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どのチームが「人」を育て強くなるのか

25年ドラフト予想☆楽天&中日

楽天~投打に世代交代が迫り課題は山積】

 終わってみれば今年も4位で、実に4年連続の同順となった。防御率が改善傾向も、打線の世代交代が迫るなか、今季は本塁打数が12球団最小と得点力が後退している。

 楽天のドラフトは本当に分からない。クジ運に恵まれ早川隆久(早大~20年①)や荘司康誠(立大~22年①)、宗山塁(明大~24年①)の主力を抽選で獲得するも、年齢構成や指名ポジションの重複も基本的は関係なく、落ち着かない監督人事も含め、将来どのようなチームを目指しているのか見えない。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   防御率(失点)   打率(得点) 本塁打  盗塁  失策

 21年 3位 66勝52敗15分   3.40④(507④).243③(532④)108⑤  45⑥ 64③

 22年 4位 69勝73敗 1分 3.47⑥(522④).243③(533②)101③   97② 49①

 23年 4位 70勝71敗 2分 3,52⑥(556⑥).244③(513②)104② 102① 82⑤

 24年 4位 67勝72敗 4分 3.73⑥(579⑥).242④(492④)  72④   90① 64②

 25年 4位 67勝74敗 2分 3.37④(526⑤).244④(446④)  70⑥ 110① 69④

楽天の補強ポイント】 

 投 手…即戦力の先発と将来のエース候補高校生

 捕 手…年齢構成で高校生または大学生

 内野手…将来の中軸候補

 外野手…即戦力の右打ち及び年齢構成で高校生

◆投手

 先発のチーム最多勝は7勝の古謝樹(桐蔭横浜大~23年①)、最多投球回数は藤井聖(ENEOS~20年③)と岸孝之東北学院大~06年西希)だが、規定投球回数をクリアした選手はゼロで、パ・リーグでは楽天だけだ。先発投手の貯金もゼロと軸になる投手がおらず、先発陣の立て直しは来季に向け優先課題になる。

 一方でリリーフ陣はリーグ屈指と言え、則本昂大三重中京大~12年②)にFA移籍の可能性が出てきたが十分に賄える布陣だ。西垣雅矢(早大~21年⑥)の63試合を筆頭に、藤平尚真(横浜高~16年①)が61試合、西口直人(甲賀健康医療専門学校~16年⑩)と加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)が50試合を超え、鈴木翔天(富士大~18年⑧)と今野龍太(岩出山高~13年⑨)も40試合以上に登板している。

 さらに藤平と鈴木翔は防御率2点台、西垣は1点台、西口に至っては防御率0,91と安定感も抜群で、藤平は不振の則本に代わり後半クローザーを務めた。

【来季の予想布陣】

 先発…岸 孝之 古謝 樹 荘司康誠 早川隆久 藤井 聖 内 星龍

      坂井陽翔 瀧中瞭太 大内誠弥 

 リリーフ…則本昂大 加治屋蓮 藤平尚真 西垣雅矢 鈴木翔天 西口直人 今野龍太

      渡辺翔太 松井友飛 江原雅裕 宋 家豪 津留崎大成 泰 勝利

 短期的に見れば即戦力の先発が欲しい。制球力に優れた中西聖輝(青学大伊藤樹(早大丸和幸(鷺宮製作所はゲームメークに長け、中西と竹丸は1位重複も予想される。大学選手権日本一の立役者の櫻井頼之介(東北福祉大への評価が高まっており、今年は未登板だが堀越啓太(東北福祉大も先発への適性を見せている。

 このほか、高木快大(中京大由上慶(京産大は質の高いストレートが武器で、由上は野手としても評価が高い。市川祐(日大)田村剛平(京産大は総合力が高く、サイドハンドの鈴木豪太(大商大)は豊富なスタミナを誇る。左腕では最速154キロの山城京平(亜大)、多彩な変化球が武器の松永大輝(白鷗大)も候補に挙がる。

 また、世代ナンバーワンの呼び声高い石垣元気(健大高崎高)は、将来のエース候補で16年の藤平以来の高校生1位指名を狙っても良い。上位で高校生を獲得できなくても、佐藤龍月(健大高崎高)江藤蓮(未来富山高)の両左腕、今夏の地区予選で完全試合を達成した中山優人(水戸啓明高)が候補に挙がり、188センチの長身右腕の長瀬大來(大院大高)は野手としての評価も高い。

◆野手

 捕手は支配下が5名しかいなか、安田悠馬(愛知大~21年②)が離脱するなど不安要素が大きかったが、太田光(大商大~18年②)と堀内謙伍(静岡高~15年④)を軸に乗り切ることができた。

 内野は一塁・浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)、二塁・小深田大翔(大阪ガス~19年①)、三塁・村林一輝(大塚高~15年⑦)、遊撃・宗山塁(明大~24年①)が最多出場だが、黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)が後半台頭し来季の布陣が固まった。ルーキー宗山が難しいポジションを通年こなし、三塁に廻った村林は最多安打のタイトルを獲得。黒川はキャリアハイの83試合に出場し打率.299の好成績を残した。

