今年一番のサプライズは佐々木麟太郎(スタンフォード大・内野手)の指名で、1位指名だけでも驚きだったが、DeNAとソフトバンクの2球団が指名し、抽選の結果、ソフトバンクが交渉権を獲得した。来年MLBのドラフトにかかる可能性もあり、佐々木の今後の判断に注目が集まる。
今年の目玉は大学屈指のスラッガー立石正広(創価大・内野手)で、広島が1位指名を公表し、5~6球団は指名すると思ったが、DeNAとソフトバンクのほか、ヤクルトは立石と同じ右打ちの松下歩叶(法大・内野手)、西武は事前に小島大河(明大・捕手)の指名を公表し、ともに単独指名に成功した。結果広島と日本ハム、阪神の3球団が指名し、阪神が交渉権を獲得した。
世代ナンバーワンと言われた石垣元気(健大高崎高・投手)は、地元・日本ハムにラブコールを送っていたが、ロッテとオリックスが指名し、2年連続で抽選一騎討ちとなったが、昨年に引き続きロッテが交渉権を得た。
このほかの1位指名は、事前に指名を公表していた巨人の竹丸和幸(鷺宮製作所・投手)は入札がなく、同じく競合も予想されていた中西聖輝(青学大・投手)は中日がそれぞれ単独指名に成功した。楽天も藤原聡大(花園大・投手)の交渉権を獲得し、同大初のプロ野球選手が誕生した。
抽選を外したオリックスは同じ高校生の藤川敦也(延岡学園高・投手)、DeNAも小田康一郎(青学大・内野手)を指名し、青学大は3年連続で複数選手が1位指名を受けた。広島と日本ハムは平川蓮(仙台大・外野手)で競合し、日本ハムは地元の平川を獲得したいところだったが縁がなく大川慈英(明大・投手)を指名し、1位指名12選手が出揃った。
支配下選手の指名は、昨年より4名多い73名で、内訳は高校生19名(▲3名)、大学生は史上最多の40名(+13名)、社会人・独立リーグ14名(▲6名)で、4年連続で大学生が高校生を上回った。育成は▲11名の43名で、指名総数は116名(▲7名)になった。支配下の最多指名はヤクルトと広島、ロッテ、楽天、オリックスの7名で、最少はDeNAと阪神、日本ハム、ソフトバンクの5名。下位チームが増え、上位チームの指名が少ない形になった、
明大が同一チーム史上最高を更新する16年連続の指名になり、来年も巧打者の榊原七斗(外野手)が既に1位候補に呼び声高く、記録はまだ伸びそうで、徳島インディゴソックスも13年連続の指名を受けている。個人予想では、指名予想の100名中64名が指名を受け、昨年と同数でした。
【12球団ドラフトの評価】
A…ロッテ、阪神
C…ヤクルト、中日、巨人、DeNA、日本ハム
D…ソフトバンク
E…なし
☆ヤクルト(C⁺)
投打に課題の多いドラフトのなか、松下のほかにも増居と石井、飯田の社会人即戦力選手を獲得し、来季に向け戦力の上積みはできた。ただ、チームの看板でもある村上宗隆が抜けることを考えれば、スター候補としても競合覚悟で立石に行って欲しかった。
一方で、即戦力なのか、育成なのか、重点は投手なのか野手なのかの意図が掴めず、2位で毛利(ロッテ)や斎藤(広島)など、1位指名候補だった大学生投手を指名できた状況にも拘わらず、長岡秀樹がいるなか、ポジションが重複する松川の2位指名や、3位の山崎も素材型も選手で、全体を見るとチクハグな感は否めなかった。
③山崎太陽(創価大・投手) ④増居翔太(トヨタ自動車・投手)
⑤鈴木蓮吾(東海大甲府高・投手) ⑥石井 巧(NTT東日本・内野手)
⑦飯田琉斗(ENEOS・投手) 育①小宮悠瞳(川崎総合科学高・投手)
★ロッテ(A)
投打に戦力が不足し、即戦力選手が欲しいなか、将来性にシフトした指名は評価できる。世代ナンバーワンの石垣は、佐々木朗希に続くスター候補で、3位で打者としても評価の高い左腕の奥村(個人的には打者)、4位で高校通算49本塁打の櫻井、育成1位の中山も支配下指名も濃厚だった逸材で、スケール感のある会心の指名になった。
さらに補強ポイントで優先順位の高かった左投手で毛利を2位指名でき、最速155キロの冨士を5位で獲得できたのは幸運と言え、先発・リリーフも即戦力投手を獲得できた。将来性を重視しながら、即戦力もバランスよく指名でき最高評価を付けた。
①石垣元気(健大高崎高・投手) ②毛利海大(明大・投手)
③奥村頼人(横浜高・投手) ④櫻井ユウヤ(昌平高・内野手)
⑤富士隼斗(日本通運・投手) ⑥岡村了樹(富島高・捕手)
⑦田中大聖(ホンダ鈴鹿・投手 育①中山優人(水戸啓明高・投手)ほか2名
☆広島(B⁺)
