ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年戦力展望☆ロッテ~世代交代が進み、若手の本格的な覚醒があれば優勝のダークホース

 2年連続の2位で、優勝候補にも挙げられたシーズン。優勝には若手の台頭とレアード、マーティンの主力選手の活躍が必要だったが、蓋を開ければ、若手は伸び悩み、両外国人も不振を極め、打線は湿りぱなっしで、5月までチーム打率は.210と低迷した。

 そんななか投手陣は奮闘し、序盤は石川歩(東京ガス~13年①)や史上最年少で完全試合も達成した佐々木朗が勝ち星を重ねた。交流戦に入ると、徐々にチームの状況も上向き、最大9あった借金を完済し、貯金2で前半戦を終えた。

 ただ、後半は手痛いところで、優勝したオリックスにことごとくやられ、本拠地で2度の3タテを喫するなど、一昨年のマジック点灯寸前で本拠地3連敗の悪夢が思い出される敗戦になった。結果、8/30以降は一度も貯金できないまま、ペナントレースから脱落し5位でシーズンを終え、最終戦のセレモニーで井口監督が電撃辞任した。

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打 盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 5位 69勝73敗  1分 .231    97本 132個  501点  3.39  536点

 21年 2位 67勝57敗19分 .239   126本   107個  584点  3.67  570点

 20年 2位 60勝57敗  3分 .235    90本   87個  461点  3.81  479点

 19年 4位 69勝70敗  4分 .249  158本   75個  642点  3.90  611点

 18年 5位 59勝81敗  3分 .247    78本 124個  534点  4.04  628点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~松川虎生(捕手~市和歌山高①)廣畑敦也(投手~三菱自動車倉敷③)

 20年~なし

 19年~佐々木朗希(投手~大船渡高①)佐藤都志也(捕手~東洋大②)

    高部瑛斗(外野手~国士館大③)

 18年~小島和哉(投手~早大③)

 17年~安田尚憲(内野手履正社高①)藤岡裕大(内野手トヨタ自動車②)

 井口体制のもと、優勝には届かなかったが、ドラフトの成果は着実に出てきている。佐々木朗が着実に成長曲線を描き、小島は今季の開幕投手に指名された。

 打者では安田や佐藤のスラッガーに、俊足巧打の高部、高卒1年目ながら76試合にマスクを被った松川など、リーグを代表するような選手がこの1年で頭角を表してきた。また、昨年、2桁本塁打の山口航輝(明桜高~18年④)に和製大砲覚醒の予感が漂い、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)や小川龍成(国学院大~20年③)もキャンプで好調を維持し、レギュラーを狙える立場に成長してきた。

 ロッテのこの5年間を見て評価できるのは、一つ目は上位指名選手が、期待に応え主力に成長している。2つ目はスケール感の大きさで、佐々木朗に安田、藤原、松川の1位指名選手に山口と言った高校生選手が着実に育ってきている。

 最後は育成から支配下登録選手の多さで、この5年で7名の選手が支配下になっており、ソフトバンクに次いで多い。足のスペシャリスト和田康士朗(BC富山~17年育①)を始め、昨年も佐藤奨真(専大~20年育④)と森遼大朗(都城商高~17年育②)が一軍デビューを果たしている。制度活用が形骸化しておらず、チームの競争が円滑に行われている。

 

●投手陣~エース佐々木朗が誕生するシーズンになるか!吉井監督の起用に注目

 年々、チーム防御率は改善を見せ、昨年の3・4月は防御率1点台の抜群の安定感を誇った。前半は石川と佐々木朗が引っ張り、後半は美馬学東京ガス~10年楽②)が復調して10勝を挙げた。だだ、一昨年10勝の小島は、規定投球回をクリアするも、3勝11敗と先発陣の借金を丸抱えしてしまった。また、6人目も決まらず、本前郁也(北翔大~19年育①)の3勝が最多でチャンスを掴む選手が出てこなかった。

 リリーフ陣も、一昨年の勝ちパターンが崩れ、益田直也関西国際大~11年④)がひとり奮闘したが、その益田も後半から安定感を欠きクローザーから外れた。ただ、東條大樹(JR東日本~15年④)がキャリアハイの59試合を投げ、防御率2点台の好投を見せれば、小野郁(西日本短大高~14年楽②)は3年連続40試合に登板、西野勇士(新湊高~08年育⑤)も見事復活し、15ホールド防御率1点台は見事だった。

 さらにルーキーの廣畑、新外国人のゲレーロとオスナも加わり、リリーフ陣の層の厚さを見せつけた。特にオスナは益田に代わりクローザーを務め、10セーブ13ホールドで、失点(自責点)はわずかに3で防御率0点台の圧巻の成績を残した。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小島和哉(143回1/3)佐々木朗希(129回1/3)石川 歩(123回)

