ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

2020年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(前編)

 今年は総じて見ると、各チームそれぞれがポイントを抑え、大きな成功も失敗もないドラフトになったと思う。そのなかでも最も上手くいったのは阪神、良く言えば冒険、悪く言えば首を傾げたのが西武だった。ただ、ドラフトの成果が出るのは5年後で、そのときに評価がどう変わるかのか期待が膨らむ。

【12球団ドラフトの評価】

 ◎成功…阪神

 〇合格…日本ハム・中日・オリックス楽天・ヤクルト

 △普通…ロッテ・広島・ソフトバンク・DeNA・巨人

 × 失敗…西武 

 

 コロナ禍のなかで、指名人数減も懸念されたが、今年の本指名選手は74名で、昨年と同数だった。高校生が30名(▲5名)、大学生が32名(+7名)、社会人・独立リーグが12名(▲2名)で、最多指名は阪神の8名、最小はソフトバンク、ロッテの5名で、2年連続で最小の指名になった。

 今年は1位指名に大学生が9名、高校生が2名、社会人が1名と大学生に集中した。コロナ禍のなか甲子園は春夏中止、社会人も全国大会でアピールする場を失い、リーグ戦が中心の大学生に結果集中した。 

 

阪神(85点)

 今年最高の評価をしたのは阪神だ。ドラフトは希望の1位指名選手が獲得できれば成功と言えるが、アマナンバーワン野手の佐藤輝明(近大・内野手を4球団競合のなか獲得できた。まだ粗削りな部分はあるが、走攻守にレベルが高く、一番の魅力は長打力で、将来大山とのクリーンアップに期待が膨らむ。

 阪神のドラフトに最高点を点けたのは、2位以下でも欲しい選手を欲しい順位で獲れたからだ。2位の伊藤将司(JR東日本・投手)は技巧派の左腕で、先発・リリーフともに適性があり、先発左腕が高橋遥のみ、リリーフでも能見の退団が決定的でなかで大きな補強になった。

 3位の佐藤蓮(上武大・投手)は、良い意味で驚いた。阪神もこのような素質型の大学生を上位指名するようになったんだ、と感慨深げに見ていた。佐藤は故障で今年まで登板がなく、故障が癒えた今秋に150キロを連発し、まさに未完の大器だ。

 4位の榮枝裕貴(立命大・捕手)は、阪神が早くに評価していた選手で、守備力が高く梅野の後継候補として、年齢バランスでも会心の指名になった。5位の村上頌樹(東洋大・投手)は、よくこの順位まで残っていたなというのが率直な感想で、高いゲームメーク能力は先発ローテに喰い込む可能性も十分にある。

 6位では俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎・内野手を獲得。中野は堅実な遊撃守備で、12球団ワーストの失策数のなか、レギュラー獲得も夢ではない。7位は唯一の高校生で高寺望夢(上田西高・内野手を指名した。高寺は高校通算31本塁打に、50メートル6秒の俊足で、合同練習会で結果を出して一躍ドラフト候補になったシンデレラボーイだ。8位の石井大智(四国IL高知・投手)は、シンカーが武器の奪三振率の高い投手で、リリーフ陣の層が厚くなる。

 育成選手は岩田将貴(九産大・投手)のみで、岩田は3年春にトミージョン手術を受け復活した左のサイドハンドで、リリーフとして重宝しそうだ。

 今回は補強ポイントを万遍なく指名し、会心のドラフトと言える。一方で育成下手と言われるチームが、佐藤をどう育て行くかに注目したい。あの柳田でさえ、主力に定着したのは4年目で、佐藤を辛抱強く育成できるか…チームの手腕が問われる。

 

日本ハム(80点)

 毎年、その年の1番の選手に行く方針だが、今年はやや違う趣で伊藤大海(苫小牧駒大)のを単独指名した。ただ、これは正しい選択で、伊藤は先発も抑えもできるが、150キロのストレートを武器に大学日本代表のクローザーを務めた実績から、抑えが不在のチームの補強戦略とは合っている。また、伊藤は地元北海道出身で、地元出身の1位選手はマーケティング的効果も高い。どちらにしろ、北の大地に剛腕クローザーが降臨する日も遠くない。

 2位の五十幡亮汰(中大・外野手)は、俊足が注目されているが打力も向上し、走攻守揃った即戦力だ。MLB挑戦を表明している西川の後継者にピッタリで、理想的なリードオフマン候補だ。1年目にレギュラーを獲得できなくても、いま注目されている代走要員として、ベンチに居るだけで相手にプレッシャーをかけられる。

 3位の古川裕大(上武大)の指名には少し首を傾げた…。古川は良い選手だが、22歳~25歳のなかに捕手が5名もひしめき年齢バランスが悪い。主力の清水や宇佐見は、野手に転向するほど打撃が良い訳でもなく、古川の起用法が現時点では見えない。

 4位と5位では高校生を指名し。4位の細川凌平(智弁和歌山高・外野手)も俊足の内外野守れる巧打者で、高校の先輩でもある西川の後継者を狙える逸材だ。5位の根本悠楓(苫小牧中央高・投手)は小柄ながら、中学時に全国制覇した左腕で、下位ながら将来のエース候補と言える。

 6位の今川優馬(JFE東日本・外野手)は、正直もう少し評価が高いかなと思っていた。遠くに飛ばすフルスイングが魅力で、パワーヒッターながら俊足で守備も巧い。未だにファイターズのファンクラブ会員の道産子で、指名された瞬間に号泣した姿が忘れられない。今年は3名の地元北海道の選手を指名し、道内のファンを喜ばせた。それぞれが活躍して新球場移転の際、主力に成長してくれれば最高だ。

 育成選手は2名指名し、育成1位の松本遼大(花巻東高・投手)は長身から投げ下ろすストレートに威力があり、スケールの大きい投手で焦らず支配下を勝ち取りたい。

 マイナス面を挙げれば、今年は先発・抑えともやり繰りが厳しく、エース有原のMLB移籍の可能性もあるなか、投手の指名が少なく補強としては不十分だと思う。また、レギュラー不在の三塁手獲得の課題も解消されなかった。

 

○中日(75点)

 正直、いまの中日に必要なのは野手で、佐藤(阪神)の指名がベストだと思ったが、今年も有望な地元選手の獲得が優先された。かつては槙原や工藤、イチロー、最近では千賀と、地元の有望選手を逃したのを避けたかったのか、最終的には高橋宏斗(中京大中京高)に決め、競合も予想されるなか単独指名を成功できたのは大きい。

 地元志向への縛られ過ぎを懸念しつつも、今年のドラフトもチームの姿勢としては素晴らしいと思う。中日の課題は多く、長打力も機動力も不足しており、エース大野雄のFA移籍の可能性など、状況的に即戦力で固めたいところを、一昨年の根尾、昨年の石川昂に続き、素質豊かな高校生を指名した。

 高橋宏は正真正銘のエース候補で、ストレートの質が高く変化球の精度も高い。根尾がリードオフマン、石川昂が4番、そして高橋宏がエースになったチームはファンならずとも期待が集まる。

 2位の森博人(日体大・投手)も1位で消えてもおかしくなかった投手。スリークオーター気味の腕の位置から投げ込むストレートとカットボールが武器で、先発・リリーフともに適性が高い。ちなみに森も地元の愛知出身だ。

 3位の土田龍空(近江高・内野手は強打の遊撃手で、高校生離れした守備力は既にプロでも十分通用する。ミートの巧い巧打者タイプだが、高校通算30本塁打とパンチ力もあり、打撃が課題の京田もうかうかしていられない。

 土田に続き、4位と5位もともに高校生指名で。4位で左腕のパワーピッチャー福島章太(倉敷工高・投手)、5位の加藤翼(帝京大可児高・投手)は、夏から評価を上げた伸びしろ十分の右腕で奪三振率が高く、ともに将来が楽しみだ。

 6位の三好大倫(JFE西日本・外野手)は、社会人3年目まで投手を務め、野手転向1年でプロ入りした左打ちで、ポテンシャルの高さが魅力だ。大島以外レギュラー不在の手薄な外野陣の一角を担いたい。

 育成指名は3名で全員が投手だ。注目は個人的ではあるが、育成1位の近藤簾(札幌学院大・投手)で、母校にそれほどの思い入れはないが、同校初のプロ野球選手で、やはり指名されると嬉しいもので応援したい。

 マイナスポイントは、課題の攻撃陣のなかで、即戦力の二塁手スラッガーを獲得できなかったのが残念だったが、全体的には良いドラフトになり3年連続の成功ドラフトと言える。

 

オリックス(75点)

 オリックスも中日と同じ感想を持った。優勝から遠ざかること四半世紀、6年連続Bクラス、そして2年連続の最下位に沈んだ。今年は早々に佐藤(阪神)指名を公表するも、抽選に敗れ残念ながら獲得できなかったが、ここからのオリックスの指名には驚かされた。

 目先の結果に捕らわれれば、そのまま即戦力指名に行くところを、昨年に続き将来に目を向けた指名になった。当然、賛否もあるが私はオリックスの姿勢を評価したい。

 1位指名の山下舜平大(福岡大大濠高・投手)は、最速154キロのストレートが武器で、変化球はカーブしかないが、これは監督の方針で投げさせなかっただけで、まさに未完の大器という言葉がふさわしい。

 2~3位では高校生外野手を指名し、2位の元謙太(中京高・外野手)は、恵まれた体格から放つ飛距離が魅力のスラッガーで将来の4番候補。元々は投手で広島の鈴木誠のような打者に成長する可能性を秘めている。

 3位は来田涼斗(明石商高・外野手)で、高校通算34本塁打を放つ長打力と俊足が魅力で、将来はトリプルスリーも狙える。2番大田、3番に来田、4番に元、5番で昨年2位の紅林など並ぶと、想像するだけで本当にワクワクしてくる。そういう可能性を秘めた上位指名になった。

 4位のサブマリン中川颯(立大・投手)の指名も良かった。4年時には不調で評価を落としたが、エースとしてチームを支えた。思い返せば、同じサブマリンの高橋礼も4年時は不調だったが、結果新人王を獲得するなど、高橋礼がダブって見える。

