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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆ソフトバンク~選手層の厚さで今年も優勝の大本命!4年連続日本一を目指す

 2010年代は、まさにソフトバンクの時代だったと言える。2010~19年までの10シーズンでリーグ優勝5回、日本一は2018~19年の2位からの日本シリーズ進出と合わせて6回を数え、現在は3年連続日本一を継続中で、今年も文句なしで「優勝」予想した。

 昨年は終盤に西武にかわされリーグ優勝こそ逃したが、CSでは2年続けて西武を圧倒。日本シリーズでも、セ・リーグ覇者の巨人に付け入るスキを与えることなく、1stステージの楽天2戦目から10連勝でフィニッシュした。2年連続でリーグ優勝した西武の快挙を忘れるほど、最後の最後で圧倒的な強さを見せつけた。

 とにかく選手層が厚い。今年も主力に離脱や調整遅れの選手がいるが、楽しみな若手が揃っている。先発では松本裕樹(盛岡大付高~14年①)に覚醒の予感が漂い、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)の評価も高い。昨年、リリーフで結果を出した高橋純平(県岐阜商高~15年①)も先発の座を狙う。

 リリーフ陣でも古谷優人(江陵高~16年②)は故障が癒え、ようやくスタートラインに立つことができ、ルーキーの津森宥紀(東北福祉大~19年③)や、育成から支配下登録された尾形崇斗(学法石川高~17年育①)がオープン戦で結果を出している。

 野手では周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)が代走からレギュラーを狙い、牧原大成(城北高~10年育⑤)との1番・二塁争いが注目だ。栗原陵矢(春江工高~14年②)は打撃力が半端なく、レギュラー候補に名乗りを上げた。このほかにも走攻守揃った三森大貴(青森山田高~16年④)、支配下登録されたスラッガーのリチャード(沖縄尚学高~17年育③)、俊足強肩のルーキー佐藤直樹JR西日本~19年①)などぞろぞろと名前が出てくる。

 ソフトバンクの不安材料は、主力野手の世代交代だが、今年はこの課題が解消されるか、それともそのままウィークポイントになるか、そしてこれからも暫くソフトバンクの時代が続くのかが問われるシーズンになると思う。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 2位 76勝62敗5分 .251  183本 113個  582点  3.63    564点

 18年 2位 82勝60敗1分 .266  202本   80個  685点  3.90  579点

 17年 1位    94勝49敗0分 .259  164本   73個  638点  3.22  483点  

 16年 2位 83勝54敗6分 .261  114本 107個  637点  3.09  479点

 15年 1位 90勝49敗4分 .267  141本   94個  651点  3.16  491点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢は27.3歳で意外に高く、特に投手陣の高齢化が進んでいる。一つ上のチームを目指し、14年~17年は本指名中20名のうち16名が高校生指名だが、残念だがレギュラー候補すら現状では見当たらず、世代交代が既知として進んでいない。結果、18年~19年は即戦力指名にシフトし、本指名12名中、高校生は僅か3名とで減少した。

 18年~甲斐野央(投手~東洋大①)

 17年~高橋 礼(投手~専大②)

 16年~なし

 15年~なし

 14年~なし

 ようやく昨年主力選手が誕生したが、若手輩出のスピードが遅い。このほかにも周東くらいしか見当たらない。一番意外だったのが、田中正義(創価大~16年①)の伸び悩みで、確かに故障などもあったが3年間でプロ初勝利はおろか、11試合登板に留まることは全く想像できなかった。

 

●投手陣~主力選手の調整遅れで先発に不安が残るが、質量ともに厚いリリーフ陣

 昨年も主力選手が離脱した。先発では東浜巨(亜大~12年①)がわずか7試合登板で2勝、リリーフの石川柊太(創価大~13年育①)は故障で、登板数が42試合から2試合に減少、加治屋蓮(JR九州~13年①)も前年の登板過多がたたったか72試合から30試合登板に留まった。キング・オブ・クローザーのサファテは全休、岩嵜翔市船橋高~07年高①)も完全復活には至らなかった。

 こうなると投手陣が瓦解してもおかしくないが、なんと逆にチーム防御率は上がりリーグ1位の投手陣を形成した。エースの千賀滉大(蒲郡高~10年育④)が12勝と最多奪三振、サブマリンの高橋礼も12勝を上げ新人王を獲得した。ミランダと大竹耕太郎(早大~17年育④)が先発ローテを守り、終盤にはベテランの和田毅早大~02年自)が復活し4勝を上げた。

