ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆阪神~盤石な投手陣は今年も健在か?優勝のカギを握る新外国人選手

 昨年はまさに投高打低で、リーグナンバーワンの防御率に対し、チーム打率は4位、盗塁はセ・リーグで唯一の3桁でリーグ1位も、得点はリーグ最下位に沈み、87失策はリーグ最多で、良くも悪くもチグハグなシーズンになった。

 セ・リーグは本当に混戦だが、優勝となると阪神は打撃陣に課題があり、またベテランへの依存度が高く「4位」予想とした。

 今年の阪神の浮沈のカギを握るのが、5人の新外国人選手だ。投手では防御率1点台の中継ぎのジョンソン、19セーブのドリスがチームを去った。そこで先発のガンケル、中継ぎにソフトバンクから移籍したスアレス、セットアッパー候補で抑えのスペシャリストのエドワーズを獲得し、2人の穴を埋められるかが課題になる。

 野手は今年こそは、中軸を任せられる大砲が必要だ。メジャー通算92本塁打の長距離砲ボーアと、昨年の韓国プロ野球打点王サンズを獲得し、この2人が額面通りに活躍すれば一気に課題が解消される。毎年、開幕前は「今年は当たり、バースの再来」と呼ばれた助っ人が、シーズン早々に馬脚を表すのもお家芸で心配は尽きない…。 

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 3位 69勝68敗6分 .251    94本 100個  538点  3.46  566点

 18年 6位 62勝79敗2分 .253    85本   77個  577点  4.03  628点

 17年 2位 78勝61敗4分 .249  113本   70個  589点  3.29  528点  

 16年 4位 64勝76敗3分 .245    90本   59個  506点  3.38  546点

 15年 3位 70勝71敗2分 .247    78本   48個  465点  3.47  550点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢27.8歳と、ついにヤクルトを抜いて12球団でもっとも平均年齢の高いチームになってしまった。昨年のドラフトで高校生5名を獲得しても、投手・野手ともに最も高い。投手力の高いチームだが、ここ5年で戦力になっているのは野手で、しかも大山を除けば、みんな1~2番の左打の巧打者タイプでは打線に迫力が生まれない。

 18年~近本光司(内野手大阪ガス①)木浪聖也(内野手~ホンダ③)

 17年~なし

 16年~大山悠輔(内野手・白鷗大①)糸原健斗(内野手~JX-ENEOS⑤)

 15年~高山 俊(外野手~明大①)

 14年~なし

 このほかには、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)が投手で唯一、及第点の成績を上げている。近年のドラフトだけ見れば、打高投低になっても良さそうなものだが、ここにもチグハグ感がある。

 

●投手陣~多くに先発候補に、質量豊富なリリーフ陣で投手王国が着実に進んでいる

 昨年、リーグナンバーワンの投手陣を形成したのが盤石なリリーフ陣だ。クローザーの藤川球児高知商高~98年①)、セットアッパーのジョンソン、チーム最多登板の島本浩也(福知山成美高~10年育②)、岩崎優(国士館大~13年⑥)の両左腕が防御率1点台、前半クローザーを務めたドリスも2点台と充実の布陣だった。

 先発はオリックスからFA加入した西勇輝菰野高~08年③)が10勝を挙げ、青柳も9勝9敗と貯金はできなかったが規定投球回数をクリア。中日から移籍したガルシア、若手では高橋遥人(亜大~17年②)がローテーションを守った。

 ただ、このあとの若手が伸び悩んだ。飛躍が期待された小野泰己(富士大~16年②)と才木浩人(須磨翔風高~16年③)は揃ってケガで不振、そして藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)はわずかに1試合登板でプロ入り初の未勝利に終わった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…メッセンジャー 岩貞祐太 西 勇輝 ガルシア 青柳晃洋 浜地真澄

 ・後半戦…ガルシア 岩田 稔 望月惇志 高橋遥人 西 勇輝 青柳晃洋

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆西 勇輝(172回1/3)☆青柳晃洋(143回1/3)高橋遥人(109回2/3)

     ガルシア(103回2/3)メッセンジャー(79回)岩田 稔(77回2/3)

 ・救援…島本浩也(63試合)ジョンソン(58試合)守屋功輝 (57試合)

       藤川球児(56試合)ドリス(56試合)能見篤史(51試合)

 開幕投手には西勇が指名され、今年も2桁勝利が期待される。さらに青柳と高橋は当確で、新外国人のガンケルもローテーションに入ってくるだろう。

 注目は5~6番手だが、ここは候補がたくさんいる。岩田稔(関大~05年大社希)や秋山拓巳(西条高~09年④)、ソフトバンクから移籍した中田賢一北九州市立大~04年②)など実績のある投手に加え、若手では小野と才木、浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)や望月惇志(横浜創学館高~15年④)など候補はたくさんおり、これが贅沢な悩みなのか、単に決め手に欠くかはシーズンでのチェックポイントになるだろう。ただ、一番の望みはかつてのエース藤浪の復活で、藤浪が復活することでリーグ優勝も夢ではなくなる。

 盤石なリリーフ陣だが、今年はやや不安が残る。まず藤川だが、今年40歳を迎え精神的にも体力的にも厳しいクローザーを一年間勤めるのは容易ではない。そうなるとエドワーズへの期待が必然的に高まり、昨年のジョンソンのような活躍がないと厳しい。

 昨年、大車輪の活躍をした島本は、オフに左肘の手術を行っており、回復具合を見ての起用になる。岩崎を中心に、実績のある桑原謙太朗(奈良産大~04年横大社③)の復調や、守屋功輝(ホンダ鈴鹿~14年④)が勝ちパターンに収まるようになれば心強い。

 さらにベテランの能見篤史大阪ガス~04年自)や、ガルシアも昨シーズン後半からは中継ぎに回り、実績のあるスアレスが加わり質量ともに豊富だが、計算できる選手が藤川と岩崎、守屋しかおらず投手陣のやりくりに注目したい。現時点では7回を守屋または岩崎、エドワーズ~藤川と継投していくのが理想か。

 昨年のファームでは、馬場皐輔(仙台大~17年①)や福永春吾(四国IL徳島~16年⑥)、斎藤友貴哉(ホンダ~18年④)などの若手が結果を出しており、馬場は今年あたりブレイクして欲しい選手だ。 

【今年度の予想】

 ・先発…西 勇輝 青柳晃洋 高橋遥人 ガンケル  

       岩田 稔 ガルシア 岩貞祐太 中田賢一 秋山拓巳 藤浪晋太郎

 ・中継…島本浩也 守屋功輝 能見篤史 岩崎 優 浜地真澄 

       スアレス 桑原謙太郎 飯田優也 高野圭佑

 ・抑え…藤川球児 エドワーズ  

 

●野手陣~機動力は身についた!長打力不足解消のカギを握る外国人選手

 昨年、チーム打率はリーグ4位、盗塁数は1位で、この結果だけ見るとそんなに悪くない。本塁打数は少ないが、広い甲子園で長打を狙うより、機動力を絡めた攻めは理がかなっており、実践できたにも係わらず得点力12球団最小は意外だった。

 昨年はルーキーの近本が大当たりで、指名当初の評価は散々だったが、まさに結果で評価を一蹴。セ・リーグ新人安打記録を更新し、盗塁王にも輝いた。主力では夏場に離脱したが糸井嘉男(近大~03年日自)が3割をキープ、梅野隆太郎(福岡大~13年④)も正捕手として1年間マスクを被った。ただ、本塁打はチーム最多が大山の14本で、助っ人もマルテの12本が最高ではさすがに渋すぎた。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…☆梅野隆太郎(129/492)

 内野手…☆大山悠輔(143/587)☆糸原健斗(143/572)マルテ(105/412)

     木浪聖也(113/390)北條史也(82/211)上本博希(62/119)

     鳥谷敬(74/105)

 外野手…☆近本光司(142/640)☆糸井嘉男(103/444)福留孝介(104/403) 

     高山俊(105/300)中谷将大(62/131)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)木浪聖也④      1)近本光司⑧      

  2)近本光司⑧      2)糸原健斗④       

  3)糸井嘉男⑨           3)糸井嘉男⑨    

  4)大山悠輔⑤      4)大山悠輔⑤      

  5)福留孝介⑦      5)マルテ③      

  6)ナバーロ③      6)梅野隆太郎②     

  7)糸原健斗④      7)陽川尚将⑦      

  8)梅野隆太郎②     8)木浪聖也⑥

  9)メッセンジャー①   9)ガルシア①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)近本光司⑧      捕 手)梅野隆太郎(原口文仁) 

  2)糸原健斗④      一塁手)ボーア(マルテ)

  3)糸井嘉男⑨      二塁手)糸原健斗(上本博希)

  4)ボーア③       三塁手)大山悠輔(陽川尚将)

  5)サンズ⑦          遊撃手)木浪聖也(北條史也

  6)大山悠輔⑤         左翼手)サンズ(高山 俊)

  7)梅野隆太郎②     中堅手)近本光司(中谷将大)

  8)木浪聖也⑥      右翼手糸井嘉男福留孝介

  9)西 勇輝①      

     

 レギュラーは捕手の梅野、二塁~糸原、三塁~大山、中堅~近本は決まりで、右翼は糸井と福留孝介日本生命~98年中①)の両ベテランが務める。順当にいけば新外国人のボーアが一塁をマルテと争い、サンズが高山と左翼を争う形になり、ボーアとサンズが機能すれば打線は厚みを増す。熾烈なのが遊撃争いで、一歩リードしている木浪を北條史也光星学院高~12年②)等が追う。

 打順は昨シーズン後半と同じ並びだが、リードオフマンの近本は、今年は打率3割前後で、課題の出塁率を上げたい。ボーアとサンズが中軸を務め、将来の4番候補の大山を良い意味でプレッシャーのない6番で起用し、梅野と木浪または北條と続く下位打線は切れ目がなくなり、やはり外国人選手の出来がカギを握る。

 控えには代打の切り札で原口文仁(帝京高~09年⑥)、高山もレギュラークラスで問題ないが、控えの層の薄さは否めない。特に捕手は深刻で、梅野以外で一軍レベルは原口しかおらず、梅野のアクシデントがあれば攻守に戦力が低下する。失策の多さも課題で、全体の守備力強化は避けられない課題だ。

 昨年のファームでは、内野では熊谷敬宥(立大~17年③)に小幡竜平(延岡学園高~18年②)、外野で島田海史(上武大~17年④)が結果を出しているが、熊谷と島田は一軍の壁に何度も跳ね返されており、そろそろ殻を破りたいところだ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…梅野隆太郎 原口文仁 坂本誠志郎

 内野手…ボーア 糸原健斗 大山悠輔 木浪聖也 

      上本博希 陽川尚将 北條史也(マルテ 植田 海)

 外野手…近本光司 糸井嘉男 サンズ 福留孝介

       中谷将大 高山 俊(江越大賀)  

 今年注目の若手では、数ある若手のなかで投手は望月惇志を挙げたい。一つ下の才木や浜地との先発ローテ争いは、間違いなくチームの底上げになる。昨年は8試合登板で1勝と結果を出せなかったが、CS1stステージで先発を任せられるなど期待値は高く、今年は一気にブレイクする予感が漂う。