 5位の中川拓真(豊橋中央高・捕手)は年齢的にも必要な補強で、高校通算42本塁打の長打力と強肩で将来の正捕手候補。6位の阿部翔太(日本生命・投手)は即戦力で、最速151キロのストレートに制球力も良く、強気な投球はリリーフで重宝しそうだ。

 昨年8名指名した育成選手も、今年も多く6名指名した。注目は3位の宇田川優希(仙台大・投手)で、上位指名もあると思っていたので、育成指名は意外だった。入団に難色を示しているという報道を目にしたが、是非評価を見返してほしい。

 育成路線は評価したものの、課題の即戦力クローザーや三塁手の獲得はままならず、満点とは言えなかったが、ブレないチーム方針を垣間見たドラフトで、その成否は3~5年後に分かる。

 

楽天(70点)

 今年は4球団競合のなか、即戦力左腕の早川隆久(早大・投手)を見事引き当てた。先発の柱の岸、涌井、則本がともに30歳を超え、期待の松井は先発で結果を残せず終盤はリリーフに回っている。リーグ最多の逆転負けの状況から見ても、先発・リリーフともに投手陣の補強が必要だった。

 1位の早川は155キロの本格派左腕で、変化球の精度も高い。ゲームメークにも長けており、今秋のリーグ戦では圧巻の投球を見せた。当然、先発ローテーション候補で、リーグ屈指の打線をバックに10勝も夢ではない。

 2位の高田孝一(法大・投手)も最速150キロを超える右の本格派で、躍動感あふれるフォームから投げ込むストレートの質と変化球のキレが抜群だ。基本は先発だが、手薄なリリーフへの適性も高いと思う。

 3位で即戦力左腕の藤井聖(ENEOS)を獲得できたのも大きく、よくこの順位まで残っていたを思う。藤井も150キロを超えるストレートを武器に、社会人で急成長した投手で、先発タイプだがリリーフ左腕が不足している状況から出番が増えそうだ。

 4位と6位も投手で、4位の内間拓馬(亜大・投手)も最速150キロの右の本格派だが、即戦力というよりは、素質型の大学生で伸びしろが評価された。6位の内星龍(履正社高・投手)は、昨夏の甲子園優勝時はメンバー外も、冬に急成長を遂げ秘めたポテンシャルが魅力。

 5位は唯一の野手で、地元の入江大樹(仙台育成高・内野手を指名した。柔らかいグラブさばきと強肩の遊撃手で、将来性抜群のスラッガーだ。育成は石田駿(BC栃木・投手)のみの指名になった。

 早川を獲得でき、上位3人で即戦力投手を獲得して成功と言えるドラフトだが、楽天のドラフトは目先のことだけに目を奪われて、将来どういうチームにしたいのかという方針を感じず、個人的に魅力を感じない。今年も1位で早川を獲得できたなら、せめて3位までで年齢的にも必要だった高校生投手を指名してほしかった。 

 

〇ヤクルト(70点)

 とにかく投手が欲しい!今年のヤクルトのテーマは明確だった。早川(楽天)を外し、鈴木もロッテとの競合に敗れたが、1位で木澤尚文(慶大・投手)を獲得できたのは、外れ外れ1位指名でも成功だと思う。

 木澤は競合を避けての単独指名もあると予想していたので、12番目で残っていたのは幸運だと思った。最速155キロのパワーピッチャーで、とにかくハートが強く、まさにクローザーが適任で、短いイニングでその能力が活かされると思う。

 2位では左腕の山野太一(東北福祉大・投手)を指名し、早川と鈴木指名がここで活きてきた。昨年までリーグ戦無敗で、公式戦70イニング連続無失点の記録も持つ。多彩な変化球を駆使して、奪三振能力も高く手薄な先発陣に喰い込む可能性は十分にある。

 3位は打てる捕手の内山壮真(星稜高・捕手)を獲得。昨夏の甲子園準優勝時の主力で、高校通算34本塁打スラッガーだ。年齢的にも高校生捕手が必要で、ポスト中村の座を狙える。また、昨年までは遊撃手を務めておりコンバートの可能性もある。

 4位以降の指名も、チームの課題を抑えた的確な指名になった。4位の元山飛優(東北福祉大内野手は、高い遊撃守備が評価される一方、リーグ戦で首位打者打点王も獲得している。まずは得意の守備からアピールして、正遊撃手候補に名乗りを上げたい。5位の並木秀尊(独協大・外野手)は、五十幡をも凌ぐ俊足で、打撃は発展途上だが文字通り足だけで飯が食える選手だ。

 6位の嘉手苅浩太(日本航空石川高)もよくこの順位まで残っていたと思う。長身から投げ下ろす威力十分のストレートが武器のパワーピッチャーで、将来に主戦になれる可能性は高い。

 育成では4名指名し、そのなかで育成1位の長身左腕・下慎之介(健大高崎高・投手)に注目したい。まだ好不調の波が大きいが、伸びしろ十分で早い段階での支配下登録が期待できる。

 さすがに2年連続の最下位ということもあり、課題が多く、すべてを補強することは難しかったが、先発左腕にクローザー候補、将来の正捕手候補に俊足巧打の野手と最低限の補強はできたと思う。また、育成選手を4名指名したのもチーム強化の姿勢を昨年以上に感じたドラフトになった。あとはオフのFA選手の去就だけが心配だ…。 

2020年~ドラフト候補選手100名

 昨年はこの時点で6球団が指名を公言していたが、現時点では3球団が1位指名を公言している。オリックスが大学ナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)、ロッテが即戦力左腕の早川隆久(早大)、そして日本ハムが大学日本のクローザー伊藤大海(苫小牧駒大)の1位指名を公言した。

 他球団の動向は、氏名こそ明かしてはいないが、巨人と阪神が即戦力の野手1位を公言し、ソフトバンクも佐藤の指名が濃厚だ。中日は今年も地元選手指名で高橋宏斗(中京大中京高)の指名が確実と言える。広島とヤクルトは即戦力投手、楽天は投手指名、DeNAと西武は最終日まで迷いそうな気配だ。

 当初、大学進学を表明していた高橋がプロ志望に切り替えたことで、指名戦略が変わったチームもあり、当日どんなサプライズがあるか注目のドラフトになる。

 

1位入札候補(1回目)

 佐藤 輝明(近大・内野手)…オリックス阪神・西武・巨人・ソフトバンク

 早川 隆久(早大・投手)…ヤクルト・広島・ロッテ

 高橋 宏斗(中京大中京高・投手)…楽天・中日

 伊藤 大海(苫小牧駒大・投手)…日本ハム

 木澤 尚文(慶大・投手)…DeNA

1位入札候補(2回目)

