ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆ロッテ~狙いは先発左腕だが、得点力不足解消のため即戦力野手も必要

●得失点差マイナスながら、守りを中心にしたそつない野球で優勝争いを続ける

 今年、一番健闘しているチームはどこかと聞けば、ロッテと答えるプロ野球ファンが多いのではないかと思う。

 シーズン前に、先発ローテ当確だった西野勇士(新湊高~08年育⑤)が肘の手術でシーズン絶望、FA加入の福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年ソ高①)も骨折で離脱した。セットアッパーのジャクソンは退団、主砲のレアードも故障で帰国、エース格の働きをしていた種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)も、肘の手術で今シーズンの復帰は絶望になった。

 さらに唯一の3割打者だった荻野貴司トヨタ自動車~09年①)は足のケガ、正捕手の田村龍弘光星学院高~12年③)も骨折で一時期チームを離れ、21ホールドのハーマンも故障で離脱、そして新型コロナの集団感染で主力選手の大量離脱…とまさに満身創痍の状況のなか2位をキープし、優勝争いに留まっている。

 特筆するのは得失点差で、マイナスながら2位を維持しているのは驚きだ。特に、チーム打率はリーグ最下位で得点力が不足し、野手で特筆した成績を挙げている選手がいない。井上晴哉日本生命~13年⑤)の打率.254がチーム最高で、中村奨吾(早大~14年①)、マーティン、若き4番の安田尚憲(履正社高~18年①)が規定打席に達しているだけだ。そのなかでマーティンがリーグ5位、井上が6位の打点を挙げており、少ないチャンスを活かして接戦をものにしてきた。

 接戦に強いチームの原動力になったのが投手陣で、FA加入した美馬学東京ガス~10年楽②)はチームトップの9勝、石川歩(東京ガス~13年①)とWエースを形成し、二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)と岩下大輝(星稜高~14年③)、2年目の小島和哉(早大~18年③)がローテーションを守っている。

 リリーフ陣はリーグ屈指の布陣で、7回に唐川侑己(成田高~07年高①)、8回に復活を遂げた澤村拓一(中大~10年巨①)、9回のクローザー益田直也関西国際大~11年④)はリーグトップの29セーブを挙げ、勝利の方程式が確立した。さらにハーマンや小野郁(西日本短大高~14年楽②)、東條大樹(JR東日本~15年④)が盤石のリリーフ陣を支えている。

 井口監督は1年目に走る野球、2年目は長打を活かした野球、そして3年目にリーグ最少の失策数が示すように、そつのない堅守のチームに成長させた。また、昨年のストーブリーグに続き、シーズン前に鳥谷敬早大~03年神自)、トレードで澤村を獲得し、元中日のチェン・ウェインの入団など、話題にも事欠かなった。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 55勝44敗2分②

 防御率…3.90②(3.90④)打率….237⑥(.249⑤)

 本塁打…80④(158③)盗塁77③(75④)

 得点402⑤(642②)失点414②(611④)得失点差▲12(31)

 

 ロッテはここ数年、高評価のドラフトを展開しており、クジ運の強さもあるが、平沢大河(仙台育英高~15年①)、佐々木千隼(桜美林大~16年①)、安田、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)、佐々木朗希(大船渡高~19年①)と、いずれも抽選で獲得している。また、この5年の間に高校生野手を3名も1位で指名する姿勢は、常勝チームを作るための球団方針の確かさを象徴している。

 残念ながらまだ主力になりきれていないドラ1組だが、ドラフトの成果は出ている。投手では先発で種市に小島、中村稔弥(亜大~18年⑤)、リリーフで東條に有吉優樹(九州三菱自動車~16年⑤)、東妻勇輔(日体大~18年②)が結果を出している。

 野手では藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)が遊撃のレギュラー、菅野剛士(日立製作所~17年④)が今年一軍に定着し、ルーキーの佐藤都志也(東洋大~19年②)も打てる捕手として経験を積んでいる。 

【ロッテの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 捕 手…高校生捕手

 内野手…将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 外野手…即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 

●投手王国も夢ではない即戦力投手の獲得か、課題の得点力不足を解消したい

☆投手~将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 投手陣は主力が30代に差し掛かり、美馬が34歳、石川と澤村、松永昴大(大阪ガス~12年①)が32歳、益田と唐川が31歳、東條と西野も30歳になる。こう見ると心配になってくるが、世代交代が上手く進んでいる。

 先発では二木が25歳、岩下と小島、中村稔が24歳、種市が22歳と若手が主力に成長している。ファームで結果を残している20歳の古谷拓郎(習志野高~18年⑥)に、160キロ超えの佐々木朗もおり、今後に楽しみな布陣が並ぶ。リリーフ陣も小野と東妻はともに24歳で、どちらがポスト益田になるか興味は尽きず、投手王国も夢ではない布陣が固まりつつある。

 投手は幾らでもいたほうが良いのは、チーム作りの鉄則だ。ロッテに必要なのは小島しかいない先発左腕、ポスト益田のクローザー候補と、手薄な中継ぎ左腕だ。年齢バランスは決して良くはないが、25歳以下に絞れば大学生と高校生、社会人なら高卒3~4年目がベストだ。

 すでに公言しているが、1位指名は早川隆久(早大で決まった。即戦力の先発左腕で大学生、そして地元千葉出身と、すべて補強ポイントに合致している。早川を外した場合は、中森俊介(明石商高等の将来のエース候補、即戦力の先発投手で大道温貴(八戸学院大や高卒3年目の小野大夏(ホンダ)、クローザー候補で伊藤優輔(三菱日立PS)伊藤大海(苫小牧駒大)が上位候補に挙がっている。

 この間の流れから、高校生投手も1~2名は抑えておきたい。下慎之介(健大高崎高)根本悠楓(苫小牧中央高)高田琢登(静岡商高)は先発左腕候補。他にも2メートルの大型右腕の秋広優人(二松学舎大高)にパワーピッチャーの内田了介(埼玉栄高)、総合力の高い川瀬堅斗(大分商高小辻鷹仁(瀬田工高)豆田泰志(浦和実高)の評価が高い。

 中継ぎ左腕では佐藤宏樹(慶大)伊藤将司(JR東日本は先発もこなせ、岡田和馬(JR西日本も候補になる。また、左腕ではないが山本晃希(日本製鉄かずさマジック)白石翔希(東農大)を以前より高く評価しており、指名の可能性が高い。

 

☆捕手~高校生捕手

 捕手は26歳の田村がレギュラーで、27歳の柿沼友哉(日大~15年育②)が2番手捕手を務め、ルーキー佐藤の加入でようやく駒が揃った。ただ、年齢バランスが非常に悪く、今年佐藤が入団するまでは田村が最年少という構成で、今年は高校生捕手の獲得が必須になる。

 大学生・社会人に比べ、今年の高校生捕手はまずまずの選手が揃っており、内山壮真(星稜高)を筆頭に二俣翔一(磐田東高)、地元の古谷将也(成田高)和田泰征(習志野高)と逸材が並ぶ。

 

内野手~将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 内野手は一塁に井上、二塁に中村奨、三塁に安田、遊撃に藤岡とレギュラーは固まっているが、いずれも打撃面では物足りない。ただ、レギュラーと控えの差が大きく、平沢の伸び悩みもあり層は薄い。年齢バランスは悪くなく、有望な高校生と即戦力で二遊間を任せられる選手が候補になる。

 高校生では井上朋也(花咲徳栄高)岡本大翔(米子東高)は右打ちのスラッガー、高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)は将来の主軸候補。逸材が揃う遊撃手では土田龍空(近江高)は守備力が高く、度会隆輝(横浜高)入江大樹(仙台育英高)の打撃力の高い選手をリストアップしている。

 即戦力野手では牧秀悟(中大)は補強ポイントに合い、渡部健人(桐蔭横浜大は飛距離が魅力な面白い選手、平山快(JFE東日本)も二塁以外は守れるいずれも右打ちのスラッガーだ。他には守備力の高い元山飛優(東北福祉大に、俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎)は課題の二遊間の補強になる。

 

☆外野手~ 即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 外野は荻野に清田育宏(NTT東日本~09年④)、角中勝也(四国IL高知~06年年大社⑦)、福田秀がいずれもの30歳を超えたが、ここも投手同様に世代交代が上手く進んでいる。菅野が頭角を表し、20歳の藤原と21歳の和田康士朗(BC富山~17年育①)が一軍で経験を積んでいる。ファームでも巧打者の高部瑛斗(国士館大~19年③)とスラッガーの山口航輝(明桜高~18年④)がともに結果を残している。

 年齢バランスも悪くなく、来田涼斗(明石商高も高く評価しており悪くはないが、藤原や和田がおり優先順位は高くないと思う。一番はやはり右打ちのスラッガーで、課題の得点力不足を解消したい。一番のおススメは今川優馬(JFE東日本)で、俊足のスラッガーに加え、明るい性格のムードメーカーで、個人的には是非獲ってもらいたい選手だ。

 この他にも高校通算53本塁打西川僚祐(東海大相模高)や荻野を目標にしている俊足の並木秀尊(独協大はともに右打ち、五十幡亮汰(中大)は、機動力を活かすロッテのチームカラーに合っている選手だ。また、来田と同じくスラッガー山本大斗(開星高)もリストアップしている。

 

●1位は早川を公言!即戦力と育成を合わせた秀逸なドラフトに今年も期待

 今年の1位指名は早川隆久(早大を公言しており、4~6球団の指名が予想され、クジ運の強さが今年も発揮できるか注目したい。早川を外した場合は、そのまま即戦力投手で大道温貴(八戸学院大伊藤優輔(三菱日立PS)、将来性で中森俊介(明石商高のどちらにシフトするか注目だ。

【指名シミュレーション】 

 1位~伊藤優輔(三菱日立PS・投手)…中大時代もドラフト候補だったが、即戦力を目指すために社会人に進んだ。最速149キロのストレートに変化球も多い総合力の高い投手で、プロではリリーバーとしての適性が高く評価されている。

 2位~内山壮真(星稜高・捕手)…名門校で1年より遊撃のレギュラーを務め、高校通算34本塁打、昨夏は4番を務め甲子園準優勝を経験した。新チームで捕手へ転向し、打力とともに、フットワークの良さとリード面の評価が高い。

