ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年セ・リーグの退団選手~最多は巨人、最小はDeNAと広島

 選手の現況は11/23時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

読売ジャイアンツ(24名)

 チーム強化のため、大きく選手を入れ替えると宣言した通り、なんと両リーグ最多の24名(うち育成選手10名)が戦力外通告を受けた。ただ、ともにドラフト1位の鍬原と堀田をはじめ、高木と直江、山下の6名は育成契約になる。宮國が現役続行を希望しているが、他の選手は去就未定。引退は岩隈のみで、MLBからNPBに復帰したものの一度も登板することなくチームを去る。

 今年は支配下→育成契約への変更に賛否両論が起きた。個人的には制度としての運用は間違っておらず、故障を治すために契約を変更することも良いと思うが、今回に至っては評価できない。鍬原は3年、堀田は僅か1年でドラフト1位選手が育成契約では、「巨人の1位指名って、そんなに軽かったっけ?」と考えてしまう。また山下と直江は故障の治療が理由だが、山下は昨年支配下になり1年で逆戻り…故障したら即育成契約では、選手もやり切れないと思う。

 ここで惜しいのは藤岡だ。本格派左腕として3球団競合のなかロッテへ入団し、入団時はルーキーではなく、FAで二桁勝てる投手が入団したくらいの評価だった。ただ、メンタル面や制球力、ストレートを活かす球種が課題で、いつの間にか自慢のストレートも通用しなくなってしまった…。個人的に応援していた選手なので、移籍した日本ハムや巨人での復活を期待したが、その力を発揮することはできなかったのが残念だ。

 支配下選手は55名まで減り、今ドラフトで7名(投手④/捕手①/内野手②)を指名し62名。外国人ではパーラの去就が不明だが、得意のFAで2~3名獲得しても65名前後で、これ以上の戦力外通告はないと思うが…。

 投 手…岩隈久志(99年/近⑤)宮國椋丞(10年/②)藤岡貴裕(11年/ロ①)

       高木京介(11年/④)田原誠次(11年/⑦)鍬原拓也(17年/①)

       直江大輔(18年/③)堀田賢慎(19年/①)※巽 大介(15年/⑥)

       ※橋本篤郎(15年/育⑥)※高井 俊(16年/育①)

 捕 手…※高山龍太朗(16年/育⑥)

 内野手…吉川大幾(10年/中②)※比嘉賢伸(17年/育①)※折下光輝(17年/育⑦)

      ※山上信吾(17年/育②)

 外野手…加藤脩平(16年/育②)村上海斗(17年/⑦)山下航汰(18年/育①)

       ※笠井 駿(17年/育③)※荒井颯太(17年/育⑧)

 外国人…ディプラン(投手)※ラモス(投手)モタ(外野手)

【予想背番号】

 ①平内/15 ②山崎/54 ③中山/46 ④伊藤/32 ⑤秋広/63 ⑥山本一/57

 ⑦萩原/66 

 

阪神タイガース(10名)

 平均年齢が高いチームにあって、今年もベテランには風当たりの強いオフになった。藤川は盛大な花道のなか引退したが、能見と福留、上本、伊藤隼は現役続行を希望し、高野と福永はトライアウトを受験する。

 昨年の鳥谷に続き、今年もかつての功労者に対し、後味の悪い退団劇になった。能見はエースとして103勝を上げ、昨年からはチームのために中継ぎを務め、今年は黙々と敗戦処理をこなした。福留も将来の幹部候補生として、MLBから三顧の礼で迎えられた。確かにコロナ禍のなかで軽率な行為は褒められたものではないが、それが今回の退団の理由にはならないと思う。選手会長も務めた上本へも非情な通告になった。

 結局は引退を決めて欲しい選手には、シーズン中に冷や飯を食わせて、引退への雰囲気作りをし、それでも現役続行を希望する選手は、バサッと切るスタイルは阪神の体質とも言える。巨人と並ぶ人気チームだが、このようなことを続けていれば、FAでの移籍やドラフトでも敬遠され、決して良い結果にはならないと思うが…これも伝統か…。

 支配下選手は60名で、今ドラフトの8名(投手④/捕手①/内野手③)を加え、支配下は68名になった。外国人選手が8名おり、ボーア(これも毎年恒例のバース二世)は退団、ガルシアと呂彦青も退団濃厚、スアレスはMLB移籍の可能性もあり、外国人選手を5~6名にするのであれば、もう1~2名は空けておきたいところだ。 

 投 手…藤川球児(98年/①)能見篤史(04年/自)横山雄哉(14年/①)

       高野圭佑(15年/ロ⑦)福永春吾(16年/⑥)

 捕 手…岡崎太一(04年/自)

 内野手上本博紀(08年/③)

 外野手…福留孝介(98年/中①)伊藤隼太(11年/①)

 外国人…ボーア(内野手

【予想背番号】※佐藤輝は決定

 ①佐藤輝/8 ②伊藤将/13 ③佐藤蓮/30 ④榮枝/40 ⑤村上/41 ⑥中野/00

 ⑦高寺/57 ⑧石井/54

 

中日ドラゴンズ(13名)

 エース大野雄の残留に成功した中日。その反動ではないと思うが5名の外国人(育成1名含む)がチームを去る。日本人選手では投手が6名と多く、吉見は引退、小熊と伊藤準、鈴木翔はトライアウトを受験、唯一の野手の石川駿は引退を決めた。

 鈴木翔はエース候補として期待されたが、18年オフに右手の血行障害の手術を受け、徐々に回復を見せていたが無念の戦力外になってしまった。まだ若く素質は申し分ないだけに、再起を果たしてほしい選手だ。

 石川駿は、昨年ウエスタンリーグで最高打率と最高出塁率を記録し、遅咲きのブレイクが期待されたが、故障で結果を出すことができなかった。これで14年のすべて大学・社会人で占めた即戦力ドラフトで、獲得した9名中6名がチームを去ることになった。

 支配下選手は60名で、今年指名した6名(投手④/内野手①/外野手①)を加え66名。外国人選手が現段階で3名しかおらず、もう2~3名は必要になり、支配下に余裕がなく、トレードや戦力外通告がまだあるかもしれない。

 投 手…吉見一起(05年/希)伊藤準規(08年/②)小熊凌祐(08年/⑥)

       鈴木翔太(13年/①)阿知羅拓馬(13年/④)大蔵彰人(17年/育①)

       ※浜田智博(14年/②)

 捕 手…なし

 内野手…石川 駿(14年/④)

 外野手…なし

 外国人…ゴンサレス(投手)ロメロ(投手)アルモンテ(外野手)

       シエラ(外野手)※ブリトー(投手)

【予想背番号】

 ①高橋宏/20 ②森/19 ③土田/39 ④福島/64 ⑤加藤翼/65 ⑥三好/45

 

★横浜D℮NAベイスターズ(9名)

 昨年は退団する選手の半数が引退を決めたが、今年は引退を表明している選手は現段階ではゼロで、石川とロペス(来年から日本人選手扱い)、パットンが現役続行を希望している。また、井納と梶谷がFAを検討しており去就が未定だ。

 今回の戦力外通告を見ても、正直驚きはなかったが、ロペスとパットンの退団は意外だった。ロペスは来日10年目を迎え、来シーズンからは日本人選手扱いになる。衰えは隠せないが、ソトの去就が微妙のなか、代打や堅実な一塁守備はまだまだ戦力になると思う。パットンは在籍4年で、219試合登板で101ホールドを上げたセットアッパー。奪三振率が高く(反面、与四球率も高いが…)、MLBからも注目されており、ロペスともにやや不可解な戦力外になった。

 支配下選手は58名で、今年のドラフトで6名(投手④/内野手②)をを指名し64名になる。ただ、通算50勝の井納、今年打率2位の梶谷、ソトの残留交渉が課題になるが、マネーゲームになると太刀打ちすることが難しく、この3名が残るか、移籍するかでチームの補強方針が変わり、まだ動きがありそうだ。

 投 手…藤岡好明(05年/ソ大社③)古村 徹(11年/⑧)浜矢広大(13年/楽③)

       赤間 謙(15年/オ⑨)

 捕 手…なし

 内野手…石川雄洋(04年/⑥)飛雄馬(11年/⑦)百瀬大騎(14年/⑥)

 外野手…なし

 外国人…パットン(投手)ロペス(内野手

【予想背番号】※入江・牧は決定
 ① 入江 /22 ②牧/2 ③松本/40 ④小深田/46 ⑤池谷/49 ⑥高田/56 

   

広島東洋カープ(9名)

 昨年は退団選手の半分が引退を決めたが、今年は石原慶のみで、小窪は他球団のオファーを待って、トライアウト受験も検討している。他に藤井がトライアウト挑戦、戸田は育成契約を打診された。また、沢村賞も獲得したジョンソンがチームを去る。

 覚悟はしていたが、石原慶が引退を決めた。ロッテの細川と並び、捕手らしい捕手だった。キャッチングとリードが巧く、強肩で意外なところで長打を打つ。まさに8番捕手の似合う選手で、ベテランになり出場機会は減ったが、ベンチにいるだけで安心感があり、こういった選手が引退するのはやはり寂しいものだ。ただ、石原慶の背番号31は、若手の坂倉に受け継がれ、こういった配慮は観ていて嬉しい。

 支配下選手は58名で、今年指名した6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)に、新外国人選手を加えると支配下ギリギリで、田中広にFA移籍の可能性があるが、逆にFAでの獲得がない分、更なるトレードや戦力外の動きがありそうだ。 

 投 手…戸田隆矢(11年/③)藤井皓哉(14年/④)平岡敬人(17年/⑥)

 捕 手…石原慶幸(01年/④)

 内野手小窪哲也(07年/大社③)

 外野手…なし

 外国人…ジョンソン(投手)モンティージャ(投手)ピエラ(外野手)

       ※メナ(投手)

【予想背番号】
 ①栗林/20 ②森浦/13 ③大道/12 ④小林/68 ⑤行木/61 ⑥矢野/53

 

東京ヤクルトスワローズ(15名)

 阪神と並び平均年齢の高いチームで、今年も多くのベテランがチームを去る。投手では五十嵐と中澤、山中、捕手の井野が引退する。近藤と平井、藤井が現役続行を希望しており、藤井はトライアウト受験を表明している。

 驚いたのはリーグ最下位の投手陣にあって、大量8名の投手を戦力外にした。チーム成績も2年連続の最下位で、チームを刷新する意味もあると思うが、リリーフの近藤や引退を決めたがサブマリンの山中の両ベテランなどは、若手が多くなった投手陣のなかで、必ず経験が活きてくる場面はあり、正直勿体ない印象のほうが強い。

 今オフ、風張が戦力外を受けて14年に入団した選手がすべて退団した。7名入団して在籍2年で2名、3年目にはドラフト1位の竹下を含む3名が退団した。この年は1位で投手では山崎康(横浜)や有原(日本ハム)、高橋光(西武)。野手でも中村奨(ロッテ)や岡本(巨人)、下位指名でも西野や小田(ともにオリックス)がおり悪い年ではなかったが、僅か6年で全員退団はスカウティングや育成能力が疑われても致し方なく、ここ数年の低迷も頷ける。