 中森 俊介(明石商高・投手)…大舞台も経験し、完成度の高いエース候補

 山下舜平大(福岡大大濠高・投手)…最速153キロの将来性豊かな未完の大器 

 牧  秀悟(中大・内野手)…大学ジャパンの4番を務める右のスラッガー

 栗林 良史(トヨタ自動車・投手)…変化球も抜群の本格派右腕の即戦力 

1位候補

 入江 大生(明大・投手)…今秋で一気に評価を上げた153キロ右腕の大器

 大道 温貴(八戸学院大・投手)…完成度が高くゲームメークに長けた右腕

 五十幡亮汰(中大・外野手)…超がつく俊足で打撃も開花し1位候補へ

2位候補

 小林 樹斗(智弁和歌山高・投手)…152キロの直球と精度の高い変化球

 松本隆之介(横浜高・投手)…長身から投げ下ろす角度のある直球が魅力

 来田 涼斗(明石商高・外野手)…将来トリプルスリーを狙える大型野手

 森  博人(日体大・投手)…直球のキレと制球力抜群スリークオーター

 鈴木 昭汰(法大・投手)…内角への制球力に長けた強気の本格派左腕

 平内 龍太(亜大・投手)…故障を克服し156キロの直球で高い奪三振

 宇田川優希(仙台大・投手)…球速以上に感じる伸びのある直球が武器

 山野 太一(東北福祉大・投手)…リーグ戦無敗の左腕で、変化球が多彩

 古川 裕大(上武大・捕手)…大学ナンバーワンの強肩強打の打てる捕手

 大江 克哉(NTT西日本・投手)…最速150キロの直球と巧みな投球術

 藤井  聖(ENEOS・投手)…社会人で急成長した即戦力左腕 

 伊藤 優輔(三菱日立パワー・投手)…総合力の高い155キロリリーバー

3位候補

 高田 琢登(静岡商高・投手)…高校生離れした投球術で完成度が高い

 加藤  翼(帝京大可児高・投手)…評価が急上昇し上位候補に躍り出た

 井上 朋也(花咲徳栄高・内野手)…高校通算50本塁打で技術も備える

 西川 僚祐(東海大相模高・外野手)…高校生離れの体格で通算55本塁打

 高田 孝一(法大・投手)…スピンの効いた150キロで押す投球が身上 

 村上 頌樹(東洋大・投手)…高い制球力でゲームメークに長けている

 小郷 賢人(東海大・投手)…リーグ戦で防御率0点台の絶対的な守護神

 森浦 大輔(天理大・投手)…制球力に優れ、緩急で打ち取る技巧派左腕

 佐々木 健(NTT東日本・投手)…制球力が課題も経験値高い左の剛腕

 山本 晃希(かずさマジック・投手)…155キロのパワーピッチでを威圧

 今川 優馬(JFE東日本・外野手)…攻撃的二番で好守に優れた大砲

 田澤 純一(BC武蔵・投手)…メジャーで実績十分。ネックは年齢だけ 

4位候補

 根本 悠楓(苫小牧中央高・投手)…小柄だがテンポの良い投球が魅力腕

 牧原 功太(日大藤沢高・捕手)…超高校級の強肩で、夏から評価が急上昇

 土田 龍空(近江高・内野手)…鉄壁の遊撃守備で走攻守に優れた素質の塊

 細川 凌平(智弁和歌山高・内野手)…1年からレギュラーの俊足で外野も

 小深田大地(履正社高・内野手)…通算34本塁打で打撃は高校トップレベ

 萩原  哲(創価大・捕手)…守備力が魅力も、リーグ戦では打点王も獲得

 榮枝 裕貴(立命大・捕手)…通算打率4割の巧打の捕手で、魅力は強肩

 元山 飛優(東北福祉大内野手)…遊撃守備だけなら既にプロレベル

 小野 大夏(ホンダ・投手)…高校時代は捕手の馬力のある本格派右腕

 伊藤 将司(JR東日本・投手)…高校・大学と常に主戦で経験豊かな左腕

 森井 紘斗(セガサミー・投手)…恵まれた体格で、伸びしろ十分の21歳

 上川畑大悟(NTT東日本・内野手)…守備が超一級品で俊足、課題は打撃

5位候補

 川瀬 堅斗(大分商高・投手)…精度の高い変化球も武器で大化けの可能性

 内山 壮真(星稜高・捕手)…通算34本塁打の強打の捕手で、リードも成長

 二俣 翔一(磐田東高・捕手)…捕手ながら1番打者を打つ俊足と長打力

 度会 隆輝(横浜高・内野手)…バットコントロールに長けた攻撃的二塁手

 山村 崇嘉(東海大相模高・内野手)…広角に打つ長距離砲守備力も向上

 中山 礼都(中京大中京高・内野手)…名手・宮本慎也が絶賛した遊撃手  

 元  謙太(中京高・外野手)…投手としても非凡で、パンチのある打撃

 赤上 優人(東北公益文化大・投手)…リーグ戦で2年連続最多勝を獲得

 山崎 伊織(東海大・投手)…右肘の手術から復活なるか、実力は1位級

 並木 秀尊(独協大・外野手)…打撃や守備は課題も足だけで飯が食える

 平山  快(JFE東日本・内野手)…逆方向へも打てる右の長距離砲

 前川  哲(BC新潟・投手)…156キロの本格派サイドで念願のプロへ 

6位候補

 小牟田竜宝(青森山田高・投手)…角度のある直球と落ちるカーブが武器

 秋広 優人(二松学舎大高・投手)…身長2mで野手指名の可能性もあり

 内田 了介(埼玉栄高・投手)…150キロの直球で力で押す投球は素質十分

 豆田 泰志(浦和実高・投手)…全身を使った投球で総合力の高い右腕

 下 慎之介(健大高崎高・投手)…長身を活かす伸びしろ十分の大型左腕

 嘉手苅浩太(日本航空石川高・投手)…力強い直球で進化を遂げる怪童

 常田 唯斗(飯山高・投手)…柔らかい肘の使いかたで総合力が高い 

 関本 勇輔(履正社高・捕手)…主将で4番の通算20本塁打の打てる捕手

 河村 説人(星槎道都大・投手)…192センチの長身から放つ直球が武器

 高野 脩汰(関西大・投手)…直球と変化球で奪三振率の高い左腕

 松本 竜也(ホンダ鈴鹿・投手)…キレ味鋭い150キロ。課題はスタミナ

 峯本  匠(JFE東日本・内野手)…勝負強い左の巧打者で俊足も武器

下位候補

 片山 楽生(白樺学園高・投手)…しなやかな腕の振りのクレバーな右腕

 小辻 鷹仁(瀬田工高・投手)…高校で急成長したスリークオーター

 古谷 将也(成田高・捕手)…長打も打てる強肩で、俊足で1番も打つ

 入江 大樹(仙台育英高・内野手)…1年からレギュラーでメジャーを公言

 蔵田亮太郎(聖望学園高・内野手)…攻守にスケール感のある大型遊撃手

 高寺 望夢(上田西高・内野手)…巧みなミート力で合同練習で結果

 奥村 真大(龍谷大平安高・内野手)…力強いスイングで三塁守備も軽快

 西野 力矢(大阪桐蔭高・内野手)…体重90キロの巨漢でパワーのある大砲

 石川 慧亮(青藍泰斗高・外野手)…合同練習会で見せたパワーは圧巻

 漁府 輝羽(おかやま山陽高・外野手)…通算24本塁打の勝負強い右の大砲

 寺本 聖一(広島商高・外野手)…小柄な強打者で遠投115mの強肩も魅力

 奥野 翔琉(明徳義塾高・外野手)…50m5秒7の超俊足のスペシャリスト

 今西 卓弥(早大・投手)…身長2m左腕で将来は早川を凌ぐ可能性もある

 佐藤 宏樹(慶大・投手)…ドラフト前に手術も、故障がなければ上位候補

 中川  颯(立大・投手)…ドラフト候補のなかで数少ないサブマリン

 佐藤  蓮(上武大・投手)…故障が癒え、今年ベールを脱いだ本格派右腕 

 大曲  錬(福岡大・投手)…準硬式からプロ入りを目指す伸びしろが魅力

 益田 武尚(北九州市立大・投手)…九州の隠し球右腕で高い奪三振

 矢野 雅哉(亜大・内野手)…抜群の走塁と守備に加え、打撃も成長中

 渡部 健人(桐蔭横浜大内野手)…巨漢の長距離砲だが走塁と守備も良い

 平川 裕太(鷺宮製作所・投手)…強気な内角攻めでプロでも抑えを狙う

 相馬 和磨(日本通運・投手)…キレのある速球と変化球のリリーフ左腕

 西田 光汰(JR東日本・投手)…昨年もドラフト候補の右の本格派

 松向  輝(日本製鉄東海・投手)…故障も癒え、完全復活を遂げた左腕

 辻本 勇樹(NTT西日本・捕手)…打って走れる強肩捕手でリードも◎

 野村  勇(NTT西日本・内野手)…俊足と強肩でパンチ力もある

 中野 拓夢(三菱自動車岡崎・内野手)…走攻守でハイレベルな巧打者

 戸田 懐生(四国IL高知・投手)…一度は野球も断念の復活を遂げた

 

 今年は興味を引く選手が多く、元メジャーリーガーの田澤やケガが無ければ1位クラスの山崎や佐藤宏を指名するチームはあるか。また、度会や関本の2世選手、小郷や奥村、石川のような兄弟選手が誕生するか興味は尽きない。

 まずは100名紹介したが、今年はコロナ禍のなか豊作とも言われている。また、巨人やロッテ、ヤクルトは育成指名を例年より増やすと言っており、どの選手がどのユニフォームに袖を通すか楽しみで、運命の10.26が待ち遠しい。 

20年ドラフト予想☆ソフトバンク~盤石の投手陣と、世代交代が必要な野手陣。育成指名にも注目

●今年も主力が離脱するも、圧倒的な選手層で優勝間近

 つい最近まではロッテと優勝争いしていたが、シーズン終盤に地力の差が出て、一気に19連勝でマジックを点灯させた。

 ソフトバンクの強みは何といっても選手層の厚さだ。毎年、主力の離脱が相次ぎ、今年も投手なら甲斐野央(東洋大~18年①)や高橋純平(県岐阜商高~15年①)、野手では今宮健太(明豊高~09年①)やデスパイネを欠き、投打にベストメンバーとは言えず、打線の組み合わせは90を超える猫の目打線だが、選手層の厚さで乗り切ってきた。

 その打線の軸は柳田悠岐(広島経大~10年②)で、昨年38試合出場に留まったが、今年はフルに出場を果たし得点力が上がった。同じく中村晃(帝京高~07年高③)も今年は復活を果たし、ともにチームを牽引している。ただ、他に規定打席に達しているのは、ベテランの松田宣浩(亜大~05年大社希)と今年ブレイクした栗原陵矢(春江工高~14年②)のみで多くない。

 規定打席には達していないが甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)が正捕手、グラシアルが4番を務め、今宮の穴は川瀬晃(大分商~15年⑥)が埋め、レギュラー不在の二塁手は周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)がはまった。周東は序盤までは代走、守備要員だったのが、打撃力も上昇し一番打者に定着。シーズン後半の快進撃は周東が支えたと言っても過言ではない。

 ここにスーパーサブたちが加わる。勝負強い明石健志山梨学院大高~03年④)、左キラー川島慶三九州国際大~05年大社日③)、内外野守れる牧原大成(城北高~10年育⑤)、代打の切り札の長谷川勇也専大~06年大社⑤)、釜元豪(西陵高~11年育①)や真砂勇介(西城陽高~12年④)も限られた出番のなかで仕事をした。

 投手陣は盤石だが、規定投球回数をクリアしている選手はいない。ただ、東浜巨(亜大~12年①)と石川柊太(創価大~13年育①)がともに復活の8勝を挙げ、エース千賀滉大(蒲郡高~10年育④)も勝ち星で並んでいる。ベテランの和田毅早大~02年自)も7勝、ショートスターターだが笠谷俊介(大分商高~14年④)は防御率2.60と立派な成績を残している。

 リリーフ陣も森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)がセーブ王を争い、モイネロはリーグ断トツの36ホールドを上げ、この2人が出ればまず勝利は間違いない。リーグ最多登板の高橋礼(専大~17年②)がロングリリーフを務め、左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)も43試合登板と鉄腕ぶりを発揮している。ここに若手の松本裕樹(盛岡大高~14年①)や泉圭輔(金沢星稜大~18年⑥)、ベテランの岩嵜翔市船橋高~07年高①)が加わり、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)や板東湧悟(JR東日本~18年④)の若手も勝ちパターンで起用された。

 まさにチーム内の競争力が、選手層の厚さに直結している。ただ、一方で野手陣の世代交代が進んでおらず、常勝チームを維持するにはポスト松田、柳田の育成が課題になってくる。

【10/20現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 105試合 61勝39敗5分①

 防御率…3.06①(3.63①)打率….249③(.251②)

 本塁打…115①(183①)盗塁83①(113③)

 得点462②(582④)失点356①(564①)得失点差106(18)

 

 ここ5年は高橋純を3球団、田中正義(創価大~16年①)を5球団競合のなか引き当てたがが残念ながら主戦にはなっていない。甲斐野も1年目にフル回転したものの、今年はケガで治療に専念している。ただ、高橋礼や杉山、板東、泉の18年組、今年は津森宥紀(東北福祉大~19年③)の即戦投手が期待通り戦力になっている。

 一方で野手は深刻で、ここ3年ホークスは1位で野手を指名し、17年は清宮幸太郎日本ハム)と安田尚憲(ロッテ)、18年は根尾昂(中日)と辰巳涼介(楽天)、昨年は石川昴弥(中日)を指名するも外し、実質戦力になっているのは川瀬だけで、これだけを見てもホークスの危機感が窺える。

