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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年セ・リーグの退団選手~最多は巨人、最小はDeNAと広島

 選手の現況は11/23時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

読売ジャイアンツ(24名)

 チーム強化のため、大きく選手を入れ替えると宣言した通り、なんと両リーグ最多の24名(うち育成選手10名)が戦力外通告を受けた。ただ、ともにドラフト1位の鍬原と堀田をはじめ、高木と直江、山下の6名は育成契約になる。宮國が現役続行を希望しているが、他の選手は去就未定。引退は岩隈のみで、MLBからNPBに復帰したものの一度も登板することなくチームを去る。

 今年は支配下→育成契約への変更に賛否両論が起きた。個人的には制度としての運用は間違っておらず、故障を治すために契約を変更することも良いと思うが、今回に至っては評価できない。鍬原は3年、堀田は僅か1年でドラフト1位選手が育成契約では、「巨人の1位指名って、そんなに軽かったっけ?」と考えてしまう。また山下と直江は故障の治療が理由だが、山下は昨年支配下になり1年で逆戻り…故障したら即育成契約では、選手もやり切れないと思う。

 ここで惜しいのは藤岡だ。本格派左腕として3球団競合のなかロッテへ入団し、入団時はルーキーではなく、FAで二桁勝てる投手が入団したくらいの評価だった。ただ、メンタル面や制球力、ストレートを活かす球種が課題で、いつの間にか自慢のストレートも通用しなくなってしまった…。個人的に応援していた選手なので、移籍した日本ハムや巨人での復活を期待したが、その力を発揮することはできなかったのが残念だ。

 支配下選手は55名まで減り、今ドラフトで7名(投手④/捕手①/内野手②)を指名し62名。外国人ではパーラの去就が不明だが、得意のFAで2~3名獲得しても65名前後で、これ以上の戦力外通告はないと思うが…。

 投 手…岩隈久志(99年/近⑤)宮國椋丞(10年/②)藤岡貴裕(11年/ロ①)

       高木京介(11年/④)田原誠次(11年/⑦)鍬原拓也(17年/①)

       直江大輔(18年/③)堀田賢慎(19年/①)※巽 大介(15年/⑥)

       ※橋本篤郎(15年/育⑥)※高井 俊(16年/育①)

 捕 手…※高山龍太朗(16年/育⑥)

 内野手…吉川大幾(10年/中②)※比嘉賢伸(17年/育①)※折下光輝(17年/育⑦)

      ※山上信吾(17年/育②)

 外野手…加藤脩平(16年/育②)村上海斗(17年/⑦)山下航汰(18年/育①)

       ※笠井 駿(17年/育③)※荒井颯太(17年/育⑧)

 外国人…ディプラン(投手)※ラモス(投手)モタ(外野手)

【予想背番号】

 ①平内/15 ②山崎/54 ③中山/46 ④伊藤/32 ⑤秋広/63 ⑥山本一/57

 ⑦萩原/66 

 

阪神タイガース(10名)

 平均年齢が高いチームにあって、今年もベテランには風当たりの強いオフになった。藤川は盛大な花道のなか引退したが、能見と福留、上本、伊藤隼は現役続行を希望し、高野と福永はトライアウトを受験する。

 昨年の鳥谷に続き、今年もかつての功労者に対し、後味の悪い退団劇になった。能見はエースとして103勝を上げ、昨年からはチームのために中継ぎを務め、今年は黙々と敗戦処理をこなした。福留も将来の幹部候補生として、MLBから三顧の礼で迎えられた。確かにコロナ禍のなかで軽率な行為は褒められたものではないが、それが今回の退団の理由にはならないと思う。選手会長も務めた上本へも非情な通告になった。

 結局は引退を決めて欲しい選手には、シーズン中に冷や飯を食わせて、引退への雰囲気作りをし、それでも現役続行を希望する選手は、バサッと切るスタイルは阪神の体質とも言える。巨人と並ぶ人気チームだが、このようなことを続けていれば、FAでの移籍やドラフトでも敬遠され、決して良い結果にはならないと思うが…これも伝統か…。