 支配下選手は55名で、今ドラフトの6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)を加えても61名と少ない。チームの顔である山田哲とクローザーの石山の慰留に成功し、小川を残すだけだ。外国人選手は現在3名で、もう2~3名は必要だがそれでも人数に余裕はあり、あとはチームの補強に努めていくだけだ。

 投 手…五十嵐亮太(97年/②)近藤一樹(01年/近⑦)山田大樹(06年/ソ育①)

       中澤雅人(09年/①)平井 諒(09年/④)山中浩史(12年/ソ⑥)

       田川賢吾(12年/③)風張 蓮(14年/②)※ジュリアス(15年/④)

 捕 手…井野 卓(05年/楽大社⑦)

 内野手…藤井亮太(13年/⑥)

 外野手…上田剛史(06年/高③)田代将太郎(11年/西⑤)

 外国人…イノーア(投手)エスコバー内野手

【予想背番号】
 ①木澤/20 ②山野/34 ③内山/33 ④元山/0 ⑤並木/50 ⑥嘉手苅/54

20年パ・リーグの退団選手~最多はソフトバンクと楽天、最小は千葉ロッテ

 選手の現況は11/19時点のもので、選手名の横の年数は指名年度、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

福岡ソフトバンクホークス(14名)

 日本シリーズで巨人に圧勝して、パ・リーグ初の4連覇を決めた翌日に3選手が加わり、13選手が戦力外通告を受けた。吉住と田代が育成契約を打診されているが、吉住は態度を保留、田代は自由契約選手を選択しトライアウト受験を決めた。内川は他球団へ移籍、松田遼と加治屋も現役続行を表明し、ホークスの強力投手陣からはじき出されたよう格好で、他球団からのオファーは十分に可能性はある。このほかに堀内と大本がトライアウトに向け準備をしている。

 驚きは内川の退団だろう。FAで横浜より移籍し、セ・パ両リーグで首位打者を獲得し、主力中の主力としてホークスを支えた。今年は故障もなく、ファームでも打率.327の好成績を残しており、39歳とは言えまだまだやれる。ヤクルト移籍が有力視され、10年振りにセ・リーグで内川が見られるかもしれない。

 17年のドラフト1位の吉住は、1位指名も驚きだったが、3年で戦力外(育成契約打診も保留)も驚きで、今年は2軍でも登板がなかった。育成の田代は昨年、ファームで打率3割を超え支配下目前だったが、育成契約継続を打診され、自由契約を選んだ。昨年同様の理由で退団し、ヤクルトで44試合に登板した長谷川宙輝の活躍が刺激になったのかもしれない。

 支配下選手63名に、今年のドラフトではすべて高校生で5名(投手②/捕手①/内野手①/外野手①)を指名し、現状68名で支配下ギリギリだ。6名いる外国人選手(バレンティンを除く)ではサファテとバンデンハークの去就が微妙で、長谷川がFA行使を検討しているが、更なる戦力外やトレードで2~3名程度は空けておく必要があり、まだ動きがまだありそうだ。

 投 手…松田遼馬(11年/神⑤)加治屋蓮(13年/①)吉住晴斗(17年/①)

       ※小澤怜史(15年/②)※野沢佑斗(15年/育成①)※渡辺健史(15年/育⑤)

 捕 手…※堀内汰門(14年/育④)

 内野手内川聖一(00年/横①)西田哲朗(09年/楽②)※古沢勝吾(14年③)

 外野手…※大本将吾(16年/育①)※田代飛翔(16年/育③)※清水陸哉(16年/育⑤)

       ※日暮矢麻人(17年/育⑤)

【予想背番号】

 ①井上/22 ②笹川/26 ③牧原巧/43 ④川原田/46 ⑤田上/70

 

千葉ロッテマリーンズ(8名)

 若手の活躍もあり、07年以来の2位で終えたロッテ。戦力外の顔ぶれを見ても驚きはなく、細川が引退を決め、内と大谷、渡邊が現役続行を希望し、原は育成契約を打診されており、この他の選手の去就は未定だ。ただ、内も大谷も実績は十分だが、ともに35歳でハードルは高いだろう。

 内ほど、“”たら、れば”の選手もいないだろう。1年目からファームで最優秀救援投手に輝き、誰もがクローザー誕生を予感したが、右肩に右肘、右足首と再三の故障に見舞われた。17~18年のシーズンで42セーブを上げ、クローザーとして活躍したものの、昨年また右肘を手術し一軍登板はなかった。まさしくケガさえなければの好投手だった。

 支配下選手は63名で、今年指名した5名(投手③/内野手①/外野手①)を加えて68名になった。ただ、今年のロッテはこれからが大変で、今年の強力リリーフ陣を形成した唐川と澤村に加え、貴重な左のリリーバー松永、ベテランの荻野貴と清田がFAを検討している。ハーマンやチェン・ウェインフローレスも残留は決まっておらず、最悪の場合、益田のみを残してリリーフ陣の再編成が迫られるかもしれない。

 当然、全員の残留交渉が最優先する一方、戦力強化のために更なる補強も検討している。仮に全員の残留が決まれば、支配下枠は1名しなかなく、育成選手の左腕・本前の評価が高く支配下目前で、あと3~4名ほどは空けておく必要があり、まだ動きがありそうだ。

 投 手…内 竜也(03年/①)大谷智久(09年/②)原  嵩(15年/⑤)

       渡邊啓太(17年/⑤)※鎌田光津希(18年/育①)

 捕 手…細川 亨(01年/西自)

 内野手…細谷 圭(05年/高④)

 外野手…三家和真(11年/広育④)

【予想背番号】

 ①鈴木/21 ②中森/55 ③小川/35 ④河村/56 ⑤西川/61

 

埼玉西武ライオンズ(9名)

 現役引退は3名で、相内は相次ぐトラブルで球団も遂に見切りをつけ、藤田はイップスに陥り引退を決めた。クローザーとして通算52セーブの高橋朋は、故障で育成契約となったが、遂に復活することなくアカデミーコーチでチームに残る。18年最多勝の多和田は病気療養のため育成契約、野田がトライアウト受験を表明している。

 正直、野田以外は驚きがなかったが、永江は残念だった。16年に源田が遊撃手の定位置を掴むまでは、西武の遊撃はレギュラー不在で、永江は候補の一番手だった。堅実な守備に俊足を誇ったが、通算打率.153となんせ打てなさ過ぎた…。源田入団以降、出場試合数が激減し、何度もチャンスを与えられるはずもなく無念の戦力外になった。

 支配下選手は59名で、今ドラフトで最多の7名(投手②/内野手③/外野手②)を指名し66名になり、戦力外通告もほぼ終わったと言える。毎年、恒例しつつあるFA移籍では、クローザーの増田が態度を表明しておらず、今年負けなしの絶対的な守護神だけに全力で慰留したい。外国人選手ではノリンのみ残留が微妙で、FAでの選手獲得も名前が挙がっていないが、左腕の先発候補で日本ハムの吉川を獲得し、補強はトレードや外国人選手が中心になりそうだ。

 投 手…相内 誠(12年/②)多和田真三郎(15年/①)野田昇吾(15年/③)

       國場 翼(15年/⑧)藤田航生(16年/⑦)※高橋朋己(12年/④)

 捕 手…なし

 内野手永江恭平(11年④)森越祐人(10年/中④)水口大地(12年/育①)

 外野手…なし

【予想背番号】

 ①渡部/8 ②佐々木/23 ③山村/32 ④若林/0 ⑤大曲/57 

 ⑥ブランドン/59 ⑦仲三河/67 ※吉川/41

      

東北楽天ゴールデンイーグルス(14名)

 昨年はリーグ最多の17名、今年も現段階でリーグ最多の14名がチームを去る。久保が2軍投手コーチ、渡邊直は一軍打撃コーチに就任し、渡邊佑は育成契約を打診されている。わずか3年でクビになった近藤、2度目の戦力外を受けた由規が現役続行を希望し、近藤はトライアウト受験を表明している。

 昨年も後味の良くない戦力外になったが、今年も同じだった…。青山は通算15年で625試合で45セーブ、159ホールドの功労者で、昨年の嶋同様にもう少し上手いやり方があっただろう。結果、青山は引退を決めたが、これほどの実績を残した生え抜きの選手が公式戦で引退試合もなく、チームを去るのは寂しい限りだ。近藤も驚きで、17試合登板で未勝利で結果は出ていないが、即戦力のドラ1が大きなケガがあった訳でもないのに3年で戦力外は首を捻ってしまう。

 支配下選手は61名で、今ドラフトで6名(投手⑤/内野手①)を加え、支配下は67名になった。塩見や島内、岡島のFA取得選手も残留を決め、今年はFA選手の獲得はしないが、もう1~2名は空けておきたい。外国人選手ではブラッシュの去就が不明のなか、新外国人選手で右の大砲ディクソンを獲得した。

 投 手…久保裕也(02年/巨自)由規(07年/ヤ高①)熊原健人(15年/横②)

       近藤弘樹(17年/①)渡辺佑樹(17年/④)青山浩二(05年/大社③)

     ※木村敏(16年/育④)

 捕 手…山下斐紹(10年/ソ①)

 内野手渡辺直人(05年/大社⑤)※南 要輔(16年/育②)

       ※松本京志郎(17年育②)

 外野手…フェルナンド(14年/④)※耀飛(17年/⑤)※中村和希(17年/育③)

【予想背番号】
 ①早川/26 ②高田/12 ③藤井/47 ④内間/40 ⑤入江/50 ⑥内/63

      

 北海道日本ハムファイターズ(9名)

 戦力外通告は7名で、浦野と白村は現役引退。吉田侑と黒羽根は現役続行を希望し、鈴木遼と宮台、姫野は育成契約を打診されている。また、吉川は西武へ金銭トレードされ、現在、支配下登録選手は59名で、ドラフト指名6名(投手②/捕手①/内野手①/外野手②)を加えてようやく65名になった。

 申し訳ないが、吉田侑や姫野あたりの戦力外を判断するのに、随分と時間がかかったなというのが正直な感想である。エースの有原と主力の西川がポスティングでのMLB挑戦を表明し、2年連続5位に沈み、チーム再建が必要のなか、スピードを上げて対応していかないところを、何をモタモタしていたのかと思う。

 育成の日ハムも最近は若手が伸び悩み、元々FA獲得には消極的なチームで、外国人選手もバーヘイゲンとロドリゲス以外は未定等々、来年に向けてのスタート遅れは否めない。歴代チーム最長の10年目を迎える栗山監督。昨年は「鬼になる」と言い、今年は「情を捨てる」と言う。今後、その言葉がどう結果として出るか注目したい。

 投 手…浦野博司(13年/②)吉田侑樹(15年/⑦)鈴木遼太郎(17年/⑥)

       宮台康平(17年/⑦)

 捕 手…黒羽根利規(05年/横高③)

 内野手…なし

 外野手…白村明弘(13年/⑥)姫野優也(15年/⑧)

 外国人…マルティネス(投手)ビヤヌエバ内野手

【予想背番号】
 ①伊藤/17 ②五十幡/52 ③古川/43 ④細川/50 ⑤根本/56 ⑥今川/44

 

オリックスバファローズ(11名)