ソフトバンクの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、年齢的に大学生投手

 捕 手…甲斐の控えの即戦力捕手

 内野手…二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補

 外野手…将来の主軸候補 

 

●盤石な投手陣の反して、野手の世代交代は喫緊の課題

☆投手~将来のエース候補、年齢的に大学生投手

 盤石の投手陣は年齢バランスも取れており、大きな穴は見当たらない。39歳の和田の下は31歳の岩嵜と嘉弥真まで下がり、大きく戦力が落ちることは考えにくい。和田の年齢的な衰え、千賀がメジャー希望しており先発が二枚抜ける可能性はあるが、本来は先発の高橋礼や松本、高橋純が控え、武田翔太宮崎日大高~11年①)や大竹耕太郎(早大~17年育④)が復活すれば問題はない。

 補強ポイントは、昨年高校生投手を指名していないので、さすがに2年続けて外す訳にはいかない。19歳~22歳までで5名(うち1名はスチュアートJr)と少なく、高校生と大学生に絞った指名になる。

 早川隆久(早大は当然リストアップしているが、上位は高校生指名が良いと思う。一番の候補は山下舜平大(福岡大大濠高)で、もしかしたら単独指名の可能性ある。このほかには小林樹斗(智弁和歌山高)川瀬堅斗(大分商高、左腕の高田琢登(静岡商高)は確実に上位で獲得したい。

 中位以降でも、秋広優人(二松学舎大高)は野手指名の可能性もあり、小辻鷹仁(瀬田工高)蓼原慎仁(桐生一高平安山陽(松山聖陵高)への評価が高い。地元の若杉晟汰(明豊高)八方悠介(鹿児島城西高)もリストアップしている。

 大学生では先発陣を厚くするなら大道温貴(八戸学院大赤上優人(東北公益文化大)、左腕の森浦大輔(天理大)、リリーフ強化なら小郷賢人(東海大が候補になる。森博人(日体大宇田川優希(仙台大)、左腕の鈴木昭汰(法大)はともに先発、リリーフともに適性があり、チーム状況でどのポジションを担うか楽しみだ。

 社会人では大江克哉(NTT西日本)は先発、岡田和馬(JR西日本はリリーフもできる即戦力左腕で投手陣をさらに厚くする。個人的には長身の変則サイドハンドの川瀬航作(日本製鉄広畑)などは、ホークスどどう化けるか見てみたい投手の一人だ。

 

☆捕手~甲斐の控えの即戦力捕手

 捕手は28歳の甲斐がレギュラーだが、二番手捕手の高谷裕亮(白鴎大~06年大社③)も来年は40歳の大台に乗る。栗原は捕手登録だが、外野が主戦で、海野隆司(東海大~19年②)と九鬼隆平(秀岳館高~16年③)が候補だがともに経験が不足している。また、栗原を除けば捕手が5人しかおらず、年齢的には不要だが、第二または第三捕手の即戦力選手が必要だ。

 今年は即戦力と呼ばれる捕手が少なく、上位なら古川裕大(上武大)、中位以降なら榮枝裕貴(立命大)辻本勇樹(NTT西日本)は、ともに守備力に長けている。高校生捕手は年齢的にも優先順位は高くなく、下位また育成で植幸輔(高野山高)長谷川勝紀(近江高)が候補になる。

 

内野手~二遊間を守れる即戦力野手、ポスト松田候補

 内野手は年齢的には問題なく揃っているが、課題は世代交代の遅れだ。内野の最年長の内川聖一(大分工高~00年横①)が39歳、松田宣と川島、明石が35歳を超え、遊撃の今宮も来年は30歳になる。

 20代中盤のレギュラー候補は、二塁の24歳の周東だけで、23歳の川瀬も今ひとつ控えの枠を出ない。ファームでは21歳の三森大貴(青森山田高~16年④)が結果を残しているもの、ポスト今宮、松田候補と言えば物足りなさを感じる。喫緊は二遊間を守れる即戦力と、三塁に限っては高校生のレギュラー候補を獲得したい。

 二遊間の即戦力では、やはり牧秀悟(中大)が一番でポスト松田候補にもなる。矢野雅哉(亜大)は俊足で強肩、元山飛優(東北福祉大は守備だけなら既にプロ級だ。社会人では峯本匠(JFE東日本)は巧打の二塁手中野拓夢(三菱自動車岡崎)も俊足巧打で二遊間を守れる。05年の本多雄一以来、15年振りの社会人内野手の指名があるかもしれない。

 ポスト松田宣の三塁手候補では、井上朋也(花咲徳栄高)はイチ押しで、技術力もある右のスラッガー。高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)のどちらかは獲得したいところだ。下位では岡本大翔(米子東高)渡部健人(桐蔭横浜大などの素質十分の大砲候補も面白い。

 

☆外野手~将来の主軸候補

 外野は32歳の柳田に24歳の栗原がレギュラーを掴んだ。本来であれば上林誠知(仙台育英高~13年④)と佐藤直樹JR西日本~19年①)がレギュラーを争ってほしいが、ともに定位置確保には至っていない。特に上林の不振は大きな誤算だったと思う。

 一番は佐藤輝明(近大)で、これほどの逸材がホークスに入ると脅威だが、個人的には柳田を手本にどんな規格外の選手になるか、是非ホークスで見てみたい選手だ。超俊足の五十幡亮汰(中大)は打撃力が上がり、周東との1~2番コンビなどは考えただけでも嫌な並びになる。

 将来の主軸候補では、来田涼斗(明石商高もチームにフィットしそうで、トリプルスリーも現実味を帯びてくる。このほかに西川僚祐(東海大相模高)元謙太(中京高)は右のスラッガー鵜沼魁斗(東海大相模高)が右のリードオフマン候補だ。

 

●1位はトリプルスリーを狙える近大・佐藤か!オール野手でも今年は驚かない

 今年も野手の1位指名が濃厚で、そうなると佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。一方で地元のエース候補の山下舜平大(福岡大大濠高)も競合の可能性があり、ここは小細工なしに競合必至でどちらかの指名になるのではないかと思う。外れた場合は、来田涼斗(明石商高井上朋也(花咲徳栄高)など、今年はオール野手指で徹底することも予想される。

【指名シミュレーション】 

 1位~山下舜平大(福岡大大濠高・投手)…自慢のストレートは153キロを超え、監督の方針で変化球はカーブだが、このカーブのキレも素晴らしい。伸びしろ十分のエース候補で、将来は160キロ超えも夢ではない。

 2位~小深田大地(履正社高・内野手…昨夏の甲子園で2年生ながら中軸を打ち全国制覇した。力強いスイングにミートも巧く高校通算34本塁打、逆方向へも打つこと井ができる技術も併せ持つ。

 3位~矢野雅哉(亜大・内野手…50メートル5秒9の俊足に強肩で、パワーこそ物足りないが、広角に打てる技術と小技も巧い。果敢に次の塁を狙う積極性も魅力。

 4位~鈴木昭汰(法大・投手)…両サイドに投げ分ける制球力が武器の左腕。大学時代は主にリリーフを務めたが、先発もこなし評価が上昇している。

 5位~秋広優人(二松学舎大高・投手)…身長2メートルの長身から投げ下ろすストレートは威力十分。打っては4番を務め、高校通算23本塁打で野手の評価も高い。

 6位~蓼原慎仁(桐生一高・投手)…最速144キロのストレートとフォークが武器の右腕で、総合力が高く将来性が評価されている。

 7位~植 幸輔(高野山高・捕手…広角に打ち分ける左の巧打者で、捕手ながらチーム事情で投手も兼任した。

 今年も地元に逸材が多く、投手なら若杉晟汰(明豊高)八方悠介(鹿児島城西高)、準硬式の大曲錬(福岡大)。捕手では誉田貴之(福岡工大城東高)坂本勇人唐津商高、外野手の牛島希(九州学院高)など原石が多く、一芸に秀でた選手の獲得にも注目したい。

20年ドラフト予想☆巨人~今年は即戦力投手が豊富で投手力強化!1位は佐藤で決まり?

●原監督のタクトが冴え、混戦予想もぶっちぎりの独走Vで連覇確実

 昨年、5年振りの優勝を果たし、巨人連覇の予想が多かったが、昨年以上の混戦も多くの解説者が予想していた。しかし蓋を開けてみると、巨人が他チームを圧倒し首位を独走。全チームに勝ち越しし、CSのないセ・リーグペナントレースは早々と消化試合化してしまった。

 巨人独走の原動力の大きな要因は、原辰徳監督の指揮に依るところが大きい。投手陣は菅野智之東海大~12年①)が開幕13連勝でまさにエースの活躍を見せ、弱冠20歳の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と左腕の田口麗斗(広島新庄高~13年③)がローテーションを守った。メルセデスとサンチェスの両外国人も、決して万全ではなかったが先発陣を支えた。

 リリーフ陣はデラロサがクローザーを務め、中川皓太(東海大~15年⑦)や高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)の左腕トリオ、鍵谷陽平(中大~13年日③)やベテランの大竹寛浦和学院高~01年広①)が勝ちパターンを担った、特に先発から中継ぎに転向して復活した大竹や、フォームを変えて覚醒した大江、鍵谷や高梨はいずれもシーズン途中のトレードで獲得した選手で、適材適所の補強は見事としか言えない。

 野手陣も実は3割打者はおらず、丸佳浩(千葉経大高~07年広高③)の打率.287が最高で、チームリーダーの坂本勇人光星学院高~06年高①)と4番の岡本和真(智弁学園高~14年①)、吉川尚輝(中京学院大~16年①)の4名しか規定打席をクリアしていない。

 ここはまさに原監督の用兵が光り、捕手は大城卓三(NTT西日本~17年③)を中心に炭谷銀仁朗(平安高~05年西高①)を併用。内野はベテランの中島宏之(伊丹北高~99年西⑤)やシーズン途中加入したウィーラーなど実績のある選手に加え、北村拓己(亜大~17年④)や若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)、増田大輝(四国IL徳島~15年育①)の若手が結果を出した。外野もベテランの亀井善行(中大~04年④)に松原聖弥(明星大~16年育⑤)に活きの良い若手が出てきた。