     美馬 学(117回2/3)ロメロ(115回1/3)     

 ・救援…東條大樹(59試合)益田直也(52試合)ゲレーロ(49試合)

       小野 郁(44試合)西野勇士(39試合)廣畑敦也(30試合)

       オスナ(29試合)

【今年度の予想】

 ・先発…小島和哉 美馬 学 種市篤暉 佐々木朗希 西野勇士 ※メルセデス

    (石川 歩 ※菊地吏玖 岩下大輝 鈴木昭汰 中村稔弥 森遼大朗)

 ・中継…唐川侑己 東條大樹 廣畑敦也 坂本光士郎 小野 郁 

      (佐々木千隼 ※高野脩汰 ※カスティーヨ ※ペルドモ 国吉佑樹)     

 ・抑え…益田直也 澤村拓一

 先発は開幕投手の小島、佐々木朗と美馬、巨人から移籍のメルセデスは決まりで、調整遅れの石川がどの時期に合流するかで陣容は変わるが、残り1~2枠の争いになる。

 有力なのは西野と岩下大輝(星綾高~14年③)になるが、右肘の手術から完全復活を目指す種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)も候補に挙がる。また、かつて不足していた先発左腕も揃ってきており、中村稔弥(亜大~18年⑤)に本前、3年目の鈴木昭汰(法大~20年①)や佐藤奨にもチャンスはある。

 新戦力ではルーキーの菊地吏玖(専大~22年①)に3年目中森俊介(明石商高~20年②)、新外国人のカスティーヨとペルドモは、ともに先発・中継ぎの適性を見極めていく。特にスリークオーターの本格派カスティ-ヨ、制球力が高いグラウンドボーラーのペルドモはMLB23勝の実績があり、どの場面で起用するか注目したい。また、澤村拓一(中大~10年巨①)が入団し、オスナ移籍を埋める補強になった。

 今季の吉井監督は、レバレッジ継投で7~9回を固定せずに状況に応じて起用していくことを明言している。リリーフ陣は益田と澤村、小野、東條を中心に、今季復活を期す佐々木千隼(桜美林大~16年①)に唐川侑己(成田高~07年①)、不足していたリリーフ左腕も坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)にルーキーの高野脩汰(日本通運~22年④)が加われば、お釣りがくるくらいの布陣になる。

 

●野手陣~得点力不足のまぁ大きな補強がなかったのは、若手への期待の裏返しか

 昨年はとにかく打てず、序盤は本当に酷かった…。荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が開幕に間に合わず、期待の安田と藤原、山口も開幕スタメンから漏れ、レアードとマーティンの調子は最後まで上がらず、エチェバリアとともに退団した。

 そんななか気を吐いたのが高部で、オープン戦で首位打者の勢いそのままに一気にレギュラーを獲得した。俊足巧打を活かしリーグ2番目の148安打を放ち、44盗塁で盗塁王、守ってはわずか3失策の堅守でゴールデングラブ賞も獲得した。

 また、高卒1年目ながら松川が開幕マスクを被り、さすがに捕逸数や盗塁阻止率はリーグワーストで課題は多いが、随所に光るものを見せた。一方で佐藤都は一塁で開幕スタメンを勝ち取ったが、捕手でも63試合に先発出場しリーグトップの盗塁阻止率を記録した。

 後半戦に入ると、安田が覚醒を予感させる打撃で、キャリアハイの9本塁打を打ち、山口もチームトップの16本塁打を放ち左右の大砲候補の片りんを見せた。また、レギュラー不在の遊撃も、後半は茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)が定着し43試合にスタメン出場するなど世代交代が進むシーズンになった。

 また、足にスランプなしではないが、両リーグ最多の132盗塁で、長打力不足を機動力で補った戦術は、MLBのように盗塁が敬遠されている現代のなか特筆できる。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…佐藤都志也(118/402)松川虎生(76/212)

 内野手…☆中村奨吾(138/596)安田尚憲(119/440)レアード(112/396)

       エチェバリア(76/257)井上晴哉(60/232)茶谷健太(57/156)       

 外野手…☆高部瑛斗(137/608)山口航輝(102/349)岡 大海(98/248)

     荻野貴司(89/373)マーティン(68/266)角中勝也(53/138)

        藤原恭大(49/126)      

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)高部瑛斗⑦      1)荻野貴司⑦      

  2)マーティン⑨     2)高部瑛斗⑧       

  3)中村奨吾④         3)中村奨吾④   

  4)レアードDH     4)山口航輝⑨      

  5)佐藤都志也③     5)井上晴哉③     

  6)岡 大海⑧      6)レアードDH    

  7)藤岡裕大⑥      7)安田尚憲⑤ 

  8)松川虎生②      8)エチェバリア⑥ 

  9)平沢大河⑤      9)松川虎生②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…松川虎生 田村龍弘 佐藤都志也(柿沼友哉)