 3位~小野大夏(ホンダ・投手)…社会人2年目に最速150キロを超え、まだ伸びしろを感じさせる本格派右腕。苦手の変化球もフォークやカーブが武器になってきた。

 4位~土田龍空(近江高・内野手…1年時から遊撃のレギュラーを掴み、高校生離れした守備力は抜群。50メートル6秒の俊足に、ミートの巧い打撃でバランスが良い。

 5位~下慎之介(健大高崎高・投手)…遅れて出てくる左腕から、伸びのあるストレートと鋭いスライダーを武器に奪三振能力が高い。好不調の波が大きいのが課題。

 6位~山本晃希(日本製鉄かずさマジック・投手)…恵まれた体格から威力抜群のストレートにスライダーを武器に、社会人で打たせて取る投球も身につけた。

 7位~岡本大翔(米子東高・内野手…チームでは投手も務める強肩の遊撃手。190センチの体格から繰り出すパワーが魅力だが、遠くに飛ばす技術も持ち合わせている。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心になりそうで、総合力の高い常田唯斗(飯山高)嘉手苅浩太(日本航空石川高)片山楽生(白樺学園高)。野手では和田泰征(習志野高)山本大斗(開星高)が候補になる。白石翔希(東農大)もロッテが評価している右腕だ。

20年ドラフト予想☆阪神~今年は育成重視か、即戦力中心か?野手ならオール大学生でOK

●早くもストーブリーグの話題が先行…チームを支えたベテランも衰えを隠せない

 先日、中日に抜かれ現在は3位だが、しばらく阪神がずっと2位をキープしており、失礼な言い方だが、そんなに強かったかな?と不思議だった。なんせ阪神の話題と言えば、藤浪をトレードするかしないか、チーム内のルールを破ったうえでの集団コロナ感染、球団社長の辞任、そして早くもオフ恒例のストーブリーグなどの話題が占めていたので、もう少し悪い気がしていた。

 話を戻すと、リーグ屈指の投手陣は今年も健在で、先発はエース西勇輝菰野高~08年オ③)がチームトップの10勝を上げ、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)に秋山拓巳(西条高~09年④)、左腕の高橋遥人(亜大~17年②)と勝ち星は少ないがガルシアがローテーションを守っている。

 リリーフでは、昨年活躍した藤川球児高知商高~98年①)は11試合登板で引退を表明し、島本浩也(福知山成美高~10年育②)も故障でシーズンを棒に振った。そのなかでもスアレスがクローザーを務め、岩崎優(国士館大~13年⑥)と馬場皐輔(仙台大~17年①)の3人が抜群の安定感を誇り、藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)もリリーフへの適性を見せ穴を埋めた。

 攻撃陣は大山悠輔(白鴎大~16年①)が不動の4番に成長し、昨年14本塁打だった男が、リーグトップの26本塁打を放ち、本塁打王争いをするまでに成長した。加えて新外国人のサンズが19本、ボーアが16本と課題の長打力不足が解消された。2年目の近本光司(大阪ガス~18年①)も序盤の不振を取り戻し、打率.291、23盗塁はリーグトップで得点力は着実に改善された。

 改善されていないのが失策の多さで、今年も両リーグワーストの67個のエラーは、痛いところで余計な失点に繋がっている。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 98試合 48勝47敗5分③

 防御率…3.57②(3.46①)打率….247⑥(.251④)

 本塁打…98③(94⑤)盗塁66①(100①)

 得点417④(538⑥)失点398②(566②)得失点差16(▲28)

 

 阪神のドラフトは昔も今も良く分からない…。ただ、ここ5年間では1位指名の選手が主力に成長し、16年の大山と17年の馬場は今年主力に成長し、15年の高山俊(明大~①)と近本は新人王を獲得している。

 このほかにも投手では青柳と高橋遥が先発ローテーションに定着し、野手では糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)に木浪聖也(ホンダ~18年③)がレギュラー、小幡竜平(延岡学園高~18年②)も頭角を表してきた。

 また、昨年は1位~5位まで高校生を指名し、これまでの阪神のドラフトと一線を画す指名には驚かされた。

阪神の補強ポイント】

 投 手…藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 外野手…ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 

●外野はスラッガー、内野は守備力重視か?投手陣の強化も今後に向け必要

☆投手~即戦力先発左腕、藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 投手陣は脂の乗った世代が主力におり、西勇もまだ30歳、29歳で秋山と岩崎、岩貞祐太(横浜商大~13年①)、27歳で青柳と島本、藤浪が26歳、高橋遥と馬場が25歳と暫くはリーグ屈指の投手陣が維持できる。

 ただ、23歳以下で戦力になっているのが、大目に見ても望月惇志(横浜創学館高~15年④)しかおらず、昨年の西純矢(創志学園高~19年①)に続く将来のエース候補が欲しい。また、藤川が引退を表明し、クローザー候補の獲得も必要になる。

 将来のエース候補では、高橋宏斗(中京大中京高)を最上位に、中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)が1位候補に挙がっている。即戦力のクローザー候補では、木澤尚文(慶大)伊藤大海(苫小牧駒大)が1位候補になる。

 阪神は今年はナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)の指名が濃厚で、競合のなか獲得できれば最高だが、外したときにどちらを優先するのか注目だ。

 また、即戦力の先発もマークしており、大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車に、不足する先発左腕で藤井聖(ENEOS)等も上位候補に挙がる。

 中位以降では高校生や伸びしろのある大学生が候補で、高校生では松本隆之介(横浜高)根本悠楓(苫小牧中央高)の両左腕。小辻鷹仁(瀬田工高)蓼原慎仁(桐生一高といった前評判の高い投手に、加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)、左腕の福島章太(倉敷工高)など隠し玉的な選手も高く評価している。

 大学生では村上頌樹(東洋大高田孝一(法大)は先発、左腕の高野脩汰(関大)はリリーフでもいけ、阪神は早くから注目していた伸びしろのある逸材だ。また、即戦力リリーバーの左腕、相馬和磨(日本通運も高野同様に早くからマークしている。

 

☆捕手~大学生捕手

 レギュラーは梅野隆太郎(福岡大~13年④)だが、捕手の年齢バランスが悪く、26歳~29歳に5名おり、26歳の長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)の下がルーキーの藤田健斗(中京学院中京高)で、20歳~25歳まで空白世代になっており、ここの年代は埋めたい。欲を言えば、捕手7名中6名が右打ちで、左打ちだとなお良い。

 年齢的には大学生捕手がベストで、古川裕大(上武大)は左打ちの打てる捕手、榮枝裕貴(立命館大は強肩のディフェンス型でどちらもチームの補強ポイントに合っている。高校生は年齢的に必要ないと思うが、関本勇輔(履正社高)二俣翔一(磐田東高)内山壮真(星稜高)の打てる捕手の獲得を目指している。

 

内野手~二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 内野手は二塁に糸原、三塁に大山、遊撃には北條史也光星学院高~12年②)を抑え木浪が控える。ただ、大山以外は攻守に決して万全とは言えず、20歳の小幡、25歳の熊谷敬宥(立大~17年③)が出番を増やしている。失策も多いことから守備力に特化した選手の獲得も必要で、捕手と同様に年齢バランスが悪く、大学生野手が候補の一番手になる。

 守備力を優先にすると矢野雅哉(亜大)元山飛優(東北福祉大小川龍成(国学院大)はいずれも堅守の遊撃手、瀬戸西純(慶大)は打撃は今ひとつも守備は抜群だ。社会人の上川畑大悟(NTT東日本)は、抜群の守備力を誇る遊撃手で、いまの阪神にはピッタリの補強だと思う。

 当然、ワンランクアップのチームを狙うには素質豊かな高校生も必要だ。高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)や俊足の細川凌平(智弁和歌山高)、巧打者の度会隆輝(横浜高)スラッガー阪本和樹(松阪商高)をリストアップしている。

 

☆外野手~ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 外野のレギュラーは26歳の近本のみで、福留孝介日本生命~98年中①)は41歳、糸井嘉男(近大~03年日自)も39歳になりさすがに衰えは隠せない。期待の伊藤隼太(慶大~11年①)も31歳、高山は年々試合数を減らしており、ここは即戦力野手が是が非とも必要だ。野手の年齢バランスがすべて悪く、外野手も大学生が欲しい。

 既にほぼ公言状態だが、佐藤輝明(近大)を早くから1位候補に挙げている。広い甲子園を苦にしない長打力が最大の魅力だ。他には俊足の五十幡亮汰(中大)をマークしているが、今年は外野手に候補者が少なくともに上位でしか獲得できない。

 高校生も同様で、将来トリプルスリーを狙える来田涼斗(明石商高)、ともにスラッガー西川僚祐(東海大相模高)元謙太(中京高)山本大斗(開星高)への評価が高い。

 

●1位は佐藤でほぼ間違いなし!昨年の育成重視ドラフトが今年はどう変わるか

 今年の1位指名は佐藤輝明(近大)で間違いなく、高校生投手では高橋宏斗(中京大中京高)を挙げているが、ともに1位未入札で消える選手で、外れ指名でどういった戦略で行くか注目だ。即戦力野手なら牧秀悟(中大)、将来性で来田涼斗(明石商高、投手なら小林樹斗(智弁和歌山高)木澤尚文(慶大)へシフトしそうだ。

【指名シミュレーション】 

 1位~小林樹斗(智弁和歌山高・投手)…昨夏の甲子園よりさらに成長を遂げ、ストレートの最速も152キロを計測した。元々の直球の伸びに加え制球力も高く、チェンジアップやスライダーの変化球も抜群で、先発・リリーフともに適性がある。

 2位~藤井 聖(ENEOS・投手)東洋大時代はリリーバーで目立たなかったが、社会人でその素質が開花し、本格派左腕に成長した。分かっていても打てないストレートは150キロを超え、先発・リリーフともに大きな戦力補強になる。