 こうしてみると、かつてはタレント集団だったチームが、「個」の力のチーム作りから、「和」のチームに変わったことを印象付けるシーズンになった。また、期中に楽天と3件のトレードを成立させ、ロッテには澤村拓一(中大~10年①)を放出した。首位独走のチームが積極的なトレードで補強を図る一方、他球団は阪神が1件のトレードを成立させただけで、何とも寂しい気持ちがした。

【10/18現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 61勝35敗2分⑤

 防御率…3.36①(3.77④)打率….260③(.257②)

 本塁打…118②(183①)盗塁65②(83②)

 得点471①(663①)失点353①(573③)得失点差118(90)

 

 ここ5年の巨人のドラフトは決して良くない。15年は競合を避け桜井俊貴(立命大~15年①)を単独指名、17年は1位~7位まで社会人と大学生で占め、18~19年は一転して高校生中心の指名で、チームとしての方針もビジョンも感じられなかった。

 そのなかで戦力になったのは、投手では戸郷と中川、桜井と畠世周(近大~16年②)、高橋優貴(八戸学院大~18年①)も及第点を上げられる。野手では大城がレギュラーを獲得し、期待の吉川尚もようやくケガなくシーズンを乗り越えられた。育成から増田と松原も戦力になっているが、一軍半の選手が多く今後に期待したい。

【巨人の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間の即戦力

 外野手…即戦力の右打ち 

 

●菅野の去就でドラフト戦略も大きく変わる。今年はオール投手でも良い

☆投手~将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 投手陣は菅野の去就で大きく変わる。巨人を熱望し1年浪人、その後はエースとしてチームを支え、今年は開幕から13連勝。代わりなど要ないが、本人が希望すればチームとしては送り出すしかないだろう。

 菅野が抜けると一気に先発陣は厳しくなる。先発陣は25歳の田口と20歳の戸郷、26歳の畠の23歳の高橋プラス外国人の編成になる。ただ、巨人のエースとしてはどうだろうと思う。単に今いるメンバーのなかで一番良い投手ではなく、巨人のエースは名実ともにリーグを代表する選手で、将来のエース候補、または即戦力投手が必要だと思う。

 リリーフは抑えはデラロサだが、選手層は厚い。26歳の中川を中心に、高木京介国学院大~11年④)と鍵谷が30歳を超えるが、28歳の高梨に21歳の大江がおり緊急性は先発に比べては低い。ただ、右のクローザー候補は必要で、極論だが今年の巨人のドラフトはオール投手でも良いと思うほど、強化が必要だ。

 将来のエース候補には、巨人が好きな右の本格派が多い。高橋宏斗(中京大中京高)中森俊介(明石商高山下舜平大(福岡大大濠高)はいずれも巨人のエース候補にふさわしい逸材だ。即戦力先発では大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車は安定感が抜群で、木澤尚文(慶大)は抑えの適性もあるが、先発でもローテションに入る力がある。

 クローザー候補では、伊藤大海(苫小牧駒大)伊藤優輔(三菱日立PS)はともにストレートに力のあるパワーピッチャー。森博人(日体大はスリークオーターの右腕で、不足する役割を埋める器用さがあり上位で獲得したい選手だ。

 即戦力投手ではほかに大江克哉(NTT西日本)内間拓馬(亜大)森浦大輔(天理大)は貴重な先発左腕だ。リリーフでも鈴木昭汰(法大)山本一輝(中京大岡田和馬(JR西日本は豊富な左腕リリーバーをさらに厚くする。

 高校生投手も多くリストアップしており、育成含め指名が増えそうだ。嘉手苅浩太(日本航空石川高)内田了介(埼玉栄高)有馬太玖登(都城東高)はパワーピッチャー。蓼原慎二(桐生一高豆田泰志(浦和実高)は総合力が高く、左腕では根本悠楓(苫小牧中央高)への評価が高い。打者としても非凡な秋広優人(二松学舎大高)にも注目している。

 

☆捕手~大学生捕手

 捕手は大城が打てる捕手としてレギュラーに近づき、ベテランの炭谷に小林誠司日本生命~13年①)、24歳の岸田行倫(大阪ガス~17年②)もおり戦力的に補強は急ぐ必要はないが、捕手の支配下が5名しかおらず、20~23歳が空白なこともあり大学生捕手を獲得したい。

 打てる捕手の古川裕大(上武大)萩原哲(創価大)、強肩の榮枝裕貴(立命大)喜多隆介(京都先端科学大)が候補になる。優先度から下位指名になりそうで、萩原や喜多は獲得の可能性が高い。

 

内野手~二遊間の即戦力

 内野手はチームリーダーの坂本が30歳を超えたが、若き主砲の岡本は24歳、二塁の吉川尚は25歳で問題はない。このほかに俊足の増田大、長打力のある北村、巧打の田中俊太(日立製作所~17年⑤)、若林は外野も守れ、オープン戦でアピールに成功した湯浅大(健大高崎高~17年⑧)も控えている。

 年齢バランスも悪くなく、質量ともに豊富で、補強ポイントは故障の不安がある吉川尚の二塁と、ポスト坂本で将来性のある遊撃手を抑えておきたい。

 二塁の即戦力では牧秀悟(中大)が一番だが、守備力の高い上川畑大悟(NTT東日本)や巧打者の峯本匠(JFE東日本)は内野の層をさらに厚くする。同じ社会人で右のパワーヒッター平山快(JFE東日本)福永裕基(日本新薬の評価も高い。

 将来性のある高校生遊撃手は今年は豊作で、小深田大地(履正社高)中山礼都(中京大中京高)蔵田亮太郎(聖望学園高)はいずれも強打の遊撃手。本職は三塁だが遊撃にもチャレンジしている山村崇嘉(東海大相模高)も候補に挙がっている。

 

☆外野手~即戦力の右打ち

 外野は亀井が38歳を迎え、レギュラーは31歳の丸のみ。25歳の松原が2番に定着しているが実績には乏しく、野手では外野が最優先になる。特に22~24歳が空白で大学生と社会人、右打ちで戦力になっているのが石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)しかおらず右打者ならベストだ。

 外野には野手ナンバーワン評価の佐藤輝明(近大)がおり、現状でもレギュラーを狙え、狭い東京ドームで本塁打も量産できるスラッガーで、佐藤が加われば打線にスキがなくなる。超俊足の五十幡亮汰(中大)は、ここにきて打撃力が上がりリードオフマンに十分になり得る。右打者では今川優馬(JFE東日本)は俊足強打の二番打者、向山基生(NTT東日本)は勝負強い巧打者で、今年は即戦力外野手を確実に獲得したい。

 

●1位は即戦力野手ナンバーワンで佐藤が濃厚!個人的には投手だと思うが…

 今年は早々と野手の1位指名を公言しており、佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。ただ、菅野の去就もあり、個人的には即戦力投手で競合覚悟で早川隆久(早大や指名もあると思う。敢えて単独で栗林良史(トヨタ自動車高橋宏斗(中京大中京高)の指名もありだ。ただ、栗林以外はいずれも抽選になりそうで、現在9連敗中のクジ運にも注目したい。

【指名シミュレーション】 

 1位~大道温貴(八戸学院大・投手)…下級生時代から主戦を務め、実戦経験が豊富な完成度の高い右腕。153キロのストレートに制球力の良い変化球でゲームメークに長けており、スタミナもあり大崩れしないのが最大の魅力。

 2位~大江克哉(NTT西日本・投手)…社会人1年目より主戦を務め、社会人で習得したカーブでさらに投球術がアップした。スライダーとチェンジアップの精度も高く、打者との駆け引きが巧い。体重も増えストレートの威力が増した。

 3位~森浦大輔(天理大・投手)…ボールの出所が分からない、力を抜いたフォームからキレのあるストレートとチェンジアップを投げ込む左腕。杉内を彷彿とさせる。

 4位~根本悠楓(苫小牧中央高・投手)…中学時代に全国制覇した左腕で、スクリューのように沈むツーシーム奪三振率が高い。小柄だが強気な投球が身上。1

 5位~岡田和馬(JR西日本・投手)…今年に入り評価が急上昇した即戦力左腕で、勢いのあるストレートとスライダーを武器に、先発・リリーフともに適性がある。

 6位~平山 快(JFE東日本内野手…本職は一・三塁だが、遊撃も守れるスラッガー。右にも長打が打てるスケール感のある打撃が武器。

 7位~山村崇嘉(東海大相模高・内野手…高校通算45本塁打スラッガーで、投手も務める大黒柱。強肩を活かして、今夏は三塁、遊撃にもチャレンジしている。

 今年の巨人は、本指名では5名の予定で決して多くない。ただ、リストアップしている選手は多く、育成指名が増えそうな気がする。合同練習会で注目を浴びたシャピロ・マシュー一郎(国学院栃木高)や長打力が魅力の岡本大翔(米子東高)、俊足の奥野翔琉(明徳義塾高)、準硬式出身の大曲錬(福岡大)等の一芸に秀でた選手や、無名の逸材発掘にも注目したい。

20年ドラフト予想☆ロッテ~狙いは先発左腕だが、得点力不足解消のため即戦力野手も必要

●得失点差マイナスながら、守りを中心にしたそつない野球で優勝争いを続ける

 今年、一番健闘しているチームはどこかと聞けば、ロッテと答えるプロ野球ファンが多いのではないかと思う。

 シーズン前に、先発ローテ当確だった西野勇士(新湊高~08年育⑤)が肘の手術でシーズン絶望、FA加入の福田秀平(多摩大聖ケ丘高~06年ソ高①)も骨折で離脱した。セットアッパーのジャクソンは退団、主砲のレアードも故障で帰国、エース格の働きをしていた種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)も、肘の手術で今シーズンの復帰は絶望になった。

 さらに唯一の3割打者だった荻野貴司トヨタ自動車~09年①)は足のケガ、正捕手の田村龍弘光星学院高~12年③)も骨折で一時期チームを離れ、21ホールドのハーマンも故障で離脱、そして新型コロナの集団感染で主力選手の大量離脱…とまさに満身創痍の状況のなか2位をキープし、優勝争いに留まっている。