1位指名を公表した立石をは外したが、平川を獲得できたのは個人的には良かったと思う。立石の三塁には昨年1位の佐々木泰もおり、高齢化が進む外野で平川の出番は早いだろう。また、2位で斎藤汰、3位で勝田の即戦力を指名できたのも大きく、特に勝田は小柄な内野手が大成する広島にはピッタリな選手だと思う。
4位以降は育成主体の指名になり、工藤と赤木はスケール感があり、7位の高木も今季の不調がなければもっと上の順位で呼ばれてもおかしくない選手で将来性を感じた。ただ、即戦力投手が少なく、反面、高校生投手の指名もなかったのが残念だった。
①平川 蓮(仙台大・外野手) ②斎藤汰直(亜大・投手)
⑤赤木晴哉(佛教大・投手) ⑥西川篤夢(神村学園伊賀高・内野手)
⑦高木快大(中京大・投手) 育①小林結太(城西大・捕手)ほか1名
★西武(B)
小島の1位指名表明は個人的には悪手だと思ったが、見事に単独指名に成功した。小島は森友哉のような起用ができる巧打者で、3位の秋山とともに早々に期待できる。また、2位の岩城は即戦力左腕、4位で堀越を獲得できたのも大きく、今季は不調でリーグ戦の出番が限られているが、元は1位級の素材で上位4人の顔ぶれが良い。
一方で、今井達也と高橋光成の去就が不明のなか、即戦力投手が最低もう一人は欲しく、秋山を獲得できたなら即戦力の内野手の指名があっても良かった。また、横田のほかに、育成で新井と今岡を指名し高校生遊撃手が3人も必要だったのかは疑問だ。
①小島大河(明大・捕手) ②岩城颯空(中大・投手)
③秋山 俊(中京大・外野手) ④堀越啓太(東北福祉大・投手)
⑤横田蒼和(山村学園高・内野手) ⑥川田悠慎(四国銀行・外野手)
育①新井唯斗(八王子高・内野手) 育②今岡拓夢(神村学園高・内野手)ほか5名
☆中日(C)
主力投手の高齢化による世代交代が迫り、柳裕也や松葉貴大の去就も気になるなか、先発で中西と櫻井、リリーフの篠崎と上位3名に即戦力投手を並べたのは理解できる。また、野手の指名も年齢構成の穴を埋めるピンポイントの補強ができた。
ただ、今年は大学生野手が豊富な年で、1位で中西を獲得できたのであれば、2位で主力になり得る野手を獲得して欲しかった。5位の新保、6位の花田はともに良い選手ではあるが、どちらかというと守備走塁/チャンスメーカータイプで、能登も高校ではリードオフマンを務めており、中軸を担うスケール感のある選手が必要だと思う。
①中西聖輝(青学大・投手) ②櫻井頼之介(東北福祉大・投手)
③篠崎国忠(四国IL徳島・投手) ④能登輝夢(明秀日立高・外野手)
⑤新保茉良(東北福祉大・内野手) ⑥花田 旭(東洋大・外野手)
育①牧野憲伸(オイシックス・投手) 育②石川大峨(掛川西高・内野手)ほか1名
★楽天(B⁺)
当初から今年は投手指名の公言通り、1位で藤原、2位で地元出身の伊藤樹の獲得に成功し、6位で今年の都市対抗で橋戸賞受賞の九谷も獲得できた。安定感のある伊藤樹は即戦力だが、藤原と九谷はまだ伸びしろも期待でき、将来のエース候補で左腕の伊藤大も獲得し、投手は思い通りの指名ができた。
野手も3位の繁永は広角に打ち分ける右打者で、人数の少ない捕手で地元の大栄、育成5位で島原大河(四国IL愛媛)の2名を獲得したのも大きい。ただ、リーグ最小の本塁打数のチーム状況を鑑みると、中軸候補の指名がなかったのが惜しまれる。
①藤原聡大(花園大・投手) ②伊藤 樹(早大・投手)
⑤伊藤大晟(れいめい高・投手) ⑥九谷 瑠(王子・投手)
⑦阪上翔也(近大・外野手) 育①幌村黛汰(日本海L富山・外野手)ほか4名
☆巨人(C⁻)
今年は先発投手かポスト岡本のどちらかと注目していたところ、竹丸の指名公表で先発投手にシフトすると思ったが、2位でリリーフタイプの田和、4位以降は野手指名になり中途半端なドラフトになった。その野手も4位の皆川は走攻守3拍子揃った右打者だが、同じタイプで浅野翔吾等がおり、小浜も守備力に定評がある遊撃手だが、泉口友汰がレギュラーを掴みかけているなか、即戦力の遊撃手が必要だったのか疑問が残る。
来季に向け即戦力中心の指名は理解できるが、同じ3位でもオリックスと対照的なドラフトになり、6位でポスト岡本の候補で藤井を獲得できたのが救いだった。
③山師京平(亜大・投手) ④皆川岳飛(中大・外野手)
⑤小浜佑斗(沖縄電力・内野手) ⑥藤井健翔(浦和学院高・内野手)
育①富重英二郎(BC神奈川・投手)育②林 燦(立正大・投手)ほか3名
★オリックス(B)
