阪神は1~3位まで左打ちの巧打者タイプを揃え、オリックスは金子と西が抜けたあとの投手の指名が今ひとつで及第点とした。
阪神はここ数年、外野手指名が最も多いが、藤原(ロッテ)に始まり、辰巳(楽天)を外し、徹頭徹尾で近本光司(大阪ガス・外野手)を指名した。その近本が大当たりで、ルーキーで唯一の規定打席を達成しており、打率.284にリーグ3位の盗塁数21も素晴らしく新人王の最右翼だ。
3位の木浪聖也(ホンダ・内野手)も、内野をどこでも守れるユーティリティプレーヤーで、途中加入した外国人選手にポジションを追われたが、打力を磨けばレギュラーを奪い返すことも可能だろう。
2位の小幡竜平(延岡学園・内野手)はファームで規定打席に達しており期待値の高さが伺える。投手の即戦力の齋藤友貴哉(ホンダ・投手)はファームで8Sを上げているが、分厚いリリーフ陣のなか一軍では1試合登板に留まっている。
※その他 5位~川原 陸(創成館・投手)湯浅克己(BC富山・投手)
オリックスで一番の驚きは、7位の中川圭太(東洋大・内野手)の活躍だ。指名当初は走攻守に見張るものがなく、指名の意図が理解できなかったが、プロ入り後は広角に打ち返すスタイルがはまり、規定打席達成とシーズン3割も期待できる。
2位の頓宮裕真(亜大・内野手)は開幕スタメンで、長打力が光ったが内野守備に苦しみ捕手へ再転向した。3位の荒西裕大(ホンダ熊本・投手)は初勝利を上げ、6位の左澤優(JX-ENEOS・投手)も一軍登板を果たしたが、即戦力としては物足りない。
5位の宜保翔(未来沖縄・内野手)はファームで規定打席に達し、育成1位の漆原大晟(新潟医療福祉大・投手)は支配下契約にはならなかったが、ファームで16Sを上げ若手が着実に育っている。
※その他 1位~大田 椋(天理・内野手)4位~富山凌雅(トヨタ自動車・投手)
●不合格ドラフトの楽天とD℮NA
楽天とDeNAは、補強なのか育成重視なのか意図がハッキリせず、評価が厳しかった。いずれも2位以降の指名順位が高く、DeNAは上位は大学・社会人、下位で高校生と独立リーグのいつものパターンに落ち着いた。
楽天は新人を次々に抜擢し、1位の辰巳涼介(立命館大・外野手)は打率.243に盗塁数9は物足りない感もあるが、走攻守に期待を抱かせる。辰巳以上のインパクトを残しているのが、6位の渡辺佳明(明大・内野手)でチャンスに滅法強く、外野もこなせる万能選手で辰巳以上に欠かせない戦力になっている。2位の太田光(大商大・捕手)、7位の小郷裕哉(立正大・内野手)も一軍で貴重な経験を積んでいる。
投手では4位の弓削隼人(スバル・投手)が、開幕ローテを掴んだがケガで離脱。オールスター後に復帰するといきなり2勝を上げ、後半戦のキーマンになりそうだ。
※その他 3位~引地秀一郎(倉敷商・投手)5位~佐藤智輝(山形中央・投手)
8位~鈴木翔天(富士大・投手)
DeNAは小園(広島)のあとに、1位で上茶谷大河(東洋大・投手)を指名し、結果として優勝争いの原動力になっている。すべて先発で6勝を上げ、ハイレベルな新人王争いのなか投手の最有力候補だ。3位の大貫晋一(新日鉄住金鹿島・投手)も4勝を上げ、即戦力の期待に応えている。
2位の伊藤裕季也(立正大・内野手)は一軍デビューは遅れたが、ファームで11本塁打を放ち、一軍でも自慢の長打力を見せており、ケガで離脱した宮崎の穴をカバーする活躍が期待できる。
※その他 4位~勝又温史(日大鶴ケ丘・投手)5位~益子京右(青藍泰斗・捕手)
6位~知野直人(BC新潟・内野手)
●失敗ドラフトのヤクルトと巨人
それぞれ1位指名を2回外したが、ヤクルトはドラフトでの補強ポイントをカバーできず、巨人はいきなり育成路線に転換したが、2位以下がすべて高校生指名と偏りがありすぎて評価は低かった。
最下位独走中のヤクルトは、1位の清水昇(国学院大・投手)が先発も含め9試合、5位の坂本光士郎(新日鉄住金広畑・投手)は2試合、7位の久保拓眞(九共大・投手)は11試合登板も、いずれも勝ち星は遠く、即戦力候補が戦力になれていない。
野手では2位の中山翔太(法大・外野手)が自慢の長打力で、高齢化しているレギュラー陣を脅かす存在になっているが、実力以上にキャラが際立っている。オープン戦で注目をあびた8位の吉田大成(明治安田生命・内野手)は、わずか8試合出場で、即戦力を期待された選手は中山以外は総崩れで、チームの成績にも反映している。
※その他 3位~市川悠太(明徳義塾・投手)4位~濱田太貴(明豊・外野手)
6位~鈴木裕太(日本文理・投手)
ヤクルト以上にルーキーの成績が乏しい巨人だが、現在は首位を走っている。高校生指名が主で、この時期で判断するものではないが、1位の高橋優貴(八戸学院大・投手)の4勝だけでは寂しい。
ファームでも体力作りが主なのは理解するが、出場機会も少ない。そのなかで光っているのが、育成1位の山下航汰(健大高崎・外野手は、ファームで唯一の3割打者(.322)で、イースタン堂々の首位打者、高卒では初めて1年目で支配下登録を勝ち取った。
※その他 2位~増田 陸(明秀日立・外野手)3位~直江大輔(松商学園・投手)
4位~横川 凱(大阪桐蔭・投手)5位~松井義弥(折尾愛真・外野手)
6位~戸郷翔征(聖心ウルスラ・投手)
全体的にみると、今シーズンが大学生選手の頑張りが目立っており、社会人は近本が孤軍奮闘している。高いレベルで期待値が大きかった高校生1位が残念ながらくすぶっている。ただ、ドラフトの結果が出るのは数年かかり、どういう評価に変わるか期待して見ていきたい。
最後に今年の新人王レースはハイレベルで、セ・リーグでは上茶谷(DeNA)と近本(阪神)のほかに、投手では床田寛樹(広島)、野手では村上宗隆(ヤクルト)や若林晃弘(巨人)がいる。
パ・リーグも中川(オリックス)や辰巳(楽天)、松本航(西武)に、高橋礼(ソフトバンク)や岩下大輝(ロッテ)の両投手も有資格者で本当にレベルが高く、今シーズンが終わった後のタイトル争いにも注目したい。