 野手では既に中堅の域だが、2~3年前から江越大賀(駒大~14年③)に期待している。走攻守すべて兼ね備えたオールラウンドプレーヤーで、二軍では無敵を誇るが、なぜか一軍では結果を出せない。昨年は15打数1安打、1盗塁と、こんな成績で終わる選手ではない。きっかけを掴めば一気に花開くポテンシャルを秘めている。

20年順位予想☆日本ハム~伝統の守り勝つ野球を取り戻し、優勝争いに加わりたい

 昨年は先発投手の相次ぐ離脱で、リリーフ投手を先発で起用し継投でゲームを作るオープナーも積極的に試みたが、勝負の8月に5勝20敗で上位争いから脱落した。

 今シーズンは離脱した主力も戻り、ドラフトでも即戦力選手を中心に獲得したが、積極的な補強を行った楽天とロッテには及ばずと思い「5位」予想とした。日本ハムの特徴と言えば、「そつのない攻めの守り勝つ野球」と「若手の台頭」だったが、ここ数年はあまり感じなくなった。

 打率はリーグ2位で高いが、本塁打数は減少、盗塁数も48盗塁で半減した結果、得点はリーグ5位に沈んだ。「打率=得点」ではないが、かつての効率の良い攻めが出来ていないことを数字が表している。主力が抜けたあとに台頭してきた若手選手も見当たらず、ビヤヌエバの加入だけでは課題が解消されたとは言えない。

 課題の先発投手陣は駒が揃い、昨年のような「栗山流オープナー」を連発する必要はなく、中継ぎ陣も層が厚い。若い投手が多いが経験値は高く、昨年のような主力の離脱がない限り大崩れすることはなく、とにもかくにもポイントは打線になる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 5位 71勝69敗3分 .251    93本   48個  560点  3.76  590点

 18年 3位 67勝74敗2分 .251  140本   98個  589点  3.77  586点

 17年 5位 73勝65敗5分 .242  108本   86個  509点  3.82  596点  

 16年 1位 69勝71敗3分 .266  121本 132個  619点  3.06  467点

 15年 2位 62勝80敗1分 .258  106本 134個  615点  3.62  581点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢26.2歳と、とにかく若いチームだ。ただ、本来の育成路線とは相反して、ここ5年は大学、社会人選手が戦力になっており、有原以外で主力と呼べる選手がいないのが気がかりだ。投手では吉田輝星(金足農高~18年①)、野手では清宮幸太郎早実高~17年①)のスター選手候補の覚醒が待ち遠しい。

 18年~なし

 17年~西村天裕(投手~NTT東日本②)

 16年~石井一成(内野手早大②)玉井大翔(投手~新日鉄住金⑧)

 15年~加藤貴之(投手~新日鉄住金②)

 14年~有原航平(投手~早大①)清水優心(捕手~九州国際大高②)

    石川直也(投手~山形中央高④)

 このほかにも、堀瑞樹(広島新庄高~16年①)や清宮の上位指名選手が、及第点の成績を上げている。また、18年からは育成選手獲得も解禁し、選手層を厚くし育成を再強化する姿勢が窺える。

 

●投手陣~先発陣が揃えば、層の厚いリリーフ陣で本来の守り勝つ野球を!

 投手陣は昨年10勝のマルティネスが全休、開幕投手を務めた上沢直之専大松戸高~11年⑥)は、ケガでシーズン後半を棒にふり、6~7回まで任せられる先発は、有原と金子弌大(トヨタ自動車~04年オ自)しかいなかった。先発の駒不足を栗山流オープナーのもと、リリーフ陣が総動員された結果、酷使された中継ぎ陣は疲労困憊で夏場の失速の要因の一つになった。

 ところで栗山流オープナーは、MLBのオープナーとは違い、長いイニングを任せられない投手をショートリリーフで繋ぐ戦法でやや違う。栗山監督は今年も継続を示唆しているが、わざわざ先発の駒が揃っている状況であれば必要かと思う。3試合連続で金子を先発するプランも述べていたが、短期決戦ならまだしも公式戦でやる必要があるのだろうか…。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…上沢直之 金子弌大 有原航平 加藤貴之 ロドリゲス 斎藤佑樹

 ・後半戦…堀 瑞樹 杉浦稔大 有原航平 加藤貴之 浦野博司 金子弌大

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆有原航平(164回1/3)金子弌大(107回2/3)加藤貴之(92回)

     ロドリゲス(91回1/3)上沢直之(71回1/3)杉浦稔大(65回)

 ・救援…玉井大翔(65試合)公文克彦(61試合)石川直也 (60試合)

       宮西尚生(55試合)堀 瑞樹(53試合)秋吉 亮(53試合)

 開幕投手には有原が指名され、ここは誰も文句ないだろう。昨シーズンは最後に山本由伸(オリックス)に防御率のタイトルを獲られたが、リーグ2位の2.46、15勝は最多勝で、名実とも絶対的エースに成長した。有原の次には実績十分の金子が控え、上沢とマルティネスのイニングイーターが復調すれば、中継ぎ陣の負担も軽減される。

 5~6番手のローテーション争いは熾烈で、順当にいけば杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)と加藤になり、杉浦は故障防止、加藤は打順2周りまででともに長いイニングは厳しいが、5回までなら安心して任せられる。新加入のバーヘイゲンはゴロを打たせて取る技巧派で、メジャーでは中継ぎを務めた。貴重な先発左腕の即戦力ルーキーの河野竜生(JFE西日本~19年①)も候補になる。

 リリーフ陣の層は厚いが、絶対的クローザーの確立が課題になる。候補一番手の秋吉亮(パナソニック~13年ヤ③)は防御率2.96、石川直も防御率3.31と、ともに安定感に欠ける。

 中継ぎは鉄腕リリーバーの宮西尚生関学大~07年大社③)を中心に、スクランブル登板でも抜群の安定感をほこる玉井大翔(新日鉄住金~16年⑧)、パワーピッチャーの西村天裕(NTT東日本~17年②)、左キラー公文克彦大阪ガス~12年巨④)とタイプの違うスペシャリストが揃っている。さらにロングリリーフを任せられる堀やロドリゲス、変則右腕のルーキー鈴木健矢(JX-ENEOS~19年④)も加われば、投手陣は質量ともに豊富になる。 

 若手では当然、吉田輝星(金足農高~18年①)に期待がかかるが、基礎体力はついたがもう少し時間がかかろそうで、昨年初勝利を上げた左腕の北浦竜次(白鷗大足利高~17年⑤)などは面白い存在だ。 

 

【今年度の予想】

 ・先発…有原航平 上沢直之 金子弌大 マルティネス 杉浦稔大 加藤貴之 

       バーヘイゲン 河野竜生 立野和明 吉田輝星 村田 透 北浦竜次

 ・中継…宮西尚生 玉井大翔 公文克彦 堀 瑞樹 西村天裕 

       ロドリゲス 井口和朋 浦野博司 生田目翼 鈴木健

 ・抑え…秋吉 亮 石川直也  

 

●野手陣~怖い上位打線と対照的に下位打線は…カギを握る両外国人の出来栄え

 一言で言うと、昨年は上位打線と下位打線の力の差がありすぎた。1番~西川、2番~大田、3番~近藤がそれぞれ結果を残し、本来の成績ではなかったものの4番~中田までの並びは良かったが、5番以降に怖さを感じなかった。

 前半5番を務めた台湾の4割バッターの王伯融は打率.265、3本塁打と期待を裏切った。後半5番に定着した渡邊諒(東海大甲府高~13年①)も健闘したが、パンチ力はあるものの中距離打者で、ロッテに移籍したレアードの穴を埋めることはできなかった。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…清水優心(98/246)宇佐見真吾(45/103)

 内野手…☆近藤健介(138/600)☆渡邊諒(132/543)☆中田翔(124/514)

     中島卓也(120/328)清宮幸太郎(81/278)石井一成(76/226

     横尾俊健(78/191)平沼翔太(73/184)田中賢介(89/170)

     杉谷拳士(83/157)

 外野手…☆西川遥輝(142/651)☆大田泰示(132/594)王伯融(83/340)      

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)浅間大基⑤      1)西川遥輝⑧      

  2)西川遥輝⑧      2)杉谷拳士⑨       

  3)近藤健介DH          3)近藤健介⑦    

  4)中田 翔③      4)中田 翔③      

  5)王 伯融⑦      5)渡邊 諒④      

  6)大田泰示⑨      6)田中賢介DH      

  7)石井一成④      7)横尾俊健⑤      

  8)鶴岡慎也②      8)石井一成⑥

  9)中島卓也⑥      9)清水優心②  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川遥輝⑧      捕 手)清水優心(宇佐見真吾) 

  2)渡邊 諒④      一塁手)中田 翔(清宮幸太郎

  3)近藤健介⑦      二塁手)渡邊 諒(杉谷拳士

  4)中田 翔③      三塁手)ビヤヌエバ(横尾俊健)

  5)大田泰示⑨         遊撃手)石井一成(中島卓也

  6)王 伯融DH       左翼手)近藤健介(王 伯融)

  7)ビヤヌエバ⑤     中堅手西川遥輝

  8)清水優心②      右翼手大田泰示(松本 剛)

  9)石井一成⑥      D H)王 伯融

     

 今年も課題の上位と下位打線の差は明白で、ともに2年目の王伯融と巨人から移籍したビヤヌエバの両外国人がカギを握っている。1~5番は色々な組み合わせができそうだが、俊足で出塁率の高いリードオフマンの西川、安打製造機の3番近藤は不動だ。渡邊と中田は5番、大田は2番または4番も打てる。4番~大田、5番~中田の並びも悪くないが、誰よりも4番にプライド持っている中田は外せないだろう。

 王伯融は打率3割、ビヤヌエバは20本塁打以上と、それぞれ期待に応えることができれば、気の抜けない下位打線になる。本来であれば清宮が、6~7番のプレッシャーのあまりない打順でレギュラーを掴むのが理想なのだが、思いのほか苦しんでいる。

 一方でファームで結果を残した若手に楽しみな選手がいる。高卒ルーキーだった万波中正(横浜高~18年④)は本塁打14本、育成の海老原一佳(BC富山~18年育①)も11本、今井順之介(中京高~16年⑧)も10本塁打と楽しみなスラッガーが育ってきた。

 守備面では捕手のレギュラーが決まらない。一番近いのは清水だが、打撃のよい宇佐見真吾(城西大~15年巨④)や、有原と相性の良い石川亮(帝京高~13年⑧)、39歳の鶴岡慎也三菱重工横浜~02年⑧)も候補で、そろそろ正捕手を固定したい。

 内野は一塁の中田、二塁の渡邊は決まりで、三塁はビヤヌエバと横尾俊健(慶大~15年⑥)、遊撃は中島卓也(福岡工高~08年⑤)に石井と、ともに同じタイプの選手で、どちらがレギュラーを獲得しても遜色ない。外野は近藤、西川、大田が鉄壁で、トラブルでもない限り、この3人からのレギュラー奪取は難しい。