残念ながら石垣(ロッテ)獲得には失敗したが、1位の藤川から4位の窪田までオール高校生指名になり、7位でも野上を指名し、高校生5名指名は今年のドラフトで最多人数になった。上位2チームとの差は歴然で、本来であれば即戦力を指名したいところだが、素材型の高谷と石川を含め育成重視で徹底した姿勢は称賛に値し、5年後には評価が大きく変わる可能性もある見事なドラフトになった。
また、育成の三方は大型外野手、育成2位のシャピロ一郎(日本海L富山)と4位の渡邊一生(仙台大)は即戦力投手で、支配下と育成指名のバランスも秀逸だった。
①藤川敦也(延岡学園高・投手) ②森 陽樹(大阪桐蔭高・投手)
③佐藤龍月(健大高崎高・投手) ④窪田洋祐(札幌日大高・外野手)
⑤高谷 舟(北海学園大・投手) ⑥石川ケニー(ジョージア大・投手)
⑦野上士耀(明秀日立高・捕手) 育①三方陽登(BC栃木・外野手)ほか3名
☆DeNA(C⁻)
佐々木の指名自体は大きく評価するが、個人的には外して良かったと思っている。小田は立石(阪神)や小島(西武)の陰に隠れたが、広角に打ち分ける打撃力は秀逸で、チームには佐野恵太など手本になる選手が多く、結果を出すのは一番早いと思う。
ただ、2位以降はオール大学・社会人で、育成の清水含めて野手はすべて内野手の偏重ドラフトになったのは残念だった。選手層が厚くない外野手は今年も指名がなく、投手に至っては4位の片山は来季27歳のオールドルーキーで、このままだと来季19~22歳が不在になり、高校生投手の育成はチームとして諦めた感さえ漂う。
⑤成瀬脩人(NTT西日本・内野手) 育①清水詩太(京都国際高・内野手)
★日本ハム(C⁻)
来季に向けもう一つ上のチームを目指すために、育成よりも立石や平川の指名を選んだが抽選で2度外した。その後、補強ポイントであるリリーフ強化で大川を1位指名し、2位以降で再び大学生野手にシフトした。2位のエドポロはスケール感のある将来性豊かな選手で、同じ強肩の万波中正との外野を形成できれば他球団の脅威になる。
3位の大塚は守備に定評のある遊撃手、5位の藤森は捕手以外に内外野も守れ新庄監督が好むタイプの選手で、4位の半田も高校通算24本塁打の大型遊撃手で悪くはないが、来季に向けた戦力の上積み、将来性ともどっちつかずのドラフトになった。
①大川慈英(明大・投手) ②エドポロ・ケイン(大院大・外野手)
③大塚瑠晏(東海大・内野手) ④半田南十(日大藤沢高・内野手)
⑤藤森海斗(明徳義塾高・捕手) 育①常谷拓輝(北海学園大・内野手)ほか1名
☆阪神(A)
3球団競合の立石を獲得できただけで大成功だが、2位以降の指名も秀逸だった。二遊間を守れる谷端の加入で、佐藤輝明を外野に廻せる布陣が組め、3位の岡城は俊足巧打の外野手で、万が一の近本光司のFA移籍の備えもできた。4位で将来のエース候補の早瀬、5位の能登は今季のイースタンの投手4冠の即戦力で、各ポジションの補強ポイントを僅か5名の指名で見事に埋めた満点のドラフトになった。
立石の加入で、暫くは阪神の時代が続きそうな予感を抱かせるドラフトになるが、こうなるといよいよ1位もすべてウェーバーの論議も出てきそうな気がする。
③岡崎快生(筑波大・外野手) ④早瀬 朔(神村学園高・投手)
⑤能登崇登(オイシックス・投手)育①神宮僚介(東農大オホーツク・投手)ほか1名
★ソフトバンク(D⁻)
主力野手の世代交代が進み、チームの看板選手として佐々木を1位指名したのは理解でき、戦力層の厚いソフトバンクならではの戦略だった。また、佐々木の入団までには時間を要することから、補強ポイントの内野で高橋を指名できたのも幸運だった。
ただ、それ以外の指名には疑問が残り、目指すチーム像からかけ離れた印象を受け、D評価とした。佐々木の指名以降は4位まで大学生で、3位の鈴木はともかく、稲川も相楽も将来性に期待する指名で、それなら高校生指名にシフトしても良く、結果は出ていないとは言え、5年連続高校生1位指名は何だったのかと思ってしまう。
①佐々木麟太郎(スタンフォード大・内野手)②稲川竜汰(九共大・投手)
③鈴木豪太(大商大・投手) ④相楽雅斗(岐阜協立大・投手)
⑤高橋隆慶(JR東日本・内野手) 育①池田栞太(関根学園高・捕手)ほか7名
最後に、今年は私の故郷の北海道関連の指名が多く嬉しかった。ロッテの石垣から始まり、日本ハムの藤森と常谷、オリックスの窪田と高谷、西武には秋山。セ・リーグも阪神の能登と神宮、DeNAには宮下、中日の能登に広島の工藤と実に11名の選手が指名され、全員の活躍に期待したい。