 支配下選手は60名で、今ドラフトの8名(投手④/捕手①/内野手③)を加え、支配下は68名になった。外国人選手が8名おり、ボーア(これも毎年恒例のバース二世)は退団、ガルシアと呂彦青も退団濃厚、スアレスはMLB移籍の可能性もあり、外国人選手を5~6名にするのであれば、もう1~2名は空けておきたいところだ。 

 投 手…藤川球児(98年/①)能見篤史(04年/自)横山雄哉(14年/①)

       高野圭佑(15年/ロ⑦)福永春吾(16年/⑥)

 捕 手…岡崎太一(04年/自)

 内野手上本博紀(08年/③)

 外野手…福留孝介(98年/中①)伊藤隼太(11年/①)

 外国人…ボーア(内野手

【予想背番号】※佐藤輝は決定

 ①佐藤輝/8 ②伊藤将/13 ③佐藤蓮/30 ④榮枝/40 ⑤村上/41 ⑥中野/00

 ⑦高寺/57 ⑧石井/54

 

中日ドラゴンズ(13名)

 エース大野雄の残留に成功した中日。その反動ではないと思うが5名の外国人(育成1名含む)がチームを去る。日本人選手では投手が6名と多く、吉見は引退、小熊と伊藤準、鈴木翔はトライアウトを受験、唯一の野手の石川駿は引退を決めた。

 鈴木翔はエース候補として期待されたが、18年オフに右手の血行障害の手術を受け、徐々に回復を見せていたが無念の戦力外になってしまった。まだ若く素質は申し分ないだけに、再起を果たしてほしい選手だ。

 石川駿は、昨年ウエスタンリーグで最高打率と最高出塁率を記録し、遅咲きのブレイクが期待されたが、故障で結果を出すことができなかった。これで14年のすべて大学・社会人で占めた即戦力ドラフトで、獲得した9名中6名がチームを去ることになった。

 支配下選手は60名で、今年指名した6名(投手④/内野手①/外野手①)を加え66名。外国人選手が現段階で3名しかおらず、もう2~3名は必要になり、支配下に余裕がなく、トレードや戦力外通告がまだあるかもしれない。

 投 手…吉見一起(05年/希)伊藤準規(08年/②)小熊凌祐(08年/⑥)

       鈴木翔太(13年/①)阿知羅拓馬(13年/④)大蔵彰人(17年/育①)

       ※浜田智博(14年/②)

 捕 手…なし

 内野手…石川 駿(14年/④)

 外野手…なし

 外国人…ゴンサレス(投手)ロメロ(投手)アルモンテ(外野手)

       シエラ(外野手)※ブリトー(投手)

【予想背番号】

 ①高橋宏/20 ②森/19 ③土田/39 ④福島/64 ⑤加藤翼/65 ⑥三好/45

 

★横浜D℮NAベイスターズ(9名)

 昨年は退団する選手の半数が引退を決めたが、今年は引退を表明している選手は現段階ではゼロで、石川とロペス(来年から日本人選手扱い)、パットンが現役続行を希望している。また、井納と梶谷がFAを検討しており去就が未定だ。

 今回の戦力外通告を見ても、正直驚きはなかったが、ロペスとパットンの退団は意外だった。ロペスは来日10年目を迎え、来シーズンからは日本人選手扱いになる。衰えは隠せないが、ソトの去就が微妙のなか、代打や堅実な一塁守備はまだまだ戦力になると思う。パットンは在籍4年で、219試合登板で101ホールドを上げたセットアッパー。奪三振率が高く(反面、与四球率も高いが…)、MLBからも注目されており、ロペスともにやや不可解な戦力外になった。

 支配下選手は58名で、今年のドラフトで6名(投手④/内野手②)をを指名し64名になる。ただ、通算50勝の井納、今年打率2位の梶谷、ソトの残留交渉が課題になるが、マネーゲームになると太刀打ちすることが難しく、この3名が残るか、移籍するかでチームの補強方針が変わり、まだ動きがありそうだ。

 投 手…藤岡好明(05年/ソ大社③)古村 徹(11年/⑧)浜矢広大(13年/楽③)

       赤間 謙(15年/オ⑨)