 控えには内外野守れるムードメーカーの杉谷拳士(帝京高~08年⑥)、守備固めで内野は谷内亮太(国学院大~12年ヤ⑥)、外野に松本剛(帝京高~11年②)が控える。特に守備は、昨シーズン二塁~横尾、左翼~清宮など、危なかっしくて見ていられない布陣にならないよう、控えの層を厚くする必要がある。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…清水優心 宇佐見真吾 鶴岡慎也(石川 亮)

 内野手…中田 翔 渡邊 諒 ビヤヌエバ 石井一成 清宮幸太郎 

       杉谷拳士 横尾俊健 中島卓也 (谷内亮太 平沼翔太 今井順之介)

 外野手…近藤健介 西川遥輝 大田泰示 王 伯融 松本 剛

    (谷口雄也 浅間大基 万波中正)  

 今年注目の若手では、投手では生田目翼(日本通運~18年③)を挙げたい。流通経済大時代に上位候補もまさかの指名漏れ。ようやく昨年プロ入りしたが、ケガで4試合登板に留まった。テンポの良い投球で、力強いストレートを投げ込むスタイルは、個人的には中継ぎ~クローザーに適性があると思う。

 野手ではケガで出遅れているが平沼翔太(敦賀気比高~15年④)に注目だ。甲子園の優勝投手も打撃力を買われ野手で入団した昨年、一軍レベルの打撃力を随所に見せた。守備に課題はあるが遊撃と三塁も守れ、そこは余りある打力でレギュラーを奪い取ってほしい。

20年順位予想☆D℮NA~筒香の抜けた穴は大きい…混セを抜けるには新戦力に期待

 昨年、97年以来の2位になり、その時は翌年優勝している。さらにラミレス監督が16年に就任してからはAクラスが3度と、「今年こそ」の思いはあるが「5位」予想とさせてもらった。

 やはり筒香嘉智(横浜高~09年①)の抜けた穴が大きい。チームの主力であり、キャプテンであり、何よりチームの顔だった選手で、そう易々と代わりになる選手は出てこない。以前からポスト筒香は課題の一つだったが、解消されないまま筒香がMLBに移籍してしまった。また、走れないのも課題で、昨年も盗塁数はリーグワースト。機動力を重視せずに、長打に頼る戦いかたをしてきたが、筒香が抜けたあとにそういう野球ができるかは疑問だ。

 投手陣はまずまず安定しているが、毎年主力にけが人が発生しており、今年も早々と18年新人王の東克樹が離脱してしまった。実績のある投手が多いだけに、1~2人くらいの離脱で投壊することは考えにくいが、反面若手がなかなか結果を出せていないのも事実で、投打ともにブレイクする選手がいないと厳しいシーズンになる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 2位 71勝69敗3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

 17年 3位 73勝65敗5分 .252  134本   39個  597点  3.81  598点  

 16年 3位 69勝71敗3分 .249  140本   67個  572点  3.76  588点

 15年 6位 62勝80敗1分 .249  112本   57個  508点  3.80  598点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢26.4歳は昨年と変わらず、12球団で広島に次いで若いチームだ。ここ5年のドラフトで投手陣の層は厚くなっているが、スラッガータイプが筒香のあと誕生しておらず、野手での主力育成が課題になる。

 18年~上茶谷大河(投手~東洋大①)大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~東 克樹(投手~立命館大①)神里和毅(外野手~日本生命②)

 16年~濱口遥大(投手・神奈川大①)

 15年~今永昇太(投手~駒大①)柴田竜拓(内野手国学院大③)

    戸柱恭孝(捕手~NTT西日本④)

 14年~山崎康晃(投手~亜大①)倉本寿彦(内野手日本新薬③)

 このほかにも、投手では石田健大(法大~14年②)が、及第点の成績を上げている。ただ一方で、15年2位の熊原健人は昨年楽天へトレード、16年2位の水野滉也と3位の松尾大河も戦力外で退団しており、上位指名選手が既に3名もチームを去っている。

 

●投手陣~エース今永とクローザー山崎を擁し、ケガ人さえ出なければ投手陣は安泰

 投手陣は先発の今永昇太が13勝と昨年絶好調で、濱口遥大や東が出遅れたが、ルーキーの上茶谷大河が7勝、大貫晋一が6勝と主力の穴を埋めた。ただ、枚数の不足は否めず、いま流行のブルペンデーで先発の谷間を埋めた。

 ただ、そのツケは当然リリーフ陣にまわり、エスコバーが74試合、三嶋一輝(法大~12年②)が71試合と登板数が嵩んだ。クローザーの山崎康晃は61試合登板し、30セーブと断トツの成績でセーブ王を獲得した。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…今永昇太 京山将弥 井納翔一 上茶谷大河 濱口遥大 大貫晋一

 ・後半戦…井納翔一 上茶谷大河 濱口遥大 今永昇太 平良拳太郎 大貫晋一

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆今永昇太(170回)上茶谷大河(134回)濱口遥大(82回1/3)

     井納翔一(70回)平良拳太郎(70回)大貫晋一(66回2/3)

 ・救援…エスコバー(74試合)三嶋一輝(71試合)山崎康晃 (61試合)

     国吉佑樹(53試合)パットン(42試合) 石田健大(40試合)

 開幕投手には今永が指名されたが、言い換えれば今永しか計算できる選手がいない。先述したが東はトミージョン手術で今シーズンは絶望、濱口も相変わらず好不調の波が大きく、上茶谷も出遅れており不安要素のほうが大きい。

 現状では今永以降の投手が決まらず、本来なら中継ぎで使いたい井納翔一(NTT東日本~12年③)や石田も候補になってくる。新外国人のピープルズも外国人枠の関係で微妙だ。こうなると若手がチャンスを掴みたいところだが、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)や飯塚悟史(日本文理高~14年⑦)、京山将弥(近江高~16年④)に阪口皓亮(北海高~17年③)、桜井周斗(日大三高~17年⑤)など、名前はスラスラ出るのだがどの選手も決め手に欠ける。都合よく毎年ルーキーが台頭するわけでもなく、開幕からローテーション編成に頭を悩ませそうだ。

 リリーフ陣はクローザーの山崎は不動だが、山崎までどう継投していくかが課題になる。中継ぎの柱であるエスコバーが故障で開幕に間に合わず、一気に枚数が不足した。三嶋やパットンへのウェイトが高くなり、さらに国吉佑樹秀岳館高~09年育①)や藤岡好明JR九州~05年ソ大社③)、武藤祐太(ホンダ~10年中③)のベテランへの期待値が高まる。昨年ケガで離脱した中継ぎ陣の兄貴分・三上朋也(JX-ENEOS~13年④)や、貴重な左腕の砂田毅樹(明桜高~13年育①)が復活すれば不安も解消されるが…。

 ところでクローザーの山崎は本当に素晴らしい。実力もさることながら、「打てるものなら打ってみろ」と言わんばかりの自信に満ちたマウンド上でので立ち振る舞いや、名前がコールされたときの球場の大歓声は、大魔神佐々木主浩以来で見ていてワクワクする選手だ。

【今年度の予想】

 ・先発…今永昇太 上茶谷大河 濱口遥大 大貫晋一 

     平良拳太郎 井納翔一 ピープルズ 阪口皓亮 桜井周斗 坂本裕哉 

 ・中継…エスコバー 三嶋一輝 国吉佑樹 パットン 石田健大 砂田毅樹

       藤岡好明 武藤祐太 三上朋也 伊勢大夢

 ・抑え…山崎康晃  

 

●野手陣~筒香の穴を佐野とオースティンで埋めることができるか

 昨年は中軸の破壊力が抜群だった。ソトは43本塁打本塁打王を獲得し、ロペスが31本、筒香が29本、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)も15本と2~5番が2桁本塁打を記録した。他にも神里和毅が15盗塁と一番打者に定着し、後半戦になると佐野恵太(明大~16年⑨)が頭角を表した。課題だった正捕手も、伊藤光明徳義塾高~07年オ高③)が定着し、ここ数年来のレギュラー不在に目途がついた。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…伊藤 光(84/301)嶺井博希(64/130)戸柱恭孝(45/111)

 内野手…☆ロペス(142/597)☆ソト(141/584)☆大和(137/490)

     ☆宮崎敏郎(114/473)柴田竜拓(111/196)中井大介(79/183)

     石川雄洋(50/119)

 外野手…☆筒香嘉智(131/557)☆神里和毅(123/458)佐野恵太(89/215)

     乙坂 智(97/119)梶谷隆幸(41/110) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)梶谷隆幸⑧      1)神里和毅⑧      

  2)楠本泰史⑨      2)筒香嘉智⑦       

  3)ソト④             3)ソト④    

  4)筒香嘉智⑦      4)ロペス③      

  5)宮崎敏郎⑤      5)佐野恵太⑨      

  6)ロペス③       6)宮崎敏郎⑤      

  7)伊藤 光②      7)嶺井博希②      

  8)大和⑥        8)大和⑥

  9)今永昇太①      9)井納翔一①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)神里和毅⑧      捕 手)伊藤 光(嶺井博希) 

  2)オースティン⑦    一塁手)ロペス(ソト)

  3)ソト④        二塁手)ソト(伊藤裕季也)

  4)佐野恵太⑨      三塁手)宮崎敏郎

  5)ロペス③          遊撃手)大和(倉本寿彦)

  6)宮崎敏郎⑤      左翼手)オースティン

  7)伊藤 光②      中堅手)神里和毅(乙坂 智)

  8)大和⑥        右翼手)佐野恵太(梶谷隆幸

  9)今永昇太①      

 まずはポスト筒香候補だが、ラミレス監督の期待値が高い佐野が4番に座り、キャプテンを務める。佐野はレギュラーの経験はまだないが、昨シーズンは打率.295、5本塁打でブレイクを予感させる。

 佐野以上に期待感を集めているのが、新外国人のオースティンで、メジャー通算33本塁打の大砲だ。三振の多さが懸念されていたが、現時点では日本野球への適応性を見せており、このままいけば筒香の穴を十分に埋められる。

 個人的に今年もっとも期待しているのが神里で、一番打者として3割30盗塁は最低ラインになるだろう。二番にオースティンが入り、3番に本塁打王のソト、4番の佐野を挟み、5番ロペス、6番に勝負強い宮崎が並ぶ打線は迫力がある。佐野とオースティンが期待通りに機能すれば、昨年以上の打線となる。

 若手にも楽しみな選手が多く、乙坂智(横浜高~11年⑤)や関根大気(東邦高~13年⑤)はレギュラー候補を返上して外野の一角を狙いたい。さらに昨年ファームで2桁本塁打を放った細川成也(明秀日立高~16年⑤)や伊藤裕季也(立正大~18年②)など、和製大砲も育ってきている。

 ここに桑原将志福知山成美高~11年④)や倉本といったかつてのレギュラー選手が復調し、ベテランの石川雄洋(横浜高~04年⑥)や梶谷隆幸(開星高~06年高③)などが加わると層は厚くなる。

 不安なのが守備で、二塁ソトや左翼のオースティンは心もとなく、守備のスペシャリストの柴田、捕手以外どこでも守れる中井大介宇治山田商高~07年高③)の出番も増えそうだ。また、神里以外に走れる選手も必要だが、現時点では乙坂以外の候補者が見当たらないのも不安材料だ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…伊藤 光 嶺井博希(戸柱恭孝)