 3位~松本隆之介(横浜高・投手)…身長188センチを超える大型左腕で、最速150キロも超えた。変化球の精度も高い器用さも持ち合わせつ将来のエース候補。

 4位~榮枝裕貴(立命大・捕手)…守備力はアマ球界トップクラスで、確実性のある送球に高い盗塁阻止率を誇る。長打力には乏しいが、打撃も着実に成長している。

 5位~小辻鷹仁(瀬田工高・投手)…古豪・瀬田工高で成長した伸びしろ十分の右腕。スリークオーターから、低めに集める最速146キロのストレートが武器。

 6位~高野脩汰(関西大・投手)…角度にある147キロストレートと2種類のスライダーが武器で奪三振能力が高い。昨秋のリーグ戦では4勝負けなしでMVPを獲得。

 7位~相馬和磨(日本通運・投手…社会人1年目より救援で活躍し、上背はないがカーブにスライダー、フォークを駆使して打者を打ち取る即戦力左腕。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心で150キロサイドハンドの加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)。打てる捕手の関本勇輔(履正社高)阪本和樹(松阪商高)山本大斗(開星高)スラッガーをリストアップしている。大学生では最速155キロの高田孝一(法大)は粗削りながら、まだ伸びしろのある本格派右腕が候補になる。

20年ドラフト予想☆楽天~野手は問題なし。課題は先行き不透明な投手陣

●強打で圧倒する打力を誇るが、接戦に弱く逆転負けが多いのは投手力

 今年の序盤戦の楽天は強かった。投げてはエースの則本昴大(三重中京大~12年②)とロッテから移籍した涌井秀章(横浜高~04年西①)が勝ち星を重ね、松井裕樹桐光学園高~13年①)が先発転向し、新守護神の森原康平(新日鉄住金広畑~16年⑤)が試合を締めた。

 打っては茂木栄五郎(早大~15年③)から始まる打線は、2番はロッテからFA加入の鈴木大地東洋大~11年ロ③)、島内宏明(明大~11年⑥)、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)、ロメロと続く打線は強力で、このまま独走するのはないかと思った。

 主戦だった高梨雄平(JX-ENEOS~16年⑨)やウィーラーを放出するほど選手層が厚くなり、今年のドラフトは育成中心でオール高校生で良いと思ったくらいだ。

 ただ、少しずつ歯車が狂い始め、森原やブラッシュが不振で離脱し、則本や松井、茂木も再調整でチームを離れた。期待の2年目、辰巳涼介(立命大~18年①)や太田光(大商大~18年②)も序盤は良かったが、レギュラー定着とはならず、優勝戦線から後れを取ってしまっている。

【10/14現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 99試合 48勝47敗4分③

 防御率…4.16⑤(3.74②)打率….259①(.251②)

 本塁打…101②(141④)盗塁58⑥(48⑤)

 得点459①(614③)失点428④(578②)得失点差31(+36)

 

 楽天日本ハム同様、その年のナンバーワン選手に行くのが基本方針だ。しかも12年の森雄大東福岡高~12年①)から8年連続して高校生を1位入札指名している。ただ、とにかくクジ運が悪く、ここ5年間でも17年の藤平尚真(横浜高~17年①)以外はすべて外している。

 ただ、その姿勢は成果に結びついており、投手では石橋良太(ホンダ~15年⑤)に弓削隼人(スバル~18年④)の先発に、リリーフでは森原と高梨と社会人選手が結果を残している。今年のルーキー瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)が先発で1勝を上げ、津留崎大成(慶大~19年③)もリリーバーとしての適性を見せている。

 野手では茂木を筆頭に、今年は小深田大翔(大阪ガス~19年①)がレギュラーを獲得する勢いを見せ、捕手は太田に堀内謙伍(静岡高~15年④)、足立祐一(パナソニック~15年⑥)がしのぎを削っている。外野はさらに激戦で、新人王も獲得した田中和基(立大~16年③)に、辰巳や渡邊佳明(明大~18年⑥)、小郷裕哉(立正大~立正大~18年⑦)がレギュラーを争い、ここ5年のドラフトは成果に結びついている。

楽天の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補

 捕 手…必要なし

 内野手…将来のレギュラー候補

 外野手…将来のレギュラー候補、大学生スラッガー 

 

●野手よりも今年は投手狙いが最適か、先発と中継ぎ左腕、クローザーも必要

☆投手~将来のエース候補

 投手陣は世代交代の波が近づいている。先発では岸孝之東北学院大~06年西・大社希)が36歳、涌井が34歳、塩見貴洋(八戸大~10年①)も32歳、則本と辛島航(飯塚高~08年⑥)が30歳代に突入した。リリーフ陣を見ても、今年NPBに復帰した牧田直久(日本通運~10年②)も36歳、青山浩二(八戸大~05年大社③)は37歳と主力がいずれもベテランの域に達している。

 20歳代で先発で一人立ちしている投手は弓削くらいで、リリーフもはロッテより人的補償で入団した酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)と質量ともに不足がちだ。とにかく期待のドラフト1位が伸びきれていない。安樂智大(済美高~14年①)は、リリーフへ転向?するも、大事な場面での起用には成り得ておらず、近藤弘樹(岡山商大~17年①)は4試合、藤平は1試合登板に留まっている。

 今後のチーム編成でポイントとなるのが、松井の起用法だ。25歳の松井は間違いなく今後の楽天を背負う選手だが、先発かリリーフの選択肢が付く。今年は先発に転向するも4勝に終わり、9月からはリリーフに配置転換されている。

 松井を先発で使うなら、即戦力のクローザーが必要になるし、クローザーで使うなら5年は安泰で、ベテランの主力がいるうちに将来のエース候補を育成したい。年齢バランスでも昨年高校生を獲得しておらず、今年は高校生指名を外せない。

 将来のエース候補では、中森俊介(明石商高高橋宏斗(中京大中京高)山下舜平大(福岡大大濠高)が1位候補で、特に中森への評価が高い。他球団の動向にもよるが、高橋は中日や広島、山下もソフトバンク指名が狙っており、単独で中森を獲得できる可能性もある。

 一方でけが人が続出し、先発ローテが厳しくなった現状から即戦力の先発も必要だ。森博人(日体大赤上優人(東北公益文化大)宇田川優希(仙台大)、不足している先発左腕の補強で佐藤宏樹(慶大)も上位候補になる。

 松井を先発で起用するなら、即戦力のクローザーで伊藤大海(苫小牧駒大)木澤尚文(慶大)小郷賢人(東海大が候補になり、伊藤は日本ハムが指名確実と見られていたが、野手の佐藤輝明(近大)が急浮上しており、伊藤の単独1位指名もあり得る。

 他に左の中継ぎが不足しており、ここは鈴木昭汰(法大)藤村哲之(横浜商大岡田和馬(JR西日本をリストアップしている。

 中位から下位の高校生では、不足する左腕で高田琢登(静岡商高)松本隆之介(横浜高)下慎之介(健大高崎高)の評価が高く、嘉手苅浩太(日本航空石川高)や小牟田竜宝(青森山田高)など馬力のある投手をリストアップしている。

 

☆捕手~必要なし

 レギュラーはケガで離脱したが太田が一番手で、31歳の足立、26歳の下妻貴寛(酒田南高~14年②)、今年は出番が少ないが堀内も23歳で、年齢バランスも取れており緊急性はそれほど高くないように思える。

 強いて言えば打てる捕手が不足し、打てる捕手でリストアップすれば古川裕大(上武大)萩原哲(創価大)は打てる即戦力捕手だ。

 

内野手~将来のレギュラー候補

 ケガさえなければ内野手に心配はない。主力の浅村が30歳、鈴木大も脂ののりきった31歳、茂木が26歳で、遊撃のレギュラーを掴みつつある小深田も25歳と3~4年は安泰だ。ベテランの銀次(盛岡中央高~05年高③)に若手でも右のスラッガー内田靖仁(常総学院高~13年②)に勝負強い渡邊佳、巧打者の黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)も控えており、当面心配は少ない。

 ここは将来のレギュラー候補に、年齢で空きのある大学生野手を抑えておきたい。さすがに補強の優先順位が低いのか、リストアップしている選手が少なく土田龍空(近江高)度会隆輝(横浜高)に、地元の有望選手で入江大樹(仙台育英高)がいる。即戦力野手では、牧秀悟(中大)楽天に不足している右打ちのスラッガー、また守備力に定評のある上川畑大悟(NTT東日本)への評価が高い。

 

☆外野手~将来のレギュラー候補、大学生スラッガー

 内野手に比べ、外野手は豊富そうに見えるが補強の優先順位は高い。唯一のレギュラーの島内も30歳を迎え、田中和や辰巳の一人立ちがないと厳しい。リーグ最下位の盗塁数もこの2人がレギュラーを獲得できれば課題も解消される。

 外野の狙いは当然、佐藤輝明(近大)はマークしているが、課題は投手力アップなので、2位以下の指名が予想される。ポイントは2点で、主力が和田恋(高知高~13年巨②)しかいない右打ちと将来のレギュラー候補の獲得だ。

 右打ちの外野手では、今川優馬(JFE東日本)は俊足のスラッガーで、チームの補強ポイントと合致する。ほかには俊足の並木秀尊(独協大や巧打者の向山基生(NTT東日本)がいる。

 将来のレギュラー候補で、来田涼斗(明石商高は、状況次第では2位での獲得も可能だ。右打者に絞ると元謙太(中京高)石川慧亮(青藍泰斗高)、強打者の西川僚祐と俊足の鵜沼魁斗東海大相模高のコンビも将来性十分だ。

 

●不足している左腕で早川?それとも将来のエース候補に行くか…注目の1位指名

 今年の1位指名は投手で良いと思う。競合覚悟で即戦力左腕の早川隆久(早大で行くか、中日が指名見え見えの高橋宏斗(中京大中京高)も競合必至で、もう一人の超高校級の中森俊介(明石商高)の単独指名もあるかもしれない。

【指名シミュレーション】 

 1位~中森俊介(明石商高・投手)…高校2年生のときよりエースとして活躍し、春夏甲子園4強の実績も光る世代ナンバーワン投手。ストレートの速さはもちろんのこと、変化球の精度も高く、先発、リリーフともに高いポテンシャルを秘める。

 2位~今川優馬(JFE東日本・外野手)…昨年の都市対抗では超攻撃型2番打者として、若獅子賞を獲得。迷いのないフルスイングが魅力のスラッガーだが、俊足かつ強肩で走攻守に優れている。明るい性格も魅力で看板選手になれる可能性大。

