今季ともに新監督を迎え、リーグ制覇した両チームだが、そこまでの歩みはは対照的だつた。
世代交代の遅れが危惧されていたソフトバンクは、FAで近藤健介(横浜高~11年日④)と山川穂高(冨士大~13年西②)の大型補強を2年続けて成功させ、有原航平(早大~14年日①)やオスナの加入など積極的な補強が実を結び独走でリーグを制した。
数字を見て分かるように、投打に圧倒したシーズンになり、600点を超えたのはソフトバンクだけで、課題だった投手陣の改善が進み、守りも含めスキのないチームになった。CSでも勢いに乗る日本ハムを3連勝で退け、改めて強さを証明した。
【ソフトバンク/24年度チーム成績…91勝49敗3分/1位】
24年/1位 23年/3位 22年/2位
防御率(失点数)…2.53①(390①) 3.27④(507④) 3.07③(471③)
打 率(得点数)….259①(607①) .248②(536①) .255①(555①)
守備率(失策数)….990①( 53①) .990①( 52①) .989②( 59②)
本塁打数/盗塁数… 114①/89③ 104②/73④ 108②/86④
一方で巨人は、21年の梶谷隆幸(開星高06年横③)を最後にFAの獲得はなく、ドラフト中心にチーム作りを進めた。投打の柱の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と岡本和真(智弁学園高~14年①)を中心に、若手とベテランが融合し、首位から4ゲーム差内に4チームがひしめく混戦のなか、9月に抜け出し4年振りの優勝を決めた。
昨年までの一発頼みの大味な野球から、投手を中心にした守りの野球に切り替え、得点数は下降したものの、昨年3点台のチーム防御率は阪神を抑えリーグ1位になり、得失点差は▲41→16→81と結果に顕われた。
【巨人/24年度チーム成績…77勝59敗7分/1位】
24年/1位 23年/4位 22年/4位
防御率(失点数)…2.49①(381①) 3.39⑤(507④) 3.69⑥(589⑥)
打 率(得点数)….247②(462④) .252①(523③) .242⑥(548③)
守備率(失策数)….990①( 58①) .990①( 54①) .985⑤( 82⑤)
本塁打数/盗塁数… 81③/59④ 164①/48④ 163①/64④
●大学BIG4が1位候補も、指名順位から単独1位指名もある
両チームの位候補は、投手では金丸夢斗(関大)に中村優斗(愛工大)、今朝丸裕喜(報徳学園高)の名前が挙がり、巨人は投手陣強化のために金丸の指名が有力だ。
野手では、宗山塁(明大)と西川史礁(青学大)が1位候補で、ポスト今宮の目途が中々つかないソフトバンクは宗山、外野のレギュラーが丸佳浩(千葉経大高~07年巨③)しかいない巨人には西川がフィットする。
【このほか、両チームでリストアップされている選手】
・投 手…渋谷純希(帯広農高)小川哲平(作新学院高)昆野太晴(白鷗大足利高)
藤田琉生(東海大相模高)清水大暉(前橋商高)高尾響(広陵高)
吉岡暖(阿南光高)川勝空人(生光学園高)狩生聖真(佐伯鶴城高)
寺西成騎(日体大)坂口翔楓(国学院大)鷲尾昂哉(三菱重工ウエスト)
・捕 手…箱山遥人(健大高崎高)
・内野手…颯佐心汰(中央学院高)宇野真仁朗(早実高)石塚裕惺(花咲徳栄高)
石見颯真(愛工大名電高)ラマル・ギービン・ラタナヤケ(大阪桐蔭高)
中村奈一輝(宮崎商高)
・外野手…モイセエフ・ニキータ(豊川高)正林輝大(神村学園高)
●ソフトバンク~主力の高齢化に備え若手の台頭が不可欠も伸び悩むドラフト1位
圧倒的な戦力を誇り、大竹耕太郎(阪神)や田中正義(日本ハム)など移籍したのちに主力になる選手が多いが、ドラフトは低迷気味だ。特に育成の柱となる高校生選手の輩出が滞り、14年の松本裕樹(盛岡大高~14年①)と栗原陵矢(春江工高~14年②)以降は、三森大貴(青森山田高~16年④)くらいしかいない。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年②…津森宥紀(東北福祉大/③・投手)柳町 達(慶大/⑤・外野手)
大関友久(仙台大/育②・投手)
20年①…なし
21年④…なし
22年②…大津亮介(新日鉄鹿島/②・投手)
23年③…なし
↓↓
【ソフトバンクの補強ポイント】
投 手…将来のエース候補、即戦力の先発右腕
捕 手…必要なし
内野手…ポスト今宮の遊撃手、高校・大学生の左打ち
外野手…高校生(右打ちならベスト)
投手陣の陣容を見ても、生え抜きは大関と大津、松本裕に津森、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)くらいで、FAを含む移籍組と外国人選手が主力になっている。ファームの若手の有望選手は多いが、千賀滉大(カブス)のようにチームの顔になれるエースの誕生を期待したい。
