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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆ヤクルト~投手陣の不安は解消されず…野手は若手の台頭が求められる

 シーズン開幕まであと1ケ月。これから開幕まで、12球団の戦力分析と僭越ながら順位予想をしたいと思います。下位予想から始めますので、またお付き合いください。

 今年のセ・リーグは、例年になく大混戦が予想される。巨人が頭一つ抜け出しているが、戦力がずば抜けているわけではなく、ヤクルト以外の5チームに優勝の可能性があると思う。

 そのヤクルトだが、今年も厳しく、最下位予想させてもらった。野球雑誌や各記事での順位予想を見ても、ヤクルトの最下位予想が大半で、ある雑誌の戦力分析では、12球団で唯一の「D」評価と手厳しかった。

 先ず課題の投手陣に改善の目途が立たない。先発陣は駒不足、中継ぎはさらに不足で新戦力の台頭がないと厳しい。打撃陣はバレンティン移籍の穴は大きく、スケールダウン感は否めず、期待の村上が出遅れているのも気掛かりだ。二軍監督から昇格した新任の高津臣吾監督には、恩師・野村克也監督のように、チーム再建のベースを作るシーズンになりそうだ。 

●打線は強力も投手陣崩壊に歯止めがかからず…ドラフトも不発気味

 ここ5年の成績を見ると、16年から4年連続で防御率が4点台で、投手陣の崩壊が止まらない。Aクラスのシーズンは、なんだかんだ投手陣が結果を出しており、投手陣の再建は最優先課題だ。またエラーも多く、83失策は阪神に次いでワースト2位。弱い投手陣にさらに守備力でも不安を抱え、失点に歯止めがかからない。

 攻撃陣は強力で、昨シーズンは村上宗隆の覚醒もあり、山田とバレンティンを合わせた3人で104本塁打は圧巻で、チーム本塁打をリーグ2位まで押し上げた。一方で機動力は、山田哲人に任せきりで、33盗塁の山田哲がチームの半分以上を占め、次に多いのが村上の5盗塁には驚きで、山田哲以外マークする必要がない。チーム打率も下降気味で、リーグ2位の得点力の割には打線に怖さを感じない。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 6位 59勝82敗2分 .244  167本   62個  656点  4.78  739点

 18年 2位 75勝66敗2分 .266  135本   68個  658点  4.13  665点

 17年 6位 45勝96敗2分 .234    95本   50個  473点  4.21  653点  

 16年 5位 64勝78敗1分 .256  113本   82個  594点  4.73  694点

 15年 1位 76勝65敗2分 .257  107本   83個  574点  3.31  518点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 昨シーズン平均年齢28.4歳の高齢化したチームも、ベテラン選手の相次ぐ引退で27.6歳まで下がった。それでも12球団では2番目に高いが、着実に若返りが進んでいる。ただ、過去5年のドラフトも不発で、戦力アップには繋がっていない。

 18年~なし

 17年~村上宗隆(内野手九州学院高①)大下佑馬(投手~三菱重工広島②)

 16年~梅野雄吾(投手・九産大九州高③)

 15年~なし

 14年~なし 

 

●投手陣~先発、ブルペン陣もともに戦力が不足…新戦力に期待が高まるシーズン

  昨年は小川と石川がローテの中心も、エースの小川は5勝12敗と大きく負け越し、8勝の石川が勝ち頭で、次に高梨と山田大の5勝といずれも勝ち星を伸ばすことができなかった。

 ブルペン陣では、石山の不振でクローザーが決まらずマクガフが代役を務めたが安定感に欠けた。中継ぎも梅野が若手で唯一気を吐いたが、近藤や五十嵐の両ベテランに代わる若手もおらず、相変わらずの苦しい台所事情になった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…小川泰弘 石川雅規 高梨裕稔 原 樹里 高橋奎二 寺原隼人

 ・後半戦…石川雅規 高梨裕稔 山田大樹 小川泰弘 山中浩史 ブキャナン

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小川泰弘(159回2/3)石川雅規(124回1/3)ブキャナン(99回2/3)

     高橋奎二(95回1/3)高梨裕稔(78回)原 樹里(74回)

 ・救援…梅野雄吾(68試合)ハフ(68試合)マクガフ (65試合)

     近藤一樹(59試合)五十嵐亮太(45試合) 石山泰稚(34試合)

 先発は小川と石川が当確で、どちらかが開幕投手を務め、高梨を加えた3人が中心になる。残り3枠には、新外国人のイノーアが一番手で、打たせて取るピッチングスタイルで期待が持てる。順当にいけば高橋奎が5番手になるが、キャンプで調子が上がらないのが気がかりだ。残り1枠は実績のある原やベテラン左腕の山田大に加え、ルーキーの吉田喜にも期待したい。

 こうなると奥川の先発ローテ入りに期待したくもなるが、現状目先の勝利にこだわる状況でもなく、じっくりと育成し夏場以降の登板が現実的だ。しかし開幕投手候補は相変わらず小川と石川の名前しか挙がらず、先発候補で17年1位の寺島成輝や19年1位の清水昇の名前が無いのは何とも寂しい限りだ。

 中継ぎは梅野と近藤、五十嵐が当確で、大下は貴重な左腕で勝ちパターンを担う役割が期待される。新外国人のクックは制球力が良くメジャーでは中継ぎだったが、先発もでき起用法に注目したい。

 ただ、枚数は不足しており、昨年ケガで不振だった中尾や風張が復調すると層は厚くなり、特に中尾は少ない中継ぎ左腕だけに復調すれば大きな戦力になる。また、新戦力では奪三振率の高い杉山、スタミナ十分の大西の即戦力ルーキーにも十分にチャンスがある。