 3位~宇田川優希(仙台大・投手)…ゆったりしたフォームから投げ込む直球は球速以上の速さがあり、奪三振率が高い本格派。先発・リリーフどちらも問題ない。

 4位~赤上優人(東北公益文化大・投手)…中央では無名だが、早くから注目されていた右の本格派。野手で入学したのち投手に転向してドラフト候補になった逸材。

 5位~元 謙太(中京高・外野手)…昨夏の甲子園4強の原動力になった。元々は投手だが、プロでは野手で挑戦する。遠くに飛ばす力のある正真正銘のスラッガー

 6位~上川畑大悟(NTT東日本内野手…小柄だが堅実な守備で二遊間を守り、安定したスローイングも魅力。守備で食べていける選手で、藤田の後継者に最適。

 7位~萩原 哲(創価大・捕手…高校時代より強肩で注目を浴びており、守備では直ぐにでも戦力になる。思い切りの良い打撃はパンチ力も十分。

 このほかに下位または育成候補では、左腕の藤村哲之(横浜商大は先発・リリーフともに適性があり、150キロ右腕の佐藤蓮(上武大)もリストアップしている。

20年ドラフト予想☆DeNA~二遊間とクローザーの補強が上位進出のカギ

●チーム防御率も打率も悪くないが、成績は低迷…

 個人的に今年は優勝予想していたので、まさかAクラスまで危うくなるとは思っていなかった。 

 攻撃陣は打率.272で29本塁打、79打点の筒香嘉智(横浜高~09年①)がメジャー移籍した穴が不安視されたが、ラミレス監督の抜擢に佐野恵太(明大~16年⑨)が見事に応え、打率.335で現在首位打者、15本塁打で63打点と見事に穴を埋めた。

 佐野に負けじとベテランも結果を出し、梶谷隆幸(開星高~06年高③)が打率2位で16本塁打、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)が4位で打率3割を超えている。2年連続本塁打王のソトは19本塁打と期待値よりは物足りないものの、リーグ2位の本塁打数を放ち、攻撃陣は強化されている。

 投手陣はエースの今永昇太(駒大~15年①)が、9試合登板5勝で離脱し今季絶望、序盤活躍した平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)も離脱、上茶谷大河(東洋大~18年①)も出遅れた。ただ、大貫晋一(新日鉄住金鹿島~18年③)が8勝、濱口遥大(神奈川大~16年①)とベテランの井納翔一(NTT東日本~12年③)も6勝を上げ、今永の穴を埋めている。

 日本代表のクローザー山崎康晃(亜大~14年①)も6セーブと精彩を欠いているが、三嶋一輝(法大~12年②)が代わりを務め、リリーフ陣は昨年に続きエスコバーとパットン、石田健大(法大~14年②)がフル回転しており、リーグ3位の防御率は数字が示す通り改善している。

 こうなるとラミレス監督の謎采配がクローズアップされてしまうが、数字だけを見ればそれもあながち間違いではないと思ってしまう。

【10/11現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 98試合 45勝48敗5分④

 防御率…3.84③(3.93⑤)打率….268①(.246⑤)

 本塁打…112②(163③)盗塁23⑤(40⑥)

 得点423③(596③)失点393④(611⑤)得失点差30(▲15)

 

 ここ5年のドラフトは、隔年で一本釣りが多く、15年の今永、17年の東克樹(立命館大~17年①)、19年森敬斗(桐蔭学園高~19年①)と競合を避ける傾向があるが、これが当たっている。また、外れ1位ながら16年の濱口、18年の上茶谷とドラフト1位の大学生投手が着実に戦力になっている。

 このほか投手では大貫、野手では捕手の戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)に守備力に定評のある柴田竜拓(国学院大~15年③)、俊足の外野手・神里和毅(日本生命~17年②)が戦力になり、主砲の佐野は9位指名だ。

 即戦力選手がそれなりに戦力になってはいるが、主力としての物足りなさを感じるのも事実だ。高校生の育成は既知として進まず、合格点は投手では砂田毅樹(明桜高~13年育①)、野手では桑原将志福知山成美高~11年④)と乙坂智(横浜高~11年⑤)くらいで、主力となると筒香まで遡らなくてはならず、今ひとつチームに強さを感じないのはこういうところかもしれない。

 ここまで高校生選手が育たないのなら、できないことを無理をしないで、即戦力中心の指名のほうが良いのではないかと思ってしまう。

【DeNAの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、山崎に代わるクローザー候補、左の中継ぎ

 捕 手…打てる即戦力捕手

 内野手…一塁を除く全ポジション(年齢的に高校生、大学生、社会人)

 外野手…高校生スラッガー(右打ちがベスト)足のスペシャリスト 

 

●山崎に梶谷、ソト、ロペスと去就が不明な主力が多く、今年は即戦力路線か?

☆投手~将来のエース候補、山崎に代わるクローザー候補、左の中継ぎ

 先発はエース今永が27歳、大貫が26歳、平良に濱口、東が25歳、上茶谷が24歳とこれから全盛期を迎える選手が揃っているが、いかんせん故障が多く、全員が揃えば屈指の先発陣を形成となるが、なかなか難しそうだ。一方で、22歳以下の若手は伸び悩んでおり、今シーズンは京山将弥(近江高~16年④)の3試合登板の1勝が最高で、先発陣の底上げが遅れている。

 リリーフ陣はクローザー候補の獲得が急務になる。山崎のメジャー移籍の可能性もあるが、それ以前に今までどれだけ山崎に依拠していたのか、今シーズンは痛いほど味わった。

 結果、エスコバーがリーグ最多の48試合、パットンが45試合、石田と山崎が39試合、三嶋が37試合、国吉佑樹秀岳館高~09年育①)も36試合、平田真吾(ホンダ熊本~13年②)は31試合と30試合以上登板はリーグ最多の7名を数える。昨年も三嶋とエスコバーの登板数は70試合を超え、18年にフル回転した砂田や三上朋也(JX-ENEOS~13年④)は回復が遅れ、登板過多は選手層の薄さの表れとも言える。

 年齢的なバランスは悪くなく、投手の優先順位は山崎に代わるクローザー候補、即戦力の先発投手、中継ぎ左腕、高校生投手と言ったところか。

 クローザー候補であれば木澤尚文(慶大)伊藤大海(苫小牧駒大)伊藤優輔(三菱パワーシステムズ)は即戦力で、間違いなくリリーフ陣に厚みを与え、小郷賢人(東海大宇田川優希(仙台大)は2~3位で獲得できる可能性もある。

 即戦力の先発ではやはり早川隆久(早大大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車が1位候補になる。このほかの上位候補では森博人(日体大大江克哉(NTT西日本)小野大夏(ホンダ)、左腕では佐藤宏樹(慶大)伊藤将司(JR東日本をリストアップしている。

 中継ぎ左腕では藤井聖(ENEOS)は先発・リリーフどちらでもOKで、補強ポイントに合っており、他には長谷部銀次(慶大)今西拓弥(早大岡田和馬(JR西日本などがおススメ候補だ。

 高校生投手は補強の順位からすれば下位指名になりそうで、中位で根本悠楓(苫小牧中央高)川瀬堅斗(大分商高、下位では秋広優人(二松学舎大高)常田唯斗(飯山高)小牟田竜宝(青森山田高)を高く評価している。

 

☆捕手~打てる即戦力捕手

 18年は嶺井博希(亜大~13年③)、昨年は伊藤光(07年~オ高③)、そして今年は戸柱が最も多くの試合でマスクを被っているが、いずれも規定打席には達していない。ここ3年はレギュラーが決まらないまま、3人が代わる代わる主戦を務めている。

 2年連続で高校生捕手を獲得しているが、育成に時間がかかるポジションだけに、今年は即戦力捕手を獲得したい。打てる捕手が理想で、一番の候補は古川裕大(上武大)で、遊撃手転向もあったほど打撃面での評価が高い。今年は昨年と違い即戦力捕手が少なく、そのなかでも萩原哲(創価大)辻本勇樹(NTT西日本)は、ともに打撃面の評価も高い。

 

内野手~一塁を除く全ポジション(年齢的に高校生、大学生、社会人)

 内野手の補強は喫緊の課題になる。特に、二塁と遊撃のセンターラインのレギュラー不在はチームとして厳しい。一塁のロペスは既に37歳で退団が濃厚、内外野守れる本塁打王のソトも、今シーズンで契約満了を迎え去就が不明、三塁の宮崎も32歳で後継の育成が必要だ。

 一塁には元々本職の佐野がいるが、二塁の柴田、遊撃の倉本寿彦(日本新薬~14年③)と大和(樟南高~05年神④)ともに打力に乏しく、二遊間は打てる即戦力、三塁は将来のレギュラー候補を抑えておきたい。

 二遊間の即戦力なら牧秀悟(中大)は打って付けで、大学選抜の4番も務める右の大砲。このほかにシュアな打撃に、守備も巧い上川畑大悟(NTT東日本)中野拓夢(三菱自動車岡崎)、パンチ力もある峯本匠(JFE東日本)福永裕基(日本新薬はチームで4番を務める二塁手だ。

 遊撃には昨年のドラフト1位の森がおり、二塁手ほど即戦力を要してはいない。期待の伊藤裕季也(立正大~18年②)も控えており、三塁手同様に将来性のある高校生で良いと思う。三塁では井上朋也(花咲徳栄高)小深田大地(履正社高)山村崇嘉(東海大相模高)は遊撃にも挑戦しているスラッガー。遊撃では攻守にセンス抜群の度会隆輝(横浜高)や守備に定評のある土田龍空(近江高)、長打力が魅力の蔵田亮太郎(聖望学園高)が候補になる。

 

☆外野手~高校生スラッガー(右打ちがベスト)足のスペシャリスト

 外野はFAで去就が微妙の梶谷と神里がおり、桑原の復活や、ファームで結果を残している細川成也(明秀日立高~16年③)が台頭すれば、内野よりは緊急性が低い。

 課題は梶谷と神里に頼りっきりの機動力と、19~21歳の外野手が不在で、9名中6名が左打者という偏った構成で、高校生なら右打ちがベストだ。

 足のスペシャリストでは、五十幡亮汰(中大)並木秀尊(独協大逢澤峻介(トヨタ自動車はともに超がつく俊足で、今川優馬’(JFE東日本)は加えて長打力もあり、並木と今川は右打ちで補強ポイントにも合う。このほか、1位競合必至の佐藤輝明(近大)も候補に挙がっており、ここは果敢に挑んで良いと思う。また、巧打者の鈴木聖歩(JR東日本東北)への評価も高い。

 高校生スラッガーでは、来田涼斗(明石商高は将来トリプルスリーを狙える上位候補で、元謙太(中京高)渡邊翔太(昌平高)スラッガー、地元の鵜沼魁斗(東海大相模高)は、パンチ力もある俊足のリードオフマンで、来田以外であれば下位でも獲得できるチャンスがある。

 

●投手では早川と伊藤、野手では佐藤…日本ハムが選ぶナンバーワン選手は?