 戦力外通告支配下登録10名と育成契約1名の11名で、チームを支えた山崎と小島、松井佑が引退を決めた。東明と白崎が現役続行を模索しており、白崎は貴重な右の長距離砲で、欲しがるチームはあるかもしれない。近藤と西浦はオフに手術を要するため、一旦は育成契約になる。特に西浦は「特発性大腿骨頭壊死症」をいう国が指定する特定疾患の難病で、簡単に口に出せる病気ではないが、病に打ち勝ち元気な姿で戻ってきてほしい。

 チームを去る選手に思いで深い選手が多い。試合中に打球を顔面に受け前歯を折りながらマスクを被り続けた山崎、内外野守れたユーティリティプレーヤーの小島、松井佑も中日から移籍後よく打った。子連れルーキーで話題になった飯田などは、密かに応援していたが、在籍4年で1本のヒットも打つことも出来なかった。

 支配下選手は59名で、今ドラフトの6名(投手③/捕手①/外野手②)を加えても64名と、戦力外はほぼ終わったと言える。外国人選手もアルバースとロドリゲスが残留微妙だが、ここは新外国人2名での穴埋めになる。阪神の能見獲得に興味を示すなど、昨年もFAには参戦していないが、ドラフトが育成主体になっていることを鑑みれば、今年はFAで戦力の底上げが必要だと思う。

 投 手…東明大貴(13年/②)近藤大亮(15年/②)左澤 優(18年/⑥)

 捕 手…山崎勝己(11年/横②)飯田大祐(16年⑦)

 内野手…白崎浩之(12年/横①)小島脩平(11年/⑦)※比屋根彰人(17年/育③)

 外野手…松井佑介(09年/中④)根本 薫(16年/⑨)西浦颯大(17年/⑥)

【予想背番号】
 ①山下/12 ②元/37 ③来田/38 ④中川颯 /45 ⑤中川拓/62 ⑥阿部/56

 

2020年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(後編)

 ドラフトが終了し、いよいよペナントレースも大詰め。同時に戦力外通知も始まりました。毎年、入る人がいれば、出る人もおり、期待が膨らむ反面、寂しい時季になる。では後半にお付き合いください。

 

△ロッテ(65点)

 ここ数年、秀逸なドラフトを展開していたロッテ。今年は千葉出身でロッテファンを公言していた早川(楽天)の指名をいち早く公言したが、4球団競合のなか既に当たりクジは残っておらず、早川を外したあと、同じ左腕の鈴木昭汰(法大・投手)をヤクルトとの競合の末獲得した。

 とにかく今年は不足している左腕投手の強化が最優先課題で、徹頭徹尾で即戦力左腕の獲得を優先した。その鈴木は早川と同様に高校時代から注目された投手で、内角への制球に長けた左のパワーピッチャーで、スタミナもあり先発ローテ候補だが、強気な投球スタイルを活かしリリーフへの期待も高まる。

 2位で中森俊介(明石商高・投手)の獲得は大きかった。外れ1位指名もあると思っていたので、ロッテの指名順位が21番目でよく残っていたと思う。今年の高卒投手のなかでは実績は一番で、高校生ながら即戦力評価を受けるのも頷ける。

 3位の小川龍成(国学院大・内野手指名も悪くはないが、小川は遊撃の守備はピカ一で俊足だが、打力に課題がある。リーグで最も失策数が少なく、レギュラーの藤岡と同じタイプだけにどう活用するか注目したい。

 4位の河村説人(星槎道都大・投手)は190センチの長身右腕で、即戦力と言うよりは伸びしろが期待される大学生。5位の西川僚祐(東海大相模高・外野手)は、高校通算55本塁打スラッガーで、まだ粗削りだが将来性は高く、3~4年後の主力を目指したい。

 育成選手は4人の指名で、注目は育成3位の山本大斗(開星高・外野手)。西川と同様、右打ちのスラッガーで逆方向にも長打を打て、強肩で守備も良く2年以内での支配下が目標になる。

 1~2位の指名は上出来で、全体的に的確な補強ができ悪くないが、3位以降で最大の弱点である打てる野手の獲得(特に右打ち)が出来ず、高校生捕手の獲得も育成での補強になった。事前に本指名が5名と表明し、育成を増やすと言っても4名ではインパクトも不十分だった。

 

△広島(65点)

 リーグ3連覇したのは僅か3年前だが、もっと経ったような感じを受け、Bクラス常連だった暗黒期の不安が押し寄せてきた。私は以前より極端に育成路線に舵を取ったドラフトに過信とも言える心配があった。思った以上に若手が伸びず、自慢の育成が進まないなか今年は即戦力中心の指名になった。

 今年は投手陣が崩壊したなか、1位は単独で栗林良史(トヨタ自動車・投手)を指名した。高橋(中日)が進学していれば、中日と間違いなく競合していたので、広島にはラッキーな形になった。栗林は153キロのストレートを軸に変化球の精度も高く、高校時代は野手でフィールディングも良く、先発ローテでも計算できる即戦力だ。

 2位以下も即戦力投手で占め、森浦大輔(天理大・投手)は、細身だが大きな故障もない体の強さもセールスポイントで、制球力の良い技巧派左腕だ。高い制球力ゆえにゲームメークにも長け、栗林とともに先発ローテ入りの期待がかかる。

 3位の大道温貴(八戸学院大・投手)もゲームメークに長け、スライダーが武器のバランスの良い投手で、制球力も良くスタミナも十分だ。タフな選手だけにリリーフでの適性もあるが、先発が主戦場でルーキー3人開幕ローテ入りも夢ではない。

 4~5位も投手で、4位の小林樹斗(智弁和歌山高・投手)は外れ1位指名の可能性もあった逸材で、昨夏より急成長した将来のエース候補だ。5位の行木俊(四国IL徳島・投手)は、高身長から投げ下ろす速球とスライダーが武器の本格派。まだ19歳で投手経験は高2からという素質型の投手。

 6位で唯一の野手で、強肩と堅守、俊足の矢野雅哉(亜大・内野手を指名した。3年秋には首位打者も獲得しており、6位ながら即戦力として評価が高い。育成指名は二俣翔一(磐田東高・捕手)一人だけで、本指名されなかったのが意外だった。捕手ながら一番打者を務める俊足で打撃も良く、育成から正捕手を目指す。 

 ドラフト自体は悪くなく、かつての十八番の社会人1本釣りは広島らしく、現状を考えれば投手中心の指名は納得できる。また、ポスト鈴木で元(オリックス)を2~3位で指名を検討していた記事を見てさすがだと思った。

 ただ、3連覇しているときのドラフトの失敗(言い切るのはまだ早いが…)から大きく方向転換し補強型のドラフトになったのがチーム方針として疑問が残った。

 

ソフトバンク(60点)

 昨年は1位で石川昂(中日)、今年も佐藤輝(阪神)を指名したように野手の世代交代が喫緊の課題と言える。確かにあの投手陣なら、即戦力投手は必要ない。今年はオール高校生の指名になったが、このような指名ができるのも選手層の厚いホークスならではで、補強ポイントを抑えたブレない姿勢はさすがと言える。

 1位指名の井上朋也(花咲徳栄高)は、高校通算50本塁打スラッガー三塁手で、1年夏はレギュラーとして甲子園優勝を経験している。遠くへ飛ばすパワーよりも、逆方向にも打てる技術も持ち合わせており、将来の中軸を担える素材。また、3年夏には一番打者を務めるなど足も早く、しっかり体を作りポスト松田の座を射止めたい。

 2位以降の指名は名前を呼ばれるたびに驚いた。2位の笹川吉康(横浜商高・外野手)は名前を聞いたときは、思わず「誰?」と思った隠し玉だった。ただ、プロフィールを見てみると193センチの大型外野手で、高校通算40本塁打、50メートル6秒の俊足で、柳田を彷彿させるようなスケール感の期待が高まる。

 3位の牧原功太(日大藤沢高・捕手)は総合力の高い捕手で、二塁送球1秒8の強肩だが、一番の自信は打撃と言い切る。2年時には50メートル6秒台の俊足で一番打者も務めた。本人も驚いていたが、下位指名予想のなか3位指名の高評価を受けた。

 4位の原田純平(青森山田高・内野手隠し球で、小兵ながらパンチ力もあり、守備範囲の広さと強肩、且つ俊足で今宮を思い起こさせる選手だ。5位はもっと隠し球田上奏大(履正社高・投手)で、今年の6月までは中堅のレギュラーから投手へ転向し、短い期間にストレートが150キロを超え、ドラフト指名までこぎつけた。

 育成選手は8名で高校生、大学生4名を指名した。育成1位の佐藤宏樹(慶大・投手)は、ケガさえなければ上位指名間違いないしの左腕。ドラフト直前の10月にトミージョン手術を受け、リハビリを兼ねながら育成からの主力を目指す。育成選手が数多く活躍しているチームだけに、佐藤宏にはベストなチームだったと言える。

 正直、井上以外はこの順位以外でも獲得できたと思う。ただ、クローザーの森も指名当初は無名の2位指名で、見込んだ選手を他球団との駆け引きなしに上位でも指名していく根本イズムを感じた指名になった。

 一方であまりにも隠し玉すぎたのも事実で、今回の指名が結果が出るのは3~4年後で、これはこれで楽しみが増えた。

 

△DeNA(60点)

 ここ数年、DeNAをドラフト巧者と呼ぶ声もあるが、私はそうは思えない。おそらく単独指名の成功を見て評していると思うが、ここ数年は重複抽選のリスクを回避して本気でチームを強くしようとする姿勢を感じない。

 おそらく今年も単独指名になるんだろうな…と思って中継を見ていて、早川(楽天)に栗林(広島)、佐藤輝(阪神)を避けての入江大生(明大・投手)指名を見て驚きさえ感じなかった。

 確かに競合は外したときのリスクはあるが、結果抽選で外したが有原(日本ハム)や東浜(ソフトバンク)、松井(楽天)などのエース級は競合覚悟でないと獲得できない。ここを避けていてばかりでは強いチームにはならないと思う。

 前置きが長くなったが、入江は甲子園で優勝したときは4番一塁だったが、今井(西武)が台頭するまではエースで、大学で投手に専念した。3年時までは素質は評価されつつも結果が出なかったが、今年のリーグ戦で153キロ右腕まで成長し、伸びしろもある素質型と言える。

 2位の牧秀悟(中大・内野手の指名は良かった。巧みなバットコントロールで広角に打てる右のスラッガーで、レギュラー不在の二塁と遊撃を本職としており、開幕スタメンも夢ではない。

 3位は地元の松本隆之介(横浜高・投手)で、将来性抜群の左腕だ。188センチの長身から肘を柔らかく使い152キロのストレートを投げ込み、変化球の精度も高い。4位の小深田大地(履正社高・内野手は、名門校で1年よりレギュラーを務め、昨夏の甲子園では3番を打った。高校通算34本塁打の長打力に加えミート力が高い。

 5位は唯一の社会人の池谷蒼大(ヤマハ・投手)で、社会人3年目の21歳の若さも魅力。最速140キロ後半の本格派左腕で、リリーフで結果を出しそうだ。6位も左腕の高田琢登(静岡商高・投手)は、もっと順位が高いと思っていた。最速140キロのストレートを軸に、変化球を駆使した巧みな投球術が武器に三振を奪う。

