ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

19年トレードと補強選手をチェック!

 シーズンが始まり、成立したトレードは6件。最近は以前のような大型トレードも少なくなり、良い意味での驚きを期待している分、物足りなさもあるが、それぞれ振り返ってみたい。

●DeNA熊原健人(投手)⇔ 楽天・濱矢広大(投手)×

 楽天は則本昴の復帰が夏場になることから、先発要員の補強で熊原を獲得。DeNAも計算できる左腕の中継ぎが砂田とエスコバーしかいない状況のなか、中継ぎに厚みを持たせるため濱矢を獲得した。

 両球団の意図が明確な良いトレードだったが、残念ながら互いに結果は出ていない。特に熊原(柴田高→仙台大)は地元・仙台への凱旋トレードになったが、ここでも期待に応えることができていない。

 

●巨人・吉川光夫(投手)宇佐見真吾(捕手)⇔日ハム・鍵谷陽平/藤岡貴裕(投手)△

 先発、中継ぎに厚みを持たせたい巨人が、左右の中継ぎの鍵谷と藤岡を獲得した。上沢のケガで、ただでさえ薄い先発陣がさらに薄くなった日本ハムは、かつてのMVP吉川を呼び戻し、飽和状態の巨人の捕手陣から宇佐見を獲得した。

 西武からFAした炭谷の加入で、巨人はレギュラーの小林に打撃の良い大城の成長、さらに阿部の再コンバートもあり、捕手の2番手候補だった宇佐見は、一気に5~6番手まで後退した。宇佐見は打撃が良いので、捕手が不足している西武やオリックス、ヤクルトあたりが獲得すると思っていたが、左打ちの捕手に狙いを定めた日本ハムが良い補強ができたと思う。

 藤岡は入団当初は大学生ナンバー1左腕で、誰もがロッテのエース誕生を期待した。同期入団の鈴木や益田が主力になるなか、結果を残すことができず、昨年日本ハムへトレード後、わずか1年で巨人へ移籍した。年齢もまだ30歳、老け込む年齢ではないので、新天地での覚醒に期待したい。

 

●中日・松井雅人(捕手)松井佑介/モヤ(外野手)

               ⇔オリックス松葉貴大(投手)武田健吾外野手)△

 伏見のケガで、戦力になる捕手が若月と山崎勝しかいなくなったオリックスが、巨人と同じく捕手に余力のある中日から松井雅を獲得した。投手陣が不足している中日も松葉を獲得し、ここは納得できる。ただ、同じ右打ち外野手の松井佑と武田はやや理解に苦しむ。

 オリックスの外野陣は、吉田正しかレギュラーはいないが、実績のある後藤や小田、若手の佐野や西浦、ルーキーの中川も外野を守れ、25歳の武田を放出し、32歳の松井佑を獲得する必要が見当たらない。中日もレギュラーの大島と平田以外は伸び悩み、将来性を期待した武田の獲得は長期的に見れば理解できるが、打線が課題の現状を見れば即効性はない。

 メネセスの退団で、外国人選手の枠が空いたなかでモヤの獲得は良かった。中日の外国人選手のレベルは高く、ファームで好成績を残してもモヤの出番は限られ、ここは良いトレードになった。

 

●広島・下水流昴(外野手)⇔楽天・三好 匠(内野手)〇

 31歳のベテラン下水流と26歳の三好のトレードはチーム状況をよく表したトレードになった。

 まず三好だが、浅村の加入で内野のレギュラーが埋まり、出番がますます減少した。また、同じ右打ちでも守備に長けた村林や西巻、同じ長距離砲の内田もいる。反面、広島は右打ちの内野手でレギュラーは菊池涼しかおらず、三好にとっては大きなチャンスになった。

 下水流は、守備が巧くしぶとい打撃が売りの選手で、獲得は楽天外野陣の不振の他ならない。レギュラーは島内しかおらず、期待のオコエは今年も不振、ルーキー辰巳も打力が今一つ、昨年新人王の田中和もケガで出遅れ、主砲ブラッシュは守備に不安がある。そのなかで下水流の獲得は、良いトレードだったが、一方で楽天の危機感も垣間見れた。

阪神・石崎 剛(投手)⇔ロッテ・高野圭佑(投手)×

 中継ぎ投手の補強という両球団の思惑だったが、同じ右投げの速球派の中継ぎで、正直意味が分からなかった。また、石崎はスリークォーターで、ロッテには同じタイプの益田もおり、現在はともにファーム…意味があったのだろうか…