 今年は投手であれば早川隆久(早大栗林良史(トヨタ自動車、クローザー候補で木澤尚文(慶大)が1位候補で、早川を獲得できれば左腕王国が出来る。野手では佐藤輝明(近大)は外野のレギュラーを担える逸材で、早川と栗林、佐藤は競合の可能性が高い。

 そうなると敢えてウィークポイントに焦点を当てた補強で、他球団外れ1位指名見え見えの木澤や、補強ポイントに合う牧秀悟(中大)の単独指名なども、DeNAなら仕掛けてきても不思議ではない。 

【指名シミュレーション】 

 1位~木澤尚文(慶大・投手)…最速155キロのストレートで押し込む速球と、140キロで小さく落ちるカットボールが武器の球が速い変化球投手。奪三振率は脅威の13.10とクローザー向きと言える。

 2位~古川裕大(上武大・捕手)…1年時より公式戦に出場し、定評のあるインサイドワークに強肩も魅力だ。守備と同じくらい魅力なのが打撃力で、首位打者や最多本塁打、最多打点、最高出塁率など、打撃タイトルのほとんどを獲得している。

 3位~小郷賢人(東海大・投手)…最速155キロのストレートに、低めに決まるスライダーとフォークが武器の即戦力リリーバー。大学では2年からクローザーを務める。

 4位~蔵田亮太郎(聖望学園高・内野手…走攻守でパフォーマンスの高い、長身の高い大型遊撃手で守備も遜色なく、スケール感の漂う逸材で森のライバルになる。

 5位~伊藤将司(JR東日本・投手)…球の出どころの見づらい独特のフォームで、ストレートこそ140キロ半ばだが、変化球を駆使してゲームメークに長けている。

 6位~福永裕基(日本新薬内野手…社会人でようやく素質の開花した大型の二塁手で、長打力が魅力でチームでは4番を任せれている。

 7位~鈴木聖歩(JR東日本東北・外野手…左の巧打者で、入社1年目からレギュラーを獲得している。チームでは主に三番を担っている。

 このほかに下位または育成候補では、本格派左腕の長谷部銀次(慶大)や2メートルの大型サウスポーの今西拓弥(早大、同じ早大で長打力が魅力の外野手・瀧澤虎太朗(早大なども高く評価している。

20年ドラフト予想☆日本ハム~地元の逸材多し!優先するのは投手力か、攻撃力強化か?

●タレントが豊富でチーム防御率、打率とも2位も成績はなぜか低迷…

 チーム防御率、打率ともにリーグ2位。投手では有原航平(早大~14年①)と上沢直之専大松戸高~11年⑥)の甲乙つけがたい2人のエースピッチャーを抱え、宮西尚生関西学院大~07年大社③)という日本を代表するリリーバーがいる。

 攻撃陣も近藤健介(横浜高~11年④)と西川遥輝智弁和歌山高~10年②)、大田泰示東海大相模高~08年巨①)が3割を超え、渡邊諒(東海大甲府高~13年①)と合わせ最多の4人が打撃10傑に名を連ねる。主砲の中田翔大阪桐蔭高~07年高①)は打率は低いものも、現在打点王本塁打もリーグ2位につけている。近藤は出塁率得点圏打率が1位、西川も得点圏打率は同率1位で、盗塁は2位、大田も得点圏打率が3割を超える。

 これだけの個人成績を残すタレント集団にもかかわらず、チーム成績は5位と沈み、数字以上の強さを感じないのが、いまのファイターズだ。

【10/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 92試合 41勝48敗3分⑤

 防御率…4.01②(3.76③)打率….254②(.251②)

 本塁打…74④(93⑥)盗塁51⑥(48⑤)

 得点391③(560⑤)失点404④(586③)得失点差▲13(▲26)

 

 かつて楽天を率いた野村克也監督は、「日本ハムはチームが勝つために、一人ひとりの選手が何をすべきか知っているチーム」と賛辞を贈った。守り勝つ野球でAクラスの常連だったチームが今は見る影もない。それを象徴するのが失策数で、リーグワーストの58個、捕逸も8個と守備の乱れから痛い失点をするケースが目立つ。伝統の堅守もいまは昔の話になってしまった。

 昨年は先発不足から、「栗山流オープナー」なる投手起用が賛否をよんだ。今年は先発の数は揃ったと思うが、起用法が決まっているのは、先発では有原と上沢、杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)と新外国人のバーヘイゲンだけで、マルティネスは一時期抑えに回り、ベテランの金子弐大(トヨタ自動車~04年オ自)も中継ぎから先発、加藤貴之(新日鉄住金~15年②)も相変わらず打順2回りまでで、現在は中継ぎで起用法が安定していない。

 中継ぎも同様で勝ちパターンが確立できておらず、宮西をクローザーに据えているが、その宮西まで繋ぐパターンが決まっていない。玉井大翔(新日鉄住金~16年⑧)や秋吉亮(パナソニック~13年ヤ③)、左腕の堀瑞樹(広島新庄高~16年①)に公文克彦大阪ガス~12年巨④)などは、何となく場当たり的な起用が目立ち、見ていて気の毒に思うことがある。

 野手陣では怖いのは先述した西川、大田、近藤、中田、渡邊の5人だけで、下位打線の弱さは相変わらずだ。ようやく平沼翔太(敦賀気比高~15年④)が打撃でアピールをしているが、期待の清宮幸太郎早実高~17年①)は攻守に精彩を欠き、捕手と三塁手のレギュラーも決まらないままだ。

 かつて育成の日本ハムと呼ばれ、次々と有力選手が台頭してきたが、過去5年のドラフトのなかで主戦に成長したのは、加藤と堀、玉井だけ。ただ、いずれも先発でもリリーフ陣の柱に成り切れておらず、物足りなさは否めない。

 野手陣に至ってはレギュラーを獲得した選手はおらず、育成にも翳りが見える。広島ではないが、日本ハムも知らないうちに過信や慢心が生まれたのかもしれない。その証拠ではないが、昨年は社会人と大学生が各3名、高校生1名と即戦力路線に転換したが、河野竜生(JFE西日本~19年①)の2勝のみは誤算だっただろう。

 コロナ禍で微妙になったが、エース有原とチームの盗塁数の半分を稼いでいる西川が揃ってポスティングでMLB挑戦を希望しており、この2人が抜けるとチームの戦力は大幅に落ちてしまい、若手の台頭が喫緊の課題になる。 

日本ハムの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、即戦力のクローザー候補

 捕 手…必要なし

 内野手…三塁と遊撃の即戦力(俊足)

 外野手…(西川流失に備えた)即戦力と将来の主軸候補 

 

●強化するのは投手力?攻撃力?かつての守り勝つ野球を復活させたい

☆投手~将来のエース候補、即戦力のクローザー候補

 一番の関心ごとは、MLB挑戦を希望しているエース有原の去就で、今年は勝ち星こそ伸びていないが、1年間ローテーションを守れる大黒柱がいるいないとではまるで違う。その有原と杉浦、加藤が28歳、上沢と覚醒を予感させる上原健太(明大~15年①)が26歳、河野は22歳と駒は揃いつつあり、吉田輝星(金足農高~18年①)や北浦竜次(白鷗大足利高~17年⑤)の若手も控えている。

 リリーフ陣の駒は多く、玉井に秋吉、井口和朋(東農大オホーツク~15年③)に西村天裕(NTT西日本~17年②)、故障で離脱中だが石川直也(山形中央高~14年④)もいる。左腕も豊富で宮西に堀、公文が控え大きな穴はない。ただ、元々セットアッパーの37歳の宮西をクローザーに据えるのは、裏を返せば抑えを任せられる投手がいない証で、クローザーの確立は喫緊の課題だ。

 今年は、地元出身の伊藤大海(苫小牧駒大)と相思相愛と言われている。伊藤は先発もこなすが、大学日本代表でクローザーを務めており補強ポイントにはピッタリだ。伊藤以外の上位では早川隆久(早大に、エース候補として中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)が候補になる。

 年齢的なバランスは悪くなく、左右にも偏りがない。即戦力で先発候補を厚くするなら赤上優人(東北公益文化大)内間拓馬(亜大)が候補になり、森博人(日体大木澤尚文(慶大)、宇田川優希(仙台大)、左腕の鈴木昭汰(法大)は先発でも抑えでもいけ、地元の河村説人(星槎道都大)は伸びしろもある。社会人では伊藤将司(JR東日本西田光汰(JR東日本をリストアップしている。

 高校生投手は昨年指名がないので、今年は確実に抑える必要がある。高田琢登(静岡商高)川瀬堅斗(大分商高を上位候補に据え、今年は地元北海道に有力選手が多く根本悠楓(苫小牧中央高)阿部剣友(札幌大谷高)の両左腕、片山楽生(白樺学園高)がおり、今年は地元枠の指名に困ることはなさそうだ。このほかに左腕の松本隆之介(横浜高)上田洸太朗(享栄高)、2メートルの大型投手秋広優人(二松学舎大高)に総合力の高い常田唯斗(飯山高)の評価が高い。

 

☆捕手~必要なし

 現在、コーチ兼任の鶴岡慎也三菱重工横浜~02年⑧)を含め8名おり人数的にも補強の必要はない。24歳の清水優心(九州国際大高~14年②)と27歳の宇佐見真吾(城西大~15年巨④)が正捕手候補で、石川亮(帝京高~13年⑧)も控えており、質量ともに問題はない。

 

内野手~三塁と遊撃の即戦力(俊足)

 内野のレギュラーには、一塁の中田はまだ31歳でまだまだ衰える年ではなく、4番一塁を競う清宮にとっては攻守に超える壁が高い。二塁には25歳の渡邊がいるので、やはり三塁と遊撃になる。