 リリーフ陣では、森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)がクローザーの地位を確立し、嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)やモイネロに、高橋純や椎野新(国士館大~17年④)の新戦力が加わった。ルーキーの甲斐野はチーム最多の65試合に登板し、日本一に大きく貢献した。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…千賀滉大 ミランダ 高橋 礼 東浜 巨 大竹耕太郎 武田翔太

 ・後半戦…大竹耕太郎 千賀滉大 和田 毅 ミランダ 高橋 礼 松本裕樹

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆千賀滉大(180回1/3)☆高橋 礼(143回)大竹耕太郎(106回)

       ミランダ(86回)武田翔太(83回)和田 毅(57回2/3)

 ・救援…甲斐野央(65試合)モイネロ(60試合)森 唯斗(54試合)

       嘉弥真新也(54試合)松田遼馬(51試合)高橋純平(45試合)

 今年も残念ながら主力選手に故障が発生し、先発では千賀に高橋礼、大竹、武田翔太宮崎日大高~11年①)が出遅れており、開幕投手は12球団では一番遅いタイミングで東浜が指名された。

 ただ、その東浜も故障上がりで不安が残り、新戦力でMLB通算54勝のムーア、ベテランの和田に頼らざるを得ない状況になる。そうなるとリリーフの二保旭(九州国際大~08年育②)や松田遼馬(波佐見高~11年神⑤)の先発起用も想定され、主力が戻ってこないと先発陣は盤石と言えず、やり繰りに苦労することも想定され、松本や杉山の台頭に期待したい。

 反面、リリーフ陣は甲斐野に回復のメドが立っていないが、質量ともに豊富だ。クローザーの森、実績のあるモイネロと嘉弥真、高橋純や椎野に加え、故障からの復活を期す岩嵜と石川、変則右腕のルーキー津森も加わる。さらに川原弘之(福岡大大濠高~09年②)や古谷の両左腕、尾形に泉圭輔(金沢星稜大~18年⑥)などストレートに力のある若手投手が控えており、先発陣の不安を払拭できる布陣だ。

 強いていうなら、甲斐野が務めていたセットアッパーを誰にするかで、岩嵜の復調がベストだが、工藤監督が誰を指名するかに注目したい。もう一つは外国人枠の問題で、モイネロとデスパイネ、グラシアルは外せず、残り1枠をムーア、バンデンハーク、スチュアートJrの先発候補が争う形になり、何とも贅沢な悩みだが、先発陣が不足している状況ではさらに悩ましい…。

【今年度の予想】

 ・先発…東浜 巨 バンデンハーク ムーア 和田 毅 松本裕樹 

       千賀滉大 高橋 礼 大竹耕太郎 二保 旭 杉山一樹

 ・中継…モイネロ 高橋純平 嘉弥真新也 松田遼馬 椎野 新 津森宥紀 

      甲斐野央  石川柊太 加治屋蓮 泉 圭輔 川原弘之 古谷優人

 ・抑え…森 唯斗 サファテ 岩嵜 翔

 

●野手陣~脅威の打線で今年も本塁打を量産か!課題は一番打者と不安の多い外野守備

 昨年は外野が緊急事態に陥り、中村晃(帝京高~07年高③)が病気で開幕に間に合わず、チームの中心選手柳田悠岐(広島経済大~10年②)は開幕早々にケガ、上林誠知(仙台育英高~13年④)も不振と骨折で離脱した。このほか内川聖一(大分工~00年横①)も本調子には程遠く、今宮健太(明豊高~09年①)も離脱を繰り返した。

 その穴をベテランの福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年高①)や川島慶三九州国際大~05年大社日③)、若手の周東や釜元豪(西陵高~11年育①)が埋めたが、いずれもレギュラー奪取までには至らなかった。

 結果、規定打席に達したのは捕手の甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)に松田宣浩(亜大~05年希)、内川とデスパイネの4人のみで、チーム本塁打はリーグ1位、打率2位の好成績にも係わらず、得点数は103点も減少。得点力はリーグ4位と落ち込み、改めて柳田の存在の大きさが浮き彫りになった。ポスト内川、松田宣、柳田…このレベルの代わりになる選手はそうそういないと思うが、世代交代が喫緊の課題だ。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…☆甲斐拓也(137/454)

 内野手…☆松田宣浩(143/576)☆内川聖一(137/535)牧原大成(114/436)

       今宮健太(106/426)グラシアル(103/410)明石健志(99/315)

       高田知季(93/125)周東佑京(102/114)

 外野手…☆デスパイネ(130/519)上林誠知(99/286)釜元 豪(86/189)

     福田秀平(80/183)中村 晃(44/159)柳田悠岐(38/157)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)牧原大成④      1)明石健志④      