 内野手…ロペス ソト 宮崎敏郎 大和 オースティン 

     伊藤裕季也 中井大介 柴田竜拓 倉本寿彦(石川雄洋)

 外野手…神里和毅 佐野恵太 乙坂 智 梶谷隆幸 桑原将志

    (細川成也 関根大気)  

 今年注目の若手では、投手では地元贔屓で申し訳ないが、北海高出身の阪口皓亮を上げたい。まだ一軍で勝利はないが、昨シーズンは3試合に先発して経験を積んだ。一つ勝てば一気に勝ち星を積み重ねる予感があるので、チャンスを掴み取ってほしい。

 野手では今年こそ関根大気のブレイクが見たい。ファームでは敵なしで、昨シーズンも打率.329、12本塁打を放ち、今オフのメキシコのウィンターリーグでも結果を残している。今年で7年目の25歳、ファームの主軸をそろそろ卒業して良いころだ。

20年順位予想☆オリックス~今年はディフェンス重視の守りの野球!投手陣再建が課題

 今年もパ・リーグソフトバンクが中心になるが、リーグ3連覇を狙う西武、積極的な補強でストーブリーグを盛り上げた楽天とロッテが追う形になる。やや苦戦が予想されるのが日本ハムオリックスで、4強2弱の様相を呈してきた。

 順位予想するうえで、最下位予想を日本ハムオリックスで迷ったが、野手のレギュラーが多い日本ハムを上にさせてもらった。

 短期決戦では投手力の優劣がモノを言うが、長いペナントレースを勝ち抜くには打線の安定が必要で、いくら現役メジャーリーガーのジョーンズが入団したとはいえ、レギュラーが吉田正尚と福田周平だけでは厳しい。投手陣も山岡泰輔と山本由伸のWエースはいるものの、ブルペン陣の駒不足は解消されておらず質量ともに不足している。

 西村徳文監督も、昨年のような積極的な走塁を今年も進めつつ、早くも守備重視の野球を明言するなど、今シーズンはディフェンス重視の戦いかたになる。ドラフトでは即戦力から育成へ、チームも若手にシフトしている最中で、3~4年後に優勝を狙える若手選手の発掘と育成を進めるシーズンになりそうだ。

 

●ドラフトは即戦力から育成、若手にシフトしているが投打に精彩を欠いた

 15年から5年連続Bクラスで、昨シーズンは投打に精彩を欠いた。投手陣はともにタイトルホルダーの山岡と山本の活躍で、投手力の高いイメージがあるが、チーム防御率が4点台に後退している。先発の榊原翼(浦和学院高~16年育②)と田嶋大樹(JR東日本~17年①)はケガで途中離脱し、ブルペン陣は海田智行(日本生命~11年④)以外は総崩れで、クローザーの増井浩俊東芝~09年日⑤)は中継ぎに降格、急造のディクソンも安定感に欠けた。

 チーム打率はリーグ最下位で、16年から年々後退し得点力不足が解消されていない。規定打席に達したのが、一昨年は吉田正とロメロ、安達了一(東芝~11年①)の3名、昨シーズンは吉田正と福田のみと、実質的なレギュラーは吉田正しかおらず、ここ2年レギュラーが確立できていない。盗塁数はリーグ2位まで伸び、打線の弱さを走塁でカバーする戦い方はできたが、一方で失策はワースト2位の73と課題は多い。 

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 6位 59勝82敗2分 .242  102本 122個  544点  4.05  637点

 18年 4位 75勝66敗2分 .244  108本   97個  538点  3.69  565点

 17年 4位 45勝96敗2分 .251  127本   33個  539点  3.83  598点  

 16年 6位 64勝78敗1分 .253    84本 104個  499点  4.18  635点

 15年 5位 76勝65敗2分 .249    94本   88個  519点  3.59  548点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 昨年に続き平均年齢26.6歳の若いチームで、ここ5年のドラフトで投打に主力が誕生しており、将来の足掛かりはできた。

 18年~中川圭太(内野手東洋大⑦)

 17年~福田周平(内野手~NTT東日本③)

 16年~山岡泰輔(投手・東京ガス①)山本由伸(投手~都城高④)

 15年~吉田正尚(外野手~青学大①)近藤大亮(投手~パナソニック②)

    大城滉二(内野手~立大③)

 14年~西野貴弘(内野手JR東日本⑦)

 このほかにも、投手では田嶋に澤田圭佑(立大~16年⑧)、ケガで現在は育成契約だが黒木優太(立正大~16年②)、野手では小田裕也(日本生命~14年⑧)も及第点の成績を上げている。

 一つ気になったことがある。前監督の福良GMが、野手は今後育成中心に高校・大学生主体に切り替えるコメントがあった。確かにオリックスは社会人野手の指名が伝統的に多いチームだが、何事にもバランスが必要だ。

 右投げ左打ちの俊足巧打の同じタイプの選手を、ドラフト指名して揃えたのはフロントの責任であり、指名された選手が悪い訳ではない。それを結果同じような選手が社会人出身野手には多いので、高校・大学生に切り替えるという方針は如何かと思う。安達や西野、小田の社会人出身選手ならではの、「フォア・ザ・チーム」に徹することのできる選手は絶対に必要だと思う。

 

●投手陣~先発陣に光明が見えるも、ブルペン陣の底上げが課題

  昨年は山岡が13勝を上げ最高勝率のタイトルを獲得し、山本も一時離脱したものの最優秀防御率を獲得しWエースが確立した。前半戦は榊原と田嶋がともに3勝、K-鈴木(日立製作所~17年②)もローテーションを守り4勝を上げ先発陣に光明が見えた。一方でブルペン陣は厳しく、海田が唯一防御率1点台で孤軍奮闘するも、あとは3点台と厳しく、数年前まで盤石をほこったリリーフ陣は見る影もなかった。 

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…山岡泰輔 東明大貴 榊原 翼 アルバース 山本由伸 松葉貴大

 ・後半戦…田嶋大樹 山岡泰輔 K-鈴木 山本由伸 竹安大知 荒西祐大

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆山岡泰輔(170回)☆山本由伸(143回)K-鈴木(102回1/3)

     榊原 翼(79回1/3)アルバース(63回1/3)竹安大知(54回)

 ・救援…海田智行(55試合)近藤大亮(52試合)比嘉幹貴 (45試合)

     山田修義(40試合)山崎福也(36試合) 吉田一将(33試合)

 開幕投手には山岡が指名され、山本との二枚看板は強力で、この2人がいることで大型連敗する心配がない。その次に続くのが田嶋と榊原で、田嶋は入団前から故障が懸念されているが、故障さえなければ二桁勝利は確実で、さらに層が厚くなる。山岡25歳、田嶋24歳、山本と榊原が22歳で末恐ろしい先発陣だ。

 5番手以降はアルバース、K-鈴木が有力だがともに出遅れているのが気がかりだ。後半戦に中継ぎから先発にまわった竹安大知(熊本ゴールデンラークス~15年神③)や、プレミア12での好投した張奕(日本経済大~16年育①)を加えた争いになる。

 ブルペン陣はクローザーを誰にするかが課題だ。順当にいけば増井だが、以前ほどの安定感が見られず、元々先発のディクソンも急増の感が否めずシーズン通しては未知数だ。そうなるとセットアッパー候補の新外国人ヒギンスを後ろで使うプランも浮上し、西村監督の判断に注目したい。

 中継ぎは海田と近藤を軸に、現有戦力の上積みに期待したい。澤田やベテランの金田和之(大阪学院大~12年神⑤)が復調すれば層は厚くなる。若手ではルーキーの村西良太(近大~19年③)は変則右腕で、ブルペン陣のバリエーションが増える。昨年、育成選手ながら、ファームで最多セーブを上げた漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)も支配下登録になり手薄な中継ぎ陣に食い込みたい。

 比嘉幹貴日立製作所~09年②)が投手最高齢の38歳、増井とディクソンも36歳になり、海田も33歳でブルペン陣の主力選手の高齢化も課題の一つだ。このチャンスを掴む若手の出現に期待したい。

【今年度の予想】

 ・先発…山岡泰輔 山本由伸 田嶋大樹 榊原 翼 アルバース

     K-鈴木 竹安大知 荒西祐大 張 奕 

 ・中継…海田智行 近藤大亮 比嘉幹貴 山田修義 山崎福也

       吉田一将 澤田圭佑 金田和之 神戸文也 村西良太

 ・抑え…増井浩俊 ディクソン ヒギンズ  

 

●野手陣~ジョーンズの加入で、リーグ最下位の打線は生まれ変わるか

 まさに吉田正がチームの大黒柱で、打率.322で29本塁打、92打点とチームを支え、33盗塁の福田も気を吐いた。しかし前評判の高かったメネセスはドーピング違反で退団、開幕スタメンのT-岡田(履正社高~05年高①)も腰痛で離脱、ロメロも出ればケガで離脱の繰り返しで、後半戦はルーキーの中川が中軸を担ったが、長打を望むのは酷で迫力に欠けた。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…若月健矢(138/348)頓宮裕真(28/93)松井雅人(24/42)

 内野手…☆福田周平(135/583)中川圭太(111/396)大城滉二(91/345)

     モヤ(64/255)小島脩平(103/206)西野貴弘(56/188)

     安達了一.(56/179)マレーロ(43/133)メネセス(29/118)

 外野手…☆吉田正尚(143/610)ロメロ(81/331)西浦颯大(77/239)

     小田裕也(82/203)後藤駿太(91/194)宗 佑磨(54/177)

     佐野皓大(68/130)T-岡田(20/56) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)福田周平④      1)福田周平④      

  2)西浦颯大⑧      2)大城滉二⑥       

  3)メネセス DH         3)中川圭太⑨    

  4)吉田正尚⑦      4)吉田正尚⑦      

  5)頓宮裕真⑤      5)モヤ③      

  6)小田裕也⑨      6)ロメロ DH      

  7)T-岡田③      7)宗 佑磨⑧      

  8)若月健矢②      8)安達了一⑥

  9)安達了一⑥      9)若月健矢②  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)福田周平④      捕 手)若月健矢(頓宮裕真) 

  2)中川圭太⑤      一塁手)T-岡田(モヤ)

  3)吉田正尚⑦      二塁手)福田周平

  4)ジョーンズ⑧     三塁手)中川圭太(小島脩平)

  5)モヤ DH        遊撃手)安達了一(大城滉二)

  6)T-岡田③      左翼手吉田正尚(小田裕也)

  7)宗 佑磨⑨      中堅手)ジョーンズ(後藤駿太

  8)安達了一⑥      右翼手)宗 佑磨(西浦颯大)

  9)若月健矢②      D H)モヤ(ロドリゲス)

 今年はジョーンズの加入がチームにどんな影響をもたらすか楽しみだ。メジャー経験14年のスター選手で、通算1939安打、282本塁打の強打に加え、センターで4度のゴールデングラブを獲得した走攻守に優れたスーパースターだ。当然、4番を期待されており、吉田正との中軸に期待が集まる。

 捕手は若月健矢(花咲徳栄高~13年③)が、ほぼ正捕手を手中にしているが打撃力が課題。昨年、開幕戦で5番を任された頓宮裕真(亜大~18年②)は文字通り打てる捕手で、若月もうかうかしてられない。