 ただ、今年ケガで離脱したものの20歳の清水祐希(花咲徳栄高~18年②)が序盤戦活躍し、渇望していたレギュラー候補が出てきた。遊撃は平沼と26歳の石井一成(早大~16年②)がレギュラー争いをしており、中島卓也(福岡工高~08年⑤)も健在で、三塁はレギュラー候補、遊撃は将来の主力になり得る選手の獲得を目指したい。また、機動力強化のために俊足の選手も必要だ。

 三塁の即戦力は佐藤輝明(近大)が一番の候補で、広い札幌ドームをも苦にしない長打力を秘めている。外野も守れることから、西川の後継者としても起用の幅は広がりそうだ。現状、三塁には横尾俊健(慶大~15年⑥)やビヤヌエバもおり、将来性を見越した指名でスラッガー井上朋也(花咲徳栄高)山村崇嘉(東海大相模高)、巧打者の小深田大地(履正社高)は将来レギュラーをはれる逸材だ。

 遊撃手では牧秀悟(中大)はレギュラー候補になるし、堅守が売りの上川畑大悟(NTT東日本)は失策の多い内野陣では貴重な戦力になる。将来性なら土田龍空(近江高)は堅い守備に俊足のバランスの取れた選手、スラッガー中山礼都(中京大中京高)蔵田亮太郎(聖望学園高)などが候補になる。

 

☆外野手~(西川流失に備えた)俊足の即戦力と将来の主軸候補

 西川が残留するなら外野陣は鉄壁の布陣で、近藤27歳、西川28歳、大田も30歳で数年は安泰だ。ただ、この代わりになるのが松本剛(帝京高~11年②)と内外野守れる杉谷拳士(帝京高~08年⑥))のみで、即戦力を獲得して控えの層を厚くしたい。盗塁数が少ないので、俊足の選手が理想だ。

 先述した佐藤以外に、五十幡亮汰(中大)並木秀尊(独協大長沢吉貴(東芝は超がつく俊足。足だけでも飯が食える選手で、長沢は守備力にも定評がある。今年は地元選手に逸材が多い話をしたが、今川優馬(JFE東日本)も道産子で俊足も兼ねたスラッガーで補強ポイントに合う。

 一方で、強固なレギュラーがいる間に、将来の主軸になる選手をじっくり育成するのも手で、そうなると来田涼斗(明石商高西川僚祐(東海大相模高)が双璧で、3~4年後はクリーンアップを任せられる逸材だ。また、プロ志望合同練習会で評価を高めた石川慧亮(青藍泰斗高)を高く評価している。

 

●投手では早川と伊藤、野手では佐藤…日本ハムが選ぶナンバーワン選手は?

 日本ハムは、その年1番の選手に行くのがチームの揺るがない方針だ。今年で言えば投手では早川隆久(早大伊藤大海(苫小牧駒大)中森俊介(明石商高に野手の佐藤輝明(近大)のいずれかが候補になる。ただ今年は、地元出身で先発、クローザーどちらもこなせる相思相愛の伊藤の指名が濃厚だ。

【指名シミュレーション】 

 1位~伊藤大海(苫小牧駒大・投手)…大学2年より大学選抜に選出され、クローザーを務めた剛腕。155キロの威力のあるストレートに、多彩な変化球で制球力も申し分ない。それより打者に立ち向かうハートの強さが評価され、リリーフの適性が高い。

 2位~西川僚祐(東海大相模高・外野手)…名門校で1年生より4番を務め、高校通算53本塁打の右の大砲。詰まりながらもスタンドまで運ぶパワーが魅力の選手で、じっくり育てれば清宮と4番争いをするライバルになり得る。

 3位~川瀬堅斗(大分商高・投手)…長身から投げ下ろす角度のあるストレートを武器に、スライダーやチェンジアップの変化球も一級品。

 4位~高田琢登(静岡商高・投手)…中央では無名だが、最速148キロのストレートに変化球で緩急をつけた巧みな投球術が武器の完成度の高いサウスポー。

 5位~内間拓馬(亜大・投手)…最速149キロのストレートと精度の高いカーブやスライダー、ツーシームが武器の本格派右腕で、まだ伸びしろを期待させる大器。

 6位~並木秀尊(独協大・外野手)…50メートル5秒台の俊足で、守備も定評がある。課題の打撃も発展途上中で、ミートに長けた広角に打ち分ける技術がある。

 7位~片山楽生(白樺学園高・投手…肘を柔らかく使ったフォームから、伸びのある速球はキレがあり、昨秋の神宮大会で結果を残した。打撃も良く4番を務める。

 このほかに下位または育成候補では、本格派右腕の西田光汰(JR東日本はリリーフの層を厚くするし、高校生では完成度の高い常田唯斗(飯山高)、大型左腕の阿部剣友(札幌大谷高)は育成でもプロ入りを熱望している。スラッガー石川慧亮(青藍泰斗高)も下位や育成で獲得し、育ててみたい選手だ。

20年ドラフト予想☆中日~強竜打線復活に向け、野手陣の強化を優先したい

●得点力不足は今年も解消されず…Aクラス争いがやっとの不本意なシーズン

 個人的に今年は中日を評価していて、優勝は難しいかもしれないが、上位争いに喰い込む可能性は十分あると思っていた。しかし今年もBクラスが定位置で、ようやく3位になったが、2位阪神から4位DeNaまで3ゲーム差内の混戦状態で、何とかAクラスを確保し、8年連続のBクラスは避けたいところだ。

 ここ数年の課題は攻撃陣で、昨年はチーム打率はリーグ1位も、機動力も長打も不足し、得点はリーグ5位と打率の高さが得点力に結びついていなかった。今年は…と言うと、チーム打率、本塁打、盗塁数、得点数すべてリーグ最下位で、打てない、一発もない、走れないのないないづくしで、これでは上位進出は厳しい。

 今シーズン理解できなかったのは、これだけ打てないにも関わらず、まったく補強をしなかったことだ。育成から外国人選手を支配下にしただけで、同じリーグは難しいにしても、ソフトバンク楽天日本ハムなど打力のあるチームには出番の少ない有力選手がおり、成立するトレードもあったと思うが…結果、巨人の独走を許す展開になってしまった。

【10/2現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 91試合 42勝44敗5分③

 防御率…3.86④(3.72③)打率….248⑤(.263①)

 本塁打…54⑥(90⑥)盗塁22⑤(63④)

 得点327⑥(563⑤)失点375④(544①)得失点差▲48(+19)

 

 その課題の攻撃陣だが、ある解説者が中日の主力で他チームでもレギュラーになれるのは、大島洋平日本生命~09年⑤)と高橋周平(東海大甲府高~11年①)、ビシエドくらいしかいないと言っていたが、まさしくその通りだと思う。大島と高橋はともに3割を打ち、ビシエドがチームでただ一人2桁本塁打を放っている。

 規定打席にはもう一人京田陽太(日大~16年②)がクリアしているが、守備は12球団ピカ一も打率.231はリーグ最下位は物足りない。昨年ブレイクした阿部寿樹(ホンダ~15年⑤)、チームリーダーの平田良介大阪桐蔭高~05年高①)はともに不振、アルモンテは今年も故障で離脱、捕手のレギュラーは相変わらず決まっていない。

 昨年もそうだが、中日打線を見ていて思うことは、チームバッティングになっていないような気がする。個々が好き勝手に打っている印象で、広い球場でホームランバッターも少ない、盗塁も大島や京田以外に期待できないのなら、どうやって1点をもぎ取る姿勢が大事だ。

 投手陣はエース大野雄大(佛教大~10年①)が防御率2点台で7勝とチームを支えている。このほかに柳裕也(明大~16年①)と福谷浩司(慶大~12年①)、左腕の松葉貴大(大体大~12年オ①)のドラフト1位カルテットに、ルーキー岡野祐一郎(東芝~19年③)がローテーションを守っている。

 クローザーは当初は岡田俊哉智弁和歌山高~09年①)が務めていたが、不振でRマルティネスに代わり、マルティネスはリーグ2位の14セーブを挙げている。その岡田が中継ぎにまわり、祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)と福敬登(JR九州~15年④)とともに勝ちパターンを担っている。

 投手陣も決して万全とは言い難いが、現状の打線を見れば、かつて落合監督が実践していた投手陣を中心に、1点を確実にもぎ取り、守り勝つ野球が必要だと思う。

【中日の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補(高卒左腕がベスト)、大野に次ぐ即戦力

 捕 手…正捕手候補

 内野手…即戦力の二塁手

 外野手…ポスト大島の俊足巧打の即戦力、将来の主軸候補 

 

●課題は攻撃陣の底上げで、長打力と機動力の補強を進めたい

☆投手~将来のエース候補(高卒左腕がベスト)、大野に次ぐ即戦力

 一番の関心ごとはエース大野雄のFAの去就だ。昨年、防御率1位で今年も7勝を上げ、両リーグぶっち切りの8完投が凄い。年齢は32歳だが、中日の現状を見ると何が何でも引き止めたい選手だ。

 とにかくこの間のドラフト1位投手が今一つで、加えて期待の選手の故障が目立つ。1位投手では、柳は合格点で福谷も復活した。ただ、鈴木翔太聖隷クリストファー高~13年①)に小笠原慎之介東海大相模高~15年①)、鈴木博志(ヤマハ~18年①)はいずれも2軍調整中で戦力になり切れていない。

 期待の若手でも、昨年開幕投手も務めた笠原祥太朗(新潟医療福祉大~16年④)、プロでその才能を開花させた梅津晃大(東洋大~18年②)はともに故障で離脱。クローザー候補の藤嶋健人(東邦高~16年⑤)に、先発で期待された清水達也(花咲徳栄高~17年④)に山本拓実(市西宮高~17年⑥)も伸び悩んでいる。何と言っても、ファームで規定投球回数に達しているのが、36歳の元エースの吉見一起トヨタ自動車~05年大社希)では泣けてくる…。

 年齢バランスは悪くなく、実績を残した選手がコンスタントに結果を残せば強固な投手陣になるのだが、選手の好不調にムラがあり、必要なのは即戦力投手と大野雄に次ぐエース候補の獲得になる。

