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どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年戦力展望☆DeNA~投打に選手層が厚くなり、セ・リーグ優勝の大本命!25年振りの歓喜に期待

 振り返れば昨年もベストメンバーで開幕を迎えることが出来なかった。エースの今永昇太(駒大~15年①)がキャンプ中の故障で2年連続で開幕に間に合わず、ソトとオースティンもケガで離脱し、こちらも2年連続で不在となり、開幕は広島相手に3連敗を喫するなど、一昨年の開幕6連敗…シーズン最下位の悪夢が頭を過った。

 結局、3~4月は借金5で終え、5~6月も借金1となかなか浮上のきっかけを掴めなかった。しかし、徐々に投打が噛み合い、7月に勝ち越すと8月はホームゲーム17連勝を果たすなど、独走状態のヤクルトを猛追し、ゲーム差を4まで縮めた。

 そして8/26から、得意の本拠地で首位攻防戦を迎えたが、投手陣が打ち込まれ3連敗で勢いを失うと、9月は負け越し…結果2位で終えた。ただ、一昨年の最下位から、ヤクルトを追い詰めたことは自信になり、着実にチーム力がアップしている。

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 2位 73勝68敗  2分 .251  117本   49個  497点  3.48  534点

 21年 6位 54勝73敗16分 .258  136本   31個  559点  4.15  624点

 20年 4位 56勝58敗  6分 .266  135本   31個  516点  3.76  474点

 19年 2位 71勝69敗  3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗  2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

 20年~入江大生(投手~明大①)牧 秀悟(内野手~中大②)

    19年~伊勢大夢(投手~明大③)

 18年~大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~神里和毅(外野手~日本生命②)

 エースの今永に東克樹(立命大~17年①)の両左腕、昨年リリーフでブレイクした入江、遊撃手の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)と正捕手候補の松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年①)に共通するのは、DeNAが単独指名した1位指名の選手である。

 競合指名を避け、単独指名は消極的とも言う意見もあるが、以前のように「(競合)指名しても、どうせ来てくれない」時代ではないし、元々横浜が本拠地のDeNAは人気球団であり、逆に単独指名こそ勇気のある指名だと思う。

 また、以前は毎年のように上位は大学生・社会人の即戦力選手の指名が中心で、将来どんなチームを目指しているのかが見えなかった。確かに高卒選手で主力と呼べるのは、投手では田中健二朗常葉菊川高~07年①)、野手は桑原雅志(福知山成美高~11年④)まで遡らなくてはならないが、直近5年は小園健太(市和歌山高~21年①)に松尾と2年連続で高校生選手を1位指名し、森を加えた3名の指名は、育成を重点に「こういったチームを作りたい」という明確な意志を感じ評価できる。

 残念ながら高校生はまだ結果を残せていないが、エース格に成長した大貫、伊勢と入江はセットアッパーの地位を確立し、2年目にして全試合4番で出場した牧など、上位指名した選手が主力に成長しており、着実に結果も付いてきている。

 

●投手陣~競争激化のなか、バウアーの電撃加入でさらに投手陣に厚みを増した

  チームの躍進を支えたのは投手陣の改善で、一昨年12球団で唯一4点台だった防御率がリーグ3位の3.48と大きく改善した。

 先発は大貫が2年連続ただ一人シーズンを完走し、2年振りの2桁勝利を上げ、5月に復帰した今永も11勝を上げ貯金7とエース復活を強く印象づけた。特に、カード頭の火曜に無類の強さを発揮し、ノーヒットノーランを含む10試合で8勝負けなしは見事だった。このほか濱口遥大(神奈川大~16年①)に石田健大(法大~14年②)、ロメロを軸に、コロナの影響で穴が空いた部分を上茶谷大河(東洋大~18年①)や京山将弥(近江高~16年④)、途中加入のガゼルマンが埋めた。

 先発以上に改善を見せたのがリリーフ陣で、山崎康晃(亜大~14年①)は自己最高の防御率1.33、自己最多タイの37セーブで完全復活を遂げると、ともに70試合以上を投げた伊勢は防御率1点台、エスコバーも2点台と圧倒的な安定感を誇った。さらに2年目の入江も57試合登板でリリーフに定着、ベテランの平田と田中は手術から復帰を果たし、同店、僅差、ビハインド等、どんな場面でも登板し存在感を見せた。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆今永昇太(143回2/3)大貫晋一136回2/3)濵口遥大(112回1/3)

      ロメロ(92回1/3)石田健大(82回1/3)上茶谷大河(66回2/3)

 ・救援…伊勢大夢(71試合)エスコバー(70試合)入江大生(57試合)