 特筆するのは得失点差で、マイナスながら2位を維持しているのは驚きだ。特に、チーム打率はリーグ最下位で得点力が不足し、野手で特筆した成績を挙げている選手がいない。井上晴哉日本生命~13年⑤)の打率.254がチーム最高で、中村奨吾(早大~14年①)、マーティン、若き4番の安田尚憲(履正社高~18年①)が規定打席に達しているだけだ。そのなかでマーティンがリーグ5位、井上が6位の打点を挙げており、少ないチャンスを活かして接戦をものにしてきた。

 接戦に強いチームの原動力になったのが投手陣で、FA加入した美馬学東京ガス~10年楽②)はチームトップの9勝、石川歩(東京ガス~13年①)とWエースを形成し、二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)と岩下大輝(星稜高~14年③)、2年目の小島和哉(早大~18年③)がローテーションを守っている。

 リリーフ陣はリーグ屈指の布陣で、7回に唐川侑己(成田高~07年高①)、8回に復活を遂げた澤村拓一(中大~10年巨①)、9回のクローザー益田直也関西国際大~11年④)はリーグトップの29セーブを挙げ、勝利の方程式が確立した。さらにハーマンや小野郁(西日本短大高~14年楽②)、東條大樹(JR東日本~15年④)が盤石のリリーフ陣を支えている。

 井口監督は1年目に走る野球、2年目は長打を活かした野球、そして3年目にリーグ最少の失策数が示すように、そつのない堅守のチームに成長させた。また、昨年のストーブリーグに続き、シーズン前に鳥谷敬早大~03年神自)、トレードで澤村を獲得し、元中日のチェン・ウェインの入団など、話題にも事欠かなった。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 55勝44敗2分②

 防御率…3.90②(3.90④)打率….237⑥(.249⑤)

 本塁打…80④(158③)盗塁77③(75④)

 得点402⑤(642②)失点414②(611④)得失点差▲12(31)

 

 ロッテはここ数年、高評価のドラフトを展開しており、クジ運の強さもあるが、平沢大河(仙台育英高~15年①)、佐々木千隼(桜美林大~16年①)、安田、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)、佐々木朗希(大船渡高~19年①)と、いずれも抽選で獲得している。また、この5年の間に高校生野手を3名も1位で指名する姿勢は、常勝チームを作るための球団方針の確かさを象徴している。

 残念ながらまだ主力になりきれていないドラ1組だが、ドラフトの成果は出ている。投手では先発で種市に小島、中村稔弥(亜大~18年⑤)、リリーフで東條に有吉優樹(九州三菱自動車~16年⑤)、東妻勇輔(日体大~18年②)が結果を出している。

 野手では藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)が遊撃のレギュラー、菅野剛士(日立製作所~17年④)が今年一軍に定着し、ルーキーの佐藤都志也(東洋大~19年②)も打てる捕手として経験を積んでいる。 

【ロッテの補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 捕 手…高校生捕手

 内野手…将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 外野手…即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 

●投手王国も夢ではない即戦力投手の獲得か、課題の得点力不足を解消したい

☆投手~将来のエース候補(左腕)、即戦力クローザーと中継ぎ左腕

 投手陣は主力が30代に差し掛かり、美馬が34歳、石川と澤村、松永昴大(大阪ガス~12年①)が32歳、益田と唐川が31歳、東條と西野も30歳になる。こう見ると心配になってくるが、世代交代が上手く進んでいる。

 先発では二木が25歳、岩下と小島、中村稔が24歳、種市が22歳と若手が主力に成長している。ファームで結果を残している20歳の古谷拓郎(習志野高~18年⑥)に、160キロ超えの佐々木朗もおり、今後に楽しみな布陣が並ぶ。リリーフ陣も小野と東妻はともに24歳で、どちらがポスト益田になるか興味は尽きず、投手王国も夢ではない布陣が固まりつつある。

 投手は幾らでもいたほうが良いのは、チーム作りの鉄則だ。ロッテに必要なのは小島しかいない先発左腕、ポスト益田のクローザー候補と、手薄な中継ぎ左腕だ。年齢バランスは決して良くはないが、25歳以下に絞れば大学生と高校生、社会人なら高卒3~4年目がベストだ。

 すでに公言しているが、1位指名は早川隆久(早大で決まった。即戦力の先発左腕で大学生、そして地元千葉出身と、すべて補強ポイントに合致している。早川を外した場合は、中森俊介(明石商高等の将来のエース候補、即戦力の先発投手で大道温貴(八戸学院大や高卒3年目の小野大夏(ホンダ)、クローザー候補で伊藤優輔(三菱日立PS)伊藤大海(苫小牧駒大)が上位候補に挙がっている。

 この間の流れから、高校生投手も1~2名は抑えておきたい。下慎之介(健大高崎高)根本悠楓(苫小牧中央高)高田琢登(静岡商高)は先発左腕候補。他にも2メートルの大型右腕の秋広優人(二松学舎大高)にパワーピッチャーの内田了介(埼玉栄高)、総合力の高い川瀬堅斗(大分商高小辻鷹仁(瀬田工高)豆田泰志(浦和実高)の評価が高い。

 中継ぎ左腕では佐藤宏樹(慶大)伊藤将司(JR東日本は先発もこなせ、岡田和馬(JR西日本も候補になる。また、左腕ではないが山本晃希(日本製鉄かずさマジック)白石翔希(東農大)を以前より高く評価しており、指名の可能性が高い。

 

☆捕手~高校生捕手

 捕手は26歳の田村がレギュラーで、27歳の柿沼友哉(日大~15年育②)が2番手捕手を務め、ルーキー佐藤の加入でようやく駒が揃った。ただ、年齢バランスが非常に悪く、今年佐藤が入団するまでは田村が最年少という構成で、今年は高校生捕手の獲得が必須になる。

 大学生・社会人に比べ、今年の高校生捕手はまずまずの選手が揃っており、内山壮真(星稜高)を筆頭に二俣翔一(磐田東高)、地元の古谷将也(成田高)和田泰征(習志野高)と逸材が並ぶ。

 

内野手~将来の主軸候補(右打ちがベスト)、俊足巧打の即戦力二遊間

 内野手は一塁に井上、二塁に中村奨、三塁に安田、遊撃に藤岡とレギュラーは固まっているが、いずれも打撃面では物足りない。ただ、レギュラーと控えの差が大きく、平沢の伸び悩みもあり層は薄い。年齢バランスは悪くなく、有望な高校生と即戦力で二遊間を任せられる選手が候補になる。

 高校生では井上朋也(花咲徳栄高)岡本大翔(米子東高)は右打ちのスラッガー、高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)は将来の主軸候補。逸材が揃う遊撃手では土田龍空(近江高)は守備力が高く、度会隆輝(横浜高)入江大樹(仙台育英高)の打撃力の高い選手をリストアップしている。

 即戦力野手では牧秀悟(中大)は補強ポイントに合い、渡部健人(桐蔭横浜大は飛距離が魅力な面白い選手、平山快(JFE東日本)も二塁以外は守れるいずれも右打ちのスラッガーだ。他には守備力の高い元山飛優(東北福祉大に、俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎)は課題の二遊間の補強になる。

 

☆外野手~ 即戦力スラッガー(右打ちがベスト) 

 外野は荻野に清田育宏(NTT東日本~09年④)、角中勝也(四国IL高知~06年年大社⑦)、福田秀がいずれもの30歳を超えたが、ここも投手同様に世代交代が上手く進んでいる。菅野が頭角を表し、20歳の藤原と21歳の和田康士朗(BC富山~17年育①)が一軍で経験を積んでいる。ファームでも巧打者の高部瑛斗(国士館大~19年③)とスラッガーの山口航輝(明桜高~18年④)がともに結果を残している。

 年齢バランスも悪くなく、来田涼斗(明石商高も高く評価しており悪くはないが、藤原や和田がおり優先順位は高くないと思う。一番はやはり右打ちのスラッガーで、課題の得点力不足を解消したい。一番のおススメは今川優馬(JFE東日本)で、俊足のスラッガーに加え、明るい性格のムードメーカーで、個人的には是非獲ってもらいたい選手だ。

 この他にも高校通算53本塁打西川僚祐(東海大相模高)や荻野を目標にしている俊足の並木秀尊(独協大はともに右打ち、五十幡亮汰(中大)は、機動力を活かすロッテのチームカラーに合っている選手だ。また、来田と同じくスラッガー山本大斗(開星高)もリストアップしている。

 

●1位は早川を公言!即戦力と育成を合わせた秀逸なドラフトに今年も期待

 今年の1位指名は早川隆久(早大を公言しており、4~6球団の指名が予想され、クジ運の強さが今年も発揮できるか注目したい。早川を外した場合は、そのまま即戦力投手で大道温貴(八戸学院大伊藤優輔(三菱日立PS)、将来性で中森俊介(明石商高のどちらにシフトするか注目だ。

【指名シミュレーション】 

 1位~伊藤優輔(三菱日立PS・投手)…中大時代もドラフト候補だったが、即戦力を目指すために社会人に進んだ。最速149キロのストレートに変化球も多い総合力の高い投手で、プロではリリーバーとしての適性が高く評価されている。

 2位~内山壮真(星稜高・捕手)…名門校で1年より遊撃のレギュラーを務め、高校通算34本塁打、昨夏は4番を務め甲子園準優勝を経験した。新チームで捕手へ転向し、打力とともに、フットワークの良さとリード面の評価が高い。

 3位~小野大夏(ホンダ・投手)…社会人2年目に最速150キロを超え、まだ伸びしろを感じさせる本格派右腕。苦手の変化球もフォークやカーブが武器になってきた。

 4位~土田龍空(近江高・内野手…1年時から遊撃のレギュラーを掴み、高校生離れした守備力は抜群。50メートル6秒の俊足に、ミートの巧い打撃でバランスが良い。

 5位~下慎之介(健大高崎高・投手)…遅れて出てくる左腕から、伸びのあるストレートと鋭いスライダーを武器に奪三振能力が高い。好不調の波が大きいのが課題。

 6位~山本晃希(日本製鉄かずさマジック・投手)…恵まれた体格から威力抜群のストレートにスライダーを武器に、社会人で打たせて取る投球も身につけた。

 7位~岡本大翔(米子東高・内野手…チームでは投手も務める強肩の遊撃手。190センチの体格から繰り出すパワーが魅力だが、遠くに飛ばす技術も持ち合わせている。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心になりそうで、総合力の高い常田唯斗(飯山高)嘉手苅浩太(日本航空石川高)片山楽生(白樺学園高)。野手では和田泰征(習志野高)山本大斗(開星高)が候補になる。白石翔希(東農大)もロッテが評価している右腕だ。