 即戦力では早川隆久(早大伊藤大海(苫小牧駒大)の大学生の両雄が候補になるが、最近の中日は地元優先の指名になるので、即戦力投手なら地元の栗林良史(トヨタ自動車が1位候補になるだろう。

 このほかの上位候補では、将来のエース候補で中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)山下舜平大(福岡大大濠高)に、即戦力では評価の高い森博人(日体大木澤尚文(駒大)、社会人で大江克哉(NTT西日本)松本竜也(ホンダ鈴鹿を上位でリストアップしている。

 中位以降では、左腕の藤村哲之(横浜商大は手薄な先発左腕候補、同じ左腕の山本一輝(中京大松向輝(日本製鉄東海)は地元の隠し玉の逸材。リリーフでは150キロ右腕の平川裕太(鷺宮製作所打田雷樹(大商大)の評価が高い。

 年齢バランスを崩さないためにも、高校生投手は1~2名は抑えておきたい。北信越まで範囲を広げると地元に今年は逸材が多く、高田琢登(静岡商高)を筆頭に、石川にには嘉手納浩太(日本航空石川高)加藤優弥(金沢龍谷高)、岐阜には加藤翼(帝京大可児高)、長野に常田唯斗(飯山高)、富山の佐伯成優(高岡一高)、福井には笠島尚樹(敦賀気比高)、地元の愛知に上田洸太朗(享栄高)と各地に逸材は揃っている。このほかに豆田泰志(浦和実高)小牟田竜宝(青森山田高)松木平優太(精華高)への評価が高い。

 

☆捕手~正捕手候補

 現在は木下拓哉トヨタ自動車~15年③)が頑張っているが、ここ数年正捕手と呼ばれる選手が不在だ。FAで加入した大野奨太東洋大~08年日①)に、昨年最もマスクを被った加藤匠馬(青学大~14年⑤)もレギュラーを獲得することはできていない。

 今年は昨年と違い捕手に即戦力が少なく、打力を優先するなら古川裕大(上武大)がいるが、昨年、郡司裕也(慶大~19年④)を獲得しており、高校生にシフトするほうが良いと思う。内山壮真(星稜高)二俣翔一(磐田東高)の地元の逸材の上位候補、足もある古谷将也(成田高)に強打の土井翔太(郡山高)のいずれかは獲得したいところだ。

 

内野手~即戦力の二塁手

 内野のレギュラーには、同じ26歳の高橋と京田がおり、期待のドラ1コンビの根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)と石川昴弥(東邦高~19年①)が次に控え、三塁と遊撃の補強は急ぐ必要はない。課題はやはり二塁手で、牧秀悟(中大)は即戦力の強打の二塁手、しかも右打ちと補強ポイントに見事に合致する。

 年齢バランスでも23~25歳がおらず、大学生と社会人の即戦力に絞り指名すべきだと思う。守備だけなら既にプロレベルの元山飛優(東北福祉大瀬戸西純(慶大)、強打の公家響(明大)の大学生に、社会人ではともにヒットメーカーの峯本匠(JFE東日本)中野拓夢(三菱自動車岡崎)は俊足でチームの盗塁数不足解消にもなる。

 高校生では、井上朋也(花咲徳栄高)小深田大地(履正社高)入江大樹(仙台育英高)、地元の中山礼都(中京大中京高)への評価が高い。ただ、彼らは当然良い選手だが、石川はファームで首位打者、根尾もリーグ2位の打点を挙げており、この2人を獲得しているのであれば、高校生指名は今年は見送って良いと思う。

 

☆外野手~ポスト大島の俊足巧打の即戦力、将来の主軸候補

 外野手はかなり深刻だ。レギュラーの大島が35歳、主力の平田に福田永将(横浜高~06年高③)がともに32歳を迎え、ファームではルーキーの岡林勇希(菰野高~19年⑤)が結果を出しているが、世代交代が緊急の課題になる。特に打率・盗塁ともにチームナンバーワンの大島の代わりを見つけるのは難しく、早急に後継者の獲得が必要だ。

 一番の候補は佐藤輝明(近大)で、俊足かつ長打力もあり、中日の弱点を一気に補える。時間は要するが来田涼斗(明石商高も、佐藤に負けず劣らずの素質があり、将来に向けて大きな指名になると思う。

 中日の弱点は長打力と機動力だ。長打では今川優馬(JFE東日本)は佐藤と同じ俊足のスラッガー赤尾光祐(東海大札幌は右のパワーヒッターだ。高校生では元謙太(中京高)牛島希(九州学院高)は将来の中軸候補。機動力を活かすなら、五十幡亮汰(中大)並木秀尊(独協大は、ともに超がつく俊足、逢澤崚介(トヨタ自動車長澤吉貴(東芝はさらに巧打を加えた即戦力のリードオフマン候補だ。

 

●今年は地元指名にこだわらず、即戦力野手に行くべき

 この間1位指名地元志向が強く、安全策で栗林良史(トヨタ自動車の単独指名の可能が高いが、弱点は打撃陣で競合覚悟で佐藤輝明(近大)に行くべきだと思う。栗林は外れ指名でも獲得できる可能性があり、ここは佐藤にチャレンジして欲しい。

 佐藤・栗林を外した場合は、3年連続になるが牧秀悟(中大)五十幡亮汰(中大)、将来性豊かな来田涼斗(明石商高の野手指名で良いと思う。

【指名シミュレーション】 

 1位~牧 秀悟(中大・内野手…走攻守三拍子揃った二塁手で、3年のリーグ戦で首位打者を獲得したシュアな打撃力は一級品。大学ジャパンで3、4番の中軸を担い、主将も務めたキャプテンシーもあり、内野の要になれる。

 2位~井上朋也(花咲徳栄高・外野手)…一年生のときに中軸として、夏の甲子園で全国制覇を果たした。高校通算47本塁打の長打力も魅力だが、本塁打はヒットの延長だとして安打を狙う姿勢は評価できる。本職は外野だが、三塁も守ることができる。

 3位~元山飛優(東北福祉大内野手…遊撃の守備は既にプロレベルと評価が高く、リーグ戦で首位打者1度、打点王2度を獲得しており、京田のライバルになれる。

 4位~松本竜也(ホンダ鈴鹿・投手)…高卒3年目で、まだまだ伸びしろのある速球派。今年に入り、球速が5キロも更新し151キロをマークしている。

 5位~豆田泰志(浦和実高・投手)…昨年の県大会で、強豪・浦和学院高を完封して注目を集めた。投手としては小柄だが、制球力も良い本格派右腕のエース候補。

 6位~平川裕太(東北福祉大・投手)…大学時代に数々のタイトルを獲得して注目された投手。小柄ながら最速151キロでストレートで強気に攻めるリリーバー候補。

 7位~上田洸太朗(享栄高・投手…180センチを超える左腕で、140キロのストレートを軸にスライダーとカットボールが武器。

 このほかに下位または育成候補では捕手指名は必要で、土井翔太(郡山高)は下位でも獲得できる。高校生ではほかに松木平優太(精華高)内星龍(履正社高)入江大樹(仙台育英高)は中日が高く評価している選手だ。

 大学生・社会人では、打撃に課題はあるが瀬戸西純(慶大)はまさに守備の名手、最速148キロ左腕の松向輝(日本製鉄東海)の一芸に秀でている選手の指名も可能性が高い。

20年ドラフト予想☆西武~課題は投手力強化だが、三塁と外野の補強も急務

●今年もチーム防御率に改善の兆しなし…自慢の打線も湿りがち

 パ・リーグ2連覇中だが、現在は首位から7ゲーム差を開けられ、3連覇に黄色信号が灯っている。

 2年連続でチーム防御率は最下位だったが、山賊打線と呼ばれる超がつく強力打線で勝ち抜いてきた。一昨年は浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年③)が打点王山川穂高(富士大~13年②)が本塁打王秋山翔吾(八戸大~10年③)が最多安打のタイトルを獲得。中村剛也大阪桐蔭高~01年②)に外崎修汰(富士大~14年③)、森友哉大阪桐蔭~13年①)も二桁本塁打を放つと、金子侑司(立命大~12年③)と外崎が走りまくり、強打と機動力が見事にフィットした。

 昨年は森が首位打者、山川が本塁打王、中村が打点王、秋山が最多安打、金子が盗塁王に輝き、外崎と源田壮亮トヨタ自動車~16年③)の鉄壁の二遊間が攻守で活躍。栗山巧(育英高~01年④)と木村文和(埼玉栄高~06年高①)も合わせ、主力メンバー9名が欠けることなくシーズンを乗り切った。

 投手陣も悪いながら、一昨年はエース菊池雄星花巻東高~09年①)がリーグ2位の防御率、多和田真三郎(富士大~15年①)が最多勝を獲得。昨年は新加入のニールが11連勝を果たし、後半の追い上げに大きく貢献した。リリーフでは、平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)が81試合登板の大車輪の活躍を見せ、クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)もリーグ3位の30セーブを挙げた。

 ただ、一昨年は浅村が楽天、菊池がマリナーズ。今シーズンは秋山がレッズへと、ともにFAで移籍し、もはやオフで常態化している主力選手の離脱に歯止めをかけることができなかった。

【9/27現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 84試合 40勝42敗2分④

 防御率…4.44⑥(4.35⑥)打率….244④(.265①)

 本塁打…83③(174②)盗塁56④(134①)

 得点361⑤(756①)失点387⑥(695⑥)得失点差▲31(+61)

 

 まずは課題の投手陣だが、チーム防御率は今年もリーグ最下位で、現状は昨年よりも悪い。先発陣はニールがリーグ最多の15試合に登板するも、3勝で防御率も5点台と成績を大きく落としている。2年目の松本航(日体大~18年①)と高橋光成前橋育英高~14年①)がローテションを守っているが、軸になる投手が不在だ。

 特に予想外だったのが、昨年7勝を挙げた今井達也(作新学院高~16年①)の不振で、シーズン前の好調さを見ると、今年はエースの働きをすると思われていた投手が、中継ぎに回り、まさかファームに落ちるとは思わなかった。

 一方でリリーフ陣は整備され強固になった。クローザーの増田はリーグ2位の22セーブで、防御率1点台を抜群の安定感を誇り、昨年は平井と増田頼みだったが、ストレートに力のある平良海馬(八重山商工高~17年④)と新加入のギャレットがセットアッパーを務める勝ちパターンが形成された。