 捕 手…なし

 内野手…石川雄洋(04年/⑥)飛雄馬(11年/⑦)百瀬大騎(14年/⑥)

 外野手…なし

 外国人…パットン(投手)ロペス(内野手

【予想背番号】※入江・牧は決定
 ① 入江 /22 ②牧/2 ③松本/40 ④小深田/46 ⑤池谷/49 ⑥高田/56 

   

広島東洋カープ(9名)

 昨年は退団選手の半分が引退を決めたが、今年は石原慶のみで、小窪は他球団のオファーを待って、トライアウト受験も検討している。他に藤井がトライアウト挑戦、戸田は育成契約を打診された。また、沢村賞も獲得したジョンソンがチームを去る。

 覚悟はしていたが、石原慶が引退を決めた。ロッテの細川と並び、捕手らしい捕手だった。キャッチングとリードが巧く、強肩で意外なところで長打を打つ。まさに8番捕手の似合う選手で、ベテランになり出場機会は減ったが、ベンチにいるだけで安心感があり、こういった選手が引退するのはやはり寂しいものだ。ただ、石原慶の背番号31は、若手の坂倉に受け継がれ、こういった配慮は観ていて嬉しい。

 支配下選手は58名で、今年指名した6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)に、新外国人選手を加えると支配下ギリギリで、田中広にFA移籍の可能性があるが、逆にFAでの獲得がない分、更なるトレードや戦力外の動きがありそうだ。 

 投 手…戸田隆矢(11年/③)藤井皓哉(14年/④)平岡敬人(17年/⑥)

 捕 手…石原慶幸(01年/④)

 内野手小窪哲也(07年/大社③)

 外野手…なし

 外国人…ジョンソン(投手)モンティージャ(投手)ピエラ(外野手)

       ※メナ(投手)

【予想背番号】
 ①栗林/20 ②森浦/13 ③大道/12 ④小林/68 ⑤行木/61 ⑥矢野/53

 

東京ヤクルトスワローズ(15名)

 阪神と並び平均年齢の高いチームで、今年も多くのベテランがチームを去る。投手では五十嵐と中澤、山中、捕手の井野が引退する。近藤と平井、藤井が現役続行を希望しており、藤井はトライアウト受験を表明している。

 驚いたのはリーグ最下位の投手陣にあって、大量8名の投手を戦力外にした。チーム成績も2年連続の最下位で、チームを刷新する意味もあると思うが、リリーフの近藤や引退を決めたがサブマリンの山中の両ベテランなどは、若手が多くなった投手陣のなかで、必ず経験が活きてくる場面はあり、正直勿体ない印象のほうが強い。

 今オフ、風張が戦力外を受けて14年に入団した選手がすべて退団した。7名入団して在籍2年で2名、3年目にはドラフト1位の竹下を含む3名が退団した。この年は1位で投手では山崎康(横浜)や有原(日本ハム)、高橋光(西武)。野手でも中村奨(ロッテ)や岡本(巨人)、下位指名でも西野や小田(ともにオリックス)がおり悪い年ではなかったが、僅か6年で全員退団はスカウティングや育成能力が疑われても致し方なく、ここ数年の低迷も頷ける。

 支配下選手は55名で、今ドラフトの6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)を加えても61名と少ない。チームの顔である山田哲とクローザーの石山の慰留に成功し、小川を残すだけだ。外国人選手は現在3名で、もう2~3名は必要だがそれでも人数に余裕はあり、あとはチームの補強に努めていくだけだ。

 投 手…五十嵐亮太(97年/②)近藤一樹(01年/近⑦)山田大樹(06年/ソ育①)

       中澤雅人(09年/①)平井 諒(09年/④)山中浩史(12年/ソ⑥)

       田川賢吾(12年/③)風張 蓮(14年/②)※ジュリアス(15年/④)

 捕 手…井野 卓(05年/楽大社⑦)

 内野手…藤井亮太(13年/⑥)

 外野手…上田剛史(06年/高③)田代将太郎(11年/西⑤)

 外国人…イノーア(投手)エスコバー内野手

【予想背番号】
 ①木澤/20 ②山野/34 ③内山/33 ④元山/0 ⑤並木/50 ⑥嘉手苅/54