 外野は中島大輔(青学大~23年⑥)が初の規定打席をクリアするも、辰己涼介(立命大~18年①)は不振で2度の二軍落ち、昨季フル出場の小郷裕哉(立正大~18年⑦)も90試合に留まるなど固定できなかった。 

【来季の予想布陣】

 捕手…太田 光 安田悠馬 堀内謙伍 石原 彪

 内野…小深田大翔 宗山 塁 浅村栄斗 村林一輝 鈴木大地 ボイト フランコ

     黒川史陽 伊藤裕季也 渡邉佳明 入江大樹 小森航太郎 陽 柏翔  

 外野…辰己涼介 ゴンザレス 中島大輔 吉納 翼 武藤敦貴 小郷裕哉 吉野誠

 野手の課題は多く特に長打力不足は深刻で、最多は途中加入のボイトの13本、日本人最多は浅村の9本で、ファームを見渡しても長距離タイプは安田と吉納翼(早大~24年⑤)しかいない。

 上位候補で内野手立石正広(創価大)松下歩叶(法大)谷端将伍(日大)、捕手の小島大河(明大)が挙がっているが、このなかでは小島が一押しで、正真正銘の打てる捕手で補強ポイントに合う。捕手は高校生も必要で大栄利哉(学法石川高)の打てる捕手だ。立石と松下、谷端は欲しい選手ではあるが、本職の三塁には村林がおり、村林と同じ右打ちの選手を優先する理由は薄い。

 また、内野では勝田成(近大)も候補だが、勝田はチームに数多くいる俊足巧打の左打ちで優先順位は高くない。将来を見据えてスラッガー藤井健翔(浦和学院高)佐々木麟太郎(スタンフォード大)などスケール感のある選手を狙っても良いと思う。

 外野は今年、右打者に逸材が多いのは追い風だ。スイッチヒッター平川蓮(仙台大)は左右から長打を打て、エドポロ・ケイン(大院大)の身体能力の高さも魅力だ。宮崎海(横浜商大阪上翔也(近大)は走攻守揃った中堅手で、万が一の辰己の移籍に備えても良いと思う。

【中日~6年連続リーグ最小得点を脱却できるか】

 井上一樹新監督を迎え、大きくメンバーも変わらないなか、盗塁や犠打を絡めて1点を獲りにいくスモールベースボールでに3年連続の最下位を脱したことは評価できる。

 一方、投打に課題が多く、その要因がドラフトで、かつてのドラフト巧者は遠い過去の話になってしまった。21年の大学生右打ち外野手の3人指名、22年は大学・社会人内野手が4名、翌23年も大学生と社会人内野手を2名指名し、2年で6名も指名するなどバランスが悪く、世代交代に備えた準備も遅れてしまった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗   防御率(失点)   打率(得点) 本塁打  盗塁  失策

 21年 5位 55勝71敗17分   3.22①(478①).237⑥(405⑥) 69⑥   60⑤ 56②

 22年 6位 66勝75敗 2分 3.28②(495②).247④(414⑥)  62⑥   66④ 66②

 23年 6位 56勝82敗 5分 3,08②(498③).234⑥(390⑥)  71⑥   36⑤ 79④

 24年 6位 60勝75敗 8分 2.99④(478④).243③(373⑥)  68④   40⑥ 68③

 25年 4位 63勝78敗 2分 2.97④(463④).232⑥(403⑥)  83⑤   80② 65②

【中日の補強ポイント】 

 投 手…世代浩太に向け将来のエース候補と即戦力リリーバー

 捕 手…必要ないが年齢構成で高校生

 内野手…本当は必要ないが、大学生の即戦力(遊撃または三塁)

 外野手…高校生と大学生

◆投手

 来季は高橋宏斗(中京大中京高~20年①)と金丸夢斗(関大~24年①)が左右のエースとしてチームを引っ張る姿が期待できる。一方で、柳裕也(明大~16年①)と松葉貴大(大体大~12年オ①)がFA権を取得し、ともに去就は未定だ。また、大野雄大(佛教大~10年①)が来季38歳、涌井秀章(横浜高~04年西①)も40歳を迎え世代交代が確実に迫っている。

 リリーフは46セーブで最多セーブを獲得した松山晋也八戸学院大~22年育①)を始め、藤嶋健人(東邦高~16年⑤)に清水達也(花咲徳栄高~17年④)、左腕の斎藤綱記(北照高~14年オ⑤)と橋本侑樹(大商大~19年②)は盤石な布陣だが、若手が伸び悩んでおり先発同様に層が厚いとは言えない。

【来季の予想布陣】

 先発…柳 裕也 高橋宏斗 涌井秀章 金丸夢斗 大野雄大 松葉貴大 マラー

      草加 勝 仲地礼亜 松木平優太 福田幸之介 吉田聖弥 三浦瑞樹 メヒア

 リリーフ…橋本侑樹 梅野雄吾 清水達也 藤嶋健人 斎藤綱記 松山晋也 マルテ

      根尾 昂 伊藤茉央 福 敬登 勝野昌慶 土生翔太 近藤 廉

 どうしても打線に目が行きがちだが、投手補強の優先順位は高い。22年から3年連続で大学生投手を1位指名しているが、勝ち星は仲地礼亜(沖縄大~22年①)と金丸のともに2勝(計4勝)で結果は出ていない。