 中継ぎでも2年目の森脇亮介(セガサミー~18年⑥)が防御率1点台の安定感を見せ、左キラーの小川龍也(千葉英和高~09年中②)、ルーキーの宮川哲(東芝~19年①)も35試合に登板し8ホールドとリリーフに適正を見せている。

 打線はどうかというと、この2年間打ちまくった打線も影を潜め、チーム打率と本塁打数はリーグ3位、打力と並行するように機動力も落ちリーグ4位と、目に見えて得点力が落ちている。投手の誤算が今井なら野手は森で、昨年の首位打者が打率.250でスタメンをしばしば外れるなど、攻守のキーマンの不振はチームの成績に顕れている。

 新加入のスパンジェンバーグとベテランの栗山、キャプテンの源田が頑張っているが、森と山川、外崎の打線の軸になる主力中の主力が軒並み成績を落としている。シーズン前の課題だった秋山の穴は想像以上に大きく、打線全体のバランスが崩れてしまった。また、レギュラーとの差がある控え野手も、主力の離脱や不振をチャンスに変える選手が現れず、課題がそのまま結果に繋がってしまった。

【西武の補強ポイント】

 投 手…即戦力の先発投手で左腕ならベスト

 捕 手…不要だが、控えの層を厚くしたい

 内野手…年齢バランスで大学生野手(左打ちならベスト)

 外野手…即戦力大学生と将来の主軸候補 

 

●基本は投手だが、野手ではパワーヒッターが欲しい

☆投手~即戦力の先発投手で左腕ならベスト

 この間のドラフト1位選手が着実に成長し、24歳の高橋と25歳の松本、今年は不振だが22歳の今井もおり、この3人のエース争いが先発陣の底上げに繋がる。さらにルーキー左腕の浜屋将太(三菱日立PS~19年②)にサブマリンの與座海人(岐阜経大~17年⑤)、ベテランの雰囲気漂う本田圭佑東北学院大~15年⑥)もまだ27歳と楽しみな若手が揃ってきた。ここに病気療養中の18年最多勝の多和田が戻ってくれば、先発投手陣の駒は揃いつつある。

 リリーフ陣はFAを取得した増田の去就が気になるところだが、ルーキーの宮川と平良のクローザー候補に名乗りを上げ、鉄腕の平井に森脇、左腕の小川と実績のある選手が揃っている。ファームでも野田昇吾(西濃運輸~15年③)や十亀剣JR東日本~11年①)が控えているが、やはり即戦力の先発投手が必要だ。

 年齢バランスはさすがで穴はなく、補強ポイントを明確にして獲得できるのは強みだと思う。また、今年は地元・埼玉に有望な高校生投手が揃っており、将来に向けて獲得したいところだ。

 1位候補の一番手は、早川隆久(早大で即戦力の先発に加え、西武に不足している先発左腕で是が非にも欲しい投手だ。伊藤大海(苫小牧駒大)はクローザーへの適性もあるが先発でも十分に行ける。また、大道温貴(八戸学院大はゲームメーク能力に長けた完成度の高さで、いずれも先発ローテーションに食い込む力はある。

 将来のエース候補ではプロ志望を表明した高橋宏斗(中京大中京高)を最上位候補に位置付け、中森俊介(明石商高山下舜平大(福岡大大濠高)小林樹斗(智弁和歌山高)を上位でリストアップしており、敢えて競合を避けて1位単独指名もあるかもしれない。また、大型左腕の松本隆之介(横浜高)も高く評価しており、上位指名が濃厚だ。

 このほか即戦力では、ともに本格派の森博人(日体大宇田川優希(仙台大)、左腕の佐藤宏樹(慶大)は上位候補、中位では打田雷樹(大院大)や左腕の山野太一(東北福祉大は先発、リリーフともに適性があり、リリーフ候補で小郷賢人(東海大もリストアップしている。また、右肩の故障の回復状況にもよるが吉高壮(日体大も候補の一人だ。社会人では、先発候補で森田駿哉(ホンダ鈴鹿、リリーフで岡田和馬(JR西日本の両左腕をリストアップしている。

 高校生投手では、小辻鷹仁(瀬田工高)嘉手納浩太(日本航空石川高)木下幹也(横浜高)、左腕では高田琢登(静岡商高)福島章太(倉敷工高)の評価が高い。有望選手が揃う地元では、ストレートに力のある内田了介(埼玉栄高)、小柄だが本格派右腕の豆田泰志(浦和実高)、右サイドハンドからキレのある投球が持ち味の美又王寿(浦和学院高)が指名を待っている。

 

☆捕手~現状不要だが、控えの層を厚くしたい

 捕手はレギュラーの森に、打撃も良いルーキーの柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)とベテランの岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)もまだ31歳で補強の必要はない。ただ、人数が6名と少なく、ある解説者がコメントしていたが、森の打撃を活かすため外野コンバートなどがあるなら話は別で、3~4番手を任せられる捕手が欲しい。

 ただ、今年はあまり捕手に興味はないらしくリストアップしている選手が少ない。打てる捕手の古川裕大(上武大)や、走力もある辻本勇樹(NTT西日本)などが候補になり、森のコンバートも現実味を帯びる補強になるかるもしれない。

 

内野手~年齢バランスで大学生野手(左打ちならベスト)

 内野のレギュラーは、一塁の山川が29歳、二塁の外崎が28歳、遊撃の源田が27歳と暫くは問題ない。急務なのは37歳のポスト中村の三塁手で、現状は山田遥楓(佐賀工高~14年⑤)と佐藤龍世(富士大~18年⑦)が候補になる。

 控えでは山野辺翔(三菱自動車岡崎~18年③)や呉念庭第一工大~15年⑦)がいるが、レギュラーとの差は厚く、ここはレギュラーとの差を埋める即戦力が必要で、源田と呉以外は右打者が多く、左打者が欲しい。

 年齢バランスで穴はないが、内野の層を厚くするなら牧秀悟(中大)で、二塁と遊撃を守れる大学日本代表の主力選手。牧が二塁のレギュラーのはまれば、内外野守れる外崎を三塁や外野で使えるようになる。他に元山飛優(東北福祉大矢野雅哉(亜大)は守備の巧い左打ち、社会人ではパンチ力のある峯本匠(JFE東日本)や俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎)などの即戦力野手がいる。

 外崎や源田は年齢的もあと5年は安泰で、その間に高校生野手をじっくり育成することもできる。ここも地元で井上朋也(花咲徳栄高)はポスト中村の強打の三塁手蔵田亮太郎(聖望学園高)は左の長距離砲だ。また、広角に打てる度会隆輝(横浜高)も高く評価している。

 

☆外野手~将来のクリーンアップ候補 

 西武の場合、秋山も抜けたことで内野手より外野手のほうが深刻だ。栗山が37歳、木村も32歳、金子も30歳と世代交代が着実に近づいている。チャンスは十分にあるが、俊足巧打の鈴木将兵(静岡高~16年④)、長打が魅力の川越誠司(北海学園大~16年②)や戸川大輔(北海高~14年育①)、高木渉(真颯館高~17年育①)も、現状では「帯に短したすきに長し」で、鈴木以外はレギュラー獲得の足掛かりも掴めていない。

 即戦力なら大学生なら佐藤輝明(近大)、社会人では今川優馬(JFE東日本)がナンバーワンで、ともに俊足と長打力があり、佐藤や今川が加わった西武打線はさらに破壊力を増す。また将来の主軸で来田涼斗(明石商高はポスト秋山どころか将来はトリプルスリーを狙え、元謙太(中京高)は右の長距離砲で将来の4番候補になる。五十幡亮汰(中大)は打撃は発展途上だが、超俊足のリードオフマン候補、逢澤崚介(トヨタ自動車は一番・中堅を担っており、補強ポイントと合致する。

 

●狙いは即戦力投手も得意の高校生右腕の単独指名もあるか?

 1位指名は早川隆久(早大で良いと思うが、あえて攻撃力重視で三塁・外野の穴を埋めることができる佐藤輝明(近大)のどちらかになりそうだ。ともに競合してでも獲りに行かなくてはならない選手だ。

 早川・佐藤を外した場合は、大道温貴(八戸学院大森博人(日体大が次の候補になり、今井や高橋のように競合を避け単独指名に行くなら中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)、将来性豊かな来田涼斗(明石商高の指名もある。

 

 1位~高橋宏斗(中京大中京高・投手)…ストレートの威力だけなら、松坂以上と言われる剛腕。序盤から140キロ後半を投げ込み、投球数が増えた終盤でも150キロを投げるポテンシャルは超高校級。変化球も多彩で、完成度が高いエース候補。

 2位~森 博人(日体大・投手)…サイド気味のスリークオーターから最速155キロのストレートが武器。3年時は主にリリーフだったが、今シーズンは先発も務め、どの役割でもこなせる即戦力。状況次第では1位指名もある即戦力右腕。

 3位~度会隆輝(横浜高・内野手…名門・横浜高で1年春からベンチ入りした素質で、主に3、4番を務めた。広角に打てる打撃技術は秀逸で、将来の中軸候補。

 4位~佐藤宏樹(慶大・投手)…左肘の故障で苦戦したが、1年に最優秀防御率を獲得し実績は十分。左打者の外角に決まるキレのあるスライダーはまさに伝家の宝刀。

 5位~内田了介(埼玉栄高・投手)…最速146キロのストレートとフォークが武器で、奪三振の高いパワーピッチャー。チームでは4番・投手を務め素質は抜群。

 6位~山野太一(東北福祉大・投手)…最速149キロで腕の振り方がしなやかなサウスポーで、ピンチでも動じない技術を兼ね備えており、リリーフでの適性が期待できる。

 7位~吉高 壮(日体大・投手…この間、投手育成に定評のある日体大で森と並ぶ主戦力で、故障が癒え力強いストレートが戻れば大化けする可能性を秘めている。

 このほかに下位または育成候補でも投手が中心で、高校生であれば左腕の福島章太(倉敷工高)や中学時代から注目されていた木下幹也(横浜高)、大学生では竹本祐瑛(慶大)をリストアップしている。

 社会人では左腕の森田駿哉(ホンダ鈴鹿に昨年ドラフト上位候補だった和歌山東高の落合秀市(関西兵庫)を候補に挙げているのも興味深い。