 内野手…藤岡裕大 安田尚憲 中村奨吾 井上晴哉 小川龍成 茶谷健太

    (池田来翔 ※友杉篤輝 平沢大河 三木 亮 ※大下誠一郎 福田光輝)

 外野手…荻野貴司 藤原恭大 ※ポランコ 岡 大海 高部瑛斗 山口航輝 

       和田康士朗 (角中勝也 福田秀平 菅野剛士 山本大斗)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)荻野貴司⑦      捕 手)松川虎生(田村龍弘) 

  2)高部瑛斗⑧      一塁手)佐藤都志也(井上晴哉

  3)中村奨吾④      二塁手)中村奨吾

  4)安田尚憲⑤      三塁手)安田尚憲(藤岡裕大)

  5)山口航輝⑨      遊撃手)茶谷健太(小川龍成)

  6)ポランコDH     左翼手荻野貴司(平沢大河)

  7)佐藤都志也③     中堅手)高部瑛斗(藤原恭大)

  8)茶谷健太⑥      右翼手)山口航輝(岡 大海)

  9)松川虎生②      D H)ポランコ

 FA権を取得したチームリーダーの中村奨吾(早大~14年①)と、投手陣から信頼の厚い田村龍弘光星学院高~12年③)が揃って残留を決めファンを安心させた。また、昨季巨人で24本塁打を放ったポランコが加入し、課題の長打力不足に期待がかかる。

 先ずは予想打順だが、中軸に長打力のある選手が並ぶ。安田に山口、ポランコ、佐藤都はいずれも20本塁打以上打てる選手で、守備に不安にあったポランコが指名打者に専念できるのはプラスになる。20本は難しいが、松川も元々は内野手指名も検討されていた打てる捕手で、さらに一塁で井上晴哉日本生命~13年⑤)、外野にも山本大斗(開星高~20年育③)のスラッガーが控えており、一発の怖さを秘めた打線になる。

 守備では、捕手は田村の復活がポイントで、松川との併用になれば、右翼や三塁にも挑戦している佐藤都が打撃に専念できる。その佐藤都が一塁、二塁の中村奨と三塁の安田も決まり。特に安田は守備が飛躍的に巧くなり、ゴールデングラブ賞も夢ではない。

 最大の課題は今季も遊撃で、候補は多い。順当に行けば茶谷と藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)だが、小川も打撃面で成長を見せ、ルーキーの友杉篤輝(天理大~22年②)は守備と走塁は問題なく、今季は例年になく良い競争が出来ていると思う。

 外野の層は厚く、左翼・荻野、中堅・高部、右翼・山口が濃厚だが、藤原が打撃好調で贅沢な悩みが出てきた。さらにベテランの岡と角中勝也(四国IL高知~06年⑦)、外野での出場が増えている平沢大河(仙台育英高~15年①)も打撃好調を維持し、開幕にどの名前が並ぶか注目したい。

機動力も健在で、荻野と高部、中村奨の走れる選手が上位におり、岡大海(明大~13年③)や和田といった走塁のスペシャリストを抱えているのも心強い。

 

若手の本格覚醒があれば、優勝争いも夢ではない。エースと主砲誕生に期待!

 注目の選手は、投手ではやはり佐々木朗希しかいない。成績だけ見れば、3年で通算12勝の投手が、MLBではダルビッシュ有大谷翔平、山本由伸と並んで日本の主力として数えられている。昨年は前半の好調を維持することができなかったが、今季1年間完走することで、おのずと結果はついてきて、タイトルにも手が届くだろう。チーム待望のエース誕生から、リーグを代表する投手に成長するシーズンにして欲しい。

 打者は山口で、86年の落合博満以来、チーム38年振りの本塁打王への期待がかかる。キャンプは絶好調で、本塁打を連発しており、特に、MLB代表のヤクルトの高橋奎二から、2打席連続で放った本塁打は練習試合とは言え衝撃的で、和製大砲の覚醒を予感させる。多少の不振でも我慢して起用し続ければ、30本塁打は固いだろう。

 現状の戦力では、良くてAクラスの予想で、物事に“たら、れば”は禁物だが、投手では佐々木朗に種市、野手では安田に藤原、山口といった若手が、昨季の高部のように一気に覚醒すれば優勝争いも夢ではない。一昨年、マジックを点灯させたことがフロックではないことを証明するよう、74年以来、半世紀近く遠ざかっいる勝率1位での優勝を目指すシーズンになる。