 抑えは石山の復調に尽きる。昨年同様に石山が不振だと厳しく、マクガフもいるが防御率3点台で、2点台の石山と安定感がまるで違う。梅野かマクガフのどちらかがセットアッパーを務め、石山に繋ぐ形が現状では理想的な布陣だと思う。

【今年度の予想】

 ・先発…小川泰弘 石川雅規 高梨裕稔 イノーア

     高橋奎二 原 樹里 山田大樹 スアレス 奥川恭伸 吉田大喜

 ・中継…梅野雄吾 近藤一樹 五十嵐亮太 大下佑馬 クック

     中尾 輝 風張 蓮 杉山晃基 大西広樹 今野龍太

 ・抑え…石山泰稚 マクガフ 

 

●野手陣~バレンティン移籍の穴は大きい…左翼手争いと若手の成長がカギ

 先述したが昨シーズンは村上が大ブレイクし、打率こそ最下位だったものの36本塁打、96打点でチームの主力に成長した。一方で村上以外の若手の突き上げがなく、38歳の青木、36歳の雄平と坂口のベテラン頼みの状況は変わらなかった。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…☆中村悠平(126/450)西田明央(47/62)松本直樹(33/73)

 内野手…☆村上宗隆(143/593)☆山田哲人(142/641)坂口智隆(22/77)

     荒木貴裕(93/140)廣岡大志(91/243)太田賢吾(90/337)

     奥村展征.(74/155)西浦直亨(44/162)

 外野手…☆青木宣親(134/565)☆バレンティン(120/468)☆雄平(131/493)

     山崎晃太朗(80/150)中山翔太(35/100) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)坂口智隆③      1)山田哲人④      

  2)青木宣親⑧      2)青木宣親⑧       

  3)山田哲人④      3)バレンティン⑦    

  4)バレンティン⑦    4)村上宗隆③      

  5)雄平⑨        5)中山翔太⑨      

  6)村上宗隆⑤      6)西浦直亨⑥      

  7)廣岡大志⑥      7)中村悠平②      

  8)中村悠平②      8)廣岡大志⑤

  9)小川泰弘①      9)石川雅規  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)坂口智隆③      捕 手)中村悠平 

  2)青木宣親⑧      一塁手坂口智隆(村上宗隆)

  3)山田哲人④      二塁手山田哲人

  4)村上宗隆⑤      三塁手)村上宗隆(西浦直亨

  5)雄平⑨        遊撃手)エスコバー(廣岡大志)

  6)エスコバー⑥     左翼手)山崎晃大朗(中山翔太)

  7)中村悠平②      中堅手青木宣親(山崎晃大朗)

  8)山崎晃大朗⑦     右翼手)雄平(塩見泰隆)

  9)投手

 捕手は中村が不動のレギュラーで、今シーズンは経験豊富な嶋が控える。嶋は勝負強い打撃に加え弱体投手陣をどうリードするか注目したい。ただ、嶋は肩に衰えが見えるだけに、強肩の松本もディフェンスから信頼を高めたい。

 内野は二塁の山田哲と遊撃のエスコバーは決まりで、エスコバーは守備に定評があり課題のセンターラインが強化された。主砲の村上は一塁または三塁の起用になり、村上次第で一塁に坂口、三塁に西浦か廣岡がはまる。守備力重視なら一塁・村上だが、坂口の打撃力は捨てがたく、攻撃的布陣で三塁・村上が理想的だと思う。

 外野は中堅の青木と右翼の雄平が決まりで、バレンティンが抜けた左翼手の争いに注目が集まる。長打力重視なら中山だが、出場機会を増やした山崎は守備に定評があり、俊足の塩見との争いになる。 

 打順ではバレンティンの抜けた穴を埋めることが課題だが、ここを埋める選手は正直見当たらない。新外国人のエスコバーはアベレージヒッターで長打を望むのは酷で、昨シーズンの一発頼みの大味な打線から、機動力や小技を駆使した野球にシフトする必要がある。そういう意味では山崎や塩見は適任だが、高津監督が誰にレフトを任せるか注目したい。

 昨年固定できなかったトップバッターに出塁率の高い坂口が収まり、青木とのベテランの1・2番コンビは怖い。中軸には山田哲と村上のが控え、5番の雄平に本来の勝負強さが戻るとバレンティンを欠いても見劣りはしない。下位はエスコバーと中村、左翼で中山と山崎、村上が一塁に回れば西浦と廣岡のサードの定位置争いになるが、ここに実績のある川端が加われば強力打線を維持できる。 

 控えでは内野ならどこでも守れる太田、代打で勝負強い荒木がいる。チーム1~2の俊足をほこる塩見は外野のレギュラー候補だが、ここ一番の代走も期待できる。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…中村悠平 嶋 基宏 松本直樹

 内野手坂口智隆 山田哲人 村上宗隆 エスコバー 西浦直亨 

     廣岡大志 太田賢吾 荒木貴裕(奥村展征 川端慎吾 藤井亮太)

 外野手…青木宣親 雄平 中山翔太 山崎晃大朗 塩見泰隆(上田剛史)    

 

 最後に、個人的に今年注目の若手では、投手ではルーキーの吉田喜を上げたい。最速152キロで制球力も素晴らしく、大学では先発・救援のどちらも経験しているが、オープン戦初戦でも結果を出しており、先発ローテーションに喰い込む可能性は十分にある。 

 野手では2年目の濱田太貴(外野手)は一押しで、昨年はルーキーながらファームで規定打席に達しており、一軍デビューも果たした。まだまだ走攻守に粗削りだが、ポスト青木として、まずは得意の打撃でアピールしたい。