年齢構成は問題ないが、気になるのが先発の右投手で、石川柊太(創価大~13年育①)にFA移籍の可能性があり、今季3勝に終わった東浜巨(亜大~12年①)も来季は36歳になり、計算できるのが有原とスチュアートJrだけになると厳しい。
エース候補で、地元の柴田獅子(福岡大大濠高)は恵まれた体格から最速149キロの真っ直ぐが魅力で、打者として評価も高く上位指名に可能性もある。
小船翼(知徳高)と有馬恵叶(聖カタリナ高)は190センチ超の長身からの真っ直ぐが武器で、高校から投手を始めた有馬は伸びしろがあり、育成環境が整っているチームだけに大化けの可能性も秘めている。寺田光(磐田東高)も真っ直ぐは140キロを超え、左腕の河野伸一朗(宮崎学園高)は制球力が課題だが変化球の精度が高い。
大学生では浅利太門(明大)と一條力真(東洋大)は、徳山一翔(環太平洋大)はいずれも真っ直ぐが153キロを超える。浅利と一條はリリーフで活躍しており、左腕の徳山は真っ直ぐを軸に総合力が高い。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※①モイネロ(163回)※③有原航平(182回2/3)
大関友久(122回1/3)スチュアートJr(120回)大津亮介(119回1/3)
☆ リリーフ…杉山一樹・松本裕樹(50試合)津森宥紀・ヘルナンデス(48試合)
又吉克樹・藤井晧哉(40試合)オスナ(39試合)長谷川威展(32試合)
野手は主力の高齢化が課題で、36歳の柳田悠岐(広島経大~10年ソ②)を筆頭に、中村晃(帝京高~07年③)が35歳、今宮と山川が33歳、甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)と牧原大成(城北高~10年育⑤)が32歳と世代交代が着実に差し迫っている。
近藤と山川の獲得は大成功だったが、FA選手が必ずしも当たるとは限らず、若手の突き上げが欲しい。
捕手は問題ないが、年齢構成では内野と外野は課題がある。内野は19~24歳に左打者がイヒネ・イツア(誉高~22年①)しかおらず、外野は19~21歳が不在、右打者となると25歳の正木智也(慶大~21年②)が最年少で内野より優先度合いは高い。
三塁と外野を守れる渡部聖弥(大商大)は右のスラッガーで、宗山を外した際に1位指名へ切り替えても良い。柳館憲吾(国学院大)は3年春には首位打者を獲得した安打製造機、浦田俊輔(九産大)は俊足を活かした出塁率の高い遊撃手で、ともに内野の補強ポイントに合う。曾布川ザイレン(浜松商高)はここに来て評価が急上昇した三塁手で、高校通算29本の長打力が魅力だ。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…甲斐拓也(119/392)海野隆司(51/120)
☆内野手…※⑤栗原陵矢(140/598)※⑩今宮健太(133/538)
※⑰山川穂高(143/611)牧原大成(78/259)中村 晃(101/203)
川瀬 晃(105/156)廣瀬隆太(35/111)
☆外野手…※①近藤健介(129/535)※⑦周東佑京(123/477)正木智也(80/282)
柳町 達(73/237)柳田悠岐(52/225)川村友斗(88/140)
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~宗山 塁(明大・内野手) 金丸夢斗(関大・投手)
2位~清水大暉(前橋商高・投手) 小川哲平(作新学院高・投手)
3位~寺西成騎(日体大・投手) 正林輝大(神村学園高・外野手)
5位~徳山一翔(環太平洋大・投手) 浅利太門(明大・投手)
6位~石見颯真(愛工大名電高・内野手) 有馬恵叶(聖カタリナ高・投手)
●巨人~この間の即戦力中心の指名で、各ポジションで高校生指名が必要
16年から続いた1位抽選10連敗が、浅野翔吾’(高松商高~22年①)で止まったが、村上宗隆(ヤクルト)や辰己涼介(楽天)など逃がした魚は大きかった。一方、吉川尚輝(中京学院大~16年①)や大勢、2位以降で山崎伊や門脇など未完の大学生を育成した手腕は評価できるが、高校生の主力が戸郷と岡本以降いないのが気になる。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年①…なし
20年①…平内龍太(亜大/①・投手)山崎伊織(東海大/②・投手)
21年③…大勢(関西国際大/①・投手)赤星優志(日大/③・投手)
22年④…門脇 誠(創価大/④・内野手)船迫大雅(西濃運輸/⑤・投手)
23年④…なし
↓↓
【阪神の補強ポイント】
投 手…高校生、大学生を含む左投手
捕 手…高校生、大城移籍に備えた即戦力
内野手…ポスト岡本の中軸候補
外野手…左打ちの高校生・大学生
