春のセンバツに続き、全国で春季大会も中止になり、何とか夏の甲子園大会開催に向けて事態が良くなることを祈るばかりだ。
高校生は2年から3年になる冬に一皮も二皮も向け、夏に向けてさらに成長する。ただ、そのことを証明するには実戦に勝るものはないが、その機会がないことが本当に残念。そこで、今春時点でのドラフト有力選手を紹介する。
●投手~中森、高橋、小林、川瀬など本格派右腕が上位候補に名を連ねる
特Aのドラフト1位候補の一番手は、中森俊介(明石商高)で、最速151キロのストレートに変化球も申し分なく、馬力もある世代ナンバー1投手。2年生エースとして、昨年は春・夏ともに甲子園ベスト4と経験値も高く、上位指名は揺るがない。
高橋宏斗(中京大中京高)は昨秋の明治神宮大会で圧巻の投球を見せて、一気に上位候補に名を連ねた。対戦した明徳義塾高(高知)の馬淵監督が、「松坂以上のストレート」と評したように、伸びしろ十分の素質型。
昨夏の甲子園を経験している小林樹斗(智弁和歌山高)も評価が急上昇している。将来性を感じる140キロ中盤のストレートに、超高校級のスライダーを含めた変化球の精度が高い。
上位候補選手では、川瀬堅斗(大分商高)が1位指名もある逸材だ。昨秋の九州大会準優勝で一気に素質の開花とともに知名度を上げ、150キロも夢ではない覚醒を予感させる。笠島尚樹(敦賀気比高)にも注目だ。昨夏の甲子園で2年生エースとして全国大会を経験し、スリークオーターから球持ちが良く、手元で伸びるストレートが最大の魅力だ。
高田琢登(静岡商高)は、出所の分からないストレートと多彩な変化球が武器の左腕で、奪三振が多い。同じ左腕では松本龍之介(横浜高)は粗削りながら、将来性十分の187センチの大型選手だ。内田了介(埼玉栄高)も奪三振が多く、フォークなどの変化球が武器で、4番・ピッチャーはセンスの高さを証明している。篠木健太郎(木更津総合高)はスライダーが武器だが、ストレートの球速も上がっており上位候補。ただ、進学が不文律の高校だけに進路に注目が集まる。
上位から中位では、根本悠楓(苫小牧中央高)は最速146キロの本格派左腕で、無名校だが中学時代には全国制覇した逸材で上位指名もあり得る。菊池竜雅(常総学院高)は、既にストレートが150キロ超えており、変化球の完成度も高い。山下舜平大(福岡大大濠高)は緩急をつけたピッチングが身上の本格派右腕、豆田泰志(浦和実高)は、昨夏の県大会で浦和学院高を完封し評価を上げた。
このほかには、北嶋宏太(駒大苫小牧高)は146キロのストレートとキレのあるスライダーが武器で、根本と同地区でしのぎを削っている。児玉悠紀(日大三高)は縦横のスライダーを使い分ける技巧派左腕。同じ左腕の安達壮太(桐光学園高)は、ゲームメークに長け、投手の他にも打者としても評価されている。松本のチームメイトの木下幹也(横浜高)はストレートが自慢で、秘めたポテンシャルは高い。
嘉手苅浩太(日本航空石川高)は最速147キロの本格派右腕、寺西成騎(星稜高)も一学年上の先輩・奥川恭伸(ヤクルト)に続く右の本格派で変化球も多彩だ。上田洸太朗(享栄高)も本格派右腕で常時140キロのストレートとカットボールが武器だ。昨夏の甲子園の準決勝で明石商の中森に投げ勝った岩崎峻典(履正社高)も145キロのストレートを軸に安定感のある投球は大舞台で証明済みだ。
●捕手~頭一つ抜けている内山をはじめ、打てる捕手が勢ぞろい
昨夏の甲子園で準優勝した内山壮真(星稜高)は、1年からクリーンアップを打ち、昨夏はショート、そして捕手へ再コンバートするなど、守備位置がセンスの高さを証明している。キャッチングと正確なスローイングは、先輩・山瀬慎之介(巨人)以上だ。