 育成指名は2名で、いずれも投手。育成1位の石川達也(法大・投手)は、同じ左腕の鈴木(ロッテ)や高田(楽天)の陰に隠れたが、プロでの逆転を狙う。

 今年も指名自体は悪くないが、投手偏重の指名になり。正捕手不在のなか即戦力捕手の獲得や、リーグ最下位の盗塁数を補える俊足の選手の獲得がなかったのはマイナスポイントだ。それよりも1位指名が軽い印象を受け、楽天と同様に場当たり的な指名でチームの方針を感じないのが残念だ。

 

△巨人(55点)

 今年は早々と、1位指名は即戦力野手で、外したときは即戦力投手と明言し、ドラフト前に予想通り佐藤輝(阪神)指名を公言した。ただ、クジ運の悪さは相変わらずで、原監督は引くときにすでに当たりクジはなく、遂に連敗が10まで伸びた。

 佐藤輝を外したあとの即戦力投手を誰にするか注目していたが、平内龍太(亜大・投手)指名は驚いた。右肘手術後の今夏より一気に評価を上げて、外れ外れ1位くらいかなと思っていたところ、いの一番に平内にいった。最速150キロのストレート制球力も高く、抑えの適性が高いが、先発でも結果を残しており起用法に注目したい。

 2位の山崎伊織(東海大・投手)も驚いた。肘の故障さえなければ間違いなく1位で消えていた選手だったが、6月にトミージョン手術を受け、今年は登板なし。社会人志望からプロ志望に切り替えての指名だった。

 3位の中山礼都(中京大中京高・内野手は、走攻守三拍子揃った遊撃手で、左右に打ち分けるバットコントロールに守備も堅実。50メートル5秒9の俊足で、将来のリードオフマン候補。4位の伊藤優輔(三菱パワー・投手)は、総合力の高いパワーピッチャーでプロではリリーフに適性がありそうで、巨人では出番が増えそうだ。

 5位の秋広優人(二松学舎大高・内野手は身長2メートルの大型野手で、高校では投手で4番。規格外のパワーが魅力で高校通算24本塁打で二刀流での活用もあるかもしれない。6位の山本一輝(中京大・投手)は珠持ちの良い左腕で、フォームから技巧派と思われがちだが、ストレートとカットボールが武器の本格派。7位の萩原哲(創価大・捕手)は強肩とインサイドワークの評価が高いが、打点王も獲得した打力も魅力だ。山本と萩原ともに指名をほぼ公言したなか、その通りの指名になった。

 今年の巨人は育成を史上最高の12名を指名した。指名した選手を見ても本指名も有力視された選手が並び魅力的だ。完全に贔屓だが、注目は私の地元北海道の育成8位の阿部剣友(札幌大谷高・投手)で、秋広と同じ身長2メートルの大型選手。この身長の左腕は見たことがなく、どう成長するか楽しみだ。

 今年の巨人は下位指名は良かったが上位指名が気になった。菅野の流失が懸念されているなか、即戦力投手の獲得は絶対に必要だが、平内も山崎も故障明けで補強よりも将来性を感じた指名になった。また、課題の即戦力野手の指名もゼロで、当初の課題を十分に埋めたドラフトにはならなかった。

 また、今ドラフトとは直接関係ないが、鍬原と堀田のドラ1投手がオフに育成選手になった。鍬原は今年、原監督の薦めでフォームを変えたばかり、堀田は故障中とは言え昨年の1位投手である。ドライと言えばそれまでだが、1位選手をおいそれと育成に直ぐにする姿勢は如何かと思う。時期は前後するが、こういった現状を見ると本当に山崎をきちんと面倒を見るのか疑問に思ってしまう。

 

×西武(50点)

 評価は低くしたが、個人的には好きなドラフトになった。昨年までの山賊打線が影を潜め、主力と控え選手の差を埋めれなかった。頼りはともに38歳の栗山と中村の両べテランで野手の補強と世代交代が課題だった。一方で投手陣はリリーフ陣の底上げは進んだが、先発陣がピリっとせず相変わらずチーム防御率最下位に沈み、特に先発左腕の不足は深刻だった。

 早川(楽天)と佐藤輝(阪神)が候補のなか、ここ数年のウィークポイントである先発投手陣強化を選択した。早川を外したあと呼ばれた名前は渡部健人(桐蔭横浜大内野手で、この日1番のサプライズになった。

 渡部は体重112キロの巨漢の大砲で、とにかく遠くに飛ばす能力はけた違いで、さらにバットコントロールも良く、打撃も柔らかい。中村と同様に、巨漢ながら器用で足も遅くなく、三塁守備も巧く、ポスト中村にはもってこいの選手だ。個人的に注目していた選手で、下位指名を予想していただけに、1位指名は嬉しかった。

 2位の佐々木健(NTT東日本・投手)も驚きで、社会人投手ながら、粗削りの未完成選手で、投手が豊富なチームならまだしも、西武が2位指名するとは思わなかった。ボール自体は悪くないが、総合力に欠点がありどう成長するか期待して見てみたい。

 3位の山村崇嘉(東海大相模高・内野手は、2年夏から名門校で4番を打った左のスラッガーで、高校通算49本塁打を放った。今年は投手も務め、本来の三塁から遊撃も守るなど野球センスの塊で、将来の中軸候補。

 4位も野手で若林楽人(駒大・外野手)は、50メートル5秒8の俊足で1番中堅候補。今夏パワーアップしてパンチ力もつき、急成長を遂げた。5位の大曲錬(福岡大・投手)は準硬式で154キロを投げる本格派で、こういった隠し玉選手の指名は西武の十八番で“らしさ”を感じた。

 6位のタイシンガー・ブランドン大河(東農大北海道オホーツク・内野手)は、名前にインパクトで話題になったが、1年から主力を務めるスラッガーで対応力が高い。8位の三河優太(大阪桐蔭高・外野手)は、投手として入学するも打力を買われて野手へ転向。パワフルなスイングで長打力があり、山村と並び将来の主軸候補だ。

 育成は5名で、ここでも野手を2名指名している。注目は育成1位の赤上優人(東北公益文化大・投手)で、元々は内野手で入学も1年秋に投手へ転向し、リーグ戦で2年連続最多勝を獲得した先発候補で、早く支配下で見てみたい選手の一人だ。

 

 今年のドラフトでは数々の驚きがあったが、嬉しかったのは私の地元北海道関連の選手が、育成含め8名も指名された。ついに道内のレベルもここまで上がったかと嬉しかった。個人的な話になったが、是非このなかから主力選手や記憶に残る選手が数多く現れることを期待したい。

2020年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(前編)

 今年は総じて見ると、各チームそれぞれがポイントを抑え、大きな成功も失敗もないドラフトになったと思う。そのなかでも最も上手くいったのは阪神、良く言えば冒険、悪く言えば首を傾げたのが西武だった。ただ、ドラフトの成果が出るのは5年後で、そのときに評価がどう変わるかのか期待が膨らむ。

【12球団ドラフトの評価】

 ◎成功…阪神

 〇合格…日本ハム・中日・オリックス楽天・ヤクルト

 △普通…ロッテ・広島・ソフトバンク・DeNA・巨人

 × 失敗…西武 

 

 コロナ禍のなかで、指名人数減も懸念されたが、今年の本指名選手は74名で、昨年と同数だった。高校生が30名(▲5名)、大学生が32名(+7名)、社会人・独立リーグが12名(▲2名)で、最多指名は阪神の8名、最小はソフトバンク、ロッテの5名で、2年連続で最小の指名になった。

 今年は1位指名に大学生が9名、高校生が2名、社会人が1名と大学生に集中した。コロナ禍のなか甲子園は春夏中止、社会人も全国大会でアピールする場を失い、リーグ戦が中心の大学生に結果集中した。 

 

阪神(85点)

 今年最高の評価をしたのは阪神だ。ドラフトは希望の1位指名選手が獲得できれば成功と言えるが、アマナンバーワン野手の佐藤輝明(近大・内野手を4球団競合のなか獲得できた。まだ粗削りな部分はあるが、走攻守にレベルが高く、一番の魅力は長打力で、将来大山とのクリーンアップに期待が膨らむ。

 阪神のドラフトに最高点を点けたのは、2位以下でも欲しい選手を欲しい順位で獲れたからだ。2位の伊藤将司(JR東日本・投手)は技巧派の左腕で、先発・リリーフともに適性があり、先発左腕が高橋遥のみ、リリーフでも能見の退団が決定的でなかで大きな補強になった。

 3位の佐藤蓮(上武大・投手)は、良い意味で驚いた。阪神もこのような素質型の大学生を上位指名するようになったんだ、と感慨深げに見ていた。佐藤は故障で今年まで登板がなく、故障が癒えた今秋に150キロを連発し、まさに未完の大器だ。

 4位の榮枝裕貴(立命大・捕手)は、阪神が早くに評価していた選手で、守備力が高く梅野の後継候補として、年齢バランスでも会心の指名になった。5位の村上頌樹(東洋大・投手)は、よくこの順位まで残っていたなというのが率直な感想で、高いゲームメーク能力は先発ローテに喰い込む可能性も十分にある。

 6位では俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎・内野手を獲得。中野は堅実な遊撃守備で、12球団ワーストの失策数のなか、レギュラー獲得も夢ではない。7位は唯一の高校生で高寺望夢(上田西高・内野手を指名した。高寺は高校通算31本塁打に、50メートル6秒の俊足で、合同練習会で結果を出して一躍ドラフト候補になったシンデレラボーイだ。8位の石井大智(四国IL高知・投手)は、シンカーが武器の奪三振率の高い投手で、リリーフ陣の層が厚くなる。

 育成選手は岩田将貴(九産大・投手)のみで、岩田は3年春にトミージョン手術を受け復活した左のサイドハンドで、リリーフとして重宝しそうだ。

 今回は補強ポイントを万遍なく指名し、会心のドラフトと言える。一方で育成下手と言われるチームが、佐藤をどう育て行くかに注目したい。あの柳田でさえ、主力に定着したのは4年目で、佐藤を辛抱強く育成できるか…チームの手腕が問われる。

 

日本ハム(80点)

 毎年、その年の1番の選手に行く方針だが、今年はやや違う趣で伊藤大海(苫小牧駒大)のを単独指名した。ただ、これは正しい選択で、伊藤は先発も抑えもできるが、150キロのストレートを武器に大学日本代表のクローザーを務めた実績から、抑えが不在のチームの補強戦略とは合っている。また、伊藤は地元北海道出身で、地元出身の1位選手はマーケティング的効果も高い。どちらにしろ、北の大地に剛腕クローザーが降臨する日も遠くない。

 2位の五十幡亮汰(中大・外野手)は、俊足が注目されているが打力も向上し、走攻守揃った即戦力だ。MLB挑戦を表明している西川の後継者にピッタリで、理想的なリードオフマン候補だ。1年目にレギュラーを獲得できなくても、いま注目されている代走要員として、ベンチに居るだけで相手にプレッシャーをかけられる。

 3位の古川裕大(上武大)の指名には少し首を傾げた…。古川は良い選手だが、22歳~25歳のなかに捕手が5名もひしめき年齢バランスが悪い。主力の清水や宇佐見は、野手に転向するほど打撃が良い訳でもなく、古川の起用法が現時点では見えない。