       山﨑康晃(56試合)平田真吾(47試合)田中健二朗(47試合)

【今年度の予想】

 ・先発…石田健大 今永昇太 濵口遥大 上茶谷大河 ガゼルマン 京山将弥 

      (東 克樹 阪口晧亮 徳山壮磨 大貫晋一 坂本裕哉 ※バウアー) 

 ・中継…伊勢大夢 入江大生 平田真吾 田中健二朗 エスコバー 森原康平   

      (三嶋一輝 三浦銀二 ※橋本達弥 ※ウェンデルケン 宮国椋丞) 

 ・抑え…山﨑康晃

 先発は残念ながら大貫がキャンプ中のケガで間に合わないが、今永と濱口、石田、上茶谷に、キャンプで好投しているガゼルマン、そろそろ先発ローテに定着したい京山がおり頭数は揃っていり。ここにMLB通算83勝、20年にはサイヤング賞にも輝いたバウアーが電撃加入し、大貫が戻り、バウアーが加わった布陣を早く見てみたい。

 このほかにも先発候補は多く、昨年開幕投手を務めた東、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)に中日から加入の笠原祥太郎(新潟医療福祉大~16年中④)は、復活を期すシーズンになり、坂本裕哉(立命大~19年②)も先発ローテに返り咲きたい。若手では、昨年ファームの先発ローテの中心だった阪口晧亮(北海高~17年③)に徳山壮磨(早大~21年②)、優秀投手賞に選ばれた石川達也(法大~20年育①)が控え、即戦力の吉野光樹(トヨタ自動車~22年②)候補で競争が激しくなってきている。

 リリーフはセットアッパーの伊勢とエスコバー、入江からクローザーの山崎に繋ぐ形ができているが、昨年はいずれも登板過多で勤続疲労が心配だ。難病からの復活を目指す三嶋一輝(法大~12年②)に移籍1年目は不本意な成績に終わった森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)が加われば、平田、田中と合わせ経験、実績ともに十分なだけに層が厚くなる。新加入の橋本達弥(慶大~22年⑤)は大学時代からリリーフ専任、ウェンデルケンもMLB通算144試合登板の実績があり、リリーフ陣を救いたい。

 

●野手陣~京田の加入で内野の層はさらに厚くなった。あとは外国人選手の復調がカギ

 一昨年、ともにリーグ2位だったチーム打率と得点数は数字を下げたが、本塁打頼みの大味な打線から、機動力や小技を活かした打線にモデルチェンジした。失策数はリーグ最少の64と1点をもぎ取り、改善した投手陣と堅守で接戦をものにすることができるようになった。

 その中心にいたのが2年目の牧で、三浦監督は一度も牧を4番以外で使うことがなく、牧も打率.291、24本塁打と87打点はいずれもリーグトップで、得点圏打率は3割を超え、4番の重責を果たした。更に、チーム事情で様々な打順を務めた佐野恵太(明大~16年⑨)が、交流戦後に3番に戻ると、佐野~牧~宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)のクリーンアップが機能し、7~8月の快進撃に繋がった。結果、佐野は最多安打のタイトルを獲得し、宮崎も3年連続3割をマークし国産打線が奮起した。

 誤算は両外国人の不振で、ソトは来日5年目にした初めて規定打席に届かず、オースティンは右肘の手術の影響で、24本塁打が1本塁打に激減し、チームが好調だxtyただけに離脱は痛かった。

 そのなかで、若手では森と楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)がともにキャリアハイの成績を残し、大和(樟南高~05年神④)や大田泰示東海大相模高~08年巨①)のベテランが要所で良い働きを見せた。また、内野の柴田竜拓(国学院大~15年③)に藤田一也(近大~04年④)、外野の関根大気(東邦高~13年⑤)は守備固めや代走、犠打など安定感抜群のプレーでチームを支えた。WBCのスター選手も良いが、こういう地味だが職人気質でチームを支える選手にも、もっとスポットライトを当てて欲しい。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…嶺井博希(96/362)戸柱恭孝(72/151)伊藤 光(40/103)

 内野手…☆牧 秀悟(135/568)☆宮崎敏郎(122/482)ソト(117/412)

       大和(91/277)柴田竜拓(96/198)森 敬斗(61/168)

 外野手…☆佐野恵太(135/574)☆桑原将志(130/529) 楠本泰史(94/327)

       関根大気(104/225)蝦名達夫(61/181)大田泰示(62/153)

       神里和毅(81/107)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)桑原将志⑧      1)桑原将志⑧      