20年ドラフト予想☆阪神~今年は育成重視か、即戦力中心か?野手ならオール大学生でOK

●早くもストーブリーグの話題が先行…チームを支えたベテランも衰えを隠せない

 先日、中日に抜かれ現在は3位だが、しばらく阪神がずっと2位をキープしており、失礼な言い方だが、そんなに強かったかな?と不思議だった。なんせ阪神の話題と言えば、藤浪をトレードするかしないか、チーム内のルールを破ったうえでの集団コロナ感染、球団社長の辞任、そして早くもオフ恒例のストーブリーグなどの話題が占めていたので、もう少し悪い気がしていた。

 話を戻すと、リーグ屈指の投手陣は今年も健在で、先発はエース西勇輝菰野高~08年オ③)がチームトップの10勝を上げ、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)に秋山拓巳(西条高~09年④)、左腕の高橋遥人(亜大~17年②)と勝ち星は少ないがガルシアがローテーションを守っている。

 リリーフでは、昨年活躍した藤川球児高知商高~98年①)は11試合登板で引退を表明し、島本浩也(福知山成美高~10年育②)も故障でシーズンを棒に振った。そのなかでもスアレスがクローザーを務め、岩崎優(国士館大~13年⑥)と馬場皐輔(仙台大~17年①)の3人が抜群の安定感を誇り、藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)もリリーフへの適性を見せ穴を埋めた。

 攻撃陣は大山悠輔(白鴎大~16年①)が不動の4番に成長し、昨年14本塁打だった男が、リーグトップの26本塁打を放ち、本塁打王争いをするまでに成長した。加えて新外国人のサンズが19本、ボーアが16本と課題の長打力不足が解消された。2年目の近本光司(大阪ガス~18年①)も序盤の不振を取り戻し、打率.291、23盗塁はリーグトップで得点力は着実に改善された。

 改善されていないのが失策の多さで、今年も両リーグワーストの67個のエラーは、痛いところで余計な失点に繋がっている。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 98試合 48勝47敗5分③

 防御率…3.57②(3.46①)打率….247⑥(.251④)

 本塁打…98③(94⑤)盗塁66①(100①)

 得点417④(538⑥)失点398②(566②)得失点差16(▲28)

 

 阪神のドラフトは昔も今も良く分からない…。ただ、ここ5年間では1位指名の選手が主力に成長し、16年の大山と17年の馬場は今年主力に成長し、15年の高山俊(明大~①)と近本は新人王を獲得している。

 このほかにも投手では青柳と高橋遥が先発ローテーションに定着し、野手では糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)に木浪聖也(ホンダ~18年③)がレギュラー、小幡竜平(延岡学園高~18年②)も頭角を表してきた。

 また、昨年は1位~5位まで高校生を指名し、これまでの阪神のドラフトと一線を画す指名には驚かされた。

阪神の補強ポイント】

 投 手…藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 外野手…ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 

●外野はスラッガー、内野は守備力重視か?投手陣の強化も今後に向け必要

☆投手~即戦力先発左腕、藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 投手陣は脂の乗った世代が主力におり、西勇もまだ30歳、29歳で秋山と岩崎、岩貞祐太(横浜商大~13年①)、27歳で青柳と島本、藤浪が26歳、高橋遥と馬場が25歳と暫くはリーグ屈指の投手陣が維持できる。

 ただ、23歳以下で戦力になっているのが、大目に見ても望月惇志(横浜創学館高~15年④)しかおらず、昨年の西純矢(創志学園高~19年①)に続く将来のエース候補が欲しい。また、藤川が引退を表明し、クローザー候補の獲得も必要になる。

 将来のエース候補では、高橋宏斗(中京大中京高)を最上位に、中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)が1位候補に挙がっている。即戦力のクローザー候補では、木澤尚文(慶大)伊藤大海(苫小牧駒大)が1位候補になる。

 阪神は今年はナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)の指名が濃厚で、競合のなか獲得できれば最高だが、外したときにどちらを優先するのか注目だ。

 また、即戦力の先発もマークしており、大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車に、不足する先発左腕で藤井聖(ENEOS)等も上位候補に挙がる。

 中位以降では高校生や伸びしろのある大学生が候補で、高校生では松本隆之介(横浜高)根本悠楓(苫小牧中央高)の両左腕。小辻鷹仁(瀬田工高)蓼原慎仁(桐生一高といった前評判の高い投手に、加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)、左腕の福島章太(倉敷工高)など隠し玉的な選手も高く評価している。

 大学生では村上頌樹(東洋大高田孝一(法大)は先発、左腕の高野脩汰(関大)はリリーフでもいけ、阪神は早くから注目していた伸びしろのある逸材だ。また、即戦力リリーバーの左腕、相馬和磨(日本通運も高野同様に早くからマークしている。

 

☆捕手~大学生捕手

 レギュラーは梅野隆太郎(福岡大~13年④)だが、捕手の年齢バランスが悪く、26歳~29歳に5名おり、26歳の長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)の下がルーキーの藤田健斗(中京学院中京高)で、20歳~25歳まで空白世代になっており、ここの年代は埋めたい。欲を言えば、捕手7名中6名が右打ちで、左打ちだとなお良い。

 年齢的には大学生捕手がベストで、古川裕大(上武大)は左打ちの打てる捕手、榮枝裕貴(立命館大は強肩のディフェンス型でどちらもチームの補強ポイントに合っている。高校生は年齢的に必要ないと思うが、関本勇輔(履正社高)二俣翔一(磐田東高)内山壮真(星稜高)の打てる捕手の獲得を目指している。

 

内野手~二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 内野手は二塁に糸原、三塁に大山、遊撃には北條史也光星学院高~12年②)を抑え木浪が控える。ただ、大山以外は攻守に決して万全とは言えず、20歳の小幡、25歳の熊谷敬宥(立大~17年③)が出番を増やしている。失策も多いことから守備力に特化した選手の獲得も必要で、捕手と同様に年齢バランスが悪く、大学生野手が候補の一番手になる。

 守備力を優先にすると矢野雅哉(亜大)元山飛優(東北福祉大小川龍成(国学院大)はいずれも堅守の遊撃手、瀬戸西純(慶大)は打撃は今ひとつも守備は抜群だ。社会人の上川畑大悟(NTT東日本)は、抜群の守備力を誇る遊撃手で、いまの阪神にはピッタリの補強だと思う。

 当然、ワンランクアップのチームを狙うには素質豊かな高校生も必要だ。高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)や俊足の細川凌平(智弁和歌山高)、巧打者の度会隆輝(横浜高)スラッガー阪本和樹(松阪商高)をリストアップしている。

 

☆外野手~ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 外野のレギュラーは26歳の近本のみで、福留孝介日本生命~98年中①)は41歳、糸井嘉男(近大~03年日自)も39歳になりさすがに衰えは隠せない。期待の伊藤隼太(慶大~11年①)も31歳、高山は年々試合数を減らしており、ここは即戦力野手が是が非とも必要だ。野手の年齢バランスがすべて悪く、外野手も大学生が欲しい。

 既にほぼ公言状態だが、佐藤輝明(近大)を早くから1位候補に挙げている。広い甲子園を苦にしない長打力が最大の魅力だ。他には俊足の五十幡亮汰(中大)をマークしているが、今年は外野手に候補者が少なくともに上位でしか獲得できない。

 高校生も同様で、将来トリプルスリーを狙える来田涼斗(明石商高)、ともにスラッガー西川僚祐(東海大相模高)元謙太(中京高)山本大斗(開星高)への評価が高い。

 

●1位は佐藤でほぼ間違いなし!昨年の育成重視ドラフトが今年はどう変わるか

 今年の1位指名は佐藤輝明(近大)で間違いなく、高校生投手では高橋宏斗(中京大中京高)を挙げているが、ともに1位未入札で消える選手で、外れ指名でどういった戦略で行くか注目だ。即戦力野手なら牧秀悟(中大)、将来性で来田涼斗(明石商高、投手なら小林樹斗(智弁和歌山高)木澤尚文(慶大)へシフトしそうだ。

【指名シミュレーション】 

 1位~小林樹斗(智弁和歌山高・投手)…昨夏の甲子園よりさらに成長を遂げ、ストレートの最速も152キロを計測した。元々の直球の伸びに加え制球力も高く、チェンジアップやスライダーの変化球も抜群で、先発・リリーフともに適性がある。

 2位~藤井 聖(ENEOS・投手)東洋大時代はリリーバーで目立たなかったが、社会人でその素質が開花し、本格派左腕に成長した。分かっていても打てないストレートは150キロを超え、先発・リリーフともに大きな戦力補強になる。

 3位~松本隆之介(横浜高・投手)…身長188センチを超える大型左腕で、最速150キロも超えた。変化球の精度も高い器用さも持ち合わせつ将来のエース候補。

 4位~榮枝裕貴(立命大・捕手)…守備力はアマ球界トップクラスで、確実性のある送球に高い盗塁阻止率を誇る。長打力には乏しいが、打撃も着実に成長している。

 5位~小辻鷹仁(瀬田工高・投手)…古豪・瀬田工高で成長した伸びしろ十分の右腕。スリークオーターから、低めに集める最速146キロのストレートが武器。

 6位~高野脩汰(関西大・投手)…角度にある147キロストレートと2種類のスライダーが武器で奪三振能力が高い。昨秋のリーグ戦では4勝負けなしでMVPを獲得。

 7位~相馬和磨(日本通運・投手…社会人1年目より救援で活躍し、上背はないがカーブにスライダー、フォークを駆使して打者を打ち取る即戦力左腕。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心で150キロサイドハンドの加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)。打てる捕手の関本勇輔(履正社高)阪本和樹(松阪商高)山本大斗(開星高)スラッガーをリストアップしている。大学生では最速155キロの高田孝一(法大)は粗削りながら、まだ伸びしろのある本格派右腕が候補になる。