 4位と5位では高校生を指名し。4位の細川凌平(智弁和歌山高・外野手)も俊足の内外野守れる巧打者で、高校の先輩でもある西川の後継者を狙える逸材だ。5位の根本悠楓(苫小牧中央高・投手)は小柄ながら、中学時に全国制覇した左腕で、下位ながら将来のエース候補と言える。

 6位の今川優馬(JFE東日本・外野手)は、正直もう少し評価が高いかなと思っていた。遠くに飛ばすフルスイングが魅力で、パワーヒッターながら俊足で守備も巧い。未だにファイターズのファンクラブ会員の道産子で、指名された瞬間に号泣した姿が忘れられない。今年は3名の地元北海道の選手を指名し、道内のファンを喜ばせた。それぞれが活躍して新球場移転の際、主力に成長してくれれば最高だ。

 育成選手は2名指名し、育成1位の松本遼大(花巻東高・投手)は長身から投げ下ろすストレートに威力があり、スケールの大きい投手で焦らず支配下を勝ち取りたい。

 マイナス面を挙げれば、今年は先発・抑えともやり繰りが厳しく、エース有原のMLB移籍の可能性もあるなか、投手の指名が少なく補強としては不十分だと思う。また、レギュラー不在の三塁手獲得の課題も解消されなかった。

 

○中日(75点)

 正直、いまの中日に必要なのは野手で、佐藤(阪神)の指名がベストだと思ったが、今年も有望な地元選手の獲得が優先された。かつては槙原や工藤、イチロー、最近では千賀と、地元の有望選手を逃したのを避けたかったのか、最終的には高橋宏斗(中京大中京高)に決め、競合も予想されるなか単独指名を成功できたのは大きい。

 地元志向への縛られ過ぎを懸念しつつも、今年のドラフトもチームの姿勢としては素晴らしいと思う。中日の課題は多く、長打力も機動力も不足しており、エース大野雄のFA移籍の可能性など、状況的に即戦力で固めたいところを、一昨年の根尾、昨年の石川昂に続き、素質豊かな高校生を指名した。

 高橋宏は正真正銘のエース候補で、ストレートの質が高く変化球の精度も高い。根尾がリードオフマン、石川昂が4番、そして高橋宏がエースになったチームはファンならずとも期待が集まる。

 2位の森博人(日体大・投手)も1位で消えてもおかしくなかった投手。スリークオーター気味の腕の位置から投げ込むストレートとカットボールが武器で、先発・リリーフともに適性が高い。ちなみに森も地元の愛知出身だ。

 3位の土田龍空(近江高・内野手は強打の遊撃手で、高校生離れした守備力は既にプロでも十分通用する。ミートの巧い巧打者タイプだが、高校通算30本塁打とパンチ力もあり、打撃が課題の京田もうかうかしていられない。

 土田に続き、4位と5位もともに高校生指名で。4位で左腕のパワーピッチャー福島章太(倉敷工高・投手)、5位の加藤翼(帝京大可児高・投手)は、夏から評価を上げた伸びしろ十分の右腕で奪三振率が高く、ともに将来が楽しみだ。

 6位の三好大倫(JFE西日本・外野手)は、社会人3年目まで投手を務め、野手転向1年でプロ入りした左打ちで、ポテンシャルの高さが魅力だ。大島以外レギュラー不在の手薄な外野陣の一角を担いたい。

 育成指名は3名で全員が投手だ。注目は個人的ではあるが、育成1位の近藤簾(札幌学院大・投手)で、母校にそれほどの思い入れはないが、同校初のプロ野球選手で、やはり指名されると嬉しいもので応援したい。

 マイナスポイントは、課題の攻撃陣のなかで、即戦力の二塁手スラッガーを獲得できなかったのが残念だったが、全体的には良いドラフトになり3年連続の成功ドラフトと言える。

 

オリックス(75点)

 オリックスも中日と同じ感想を持った。優勝から遠ざかること四半世紀、6年連続Bクラス、そして2年連続の最下位に沈んだ。今年は早々に佐藤(阪神)指名を公表するも、抽選に敗れ残念ながら獲得できなかったが、ここからのオリックスの指名には驚かされた。

 目先の結果に捕らわれれば、そのまま即戦力指名に行くところを、昨年に続き将来に目を向けた指名になった。当然、賛否もあるが私はオリックスの姿勢を評価したい。

 1位指名の山下舜平大(福岡大大濠高・投手)は、最速154キロのストレートが武器で、変化球はカーブしかないが、これは監督の方針で投げさせなかっただけで、まさに未完の大器という言葉がふさわしい。

 2~3位では高校生外野手を指名し、2位の元謙太(中京高・外野手)は、恵まれた体格から放つ飛距離が魅力のスラッガーで将来の4番候補。元々は投手で広島の鈴木誠のような打者に成長する可能性を秘めている。

 3位は来田涼斗(明石商高・外野手)で、高校通算34本塁打を放つ長打力と俊足が魅力で、将来はトリプルスリーも狙える。2番大田、3番に来田、4番に元、5番で昨年2位の紅林など並ぶと、想像するだけで本当にワクワクしてくる。そういう可能性を秘めた上位指名になった。

 4位のサブマリン中川颯(立大・投手)の指名も良かった。4年時には不調で評価を落としたが、エースとしてチームを支えた。思い返せば、同じサブマリンの高橋礼も4年時は不調だったが、結果新人王を獲得するなど、高橋礼がダブって見える。

 5位の中川拓真(豊橋中央高・捕手)は年齢的にも必要な補強で、高校通算42本塁打の長打力と強肩で将来の正捕手候補。6位の阿部翔太(日本生命・投手)は即戦力で、最速151キロのストレートに制球力も良く、強気な投球はリリーフで重宝しそうだ。

 昨年8名指名した育成選手も、今年も多く6名指名した。注目は3位の宇田川優希(仙台大・投手)で、上位指名もあると思っていたので、育成指名は意外だった。入団に難色を示しているという報道を目にしたが、是非評価を見返してほしい。

 育成路線は評価したものの、課題の即戦力クローザーや三塁手の獲得はままならず、満点とは言えなかったが、ブレないチーム方針を垣間見たドラフトで、その成否は3~5年後に分かる。

 

楽天(70点)

 今年は4球団競合のなか、即戦力左腕の早川隆久(早大・投手)を見事引き当てた。先発の柱の岸、涌井、則本がともに30歳を超え、期待の松井は先発で結果を残せず終盤はリリーフに回っている。リーグ最多の逆転負けの状況から見ても、先発・リリーフともに投手陣の補強が必要だった。

 1位の早川は155キロの本格派左腕で、変化球の精度も高い。ゲームメークにも長けており、今秋のリーグ戦では圧巻の投球を見せた。当然、先発ローテーション候補で、リーグ屈指の打線をバックに10勝も夢ではない。

 2位の高田孝一(法大・投手)も最速150キロを超える右の本格派で、躍動感あふれるフォームから投げ込むストレートの質と変化球のキレが抜群だ。基本は先発だが、手薄なリリーフへの適性も高いと思う。

 3位で即戦力左腕の藤井聖(ENEOS)を獲得できたのも大きく、よくこの順位まで残っていたを思う。藤井も150キロを超えるストレートを武器に、社会人で急成長した投手で、先発タイプだがリリーフ左腕が不足している状況から出番が増えそうだ。

 4位と6位も投手で、4位の内間拓馬(亜大・投手)も最速150キロの右の本格派だが、即戦力というよりは、素質型の大学生で伸びしろが評価された。6位の内星龍(履正社高・投手)は、昨夏の甲子園優勝時はメンバー外も、冬に急成長を遂げ秘めたポテンシャルが魅力。

 5位は唯一の野手で、地元の入江大樹(仙台育成高・内野手を指名した。柔らかいグラブさばきと強肩の遊撃手で、将来性抜群のスラッガーだ。育成は石田駿(BC栃木・投手)のみの指名になった。

 早川を獲得でき、上位3人で即戦力投手を獲得して成功と言えるドラフトだが、楽天のドラフトは目先のことだけに目を奪われて、将来どういうチームにしたいのかという方針を感じず、個人的に魅力を感じない。今年も1位で早川を獲得できたなら、せめて3位までで年齢的にも必要だった高校生投手を指名してほしかった。 

 

〇ヤクルト(70点)

 とにかく投手が欲しい!今年のヤクルトのテーマは明確だった。早川(楽天)を外し、鈴木もロッテとの競合に敗れたが、1位で木澤尚文(慶大・投手)を獲得できたのは、外れ外れ1位指名でも成功だと思う。

 木澤は競合を避けての単独指名もあると予想していたので、12番目で残っていたのは幸運だと思った。最速155キロのパワーピッチャーで、とにかくハートが強く、まさにクローザーが適任で、短いイニングでその能力が活かされると思う。

 2位では左腕の山野太一(東北福祉大・投手)を指名し、早川と鈴木指名がここで活きてきた。昨年までリーグ戦無敗で、公式戦70イニング連続無失点の記録も持つ。多彩な変化球を駆使して、奪三振能力も高く手薄な先発陣に喰い込む可能性は十分にある。

 3位は打てる捕手の内山壮真(星稜高・捕手)を獲得。昨夏の甲子園準優勝時の主力で、高校通算34本塁打スラッガーだ。年齢的にも高校生捕手が必要で、ポスト中村の座を狙える。また、昨年までは遊撃手を務めておりコンバートの可能性もある。

 4位以降の指名も、チームの課題を抑えた的確な指名になった。4位の元山飛優(東北福祉大内野手は、高い遊撃守備が評価される一方、リーグ戦で首位打者打点王も獲得している。まずは得意の守備からアピールして、正遊撃手候補に名乗りを上げたい。5位の並木秀尊(独協大・外野手)は、五十幡をも凌ぐ俊足で、打撃は発展途上だが文字通り足だけで飯が食える選手だ。

 6位の嘉手苅浩太(日本航空石川高)もよくこの順位まで残っていたと思う。長身から投げ下ろす威力十分のストレートが武器のパワーピッチャーで、将来に主戦になれる可能性は高い。

 育成では4名指名し、そのなかで育成1位の長身左腕・下慎之介(健大高崎高・投手)に注目したい。まだ好不調の波が大きいが、伸びしろ十分で早い段階での支配下登録が期待できる。

 さすがに2年連続の最下位ということもあり、課題が多く、すべてを補強することは難しかったが、先発左腕にクローザー候補、将来の正捕手候補に俊足巧打の野手と最低限の補強はできたと思う。また、育成選手を4名指名したのもチーム強化の姿勢を昨年以上に感じたドラフトになった。あとはオフのFA選手の去就だけが心配だ…。 

2020年~ドラフト候補選手100名

 昨年はこの時点で6球団が指名を公言していたが、現時点では3球団が1位指名を公言している。オリックスが大学ナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)、ロッテが即戦力左腕の早川隆久(早大)、そして日本ハムが大学日本のクローザー伊藤大海(苫小牧駒大)の1位指名を公言した。

 他球団の動向は、氏名こそ明かしてはいないが、巨人と阪神が即戦力の野手1位を公言し、ソフトバンクも佐藤の指名が濃厚だ。中日は今年も地元選手指名で高橋宏斗(中京大中京高)の指名が確実と言える。広島とヤクルトは即戦力投手、楽天は投手指名、DeNAと西武は最終日まで迷いそうな気配だ。

