセンバツ智弁学園高(奈良)初優勝のときのエース。ストレートの最速は149キロで、直球で緩急をつけることができ、先輩の甲斐野央(ソフトバンク)直伝のフォークでさらに投球の幅が広がった。昨秋のリーグ戦では4完封で6勝、防御率0.77の好成績を残した。全日本では山崎や早川の後塵を拝したが、先輩たちの活躍を目の当たりにし、満を持して今秋のドラフトを待つ。

 外れ1位候補はすべて投手だが、高橋宏斗(中京大中京高・投手)が中森に続く逸材だ。無名だった高橋は、昨秋の明治神宮大会で鮮烈デビューを果たし、初戦の明徳義塾高(高知)戦で4安打完封、毎回の10奪三振で一気に1位候補に名乗り出た。ストレートは最速148キロでまだ伸びる。現時点では進学と半々らしく、今後の動向に注目が集まる。 

 最後に野手を3人紹介する。今年の東海大相模高(神奈川)には、将来を嘱望される選手が3選手いるが、そのなかでも一番の評価を得ているのが西川僚祐(東海大相模高・外野手)だ。激戦区神奈川で高校通算50本塁打、名門高で1年夏から4番を任されている逸材で、スイングスピードが早く、186センチ92キロの大柄な体の割に器用さも兼ね備えている。来田や佐藤を外したチームは西川を狙ってくるだろう。

 同じ外野手で、今川優馬(JFE東日本・外野手)は即戦力野手だ。超攻撃野球で都市対抗を制したJFE東日本の攻撃型2番打者で、若獅子賞も受賞した。逆方向にも打てるパワーヒッターで、昨秋の都市対抗の決勝戦で今川を観たが、力強いスイングで一番印象に残った選手だ。即戦力の右の長距離砲は少なく、十分1位指名が予想される。

 捕手では古川裕大(上武大・捕手)も1位で消える可能性のある選手だ。昨年、豊作だった大学生捕手を差し置いて3年生ながら日本代表に名を連ね、抜群の打力で一時期4番を期待された打てる捕手。当然、捕手としての能力も高く二塁送球1.8秒、遠投100メートルの強肩だが、遊撃手転向のプランもあるほど打力が評価されており潜在能力は高い。

 現時点でのドラフト1位指名選手12名を予想したが、当然、今秋には大きく変ってくる。有力選手、サプライズの無名選手をチェックし、自分の応援するチームに思いを馳せていきましょう。