関本勇輔(履正社高)の評価も高い。強肩強打で内山と同様に名門高で4番・主将を務める。特に肩は2塁送球タイムが1.8~1.9秒台をコンスタントに計測する。父親は元阪神の関本賢太郎でまさに球界のサラブレッドだ。
今年は内山のほかにも打てる捕手が多い。山下航汰(京都外大西高)は高校通算30本塁打のスラッガー、印出太一(中京大中京高)も広角に長打を打て、古谷将也(成田高)もシュアな打撃が魅力だ。一方、栗田勇雅(山梨学院大高)は4番も務めるが、リード面が評価されている頭脳派の選手だ。
●内野手~リードオフマンにスラッガー、今後の成長に期待したい選手が並ぶ
まずは2人の遊撃手に注目だ。土田龍空(近江高)は一塁到達4.27秒の俊足で、守備の巧い正真正銘のリードオフマン候補。角田勇斗(習志野高)は抜群の守備力に加え足も早い。ミートが巧く、「ここぞ」というときに結果を出す集中力も魅力だ。
スラッガーでは、西野力也(大阪桐蔭高)は将来の4番候補。右のパワーヒッターだが、魅力は遠くに飛ばす技術力の高さだ。大先輩の中村剛也(西武)に似たタイプで、「おかわり君二世」の呼び声が高い。山村崇嘉(東海大相模高)も高校通算41本塁打の不動の3番打者で、フォロースルーの大きいスイングで変化球も苦にしない。
小深田大地(履正社高)は、昨夏の優勝チームで3番を打ち、甲子園で打率.360を記録した。無駄のない動きとスイングスピードで、ミートのポイントが近くパワーもある。同じ巧打者では度会隆輝(横浜高)も上位候補で、1年秋より二塁のレギュラーを務め、卓越したバットコントロールで3番打者を務める。ちなみに小深田の兄は、楽天の小深田大翔、度会の父は元ヤクルトの度会博文と素質の塊だ。
以上が上位指名候補で、このほかには小松涼馬(帝京高)と杉崎成(東海大菅生高)はクリーンアップを務めるスラッガー、知田爽汰(星稜高)もフルスイングが身上で、加えて足もある。リードオフマンタイプでは、宗山塁(広陵高)は一塁到達4秒の俊足で守備は抜群、中村敢晴(筑陽学園高)は右打ちのショートストップで、チームでは一番を務め、兄はソフトバンクの中村宜聖の野球一家だ。
●外野手~今年は来田と西川、井上と1位候補が並ぶ逸材揃い
今年の高校生外野手は逸材が多く、特に来田涼斗(明石商高)と西川僚祐(東海大相模高)は堂々の1位候補だ。来田は走攻守に頭一つ抜けており、50メートル5秒9のスピードスターで、甲子園でも本塁打を放つ長打力と集中力、外野守備を見ても運動能力の高さが窺える。来田と双璧なのが西川で、高校通算51本塁打、名門高で1年生から4番を打ち、打球スピードは超高校級、甘いボールを一発で仕留める集中力もある。
もう一人忘れてはならないのは、井上朋也(花咲徳栄高)だ。1年生から甲子園の舞台を経験し、タイミングの取り方が上手で変化球も苦にしない。また、俊足ではないが足も使える。
横山陽樹(作新学院高)も評価が高い。昨夏の甲子園で打率.571、U-18にも選出された。木製バットへの対応力も既に備えており、勝負強い打撃が魅力だ。1位以外は進学が基本の学校なので、どこまで成長するかが楽しみだ。その横山と一緒に昨年U-18に選出された鵜沼魁斗(東海大相模高)も高校通算21本塁打の攻撃的一番打者だ。
このほかには仲三河優太(大阪桐蔭高)は入団時は投手だったが、現在は野手に専念し4番に定着している。細川凌平(智弁和歌山高)は昨夏攻撃的2番打者として、甲子園でも活躍し、打撃センスの良さが際立っている。
物事に“たら、れば”は禁物だが、幻の今春センバツでは、今回紹介した花咲徳栄(埼玉)、山梨学院(山梨)、星稜と日本航空石川(石川)、中京大中京(愛知)、履正社と大阪桐蔭(大阪)、明石商(兵庫)、智弁和歌山(和歌山)、大分商(大分)が出場を決めており、やはり観てみたかった。