 当初、大学進学を表明していた高橋がプロ志望に切り替えたことで、指名戦略が変わったチームもあり、当日どんなサプライズがあるか注目のドラフトになる。

 

1位入札候補(1回目)

 佐藤 輝明(近大・内野手)…オリックス阪神・西武・巨人・ソフトバンク

 早川 隆久(早大・投手)…ヤクルト・広島・ロッテ

 高橋 宏斗(中京大中京高・投手)…楽天・中日

 伊藤 大海(苫小牧駒大・投手)…日本ハム

 木澤 尚文(慶大・投手)…DeNA

1位入札候補(2回目)

 中森 俊介(明石商高・投手)…大舞台も経験し、完成度の高いエース候補

 山下舜平大(福岡大大濠高・投手)…最速153キロの将来性豊かな未完の大器 

 牧  秀悟(中大・内野手)…大学ジャパンの4番を務める右のスラッガー

 栗林 良史(トヨタ自動車・投手)…変化球も抜群の本格派右腕の即戦力 

1位候補

 入江 大生(明大・投手)…今秋で一気に評価を上げた153キロ右腕の大器

 大道 温貴(八戸学院大・投手)…完成度が高くゲームメークに長けた右腕

 五十幡亮汰(中大・外野手)…超がつく俊足で打撃も開花し1位候補へ

2位候補

 小林 樹斗(智弁和歌山高・投手)…152キロの直球と精度の高い変化球

 松本隆之介(横浜高・投手)…長身から投げ下ろす角度のある直球が魅力

 来田 涼斗(明石商高・外野手)…将来トリプルスリーを狙える大型野手

 森  博人(日体大・投手)…直球のキレと制球力抜群スリークオーター

 鈴木 昭汰(法大・投手)…内角への制球力に長けた強気の本格派左腕

 平内 龍太(亜大・投手)…故障を克服し156キロの直球で高い奪三振

 宇田川優希(仙台大・投手)…球速以上に感じる伸びのある直球が武器

 山野 太一(東北福祉大・投手)…リーグ戦無敗の左腕で、変化球が多彩

 古川 裕大(上武大・捕手)…大学ナンバーワンの強肩強打の打てる捕手

 大江 克哉(NTT西日本・投手)…最速150キロの直球と巧みな投球術

 藤井  聖(ENEOS・投手)…社会人で急成長した即戦力左腕 

 伊藤 優輔(三菱日立パワー・投手)…総合力の高い155キロリリーバー

3位候補

 高田 琢登(静岡商高・投手)…高校生離れした投球術で完成度が高い

 加藤  翼(帝京大可児高・投手)…評価が急上昇し上位候補に躍り出た

 井上 朋也(花咲徳栄高・内野手)…高校通算50本塁打で技術も備える

 西川 僚祐(東海大相模高・外野手)…高校生離れの体格で通算55本塁打

 高田 孝一(法大・投手)…スピンの効いた150キロで押す投球が身上 

 村上 頌樹(東洋大・投手)…高い制球力でゲームメークに長けている

 小郷 賢人(東海大・投手)…リーグ戦で防御率0点台の絶対的な守護神

 森浦 大輔(天理大・投手)…制球力に優れ、緩急で打ち取る技巧派左腕

 佐々木 健(NTT東日本・投手)…制球力が課題も経験値高い左の剛腕

 山本 晃希(かずさマジック・投手)…155キロのパワーピッチでを威圧

 今川 優馬(JFE東日本・外野手)…攻撃的二番で好守に優れた大砲

 田澤 純一(BC武蔵・投手)…メジャーで実績十分。ネックは年齢だけ 

4位候補

 根本 悠楓(苫小牧中央高・投手)…小柄だがテンポの良い投球が魅力腕

 牧原 功太(日大藤沢高・捕手)…超高校級の強肩で、夏から評価が急上昇

 土田 龍空(近江高・内野手)…鉄壁の遊撃守備で走攻守に優れた素質の塊

 細川 凌平(智弁和歌山高・内野手)…1年からレギュラーの俊足で外野も

 小深田大地(履正社高・内野手)…通算34本塁打で打撃は高校トップレベ

 萩原  哲(創価大・捕手)…守備力が魅力も、リーグ戦では打点王も獲得

 榮枝 裕貴(立命大・捕手)…通算打率4割の巧打の捕手で、魅力は強肩

 元山 飛優(東北福祉大内野手)…遊撃守備だけなら既にプロレベル

 小野 大夏(ホンダ・投手)…高校時代は捕手の馬力のある本格派右腕

 伊藤 将司(JR東日本・投手)…高校・大学と常に主戦で経験豊かな左腕

 森井 紘斗(セガサミー・投手)…恵まれた体格で、伸びしろ十分の21歳

 上川畑大悟(NTT東日本・内野手)…守備が超一級品で俊足、課題は打撃

5位候補

 川瀬 堅斗(大分商高・投手)…精度の高い変化球も武器で大化けの可能性

 内山 壮真(星稜高・捕手)…通算34本塁打の強打の捕手で、リードも成長

 二俣 翔一(磐田東高・捕手)…捕手ながら1番打者を打つ俊足と長打力

 度会 隆輝(横浜高・内野手)…バットコントロールに長けた攻撃的二塁手

 山村 崇嘉(東海大相模高・内野手)…広角に打つ長距離砲守備力も向上

 中山 礼都(中京大中京高・内野手)…名手・宮本慎也が絶賛した遊撃手  

 元  謙太(中京高・外野手)…投手としても非凡で、パンチのある打撃

 赤上 優人(東北公益文化大・投手)…リーグ戦で2年連続最多勝を獲得

 山崎 伊織(東海大・投手)…右肘の手術から復活なるか、実力は1位級

 並木 秀尊(独協大・外野手)…打撃や守備は課題も足だけで飯が食える

 平山  快(JFE東日本・内野手)…逆方向へも打てる右の長距離砲

 前川  哲(BC新潟・投手)…156キロの本格派サイドで念願のプロへ 

6位候補

 小牟田竜宝(青森山田高・投手)…角度のある直球と落ちるカーブが武器

 秋広 優人(二松学舎大高・投手)…身長2mで野手指名の可能性もあり

 内田 了介(埼玉栄高・投手)…150キロの直球で力で押す投球は素質十分

 豆田 泰志(浦和実高・投手)…全身を使った投球で総合力の高い右腕

 下 慎之介(健大高崎高・投手)…長身を活かす伸びしろ十分の大型左腕

 嘉手苅浩太(日本航空石川高・投手)…力強い直球で進化を遂げる怪童

 常田 唯斗(飯山高・投手)…柔らかい肘の使いかたで総合力が高い 

 関本 勇輔(履正社高・捕手)…主将で4番の通算20本塁打の打てる捕手

 河村 説人(星槎道都大・投手)…192センチの長身から放つ直球が武器

 高野 脩汰(関西大・投手)…直球と変化球で奪三振率の高い左腕

 松本 竜也(ホンダ鈴鹿・投手)…キレ味鋭い150キロ。課題はスタミナ

 峯本  匠(JFE東日本・内野手)…勝負強い左の巧打者で俊足も武器

下位候補

 片山 楽生(白樺学園高・投手)…しなやかな腕の振りのクレバーな右腕

 小辻 鷹仁(瀬田工高・投手)…高校で急成長したスリークオーター

 古谷 将也(成田高・捕手)…長打も打てる強肩で、俊足で1番も打つ

 入江 大樹(仙台育英高・内野手)…1年からレギュラーでメジャーを公言

 蔵田亮太郎(聖望学園高・内野手)…攻守にスケール感のある大型遊撃手

 高寺 望夢(上田西高・内野手)…巧みなミート力で合同練習で結果

 奥村 真大(龍谷大平安高・内野手)…力強いスイングで三塁守備も軽快

 西野 力矢(大阪桐蔭高・内野手)…体重90キロの巨漢でパワーのある大砲

 石川 慧亮(青藍泰斗高・外野手)…合同練習会で見せたパワーは圧巻

 漁府 輝羽(おかやま山陽高・外野手)…通算24本塁打の勝負強い右の大砲

 寺本 聖一(広島商高・外野手)…小柄な強打者で遠投115mの強肩も魅力

 奥野 翔琉(明徳義塾高・外野手)…50m5秒7の超俊足のスペシャリスト

 今西 卓弥(早大・投手)…身長2m左腕で将来は早川を凌ぐ可能性もある

 佐藤 宏樹(慶大・投手)…ドラフト前に手術も、故障がなければ上位候補

 中川  颯(立大・投手)…ドラフト候補のなかで数少ないサブマリン

 佐藤  蓮(上武大・投手)…故障が癒え、今年ベールを脱いだ本格派右腕 

 大曲  錬(福岡大・投手)…準硬式からプロ入りを目指す伸びしろが魅力

 益田 武尚(北九州市立大・投手)…九州の隠し球右腕で高い奪三振

 矢野 雅哉(亜大・内野手)…抜群の走塁と守備に加え、打撃も成長中

 渡部 健人(桐蔭横浜大内野手)…巨漢の長距離砲だが走塁と守備も良い

 平川 裕太(鷺宮製作所・投手)…強気な内角攻めでプロでも抑えを狙う

 相馬 和磨(日本通運・投手)…キレのある速球と変化球のリリーフ左腕

 西田 光汰(JR東日本・投手)…昨年もドラフト候補の右の本格派

 松向  輝(日本製鉄東海・投手)…故障も癒え、完全復活を遂げた左腕

 辻本 勇樹(NTT西日本・捕手)…打って走れる強肩捕手でリードも◎

 野村  勇(NTT西日本・内野手)…俊足と強肩でパンチ力もある

 中野 拓夢(三菱自動車岡崎・内野手)…走攻守でハイレベルな巧打者

 戸田 懐生(四国IL高知・投手)…一度は野球も断念の復活を遂げた

 

 今年は興味を引く選手が多く、元メジャーリーガーの田澤やケガが無ければ1位クラスの山崎や佐藤宏を指名するチームはあるか。また、度会や関本の2世選手、小郷や奥村、石川のような兄弟選手が誕生するか興味は尽きない。

 まずは100名紹介したが、今年はコロナ禍のなか豊作とも言われている。また、巨人やロッテ、ヤクルトは育成指名を例年より増やすと言っており、どの選手がどのユニフォームに袖を通すか楽しみで、運命の10.26が待ち遠しい。 

20年ドラフト予想☆ソフトバンク~盤石の投手陣と、世代交代が必要な野手陣。育成指名にも注目

●今年も主力が離脱するも、圧倒的な選手層で優勝間近

 つい最近まではロッテと優勝争いしていたが、シーズン終盤に地力の差が出て、一気に19連勝でマジックを点灯させた。

 ソフトバンクの強みは何といっても選手層の厚さだ。毎年、主力の離脱が相次ぎ、今年も投手なら甲斐野央(東洋大~18年①)や高橋純平(県岐阜商高~15年①)、野手では今宮健太(明豊高~09年①)やデスパイネを欠き、投打にベストメンバーとは言えず、打線の組み合わせは90を超える猫の目打線だが、選手層の厚さで乗り切ってきた。