 内野は二塁の福田と三塁の中川は決まりで、一塁はT-岡田とモヤの併用になる。最も熾烈な争いになるのが遊撃手で、安達が中心だが実績のある大城に、若手の大田椋(天理高~18年①)や宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)も定位置を狙っており、新旧の定位置争いが楽しみだ。

 外野は右翼争いが注目だ。打力なら宗佑磨(横浜隼人高~14年②)で、まだ粗削りだがポテンシャルは一級品で3割も狙える。守備力なら強肩の西浦颯大(明徳義塾高~17年⑥)で、あの強肩は大きな武器になる。宗も西浦もそこそこ走れるが、脚力なら佐野皓大(大分高~14年③)が一番で、佐野は打撃力が課題になる。走攻守に優れた小田もおり、誰が開幕スタメンを掴み取るか楽しみだ。

 打順は福田の一番は決まりで、課題の出塁率を今年は上げたい。二番は中川が有力だが、一昨年のように1番・宗、2番・福田も面白い。中軸は吉田正~ジョーンズ~モヤまたはロドリゲス(ケガでやや出遅れ)の並びで長打を期待できる。誰もが復活を望んでいるT-岡田が、下位にはまると気の抜けない打線になる。

 ベンチには打てる捕手の頓宮に、ディフェンス重視なら松井雅人(上武大~09年⑦)が控え、内野ならどこでも守れる大城、外野の小田は勝負強い打撃に加え小技も使える。確実性が課題だが、当たればホームランの杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)も面白い存在だ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…若月健矢 松井雅人 頓宮裕真(伏見寅威)

 内野手…T-岡田 モヤ 福田周平 中川圭太 大城滉二 

     安達了一 小島脩平(西野貴弘 山足達也 ロドリゲス 宜保 翔)

 外野手…吉田正尚 ジョーンズ 西浦颯大 宗 佑磨 後藤駿太 小田裕也

    (佐野皓大 杉本裕太郎)  

 今年注目の若手では、投手ではやはり張奕だろう。元々は外野手として17年に入団したのち、18年途中に投手に転向。転向わずか1年で、昨シーズン後半には2勝を上げ、プレミア12では台湾代表でも2勝と、大化けする可能性を秘めている。

 野手では2年目の宜保翔を上げたい。ルーキーながら昨年はファームで遊撃のレギュラーを務め、安達がケガで離脱したあと8試合に出場し6安打を放った。高校時代は投手の逸材で、実力でレギュラーを掴みたい。

20年順位予想☆ヤクルト~投手陣の不安は解消されず…野手は若手の台頭が求められる

 シーズン開幕まであと1ケ月。これから開幕まで、12球団の戦力分析と僭越ながら順位予想をしたいと思います。下位予想から始めますので、またお付き合いください。

 今年のセ・リーグは、例年になく大混戦が予想される。巨人が頭一つ抜け出しているが、戦力がずば抜けているわけではなく、ヤクルト以外の5チームに優勝の可能性があると思う。

 そのヤクルトだが、今年も厳しく、最下位予想させてもらった。野球雑誌や各記事での順位予想を見ても、ヤクルトの最下位予想が大半で、ある雑誌の戦力分析では、12球団で唯一の「D」評価と手厳しかった。

 先ず課題の投手陣に改善の目途が立たない。先発陣は駒不足、中継ぎはさらに不足で新戦力の台頭がないと厳しい。打撃陣はバレンティン移籍の穴は大きく、スケールダウン感は否めず、期待の村上が出遅れているのも気掛かりだ。二軍監督から昇格した新任の高津臣吾監督には、恩師・野村克也監督のように、チーム再建のベースを作るシーズンになりそうだ。 

●打線は強力も投手陣崩壊に歯止めがかからず…ドラフトも不発気味

 ここ5年の成績を見ると、16年から4年連続で防御率が4点台で、投手陣の崩壊が止まらない。Aクラスのシーズンは、なんだかんだ投手陣が結果を出しており、投手陣の再建は最優先課題だ。またエラーも多く、83失策は阪神に次いでワースト2位。弱い投手陣にさらに守備力でも不安を抱え、失点に歯止めがかからない。

 攻撃陣は強力で、昨シーズンは村上宗隆の覚醒もあり、山田とバレンティンを合わせた3人で104本塁打は圧巻で、チーム本塁打をリーグ2位まで押し上げた。一方で機動力は、山田哲人に任せきりで、33盗塁の山田哲がチームの半分以上を占め、次に多いのが村上の5盗塁には驚きで、山田哲以外マークする必要がない。チーム打率も下降気味で、リーグ2位の得点力の割には打線に怖さを感じない。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 6位 59勝82敗2分 .244  167本   62個  656点  4.78  739点

 18年 2位 75勝66敗2分 .266  135本   68個  658点  4.13  665点

 17年 6位 45勝96敗2分 .234    95本   50個  473点  4.21  653点  

 16年 5位 64勝78敗1分 .256  113本   82個  594点  4.73  694点

 15年 1位 76勝65敗2分 .257  107本   83個  574点  3.31  518点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 昨シーズン平均年齢28.4歳の高齢化したチームも、ベテラン選手の相次ぐ引退で27.6歳まで下がった。それでも12球団では2番目に高いが、着実に若返りが進んでいる。ただ、過去5年のドラフトも不発で、戦力アップには繋がっていない。

 18年~なし

 17年~村上宗隆(内野手九州学院高①)大下佑馬(投手~三菱重工広島②)

 16年~梅野雄吾(投手・九産大九州高③)

 15年~なし

 14年~なし 

 

●投手陣~先発、ブルペン陣もともに戦力が不足…新戦力に期待が高まるシーズン

  昨年は小川と石川がローテの中心も、エースの小川は5勝12敗と大きく負け越し、8勝の石川が勝ち頭で、次に高梨と山田大の5勝といずれも勝ち星を伸ばすことができなかった。

 ブルペン陣では、石山の不振でクローザーが決まらずマクガフが代役を務めたが安定感に欠けた。中継ぎも梅野が若手で唯一気を吐いたが、近藤や五十嵐の両ベテランに代わる若手もおらず、相変わらずの苦しい台所事情になった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…小川泰弘 石川雅規 高梨裕稔 原 樹里 高橋奎二 寺原隼人

 ・後半戦…石川雅規 高梨裕稔 山田大樹 小川泰弘 山中浩史 ブキャナン

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小川泰弘(159回2/3)石川雅規(124回1/3)ブキャナン(99回2/3)

     高橋奎二(95回1/3)高梨裕稔(78回)原 樹里(74回)

 ・救援…梅野雄吾(68試合)ハフ(68試合)マクガフ (65試合)

     近藤一樹(59試合)五十嵐亮太(45試合) 石山泰稚(34試合)

 先発は小川と石川が当確で、どちらかが開幕投手を務め、高梨を加えた3人が中心になる。残り3枠には、新外国人のイノーアが一番手で、打たせて取るピッチングスタイルで期待が持てる。順当にいけば高橋奎が5番手になるが、キャンプで調子が上がらないのが気がかりだ。残り1枠は実績のある原やベテラン左腕の山田大に加え、ルーキーの吉田喜にも期待したい。

 こうなると奥川の先発ローテ入りに期待したくもなるが、現状目先の勝利にこだわる状況でもなく、じっくりと育成し夏場以降の登板が現実的だ。しかし開幕投手候補は相変わらず小川と石川の名前しか挙がらず、先発候補で17年1位の寺島成輝や19年1位の清水昇の名前が無いのは何とも寂しい限りだ。

 中継ぎは梅野と近藤、五十嵐が当確で、大下は貴重な左腕で勝ちパターンを担う役割が期待される。新外国人のクックは制球力が良くメジャーでは中継ぎだったが、先発もでき起用法に注目したい。

 ただ、枚数は不足しており、昨年ケガで不振だった中尾や風張が復調すると層は厚くなり、特に中尾は少ない中継ぎ左腕だけに復調すれば大きな戦力になる。また、新戦力では奪三振率の高い杉山、スタミナ十分の大西の即戦力ルーキーにも十分にチャンスがある。

 抑えは石山の復調に尽きる。昨年同様に石山が不振だと厳しく、マクガフもいるが防御率3点台で、2点台の石山と安定感がまるで違う。梅野かマクガフのどちらかがセットアッパーを務め、石山に繋ぐ形が現状では理想的な布陣だと思う。

【今年度の予想】

 ・先発…小川泰弘 石川雅規 高梨裕稔 イノーア

     高橋奎二 原 樹里 山田大樹 スアレス 奥川恭伸 吉田大喜

 ・中継…梅野雄吾 近藤一樹 五十嵐亮太 大下佑馬 クック

     中尾 輝 風張 蓮 杉山晃基 大西広樹 今野龍太

 ・抑え…石山泰稚 マクガフ 

 

●野手陣~バレンティン移籍の穴は大きい…左翼手争いと若手の成長がカギ

 先述したが昨シーズンは村上が大ブレイクし、打率こそ最下位だったものの36本塁打、96打点でチームの主力に成長した。一方で村上以外の若手の突き上げがなく、38歳の青木、36歳の雄平と坂口のベテラン頼みの状況は変わらなかった。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…☆中村悠平(126/450)西田明央(47/62)松本直樹(33/73)

 内野手…☆村上宗隆(143/593)☆山田哲人(142/641)坂口智隆(22/77)

     荒木貴裕(93/140)廣岡大志(91/243)太田賢吾(90/337)

     奥村展征.(74/155)西浦直亨(44/162)

 外野手…☆青木宣親(134/565)☆バレンティン(120/468)☆雄平(131/493)

     山崎晃太朗(80/150)中山翔太(35/100) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)坂口智隆③      1)山田哲人④      

  2)青木宣親⑧      2)青木宣親⑧       

  3)山田哲人④      3)バレンティン⑦    

  4)バレンティン⑦    4)村上宗隆③      

  5)雄平⑨        5)中山翔太⑨      

  6)村上宗隆⑤      6)西浦直亨⑥      

  7)廣岡大志⑥      7)中村悠平②      

  8)中村悠平②      8)廣岡大志⑤

  9)小川泰弘①      9)石川雅規  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)坂口智隆③      捕 手)中村悠平 

  2)青木宣親⑧      一塁手坂口智隆(村上宗隆)

  3)山田哲人④      二塁手山田哲人

  4)村上宗隆⑤      三塁手)村上宗隆(西浦直亨

  5)雄平⑨        遊撃手)エスコバー(廣岡大志)

  6)エスコバー⑥     左翼手)山崎晃大朗(中山翔太)

  7)中村悠平②      中堅手青木宣親(山崎晃大朗)

  8)山崎晃大朗⑦     右翼手)雄平(塩見泰隆)

  9)投手

 捕手は中村が不動のレギュラーで、今シーズンは経験豊富な嶋が控える。嶋は勝負強い打撃に加え弱体投手陣をどうリードするか注目したい。ただ、嶋は肩に衰えが見えるだけに、強肩の松本もディフェンスから信頼を高めたい。