  2)佐野恵太⑦        2)楠本泰史⑨       

  3)楠本泰史⑨           3)佐野恵太⑦    

  4)牧 秀悟③      4)牧 秀悟④     

  5)宮崎敏郎⑤         5)宮崎敏郎⑤      

  6)知野直人      6)ソト③      

  7)柴田竜拓⑥      7)大和⑥     

  8)戸柱恭孝②      8)嶺井博希②

  9)東 克樹①      9)今永昇太①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…戸柱恭孝 伊藤 光 山本祐大(東妻純平)

 内野手…牧 秀悟 森 敬斗 大和 柴田竜拓 宮崎敏郎 ※京田陽太 ソト

    (※林 琢真 藤田一也 田中俊太 小深田大地 知野直人)     

 外野手…大田泰示 桑原将志 佐野恵太 楠本泰史 ※アンバギー 関根大気

    (オースティン 神里和毅 梶原昂希 蝦名達夫)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)桑原将志⑧      捕 手)戸柱恭孝(伊藤 光) 

  2)京田陽太⑥      一塁手)ソト

  3)佐野恵太⑦      二塁手)牧 秀悟

  4)牧 秀悟④         三塁手)宮崎敏郎(柴田竜拓)

  5)宮崎敏郎⑤         遊撃手)京田陽太(大和)

  6)ソト③        左翼手)佐野恵太(楠本泰史)

  7)アンバギー⑨        中堅手桑原将志

  8)戸柱恭孝②      右翼手)アンバギー(大田泰示

  9)今永昇太①        

 レギュラーポジションはほぼ埋まっており、一塁ソト、二塁は牧、三塁には宮崎がおり、外野も左翼の佐野と中堅の桑原は決まりで、捕手と遊撃手、右翼手の争いになる。

 捕手は嶺井博希がソフトバンクにFA移籍したが、影響は少ないと思う。ここ数年は正捕手不在の状況が続き、戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)に伊藤光明徳義塾高~07年オ③)、嶺井が隔年ごとに活躍していた状況だった。強肩の山本祐大(BC滋賀~17年⑨)に、ファームで鎬を削る益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)と東妻純平(智弁和歌山高~19年④)にはチャンスで、松尾の加入を起爆剤にして欲しいところだ。

 遊撃も同じで、レギュラー候補の森はキャリアハイの61試合に出場したが、大和や柴田から定位置を奪うことができなかった。そうこうしているうちに、中日から名手の京田陽太(日大~16年中②)が加入し、森の成長を待つ時期は過ぎたと言える。

 右翼は激戦区で、昨年後半に2番に定着した楠本、守備走塁のスペシャリスト関根、走攻守揃ったベテランの大田、打撃の評価が高い蝦名達夫(青森大~19年⑥)に加え、21年にメジャーデビューした長距離砲のアンバギーも控え、誰がレギュラーを勝ち取ってもおかしくない。こうなるとオースティンが戻ってきても、ポジションは確約できておらず、ハイレベルな競争がチームの底上げに間違いなく繋がる。

 最後に期待の若手を紹介すると、ファームで打撃面の成長著しい小深田大地(履正社高~20年④)はポスト宮崎の座を狙う。ルーキーの林琢真(駒大~22年③)と育成の村川凪(四国IL徳島~21年育①)は俊足が武器で、投手から野手転向した勝又温史(日大鶴ケ丘高~18年④)も打撃面の成長著しい。現状、支配下選手64名、うち野手は29名と少なくと枠にはまだ余裕があり、支配下争いにも注目したい。

 

●細かな野球に外国人選手の長打力が加われば、得点力アップで優勝を狙える布陣

 注目の選手は、やはりバウアーで、サイヤング賞を獲得した投手のNPB入団は史上2例目で、否応なしに期待が高まる。15年から5年連続2桁勝利、150キロ後半のストレートにカットボールとスライダー、カーブを駆使し奪三振率が高い。22年に出場停止を受け、1年以上実戦から離れていたブランクと「球界屈指の問題児」と呼ばれた素行部分は気になるが、現役バリバリのメジャーリーガーの投球が今から待遠しい。

 野手は中日からトレードで加入した京田陽太で、昨年は本来のプレーからは程遠く、プロ入り最低の数字に終わった。ただ、今回のトレードには悲壮感はなく、新天地での活躍を期待する声が多い。元々、守備は一級品だが打撃が課題で、1年目の打率.264が最高だが一昨年は打撃も復調気配で、打てる選手が多いチームの中でまだまだ向上できる可能性はある。

 チームの地力は付いてきたが、優勝に不可欠なのは外国人選手の活躍で、投手ならバウアーが先発ローテを守り、ウェンデルケンがリリーフのピースにハマれば層はさらに厚くなる。打線は佐野や牧のマークを厳しくさせないためにも、ソトとオースティンの復調がポイントになる。