 

●巨人・和田 恋(外野手)⇔楽天・古川侑利(投手)〇

 年齢はともに24歳、下水流の獲得同様、楽天は外野の補強で和田を、先発投手陣が不足している巨人は通算5勝の古川を獲得した。

 特に和田は、昨年ファームで本塁打王を獲得した有望株だった。ただ、今年はFAで丸が加入し、レギュラーの可能性が遠のいたが、楽天移籍後、和田はスタメンに名を連ねて活躍しており、本人にとっても良いトレードになった。

 一方で古川は、ポテンシャルも高く、まずまず結果も残しているが、有田工(佐賀)からドラフト4位で注目度が高くないなかで成長してきた。巨人という注目度の高いチームで、パフォーマンスを発揮できるかが不安要素になる。

 

【移籍・支配下登録選手】

●西武~齋藤誠人(捕手)~…捕手が不足のなか育成から支配下

ソフトバンク~川原弘之/スチュワートJR(投手)周東佑京/コラス(外野手)

 川原はドラフト2位で入団ののち、ケガで長期間低迷し育成になったが、支配下を勝ち取り、今年は18試合に登板し、ようやくスタートラインに立った。スチュワートはMLBドラフト一巡目指名の選手で、色々な意味で今後に注目したい選手だ。

 周東は超がつく俊足で、脚だけで食っていけでる選手でシーズン直前に支配下になった。コラスも6月に支配下になり、デスパイネ離脱後、一軍に昇格している。

オリックス~張奕/本田仁海/神戸文也(投手)

 3名とも育成からの支配下登録だが、変わり種は張で、野手から投手へ転向し、プロ初勝利も上げた。ここ最近のオリックスの投手育成には目を見張るものがある。

●ロッテ~マーティン(外野手)

 現役メジャーリーガーの入団で、途中加入の難しい条件のなか、結果も残している。俊足で長打力もあり、選球眼も悪くない。

楽天~寺岡寛治/由規(投手)フェルナンド(外野手)

 3名とも育成から支配下登録だが、経緯が違う。由規はヤクルトを退団後、トライアウトからの再起に期待したい。寺岡は育成から支配下になり中継ぎでプロ初登板を果たした。フェルナンドは支配下~育成からの返り咲きで、自慢の長打力で外野陣の一角に食い込みたい。

●広島~モンティージャ(投手)サンタナ内野手

 ドラフトだけではなく、外国人選手まで育成の軸足を置いた広島は、両外国人を育成から支配下登録した。

 モンティージャは150キロを超える左腕で、今後に期待が持てる。サンタナは内野ならどこでも守れる器用さが売りで、バティスタの残念な登録抹消のあと一軍デビューを果たした。

●巨人~デラロサ/堀岡隼人(投手)加藤脩平/山下航汰(外野手)

 デラロサ以外は。育成から支配下を勝ち取った。MLBでも実績のあるデラロサは、投手陣が薄いなか入団したが、残念ながら救世主には成りえなかった。どうもここ最近の巨人の途中入団の外国人選手は中途半端な感が否めない。

 高卒1年目ながらファームで3割を打ち、首位打者の山下の支配下登録は良かった。FAだけではなく、育成から這い上がってくる選手が活躍できれば、巨人の見方も変わってくる。

●DeNA~ソリス/中川虎大(投手)

 楽天から獲得した濱矢が結果を残せず、同じ左腕のソリスを獲得したが4試合登板に留まっている。ファームで結果を残した中川は育成から支配下になり、プロ初先発も経験し、今後に期待がかかる。

阪神~片山雄哉(捕手)ソラーテ(内野手) 

 片山は育成から支配下になり、唯一の左打捕手でチャンスはありそうだ。途中入団のソラーテは、いきなりサヨナラ本塁打を放つなど、派手なデビューを飾ったが、さすがは話題先行のチームで、訳の分からないセクシーを連発するも、ザルな守備に加え、バットも一気に湿りファームに落ちた。

 

 最後に、まったく動きのなかったのが、セ・リーグ断トツ最下位のヤクルトである。支配下選手は66名で、まだ余裕があるなか補強は一切なしである。12球団断トツの平均年齢の高さでベテランが多いため、交換トレードの成立は難しい。それならば育成からの昇格や他球団からの金銭トレード、新外国人の補強など方法はあったと思うが…勝つために最大限の努力をしないフロント、何も求めない現場に寂しさを感じた。