エースの戸郷が24歳、さらに26歳の山崎伊が控え、今季は23歳の井上温大(前橋商高~19年④)がブレイクし、今季復活した菅野智之(東海大~12年①)のMLB挑戦が定かではないが、若く実績を積んだ先発陣が揃う。ただ、ファームを見ても今一つ伸び悩んでいる選手が多く、戸郷や井上に続く若手の覚醒に期待したい。
リリーフはこれまでの登板過多にいる勤続疲労が心配だったが、今季は疲労を考慮した起用が目立ち、中川晧太(東海大~15年⑦)等ベテランが復帰すれば層は厚くなり、今年は先発候補に絞って良い。
篠木健太郎(法大)と伊原陵人(NTT西日本)、竹田祐(三菱重工ウエスト)は上位候補に挙がる即戦力の先発候補で、篠木は最速157キロの本格派右腕で完投能力が高く、左腕の伊原は社会人で球速がアップし、竹田ともにゲームメークに長けている。このほか、3年春に最優秀防御率を獲得した今井亮太(東京国際大)や高卒4年目の長尾光(BC茨城)も候補に挙がっている。
今季、高校生の指名は必須で、高校から投手に転向した村上泰斗(神戸弘陵高)と池田悠真(紋別高)は最速150キロを超え、村上は上位指名の可能性もある。山口廉王(仙台育英高)に坂井遼(関東一高)、沼井怜穏(横浜隼人高)も150キロを超え、茨木祐太(帝京長岡高)は投手として総合力が高い。
チームに不足している左腕では、山内悠生(北見柏陽高)と冨士大和(大宮東高)は奪三振率が高く、宮原駿介(東海大静岡)は最速150キロを超える。高卒3年目の沢山優介(ヤマハ)も角度のある真っ直ぐが武器の本格派左腕だ。
荘司宏太(セガサミー)は打者のタイミングを外すチェンジアップが武器で、中島悠貴(茨城トヨペット)は地元の強豪の日立製作所を破り注目された151キロ左腕で、ともにリリーフに適性がある。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※②菅野智之(156回2/3)※⑤戸郷翔征(180回)
※⑪山崎伊織(147回1/3)グリフィン(116回2/3)井上温大(101回)
☆ リリーフ…バルドナード(58試合)ケラー(52試合)高梨雄平・船迫大雅(51試合)
大勢(43試合)泉 圭輔(35試合)平内龍太(31試合)
野手は課題が多く、大城卓三(NTT西日本~17年③)のFA移籍や、岡本のMLB移籍があればチームの再構築が必要だ。また、坂本勇人(光星学院高~06年①)は来季37歳、丸も36歳になり世代交代も必要のなか、門脇以外の若手がパッとせず、秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)や萩尾匡哉(慶大~22年②)の台頭に期待したい。
捕手は大城の去就に関係なく、支配下が6名しかおらず補強が必要で、本来は高校生で年代の空白を埋めたいところだが、石伊雄太(日本生命)と野口泰司(NTT東日本)の即戦力捕手が欲しいところで、打撃の良い野口のほうがチームにフィットしそうだ。また、松本龍之介(関西独立L堺)も高卒2年目の強肩捕手で、リーグ打点王を獲得する打力も魅力だ。
内野は今季、高校生の遊撃に逸材が多く、斎藤大翔(金沢高)は守備力なら今年の高校生で一番で、石塚と並んで総合力が高い。岸本佑也(奈良大高)も守備力に定評があり、打撃が魅力の今坂幸暉(大院大高)の評価も高い。
また、佐々木泰(青学大)と荒巻悠(上武大)、木村翔平(GXAスカイ)は長打が魅力のスラッガーで、18歳の木村は高校を中退しクラブチームで活躍し、巨人の入団テストでドラフト候補に残った逸材だ。
外野手では、左打ちの柴崎聖人(大経大)は補強ポイントに合い、リーグを代表する安打製造機でパンチ力もある。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…大城卓三(96/321)岸田行倫(88/298)小林誠司(42/123)
☆内野手…※⑦吉川尚輝(143/602)※⑩岡本和真(143/611)坂本勇人(109/426)
門脇 誠(129/405)泉口友汰(66/185)モンテス(46/159)
☆外野手…※⑬丸 佳浩(138/595)ヘルナンデス(56/240)萩尾匡哉(56/163)
浅野翔吾(40/158)オコエ瑠偉(68/157)佐々木俊輔(59/156)
立岡宗一郎(48/99)長野久義(54/98)
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~金丸夢斗(関大・投手) 西川史礁(青学大・外野手)
2位~箱山遥人(健大高崎高・捕手) 伊原陵人(NTT西日本・投手)
3位~吉岡 暖(阿南光高・投手) 昆野太晴(白鷗大足利高・投手)
4位~柴崎聖人(大経大・外野手) 今坂幸暉(大院大高・内野手)
5位~荘司宏太(セガサミー・投手) 野口泰司(NTT東日本・捕手)