 今年も大学生投手が上位候補に挙がり、中西聖輝(青学大高須大雅(明大)高木快大(中京大は完成度の高い即戦力だが、目先の成績よりも高橋宏のような将来性を秘めたエース候補で、石垣元気(健大高崎高)の1位指名もアリだ。中西以外の1位候補の島田舜也(東洋大斎藤汰直(亜大)山城京平(亜大)はどちらかと言うと素材型で、同じ素材型なら石垣指名の方がかつての“らしさ”が戻ってくる気がする。

 このほかの高校生では、いずれも左腕がリストアップされており、甲子園出場の佐藤龍月(健大高崎高)江藤蓮(未来富山高)濱岡蒼太(川和高)進学校ながら多彩な変化球を操る逸材だ。ヴァルデナ・フェルガス(青学大は独特のフォームから打者を翻弄する長身左腕で、左腕投手が不足している訳ではないが注目度は高い。

 社会人では冨士隼斗(日本通運後藤凌寿(トヨタ自動車の評価が高く、富士は先発もリリーフもこなせ、最速155キロの後藤はリリーフの層を厚くする。

 最後に地元志向の高い中日だが、今年は隣県の岐阜に逸材が揃っている。ともに本格派右腕の坪眞都(大垣北高)富田櫂成(帝京大可児高)相楽雅人(岐阜協立大)は驚異の投球回転数で注目されている。

◆野手

 捕手は木下拓哉トヨタ自動車~15年③)がFA宣言後に残留を決めるも、ルーキーの石伊雄太(日本生命~24年④)が最多のマスクを被り世代交代を印象づけた。若手が伸びていないのは気がかりだが、加藤匠馬(青学大~14年⑤)が控え、補強の優先順位は高くない。

 内野は一塁・ボスラー、二塁・田中幹也(亜大~22年⑥)、三塁はレギュラークラスさえおらず、チェイビスや佐藤龍世(富士大~18年西⑦)の加入も効果は薄かった。遊撃はベテランの山本泰寛(慶大~15年⑤)で、福永裕基(日本新薬~22年⑦)のケガは残念だったが、あれだけ即戦力を獲得しながらレギュラークラスは田中と福永のみ、ファームも同様で泣けてくる。

 外野は岡林勇希(菰野高~19年⑤)と上林誠知(仙台育英高~13年ソ④)が規定打席をクリアし、細川成也(明秀日立高~16年D⑤)はチーム最多の20本塁打を放った。

【来季の予想布陣】

 捕手…石伊雄太 木下拓哉 宇佐見真吾 加藤匠馬

 内野…辻本倫太郎 田中幹也 カリステ 村松開人 福永裕基 チェイビス 

      石川昂弥 土田龍空 山本泰寛 板山祐太郎 佐藤龍世 樋口正修

 外野…尾田剛樹 岡林勇希 大島洋平 ボスラー ブライト健太 川越誠司 

      上林誠知 駿太 細川成也 鵜飼航丞

 野手の優先は、即戦力の三塁手と遊撃手になり、三塁が本職の立石正広(創価大)が加入すれば打線の上積みになる。立石と同じ右打ちの谷端将伍(日大)は遊撃も守れ、遊撃なら高い守備力を誇る大塚瑠晏(東海大も補強ポイントに合う。

 高校生の候補では井上遥翔(佐野日大高)はパンチ力のある打撃が魅力の三塁手西川篤夢(神村学園伊賀高)は俊足巧打、堅守の遊撃手でともに補強ポイントに合う。

 外野手では秋山俊(中京大が上位候補で評価が高く、リーグ戦で2度の本塁打王打点王を獲得している強打者で、宮崎海(横浜商大野間翔一郎(近大)もリストアップされている。高校生では広角に長打が打てる能登輝夢(明秀日立高)斎藤大将(西日本短大高)が候補に挙がる。

 捕手は補強の必要はないが、立石と並ぶ好打者の小島大河(明大)は、コンバートを想定しても良い選手。守優雅(奈良学園大)は逆に守備力の高い強肩捕手で獲得を検討しても良い。

【指名シミュレーション】    

       【楽 天】                【中 日】

 1位~中西聖輝(青学大・投手)     立石正広(創価大・内野手)   

 2位~小島大河(明大・捕手)      高須大雅(明大・投手)        

 3位~エドポロ・ケイン(大院大・外野手)    江藤 蓮(未来富山高・投手)    

 4位~中山優人(水戸啓明高・投手)   西川篤夢(神村学園伊賀高・内野手)    

 5位~田村剛平(京産大・投手)     後藤凌寿(トヨタ自動車・投手)         

 6位~大栄利哉(学法石川高・捕手)   宮崎 海(横浜商大・外野手)