 その打線の軸は柳田悠岐(広島経大~10年②)で、昨年38試合出場に留まったが、今年はフルに出場を果たし得点力が上がった。同じく中村晃(帝京高~07年高③)も今年は復活を果たし、ともにチームを牽引している。ただ、他に規定打席に達しているのは、ベテランの松田宣浩(亜大~05年大社希)と今年ブレイクした栗原陵矢(春江工高~14年②)のみで多くない。

 規定打席には達していないが甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)が正捕手、グラシアルが4番を務め、今宮の穴は川瀬晃(大分商~15年⑥)が埋め、レギュラー不在の二塁手は周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)がはまった。周東は序盤までは代走、守備要員だったのが、打撃力も上昇し一番打者に定着。シーズン後半の快進撃は周東が支えたと言っても過言ではない。

 ここにスーパーサブたちが加わる。勝負強い明石健志山梨学院大高~03年④)、左キラー川島慶三九州国際大~05年大社日③)、内外野守れる牧原大成(城北高~10年育⑤)、代打の切り札の長谷川勇也専大~06年大社⑤)、釜元豪(西陵高~11年育①)や真砂勇介(西城陽高~12年④)も限られた出番のなかで仕事をした。

 投手陣は盤石だが、規定投球回数をクリアしている選手はいない。ただ、東浜巨(亜大~12年①)と石川柊太(創価大~13年育①)がともに復活の8勝を挙げ、エース千賀滉大(蒲郡高~10年育④)も勝ち星で並んでいる。ベテランの和田毅早大~02年自)も7勝、ショートスターターだが笠谷俊介(大分商高~14年④)は防御率2.60と立派な成績を残している。

 リリーフ陣も森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)がセーブ王を争い、モイネロはリーグ断トツの36ホールドを上げ、この2人が出ればまず勝利は間違いない。リーグ最多登板の高橋礼(専大~17年②)がロングリリーフを務め、左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)も43試合登板と鉄腕ぶりを発揮している。ここに若手の松本裕樹(盛岡大高~14年①)や泉圭輔(金沢星稜大~18年⑥)、ベテランの岩嵜翔市船橋高~07年高①)が加わり、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)や板東湧悟(JR東日本~18年④)の若手も勝ちパターンで起用された。

 まさにチーム内の競争力が、選手層の厚さに直結している。ただ、一方で野手陣の世代交代が進んでおらず、常勝チームを維持するにはポスト松田、柳田の育成が課題になってくる。

【10/20現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 105試合 61勝39敗5分①

 防御率…3.06①(3.63①)打率….249③(.251②)

 本塁打…115①(183①)盗塁83①(113③)

 得点462②(582④)失点356①(564①)得失点差106(18)

 

 ここ5年は高橋純を3球団、田中正義(創価大~16年①)を5球団競合のなか引き当てたがが残念ながら主戦にはなっていない。甲斐野も1年目にフル回転したものの、今年はケガで治療に専念している。ただ、高橋礼や杉山、板東、泉の18年組、今年は津森宥紀(東北福祉大~19年③)の即戦投手が期待通り戦力になっている。

 一方で野手は深刻で、ここ3年ホークスは1位で野手を指名し、17年は清宮幸太郎日本ハム)と安田尚憲(ロッテ)、18年は根尾昂(中日)と辰巳涼介(楽天)、昨年は石川昴弥(中日)を指名するも外し、実質戦力になっているのは川瀬だけで、これだけを見てもホークスの危機感が窺える。

ソフトバンクの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、年齢的に大学生投手

 捕 手…甲斐の控えの即戦力捕手

 内野手…二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補

 外野手…将来の主軸候補 

 

●盤石な投手陣の反して、野手の世代交代は喫緊の課題

☆投手~将来のエース候補、年齢的に大学生投手

 盤石の投手陣は年齢バランスも取れており、大きな穴は見当たらない。39歳の和田の下は31歳の岩嵜と嘉弥真まで下がり、大きく戦力が落ちることは考えにくい。和田の年齢的な衰え、千賀がメジャー希望しており先発が二枚抜ける可能性はあるが、本来は先発の高橋礼や松本、高橋純が控え、武田翔太宮崎日大高~11年①)や大竹耕太郎(早大~17年育④)が復活すれば問題はない。

 補強ポイントは、昨年高校生投手を指名していないので、さすがに2年続けて外す訳にはいかない。19歳~22歳までで5名(うち1名はスチュアートJr)と少なく、高校生と大学生に絞った指名になる。

 早川隆久(早大は当然リストアップしているが、上位は高校生指名が良いと思う。一番の候補は山下舜平大(福岡大大濠高)で、もしかしたら単独指名の可能性ある。このほかには小林樹斗(智弁和歌山高)川瀬堅斗(大分商高、左腕の高田琢登(静岡商高)は確実に上位で獲得したい。

 中位以降でも、秋広優人(二松学舎大高)は野手指名の可能性もあり、小辻鷹仁(瀬田工高)蓼原慎仁(桐生一高平安山陽(松山聖陵高)への評価が高い。地元の若杉晟汰(明豊高)八方悠介(鹿児島城西高)もリストアップしている。

 大学生では先発陣を厚くするなら大道温貴(八戸学院大赤上優人(東北公益文化大)、左腕の森浦大輔(天理大)、リリーフ強化なら小郷賢人(東海大が候補になる。森博人(日体大宇田川優希(仙台大)、左腕の鈴木昭汰(法大)はともに先発、リリーフともに適性があり、チーム状況でどのポジションを担うか楽しみだ。

 社会人では大江克哉(NTT西日本)は先発、岡田和馬(JR西日本はリリーフもできる即戦力左腕で投手陣をさらに厚くする。個人的には長身の変則サイドハンドの川瀬航作(日本製鉄広畑)などは、ホークスどどう化けるか見てみたい投手の一人だ。

 

☆捕手~甲斐の控えの即戦力捕手

 捕手は28歳の甲斐がレギュラーだが、二番手捕手の高谷裕亮(白鴎大~06年大社③)も来年は40歳の大台に乗る。栗原は捕手登録だが、外野が主戦で、海野隆司(東海大~19年②)と九鬼隆平(秀岳館高~16年③)が候補だがともに経験が不足している。また、栗原を除けば捕手が5人しかおらず、年齢的には不要だが、第二または第三捕手の即戦力選手が必要だ。

 今年は即戦力と呼ばれる捕手が少なく、上位なら古川裕大(上武大)、中位以降なら榮枝裕貴(立命大)辻本勇樹(NTT西日本)は、ともに守備力に長けている。高校生捕手は年齢的にも優先順位は高くなく、下位また育成で植幸輔(高野山高)長谷川勝紀(近江高)が候補になる。

 

内野手~二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補

 内野手は年齢的には問題なく揃っているが、課題は世代交代の遅れだ。内野の最年長の内川聖一(大分工高~00年横①)が39歳、松田宣と川島、明石が35歳を超え、遊撃の今宮も来年は30歳になる。

 20代中盤のレギュラー候補は、二塁の24歳の周東だけで、23歳の川瀬も今ひとつ控えの枠を出ない。ファームでは21歳の三森大貴(青森山田高~16年④)が結果を残しているもの、ポスト今宮、松田候補と言えば物足りなさを感じる。喫緊は二遊間を守れる即戦力と、三塁に限っては高校生のレギュラー候補を獲得したい。

 二遊間の即戦力では、やはり牧秀悟(中大)が一番でポスト松田候補にもなる。矢野雅哉(亜大)は俊足で強肩、元山飛優(東北福祉大は守備だけなら既にプロ級だ。社会人では峯本匠(JFE東日本)は巧打の二塁手中野拓夢(三菱自動車岡崎)も俊足巧打で二遊間を守れる。05年の本多雄一以来、15年振りの社会人内野手の指名があるかもしれない。

 ポスト松田宣の三塁手候補では、井上朋也(花咲徳栄高)はイチ押しで、技術力もある右のスラッガー。高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)のどちらかは獲得したいところだ。下位では岡本大翔(米子東高)渡部健人(桐蔭横浜大などの素質十分の大砲候補も面白い。

 

☆外野手~将来の主軸候補

 外野は32歳の柳田に24歳の栗原がレギュラーを掴んだ。本来であれば上林誠知(仙台育英高~13年④)と佐藤直樹JR西日本~19年①)がレギュラーを争ってほしいが、ともに定位置確保には至っていない。特に上林の不振は大きな誤算だったと思う。

 一番は佐藤輝明(近大)で、これほどの逸材がホークスに入ると脅威だが、個人的には柳田を手本にどんな規格外の選手になるか、是非ホークスで見てみたい選手だ。超俊足の五十幡亮汰(中大)は打撃力が上がり、周東との1~2番コンビなどは考えただけでも嫌な並びになる。

 将来の主軸候補では、来田涼斗(明石商高もチームにフィットしそうで、トリプルスリーも現実味を帯びてくる。このほかに西川僚祐(東海大相模高)元謙太(中京高)は右のスラッガー鵜沼魁斗(東海大相模高)が右のリードオフマン候補だ。

 

●1位はトリプルスリーを狙える近大・佐藤か!オール野手でも今年は驚かない

 今年も野手の1位指名が濃厚で、そうなると佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。一方で地元のエース候補の山下舜平大(福岡大大濠高)も競合の可能性があり、ここは小細工なしに競合必至でどちらかの指名になるのではないかと思う。外れた場合は、来田涼斗(明石商高井上朋也(花咲徳栄高)など、今年はオール野手指で徹底することも予想される。

【指名シミュレーション】 

 1位~山下舜平大(福岡大大濠高・投手)…自慢のストレートは153キロを超え、監督の方針で変化球はカーブだが、このカーブのキレも素晴らしい。伸びしろ十分のエース候補で、将来は160キロ超えも夢ではない。

 2位~小深田大地(履正社高・内野手…昨夏の甲子園で2年生ながら中軸を打ち全国制覇した。力強いスイングにミートも巧く高校通算34本塁打、逆方向へも打つこと井ができる技術も併せ持つ。

 3位~矢野雅哉(亜大・内野手…50メートル5秒9の俊足に強肩で、パワーこそ物足りないが、広角に打てる技術と小技も巧い。果敢に次の塁を狙う積極性も魅力。

 4位~鈴木昭汰(法大・投手)…両サイドに投げ分ける制球力が武器の左腕。大学時代は主にリリーフを務めたが、先発もこなし評価が上昇している。

 5位~秋広優人(二松学舎大高・投手)…身長2メートルの長身から投げ下ろすストレートは威力十分。打っては4番を務め、高校通算23本塁打で野手の評価も高い。

 6位~蓼原慎仁(桐生一高・投手)…最速144キロのストレートとフォークが武器の右腕で、総合力が高く将来性が評価されている。

 7位~植 幸輔(高野山高・捕手…広角に打ち分ける左の巧打者で、捕手ながらチーム事情で投手も兼任した。

 今年も地元に逸材が多く、投手なら若杉晟汰(明豊高)八方悠介(鹿児島城西高)、準硬式の大曲錬(福岡大)。捕手では誉田貴之(福岡工大城東高)坂本勇人唐津商高、外野手の牛島希(九州学院高)など原石が多く、一芸に秀でた選手の獲得にも注目したい。

20年ドラフト予想☆巨人~今年は即戦力投手が豊富で投手力強化!1位は佐藤で決まり?