  2)今宮健太⑥      2)西田哲朗⑥       

  3)柳田悠岐⑧         3)内川聖一③    

  4)デスパイネDH      4)デスパイネDH      

  5)グラシアル⑦     5)グラシアル⑦      

  6)内川聖一③      6)松田宣浩⑤     

  7)松田宣浩⑤           7)上林誠知⑨   

  8)上林誠知⑨      8)甲斐拓也②

  9)甲斐拓也②      9)牧原大成⑧  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)周東佑京④      捕 手)甲斐拓也(高谷裕亮) 

  2)今宮健太⑥      一塁手内川聖一明石健志

  3)柳田悠岐⑧      二塁手)周東佑京(牧原大成)

  4)デスパイネDH      三塁手松田宣浩

  5)バレンティン⑦       遊撃手)今宮健太(西田哲朗)

  6)グラシアル⑨     左翼手バレンティン(中村 晃)

  7)松田宣浩⑤            中堅手柳田悠岐佐藤直樹

  8)内川聖一③       右翼手)グラシアル(上林誠知)

  9)甲斐拓也②       D H)デスパイネ長谷川勇也)     

  

 今年の課題は、1番打者の確立、柳田の復調または若手の台頭、そして外野守備である。1番打者の候補は牧原と周東で、ともに打撃が課題だ。牧原は積極性が長所とも言えるが、反面それが粗さにもなっており、好不調の波も大きい。周東は打撃力自体がまだまだ貧弱で、打率.196では塁にさえ出さなければ怖さはない。この2人のレギュラー争いは、今後のチームのある意味命運を握ると思う。

 柳田が復調すれば問題はないが、柳田の不在で昨年得点力が大きく落ちたように、最低でも外野でレギュラーを獲得する選手の台頭が必要だ。それを如実に表したのが昨年のドラフトで、即戦力の佐藤を1位で獲得している。ポスト柳田の候補一番手はやはり上林で、一昨年のような活躍ができれば課題も軽減される。また、捕手ながら外野も守れる栗原が面白い存在になってきた。

 外野守備の不安は大きい。左翼バレンティンの守備のお粗末さはヤクルト時代から課題で、グラシアルもお世辞でも上手いとは言えない。柳田は肘に不安を抱えており、今年は外野守備でゲームの勝敗が左右する場面が増えるかもしれない。ここでも強肩の上林に守備力の高いルーキー佐藤との併用に注目したい。

 それ以外は盤石で、2番には守備の名手で小技も使える今宮、デスパイネバレンティン、グラシアルが並ぶ中軸は強力で、下位打線でベテランの松田宣と内川、パンチ力のある甲斐が並ぶ贅沢な打線になり、この打線を抑えるのは一苦労だ。

 控えも豪華で、内野のユーティリティープレーヤーの明石健志山梨学院大高~03年④)に勝負強い川島、外野でも中村や安打製造機長谷川勇也専大~06年大社⑤)など、他球団では間違いなくレギュラーの選手が控える。

 何度も言っているが、最大の課題は世代交代である。今年のものではないにしても、内川の38歳を筆頭に、松田宣と川島が37歳、長谷川とバレンティンが36歳を迎える。ポスト内川には中村がいるので問題ないと思うが、三塁手の松田宣の後釜が見当たらず、元気印の増田珠(横浜高~17年③)や野村大樹(早実高~18年③)のブレイクに期待したい。この他に若手では、捕手の九鬼隆平(秀岳館高~16年③)や内野手の川瀬晃(大分商高~15年⑥)が昨年ファームで結果を残している。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…甲斐拓也 高谷裕亮 栗原陵矢(谷川原健太)

 内野手内川聖一 周東佑京 松田宣浩 今宮健太 グラシアル

       明石健志 牧原大成(高田知季 西田哲朗 川島慶三

 外野手…バレンティン 柳田悠岐 デスパイネ

       中村 晃 上林誠知 佐藤直樹長谷川勇也) 

 

 注目の若手では、投手では地元北海道の古谷優人を挙げたい。故障が癒えようやく自慢のストレートが復活し、昨年は日本人左腕最速の160キロを記録した。課題の制球力を克服すれば強力なリリーバーになる。16年夏の北北海道大会の決勝戦で古谷を観ることができ、本調子ではなく敗退したが、今年こそは真の古谷の投球を見せてほしい。

 野手では、栗原陵矢は観ていてワクワクする。オープン戦で見せた特大ホームランやサヨナラ打など、打てる捕手として育成したいところだが、正捕手・甲斐の壁は高い。本人も言っているが、「試合に出れればどこでもやる」覚悟で臨むシーズンになり、得意の打撃で外野のレギュラーをこじ開けてほしい。