 内野は二塁の山田哲と遊撃のエスコバーは決まりで、エスコバーは守備に定評があり課題のセンターラインが強化された。主砲の村上は一塁または三塁の起用になり、村上次第で一塁に坂口、三塁に西浦か廣岡がはまる。守備力重視なら一塁・村上だが、坂口の打撃力は捨てがたく、攻撃的布陣で三塁・村上が理想的だと思う。

 外野は中堅の青木と右翼の雄平が決まりで、バレンティンが抜けた左翼手の争いに注目が集まる。長打力重視なら中山だが、出場機会を増やした山崎は守備に定評があり、俊足の塩見との争いになる。 

 打順ではバレンティンの抜けた穴を埋めることが課題だが、ここを埋める選手は正直見当たらない。新外国人のエスコバーはアベレージヒッターで長打を望むのは酷で、昨シーズンの一発頼みの大味な打線から、機動力や小技を駆使した野球にシフトする必要がある。そういう意味では山崎や塩見は適任だが、高津監督が誰にレフトを任せるか注目したい。

 昨年固定できなかったトップバッターに出塁率の高い坂口が収まり、青木とのベテランの1・2番コンビは怖い。中軸には山田哲と村上のが控え、5番の雄平に本来の勝負強さが戻るとバレンティンを欠いても見劣りはしない。下位はエスコバーと中村、左翼で中山と山崎、村上が一塁に回れば西浦と廣岡のサードの定位置争いになるが、ここに実績のある川端が加われば強力打線を維持できる。 

 控えでは内野ならどこでも守れる太田、代打で勝負強い荒木がいる。チーム1~2の俊足をほこる塩見は外野のレギュラー候補だが、ここ一番の代走も期待できる。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…中村悠平 嶋 基宏 松本直樹

 内野手坂口智隆 山田哲人 村上宗隆 エスコバー 西浦直亨 

     廣岡大志 太田賢吾 荒木貴裕(奥村展征 川端慎吾 藤井亮太)

 外野手…青木宣親 雄平 中山翔太 山崎晃大朗 塩見泰隆(上田剛史)    

 

 最後に、個人的に今年注目の若手では、投手ではルーキーの吉田喜を上げたい。最速152キロで制球力も素晴らしく、大学では先発・救援のどちらも経験しているが、オープン戦初戦でも結果を出しており、先発ローテーションに喰い込む可能性は十分にある。 

 野手では2年目の濱田太貴(外野手)は一押しで、昨年はルーキーながらファームで規定打席に達しており、一軍デビューも果たした。まだまだ走攻守に粗削りだが、ポスト青木として、まずは得意の打撃でアピールしたい。 

ソフトバンク~厚い選手層で球界の新盟主へ、ただ最近はドラフト不発気味

 豊富な資金力を背景に球界の新盟主となったソフトバンク。充実した練習施設に緻密なデータ分析をするスタッフ、三軍制でチームの底上げを行い、活躍した選手は高年俸で評価し、優勝するとオーナーが胴上げされる。フロントと現場の連携がしっかりとできており、暫くは低迷することが考えにくいチームだ。

 選手も1億円プレーヤーがゴロゴロいて、さぞかしFA選手を好待遇で獲得していると勘違いしている人もいるが、いやいやソフトバンクこそ育成のチームと言える。主力選手の指名順位を見てみたい。

 投手・千賀滉大(蒲郡高~10年育④)、捕手・甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)、一塁手内川聖一(横浜からFA)、二塁手・牧原大成(城北高~10年育⑤)、三塁手松田宣浩(亜大~05年大社希)、遊撃手・今宮健太(明豊高~09年①)、左翼手中村晃(帝京高~07年高③)、中堅手柳田悠岐(広島経済大~10年②)、右翼手・上林誠知(仙台育英高~13年④)と外国人選手を除いた陣容である。

 FAで獲得したのは内川のみで、ほかはすべて自前で育成した選手だ。特に千賀と甲斐、牧原は育成選手で、柳田やクローザーの森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)も順位は2位だが、ドラフト時は無名選手で、全日本レベルの選手まで育成した手腕にはただただ驚くしかない。

 昨シーズンも新人王の高橋礼(専大~17年②)は4年時には調子を落とし、指名すら危ぶまれた投手で、侍ジャパンで一躍全国区になった韋駄天・周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)も育成指名。まさにどこまで強さが続くのだろうと思う。

 

●ドラフトを育成の場として活用、チームに競争環境を生み出し圧倒的な強さを誇る

 あまり関係ないがホークスの歴史を振り返ってみたい。私は間もなく50歳になるが、私が子どもの頃、とにかく南海ホークスは弱かった。中学生くらいになり、かつては強豪チームだったと分かったときにも素直に信じることができなかった。

 73年に南海として最後の優勝を果たすと、その後78年から球団譲渡する88年まで最下位5回、5位が4回でチームの歴史に幕を下ろした。89年に福岡ダイエーホークスに変わっても負の歴史は変わらず、99年に優勝するまでBクラスは南海~ダイエーに跨り21年間も続いた。

 そのダイエーに変革をもたらせたのが、球界の寝業師と言われた根本陸夫で、93年に西武のフロントからダイエーの監督に就任するとドラフトでチームを作り変えた。93年には、その年のドラフトの目玉・小久保裕紀青学大~93年②)の争奪戦に勝利し逆指名を取りつけると、あえて小久保を2位にし、1位で渡辺秀一(神奈川大~93年①)を指名しアッと言わせた。

 翌94年は、駒大進学が確定的だった城島健司(別府大付高~94年①)を強行指名し獲得、翌年は斎藤和巳(南京都高~95年①)をエースに育て上げ、96年には王貞治監督の即戦力投手獲得の要望を押し切り、井口忠仁青学大~96年①)、松中信彦新日鉄君津~96年②)、柴原洋九州共立大~96年③)の野手を指名し、結果99年の優勝に結びついた。

 その後は、ダイエーの04年まで優勝4回うち日本一2回でBクラスはなし。05年にソフトバンクに変わってからは優勝6回で日本一も6回(うち2位からが2回)、Bクラスはわずかに2回と圧倒的な強さを誇っている。

 まさしくドラフトを育成の場として活用しており、不足している戦力を豊富な資金力でFAや外国人選手で補い、一芸に秀でた選手を育成選手で獲得し3軍制を敷くことでチーム内に競争原理を生んでいる。この姿勢こそが球界の新盟主と呼ばれる所以で、単にFA選手だけをかき集めているだけでは強くはなれないことを証明している。

【過去10年のドラフト1位指名選手

 10年① 山下 斐紹(習志野高・捕手)     高④大①社⓪(投手③野手②)

 11年① 武田 翔太(宮崎日大高・投手   高③大①社①(投手③野手②)

 12年③ 東浜  巨(亜大・投手)     高②大③社①(投手④野手②)

 13年④ 加治屋 蓮(JR九州・投手)   高①大⓪社③(投手③野手①)

 14年① 松本 裕樹(盛岡大付高・投手)  高④大①社⓪(投手③野手②)

 15年① 高橋 純平(県岐阜商高・投手)  高⑥大⓪社⓪(投手③野手③)

 16年② 田中 正義(創価大・投手)    高③大①社⓪(投手②野手②)

 17年① 吉住 晴斗(鶴岡東高・投手)   高③大②社⓪(投手④野手①)

 18年② 甲斐野 央(東洋大・投手)    高②大②社③(投手⑤野手②)

 19年② 佐藤 直樹(JR西日本・外野手) 高①大③社①(投手①野手④)

 

 ただ、ソフトバンクのドラフトも万全ではない。過去10年の1位指名選手を見ても「ん?」と思ったはずだ。主戦は武田と東浜のみで、昨シーズン甲斐野が活躍するまで芳しい結果は出ていない。

 加治屋は一昨年に中継ぎでブレイク、高橋純も昨シーズン中継ぎで3勝を上げた。ただ、2人とも期待されているのは中継ぎではないはずで、1年くらいの活躍では1位選手としては物足りない。松本は通算4勝、5球団競合の田中はケガで未勝利…というかまだ11試合しか登板機会がなく、選手層は確かに厚く主力になるのは容易ではないが、それにしても出てくるスピードが遅すぎる。

 ソフトバンクのここ10年の指名人数は59名は、阪神と並んでもっとも少ない。指名の割合は高校生が最も多く56%と半数を数える。大学生27%、社会人17%と育成主体ドラフトが際立っている。

 特に14年~17年は、将来の主力を見据えた高校生指名中心で、19名中16名が高校生指名である。もう一段スケールの大きいチームを目指した指名で、このこと自体を否定するつもりはないが、何事にもバランスは必要であまりに偏りすぎである。

 さらに残念ながら、この4年間に指名された高校生選手で主力選手は一人もおらず、投手では松本の4勝、野手は川瀬晃(大分商高~15年⑥)の12安打が最多で、30歳を超えた主力を脅かす選手の出現が望まれる。

 その反動ではないと思うが、18年~19年は大学生と社会人指名が多く、昨年は実に本多雄一三菱重工名古屋~05年大社⑤)以来となる社会人野手を14年振りに指名し、世代交代の遅れに危機感を持っていることを感じさせる指名となった。

 

●投打に主力を欠くも、ぶ厚い選手層で要所をカバーし3年連続日本一輝く

 昨シーズンは序盤から貯金を重ね首位を走っていたが、最後の最後で西武に抜かれシーズンは2位で終えた。かつてはポストシーズンで惜敗していたが、今は逆に短期決戦で無類の強さを見せ、CSのファーストステージ2戦目から破竹の10連勝で3年連続の日本一に輝いた。

 その躍進を支えたのが投手陣で、防御率3.63はリーグ1位。先発では千賀が13勝と最高防御率、高橋礼は12勝を上げ新人王に輝いた。大竹耕太郎(早大~17年育④)やミランダがローテーションを守り、後半戦は武田がリリーフから先発に復帰、ベテラン和田毅早大~02年自)も復活を果たした。

 圧巻は救援陣で、モイネロは60試合に登板して防御率1点台、森と嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)、松田遼馬(波佐見高~11年⑤)も50試合に登板し、高橋純も中継ぎで結果を残した。圧巻はルーキー甲斐野で、チーム最多の65試合に登板し、侍ジャパンにも選出され大車輪の活躍を見せた。

 ただ、一昨年活躍した東浜は7試合、バンデンハークも3試合登板に留まった。ブルペン陣も石川柊太(創価大~13年育①)と岩嵜翔市船橋高~07年高①)が2試合、サファテは全休で、これだけ主力が離脱してもリーグ防御率1位とはまさに脱帽と言うしかない。

 攻撃陣も一昨年に続きチーム打率2位、本塁打1位で破壊力のある打線を維持できている。ちなみに一昨年大活躍した柳田はケガで38試合7本塁打、レギュラーで規定打席に達した中村と上林が不振に陥ったなかでも、投手陣と同じく打線も維持できた戦力の厚さは圧巻だった。

 実は打撃10傑には一人もおらず松田の.260が最高で、規定打席に達したのも甲斐と内川、デスパイネの4名で一昨年から1名減だが、今宮と牧原、グラシアルが400打席を超え、この7名でレギュラー陣を形成した。本塁打デスパイネの36本を筆頭に、松田が30本、グラシアルが28本と破壊力のある中軸を形成した。