20年ドラフト予想☆楽天~野手は問題なし。課題は先行き不透明な投手陣

●強打で圧倒する打力を誇るが、接戦に弱く逆転負けが多いのは投手力

 今年の序盤戦の楽天は強かった。投げてはエースの則本昴大(三重中京大~12年②)とロッテから移籍した涌井秀章(横浜高~04年西①)が勝ち星を重ね、松井裕樹桐光学園高~13年①)が先発転向し、新守護神の森原康平(新日鉄住金広畑~16年⑤)が試合を締めた。

 打っては茂木栄五郎(早大~15年③)から始まる打線は、2番はロッテからFA加入の鈴木大地東洋大~11年ロ③)、島内宏明(明大~11年⑥)、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)、ロメロと続く打線は強力で、このまま独走するのはないかと思った。

 主戦だった高梨雄平(JX-ENEOS~16年⑨)やウィーラーを放出するほど選手層が厚くなり、今年のドラフトは育成中心でオール高校生で良いと思ったくらいだ。

 ただ、少しずつ歯車が狂い始め、森原やブラッシュが不振で離脱し、則本や松井、茂木も再調整でチームを離れた。期待の2年目、辰巳涼介(立命大~18年①)や太田光(大商大~18年②)も序盤は良かったが、レギュラー定着とはならず、優勝戦線から後れを取ってしまっている。

【10/14現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 99試合 48勝47敗4分③

 防御率…4.16⑤(3.74②)打率….259①(.251②)

 本塁打…101②(141④)盗塁58⑥(48⑤)

 得点459①(614③)失点428④(578②)得失点差31(+36)

 

 楽天日本ハム同様、その年のナンバーワン選手に行くのが基本方針だ。しかも12年の森雄大東福岡高~12年①)から8年連続して高校生を1位入札指名している。ただ、とにかくクジ運が悪く、ここ5年間でも17年の藤平尚真(横浜高~17年①)以外はすべて外している。

 ただ、その姿勢は成果に結びついており、投手では石橋良太(ホンダ~15年⑤)に弓削隼人(スバル~18年④)の先発に、リリーフでは森原と高梨と社会人選手が結果を残している。今年のルーキー瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)が先発で1勝を上げ、津留崎大成(慶大~19年③)もリリーバーとしての適性を見せている。

 野手では茂木を筆頭に、今年は小深田大翔(大阪ガス~19年①)がレギュラーを獲得する勢いを見せ、捕手は太田に堀内謙伍(静岡高~15年④)、足立祐一(パナソニック~15年⑥)がしのぎを削っている。外野はさらに激戦で、新人王も獲得した田中和基(立大~16年③)に、辰巳や渡邊佳明(明大~18年⑥)、小郷裕哉(立正大~立正大~18年⑦)がレギュラーを争い、ここ5年のドラフトは成果に結びついている。

楽天の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補

 捕 手…必要なし

 内野手…将来のレギュラー候補

 外野手…将来のレギュラー候補、大学生スラッガー 

 

●野手よりも今年は投手狙いが最適か、先発と中継ぎ左腕、クローザーも必要

☆投手~将来のエース候補

 投手陣は世代交代の波が近づいている。先発では岸孝之東北学院大~06年西・大社希)が36歳、涌井が34歳、塩見貴洋(八戸大~10年①)も32歳、則本と辛島航(飯塚高~08年⑥)が30歳代に突入した。リリーフ陣を見ても、今年NPBに復帰した牧田直久(日本通運~10年②)も36歳、青山浩二(八戸大~05年大社③)は37歳と主力がいずれもベテランの域に達している。

 20歳代で先発で一人立ちしている投手は弓削くらいで、リリーフもはロッテより人的補償で入団した酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)と質量ともに不足がちだ。とにかく期待のドラフト1位が伸びきれていない。安樂智大(済美高~14年①)は、リリーフへ転向?するも、大事な場面での起用には成り得ておらず、近藤弘樹(岡山商大~17年①)は4試合、藤平は1試合登板に留まっている。

 今後のチーム編成でポイントとなるのが、松井の起用法だ。25歳の松井は間違いなく今後の楽天を背負う選手だが、先発かリリーフの選択肢が付く。今年は先発に転向するも4勝に終わり、9月からはリリーフに配置転換されている。

 松井を先発で使うなら、即戦力のクローザーが必要になるし、クローザーで使うなら5年は安泰で、ベテランの主力がいるうちに将来のエース候補を育成したい。年齢バランスでも昨年高校生を獲得しておらず、今年は高校生指名を外せない。

 将来のエース候補では、中森俊介(明石商高高橋宏斗(中京大中京高)山下舜平大(福岡大大濠高)が1位候補で、特に中森への評価が高い。他球団の動向にもよるが、高橋は中日や広島、山下もソフトバンク指名が狙っており、単独で中森を獲得できる可能性もある。

 一方でけが人が続出し、先発ローテが厳しくなった現状から即戦力の先発も必要だ。森博人(日体大赤上優人(東北公益文化大)宇田川優希(仙台大)、不足している先発左腕の補強で佐藤宏樹(慶大)も上位候補になる。

 松井を先発で起用するなら、即戦力のクローザーで伊藤大海(苫小牧駒大)木澤尚文(慶大)小郷賢人(東海大が候補になり、伊藤は日本ハムが指名確実と見られていたが、野手の佐藤輝明(近大)が急浮上しており、伊藤の単独1位指名もあり得る。

 他に左の中継ぎが不足しており、ここは鈴木昭汰(法大)藤村哲之(横浜商大岡田和馬(JR西日本をリストアップしている。

 中位から下位の高校生では、不足する左腕で高田琢登(静岡商高)松本隆之介(横浜高)下慎之介(健大高崎高)の評価が高く、嘉手苅浩太(日本航空石川高)や小牟田竜宝(青森山田高)など馬力のある投手をリストアップしている。

 

☆捕手~必要なし

 レギュラーはケガで離脱したが太田が一番手で、31歳の足立、26歳の下妻貴寛(酒田南高~14年②)、今年は出番が少ないが堀内も23歳で、年齢バランスも取れており緊急性はそれほど高くないように思える。

 強いて言えば打てる捕手が不足し、打てる捕手でリストアップすれば古川裕大(上武大)萩原哲(創価大)は打てる即戦力捕手だ。

 

内野手~将来のレギュラー候補

 ケガさえなければ内野手に心配はない。主力の浅村が30歳、鈴木大も脂ののりきった31歳、茂木が26歳で、遊撃のレギュラーを掴みつつある小深田も25歳と3~4年は安泰だ。ベテランの銀次(盛岡中央高~05年高③)に若手でも右のスラッガー内田靖仁(常総学院高~13年②)に勝負強い渡邊佳、巧打者の黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)も控えており、当面心配は少ない。

 ここは将来のレギュラー候補に、年齢で空きのある大学生野手を抑えておきたい。さすがに補強の優先順位が低いのか、リストアップしている選手が少なく土田龍空(近江高)度会隆輝(横浜高)に、地元の有望選手で入江大樹(仙台育英高)がいる。即戦力野手では、牧秀悟(中大)楽天に不足している右打ちのスラッガー、また守備力に定評のある上川畑大悟(NTT東日本)への評価が高い。

 

☆外野手~将来のレギュラー候補、大学生スラッガー

 内野手に比べ、外野手は豊富そうに見えるが補強の優先順位は高い。唯一のレギュラーの島内も30歳を迎え、田中和や辰巳の一人立ちがないと厳しい。リーグ最下位の盗塁数もこの2人がレギュラーを獲得できれば課題も解消される。

 外野の狙いは当然、佐藤輝明(近大)はマークしているが、課題は投手力アップなので、2位以下の指名が予想される。ポイントは2点で、主力が和田恋(高知高~13年巨②)しかいない右打ちと将来のレギュラー候補の獲得だ。

 右打ちの外野手では、今川優馬(JFE東日本)は俊足のスラッガーで、チームの補強ポイントと合致する。ほかには俊足の並木秀尊(独協大や巧打者の向山基生(NTT東日本)がいる。

 将来のレギュラー候補で、来田涼斗(明石商高は、状況次第では2位での獲得も可能だ。右打者に絞ると元謙太(中京高)石川慧亮(青藍泰斗高)、強打者の西川僚祐と俊足の鵜沼魁斗東海大相模高のコンビも将来性十分だ。

 

●不足している左腕で早川?それとも将来のエース候補に行くか…注目の1位指名

 今年の1位指名は投手で良いと思う。競合覚悟で即戦力左腕の早川隆久(早大で行くか、中日が指名見え見えの高橋宏斗(中京大中京高)も競合必至で、もう一人の超高校級の中森俊介(明石商高)の単独指名もあるかもしれない。

【指名シミュレーション】 

 1位~中森俊介(明石商高・投手)…高校2年生のときよりエースとして活躍し、春夏甲子園4強の実績も光る世代ナンバーワン投手。ストレートの速さはもちろんのこと、変化球の精度も高く、先発、リリーフともに高いポテンシャルを秘める。

 2位~今川優馬(JFE東日本・外野手)…昨年の都市対抗では超攻撃型2番打者として、若獅子賞を獲得。迷いのないフルスイングが魅力のスラッガーだが、俊足かつ強肩で走攻守に優れている。明るい性格も魅力で看板選手になれる可能性大。

 3位~宇田川優希(仙台大・投手)…ゆったりしたフォームから投げ込む直球は球速以上の速さがあり、奪三振率が高い本格派。先発・リリーフどちらも問題ない。

 4位~赤上優人(東北公益文化大・投手)…中央では無名だが、早くから注目されていた右の本格派。野手で入学したのち投手に転向してドラフト候補になった逸材。

 5位~元 謙太(中京高・外野手)…昨夏の甲子園4強の原動力になった。元々は投手だが、プロでは野手で挑戦する。遠くに飛ばす力のある正真正銘のスラッガー

 6位~上川畑大悟(NTT東日本内野手…小柄だが堅実な守備で二遊間を守り、安定したスローイングも魅力。守備で食べていける選手で、藤田の後継者に最適。

 7位~萩原 哲(創価大・捕手…高校時代より強肩で注目を浴びており、守備では直ぐにでも戦力になる。思い切りの良い打撃はパンチ力も十分。

 このほかに下位または育成候補では、左腕の藤村哲之(横浜商大は先発・リリーフともに適性があり、150キロ右腕の佐藤蓮(上武大)もリストアップしている。