●原監督のタクトが冴え、混戦予想もぶっちぎりの独走Vで連覇確実

 昨年、5年振りの優勝を果たし、巨人連覇の予想が多かったが、昨年以上の混戦も多くの解説者が予想していた。しかし蓋を開けてみると、巨人が他チームを圧倒し首位を独走。全チームに勝ち越しし、CSのないセ・リーグペナントレースは早々と消化試合化してしまった。

 巨人独走の原動力の大きな要因は、原辰徳監督の指揮に依るところが大きい。投手陣は菅野智之東海大~12年①)が開幕13連勝でまさにエースの活躍を見せ、弱冠20歳の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と左腕の田口麗斗(広島新庄高~13年③)がローテーションを守った。メルセデスとサンチェスの両外国人も、決して万全ではなかったが先発陣を支えた。

 リリーフ陣はデラロサがクローザーを務め、中川皓太(東海大~15年⑦)や高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)の左腕トリオ、鍵谷陽平(中大~13年日③)やベテランの大竹寛浦和学院高~01年広①)が勝ちパターンを担った、特に先発から中継ぎに転向して復活した大竹や、フォームを変えて覚醒した大江、鍵谷や高梨はいずれもシーズン途中のトレードで獲得した選手で、適材適所の補強は見事としか言えない。

 野手陣も実は3割打者はおらず、丸佳浩(千葉経大高~07年広高③)の打率.287が最高で、チームリーダーの坂本勇人光星学院高~06年高①)と4番の岡本和真(智弁学園高~14年①)、吉川尚輝(中京学院大~16年①)の4名しか規定打席をクリアしていない。

 ここはまさに原監督の用兵が光り、捕手は大城卓三(NTT西日本~17年③)を中心に炭谷銀仁朗(平安高~05年西高①)を併用。内野はベテランの中島宏之(伊丹北高~99年西⑤)やシーズン途中加入したウィーラーなど実績のある選手に加え、北村拓己(亜大~17年④)や若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)、増田大輝(四国IL徳島~15年育①)の若手が結果を出した。外野もベテランの亀井善行(中大~04年④)に松原聖弥(明星大~16年育⑤)に活きの良い若手が出てきた。

 こうしてみると、かつてはタレント集団だったチームが、「個」の力のチーム作りから、「和」のチームに変わったことを印象付けるシーズンになった。また、期中に楽天と3件のトレードを成立させ、ロッテには澤村拓一(中大~10年①)を放出した。首位独走のチームが積極的なトレードで補強を図る一方、他球団は阪神が1件のトレードを成立させただけで、何とも寂しい気持ちがした。

【10/18現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 61勝35敗2分⑤

 防御率…3.36①(3.77④)打率….260③(.257②)

 本塁打…118②(183①)盗塁65②(83②)

 得点471①(663①)失点353①(573③)得失点差118(90)

 

 ここ5年の巨人のドラフトは決して良くない。15年は競合を避け桜井俊貴(立命大~15年①)を単独指名、17年は1位~7位まで社会人と大学生で占め、18~19年は一転して高校生中心の指名で、チームとしての方針もビジョンも感じられなかった。

 そのなかで戦力になったのは、投手では戸郷と中川、桜井と畠世周(近大~16年②)、高橋優貴(八戸学院大~18年①)も及第点を上げられる。野手では大城がレギュラーを獲得し、期待の吉川尚もようやくケガなくシーズンを乗り越えられた。育成から増田と松原も戦力になっているが、一軍半の選手が多く今後に期待したい。

【巨人の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間の即戦力

 外野手…即戦力の右打ち 

 

●菅野の去就でドラフト戦略も大きく変わる。今年はオール投手でも良い

☆投手~将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 投手陣は菅野の去就で大きく変わる。巨人を熱望し1年浪人、その後はエースとしてチームを支え、今年は開幕から13連勝。代わりなど要ないが、本人が希望すればチームとしては送り出すしかないだろう。

 菅野が抜けると一気に先発陣は厳しくなる。先発陣は25歳の田口と20歳の戸郷、26歳の畠の23歳の高橋プラス外国人の編成になる。ただ、巨人のエースとしてはどうだろうと思う。単に今いるメンバーのなかで一番良い投手ではなく、巨人のエースは名実ともにリーグを代表する選手で、将来のエース候補、または即戦力投手が必要だと思う。

 リリーフは抑えはデラロサだが、選手層は厚い。26歳の中川を中心に、高木京介国学院大~11年④)と鍵谷が30歳を超えるが、28歳の高梨に21歳の大江がおり緊急性は先発に比べては低い。ただ、右のクローザー候補は必要で、極論だが今年の巨人のドラフトはオール投手でも良いと思うほど、強化が必要だ。

 将来のエース候補には、巨人が好きな右の本格派が多い。高橋宏斗(中京大中京高)中森俊介(明石商高山下舜平大(福岡大大濠高)はいずれも巨人のエース候補にふさわしい逸材だ。即戦力先発では大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車は安定感が抜群で、木澤尚文(慶大)は抑えの適性もあるが、先発でもローテションに入る力がある。

 クローザー候補では、伊藤大海(苫小牧駒大)伊藤優輔(三菱日立PS)はともにストレートに力のあるパワーピッチャー。森博人(日体大はスリークオーターの右腕で、不足する役割を埋める器用さがあり上位で獲得したい選手だ。

 即戦力投手ではほかに大江克哉(NTT西日本)内間拓馬(亜大)森浦大輔(天理大)は貴重な先発左腕だ。リリーフでも鈴木昭汰(法大)山本一輝(中京大岡田和馬(JR西日本は豊富な左腕リリーバーをさらに厚くする。

 高校生投手も多くリストアップしており、育成含め指名が増えそうだ。嘉手苅浩太(日本航空石川高)内田了介(埼玉栄高)有馬太玖登(都城東高)はパワーピッチャー。蓼原慎二(桐生一高豆田泰志(浦和実高)は総合力が高く、左腕では根本悠楓(苫小牧中央高)への評価が高い。打者としても非凡な秋広優人(二松学舎大高)にも注目している。

 

☆捕手~大学生捕手

 捕手は大城が打てる捕手としてレギュラーに近づき、ベテランの炭谷に小林誠司日本生命~13年①)、24歳の岸田行倫(大阪ガス~17年②)もおり戦力的に補強は急ぐ必要はないが、捕手の支配下が5名しかおらず、20~23歳が空白なこともあり大学生捕手を獲得したい。

 打てる捕手の古川裕大(上武大)萩原哲(創価大)、強肩の榮枝裕貴(立命大)喜多隆介(京都先端科学大)が候補になる。優先度から下位指名になりそうで、萩原や喜多は獲得の可能性が高い。

 

内野手~二遊間の即戦力

 内野手はチームリーダーの坂本が30歳を超えたが、若き主砲の岡本は24歳、二塁の吉川尚は25歳で問題はない。このほかに俊足の増田大、長打力のある北村、巧打の田中俊太(日立製作所~17年⑤)、若林は外野も守れ、オープン戦でアピールに成功した湯浅大(健大高崎高~17年⑧)も控えている。

 年齢バランスも悪くなく、質量ともに豊富で、補強ポイントは故障の不安がある吉川尚の二塁と、ポスト坂本で将来性のある遊撃手を抑えておきたい。

 二塁の即戦力では牧秀悟(中大)が一番だが、守備力の高い上川畑大悟(NTT東日本)や巧打者の峯本匠(JFE東日本)は内野の層をさらに厚くする。同じ社会人で右のパワーヒッター平山快(JFE東日本)福永裕基(日本新薬の評価も高い。

 将来性のある高校生遊撃手は今年は豊作で、小深田大地(履正社高)中山礼都(中京大中京高)蔵田亮太郎(聖望学園高)はいずれも強打の遊撃手。本職は三塁だが遊撃にもチャレンジしている山村崇嘉(東海大相模高)も候補に挙がっている。

 

☆外野手~即戦力の右打ち

 外野は亀井が38歳を迎え、レギュラーは31歳の丸のみ。25歳の松原が2番に定着しているが実績には乏しく、野手では外野が最優先になる。特に22~24歳が空白で大学生と社会人、右打ちで戦力になっているのが石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)しかおらず右打者ならベストだ。

 外野には野手ナンバーワン評価の佐藤輝明(近大)がおり、現状でもレギュラーを狙え、狭い東京ドームで本塁打も量産できるスラッガーで、佐藤が加われば打線にスキがなくなる。超俊足の五十幡亮汰(中大)は、ここにきて打撃力が上がりリードオフマンに十分になり得る。右打者では今川優馬(JFE東日本)は俊足強打の二番打者、向山基生(NTT東日本)は勝負強い巧打者で、今年は即戦力外野手を確実に獲得したい。

 

●1位は即戦力野手ナンバーワンで佐藤が濃厚!個人的には投手だと思うが…

 今年は早々と野手の1位指名を公言しており、佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。ただ、菅野の去就もあり、個人的には即戦力投手で競合覚悟で早川隆久(早大や指名もあると思う。敢えて単独で栗林良史(トヨタ自動車高橋宏斗(中京大中京高)の指名もありだ。ただ、栗林以外はいずれも抽選になりそうで、現在9連敗中のクジ運にも注目したい。

【指名シミュレーション】 

 1位~大道温貴(八戸学院大・投手)…下級生時代から主戦を務め、実戦経験が豊富な完成度の高い右腕。153キロのストレートに制球力の良い変化球でゲームメークに長けており、スタミナもあり大崩れしないのが最大の魅力。

 2位~大江克哉(NTT西日本・投手)…社会人1年目より主戦を務め、社会人で習得したカーブでさらに投球術がアップした。スライダーとチェンジアップの精度も高く、打者との駆け引きが巧い。体重も増えストレートの威力が増した。

 3位~森浦大輔(天理大・投手)…ボールの出所が分からない、力を抜いたフォームからキレのあるストレートとチェンジアップを投げ込む左腕。杉内を彷彿とさせる。

 4位~根本悠楓(苫小牧中央高・投手)…中学時代に全国制覇した左腕で、スクリューのように沈むツーシーム奪三振率が高い。小柄だが強気な投球が身上。1

 5位~岡田和馬(JR西日本・投手)…今年に入り評価が急上昇した即戦力左腕で、勢いのあるストレートとスライダーを武器に、先発・リリーフともに適性がある。

 6位~平山 快(JFE東日本内野手…本職は一・三塁だが、遊撃も守れるスラッガー。右にも長打が打てるスケール感のある打撃が武器。

 7位~山村崇嘉(東海大相模高・内野手…高校通算45本塁打スラッガーで、投手も務める大黒柱。強肩を活かして、今夏は三塁、遊撃にもチャレンジしている。

 今年の巨人は、本指名では5名の予定で決して多くない。ただ、リストアップしている選手は多く、育成指名が増えそうな気がする。合同練習会で注目を浴びたシャピロ・マシュー一郎(国学院栃木高)や長打力が魅力の岡本大翔(米子東高)、俊足の奥野翔琉(明徳義塾高)、準硬式出身の大曲錬(福岡大)等の一芸に秀でた選手や、無名の逸材発掘にも注目したい。