 内野では明石健志山梨学院大付高~03年④)、外野には福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年高①)のスーパーサブが控え、代打では長谷川勇也専大~06年大社⑤)に左キラー川島慶三九州国際大~05年日大社③)、代走には足のスペシャリスト周東がおり、他球団では間違いなくレギュラーの控え選手が要所で活躍し、層の厚さを見せつけた。

 ただ、20代のレギュラーが甲斐と今宮、牧原に上林しかおらず、野手の世代交代は喫緊の課題だ。

 

●高校生主体から即戦力志向へシフト?野手の世代交代が喫緊の課題

 14年から続けた高校生主体の指名が実を結ばず、一昨年は大学生、社会人中心の指名になった。ただ、これはあくまで結果論で、本当に欲しかったのはポスト内川、松田であり、柳田に続く選手である。

 17年は清宮幸太郎日本ハム)と安田尚憲(ロッテ)、18年は小園海斗(広島)と辰巳涼介(楽天)、そして昨年は石川昴弥(中日)を外している。1位指名を見ても、ソフトバンクがどれだけ野手は欲しい分かる。昨年は結果、投手1名野手4名の指名になったが、積極性よりもむしろウィークポイントの改善に努めたドラフトになった。

 最後に直近10年のクジ運だが4勝9敗…ここ3年に限れば0勝6敗と完全に見放されている。

 
1位~佐藤 直樹(JR西日本・外野手)30

 夏くらいまでは単なるドラフト候補の一人だったが、昨年の都市対抗で活躍。ドラフト会議が近づくにつれ評価が急上昇し、社会人野手ナンバーワンの呼び声のなか1位指名になった。

 50メートル5秒8の俊足に遠投120メートルの強肩は既に一軍レベルで、打撃は中距離打者で、プロでは貴重な右打ちの俊足のリードオフマンタイプの選手だ。今年の外野陣は、グラシアルやバレンティンと守備に不安があるだけに、イニング後半で守備固めの出番は間違いなく増える。また、ソフトバンクは一番打者が決まっておらず好守でピンポイントの指名になった。

 報徳学園高から大学を経由せず社会人に進みは、高卒1年目からレギュラーを獲得した選手で、まだ成長過程で伸びしろも十分にある。まずはセールスポイントの守備と走塁で一軍に定着したい。

2位~海野 隆司(東海大・捕手)62

 大学生捕手が豊作だったなか、大学ナンバーワン捕手と呼ばれ、好守の完成度が高い即戦力。二塁送球タイム1.7秒の強肩は既にプロレベルで、国際大会ではトップレベルの大学生投手を好リードで牽引した。捕手の不足しているチームから1位単独指名もあると思っていたので、22番目に名前が呼ばれたのが意外だった。

 現状、正捕手の甲斐との控えの差が大きく、ベテランの高谷裕亮(白鷗大~06年大社③)も今年39歳になり、第二の捕手としての出番は早そうだ。受け継いだ背番号は、甲斐がつけていた番号で、ここに正捕手としての期待の高さが窺える。

3位~津森 宥紀(東北福祉大・投手)11

 海野の順位も意外だったが、津森も3位で獲得できるとは思わなかった。サイドスローから最速149キロのキレのあるストレートを投げ込み、そのストレートは浮き沈みする球筋で、分かっていても打てない魔球と呼ばれている。また、変化球も多彩で3年時には大学日本一の原動力になった。

 プロでは救援タイプで、ホークスは現状、右のブルペン陣は本格派が多く、変則の津森が加わることでさらに層が厚くなり、戦術も広がるため出番は多そうな気がする。力強いパ・リーグ打者相手にどのようなピッチングをするのか今から楽しみだ。

4位~小林 珠維(東海大札幌高・内野手)69

 恵まれた体格から投手としては最速151キロ、打者としては高校通算30本塁打を放ったまさに4番でエースのチームの大黒柱。投打にスケールの大きい選手で、プロではどちらで指名されるか注目していたが、遠投120メートルの強肩も活かし、ホークスはポスト松田の候補として野手指名した。

 野手の世代交代はこの間解消されていない課題で、スラッガーとしての期待値は当然高い。高校生の4位といえば、イチロー前田智徳中村紀洋の強打者を生み、道産子のスラッガー鈴木貴久以来おらず、私の地元選手だけに活躍を期待したい。

5位~柳町  達(慶大・内野手)32

 繰り返しで申し訳ないが、海野も津森に続き、柳町の5位指名も意外だった。高い身体能力を活かした走攻守3拍子揃った選手で、ミート力に優れ、東京6大学で通算100安打を超えたヒットメーカー。また、三塁のほかに外野も守れる典型的なリードオフマンタイプだ。

 佐藤、小林の段でも触れたが、野手の世代交代は喫緊の課題で、且つ強力打線を誇るが一番打者の牧原は出塁率が低く、周東も打撃が課題で、下位ながら柳町への期待値は高い。内外野守れるのも強みで、開幕一軍も十分に狙える。 

 育成指名
 育成指名1位は、石塚綜一郎(黒沢尻工高・捕手)で、捕手ながら投手として143キロ、打者では高校通算39本塁打、二塁送球タイム1.8秒の強肩で好守でセンスが光る。

 2位の大関友久(仙台大・投手)は、186センチの長身左腕でストレートには角度があり、変化球も多彩な将来性豊かな大型左腕。

 3位の伊藤大将(八戸学院光星高・内野手は、ヤクルト6位の武岡龍世と二遊間を組み、全国大会での実績は十分。走攻守に隙のないバランス型の選手だ。

 4位は勝連大稀(興南高・内野手で、オリックス1位の宮城大弥に続き同校からの指名になった。守備範囲が広く的確な送球で守備力に定評がある。

 続く5位の舟越秀虎(城北高・外野手)は、身体能力抜群の外野手で、陸上部にも勧誘された経験があるアスリート型。

 6位の荒木翔太(千原台高・内野手は、5位の舟越と同じ熊本県の高校からの指名になった。力強い打撃に脚力も備えている。

 育成最後の7位は、村上舜(山形中央高・投手)で、最速143キロのキレのあるストレートが武器の左腕で、昨夏はチームを県大会準優勝に導いた。

 

 本指名は即戦力と喫緊の課題である野手指名に集中し、育成は素質豊かな高校生6名を指名するなど、トータルバランスの取れたまずまずのドラフトになった。ただ、高校生に限っていえば、広島へ移籍した曽根海成(京都国際高~13年育③)以来、育成選手からの一軍出場はなく、高卒野手の輩出スピードを上げたいところだ。

 最後に、直近10年の12球団のドラフト戦略を読んでいただきありがとうございます。開幕まであと1月半、楽しみですね。

阪神~ドラフト下手は相変わらず?もうあの暗黒時代には戻りたくない

 12球団で一番ドラフトが下手な球団は?」と聞かれたら、申し訳ないが即座に阪神と答える。それだけ阪神のドラフトにはチーム強化の方向性を感じず、中長期的な戦略も感じられず、毎年ツギハギ指名を続けているようにしか思えない。 

 例えば88年のドラフトは、阪神と中日の2人の球団職員の去就に注目が集まった。中日は球団職員の大豊泰昭をしたたかに2位指名し、1位で今中慎二を指名した。一方で阪神は素直というか、バカ正直というか、そのまま中込伸(神崎工高~88年①)を指名した。同じ状況のなか、中日のほうが一枚も二枚も上手だった。

 翌年の90年は野茂英雄近鉄)を中心に、空前の豊作ドラフトになった。野茂を外した阪神は、巨人にスルーされた元木大介がまだいるなか、葛西稔(法大~90年①)を指名し、元木は田淵幸一監督のダイエーが指名した。その年に掛布が引退し、スター候補になり得る将来の4番打者が欲しいなか、「なぜ葛西?」と誰もが唖然とした。

 01年から自由枠指名が始まると、素質豊かな高校生には目もくれず、12球団で唯一制度が終了する04年まで上位2枠を使い切った。ただ、戦力になったのは安藤優也トヨタ自動車~01年自)と能見篤史大阪ガス~04年自)、鳥谷敬早大~03年自)だけとは寂しい限りである。 

 とにかく即戦力志向が強く、投手なら翌年何勝、打者なら一軍半の選手が増えるだけでスケール感が不足している。ドラフト草創期に江夏豊(大阪学院高~66年①)や田淵幸一(法大~68年①)、掛布雅之習志野高~73年⑥)のようなリーグを代表するスーパースターを指名した実績があるだけに寂しい。 

 

●悲願の日本一から暗黒時代へ…2人の名将が礎を築いた

 阪神は元々は巨人の最大のライバルと言われただけあり、リーグを代表する強豪チームだったが、優勝にはなかなか届かなかったが、逆に最下位も少なかった。そんななか85年に悲願の日本一を達成し、日本中に虎フィーバーが巻き起こった。

 だが、そのあとに待っていたのは思い出したくもない暗黒の歴史で、優勝後の80年代後半から90年代は本当に弱かった…。86年からの15シーズンで、Aクラスはわずかに2回、最下位はなんと9回を数えた。

 そんな阪神を変えたのが、闘将・星野仙一で、02年に就任すると5年振りに最下位を脱出し、翌年には優勝を果たした。その後、岡田彰布監督が就任し、翌々年の05年に優勝。岡田が率いた5年間はAクラス4回でチームも強化され、かつての定位置であった最下位は18年の一度だで、優勝争いに食い込めるチームに成長した。

 ドラフトの特徴はとにかく大学生が大好きで、直近10年は37%とロッテに次いで2番目に多い。ただ、そのなかで主戦になっているのが、投手では岩崎優(国士館大~13年⑥)、野手でも梅野隆太郎(福岡大~13年④)と高山俊(明大~15年①)、大山悠輔(白鷗大~16年①)だけではさぞ無念だろう…。しかしそんな大学生好きも、大事なところで方針がぶれてみすみす大物を逃してしまう。

 16年は競合を嫌がり、本命と言われた佐々木千隼(ロッテ)を回避して、大山悠輔を指名した。阪神は「してやったり」と言わんばかりの表情だったが、ファンは驚きの声を上げた。結局、佐々木を1位入札するチームはなく、大本命を単独で獲得できた結果になり、すべての1位指名が終わったときの阪神のテーブルは「やってしまった」と苦笑いし、会場は阪神ファンの落胆に包まれた。

 18年もてっきり1位で地元の辰巳涼介(楽天)と思っていたが、まさかの藤原恭大を(ロッテ)指名してきた。外しはしたが、前年にも清宮幸太郎日本ハム)や安田尚憲(ロッテ)の高校生野手を指名した姿勢は大いに評価できるが、他球団の動向からシミュレーションを重ねれば、辰巳も単独で獲れた選手だった。

 このように大事なところで、獲得できた大学生の大物選手をみすみす逃がしてしまったりすることが、阪神のドラフト下手が目立つ結果になってしまっている。 

【過去10年のドラフト1位指名選手

 10年② 榎田 大樹(東京ガス・投手)     高③大①社①(投手③野手②)

 11年④ 伊藤 隼太(慶大・外野手)    高③大②社⓪(投手③野手②)

 12年⑤ 藤浪晋太郎大阪桐蔭高・投手)  高②大②社②(投手③野手③)

 13年② 岩貞 祐太(横浜商大・投手)   高①大④社①(投手③野手③)

 14年② 横山 裕哉(新日鉄住金鹿島・投手)高①大①社③(投手③野手②)

 15年③ 高山  俊(明大・外野手)    高①大④社①(投手③野手③)

 16年④ 大山 悠輔(白鷗大・内野手)   高②大③社③(投手⑤野手③)

 17年② 馬場 皐輔(仙台大・投手)    高①大④社①(投手④野手②)

 18年⑥ 近本 光司(大阪ガス・外野手)  高②大⓪社④(投手③野手③)

 19年③ 西  純矢(創志学園高・投手)  高⑤大①社⓪(投手③野手③)

 

 過去10年の1位指名選手を見ても即戦力志向が見て取れる。その弊害は年齢構成に表れ、特に野手が酷い。19歳から22歳のいわゆる育成期の選手が、内野手の小幡竜平(延岡学園高~18年②)1人しかおらず背筋が寒くなった。最も多い日本ハムが9名、他球団も最低でも5名はおり、なぜここまで放置したのか謎である。

 反面、25歳には野手だけで7名おり偏りすぎである。捕手の最年少がその25歳の長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)、外野手は23歳の島田海史(上武大~17年④)では、阪神ファンだけではなく心配になってしまう。

 直近10年の指名人数59名はセ・リーグ最小で、08年の統一ドラフト以降、判を押したように5~6名の指名で、6名以上指名したのは8名指名した16年の1回だけである。育成選手も12年から5年間1人も指名せず、これだけの空き年齢があるのに育成選手制度をなぜ有効活用しないことも理解に苦しむ。

 ポジション別の指名では、投手の指名が最も少なく、外野手の指名は最も多い。ただ、出来上がったチームは投高打低で、外野のレギュラーもルーキーの近本に、FAで移籍してきた糸井嘉男(近大~03年日自)と福留孝介日本生命~98年中①)では結果は残念ながら出ていない。

 最後に阪神の本拠地である大阪は、高校野球屈指の強豪地区である。夏は13回、春は11回甲子園を制覇し、両方とも全国最多である。そのなかでもPL学園高が7回(夏④春③)、大阪桐蔭高が8回(夏⑤春③)全国制覇している。これだけの強豪地区ながら、なぜか地元強豪校からの指名は大阪桐蔭の藤浪のみである。

 奇しくも05年の日本シリーズ阪神はロッテに1勝もできずに終えたが、このシリーズ活躍したのがPL出身のサブローと今江敏晃大阪桐蔭西岡剛だった。別に大学生指名が悪い訳とは言わない。ただ、もっと地元とのネットワークも大事にすべきだ。 

 

●リーグナンバーワンの防御率で投手王国を形成!一方で長打力不足は解消されず

 昨シーズンは後半にまさかの6連勝を決め、広島を0.5ゲーム差で振り切り、前年の最下位から3位に順位を上げた。前半好調だったが、6~7月に負け越しが続き、ここまでかなと思ったが、終盤の粘りは見事だった。

 チームを救ったのは盤石のリリーフ陣で、後半クローザーに復帰した藤川球児高知商高~98年①)が16セーブを上げ、島本浩也(福知山成美高~10年育②)はチーム最多の63試合に登板しながら防御率1.67の抜群の安定感を誇り、新外国人のジョンソンと岩崎も防御率1点台だ。さらにベテランの能見、守屋功輝(ホンダ鈴鹿~14年④)、ドリスも50試合に登板し質量とも強力リリーフ陣を形成できた。

 先発ではFAで移籍してきた西勇輝菰野高~08年③)が貫禄の10勝、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)も9勝を上げ、ともに規定投球回数を超えた。さらに高橋遥人(亜大~17年②)や中日から移籍したガルシアもローテーションを守った。チーム防御率はリーグ1位の3.46で、まさに投手王国の基盤を築きつつある。

 打線はチーム打率が.251のリーグ4位、盗塁はリーグ1位でセ・リーグで唯一100の大台に乗った。ただ、本塁打は94本で課題の長打力不足は昨シーズンも解消されなかった。糸井がリーグ3位の.314を記録し、ルーキーの近本、糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)、梅野、大山の5名が規定打席に達した。

 大山は14本塁打、76打点と数字は寂しいがチーム1位の成績を残し、主力選手として独り立ちの目途が立った。ルーキーの近本は、入団当初は活躍を不安視されていたが、セ・リーグ新人記録を塗り替える159安打に盗塁王も獲得し周囲の不安を一蹴した。

 このほか新外国人のマルテ、ルーキー木浪聖也(ホンダ~18年③)も、1年目ではまずまずの成績を上げ、期待の高山や大病から復帰した原口文仁(帝京高~09年⑥)の復調など、来シーズンに向け光明が見えた。

 残念だったのは、一昨年活躍した期待の若手が結果を出せなかったことか…。岩貞と秋山拓巳(西条高~09年④)は投球回数が半減、才木浩人(須磨翔風高~16年③)は6勝から2勝、小野泰己(富士大~16年②)は7勝から勝ち星なしと期待を裏切った。

 野手でも中軸候補の中谷将大(福岡工大城東高~10年③)に北條史也光星学院高~12年②)、陽川尚将(東農大~13年③)が伸び悩み、ファームでは別格の江越大賀(駒大~14年③)も一軍では歯が立たず、期待に応えることができなかった。誰か一人でもブレイクすると打線に厚みを増すのだが…いくら広い甲子園とは言え、本塁打が大山の14本、マルテの12本、福留の10本が上位3人はいくらなんでも寂しすぎる…。

 

●思わず「日本ハムか…」と思った会心ドラフト!甲子園のスター選手の活躍に期待

 一昨年に就任した矢野燿大監督のここ2年のドラフトには変化が見える。一昨年は藤原→辰巳→近本と徹底して外野手を指名し、センターライン強化に努めた。また、96年以来、上位1~3位を野手指名しウィークポイント改善を進めた。

 昨年も奥川を外したあとも、西純を指名し、素質豊かな高校生投手の1位指名を続けた。1位での補強ポイントを決め、外れてもブレない姿勢は評価できる。また、1位~5位まで高校生指名を続け、うち3名が野手とスケール感のあるドラフトになった。

 
1位~西  純矢(創志学園高・投手)15

 3年夏は残念ながら岡山県大会準決勝で敗れ、甲子園の土は踏めなかったが、2年夏の甲子園初戦で、その年のセンバツベスト8の創成館高(長崎)相手に16三振を奪う鮮烈デビューは記憶に新しい。物議は醸し出したが、帽子をとばし、雄たけびを上げ、気合を前面に打ち出した投球はインパクトがあり、佐々木朗希(ロッテ)と奥川恭伸(ヤクルト)、同僚の及川と並び高校BIG4と呼ばれた。

 ストレートは最速154キロ、タテ・ヨコのスライダーとフォークを武器に、完成度の高い投手だ。昨夏のU-18では打力でも目立ち、大会最多本塁打に輝いた。まさしく野球センスの塊で、スケール感のある将来のエース候補と言える。

 リーグ屈指の投手陣をほこる阪神で、焦る必要はない。有望な若手投手も揃っており、チーム内で競争環境も整っている。今度は本拠地になった甲子園で、気合の入ったピッチングをまた見せてほしい。

2位~井上 広大(履正社高・外野手)32

 昨夏、初の全国制覇を決めた履正社高(大阪)の4番で、私はスラッガーで将来の4番候補、地元の強豪校からの上位指名と、2位・井上指名を大きく評価した。高校通算本塁打49本で、決勝戦では奥川から3ランを放っている。 

 まだまだ粗削りで、時間はかかると思う。ただスイングの力強さと飛ばす力は超高校級で、井上が成長すれば10年は4番に困らないチームになる。心配なのは、指名後にプライベートで軽いケガをしたり、施設見学の際に太り気味を指摘されるなど、プロとしての意識を高めてほしい。

3位~及川 雅貴(横浜高・投手)37

 最速153キロのストレートに、140キロ台のスライダーが武器の左腕で、高校BIG4に名を連ねた。U-15では世代ナンバーワン投手と言われ、横浜高進学後も順調に成長したかに思えたが、3年時には本来の投球ができずにU-18の選考にも漏れた。

 ただ、秘めたポテンシャルは本物で、ツボにはまったときは手もつけられないピッチングを見せる。課題の制球力を克服して、西純と並んで左右のエースになってほしい。能見が今年41歳、岩田稔(関大~05年希)も36歳を迎え、阪神の左腕は量的にも不足しており、意外に出番は早いかもしれない。

4位~遠藤  成(東海大相模高・内野手)45

 昨夏の甲子園では背番号1をつけて、チームを4年振りの甲子園に導いた。投手でも最速145キロをほこるが、プロでは野手で勝負する。その野手としては高校通算45本塁打、甲子園でも2本塁打8打点と投打に高いセンスを見せた。野手としての本職は遊撃手だが、U-18では外野手も務めた万能型だ。

 とにかく身体能力の高さは折り紙つきで、阪神の内野陣で左打のスラッガーはおらず、鳥谷コンバート後、遊撃手には北條と木浪がいるがレギュラーは確約されていない。チャンスは十分にあり、まずは得意の打撃でアピールしたい。

5位~藤田 健斗(中京学院大中京高・捕手)59

 昨夏の甲子園でチームを初の4強に導いた。二塁送球1秒79の強肩に加え、主将で4番を務めたまさに中心選手。昨春の日本代表合宿で佐々木(ロッテ)の163キロの球を受けたことでも有名になった。捕手として強肩に高いリーダーシップを兼ね備えているのは強みだ。

 何せ24歳以降の捕手が一人もおらず、藤田が最年少。育成に時間がかかるポジションだが、昨年は梅野以外は坂本誠志郎(明大~15年②)が20試合、長坂は3試合しか出番がなく、梅野がコケれば一気に課題が噴出し、藤田への期待は順位よりも大きい。

6位~小川 一平(東海大九州・投手)66
 最速149キロを超えるストレートが武器で、高校時代は無名だったが進学した東海大九州で頭角を表し、2年生のときに大学選手権出場の主力で注目を浴びた。大学生ながらまだまだ伸びしろのある未完型で、一時は上位指名の隠し球とも言われたポテンシャルを秘めている。

 投球スタイルはストレートを軸に、スライダー、カーブ、ツーシームを駆使し緩急でカウントを整え、得意のチェンジアップで三振を取る。先発でも当然いけるが、中継ぎで重宝されそうな感じがする。

 育成指名
 育成指名1位は、小野寺暖(大商大・外野手)で、リーグMVPを2度受賞した強打者。明るい性格で、本指名されなかった悔しさを露わにする気の強さもプロ向き。

 2位の奥山皓太(静岡大・外野手)は、高校時代は投手で、大学で野手へ転向した。まだ粗削りだが、その分素質の高さが窺える。

 

 とにかく昨年は、これまでの阪神にはなかったインパクトのあるドラフトだった。是非、一時ではなくこの姿勢が続くのを期待したい。最後に直近10年のクジ運は4勝10敗…ここはどうにもならない。